説明

掻込リールのタイン取付け構造

【課題】取付け孔を上下に貫通形成した丸パイプ材とノッチを切欠き形成した支持部の溶接位置を正確に合わさないと、樹脂成形されたタインが着脱しにくくなるという課題があった。
【解決手段】タイン(33)をタイン取付杆(32)に装着時は、抜け止め部(43)が取付孔(41)の孔径より径大の状態でタイン取付杆(32)の上部に突出することで、タイン(33)の下方への脱落を阻止し、挟持部(44)の開放部(49)がタイン取付杆(32)の前後幅より小さい間隔を維持した状態で、前側挟持片(44a)及び後側挟持片(44b)によりタイン取付杆(32)を挟持することで、タイン(33)の左右への回転を阻止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通型のコンバインなどに備えられる掻込みリールのタイン取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記掻込みリールは、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン取付け杆に多数本のタインを並列装着して構成されており、従来では、タイン取付け杆に上下に貫通する取付け孔を形成し、樹脂製タインの上部に取付け孔に下方から挿通突出される連結部を形成するとともに、この連結部の上端突出部には、取付け孔の孔縁に上方から係合する弾性変形可能な抜止め爪を形成し、かつ、タインにおける前記連結部より下方に離れた箇所には、タイン取付け杆から下方に延出された支持部に係合される係合部を形成し、支持部と係合部との係合によってタインの前後左右への振れを阻止するよう構成していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のものは、タイン取付け杆を構成する丸パイプ材の長手方向に所定ピッチで丸孔からなる取付け孔を上下に貫通形成するとともに、タイン取付け杆の下面には取付け孔の機体前側に偏位して縦板材からなる支持部を、取付け杆長手方向に沿って溶接固定して下方に延出していて、ノッチが切欠き形成されているので、取付け孔上下に貫通形成した丸パイプ材とノッチを切欠き形成した支持部の溶接位置を正確に合わさないと、樹脂成形されたタインが着脱しにくくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、左右のリールフレーム31に亘って支持した円筒状のタイン取付杆32に、樹脂製のタイン33を複数本並列状に係止した掻込リールのタイン取付け構造において、前記タイン取付杆32には、上下に貫通する取付孔41を形成し、前記タイン33の上部には、前記取付孔41に下方から挿入されると共に、前記タイン取付杆32にタイン33を係止するタイン側係止部42を形成し、前記タイン側係止部42を、前記タイン取付杆32に取り付けた前記タイン33が下方に脱落しないように係止する抜け止め部43と、前記タイン33が前記タイン側係止部42の挿入方向を軸に左右に回転しないように係止する挟持部44により構成し、前記抜け止め部43を、前記取付孔41を通過できない状態から、前記取付孔41を通過できる状態に弾性変形可能に、前記タイン側係止部42の先端側に突出形成し、前記挟持部44を、前記タイン取付杆32の前後及び下方を囲うように挟持する前側挟持片44a及び後側挟持片44bを、前記タイン側係止部42の基端側に側面視U字状に突出形成させ、前記タイン取付杆32の前後幅より小さい間隔で上方が開放する開放部49を、前記前側挟持片44aと後側挟持片44bとの間に形成することにより構成し、前記タイン33を前記タイン取付杆32に装着時は、前記抜け止め部43が前記取付孔41の孔径より径大の状態で前記タイン取付杆32の上部に突出することで、前記タイン33の下方への脱落を阻止し、前記挟持部44の前記開放部49が前記タイン取付杆32の前後幅より小さい間隔を維持した状態で、前記前側挟持片44a及び後側挟持片44bにより前記タイン取付杆32を挟持することで、前記タイン33の左右への回転を阻止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によると、タインをタイン取付杆に装着時は、抜け止め部が取付孔を通過できない状態でタイン取付杆の上部に突出することで、タインの下方への脱落を阻止し、挟持部の開放部がタイン取付杆の前後幅より小さい間隔を維持した状態で、前側挟持片及び後側挟持片によりタイン取付杆を挟持することで、タインの左右への回転を阻止することにより、工具を使わずにタインの着脱を簡単に行えると共に、上下に貫通する取付孔を形成するだけでタイン取付杆を構成したので、加工誤差を最小限にできて樹脂成形されたタインをスムーズに着脱することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの左側面図。
