説明

接着剤組成物

【課題】接着力に優れ、臭気が少なく、作業性が良好であり、環境面にも配慮された一液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤等の接着剤組成物を提供する
【解決手段】ウレタンプレポリマー、充填材等を含有するウレタン樹脂接着剤の希釈剤として、亜麻仁油、ひまわり油、大豆油、とうもろこし油、落花生油、綿実油、胡麻油、菜種油、オリーブ油、パーム油、椰子油、ひまし油等に由来する脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル化合物を用いる。少量の添加で低粘度化が可能となり、接着力が低下せずに臭気も少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着力に優れ、臭気が少なく、作業性が良好であり、環境面にも配慮された接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、変成シリコーン樹脂接着剤等の有機の硬化型接着剤は、一部有機溶剤を含有するタイプも存在するものの、有機溶剤は爆発や火災のおそれがあり、人体に悪影響を及ぼすこと等から、有機溶剤を含有しないタイプが用いられている。これらの接着剤は溶剤を含有しないことから粘度が高くなる傾向にあり、このままでは塗布作業性が悪いため、希釈剤と称される比較的高沸点の液状化合物を添加することにより粘度を調整している。
【0003】
一方、希釈剤の添加による負の影響も存在し、接着力を低下させる、臭気がある、樹脂成分と層分離する場合があること等が挙げられる。特許文献1には、ウレタンプレポリマーとの相溶性が良い希釈剤が開示されているが、接着力や臭気について改善の余地があった。
【特許文献1】特開2006−22298号公報
【0004】
また、別の問題として多くの接着剤は石油由来の原料を使用しているため、持続的にこれらの原料が入手できるか定かではない。さらに、これらの接着剤が被着材とともに焼却処分された場合、二酸化炭素等を排出することになるため、地球環境の面からも問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、接着力に優れ、臭気が少なく、作業性が良好であり、環境面にも配慮された一液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤等の接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は植物油、好ましくは菜種油または大豆油由来脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル化合物を含有することを特徴とする接着剤組成物である。また、本発明の効果は接着剤組成物にウレタンプレポリマーが含まれる場合、即ち一液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤において、より顕著に発現する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着剤組成物は粘度調整が容易なため塗布作業性が良く、接着力に優れ、臭気も少ないことから、コテなどで塗布を行う現場施工用の接着剤として特に有用である。また、植物油由来の原料を用いているため、焼却時に排出する二酸化炭素は生育時に植物内に取り込んだ二酸化炭素に由来するものであり、カーボンニュートラルの観点から地球環境にも配慮された接着剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の接着剤組成物は、植物油由来脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル化合物を含有することを特徴とする。植物油としては、亜麻仁油、ひまわり油、大豆油、とうもろこし油、落花生油、綿実油、胡麻油、菜種油、オリーブ油、パーム油、椰子油、ひまし油等が挙げられる。植物油由来脂肪酸は、カブリル酸、カブリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルシン酸、リグノセリン酸等が挙げられ、これらの脂肪酸を2-エチルヘキシルエステル化することにより、植物油由来脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル化合物が得られる。植物油から各脂肪酸を単離したものを2-エチルヘキシルエステル化したものを使用しても良いし、各脂肪酸が混合したまま2-エチルヘキシルエステル化したものを使用しても良い。植物油由来脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル化合物の配合量は、接着剤組成物を構成する他の原料の種類や量、目的とする性状等により異なるが、好ましくは接着剤組成物全体に対して5〜15重量%程度用いられる。
【0009】
接着剤組成物の樹脂成分としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、変成シリコーン樹脂等が挙げられる。一液湿気硬化型ウレタン樹脂ではウレタンプレポリマーが使用される。ウレタンプレポリマーは、ポリオール等の活性水素を2個以上有する化合物と多価イソシアネート化合物との反応により得られるものである。
【0010】
