説明

接着性粘着剤

【課題】本発明は、カツラを長期に使用してもカツラ表面のベタツキが抑制され、カツラへの毛髪の展着を防ぐことができる接着性粘着剤の開発を課題とする。
【解決手段】アクリルと酢酸ビニル樹脂との共重合エマルジョンを主成分とする水性粘着剤に、0.1〜5%程度の水溶性ウレタン樹脂を添加することで解決できることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性粘着剤に関するもので、特にカツラを固定する場合に有効なものである。
【背景技術】
【0002】
従来各種の粘着剤が開発されてきている。例えば、特開2000−96032号公報(特許文献1)には、ビスベンゾトリアゾリルフェノール化合物を含有する粘着剤組成物が開示されている。しかし、これは建造物や自動車等の窓ガラス等の表面を保護するために樹脂フィルムを貼着するものである。
【0003】
また、特開平10−219221号公報(特許文献2)には、水性感圧性粘着剤組成物が開示されているが、これはプラスチック、金属、ガラス、陶磁器、紙、布、木材、生鮮食料品等に接着させるものである。
【0004】
特開平9−316417号公報(特許文献3)には、アクリル系粘着剤組成物が開示されているが、ステンレス鋼板や塩化ビニル樹脂板を対象としている。
【0005】
上記のような粘着剤は、カツラのような人体を対象とするものではないため、かぶれ等人体特有の問題を考慮していない。
【0006】
さらに、特開平10−291927号公報(特許文献4)には、局所麻酔効果を有する化合物と粘着性樹脂及び/又は高分子を含有する皮膚用粘着剤が開示されている。
【0007】
しかしこれは皮膚用粘着剤としてパック料及び脱毛料を意図しており、剥離時の痛みを緩和するもので、カツラのような頭に接着させるものではないし、脱離防止に有効なものとは言えない。
【0008】
一方、カツラを頭皮に留める方法としては、クリップによる方法、両面テープによる方法及び天然ゴム系(ラテックス)による方法等があった。
【0009】
例えば、特開昭57−92073号公報(特許文献5)には、合成ポリイソプレンラテックスを主基剤とする義髪類用接着剤が開示されている。
【0010】
しかしながら、上記方法では1日位しかもたず、また水泳をすると離脱する等の欠点を有しており、また、あまり強固に固定するとはずし難いという欠点を有していた。
【0011】
更に、本出願人はカツラ用水性接着剤に関し特許出願を行った(特開2002−317164号公報、特許文献6)。しかし、この水性接着剤でも十分には満足いく結果が出ていないので、更に改良することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−96032号公報
【特許文献2】特開平10−219221号公報
【特許文献3】特開平9−316417号公報
【特許文献4】特開平10−291927号公報
【特許文献5】特開昭57−92073号公報
【特許文献6】特開2002−317164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、カツラを長期に使用してもカツラ表面のベタツキが抑制され、カツラへの毛髪の展着を防ぐことができる接着性粘着剤の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意努力した結果、アクリルと酢酸ビニル樹脂との共重合エマルジョンを主成分とする水性粘着剤に、0.1〜5%程度の水溶性ウレタン樹脂を添加することで解決できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は
(1) アクリルと酢酸ビニル樹脂との共重合エマルジョンを主成分とし、水溶性ウレタン樹脂を添加した接着性粘着剤、
(2) (1)記載の共重合エマルジョンの内、樹脂分が50重量%以上含有されることを特徴とする接着性粘着剤、
(3) カツラ用であることを特徴とする(1)又は(2)記載の接着性粘着剤
に関する。
【0016】
本発明は、本出願人が先に出願している「水性粘着剤」(特許文献6)において長期に使用しているとカツラ表面がベタツキ、またカツラに毛髪が展着する傾向があるところから、この欠点を解消すべく研究したところ、0.1〜5%程度の水溶性ウレタン樹脂を添加することが有効であることを見出したものである。
【0017】
先の「水性粘着剤」は、アクリル/酢ビ樹脂共重合エマルジョンを主成分としており、下記表1にあるように樹脂分62% (アクリル90%;酢ビ10%)、水34%、アニオン系界面活性剤1%及び増粘剤1%からなっている。
【0018】
【表1】

