説明

接続構造

【課題】ホースとパイプとの接続作業の作業性を向上させることができるような接続構造を提供すること。
【解決手段】ホース11の内周に接して設けられ、ホース11の形状を保持するバックアップリング20と、ホース11の外周に配置され、径方向内側へ突出する第1の凸部33を有する締結部材30と、締結部材30の外部に配置されるカバー部材40とを用いることによって、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせ、カバー部材40で締結部材30を径方向内側へ押圧することによって、ホース11がバックアップリング20と締結部材30との間に挟み込まれるとともに、ホース11が締結部材30の第1の凸部33により径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着されるように、ホース11とパイプ12とが接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースとパイプとを接続する接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム製のホースと、金属製のパイプとを接続する接続構造として、図13に示すような接続構造が知られている。この種の接続構造は、例えば、自動車のエンジンルーム内で、ラジエータホースとラジエータ本体から延びるパイプ(配管)とを接続する場合に採用される。
【0003】
図13に示す接続構造では、ゴム製のホース1と、金属製のパイプ2とが接続されている。パイプ2の端部の外周には、山部(突起)3が形成されており、この山部3を乗り越えさせてホース1が圧入されている。この山部3がホース1の内周面と圧接するため、接続部分のシール性が確保されるとともに、ホース1の抜け止めとなっている。また、ホース1とパイプ2との接続部分がバンドクランプ4により締め付けられており、両者1,2のシールを確実に行うとともに、ホース1が抜けないようにしている。
【0004】
ところが、上述のような従来の接続構造においては、次のような不具合があった。一般に、ある程度のシール性を確保するために、ホース1の内径は、パイプ2の外径よりも若干小さくなっており、両者1,2を接続するには、ホース1をパイプ2に対して強い力で押し込む必要がある。また、上述したように、パイプ2の山部3を乗り越えさせてホース1を圧入しなければならないため、その圧入に際してはさらに強力な力が必要になる。したがって、ホース1とパイプ2との接続作業は手間がかかるものとなっていた。さらには、ホース1をパイプ2から取り外す分解作業についても、ホース11を無理矢理引き抜いて、パイプ2の山部3を乗り越えさせなければならず、強力な力が必要であった。また、分解作業の際には、ホース1をパイプ2から引き抜いて取り外す前に、バンドクランプ4を先に取り外す必要があったが、この際、取り外したバンドクランプ4が飛散することがあり、場合によってはバンドクランプ4を回収できないような狭いスペースに飛散してしまうこともあった。このように、ホース1をパイプ2から取り外す分解作業も手間がかかるものとなっていた。
【0005】
上述のような不具合を解消するような接続構造として、例えば、特許文献1に示されるようないわゆるクイックコネクタを用いた接続構造が提案されている。特許文献1には、クイックコネクタを用いて第1ホースと第2ホースとを接続する接続構造が開示されている。具体的には、クイックコネクタに形成されたコネクタ側係合部と、第1ホースの一端部の外周面から突設され、コネクタ側係合部に係合するホース側山部と、コネクタ側係合部とホース側山部とが係合した状態にて、第1ホースとクイックコネクタとの間をシールするシール手段としてのOリングを備え、ホース側山部は、第1ホースの外周面からクイックコネクタの挿入側に対し反対側へ傾斜した第1傾斜面と、第1ホースの外周面と第1傾斜面の頂部とでなす角度が鋭角となる第2傾斜面とから形成されていることが示されている。そして、第1ホースの一端部をクイックコネクタに圧入することによって、ワンタッチで第1ホースをクイックコネクタに接続することができることが示されている。
【特許文献1】特開平2000−274576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなクイックコネクタを用いた接続構造には、次のような問題点があった。
【0007】
クイックコネクタを用いることにより、第1ホースとクイックコネクタとをワンタッチで接続することができるものの、第2ホースとクイックコネクタとの接続については、上述した従来の接続構造における不具合が依然として解消されていないままである。つまり、第2ホースとクイックコネクタとを接続するには、第2ホースをクイックコネクタに対して強力な力で押し込む必要があり、しかも、クイックコネクタの端部の外周に形成された突起を乗り越えさせて第2ホースを圧入しなければならないため、その圧入に際してはさらに強力な力が必要になる。したがって、クイックコネクタを用いた接続構造であっても、上述のような強力な力を要する接続箇所が少なくもと1つあり、その接続作業に手間がかかるという問題点があった。
【0008】
また、シール手段としてのOリング、このOリングをバックアップするためのバックアップリングやスペーサ等が必要であり、コストがかかるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、ホースとパイプとの接続作業の作業性を向上させることができるような接続構造を提供することを目的とする。また、Oリングを使用せずにホースとパイプとの接続部分をシールして、コストを抑えることができるような接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、ホースがパイプの外周に接するようにしてホースとパイプとを接続する接続構造であって、ホースの内周に接して設けられ、ホースの形状を保持するバックアップリングと、ホースの外周に配置され、径方向内側へ突出する第1の凸部を有する締結部材と、締結部材の外部に配置されるカバー部材とを備え、カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせ、カバー部材で締結部材を径方向内側へ押圧することによって、ホースがバックアップリングと締結部材との間に挟み込まれるとともに、ホースが締結部材の第1の凸部により径方向内側へ押圧されてパイプの外周に密着されることを特徴とする。
【0011】
ここで、ホースは、可撓性を有する筒状の部材であり、例えば、ゴム製のホースを用いることができる。一方、パイプは、他の部材を押し付けても変形しない程度の剛性を有する筒状の部材であり、例えば、金属製や、樹脂製のパイプを用いることができる。そして、上記構成の接続構造を実現するための接続作業としては、例えば、カバー部材を予めホースに嵌めておき、バックアップリングをホースの内周に接するように配置し、バックアップリングと締結部材とでホースを挟むように締結部材をホースの外周に配置し、ホースをパイプに差し込んだ状態で、カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせることによって、ホースとパイプとを接続すること等が挙げられる。
【0012】
