説明

接触式硫酸プラントの廃熱回収方法

【課題】 転化器の転化効率の低下を抑制しつつ消費エネルギを節約できる接触式硫酸プラントの廃熱回収方法を提供する。
【解決手段】 接触式硫酸プラントの廃熱回収方法は、銅の熔錬炉(10)の排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させるための転化触媒層(100a〜100d)を有する転化器(50)を備える接触式硫酸プラントの廃熱回収方法であって、熔錬炉から転化器に導入される排ガスの一部を分岐して転化触媒層(100e,100f)を備えるプレコンバータ(60)に導入し、プレコンバータから排出された排ガスと飽和蒸気とを熱交換させることで飽和蒸気を加熱し、熱交換後の排ガスを転化器に導入することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式硫酸プラントの廃熱回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬において硫酸を製造するにあたり、接触式硫酸プラントを用いることがある。接触式硫酸プラントにおいては、銅の熔錬炉で発生した排ガスに含まれる二酸化硫黄(SO)を転化触媒層を有する転化器にて三酸化硫黄(SO)に転化させ、この三酸化硫黄を濃硫酸に接触・吸収させることで、規定の硫酸を製造している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
接触式硫酸プラントの転化器における転化反応は発熱反応であるため、例えば熔錬炉の負荷が上昇して転化器に流入する排ガス中の二酸化硫黄濃度が高くなった場合、転化器の転化触媒層の温度も上昇するおそれがある。転化器の転化触媒層の温度が上昇して所定の温度範囲を超えた場合、転化触媒層の性能を十分に発揮できなくなる結果、転化器の転化効率が低下するおそれがある。
【0004】
特許文献2には、転化器に導入される前の二酸化硫黄を含んだ排ガスの一部を転化触媒層が内部に配置されたプレコンバータに導くことで三酸化硫黄に転化させ、次いでプレコンバータを経由した排ガスの温度をクーラで低減させてから転化器に導くことで、転化器の触媒層の温度上昇を抑制し、以って転化効率の低下を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2864419号
【特許文献2】特開平11−189404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に係る技術を用いることで転化器の転化効率の低下抑制効果は得られるが、特許文献2に係る技術は接触式硫酸プラントの廃熱を十分に有効利用しているとはいえない。
【0007】
本発明は、転化器の転化効率の低下を抑制しつつ消費エネルギを節約できる接触式硫酸プラントの廃熱回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る接触式硫酸プラントの廃熱回収方法は、銅の熔錬炉の排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させるための転化触媒層を有する転化器を備える接触式硫酸プラントの廃熱回収方法であって、熔錬炉から転化器に導入される排ガスの一部を分岐して転化触媒層を備えるプレコンバータに導入し、プレコンバータから排出された排ガスと飽和蒸気とを熱交換させることで飽和蒸気を加熱し、熱交換後の排ガスを転化器に導入することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る接触式硫酸プラントの廃熱回収方法によれば、プレコンバータから排出された排ガスと飽和蒸気とを熱交換させることで飽和蒸気を加熱することから、プレコンバータから排出された排ガスの温度を低下させることができる。その結果、転化器の転化触媒層が排ガスによって加熱されることで転化器の転化触媒層の温度が高くなり過ぎて転化効率が低下することを抑制できる。さらに、プレコンバータから排出された排ガスの熱を飽和蒸気の加熱に利用していることから、消費エネルギを節約することができる。以上のように本発明に係る接触式硫酸プラントの廃熱回収方法によれば、転化器の転化効率の低下を抑制しつつ消費エネルギを節約することができる。
【0010】
上記方法において、プレコンバータから排出された排ガスは、三酸化硫黄を含有した排ガスであり、プレコンバータから排出された排ガスと飽和蒸気とを熱交換させることは、三酸化硫黄を含有した排ガスを、該排ガスのガス顕熱と飽和蒸気とを熱交換させることで飽和蒸気を加熱する過熱器に導入することを含み、さらに、飽和蒸気が過熱器において加熱されることによって得られた過熱蒸気を、該過熱蒸気を冷却する減温器および該過熱蒸気を加熱する重油燃焼型蒸気過熱器にこの順に通過させることで該過熱蒸気の温度を所定の温度範囲となるように調整してもよい。
【0011】
上記方法において、さらに重油燃焼型蒸気過熱器を通過した過熱蒸気を発電用タービンに導入してもよい。この方法によれば、プレコンバータから排出された排ガスの熱をさらに発電に利用することができる。また、この方法によれば、発電用タービンを効率的に稼動させることができることから、消費エネルギを効果的に節約することができる。
【0012】
