説明

接触改質原料油の製造方法

【課題】接触分解ガソリンを含むナフサ留分の硫黄分・窒素分を低減し、好適な接触改質原料の製造方法を提供する。
【解決手段】接触分解ガソリンを含有し、アニリン類が窒素として5質量ppm以下である原料ナフサ留分を、水素存在下、反応温度280〜350℃、水素分圧が0.5〜10MPaG、LHSVが1.0〜8.0h-1、水素/油比が10〜150NL/Lで水素化精製触媒と接触させ、硫黄分1ppm以下の精製ナフサ留分を得るもので、好ましくは、前記原料ナフサ留分と得られる精製ナフサ留分のアロマ分の差が1容量%以下である接触改質原料油の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触分解ガソリンを含有するナフサ留分を効率的に水素化処理して接触改質するのに好適な原料油を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)は、ポリマー及び他の石油化学合成のために非常に重要な石油化学原料である。BTXに対する世界的な需要は常に成長している。このBTXは、主としてナフサ留分の接触改質によって製造されている。
ナフサ留分のナフテン分およびアロマ分が高いほど接触改質によるアロマ収率が高いことが知られており、ナフテン分の含有量(容量%)を“N”、アロマ分の含有量(容量%)を“A”としたとき、“N+2A”が、接触改質原料としての適否判断の指標として用いられている(特許文献1)。
【0003】
重質な石油留分を接触分解することによって製造される接触分解ガソリンは、他のナフサ留分に比べ経済的に製造でき、ナフテン分やアロマ分の割合も高いため“N+2A”が高く、接触改質原料として魅力的である。しかし一方で、接触分解ガソリンには多量の硫黄分、窒素分及びオレフィン分が含まれるため、接触改質原料としては好適に使用することができなかった。
【0004】
そのため、接触分解ガソリンを接触改質原料として用いる場合には、接触分解ガソリン中に含まれる硫黄分、窒素分及びオレフィン分を接触改質原料として受容できるレベルまで、水素化精製などの方法により除去する必要がある。
接触分解ガソリンの一般的な処理方法としては、多段階の水素化脱硫が知られている(特許文献2)。しかし、これらはガソリン基材製造のための方法であり、オクタン価の低下を防止するためにオレフィン分は保持している。また硫黄分や窒素分の低減も十分でなく、接触改質原料として受容できるレベルではなかった。さらに水素化処理において150NL/Lを超える高い水素/油比を必要とし、運転コストが高いという問題もあった。すなわち、接触分解ガソリンを接触改質原料として好適なレベルまで精製する技術は未だ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−167308号公報
【特許文献2】特表2003−528942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決する課題は、接触分解ガソリンを含むナフサ留分の硫黄分・窒素分を低減し、好適な接触改質原料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは接触分解ガソリンの処理について鋭意研究した結果、接触分解ガソリンを含むナフサ留分において、特定の窒素化合物のみに着目して、その含有率を一定以下とし、該ナフサ留分に対して適切な運転条件を選択することにより、好適な接触改質原料を得ることができることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するための本発明は、接触改質原料油の製造方法において、接触分解ガソリンを含有し、アニリン類が窒素分として5質量ppm以下である原料ナフサ留分を、水素存在下、反応温度280〜350℃、水素分圧が0.5〜10MPaG、LHSVが1.0〜8.0h-1、水素/油比が10〜150NL/Lの条件で水素化精製触媒と接触させ、硫黄分1ppm以下の精製ナフサ留分を得ることを特徴とするものである。
また、好ましくは、上記原料ナフサ留分と精製ナフサ留分のアロマ分の差を1容量%以下とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、接触分解ガソリンから、窒素分が低減され、且つ“N+2A”が高い接触改質原料を得ることができ、また、従来のナフサ留分に比べて経済的に接触改質原料を製造できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