上記構成の接続構造によれば、カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせると、カバー部材で締結部材が径方向内側へ押圧される。このようなカバー部材のスライドによりホースが締結部材の第1の凸部に径方向内側へ押圧されてパイプの外周に密着される。これにより、両者の接続部分がシールされる。このように、Oリングを使用せずにホースとパイプとの接続部分をシールしているので、その分、コストを抑えることができる。
【0013】
そして、ホースを圧入して突部を乗り越えさせるような強力な力を必要とした従来の接続構造とは異なり、カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせるだけで、ホースとパイプとを接続することができる。したがって、ホースとパイプとの接続作業の作業性を向上させることができる。
【0014】
上記構成の接続構造において、カバー部材で締結部材を径方向内側へ押圧する構成とし
ては、締結部材に径方向外側へ突出する第2の凸部を設けて、この第2の凸部をカバー部材で押圧することによって締結部材を径方向内側へ押圧する構成や、カバー部材に小径部を設けて、この小径部により締結部材を径方向内側へ押圧する構成等が挙げられる。
【0015】
また、本発明の接続構造において、前記バックアップリングには、溝部が形成され、締結部材には、バックアップリングの溝部と対応する径方向内側へ突出する第3の凸部が形成されており、バックアップリングの溝部と、締結部材の第3の凸部とによりホースが挟み込まれることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、カバー部材で締結部材の第2の凸部が径方向内側へ押圧されると、バックアップリングの溝部と、締結部材の第3の凸部とにより、ホースが挟み込まれる。つまり、バックアップリングの溝部と締結部材の第3の凸部とがホースを介して係合する。これにより、締結部材、ホース、およびバックアップリングが一体化され、締結部材がホースに対して位置決めされる。したがって、ホースとパイプとの接続作業の際、一旦、バックアップリングの溝部と締結部材の第3の凸部とを係合させておけば、カバー部材で締結部材が径方向内側へ押圧されている限り、締結部材の外側のカバー部材をスライドさせても、締結部材の位置がずれることがなくなる。これにより、ホースとパイプとの接続作業の作業性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の接続構造において、前記パイプの外周には、山部が設けられており、前記締結部材のパイプ側の端部には、径方向内側へ向かう第1の爪部が形成されており、カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせることによって、締結部材のパイプ側の部分がカバー部材で押圧されて径方向内側へ傾き、締結部材の第1の爪部がパイプの山部と係合されることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、カバー部材のスライドにより、締結部材の第1の爪部とパイプの山部とが係合する。これにより、パイプの山部がストッパーとして機能して、締結部材がパイプに対して位置決めされ、締結部材のホース側へのずれが規制される。上述の締結部材がホースに対して位置決めされる構成に加えて、本構成を採用すれば、結果として、締結部材を介してホースとパイプとが所定位置で接続されることになる。そして、ホースとパイプとのシール部分がずれることがなくなり、安定してシールを行うことができる。
【0019】
ここで、前記パイプの山部と締結部材の第1の爪部との互いの係合面を、ホースの軸方向に略垂直な方向に形成してもよい。これにより、締結部材に対し、ホース側への力が加わった場合でも、第1の爪部が山部から外れて締結部材がホース側へずれる可能性が低くなる。
【0020】
また、本発明の接続構造において、前記締結部材のホース側の端部には、径方向外側へ向かう第2の爪部が形成されており、カバー部材は、そのホース側の端部が締結部材の第2の爪部を乗り越える位置までホースの軸方向に沿ってスライドされることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、カバー部材をホースの軸方向に沿って、締結部材の第2の爪部を乗り越える位置までスライドさせると、締結部材の第2の爪部がストッパーとして機能して、カバー部材が締結部材に対して位置決めされる。つまり、カバー部材のホース側の端縁が締結部材の第2の爪部により係止され、カバー部材のホース側へのずれが規制される。
【0022】
そして、前記締結部材を1本のワイヤを折り曲げることによって形成してもよい。これにより、締結部材の軽量化を図ることができ、複雑な製造工程を経ずして締結部材を作製することができる。
【0023】
ここで、前記締結部材を、ホースの外周に複数設けるようにしてもよい。これにより、締結部材の数をホースの径に応じて適宜変更することで、異なる径のホースであっても容易に対応することができ、汎用性に優れる。
【0024】
また、本発明の接続構造において、前記締結部材の第1の凸部には、ホースの軸方向に交差する方向に延ばされて形成され、隣接して配置される他の締結部材の第1の凸部と軸方向で互いにオーバーラップする突出部分が設けられていることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、ホースとパイプとを接続する際、複数の締結部材を、それぞれの第1の凸部の突出部分がホースの軸方向で互いにオーバーラップするように、ホースの外周に配置することができる。これにより、カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせると、ホースとパイプとの間でシール部分をホースの周方向において連続的に形成することができる。つまり、ホースの周方向全体にわたってホースとパイプとの接続部分をシールすることができ、シール性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の接続構造において、前記複数の締結部材は、連結部を介して互いに連結されている連続体を構成していることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、ホースとパイプとを接続する際、連結部により複数の締結部材が互いに連結された状態のまま、連続体をホースの外周に巻き付けるようにして配置することで、締結部材が別体のものとして構成される場合と比べて、ホースとパイプとの接続作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上述のように構成されているから、ホースを圧入して突部を乗り越えさせるような強力な力を必要とした従来の接続構造とは異なり、カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせるだけで、ホースとパイプとを接続することができる。したがって、ホースとパイプとの接続作業の作業性を向上させることができる。また、Oリングを使用せずにホースとパイプとの接続部分をシールしているので、その分、コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明を適用する接続構造の一実施形態を示す断面図であって、ホースと、パイプとを接続する接続構造を示している。この種の接続構造は、様々な場合に適用することが可能であるが、一例を挙げれば、自動車のエンジンルーム内で、ラジエータホースとラジエータ本体から延びるパイプ(配管)とを接続する場合に採用される。ここで、ホースは、可撓性を有する筒状の部材であり、例えば、ゴム製のホースを用いることができる。一方、パイプは、他の部材を押し付けても変形しない程度の剛性を有する筒状の部材であり、例えば、金属製や、樹脂製のパイプを用いることができる。