上記方法において、さらに飽和蒸気が過熱器において加熱されることによって得られた過熱蒸気の温度に基づいて、重油燃焼型蒸気過熱器の運転を制御してもよい。この方法によれば、発電用タービンを効率的に稼動させることができることから、消費エネルギを効果的に節約することができる。
【0013】
上記方法において、さらに飽和蒸気が過熱器において加熱されることによって得られた過熱蒸気の温度に基づいて、減温器による過熱蒸気の冷却の実行および冷却の不実行を切り替えてもよい。この方法によれば、発電用タービンを効率的に稼動させることができることから、消費エネルギを効果的に節約することができる。上記方法において、過熱蒸気の所定の温度範囲は、340℃〜360℃の温度範囲であってもよい。
【0014】
上記方法において、さらにプレコンバータへの排ガスの一部の導入の実行および導入の不実行を、分岐される前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度、分岐される前の排ガスの流量、または熔錬炉の稼動状態に基づいて切り替えてもよい。
【0015】
上記方法において、飽和蒸気は、熔錬炉の廃熱を用いて生成されたものであってもよい。この方法によれば、熔錬炉の廃熱を発電タービンの駆動に利用していることから、消費エネルギを節約することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転化器の転化効率の低下を抑制しつつ消費エネルギを節約できる接触式硫酸プラントの廃熱回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係る接触式硫酸プラントの廃熱回収方法に用いられる転化器システムの一例を示す模式図である。
【図2】図2(a)は、減温器および過熱器の構成を詳細に説明するための模式図である。図2(b)は、減温器および過熱器の作動内容の一例を具体的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1に係る接触式硫酸プラントの廃熱回収方法について説明する。図1は、本実施例に係る廃熱回収方法に用いられる転化器システム5の一例を示す模式図である。転化器システム5は、熔錬炉10と、ボイラ20a〜ボイラ20dと、ブロワ30と、熱交換器40a〜熱交換器40fと、転化器50と、吸収塔55と、プレコンバータ60と、過熱器70aおよび過熱器70bと、減温器80aおよび減温器80bと、タービン90とを備えている。
【0020】
熔錬炉10は、硫化銅鉱を製錬するための炉である。熔錬炉10の構成は特に限定されるものではないが、本実施例に係る熔錬炉10は一例として、自溶炉11および転炉12を備えている。自溶炉11および転炉12の稼動状態は、要求される銅の製錬量等に応じて適宜制御される。熔錬炉10から排出された排ガスには、二酸化硫黄(SO)が含まれている。
【0021】
ボイラ20aは、自溶炉11の廃熱を利用して飽和蒸気を生成するための装置である。ボイラ20bは、転炉12の廃熱を利用して飽和蒸気を生成するための装置である。なお、本実施例において飽和蒸気とは、相対湿度100%の蒸気をいう。また、過熱蒸気とは、飽和蒸気よりも高温の蒸気をいう。
【0022】
ボイラ20cは、自溶炉11または転炉12のいずれか一方あるいは両方が停止したときに稼動して飽和蒸気を生成するための装置である。ボイラ20cの種類は特に限定されるものではないが、本実施例では一例として化石燃料を用いて水を加熱することで飽和蒸気を生成するボイラを用いる。本実施例では、化石燃料の一例として、重油を用いる。ボイラ20a〜ボイラ20cによって生成された飽和蒸気は、過熱器70aに供給される。ボイラ20a〜ボイラ20cによって生成される飽和蒸気の温度は、260℃である。但し、飽和蒸気の温度はこれに限定されるものではない。
【0023】
ブロワ30は、熔錬炉10から排出された排ガスを熱交換器40aに向けて送風するための装置である。ブロワ30によって送風された排ガスは、熱交換器40aに導入される。
【0024】
熱交換器40a、熱交換器40bおよび熱交換器40cは、この順に配置されている。ブロワ30によって送風された排ガスが熱交換器40a〜熱交換器40cを順に通過することで、排ガスの温度は所望の温度に調整される。
【0025】
所定の条件が満たされた場合、熱交換器40cを経由した熔錬炉10からの排ガスの一部は、分岐点200において分岐してプレコンバータ60に導入される。所定の条件が満たされない場合、熱交換器40cを経由した熔錬炉10からの排ガスは、プレコンバータ60を経由することなく転化器50に導入される。この所定の条件(以下、分岐条件と称する)の詳細は後述する。
【0026】
転化器50は、熔錬炉10の排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄(SO)に転化するための装置である。転化器50の内部には、二酸化硫黄が三酸化硫黄に転化される反応(転化反応)に用いられる触媒である転化触媒を含んだ層(以下、触媒層と称する)が配置されている。
【0027】
本実施例に係る転化器50は、一例として4つの触媒層を有している。具体的には転化器50の内部の上段から下段にかけて、触媒層100a、触媒層100b、触媒層100cおよび触媒層100dがこの順に配置されている。
【0028】
