説明

描画タイル及びその製造方法

【課題】雨などの水分にも耐えうる描画タイル及びタイルへの描画方法を提供する。
【解決手段】撥水性を有する下地層104及びコーティング層108によって挟まれたインク106を塗布する。下地層104及びコーティング層108のいずれかは、インク106に含有されている材料を含む。下地層104は、インク106との接触面を荒している。描画タイルを床材としても用いる場合には、コーティング層108に滑り止め用の骨材110を配す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を印刷した描画タイル及びその製造方法に関し、特に、インクジェットプリンタを用いて画像を印刷した描画タイル及びその製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において、「タイル」には、陶器、磁器、プラスチック、金属が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、タイル素材の上面部分に下地処理を施し、該下地処理の表面部分に直接インクジェット式作画機で作画して絵柄処理するとともに、絵柄処理された表面部分に耐摩耗性及び耐久性に優れたコーティング層を形成するタイルの製造方法が開示されている。
【0004】
このタイルの製造方法によれば、タイル素材の表面に下地処理として例えば酢酸ビニール溶液を塗着すると、この酢酸ビニールがタイル素材の表面に確りと付着し、その表面部分が親水性を有する状態となる。この親水性を有する表面部分にインクジェット式作画機で所望する絵柄を作ると、噴射されたインクは酢酸ビニールに浸透する、とされている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−317803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されているタイルは、その表面部分が親水性を有するため、雨などの水分によって、描画した画像がにじむという問題がある。
【0007】
また、タイルは、そもそも多孔質であるため、タイルの底面から雨などの水分が入り込めば、その水分が酢酸ビニールに付着することになる。その後、太陽光が照射されるなどして、その水分が気化する場合、体積が増加するので、描画面に膨れが生じて、描画面に割れが発生したり、クラックが発生したりといった問題も生じる。
【0008】
そこで、本発明は、雨などの水分にも耐えうる描画タイル及びタイルへの描画方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のタイルは、撥水性を有する第1及び第2の層によって挟まれたインクが塗布されている。
【0010】
第1及び第2の層のいずれかは、インクに含有されている材料を含むとよい。また、前記インク下の第1の層は、当該インクとの接触面が荒らされているとよい。これらによって、第1の層又は第2の層とインクとの間の決着力が向上するためである。
【0011】
また、インク上の第2の層に滑り止め用の骨材が配されていると、描画タイルを床材としても用いられるので好ましい。
【0012】
さらに、本発明の描画タイルの製造方法は、
タイルに撥水性を有する第1の層を形成し、
前記第1の層の上にインクを吐出し、
前記インク上に撥水性を有する第2の層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】描画タイルの模式的な製造工程図を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
100 タイル
102 ゴミ
104 下地層
106 インク
108 コーティング層
110 骨材
112 保護層
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、描画タイルの模式的な製造工程図を示す図である。
【0017】
(ステップS1)
まず、描画対象のタイル100を用意する。タイル100は、無地で表面がフラットであるものが好ましい。なお、ここでいうタイル100は、壁材等として既に施工済みのものであっても、施工前のものであってもよい。
【0018】
(ステップS2)
タイル100の表面には、ゴミ102などが付着していることがあるので、タイル100の表面を、アルコール、シンナー、ベンゼンを50〜100倍程度に薄めた塩酸希釈水又は50〜100倍程度に薄めた硫酸希釈水等の溶剤を用いて洗浄する。なお、当該洗浄は、ゴミ102が目視で付着していないと判断できる程度でよい。
【0019】
(ステップS3)
つづいて、タイル100の表面に、アクリルシリコン、エポキシ、ウレタンなどの樹脂からなる、撥水性を有する下地層104を塗布する。下地層104の厚みは、数μm〜数10μm程度でよい。なお、下地層104の材料は、インクとの決着力が強くなるように、インクジェット用インクに含有されているものが好ましい。本実施形態では、アクリルシリコンを用いた。
【0020】
(ステップS4)
つぎに、80番〜400番程度の粗さのサンドペーパを用いて、下地層104の表面を研磨することによって荒らす。具体的には、例えば、120番のサンドペーパを用いた場合には、2kg重程度の圧力で数回、タイル100表面を擦ればよい。タイル100の大きさが30cm×40cm程度の場合、30秒〜40秒ほどの時間で全面的に擦ることになる。
【0021】
(ステップS5)