【0031】
図1に示す接続構造では、ゴム製のホース11と金属製のパイプ12とが、ホース11がパイプ12の外周に接するようにして接続されている。そして、ホース11とパイプ12との接続には、バックアップリング20と、複数の締結部材30,30,・・・と、カバー部材40とが用いられている。
【0032】
パイプ12の外周には、径方向外側に突出する山部13が形成されている。そして、ホ
ース11の端部がパイプ12の山部13の手前側(ホース11側)まで達している。一方、パイプ12の端部はバックアップリング20の手前側(パイプ12側)まで達している。
【0033】
バックアップリング20は、ホース11の形状を円筒状に保持する部材であり、ホース11の内周に接して設けられている。締結部材30は、ホース11の外周の一部を覆う部材であり、ホース11の外周に設けられ、ホース11を挟んでバックアップリング20と対向する位置に配置されている。カバー部材40は、ホース11、パイプ12、および締結部材30,30,・・・を覆う部材であり、締結部材30,30,・・・の外側に配置されている。バックアップリング20、締結部材30、およびカバー部材40の詳細については、後述する。
【0034】
この接続構造においては、カバー部材40により各締結部材30の第2の凸部34が径方向内側へ押圧されている。この押圧力によって、ホース11が締結部材30の第1の凸部33とパイプ12とにより挟み込まれることで、ホース11が径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着されている。このようにして、ホース11とパイプ12との間でシール部分が形成されている。さらに、この押圧力によって、ホース11が締結部材30の第3の凸部35とバックアップリング20の溝部21とにより挟み込まれることで、バックアップリング20の溝部21と締結部材30の第3の凸部35とがホース11を介して係合されている。
【0035】
そして、締結部材30の第1の爪部31がパイプ12の山部13と係合されており、締結部材30がホース11側へずれないようになっている。また、カバー部材40のホース11側の端縁が締結部材30の第2の爪部32により係止されており、カバー部材40がホース11側へずれないようになっている。
【0036】
次に、バックアップリング20、締結部材30、およびカバー部材40について、図1〜図4を用いて説明する。図2は、バックアップリング20を示す斜視図、図3は、締結部材30を示す斜視図、図4は、カバー部材40を示す斜視図である。
【0037】
まず、バックアップリング20は、図2に示すように、略円筒状の部材であって、外径がホース11の内径よりも若干大きく形成されている。バックアップリング20は、ホース11の内部の空間に配置される。そして、バックアップリング20の外周がホース11の内周に接することでホース11の形状を円筒状に保持するようにしている。
【0038】
バックアップリング20の軸方向の中途部(図2では略中央部)には、径方向内側に向かう溝部21が形成されている。この溝部21は、カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、ホース11を介して締結部材30の第3の凸部35と係合される。
【0039】
次に、締結部材30は、図3に示すように、ホース11の外周形状に沿うように湾曲して形成されており、ホース11の軸方向に垂直な方向の断面が略円弧状に形成されている。上述したように、締結部材30は、ホース11の外周に複数配置される。そして、締結部材30の外側には、カバー部材40が配置される。
【0040】
一方、締結部材30のホース11の軸方向の断面は、凹凸を有する形状となっている。具体的には、締結部材30には、径方向内側へ向かう第1の爪部31と、径方向外側へ向かう第2の爪部32と、径方向内側へ突出する第1の凸部33と、径方向外側へ突出する第2の凸部34と、径方向内側へ突出する第3の凸部35とが形成されている。また、締結部材30の第1の爪部31と第2の凸部34との間には、傾斜部36が設けられている

【0041】
第1の爪部31は、締結部材30のパイプ12側の端部が径方向内側へ折り曲げられて形成されている。この第1の爪部31は、カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、パイプ12の山部13と係合される。ここで、第1の爪部31とパイプ12の山部13との互いの係合面は、パイプ12の軸方向に略垂直な方向に形成されている。
【0042】
第2の爪部32は、締結部材30のホース11側の端部の第3の凸部35の一部分が「コ」字状に切り欠かれ、その切り欠き部分の内側が径方向外側へ折り曲げられて形成されている。
【0043】
この第2の爪部32は、カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、カバー部材40の小径部41に押圧された後、この小径部41の凹部44と係合される。これにより、締結部材30が径方向内側へ向けて押圧される。カバー部材40をさらにパイプ12側へスライドさせると、第2の爪部32と小径部41との圧接状態が解除され、この第2の爪部32によりカバー部材40のホース11側の端縁が係止される。
【0044】
第1の凸部33は、締結部材30のホース11の軸方向中途部に設けられ、径方向内側へ突出して形成されている。カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、この第1の凸部33によりホース11が径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着される。これにより、ホース11とパイプ12との間でシール部分が形成される。
【0045】
第2の凸部34は、締結部材30の第1の凸部33よりもパイプ12側に設けられ、径方向外側へ突出して形成されている。この第2の凸部34は、カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、カバー部材40の段部43に押圧される。これにより、締結部材30が径方向内側へ向けて押圧される。そして、カバー部材40をさらにパイプ12側へスライドさせると、第2の凸部34は、カバー部材40の小径部41と圧接される。
【0046】
第3の凸部35は、締結部材30のホース11側の端部に設けられ、径方向内側へ突出して形成されている。そして、第3の凸部35は、バックアップリング20の溝部21と対応した形状となっている。この第3の凸部35は、カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、ホース11を介してバックアップリング20の溝部21と係合される。
【0047】