排ガスは、転化器50の頂部から転化器50の内部に流入して、触媒層100a、触媒層100b、触媒層100cおよび触媒層100dをこの順に通過する。なお、触媒層100a〜触媒層100dの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施例においては、触媒層100a〜触媒層100dとして推奨温度が380℃〜430℃の触媒層を用いる。
【0029】
吸収塔55は、排ガス中の三酸化硫黄(SO)を吸収させるための装置である。本実施例に係る吸収塔55は、触媒層100cを経由した排ガス中の三酸化硫黄を吸収する。ボイラ20dおよび熱交換器40d〜40fは、触媒層100cを経由した排ガスの温度を調整して触媒層100dに戻すために設けられている。ボイラ20dは、排ガスの熱を利用して飽和蒸気を生成するための装置である。ボイラ20dで生成された飽和蒸気は、ボイラ20a〜ボイラ20cで生成された飽和蒸気とともに過熱器70aに導かれる。熱交換器40d〜40fは、触媒層100cを経由した排ガスと排ガス中の三酸化硫黄を吸収させる吸収塔55を経由したガスとの熱交換を行うための装置である。
【0030】
触媒層100cを経由した排ガスがボイラ20dおよび熱交換器40dおよび熱交換器40eを通過することで、排ガスの温度は所望の温度に調整される。所望の温度に調整された排ガスは、吸収塔55に導かれる。このように転化器システム5がボイラ20dおよび熱交換器40dおよび熱交換器40eを備えることで、例えば触媒層100cを経由後の排ガスの温度が転化反応時の発熱によって高温になり過ぎた場合であっても、この排ガスの温度を吸収塔55に好適な温度に低下させてから吸収塔55に導くことができる。
【0031】
なお、触媒層100cを経由した排ガスは、常にボイラ20dを経由しなくてもよい。例えば触媒層100cを経由後の排ガスの温度に基づいて、ボイラ20dをバイパスさせてもよい。具体的には、触媒層100cを経由後の排ガスの温度が所定温度よりも低い場合には、触媒層100cを経由後の排ガスを、ボイラ20dをバイパスさせて熱交換器40dおよび熱交換器40eを通過させてから吸収塔55に導いてもよい。
【0032】
また、ボイラ20dおよび熱交換器40d〜40fに導入される排ガスは触媒層100cを経由した排ガスに限定されるものではなく、熱交換器40d〜40fから排ガスが戻される触媒層も触媒層100dに限定されるものではない。転化器50の各触媒層から選択された所定の触媒層を経由した排ガスをボイラ20dまたは熱交換器40d〜40fに導入し、当該所定の触媒層の下段側にある触媒層に戻すような構成であればよい。
【0033】
また、転化器システム5は、ボイラ20dおよび熱交換器40d〜40fと同様の機能を有するボイラおよび熱交換器を、それぞれ触媒層100a、触媒層100bおよび触媒層100dに対応するように備えていてもよい。この場合、転化器50に導入された排ガスは、触媒層100aを通過後に触媒層100a用のボイラおよび熱交換器を経由してから触媒層100bに導入され、次いで触媒層100b用のボイラおよび熱交換器を経由後に触媒層100cに導入され、次いでボイラ20dおよび熱交換器40d〜40fを経由後に吸収塔55に導入され、次いで触媒層100dに導入され、次いで触媒層100d用のボイラおよび熱交換器に導入される。
【0034】
プレコンバータ60は、排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させるための触媒層を備えている。本実施例に係るプレコンバータ60は、一例として2つの触媒層を備えている。具体的には、プレコンバータ60の内部の上段には触媒層100eが配置され、下段には触媒層100fが配置されている。
【0035】
熱交換器40cを経由後に分岐点200で分岐してプレコンバータ60に向かった排ガスは、さらに分岐点201で分岐して触媒層100eおよび触媒層100fにそれぞれ導入される。排ガスが触媒層100eおよび触媒層100fを通過することで、プレコンバータ60から排出された排ガスは三酸化硫黄を含むことになる。
【0036】
過熱器70aは、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するための装置である。分岐条件が満たされた場合、過熱器70aにはプレコンバータ60から排出された排ガスが導入される。過熱器70aは、この排ガスの熱(三酸化硫黄を含有した排ガスのガス顕熱)とボイラ20a〜ボイラ20dによって生成された飽和蒸気とを熱交換させることで、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気にする。
【0037】
一方、分岐条件が満たされない場合、過熱器70aには排ガスが導入されないことから、ボイラ20a〜ボイラ20dによって生成された飽和蒸気は過熱器70aによって加熱されて過熱蒸気となることなく、過熱器70aを飽和蒸気のままで通過する。なお後述するが、この場合、過熱器70aを通過した飽和蒸気は過熱器70bで加熱されることで過熱蒸気となることができる。以下、過熱器70aから排出された過熱蒸気および飽和蒸気を総称して、蒸気と総称する場合がある。
【0038】