【図2】刈取部の左側面図。
【図3】樹脂製タイン取付構造図であり、(A)は左側面図、(B)は背面図。
【図4】樹脂製タインのタイン側係止部詳細図であり、(A)はタインをタイン取付杆に取り付けた左側断面図、(B)はタインをタイン取付杆から取り外した左側面図、(C)はタインをタイン取付杆に取り付けた背面側断面図、(D)はタインをタイン取付杆から取り外した背面図。
【図5】コンバインの動力伝達系統図。
【図6】バネ線材製タイン取付構造図であり、(A)は左側面図、(B)は背面図、(C)は平面図、(D)は左右プレート分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面に基づいて本発明の実施形態に係るコンバインについて説明をする。なお、説明中の方向は作業者が機体に着座した状態を基準として考えるものとする。
【0009】
[コンバインの概要]
図1はコンバインの左側面図である。
コンバイン1は普通型コンバインであり、左右一対のクローラ走行装置2を備えた機体3に運転部4、軸流型の脱穀装置6、および、穀粒タンク7が搭載されるとともに、前記脱穀装置6の前部に上下揺動自在に刈取り作物搬送用のフィーダ8が連結され、このフィーダ8の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取部9が連結された構造となっており、フィーダ8と刈取部9で前処理部10を構成している。
【0010】
[前処理部の構成]
図2は前処理部の左側面図である。
前処理部10の前部に位置する刈取部9は、左右一対の分草フレーム11に亘って刈取装置12、および、刈り取った作物を横送りしてフィーダ8の始端部に送り込む掻込オーガ13が架設された構造となっており、フィーダ8と機体3との間に架設された油圧シリンダ14の伸縮作動によって、刈取部9がフィーダ8と一体に揺動昇降されるようになっている。
刈取部9の前部上方には、植立した作物を後方に掻き込んで引き上げる掻込みリール16が備えられている。
また、フィーダ8にはチェーン式の搬送コンベア8Aが内装されている。
【0011】
[掻込みリールの支持構成]
掻込みリール16は、支点a周りに上下揺動自在な左右一対の支持アーム21の前部に支持ブラケット22を介して支持されており、左右一対の油圧シリンダ23によって支持アーム21を上下揺動することで、掻込みリール16の掻込み作用高さを変更することができるとともに、支持アーム21を電動油圧シリンダ24によりスライド調節することで、掻込み作用位置を前後に調節することが可能となっている。
【0012】
[掻込みリールの構成]
掻込みリール16は、側面形状が六角形に構成されたリールフレーム31、その各角部に回転可能に横架した円筒状のタイン取付杆32、各タイン取付杆32に並列装着される複数本のタイン33で構成されている。
そして、リールフレーム31の前方への公転に対応してタイン取付杆32が逆方向に同速度で相対自転されることで、リールフレーム31の回転にかかわらずタイン取付杆32に支持されたタイン33は常時一定姿勢になるように構成されており、これによって各タイン取付杆32に取付けられたタイン33が常時下向きの掻き込み姿勢に維持されるようになっている。
【0013】
[タイン取付杆の構成]
図3は樹脂製タイン取付構造図であり、(A)は左側面図、(B)は背面図、図4は樹脂製タインのタイン側係止部詳細図であり、(A)はタインをタイン取付杆に取り付けた左側断面図(図3のA−A矢視図)、(B)はタインをタイン取付杆から取り外した左側面図、(C)はタインをタイン取付杆に取り付けた背面側断面図(図3のB−B矢視図)、(D)はタインをタイン取付杆から取り外した背面図である。
タイン取付杆32は丸パイプ材で構成されており、その長手方向に所定ピッチで丸孔からなる取付孔41が上下に貫通形成されている。取付孔41は、上側取付孔41aと下側取付孔41bは同一径に形成されている。
【0014】
[タインの構成]