傾斜部36は、締結部材30のパイプ12側であって、第1の爪部31と第2の凸部34との間に設けられている。そして、第2の凸部34側から第1の爪部31側へ向かうにつれて径方向外側に傾斜するように形成されている。この傾斜部36は、カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、カバー部材40の大径部42により径方向内側へ押圧される。これにより、締結部材30が第3の凸部35を支点として、締結部材30の第3の凸部35よりもパイプ12側の部分が径方向内側へ傾くことによって、第1の爪部31がパイプ12の山部13と係合される。
【0048】
次に、カバー部材40は、ホース11、パイプ12、および締結部材30,30,・・・を覆う部材であり、締結部材30,30,・・・に対し、径方向内側への所定の押圧力を与える部材である。図4に示すように、カバー部材40には、段部43を介して小径部41と大径部42とが設けられている。小径部41は、カバー部材40のホース11側に
形成され、大径部42は、カバー部材40のパイプ12側に形成されている。小径部41の内径は、ホース11の外径よりも大きく形成されている。また、小径部41の内周面には、径方向外側へ窪む凹部44が形成されている。この凹部44は、カバー部材40を後述するようにホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、締結部材30の第2の爪部32と係合される。
【0049】
次に、ホース11とパイプ12との接続作業について説明する。図5(a)〜(e)は、ホース11とパイプ12との接続作業の手順を示す図である。図6は、カバー部材40のスライドによりホース11とパイプ12とが接続される様子を示す図であって、図6(a)は、図5(d)の状態の断面図、図6(b)は、図5(e)の状態の断面図である。
【0050】
まず、図5(a)に示すように、カバー部材40をホース11に予め外嵌しておく。そして、バックアップリング20をホース11の内部に嵌め込む。バックアップリング20は、その外周がホース11の内周に接するようにホース11の内部の空間に配置される。
【0051】
次に、図5(b)に示すように、複数(図では、6つ)の締結部材30,30,・・・をホース11の外周に配置する。締結部材30は、その第3の凸部35がホース11を挟んでバックアップリング20の溝部21と対向するような位置に配置される。
【0052】
そして、図5(c)に示すように、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へ向けてスライドさせる。このとき、カバー部材40を、その小径部41の凹部44が締結部材30の第2の爪部32と係合する位置までスライドさせる。このカバー部材40のスライドにより、締結部材30の第2の爪部32が径方向内側へ向けて押圧されるため、締結部材30の第3の凸部35が径方向内側へ押圧される。これにより、バックアップリング20の溝部21と締結部材30の第3の凸部35とがホース11を介して係合される。こうして、締結部材30、ホース11、およびバックアップリング20が一体化され、締結部材30がホース11に対して位置決めされる。
【0053】
次に、図5(d)、図6(a)に示すように、ホース11をパイプ12に差し込む。ホース11は、ホース11の端部がパイプ12の山部13に突き当たるまで差し込まれる。このとき、パイプ12の端部がバックアップリング20の手前側(パイプ12側)まで達する。なお、このように、ホース11をパイプ12に差し込んでも、上述したカバー部材40の凹部44と締結部材30の第2の爪部32との係合状態が保持される。そして、バックアップリング20の溝部21と締結部材30の第3の凸部35との係合状態も保持される。
【0054】
そして最後に、図5(e)、図6(b)に示すように、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へ向けてスライドさせる。このとき、カバー部材40を、その小径部41と締結部材30の第2の爪部32との圧接状態が解除される位置まで、つまり、カバー部材40の凹部44と締結部材30の第2の爪部32との係合状態が解除され、小径部41の端部が第2の爪部32を乗り越える位置までスライドさせると、接続作業が完了し、図1に示す接続構造が実現される。
【0055】
このカバー部材40のスライドにより、締結部材30の第2の爪部32によりカバー部材40のホース11側の端縁が係止され、カバー部材40が締結部材30に対して位置決めされる。また、カバー部材40のスライドにより、締結部材30の傾斜部36がカバー部材40の大径部42により径方向内側へ押圧される。これにより、締結部材30が第3の凸部35を支点として、締結部材30の第3の凸部35よりもパイプ12側の部分が径方向内側へ傾くことによって、締結部材30の第1の爪部31がパイプ12の山部13と係合され、締結部材30がパイプ12に対して位置決めされる。
【0056】
また、カバー部材40を、図5(d)に示す位置からスライドさせていくと、締結部材30の第2の爪部32が径方向内側へ向けて押圧されつつ、締結部材30の第2の凸部34がカバー部材40の段部43によって押圧される。そして、カバー部材40を、図5(e)に示す位置までスライドさせると、カバー部材40の小径部41と締結部材30の第2の爪部32との圧接状態が解かれる一方で、締結部材30の第2の凸部34がカバー部材40の小径部41によって押圧される。このように、カバー部材40をパイプ12側へスライドさせても、締結部材30が径方向内側へ向けて引き続き押圧された状態にある。したがって、上述したバックアップリング20の溝部21と締結部材30の第3の凸部35との係合状態が保持される。また、ホース11が締結部材30の第1の凸部33とパイプ12とにより挟み込まれる。これにより、ホース11が径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着され、両者11,12の接続部分がシールされる。
【0057】
なお、上述した接続作業では、図5(c)に示す状態、つまり、バックアップリング20と締結部材30とカバー部材40とがホース11に固定されている仮止めの状態を経て、ホース11とパイプ12とを接続するようにしているが、この仮止めの状態を必ずしも経る必要はない。具体的に言えば、バックアップリング20とカバー部材40とをホース11に取り付けた後に、ホース11をパイプ12に差し込み、複数の締結部材30,30,・・・をホース11の外周に配置する。そして、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へ向けてスライドさせると、図5(d)に示す状態を経て、図5(e)に示すような接続作業が完了した状態とすることができる。
【0058】
一方、ホース11をパイプ12から取り外す分解作業は、次のようにして行われる。まず、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってホース11側へ向けてスライドさせる。このとき、カバー部材40のホース11側の端縁が締結部材30の第2の爪部32を乗り越えるようにしてカバー部材40をスライドさせる。ただし、上述したように、カバー部材40のホース11側の端縁が締結部材30の第2の爪部32に係止されており、カバー部材40のホース11側への移動が規制されている。したがって、カバー部材40をホース11側へスライドさせるには、例えば、第2の爪部32を径方向内側へ押し下げること等によって、カバー部材40のホース11側の端縁と締結部材30の第2の爪部32との係止状態を解除する必要がある。
【0059】