過熱器70aを経由することで、プレコンバータ60から排出された排ガスの温度は低下する。したがって本実施例に係る過熱器70aは、過熱蒸気生成手段としての機能とともにプレコンバータ60から排出された排ガスを冷却する冷却手段としての機能も有している。具体的な温度の一例を挙げると、プレコンバータ60から排出された排ガスの温度が630℃程度であっても、過熱器70aを経由することで排ガスの温度を480℃程度にまで減温することができる。
【0039】
過熱器70aを経由した排ガスは、転化器50に導入される。具体的には、転化器50の頂部には排ガスを転化器50に導入するための排ガス導入用配管が接続されており、過熱器70aから排出された排ガスは、この排ガス導入用配管に導入される。それにより、転化器50には、熱交換器40cを経由後にプレコンバータ60および過熱器70aを経由しなかった二酸化硫黄含有排ガスと、熱交換器40cを経由後にプレコンバータ60および過熱器70aを経由した三酸化硫黄含有排ガスとが混合した排ガスが導入される。
【0040】
過熱器70aから排出された蒸気は、減温器80a、減温器80bおよび過熱器70bに導入される。減温器80aおよび減温器80b(以下、これらを総称して減温器と称する場合がある)は、蒸気を冷却するための装置である。減温器の構造は、このような機能を有するものであれば特に限定されるものではない。過熱器70bは、過熱器70aから排出された蒸気を加熱するための装置である。本実施例に係る過熱器70bは、一例として化石燃料を用いて蒸気を加熱している。化石燃料の一例として、重油を用いる。すなわち、本実施例に係る過熱器70bは重油燃焼型蒸気過熱器である。過熱器70bの運転は、過熱器70aから排出された蒸気の温度に基づいて制御される。具体的には過熱器70bは、通常時において最低負荷で運転し、熔錬工場の操業状態により過熱器70aから排出された蒸気の温度が低下した場合には負荷を上げることで蒸気温度を上げる。すなわち過熱器70bは、過熱器70aから排出された蒸気の温度に基づいて低負荷(最低負荷)と高負荷(>低負荷)とを切り替えている。過熱器70bの運転をこのように制御することにより、熔錬工場および硫酸工場の負荷変動時にも、タービン90を停止することなく運転させることが可能となる。減温器および過熱器70bの詳細は後述する。
【0041】
タービン90は、発電機に接続された発電用タービンである。タービン90として、例えば復水タービンを用いることができる。タービン90は、タービン90に導入された過熱蒸気によって駆動されて発電機を駆動する。
【0042】
続いて、分岐条件の詳細について説明する。本実施例において分岐条件が満たされたか否かは、分岐点200で分岐される前(以下、分岐前と称する場合がある)の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度に基づいて判定される。具体的には、分岐前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度が所定濃度以上の場合に、分岐条件が満たされたと判定される。
【0043】
この場合、分岐前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度が所定濃度以上の場合にはプレコンバータ60への排ガスの導入を実行し、当該二酸化硫黄の濃度が所定濃度より低い場合にはプレコンバータ60への排ガス導入を停止し、熱交換器40cから排出された排ガスの全部をプレコンバータ60および過熱器70aをバイパスさせて転化器50へ流入させる。
【0044】
すなわち、本実施例において、プレコンバータ60への排ガスの一部の導入の実行および導入の不実行は、分岐前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度に基づいて切り替えられている。この切り替えは、例えば分岐点200に流路制御弁を配置し、この流路制御弁を操作することで行うことができる。また、この切り替えは、手動で行われてもよく、制御装置が行ってもよい。
【0045】
所定濃度としては、所定濃度以上の二酸化硫黄を含む排ガスが転化器50に導入された場合に、転化器50の転化効率が低下すると考えられる値を適宜設定すればよい。所定濃度の一例として、所定濃度以上の二酸化硫黄を含む排ガスが転化器50に導入された場合に、転化器50の触媒層100aの出口温度が600℃を超えないと考えられる排ガス中の二酸化硫黄の濃度を用いることができる。
【0046】
二酸化硫黄の濃度は、分岐点200よりも上流側の部分に存在する排ガスの二酸化硫黄濃度であれば、特に限定されない。二酸化硫黄の濃度の一例として、熱交換器40cと分岐点200との間の部分に存在する排ガスの二酸化硫黄濃度を用いることができる。二酸化硫黄濃度は、濃度センサ等を用いて直接検出してもよく、例えば熔錬炉10の稼動状態等に基づいて推定することで間接的に検出してもよい。
【0047】
続いて減温器および過熱器70aの詳細について説明する。図2(a)は、減温器および過熱器70aの構成を詳細に説明するための模式図である。過熱器70aの内部には、プレコンバータ60から排出された排ガスが流動するための流路(以下、排ガス流路110と称する)が挿通している。排ガス流路110には、プレコンバータ60から排出された排ガスを、過熱器70aをバイパスさせて流動させるための流路(以下、バイパス流路111と称する)が接続している。
【0048】