[接触分解ガソリン]
本発明における接触分解ガソリンを得るプロセスは、接触分解装置、接触分解用原料油、接触分解触媒、運転条件を特に限定するものでなく、公知の任意の製造工程を採用できる。接触分解装置は、無定形シリカアルミナ、ゼオライトなどの触媒を使用して、軽油から減圧軽油までの石油留分の他、重油間接脱硫装置から得られる間脱軽油、重油直接脱硫装置から得られる直脱重油、常圧残さ油などを接触分解して高オクタン価ガソリン基材を得る装置である。例えば、石油学会編「石油精製プロセス」講談社サイエンティフィック、1998年)に記載のあるUOP接触分解法、フレキシクラッキング法、ウルトラ・オルソフロー法、テキサコ流動接触分解法などの流動接触分解法、RCC法、HOC法などの残油流動接触分解法などのプロセスが知られており、本発明においては、これらのいずれの装置から得られた接触分解ガソリンでも好適に用いることができる。
【0011】
接触分解ガソリンは、接触分解装置、接触分解用原料油の性状、接触分解触媒、運転条件、分留条件などにより、一概には言えないが、おおよそ、5%留出温度が70〜120℃、95%留出温度が130〜210℃、ナフテン分が5〜25容量%、アロマ分が10〜45容量%、密度(15℃)が0.740〜0.800g/cm3、硫黄分が5〜150質量ppm、窒素分が5〜50質量ppm、アニリン類が窒素分として5〜40質量ppmの範囲の性状を有している。尚、本発明のアニリン類には、アニリン及びアニリンの水素を飽和炭化水素基で置換したアルキル置換誘導体を含む。
本発明においては、上記性状範囲の接触ガソリンのいずれをも用いることができるが、好ましくは、5%留出温度が80〜110℃、95%留出温度が165〜200℃、より好ましくは170〜190℃、ナフテン分が10〜20容量%、アロマ分が20〜40容量%、密度(15℃)が0.750〜0.790g/cm3、硫黄分が10〜100質量ppm、より好ましくは15〜50質量ppm、窒素分が5〜40質量ppm、より好ましくは10〜30質量ppm、アニリン類が窒素分として5〜35質量ppm、より好ましくは10〜25質量ppmのものである。
【0012】
なお、接触分解ガソリンやナフサ留分中に含まれる窒素分は、ニトリル類、ピロール類、ピリジン類、並びに、アニリン類等の有機窒素化合物から構成される。ここでアニリン類とは、アニリン及びアニリンのアルキル置換誘導体をいい、アニリン類量はこれらの合計量である。これらの有機窒素化合物は、原子発光検出器(AED)や化学発光窒素検出器(NCD)を備えたガスクロマトグラフィー(GC‐AEDやGC‐NCD)等の分析方法により定性・定量することができる。
【0013】
[原料ナフサ留分]
本発明において水素化精製触媒と接触させる原料ナフサ留分は、アニリン類を窒素として5質量ppm以下含有するものである。したがって、接触分解ガソリン中のアニリン類が窒素として5質量ppm以下であれば、そのまま用いることができる。しかし、通常の重質油を用いた接触分解ガソリンには、5質量ppm以上含まれているため、5質量ppm以下のようにアニリン類の含有量が低い接触分解ガソリンを得るために、接触分解用原料油中にアニリン類源をあまり含んでいないものを原料油として選択して接触分解する必要がある。この方法は、一般にはコスト高になるため、好ましくはないが、本発明から排除するものではない。
また、接触分解ガソリンを、例えば、硫酸等の酸性溶液と接触させる等の方法で、アニリン類を除去、低減させて用いることもできる。
【0014】
本発明の好ましい方法は、接触分解ガソリンに、他のナフサ留分を配合して、アニリン類が窒素分として5質量ppm以下の原料ナフサ留分とするものである。
この他のナフサ留分としては、原油やコンデンセートを蒸留して得られる直留ナフサ留分、各種の石油精製プロセスや分解プロセスから得られるナフサ留分、例えば、熱分解油、接触改質油、直接脱硫軽油、間接脱硫軽油、水素化分解油等から得られるプロセス油を蒸留して得られるナフサ留分、及びその他のオイルシェルやオイルサンドをビスブレーキング等の部分処理及び/または蒸留して得られるナフサ留分、FT法等で誘導される合成ナフサ成分、植物油由来のメチルエステル等の非石油由来の炭化水素油等から得られるナフサ留分が挙げられる。これらは、単独あるいは複数種類を混合しても差し支えない。
【0015】
上記の他のナフサ留分のほとんどはアニリン類を僅かしか含んでいないので、他のナフサ留分中のアニリン類含有量と接触分解ガソリン中のアニリン類の含有量から、原料ナフサ留分中のアニリン類量が窒素分として5質量ppm以下となるように、配合割合を算出すればよい。