タイン33は樹脂成形されたものであり、タイン33の下部には掻き込み方向である後方に向けて緩やかに湾曲形成された掻込作用部33aが形成され、タイン33の上部には取付孔41に下方から挿入されると共に、タイン取付杆32にタイン33を係止するタイン側係止部42が形成されている。
タイン側係止部42は、タイン取付杆32に取り付けたタイン33が下方に脱落しないように係止する抜け止め部43と、タイン33がタイン側係止部42の挿入方向を軸に左右に回転しないように係止する挟持部44により構成している。
タイン側係止部42の先端側である抜け止め部43の基端部に設けた軸部46の先端には、上側取付孔41aの孔縁に上方から係止されて、上側取付孔41aを通過できない大きさである前後一対の抜け止め爪47が突出形成されている。
この抜け止め爪47の先端は先細りテーパー状に形成されるとともに、前後一対の抜け止め爪47及び軸部46の間にはスリット48が形成され、スリット48が形成された軸部46を内向きに弾性変形することで、抜け止め爪47の爪先が上側取付孔41aを通過できる大きさに縮小されるようになっている。
また、挟持部44を、タイン取付杆32の前後及び下方を囲うように挟持する前側挟持片44a及び後側挟持片44bを、前記タイン側係止部42の基端側に側面視U字状に突出形成させ、前記タイン取付杆32の前後幅より小さい間隔で上方が開放する開放部49を、前記前側挟持片44a及び後側挟持片44bとの間に形成することにより構成している。
【0015】
[タイン取付構成]
よって、タイン33をタイン取付杆32に装着時は、抜け止め部43の抜け止め爪47が上側取付孔41aを通過できない状態でタイン取付杆32の上部に突出することで、タイン33の下方への脱落を阻止し、挟持部44の開放部49がタイン取付杆32の前後幅より小さい間隔を維持した状態で、前側挟持片44a及び後側挟持片44bによりタイン取付杆32を挟持することで、タイン33の左右への回転を阻止することにより、工具を使わずにタイン33の着脱を簡単に行えると共に、上下に貫通する取付孔41を形成するだけでタイン取付杆32を構成したので、加工誤差を最小限にできて樹脂成形されたタインをスムーズに着脱することが可能になる。
【0016】
[前処理部伝動構造]
図5は、動力伝達系統図である。
機体3に搭載したエンジン61の動力は、コンバイン1を前後進駆動する走行トランスミッション62を介してクローラ走行装置2の駆動スプロケット63に伝動すると共に、脱穀クラッチ64及び刈取クラッチ66を介して前処理入力軸67に伝動している。
前処理入力軸67に伝動した動力は、フィーダ8の搬送コンベア8Aを駆動するフィーダ駆動軸68に伝動し、中間軸69を介して刈取装置12と掻込オーガ13と掻込みリール16とに伝動している。
掻込みリール16と中間軸69との間には、掻込みリール16の回転速度を任意に変速するベルト無段変速装置70を備えている。
【0017】
[前処理部逆転構造]
前処理入力軸67の刈取クラッチ66とは反対側の軸端には、ワンウェイクラッチ71を介して電動アシスト装置72が設けてあり、ワンウェイクラッチ71の軸端には手動で前処理入力軸67を駆動するクランクレバー73が着脱自在に設けてある。
電動アシスト装置72は一般的な構造であり詳細は省略するが、クランクレバー73からの駆動トルクをトルクセンサにより検出すると、電動アシスト装置72に設けた電動モータ74を駆動してアシスト動力を前処理入力軸67を駆動するように構成されている。
これにより、例えば前処理部10のフィーダ8に刈り取った作物が詰まった場合には、エンジン61を作動させた状態で脱穀クラッチ64及び刈取クラッチ66を切断した後、オペレータがクランクレバー73を電動アシスト装置72に装着して矢印A方向に回転させると、電動モータ74がアシスト駆動してフィーダ8の搬送コンベア8Aが搬送方向とは逆回転することにより、電動アシスト装置72が装着されていないものと比較して軽い力で逆転駆動できて、フィーダ8に詰まった作物を素早く除去できるものである。
また、電動アシスト装置72用のバッテリを別途設けることで、短時間であればエンジン61を停止した状態でも前処理部10を逆転駆動できる。
また、整備するために屋内で逆転駆動させる場合は、バッテリを介して家庭用電源に接続できるようにすることで、排気ガスを気にすることなく安全に作業できる。
【0018】
[バネ線材製タインの構成]
図6はバネ線材製タイン取付構造図であり、(A)は左側面図、(B)は背面図、(C)は平面図、(D)は左右プレート分解斜視図である。