活性水素を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸等とジオール類を反応させたポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールやこれらの水添物等のポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0011】
イソシアネート化合物としては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(p−MDI)トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族多官能イソシアネート類のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族多官能イソシアネート類等が挙げられる。
【0012】
本発明における接着剤組成物には、必要に応じて炭酸カルシウム等の充填材、粘着付与樹脂、触媒、脱水剤、老化防止剤等の各種添加材を添加しても良い。
【0013】
以下、実施例、比較例に基づき本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0014】
ウレタンプレポリマー1の合成方法
3官能ヒマシ油変性ポリオールであるTLM(豊国製油社製、平均分子量1500、商品名)300重量部をセパラブルフラスコ内に投入後、減圧下、60℃で2時間攪拌した後、4,4’−MDIを333重量部投入し、窒素雰囲気下、80℃で2時間反応させ、NCO重量%が12%のウレタンプレポリマー1を合成した。
【0015】
ウレタンプレポリマー2の合成方法
3官能ヒマシ油変性ポリオールであるTLM200重量部をセパラブルフラスコ内に投入後、減圧下、60℃で2時間攪拌した後、4,4’−MDIを187.6重量部投入し、窒素雰囲気下、80℃で2時間反応させ、NCO重量%が10%のウレタンプレポリマー2を合成した。
【0016】
実施例1
ウレタンプレポリマー1 30重量部及び脱水剤であるPTSI(PCI社製、商品名)1重量部をプラネタリーミキサー内に投入後、炭酸カルシウムであるM−300J(丸尾カルシウム株式会社製、商品名)36重量部及び炭酸カルシウムであるBF200(備北粉化工業株式会社製、商品名)18重量部を加え、減圧下で30分間攪拌した。減圧攪拌後、菜種油由来脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル化合物であるベジソルMO(カネダ株式会社製、商品名)10重量部、ポリメリックMDIである44V20(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名)7.5重量部、錫系触媒であるSCAT−1(日東化成株式会社製、商品名」)0.1重量部を添加し、減圧下で15分間攪拌し、1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤である実施例1の接着剤組成物を得た。粘度は16Pa・s/23℃(BM型粘度計、6号ローター、20rpm)であった。
【0017】
実施例2〜4
実施例1において、各配合材料の配合量を表1記載のように変えた他は実施例1と同様に製造し、実施例2〜4の各接着剤組成物を得た。
【0018】
実施例5
ウレタンプレポリマー2 23重量部及びPTSI 1重量部をプラネタリーミキサー内に投入後、M−300J 39重量部及びBF200 13重量部を加え、減圧下で30分間攪拌した。減圧攪拌後、大豆油由来脂肪酸の2−エチルヘキシルエステル化合物であるベジソルMM(カネダ株式会社製、商品名)20重量部、44V20 10重量部、SCAT−1 0.1重量部を添加し、減圧下で15分間攪拌し、1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤である実施例5の接着剤組成物を得た。
【0019】
比較例1〜3
実施例1において、ベジソルMO 10重量部の代わりにアジピン酸ジイソノニル(DINA)を表1記載の配合量用いた他は実施例1と同様に行い、比較例1〜3の各接着剤組成物を得た。
【0020】
試験方法
クシ目ゴテを用いてフレキ板に各接着剤組成物を塗布し(塗布量550g/m)、木質フロア(接着面はカルプ)を貼り付け、23℃、50%RH雰囲気下で1週間養生後、引張速度3mm/分で平面引張試験を行い、表1に結果をまとめた。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例の各接着剤組成物はいずれも粘度20Pa・s/23℃以下のため、コテなどでの塗布性に優れる。また、常態強度は0.4N/mm2以上あるため、接着性能も良好である。一方、従来の希釈剤を用いた比較例1の接着剤組成物は粘度が高く、塗布性に劣っている。また、希釈剤を増量することにより低粘度化を図った比較例2および3においては、常態強度が低下している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物油由来脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル化合物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記植物油が菜種油または大豆油であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項3】
ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物。