バイパス流路111の流量を調整することで、過熱器70aの内部を流通する排ガスの流量を調整することができる。その結果、過熱器70aで生成される過熱蒸気の温度を調整することができる。例えばバイパス流路111を流動する排ガスの流量を多くすることで過熱蒸気の温度を減少させることができ、バイパス流路111を流動する排ガスの流量を少なくすることで過熱蒸気の温度を増加させることができる。バイパス流路111を流動する排ガスの流量調整は、例えばバイパス流路111に流量調整弁を配置し、この流量調整弁を操作することで行えばよい。流量調整弁の操作は手動で行われてもよく、制御装置が行ってもよい。
【0049】
また過熱器70aの内部には、蒸気が流動するため流路(以下、蒸気流路120と称する)が挿通している。蒸気流路120は、過熱器70aの内部において蛇行した部分を有している。図2(a)において蒸気流路120の蛇行した部分を、蛇行部121aおよび蛇行部121bと称する。蛇行部121aは、蛇行部121bよりも蒸気の流動方向上流側に位置している。また蛇行部121aは、蛇行部121bよりも排ガス流路110の排ガスの流動方向下流側に位置している。
【0050】
分岐条件が満たされた場合、飽和蒸気は、過熱器70aの外部から過熱器70aの内部に流入して蛇行部121aを通過することで加熱されて過熱蒸気となり、次いで過熱器70aの外部に流出し、再び過熱器70aの内部に流入して蛇行部121bを通過することでさらに加熱され、次いで過熱器70aの外部に流出する。
【0051】
減温器80aおよび減温器80bは、過熱器70aの外部に配置されている。具体的には減温器80aは、蒸気流路120の蛇行部121aと蛇行部121bとの間の部分のうち過熱器70aの外側の部分に配置されている。減温器80bは、蒸気流路120の蛇行部121bよりも下流側の部分のうち過熱器70aの外側の部分に配置されている。減温器80aおよび減温器80bの稼動状態を制御することで、蒸気の減温度合いを調整することができる。
【0052】
このように本実施例に係る減温器は、蒸気流路120の蒸気を減温器80aおよび減温器80bの2段階で減温する構成となっている。また、蛇行部121aおよび蛇行部121bが一つの過熱器70aの内部に配置された構造となっており、いわば排ガスの熱を用いて蛇行部121aを加熱する部分と排ガスの熱を用いて蛇行部121bを加熱する部分とが一体化して一つの過熱器70aの内部に収容されたような構造となっている。このようなコンパクトな構造を実現できたことで、例えば過熱器70aおよび減温器を製造工場で製造した後に、転化器システム5が設置されるべき現場に搬送するときの制約を少なくすることができる。
【0053】
排ガス流路110、バイパス流路111および蒸気流路120の材質は、特に限定されるものではないが、耐腐食性が良好な材質であることが好ましい。耐腐食性が良好な材質の一例として、ステンレスを用いることができる。ステンレスの一例として、SUS304を用いることができる。SUS304は、炭素鋼に比較して高温時の強度も良好であるため、本実施例のように高温の気体(排ガスおよび蒸気)が内部を通過する配管部材として好適である。
【0054】
続いて、減温器および過熱器70bの作動内容について説明する。本実施例において、過熱器70aを経由してからタービン90に導入される前の蒸気を、減温器で冷却してからタービン90に導入するか否かおよび過熱器70bで加熱してからタービン90に導入するか否かは、過熱器70aから排出された蒸気の温度に基づいて切り替えられている。
【0055】
ここでタービン90に導入される過熱蒸気の温度には、タービン90の稼動に好適な温度範囲がある。本実施例に係る転化器システム5において、この好適な温度範囲は340℃〜360℃である。そこで、本実施例によれば、この好適な温度範囲の中間温度である350℃を基準温度に設定し、過熱器70aから排出された蒸気の温度が基準温度より低い場合には、減温器を停止させ過熱器70bを稼動させることで、過熱器70aから排出された蒸気をさらに加熱してからタービン90に導入する。その結果、タービン90を効率的に稼動させることができることから、消費エネルギを効果的に節約することができる。
【0056】
一方、過熱器70aから排出された蒸気の温度が基準温度以上の場合には、減温器80aおよび減温器80bの少なくとも一方を稼動させてから最低負荷運転の過熱器70bを通過させることで、過熱器70aから排出された蒸気をタービン90に導入している。その結果、タービン90を効率的に稼動させることができることから、消費エネルギを効果的に節約することができる。
【0057】
過熱器70aから排出された蒸気の温度としては、例えば過熱器70aから排出後、減温器80aに導入前の蒸気の温度、具体的には蒸気流路120の蛇行部121aと減温器80aとの間の部分に存在する蒸気の温度を用いることができる。蒸気の温度は、例えば温度センサによって検出することができる。また減温器および過熱器70bの制御は、温度センサの検出結果を受けた制御装置によって行われてもよく、ユーザが手動で行ってもよい。
【0058】
図2(b)は、減温器および過熱器70bの作動内容の一例をより具体的に説明するための図である。縦軸は過熱器70aから排出された蒸気の温度(具体的には、蒸気流路120の蛇行部121aと減温器80aとの間の部分の蒸気温度)を示し、横軸は時間を示している。時間は図2(b)の横軸の右側に行く程、経過する。