タイン取付杆81は丸パイプ材で構成されており、タイン取付杆81を貫通する左右のプレート82A,82Bを併設してリール側係止部82を構成している。
タイン83はバネ線材製であり、タイン83の上部には、タイン83をリール側係止部82の上方から挿入した際に、タイン取付杆81にタイン83を係止するタイン側係止部84を形成している。
タイン側係止部84を、タイン取付杆81の前後及び上方を囲うように挟持する挟持部84aと、タイン取付杆81の前後幅より小さい間隔で下方が開放する開放部84bにより、タイン83の上端を後方に向けて側面視逆U字状に曲げ形成して構成している。
リール側係止部82の前部には、タイン側係止部84の基端側前面に接する垂直面を有する前部係止片82aを左プレート82Aに一体的に曲げ形成している。
リール側係止部82の下部には、タイン側係止部84の基端側後面が接する前片と、タイン側係止部84の先端側前面が接する後片とを有する下部係止片82bを右プレート82Bに一体的に曲げ形成している。
よって、タイン83をリール側係止部82に装着時は、タイン側係止部84の左右両側面がリール側係止部82の左右のプレート82A,82Bの内側面に常時接することで、タイン83の左右傾倒を阻止している。
また、タイン側係止部84の基端側前面が前部係止片82aの垂直面に常時接し、タイン側係止部84の基端側後面が下部係止片82bの前片に常時接すると共に、タイン側係止部84の先端側前面が下部係止片82bの後片と常時接することで、タイン83の前後傾倒を阻止している。
そして、タイン側係止部84の開放部84bがタイン取付杆81の前後幅より小さい間隔を維持した状態で、挟持部84aによりタイン取付杆81を挟持することで、タイン83の上方への脱落を阻止している。
【符号の説明】
【0019】
31 リールフレーム
32 タイン取付杆
33 タイン
41 取付孔
42 タイン側係止部
43 抜け止め部
44 挟持部
44a 前側挟持片
44b 後側挟持片
49 開放部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のリールフレーム(31)に亘って支持した円筒状のタイン取付杆(32)に、樹脂製のタイン(33)を複数本並列状に係止した掻込リールのタイン取付け構造において、
前記タイン取付杆(32)には、上下に貫通する取付孔(41)を形成し、
前記タイン(33)の上部には、前記取付孔(41)に下方から挿入されると共に、前記タイン取付杆(32)にタイン(33)を係止するタイン側係止部(42)を形成し、
前記タイン側係止部(42)を、前記タイン取付杆(32)に取り付けた前記タイン(33)が下方に脱落しないように係止する抜け止め部(43)と、前記タイン(33)が前記タイン側係止部(42)の挿入方向を軸に左右に回転しないように係止する挟持部(44)により構成し、
前記抜け止め部(43)を、前記取付孔(41)を通過できない状態から、前記取付孔(41)を通過できる状態に弾性変形可能に、前記タイン側係止部(42)の先端側に突出形成し、
前記挟持部(44)を、前記タイン取付杆(32)の前後及び下方を囲うように挟持する前側挟持片(44a)及び後側挟持片(44b)を、前記タイン側係止部(42)の基端側に側面視U字状に突出形成させ、前記タイン取付杆(32)の前後幅より小さい間隔で上方が開放する開放部(49)を、前記前側挟持片(44a)と後側挟持片(44b)との間に形成することにより構成し、
前記タイン(33)を前記タイン取付杆(32)に装着時は、前記抜け止め部(43)が前記取付孔(41)の孔径より径大の状態で前記タイン取付杆(32)の上部に突出することで、前記タイン(33)の下方への脱落を阻止し、
前記挟持部(44)の前記開放部(49)が前記タイン取付杆(32)の前後幅より小さい間隔を維持した状態で、前記前側挟持片(44a)及び後側挟持片(44b)により前記タイン取付杆(32)を挟持することで、前記タイン(33)の左右への回転を阻止することを特徴とする掻込リールのタイン取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13348(P2013−13348A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146998(P2011−146998)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】