その後、タイル100へ描画する画像が取り込まれたパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等をインクジェットプリンタに接続するとともに、タイル100をプリンタにセットして、デジタルカメラ等からインクジェットプリンタに対して、画像データを出力する。この結果、タイル100の下地層104上には、インクジェットプリンタから吐出されたインク106によって、描画がなされる。
【0022】
(ステップS6)
それから、選択的に、インク106の表面に、熱硬化型、紫外線硬化型、光硬化型などのコーティング層108を塗布する。コーティング層108は、インク106が目視できるように透明度に優れたものであれば、特段、材料等は制約されるものではない。ここでは、コーティング層108として、チルビンを含むものを用いている。この他にも、コーティング層108には、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、エポキシ化合物、オリゴエステルアクリレート樹脂、感光性ポリイミド、アミノアルキルド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などのなかから適宜用いることができる。
【0023】
本実施形態では、アイカ工業社から発売されている変性ポリウレタンアクリレート樹脂を30%〜35%、酢酸ブチルを30%〜35%、メチルエチルケトン(MEK)を35%〜40%、その他添加物を1%〜5%程度の割合で混合したものを、コーティング層108として用いた。
【0024】
ここで、タイル100を床タイルとして用いる場合には、雨等が付着している場合であっても、滑らないように、コーティング層108上に骨材110等を散布してもよい。この場合、骨材110は、粒径が約150μm〜250μmのものを65%〜85%程度、粒径が約75μm〜150μmのものを15%〜25%程度の割合とするよい。本実施形態では、骨材110として、透明性に優れたセラミック又は樹脂ビーズを用いた。
【0025】
(ステップS7)
つぎに、コーティング層108を塗布した場合には、コーティング層108に対して、所要の条件で、熱照射、紫外線照射又は光照射を行なう。
【0026】
(ステップS8)
最後に、コーティング層108上に、保護層112を形成する。保護層112は、例えば、変性ポリウレタンアクリレート樹脂を45%〜55%、アクリルモノマーを40%〜45%、その他添加物を1%〜5%程度の割合で混合したものとした。保護層112の材料は、紫外線照射などにより硬化され、これにより、保護層112が形成される。なお、保護層112は、耐摩耗性及び耐久性など、つまり強度に優れ、かつ、透明性を有しているものであれば、特段、材料等が限定されるものではない。
【0027】
一例としては、保護層112は、さらに、耐衝撃性、耐摩耗性を向上させるために、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)繊維又はガラス繊維(日東紡株式会社のグラスファイバー:フィラメントマットMF30Wなど)を混入することができる。具体的には、まず、たとえば300mmの大きさのタイル100に用いる場合には、FRP繊維等は、これを270mm〜295mmに断裁するなどして、所要の大きさにしておく。
【0028】
そして、変性ポリウレタンアクリレート樹脂等からなる保護層112の材料を、コーティング層108上に塗布してから、保護層112の材料上にFRP繊維等を位置合わせして配する。この時、保護層112の材料とFRP繊維等との間に気泡が残らないように空気抜きを行い、その後、再び保護層112の材料を、FRP繊維等の上に塗布し、必要に応じて骨材110を撒いてから、紫外線照射などにより保護層112の材料を硬化させ、保護層112を形成する。
【0029】
なお、描画タイルの耐久性のシミュレーションを行なった。従来のタイルの場合、3年程度でインクが落ち、描画が確認しづらくなった。一方、本実施形態の描画タイルの場合には、10年程度までインク落ちが見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性を有する第1及び第2の層によって挟まれたインクが塗布されている描画タイル。
【請求項2】
前記第1及び第2の層のいずれかは、前記インクに含有されている材料を含む、請求項1記載の描画タイル。
【請求項3】
前記インク上の第2の層に滑り止め用の骨材が配されている、請求項1記載の描画タイル。
【請求項4】
前記インク下の第1の層は、当該インクとの接触面が荒らされている、請求項1記載の描画タイル。
【請求項5】
前記インク上の第2の層上に、選択的に繊維を含む保護層が形成される、請求項1記載の描画タイル。
【請求項6】
タイルに撥水性を有する第1の層を形成し、
前記第1の層の上にインクを吐出し、
前記インク上に撥水性を有する第2の層を形成する、描画タイルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−226933(P2009−226933A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29402(P2009−29402)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(593135295)株式会社金羊社 (3)
【Fターム(参考)】