【0059】
図2(b)から分るように、過熱器70aから排出された蒸気の温度は、約250℃から約400℃の範囲内で変動している。ここで、熔錬炉10に要求される操業負荷と過熱器70aから排出された蒸気の温度とは、相関を有している。また、一般に銅製錬で用いられる熔錬炉10に要求される操業負荷は一定ではなく、大きく変動することが多い。そのため、過熱器70aから排出された蒸気の温度も一定ではなく、大きく変動してタービン90の稼動に好適な温度範囲(340℃〜360℃)から外れ易くなっている。
【0060】
これに対して本実施例によれば、過熱器70aから排出された蒸気の温度が基準温度(350℃)以上の場合には、減温器80aおよび減温器80bの少なくとも一方を稼動させてから最低負荷運転の過熱器70bを通過させ、過熱器70aから排出された蒸気の温度が基準温度より低い場合には、減温器80aおよび減温器80bを停止させ過熱器70bの負荷を上げて稼動させている。その結果、本実施例によれば操業負荷変動が大きい場合であっても、タービン90に導入される過熱蒸気の温度をタービン90の稼動に好適な温度に調整することができる。その結果、タービン90を停止することなく運転させることができ、消費エネルギを効果的に節約することができる。
【0061】
なお、上記切り替えの基準温度は、タービン90の稼動に好適な温度範囲の中間温度に限定されるものではない。基準温度は、例えばタービン90の稼動に好適な温度範囲のいずれかの値を用いればよい。また、過熱器70bの負荷を上げる場合と減温器を稼動させる場合との間で、異なる基準温度を採用してもよい。具体的には、過熱器70bの負荷を上げるか否かの基準温度として好適な温度範囲の下限値である340℃を用い、減温器を稼動させるか否かの基準温度として好適な温度範囲の上限値である360℃を用いてもよい。
【0062】
この場合、過熱器70aから排出された蒸気の温度が好適な温度範囲の下限値である340℃より低い場合には、減温器80aおよび減温器80bを停止させ過熱器70bの負荷を上げ、過熱器70aから排出された蒸気の温度が好適な温度範囲の上限値である360℃より高い場合には、減温器80aおよび減温器80bの少なくとも一方を稼動させてから最低負荷運転の過熱器70bを通過させる。この場合、タービン90に導入される過熱蒸気の温度をタービン90の稼動に好適な温度範囲に調整することができる。
【0063】
また、減温器80bを通過した時点の過熱蒸気(すなわち過熱器70bに導入される前のガス)の温度が、タービン90に好適な温度範囲(340℃〜360℃)と同等の温度、若しくはこの温度範囲よりも低い温度となるように減温器80aおよび減温器80bを稼動させることが好ましい。340℃〜360℃の温度範囲の過熱蒸気をタービン90に導入する工程が安定するからである。
【0064】
続いて図1を参照して、本実施例に係る転化器システム5の作動および接触式硫酸プラントの廃熱回収方法を総括的に説明する。まず、熔錬炉10からの排ガスは全てブロワ30によって圧送されることで、熱交換器40a、熱交換器40bおよび熱交換器40cをこの順に通過する。
【0065】
分岐条件が満たされた場合、熱交換器40cから排出された排ガスの一部は、分岐点200で分岐してプレコンバータ60および過熱器70aを経由して転化器50に導入され、熱交換器40cから排出された排ガスの残部はプレコンバータ60および過熱器70aを経由することなく転化器50に導入される。その結果、転化器50には、プレコンバータ60を経由することで二酸化硫黄濃度が低下し且つ過熱器70aを経由することで温度が低下した排ガスと、プレコンバータ60および過熱器70aを経由しなかった排ガスとが混合したガスが導入される。
【0066】
転化器50において、排ガス中の二酸化硫黄は三酸化硫黄に転化される。転化器50から排出された排ガスに含まれる三酸化硫黄は、接触式による硫酸(HSO)の生成に用いられる。また、転化器50の触媒層100cを経由した排ガスは、ボイラ20dおよび熱交換器40d,40eに導入された後に吸収塔55および熱交換器40d〜40fを経由し、触媒層100dに戻されている。それにより、触媒層100dの温度が調整されている。
【0067】
分岐条件が満たされた場合、過熱器70aにおいて、ボイラ20a〜ボイラ20dによって生成された飽和蒸気がプレコンバータ60を経由した排ガスの熱でさらに加熱されることで、過熱蒸気が生成される。過熱器70aにおいて生成された過熱蒸気は、タービン90に供給される前に減温器による減温処理または過熱器70bによる加熱処理を施される。それにより、過熱蒸気の温度はタービン90の稼動に好適な温度に調整された上でタービン90に導入される。
【0068】
分岐条件が満たされない場合、過熱器70aに排ガスが導入されないため、ボイラ20a〜ボイラ20dによって生成された飽和蒸気は過熱器70aを飽和蒸気のままで通過し、次いで過熱器70bによって加熱されて過熱蒸気となり、タービン90に導入される。タービン90に導入された過熱蒸気によってタービン90が駆動し、発電が行われる。
【0069】
以上説明したように、本実施例に係る転化器システム5および接触式硫酸プラントの廃熱回収方法によれば、転化器50に導入される排ガスの一部を分岐してプレコンバータ60および過熱器70aに導入してから転化器50に導入することで、転化器50に導入前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度を低減させ、且つ転化器50に導入前の排ガスの温度を低下させることができる。