この場合、接触分解ガソリンの配合割合が多ければ多いほど好ましく、接触分解ガソリンの配合割合は1容量%以上とすることが好ましく、3容量%以上がより好ましい。配合割合が1容量%未満であると実質的に接触分解ガソリンを処理できず、経済的メリットが少ないため好ましくない。なお、アニリン類が窒素分として5質量ppm以上になるように配合すると、後段の水素化精製処理で、ナフテン分やアロマ分の低減を少なくする条件では、十分に脱硫、脱窒素ができず、接触改質の原料として受容できるレベルに達しない。
【0016】
本発明の原料ナフサ留分としては、5%留出温度が75〜115℃のものが好ましく、80〜110℃がより好ましく、85〜105℃がさらに好ましい。また95%留出温度が130〜180℃のものが好ましく、135〜170℃がより好ましくは140〜165℃がさらに好ましい。
5%留出温度が75℃未満であると、炭素数5以下のナフサが多く含まれるようになり、接触改質装置において効率的に接触改質を行うことができなくなるため、あまり好ましくない。一方、5%留出温度が115℃を超えると、原料が重質化するために後段の水素化処理で十分に脱硫、脱窒素ができず、接触改質の原料として受容できるレベルに達しないため、あまり好ましくない。95%留出温度が130℃未満であると、原料ナフサ留分に含まれるナフテン分やアロマ分の割合が減ってしまい、接触改質装置において効率的に接触改質を行うことができなくなるため、あまり好ましくない。一方、95%留出温度が180℃を超えると、水素化処理が困難な重質硫黄分や重質窒素分ともに著しく増えてしまうため、後段の水素化処理で十分に脱硫、脱窒素ができず、接触改質の原料として受容できるレベルに達しないため、あまり好ましくない。
【0017】
また、本発明の原料ナフサ留分としては、ナフテン分が15〜35容量%含まれることが好ましく、20〜30容量%がより好ましく、アロマ分が5〜25容量%含まれることが好ましく、10〜20容量%がより好ましい。ナフテン分が15容量%未満であると、接触改質原料としての“N+2A”が低下し、接触改質油の収率が低下するため、あまり好ましくなく、35容量%を超えると、接触改質時に吸熱反応である脱水素反応が過剰に起こり、反応温度が低下するため、あまり好ましくない。アロマ分が5容量%未満であると、接触改質原料の“N+2A”が低下し接触改質油の収率が低下するため、あまり好ましくなく、25容量%を超えると、後段の水素化処理でコーキングにより反応性が低下するため、あまり好ましくない。
【0018】
さらに、本発明の原料ナフサ留分は、硫黄分が700質量ppm以下のものが好ましく、500質量ppm以下より好ましく、窒素分は15質量ppm以下のものが好ましく、10質量ppm以下がより好ましく、5質量ppm以下がさらに好ましい。硫黄分が700質量ppmを超えると、第2工程の水素化処理で十分に脱硫ができず、接触改質の原料として受容できるレベルに達しないため、あまり好ましくない。また、窒素分が15質量ppmを超えると、第2工程の水素化処理で十分に脱窒素ができず、接触改質の原料として受容できるレベルに達しないため、あまり好ましくない。
一方、原料ナフサ留分に含まれる硫黄分、窒素分のうち、アニリン類は特に除去が困難であり、アニリン類が窒素として5質量ppm以下にすることが重要で、好ましくは4質量ppm以下である。アニリン類が窒素として5質量ppmを超えると、後段の水素化処理で十分に脱窒素ができず、接触改質の原料として受容できるレベルに達しない。
【0019】
[水素化精製工程]
本発明の水素化精製工程は、通常の水素化脱硫装置により実施することができる。反応装置は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等の反応形式に特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化精製触媒に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。
また、本発明の水素化精製工程では、原料ナフサ留分と精製ナフサ留分のアロマ分の差を1容量%以下とすることが好ましい。この差が、1容量%を超えると接触改質反応した際に接触改質油中のアロマ収率が1容量%以上低下するため、あまり好ましくない。
【0020】
本発明の水素化精製工程では、反応温度は280〜350℃が好ましく、より好ましくは300〜330℃である。反応温度が280℃未満であると、水素化反応が十分に進行せず、硫黄分、窒素分を所定量まで低減することができなくなるため好ましくない。また、反応温度が350℃を超えると、加熱炉の負荷が増大して経済性が低下するため好ましくない。