そして、カバー部材40を締結部材30との圧接状態が解かれるまでホース11側へスライドさせると、締結部材30を取り外すことができ、ホース11をパイプ12から引き抜いて取り外すことができる。
【0060】
上述したようなホース11とパイプ12との接続構造によれば、次のような作用効果が得られる。
【0061】
カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、カバー部材40で締結部材30が径方向内側へ押圧される。この押圧力によって、ホース11が締結部材30の第1の凸部33とパイプ12とにより挟み込まれる。これにより、ホース11が径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着され、両者11,12の接続部分がシールされる。このように、Oリングを使用せずにホース11とパイプ12との接続部分をシールしているので、その分、コストを抑えることができる。
【0062】
ここで、シール性を向上させるには、複数の締結部材30,30,・・・がホース11の周方向に隙間なく配置され、ホース11とパイプ12との間でシール部分がホース11の周方向においては連続的に形成されることが望ましい。ただし、複数の締結部材30,30,・・・がホース11の周方向に若干の隙間をあけて間欠的に配置されている場合で
あっても、その隙間の両側でホース11が締結部材30により径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着されてシールされるため、その隙間がわずかであればシール性に大きな影響はない。
【0063】
そして、ホースを圧入して突部を乗り越えさせるような強力な力を必要とした従来の接続構造とは異なり、上述したように、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせるだけで、ホース11とパイプ12とを接続することができる。したがって、ホース11とパイプ12との接続作業の作業性を向上させることができる。そして、締結部材30の数をホース11の径に応じて適宜変更することで、異なる径のホース11であっても容易に対応することができ、汎用性に優れた接続構造となっている。さらに、ホース11をパイプ12から取り外す分解作業についても、上述したように、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってホース11側へスライドさせた後に、ホース11をパイプ12から取り外せばよく、この際、ホース11を無理矢理引き抜かなければ取り外せないような強力な力を必要としない。したがって、分解作業も容易に行うことができる。
【0064】
また、カバー部材40で締結部材30が径方向内側へ押圧されるため、ホース11が締結部材30の第3の凸部35とバックアップリング20の溝部21とにより挟み込まれる。つまり、バックアップリング20の溝部21と締結部材30の第3の凸部35とがホース11を介して係合する。これにより、締結部材30、ホース11、およびバックアップリング20が一体化され、締結部材30がホース11に対して位置決めされる。したがって、ホース11とパイプ12との接続作業の際、一旦、バックアップリング20の溝部21と締結部材30の第3の凸部35とを係合させておけば、カバー部材40で締結部材30が径方向内側へ押圧されている限り、締結部材30の外側のカバー部材40をスライドさせても、締結部材30の位置がずれることがなくなる。これにより、ホース11とパイプ12との接続作業の作業性を向上させることができる。
【0065】
また、カバー部材40のスライドにより、締結部材30の第1の爪部31とパイプ12の山部13とが係合する。これにより、パイプ12の山部13がストッパーとして機能して、締結部材30がパイプ12に対して位置決めされ、締結部材30のホース11側へのずれが規制される。ここで、前記パイプの山部と締結部材の第1の爪部との互いの係合面が、ホース11の軸方向に略垂直な方向に形成されているため、締結部材30に対し、ホース11側への力が加わった場合でも、第1の爪部31が山部13から外れて締結部材30がホース11側へずれる可能性が低くなる。
【0066】
そして、上述のように、締結部材30は、ホース11に対してもパイプ12に対しても位置決めされているため、締結部材30を介してホース11とパイプ12とが所定位置で接続されることになる。これにより、ホース11とパイプ12とのシール部分がずれることがなくなり、安定してシールを行うことができる。
【0067】
また、カバー部材40を締結部材30の第2の爪部32を乗り越える位置までスライドさせると、締結部材30の第2の爪部32がストッパーとして機能して、カバー部材40が締結部材30に対して位置決めされる。つまり、カバー部材40のホース11側の端縁が締結部材30の第2の爪部32により係止され、カバー部材40のホース11側へのずれが規制される。
【0068】
なお、カバー部材40のずれをさらに規制する構成として、例えば、少なくとも1つの締結部材30の外周に規制用突起を設け、規制用突起と対応するL字状の溝をカバー部材40の内周に設ける構成が挙げられる。この場合、カバー部材40のL字状の溝を、小径部41のパイプ12側の端部から軸方向に延びる軸方向部分と、この軸方向部分のホース
11側の端部から周方向に延びる周方向部分とを備えるように形成する。そして、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へ向けてスライドさせるときに、締結部材30の規制用突起がカバー部材40の溝の軸方向部分に沿ってスライドするようにする。さらに、カバー部材40を図5(e)、図6(b)に示す位置までスライドさせた後、締結部材30の規制用突起がカバー部材40の溝の周方向部分に沿ってスライドするようにカバー部材40を回転させる。すると、カバー部材40の溝の周方向部分により締結部材30の規制用突起のホース11の軸方向への移動が規制されるため、カバー部材40のホース11の軸方向へのずれを規制することができる。
【0069】
次に、ホース11とパイプ12との接続構造の変形例について説明する。
【0070】
まず、第1の変形例について、図7を用いて説明する。この第1の変形例では、締結部材の形状が上述した例とは異なっている。具体的には、図7に示す第1の変形例における締結部材130の第1の凸部133が、図3に示す上述した例における締結部材30の第1の凸部33とは異なっており、他の部分は同様となっている。
【0071】
図7に示す締結部材130は、ホース11の軸方向の断面形状が凹凸を有する形状となっており、径方向内側へ向かう第1の爪部131と、径方向外側へ向かう第2の爪部132と、径方向内側へ突出する第1の凸部133と、径方向外側へ突出する第2の凸部134と、径方向内側へ突出する第3の凸部135とが形成されている。また、締結部材130の第1の爪部131と第2の凸部134との間には、第2の凸部134側から第1の爪部131側へ向かうにつれて径方向外側に傾斜する傾斜部136が設けられている。そして、締結部材130の第1の爪部131、第2の爪部132、第2の凸部134、第3の凸部135、および傾斜部136の各部分は、図3に示す締結部材30の第1の爪部31、第2の爪部32、第2の凸部34、第3の凸部35、および傾斜部36の各部分とそれぞれ同様の役割を果たす部分となっている。
【0072】