【0070】
転化器50に導入前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度が低減することで、転化器50の触媒層が転化反応時の発熱によって高くなり過ぎて転化効率が低下することを抑制できる。また、転化器50に導入前の排ガスの温度が低下することによっても、転化器50の触媒層が排ガスによって加熱されることで触媒層の温度が高くなり過ぎて転化効率が低下することを抑制できる。また本実施例によれば、プレコンバータ60から排出された排ガスの熱を過熱器70aにおける過熱蒸気の生成に利用している。その結果、消費エネルギを節約することができる。すなわち、本実施例によれば、転化器50の転化効率の低下を抑制しつつ消費エネルギを節約することができる。
【0071】
また本実施例によれば、過熱器70aで生成された過熱蒸気をタービン90に導入していることから、プレコンバータ60から排出された排ガスの熱をさらに発電に利用している。その結果、消費エネルギをさらに節約することができる。なお、過熱器70aで生成された過熱蒸気の導入先は、タービン90に限定されるものではない。過熱器70aで生成された過熱蒸気は、過熱蒸気を用いてエネルギを生成できる装置であれば、タービン90以外の装置に導入されてもよい。
【0072】
また本実施例によれば、過熱器70aに導入される飽和蒸気の少なくとも一部にボイラ20aおよびボイラ20bによって生成された飽和蒸気が用いられていることから、熔錬炉10の廃熱をタービン90の駆動に利用している。その結果、熔錬炉10の廃熱を廃棄する場合に比較して、消費エネルギを節約することができる。
【0073】
また本実施例において分岐条件が満たされた場合にタービン90に導入される過熱蒸気は、過熱器70aで生成された過熱蒸気を過熱器70bでさらに加熱したものであることから、飽和蒸気を過熱器70aを経由させずに直接過熱器70bで過熱蒸気にしてタービン90に導入する場合に比較して、過熱器70bで消費するエネルギを節約できる。その結果、過熱器70bにおける化石燃料の使用量を顕著に削減できる。具体的には本実施例によれば、分岐条件が満たされたにもかかわらず熔錬炉10等で加熱された飽和蒸気を過熱器70aを経由させずに直接過熱器70bで過熱蒸気にしてタービン90に導入すると仮定した場合に比較して、重油の年当たりの使用量を1/6以下にすることも可能である。
【0074】
また本実施例によれば、過熱器70aから排出された蒸気を減温器および過熱器70bをこの順に通過させてからタービン90に導入していることから、タービン90を効率的に稼動させることができる。さらに本実施例によれば、過熱器70aから排出された蒸気の温度に基づいて過熱器70bの運転を制御し、過熱器70aから排出された蒸気の温度に基づいて減温器による蒸気の冷却の実行および冷却の不実行を切り替えていることから、タービン90に導入される過熱蒸気の温度をタービン90の駆動に好適な温度に調整することができる。それにより、タービン90を効率的に稼動させることができることから、消費エネルギを効果的に節約することができる。
【0075】
なお、本実施例において分岐条件が満たされたか否かは、分岐点200で分岐される前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度に基づいて判定されているが、これに限定されるものではない。分岐条件が満たされたか否かは、分岐前の排ガスの流量、熔錬炉10の稼動状態等に基づいて判定されてもよい。排ガスの流量が多いほど、分岐点200よりも上流側の排ガスに含まれる二酸化硫黄の単位時間当たりのモル量が多くなると考えられるからである。熔錬炉10の稼動状態の一例として、熔錬炉10の稼動率を用いることができる。稼働率が高いほど排ガスの流量が多くなるからである。
【0076】
分岐条件が満たされたか否かを分岐前の排ガスの流量に基づいて判定する場合、例えば分岐前の排ガスの流量が所定流量以上の場合に、分岐条件が満たされたと判定することができる。この場合、分岐前の排ガスの流量が所定流量以上の場合にプレコンバータ60への排ガスの導入を実行し、分岐前の排ガスの流量が所定流量より小さい場合にプレコンバータ60への排ガスの導入を停止することになる。
【0077】
所定流量としては、所定流量以上の排ガスが転化器50に導入された場合に、転化器50の転化効率が低下すると考えられる排ガス流量を適宜設定すればよい。分岐前の排ガスの流量としては、分岐点200よりも上流側の部分における排ガスの流量であれば特に限定されず、一例として熱交換器40cと分岐点200との間の部分における排ガス流量を用いることができる。排ガス流量は、ガス流量センサ等を用いて直接検出してもよく、熔錬炉10の稼動状態等に基づいて推定することで間接的に検出してもよい。
【0078】