水素分圧は0.5〜10MPaG、好ましくは1〜5MPaG、より好ましくは1〜3MPaGである。水素分圧が0.5MPaG未満であると、水素化反応が十分に進行せず、硫黄分、窒素分を所定量まで低減することができなくなるため好ましくない。また、10MPaGを超えると、装置建設費用及び運転における水素費用が増大し、経済性が低下するため好ましくない。
【0021】
LHSVは1.0〜8.0h-1が好ましく、より好ましくは2.0〜5.0h-1である。LHSVが1.0h-1未満であると、経済性を確保できず好ましくない。また、LHSVが8.0h-1を超えると、水素化反応が十分に進行せず、硫黄分、窒素分を所定量まで低減することができなくなるため好ましくない。
水素/油比は10〜150NL/Lが好ましく、より好ましくは20〜70NL/L、さらに好ましくは25〜50NL/Lである。水素/油比が10NL/L未満であると、水素化反応が十分に進行せず、硫黄分、窒素分を所定量まで低減することができなくなるため好ましくない。また、水素/油比が150NL/Lを超えると、経済性が著しく低下するため好ましくない。
【0022】
水素化精製触媒としては、無機多孔質酸化物担体に元素周期表第6族の元素と第9族または第10族の元素を担持した触媒を用いることができる。元素周期表第6族の元素としてはモリブデン、タングステン、第9族の元素としてはコバルトが、第10族の元素としてはニッケルが好適に用いられる。金属含有量は、好ましくは第9族または第10族の元素が1〜10質量%、第6族の元素が2〜30質量%である。水素化処理触媒の製造方法に特に制限はないが、アルミナ、シリカ、シリカ‐アルミナのような酸化物である多孔質無機酸化物担体に前述の活性金属元素を含ませて製造することが好ましい。また、リン、ホウ素、フッ素などの元素を含むものであってよい。さらに、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、trans‐1,2‐シクロヘキサンジアミン‐N,N,N',N'‐四酢酸、ニトリロ三酢酸、クエン酸等、キレート性の有機化合物を含ませた水素化処理触媒を用いても構わない。
【0023】
前記水素化処理工程により製造された精製ナフサ留分を接触改質原料として好適に使用するには、ナフテン分の含有量(容量%)を“N”、アロマ分の含有量(容量%)を“A”としたとき、“N+2A”が25〜85容量%、好ましくは35〜70容量%、より好ましくは45〜60容量%である。“N+2A”が25容量%未満であると接触改質油の液収率が低下するため好ましくなく、85容量%を超えると接触改質時に吸熱反応である脱水素反応が過剰に起こり、反応温度が低下するため、あまり好ましくない。
硫黄分は1質量ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5質量ppm以下である。硫黄分が1質量ppmを超えると、接触改質触媒中に含まれる貴金属の硫黄による被毒の割合が著しく増加し、活性を損なうため好ましくない。
また、窒素分は1質量ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5質量ppm以下である。窒素分が1質量ppmを超えると、接触改質触媒中に含まれるアルミナの酸性が中和され、活性を損なうため好ましくない。
【0024】
[接触改質]
接触改質を行う接触改質装置や、その運転条件は特に限定されるものではなく、公知の任意の製造装置、運転条件を採用できる。接触改質装置は、白金アルミナ触媒や白金にレニウム、ゲルマニウム、すず、イリジウムなどの第二の金属を添加したバイメタリックアルミナ触媒などを使用して、沸点範囲80〜180℃程度の脱硫された脱硫直留重質ナフサを処理して高オクタン価ガソリン基材であるリフォーメートやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を得るために広く用いられている装置である。例えば石油学会編「石油精製プロセス」(講談社サイエンティフィック、1998年)に記載のあるUOPプラットフォーミングプロセス、レニフォーミングプロセス、EREパワーフォーミングプロセス、マグナフォーミングプロセスなどがある。
【0025】