第1の凸部133は、締結部材130のホース11の軸方向中途部に設けられ、径方向内側へ突出して形成されている。この第1の凸部133には、ホース11の周方向の両側へ向けて突出する突出部分133a,133bが設けられている。つまり、第1の凸部133は、締結部材130の他の部分よりも、突出部分133a,133bの分だけ、ホース11の周方向に長く形成されている。突出部分133a,133bは、ホース11の軸方向における位置が一致しないように設けられている。なお、突出部分133a,133bを、締結部材130のホース11の軸方向および周方向における中心位置に関し、点対称な位置に形成することができる。
【0073】
そして、ホース11とパイプ12とを接続する際には、複数の締結部材130,130,・・・がホース11の外周に次のように配置される。隣接して配置される一方の締結部材130と他方の締結部材130とは、一方の締結部材130の一側の突出部分133a(他方の締結部材130側へ向けて突出する突出部分)と、他方の締結部材130の他側の突出部分133b(一方の締結部材130側へ向けて突出する突出部分)とがホース11の軸方向で互いにオーバーラップするように配置される。このように、複数の締結部材130,130,・・・がホース11の外周に配置された状態で、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、締結部材130の第1の凸部133によりホース11が径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着される(図1、図6(b)参照)。これにより、ホース11とパイプ12との間でシール部分が形成される。
【0074】
ここで、上述した例では、複数の締結部材30,30,・・・がホース11の周方向に間欠的に配置される場合があり、この場合には、ホース11とパイプ12との間でシール
部分がホース11の周方向に間欠的に形成される。これに対し、この第1の変形例においては、複数の締結部材130,130,・・・がホース11の周方向に間欠的に配置される場合であっても、上述のように、隣接して配置される一方の締結部材130の一側の突出部分133aと他方の締結部材130の他側の突出部分133bとを、ホース11の軸方向で互いにオーバーラップするように配置することができるため、ホース11とパイプ12との間でシール部分をホース11の周方向において連続的に形成することができる。
【0075】
したがって、このような締結部材130を用いる接続構造によれば、上述した例における作用効果に加えて、次のような作用効果も得られる。締結部材130の突出部分133a,133bは、ホース11の軸方向で互いにオーバーラップする部分として設けられているので、ホース11とパイプ12との間でシール部分をホース11の周方向において連続的に形成することができる。つまり、ホース11の周方向全体にわたってホース11とパイプ12との接続部分をシールすることができ、シール性を向上させることができる。また、突出部分133a,133bが形成されている分だけ、ホース11とパイプ12との間のシール部分を大きく確保できるため、ホース11とパイプ12との接続に用いられる締結部材130の数を減らすことができる。
【0076】
なお、締結部材130の第1の凸部133は、上述したような突出部分133a,133bを有するものに限定されるものではなく、ホース11の軸方向に交差する方向に延ばされて形成され、隣接して配置される他の締結部材130の第1の凸部133と軸方向で互いにオーバーラップするような突出部分を有するももであればよい。
【0077】
次に、第2の変形例について、図8、図9を用いて説明する。この第2の変形例では、締結部材が上述した例とは異なっている。
【0078】
図8に示す締結部材230は、1本のワイヤを折り曲げることによって形成されている。締結部材230は、その一端に形成される第1のフック部237から他端に形成される第2のフック部238にかけて、第3の凸部235,第2の爪部232,第2の凸部234および第1の凸部233,傾斜部236,第1の爪部231が順に形成されている。
【0079】
そして、締結部材230をホース11の軸方向に直交する方向からの側面視で、締結部材230は凹凸を有する形状となっている。具体的には、第1の爪部231が径方向内側へ向かい、第2の爪部232が径方向外側へ向かい、第1の凸部233が径方向内側へ突出し、第2の凸部234が径方向外側へ突出し、第3の凸部235が径方向内側へ突出して形成されている。第1の凸部233には、ホース11の周方向の両側へ向けて突出する突出部分233a,233bが設けられている。突出部分233a,233bは、ホース11の軸方向における位置が一致しないように設けられている。また、傾斜部236は、第2の凸部234側から第1の爪部231側へ向かうにつれて径方向外側に傾斜して形成されている。
【0080】
締結部材230の第1のフック部237と第2のフック部238とは、ホース11の周方向の互いに反対側の方向に向けて形成されている。第1のフック部237は、第1の凸部233の一方の突出部分233aが突出する方向に形成されており、隣接して配置される他の締結部材230の一部(ここでは、第2の爪部232)に係合される。第2のフック部238は、第1の凸部233の他方の突出部分233bが突出する方向に形成されており、隣接して配置される他の締結部材230の一部(ここでは、第1の爪部231)に係合される。
【0081】
このような締結部材230の第1の爪部231、第2の爪部232、第1の凸部233、第2の凸部234、第3の凸部135、および傾斜部136の各部分は、図3に示す締
結部材30の第1の爪部31、第2の爪部32、第1の凸部33、第2の凸部34、第3の凸部35、傾斜部36の各部分とそれぞれ同様の役割を果たす部分となっている。また、締結部材230の突出部分233a,233bは、図7に示す締結部材130の突出部分133a,133bとそれぞれ同様の役割を果たす部分となっている。
【0082】
ホース11とパイプ12とを接続する際には、図9に示すように、複数の締結部材230,230,・・・がホース11の外周に配置される。各締結部材230は、第1のフック部237、第2のフック部238を介して互いに連結される。このとき、締結部材230の第1のフック部237は、第1の凸部233の一方の突出部分233aが突出する方向に隣接して配置される他の締結部材230の第2の爪部232に引っ掛けられて係合する。一方、締結部材230の第2のフック部238は、第1の凸部233の他方の突出部分233bが突出する方向に隣接して配置される他の締結部材230の第1の爪部231に引っ掛けられて係合する。
【0083】
また、隣接して配置される一方の締結部材230と他方の締結部材230とは、一方の締結部材230の一側の突出部分233a(他方の締結部材230側へ向けて突出する突出部分)と、他方の締結部材230の他側の突出部分233b(一方の締結部材230側へ向けて突出する突出部分)とがホース11の軸方向で互いにオーバーラップするように配置される。このように、複数の締結部材230,230,・・・がホース11の外周に配置された状態で、カバー部材40をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせると、締結部材230の第1の凸部233によりホース11が径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着される。これにより、ホース11とパイプ12との間でシール部分が形成される。