分岐条件が満たされたか否かを熔錬炉10の稼働率に基づいて判定する場合、例えば自溶炉11および転炉12の両方が稼動していることで熔錬炉10の稼働率が所定値以上になった場合に分岐条件が満たされたと判定することができる。この場合、熔錬炉10の稼働率が所定値以上になった場合にプレコンバータ60への排ガスの導入を実行し、自溶炉11および転炉12のいずれか一方が停止することで熔錬炉10の稼働率が所定値より小さくなった場合にプレコンバータ60への排ガスの導入を停止することになる。所定値としては、熔錬炉10の稼働率が所定値以上の場合に転化器50に導入される排ガス流量が所定流量以上となるような値を適宜設定すればよい。
【0079】
なお、分岐条件が満たされたか否かの判定を行わず、熔錬炉10からの排ガスの一部をプレコンバータに常時導入してもよい。但し、上述したように排ガスの一部のプレコンバータ60への導入の実行および不実行を分岐前の排ガスに含まれる二酸化硫黄の濃度、分岐前の排ガスの流量、熔錬炉10の稼動状態等に基づいて切り替えることで、転化熱によって転化器50の触媒層の温度が高くなり過ぎて転化器50の転化効率が低下する可能性が高い場合に限って、転化器50に導入される排ガスの一部を分岐してプレコンバータ60に導入して、転化器50の転化効率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0080】
5 転化器システム
10 熔錬炉
11 自溶炉
12 転炉
20a〜20d ボイラ
30 ブロア
40a〜40f 熱交換器
50 転化器
55 吸収塔
60 プレコンバータ
70a,70b 過熱器
80a,80b 減温器
90 タービン
100a〜100f 触媒層
110 排ガス流路
111 バイパス流路
120 蒸気流路
121a,121b 蛇行部
200,201 分岐点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅の熔錬炉の排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させるための転化触媒層を有する転化器を備える接触式硫酸プラントの廃熱回収方法であって、
前記熔錬炉から前記転化器に導入される前記排ガスの一部を分岐して前記転化触媒層を備えるプレコンバータに導入し、前記プレコンバータから排出された前記排ガスと飽和蒸気とを熱交換させることで前記飽和蒸気を加熱し、前記熱交換後の前記排ガスを前記転化器に導入することを特徴とする接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。
【請求項2】
前記プレコンバータから排出された前記排ガスは、前記三酸化硫黄を含有した排ガスであり、
前記プレコンバータから排出された前記排ガスと前記飽和蒸気とを熱交換させることは、前記三酸化硫黄を含有した前記排ガスを、該排ガスのガス顕熱と前記飽和蒸気とを熱交換させることで前記飽和蒸気を加熱する過熱器に導入することを含み、
さらに、前記飽和蒸気が前記過熱器において加熱されることによって得られた過熱蒸気を、該過熱蒸気を冷却する減温器および該過熱蒸気を加熱する重油燃焼型蒸気過熱器にこの順に通過させることで該過熱蒸気の温度を所定の温度範囲となるように調整することを特徴とする請求項1記載の接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。
【請求項3】
さらに前記重油燃焼型蒸気過熱器を通過した前記過熱蒸気を発電用タービンに導入することを特徴とする請求項2に記載の接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。
【請求項4】
さらに前記飽和蒸気が前記過熱器において加熱されることによって得られた前記過熱蒸気の温度に基づいて、前記重油燃焼型蒸気過熱器の運転を制御することを特徴とする請求項2または3記載の接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。
【請求項5】
さらに前記飽和蒸気が前記過熱器において加熱されることによって得られた前記過熱蒸気の温度に基づいて、前記減温器による前記過熱蒸気の冷却の実行および前記冷却の不実行を切り替えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。
【請求項6】
前記過熱蒸気の前記所定の温度範囲は、340℃〜360℃の温度範囲であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。
【請求項7】
さらに前記プレコンバータへの前記排ガスの一部の導入の実行および前記導入の不実行を、前記分岐される前の前記排ガスに含まれる前記二酸化硫黄の濃度、前記分岐される前の前記排ガスの流量、または前記熔錬炉の稼動状態に基づいて切り替えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。
【請求項8】
前記飽和蒸気は、前記熔錬炉の廃熱を用いて生成されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の接触式硫酸プラントの廃熱回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−49596(P2013−49596A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187884(P2011−187884)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)