【0019】
本発明は、上記表1の成分からなる水性粘着剤に0.1〜5%の水溶性ウレタン樹脂を添加することによって、カツラを長期に使用してもカツラ表面のベタツキが抑制され、カツラへの毛髪の展着を防ぐことができる接着性粘着剤が得られることを見出したことを特徴とするものである。
【0020】
上記表1からわかるように、粘着剤中のアクリル/酢ビ樹脂共重合エマルジョンの量は、全量の90重量%以上、特に98重量%以上が好ましい。更にその共重合エマルジョンの内、樹脂分が50重量%以上含まれていることが好ましい。
【0021】
そして、他の添加剤としては、抗炎症剤として塩酸ジフェインヒドラミンやグリチルリチン酸ジカリウム、抗菌剤として塩化セチルピリジニウム、粘着付与剤としてポリアクリル酸ナトリウム等を必要に応じて添加する。また防腐剤、湿潤剤、pH調整剤等の添加も必要に応じてなされる。
【0022】
本発明において添加される水溶性ウレタン樹脂としては、例えばウレタン樹脂エマルジョンとウレタン樹脂プライマー、あるいはウレタン樹脂エマルジョンとウレタン樹脂エラストマーが用いられる。
【0023】
水溶性ウレタン樹脂は、周りの水分を吸収することを抑え、かつ撥水性効果も発揮することから、粘着効果が延長するという長所もある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の接着性粘着剤を用いることにより、カツラを長期に使用してもカツラ表面のベタツキが抑制され、カツラへの毛髪の展着を防ぐことができる
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明をより具体的に説明するために、以下の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
試着テスト
平成21年2月以来、モニターにより本発明品の試着テストを行い、装着期間の測定を行った。
その結果を表2にまとめてみた。
【0027】
【表2】

【0028】
上記表2から明らかなように、本発明の接着性接着剤により接着したカツラは、装着してから30日経過してもベタツキを感じることなく、また毛髪の展着も従来品より少なくなった。
【0029】
一方、現行品については、18日以降はベタツいたり毛髪の展着があり、カツラの装着を中止する者が多かった。
【0030】
なお、本発明品とは、表1の成分組成に0.2%のポリウレタン樹脂(ウレタン樹脂エマルジョンとウレタン樹脂プライマー)を添加した接着性粘着剤によりカツラを接着したものである。また、現行品とは本出願人が開発した「水性粘着剤」によりカツラを接着させたものである。
【0031】
[実施例2]
効果比較試験
試験環境:室温 20℃ 湿度 40%
試験試料:a.本発明品
b.「水性粘着剤」本発明者の現行品
c.「変成シリコン接着剤」市販品

試験資材:プラスチック板(PE製)
ウレタンネット
硬度計GS−706G(テック製)
バネ秤(鴨下製)
【0032】
試験方法:
(1)粘着力試験(当社参考試験方法):ガーゼに0.5gのアルコールを含ませ、左手の親指並びに人差し指を良く拭きあげて完全に乾燥させる。次に各試料を0.2g塗布し両指で延ばし乾燥させた後、バネ秤のフックを人差し指の間接にかけその指を下に向けて強く引き指が外れる時の粘着力を測定する。また、再粘着回数も確認する。
【0033】
(2)粘着力試験(ネット剥離試験):プラスチック板に4cm×4cmの面積に各試料0.2gを塗布し延ばし、半乾き状態の試料に4cm×4cmの面積のウレタンネットを装着し、完全に乾燥させる。次に、ネットにバネ秤のフックをかけネットが浮き上がる直後の粘着力を測定する。
【0034】
(3)表面硬度試験:プラスチック板に4cm×4cmの面積に各試料0.2gを塗布し延ばし、完全に乾燥させた後、硬度計にて表面の硬度を測定する。また、これをビーカー
に入れた水に1時間ドブ漬けし取り上げ、完全に乾燥させた後に再度表面の硬度を硬度計で測定する。
【0035】
(4)撥水確認試験:プラスチック板に4cm×4cmの面積に各試料0.2gを塗布し延ばし、完全に乾燥させた後、ビーカーに入れた水に1時間ドブ漬けし各試料の白化具合を確認する。
【0036】
試験結果:
(1)粘着力試験(当社参考試験方法)
【表3】

粘着力は本発明品が最も良いことがわかる。また再粘着回数も変成シリコン接着剤よ
りも多い。
【0037】
(2)粘着力試験(ネット剥離試験)
【表4】

粘着力は、変成シリコン接着剤よりは低いものの、水性粘着剤よりは高く出ている。
【0038】
(3)表面硬度試験
【表5】

表面硬度についても、変成シリコン接着剤よりは低いものの、水性粘着剤よりは高く出ている。
【0039】
(4) 撥水確認試験
【表6】

*白化状態:5 白化しない。 3 白化少ない。 1 白化する。
*全品とも5分程度乾燥させると試料は透明となった。
【0040】
総括:
本発明品である接着性粘着剤は、粘着力、表面硬度及び白化状態も良好であり、変成シリコン接着剤と比較しても遜色なく、再粘着回数においては変成シリコン接着剤では0回であるところ、1〜2回は再粘着が可能であるという特徴がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルと酢酸ビニル樹脂との共重合エマルジョンを主成分とし、水溶性ウレタン樹脂を添加した接着性粘着剤。
【請求項2】
請求項1記載の共重合エマルジョンの内、樹脂分が50重量%以上含有されることを特徴とする接着性粘着剤。
【請求項3】
カツラ用であることを特徴とする請求項1又は2記載の接着性粘着剤。