【0084】
そして、上述したように、締結部材230の突出部分233a,233bは、ホース11の軸方向で互いにオーバーラップする部分として設けられているので、ホース11とパイプ12との間でシール部分がホース11の周方向において連続的に形成される。これにより、ホース11の周方向全体にわたってホース11とパイプ12との接続部分をシールすることができ、シール性を向上させることができる。
【0085】
また、このような締結部材230を用いる接続構造によれば、上述した例における作用効果に加えて、次のような作用効果も得られる。締結部材230が1本のワイヤを折り曲げるだけで形成されているので、締結部材230の軽量化を図ることができ、複雑な製造工程を経ずして締結部材230を作製することができる。そして、ホースとパイプとの接続作業を、各締結部材230を第1のフック部237、第2のフック部238を介して互いに連結させた状態で行うことができるので、接続作業の作業性を向上させることができる。
【0086】
次に、第3の変形例について、図10、図11、図12を用いて説明する。この第3の変形例では、締結部材とカバー部材とが上述した例とは異なっている。
【0087】
図10は、締結部材330を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。図11は、カバー部材340のスライドによりホース11とパイプ12とが接続される様子を示す図であって、図11(a)、(b)は、それぞれ上述した例における図6(a)、(b)に対応する図である。
【0088】
図10に示す締結部材330は、ホース11の外周形状に沿うように湾曲して形成されており、ホース11の軸方向に垂直な方向の断面が略円弧状に形成されている。
【0089】
一方、締結部材330のホース11の軸方向の断面形状は、凹凸を有する形状となって
おり、径方向内側へ向かう第1の爪部331と、径方向外側へ向かう第2の爪部332と、径方向内側へ突出する第1の凸部333と、径方向外側へ突出する第2の凸部334と、径方向内側へ突出する第3の凸部335とが形成されている。また、締結部材330の第1の爪部331と第1の凸部333との間には、第1の凸部333側から第1の爪部331側へ向かうにつれて径方向外側に傾斜する傾斜部336が設けられている。
【0090】
そして、締結部材330のホース11側の部分と、パイプ12側の部分とが、第1の凸部333を介してホース11の周方向に互い違いにずらされた形状となっている。締結部材330のホース11側には、第2の爪部332と第2の凸部334と第3の凸部335とが設けられており、締結部材330のパイプ12側には、第1の爪部331と傾斜部336とが設けられている。第1の凸部333は、パイプ12側のパイプ側凸部333aと、ホース11側のホース側凸部333bとが連続するように形成されている。
【0091】
このような締結部材330の第1の爪部331、第2の爪部332、第2の凸部334、および第3の凸部335の各部分は、図3に示す締結部材30の第1の爪部31、第2の爪部32、第2の凸部34、および第3の凸部35の各部分とそれぞれ同様の役割を果たす部分となっている。また、締結部材330のパイプ側凸部333a、ホース側凸部333bは、図7に示す締結部材130の突出部分133a,133bとそれぞれ同様の役割を果たす部分となっている。
【0092】
カバー部材340は、図11に示すように、略円筒状に形成されており、小径部や大径部が設けられていない点で、図4に示す上述した例におけるカバー部材とは異なっている。カバー部材340のホース11側の端部には、径方向外側へ窪む第1の凹部341が形成されており、ホース11の軸方向中途部には、径方向外側へ窪む第2の凹部342が形成されている。カバー部材340を、後述するように、ホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせていくと、図11(a)に示すように、第2の凹部342が締結部材330の第2の爪部332と係合される。この状態から、さらに、カバー部材340をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせていくと、図11(b)に示すように、第1の凹部341が締結部材330の第2の爪部332と係合される。
【0093】
ホース11とパイプ12とを接続する際には、複数の締結部材330,330,・・・がホース11の外周に次のように配置される。隣接して配置される一方の締結部材330と他方の締結部材330とは、一方の締結部材330のパイプ側凸部333aと、他方の締結部材330のホース側凸部333bとがホース11の軸方向で互いにオーバーラップするように配置される。
【0094】
このように、複数の締結部材330,330,・・・がホース11の外周に配置された状態で、カバー部材340をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へスライドさせる。そして、図11(a)に示すように、カバー部材340の第2の凹部342が締結部材330の第2の爪部332と係合するまでカバー部材340をスライドさせる。このカバー部材340のスライドにより、締結部材330の第2の爪部332が径方向内側へ向けて押圧されるため、締結部材330の第3の凸部335が径方向内側へ押圧される。これにより、バックアップリング20の溝部21と締結部材330の第3の凸部335とがホース11を介して係合される。こうして、締結部材330、ホース11、およびバックアップリング20が一体化され、締結部材330がホース11に対して位置決めされる。
【0095】
次に、ホース11をパイプ12に差し込んだ後、図11(b)に示すように、カバー部材340の第1の凹部341が締結部材330の第2の爪部332と係合するまでカバー部材340をホース11の軸方向に沿ってパイプ12側へ向けてスライドさせる。このとき、カバー部材340の第1の凹部341が締結部材330の第2の爪部332に係合さ
れるため、カバー部材340が締結部材330に対して位置決めされる。また、カバー部材340のスライドにより、締結部材330の第2の凸部334がカバー部材340のパイプ12側の部分により径方向内側へ押圧される。これにより、締結部材330が第3の凸部335を支点として、締結部材330の第3の凸部335よりもパイプ12側の部分が径方向内側へ傾くことによって、締結部材330の第1の爪部331がパイプ12の山部13と係合され、締結部材330がパイプ12に対して位置決めされる。
【0096】
また、カバー部材340を、図11(a)に示す位置から図11(b)に示す位置までスライドさせる間、締結部材330の第2の凸部334がカバー部材340のパイプ12側の部分によって押圧された状態にある。したがって、上述したバックアップリング20の溝部21と締結部材330の第3の凸部335との係合状態が保持される。また、ホース11が締結部材330の第1の凸部333とパイプ12とにより挟み込まれる。これにより、ホース11が径方向内側へ押圧されてパイプ12の外周に密着され、両者11,12の接続部分がシールされる。
【0097】