反応温度は、好ましくは400〜600℃であり、より好ましくは450〜550℃である。液空間速度は、好ましくは0.5〜5h-1、より好ましくは1〜2h-1である。反応圧力は好ましくは0.1〜2MPaGであり、より好ましくは0.2〜1.5MPaGである。反応に使用する水素の純度は好ましくは70〜90vol%であり、より好ましくは75〜85vol%である。水素/油比は好ましくは250〜500NL/Lであり、より好ましくは350〜400NL/Lである。
【0026】
接触改質装置で得られたBTXを高濃度に含む留分は、引き続き関連装置(抽出装置、不均化装置、トランスアルキル化装置、吸着装置等)において、目的とする化合物に変換または分離される。これらの処理を経て、付加価値の高いBTXのような基礎石油化学品留分が得られる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら制限されるものではない。
尚、炭化水素油の性状分析法は下記の方法で行った。
・密度:JIS K2249「原油及び石油製品密度試験法」
・蒸留性状:JIS K2254「蒸留試験法」
・アロマ分、ナフテン分:ガスクロマトグラフィー(GC‐PIONA)による測定
・硫黄分:JIS K2541‐6「硫黄分試験方法(紫外蛍光法)」
・窒素分:JIS K2609「窒素分試験方法」
・窒素タイプ:化学発光窒素検出器(NCD)を備えたガスクロマトグラフィー(GC‐NCD)による測定。アニリン類の量は、アニリン及びアニリンのアルキル置換誘導体を窒素換算した合計量で算出。
【0028】
(原料ナフサ留分の調製)
表1に示す性状の接触分解ガソリンと直留ナフサを混合油中の接触分解ガソリンの割合がそれぞれ、5、15、25容量%となるよう混合し、表2に示す性状の原料油A、B、Cを調製した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
(実施例1)
原料油Aを反応温度320℃、水素分圧1.5MPaG、LHSV2.7h-1、水素/油比34NL/Lの条件下、市販の水素化精製触媒であるNiMo触媒(ART社製 HOP‐461)を充填した固定床流通式反応装置を用いて水素化精製処理を実施した。結果を表3に示す。
(実施例2)
原料油Aを原料油Bとした以外は実施例1と同様の水素化精製処理を実施した。結果を表3に示す。
【0032】
(比較例1)
反応温度を260℃とした以外は実施例2と同様に水素化精製処理を実施した。結果を表3に示す。
(比較例2)
原料油Aを原料油Cとした以外は実施例1と同様の水素化精製処理を実施した。結果を表3に示す。
(参考例)
原料油Aを直留ナフサとした以外は実施例1と同様の水素化精製処理を実施した。結果を表3に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
表3の結果から明らかなように、本発明の原料ナフサ留分のアニリン類を窒素として5質量ppm以下にし、適切な水素化精製条件で水素化精製処理した実施例1及び2は、アロマ分の低減も起こらず、硫黄分や窒素分も低く、接触改質原料として優れていることが分かる。これに対して、原料ナフサ留分のアニリン類が窒素として5質量ppm以下であっても、反応温度が低い条件で水素化精製処理した比較例1は、硫黄分や窒素分が高く、また、原料ナフサ留分のアニリン類が窒素として5質量ppm以上のものは、窒素分が高く、接触改質原料として不適格であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、石油精製プロセスにおいて、重質油から得られる比較的コストの安い接触分解ガソリンを接触改質装置の原料油として利用でき、低コストでオクタン価の高いガソリン基材や高付加価値のBTXに代表されるアルキルベンゼン類を製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触分解ガソリンを含有し、アニリン類が窒素として5質量ppm以下である原料ナフサ留分を、水素存在下、反応温度280〜350℃、水素分圧が0.5〜10MPaG、LHSVが1.0〜8.0h-1、水素/油比が10〜150NL/Lで水素化精製触媒と接触させ、硫黄分1ppm以下の精製ナフサ留分を得ることを特徴とする接触改質原料油の製造方法。
【請求項2】
原料ナフサ留分と精製ナフサ留分のアロマ分の差が1容量%以下である請求項1に記載の接触改質原料の製造方法。

【公開番号】特開2011−195701(P2011−195701A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63674(P2010−63674)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】