そして、このような締結部材330を用いる接続構造によれば、上述した例における作用効果に加えて、次のような作用効果も得られる。上述したように、締結部材330のパイプ側凸部333a、ホース側凸部333bは、ホース11の軸方向で互いにオーバーラップする部分として設けられているので、ホース11とパイプ12との間でシール部分がホース11の周方向において連続的に形成される。これにより、ホース11の周方向全体にわたってホース11とパイプ12との接続部分をシールすることができ、シール性を向上させることができる。
【0098】
なお、以上では、ホース11の外周に配置される複数の締結部材を別体のものとして構成したが、一体のものとして構成することもできる。複数の締結部材を一体構成した例を図12に示す。
【0099】
図12は、上述した第3の変形例における締結部材330が一体構成された連続体430を示す平面図である。図12に示す連続体430は、図10に示す締結部材330が連続して並べられ、連結部431,431,・・・を介して互いに連結されて構成されている。連続体430には、ホース11とパイプ12とを接続するにあたり、必要となる数の締結部材330,330,・・・が用いられている。
【0100】
ホース11とパイプ12とを接続する際、連続体430は、複数の締結部材330,330,・・・が連結部431,431,・・・により互いに連結された状態のまま、ホース11の外周に巻き付けられるようにして配置される。したがって、締結部材330が別体のものとして構成される場合と比べて、ホース11とパイプ12との接続作業の作業性を向上させることができる。
【0101】
なお、連続体430は、一般的なプレス加工によって成形することができる。この場合、プレス加工後には、必要数よりも多い締結部材330,330,・・・が連結されたものが形成されることがあるが、連結部431のところで切断することによって、必要となる数の締結部材330,330,・・・が連結された連続体430を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明を適用する接続構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】バックアップリングを示す斜視図である。
【図3】締結部材を示す斜視図である。
【図4】カバー部材を示す斜視図である。
【図5】ホースとパイプとの接続作業の手順を示す図である。
【図6】カバー部材のスライドによりホースとパイプとが接続される様子を示す図である。
【図7】第1の変形例の締結部材を示す斜視図である。
【図8】第2の変形例の締結部材を示す斜視図である。
【図9】複数の締結部材が連結された状態を示す斜視図である。
【図10】第3の変形例の締結部材を示す図である。
【図11】カバー部材のスライドによりホースとパイプとが接続される様子を示す図である。
【図12】複数の締結部材が連結部により連結された連続体を示す平面図である。
【図13】従来のホースとパイプとの接続構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0103】
11 ホース
12 パイプ
13 山部
20 バックアップリング
21 溝部
30 締結部材
31 第1の爪部
32 第2の爪部
33 第1の凸部
34 第2の凸部
35 第3の凸部
40 カバー部材
41 小径部
43 大径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースがパイプの外周に接するようにしてホースとパイプとを接続する接続構造であって、
ホースの内周に接して設けられ、ホースの形状を保持するバックアップリングと、ホースの外周に配置され、径方向内側へ突出する第1の凸部を有する締結部材と、締結部材の外部に配置されるカバー部材とを備え、
カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせ、カバー部材で締結部材を径方向内側へ押圧することによって、ホースがバックアップリングと締結部材との間に挟み込まれるとともに、ホースが締結部材の第1の凸部により径方向内側へ押圧されてパイプの外周に密着されることを特徴とする接続構造。
【請求項2】
前記締結部材には、径方向外側へ突出する第2の凸部が設けられており、第2の凸部がカバー部材で押圧されることによって、締結部材が径方向内側へ押圧されることを特徴とする請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記カバー部材には、小径部が設けられており、小径部により締結部材が径方向内側へ押圧されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記バックアップリングには、溝部が形成され、締結部材には、バックアップリングの溝部と対応する径方向内側へ突出する第3の凸部が形成されており、
バックアップリングの溝部と、締結部材の第3の凸部とによりホースが挟み込まれることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の接続構造。
【請求項5】
前記パイプの外周には、山部が設けられており、前記締結部材のパイプ側の端部には、径方向内側へ向かう第1の爪部が形成されており、
カバー部材をホースの軸方向に沿ってスライドさせることによって、締結部材のパイプ側の部分がカバー部材で押圧されて径方向内側へ傾き、締結部材の第1の爪部がパイプの山部と係合されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の接続構造。
【請求項6】
前記パイプの山部と締結部材の第1の爪部との互いの係合面は、ホースの軸方向に略垂直な方向に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の接続構造。
【請求項7】
前記締結部材のホース側の端部には、径方向外側へ向かう第2の爪部が形成されており、
カバー部材は、そのホース側の端部が締結部材の第2の爪部を乗り越える位置までホースの軸方向に沿ってスライドされることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の接続構造。
【請求項8】
前記締結部材は、1本のワイヤを折り曲げることによって形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の接続構造。
【請求項9】
前記締結部材は、ホースの外周に複数設けられることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の接続構造。
【請求項10】
前記締結部材の第1の凸部には、ホースの軸方向に交差する方向に延ばされて形成され、隣接して配置される他の締結部材の第1の凸部と軸方向で互いにオーバーラップする突出部分が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の接続構造。
【請求項11】
前記複数の締結部材は、連結部を介して互いに連結されている連続体を構成しているこ
とを特徴とする請求項9に記載の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−40402(P2007−40402A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225272(P2005−225272)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】