説明

提灯

【課題】支脚を有する据え置き型の提灯において、台盤に取り付けた支脚の脱落を防止すると共に台盤に設けられる火袋止め具の取り付け構造を無駄のない合理的な構造として、製造時における工程の低減と台盤の損傷の回避を図った提灯を提供する。
【解決手段】提灯(A)の台盤(1)の下面側には各支脚(2)の差込部を差し込む支脚取付孔が設けられ、差込部が支脚取付孔に差し込まれた各支脚(2)は、台盤(1)の上面側から台盤(1)を通して差込部にネジ込まれる固定用ネジ(8)によって台盤(1)に固定され、台盤(1)には火袋(6)の下部を止める火袋止め具(7)が支脚(2)と同数取り付けられており、火袋止め具(7)は台盤(1)に支脚(2)を固定する固定用ネジ(8)によって台盤(1)の上面側に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、提灯に関するものである。更に詳しくは、主に盆提灯として使用され支脚を有する据え置き型の提灯において、台盤に取り付けた支脚の脱落を防止すると共に台盤に設けられる火袋止め具の取り付け構造を無駄のない合理的な構造として、製造時における工程の低減と台盤の損傷の回避を図った提灯に関する。
【背景技術】
【0002】
支脚を有する据え置き型の提灯(行燈とも称される)は、主に盆提灯として使用されている。この提灯は、円形の台盤(ツバ・ろくろ)と、台盤の下側に設けられる三本の支脚(下足)と、支脚の間隔を整える連結具(三角)、台盤の上側に設けられる二本の柱(上足)と、各柱の上部に渡して設けられる取手(手・雲手)と、台盤の上側に各柱を覆うように設けられる火袋で構成されている。なお、前記部品名で括弧内は業界で一般的に使用されている名称を表したものである。
【0003】
旧来の前記提灯は、支脚の上端の差込部が台盤の穴にややきつく差し込まれているだけであり、特に長年の使用に際し抜き差しを繰り返すことによって嵌め合い部が緩んでしまう問題があった。嵌め合い部が緩んでしまうと、例えば取手を持って提灯を移動させる際等に支脚のうち一本または全部が台盤から抜け落ち、連結具も外れてばらばらになることがあり、修復に手間がかかる面倒があった。
【0004】
このような問題を解消するために、例えば特許文献1、2に示すような、支脚を台盤にネジ等の固定手段を使用して固定する提灯が提案されている。
特許文献1に記載の提灯は、各支脚を台盤の上面側からネジ込んだネジによって固定するものである。また、特許文献2に記載の提灯は、支脚の上部に取り付けた係止具を、台盤に設けてあり係止具専用に加工した挿着部に係止させて、各支脚を固定するものである。
【0005】
【特許文献1】実開昭60−3508号
【特許文献2】実用新案登録第3104936号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の各提灯には次のような課題があった。
すなわち、前記各提灯は、台盤に対する各支脚の固定を確実に行うことができるため支脚が脱落せず、旧来の提灯のように脱落した支脚を修復する面倒も生じない。
しかしながら、火袋の下部を台盤に止める火袋止め具は、台盤において支脚の取付部とは別の所に設けられている(特許文献2参照)。したがって、提灯の製造にあたっては、火袋止め具の取り付けを支脚の取付部の加工とは別に行わなければならないため、その分工程が増える。
また、火袋止め具の取り付けを簡単にするため、例えば旧来のように釘打ちによって行う場合は、塗装した台盤の表面をハンマーで叩いて傷を付けてしまうおそれがあった。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、支脚を有する据え置き型の提灯において、台盤に取り付けた支脚の脱落を防止すると共に台盤に設けられる火袋止め具の取り付け構造を無駄のない合理的な構造として、製造時における工程の低減と台盤の損傷の回避を図った提灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
台盤、柱、取手、支脚及び火袋を有し、支脚を固定要素により台盤に固定した据え置き型の提灯であって、
台盤には火袋の下部を止める所要数の火袋止め具が取り付けられており、火袋止め具は台盤に支脚を固定する前記固定要素によって台盤に取り付けられている、
提灯である。
【0009】
本発明は、
台盤、柱、取手、支脚及び火袋を有し、支脚を固定用ネジにより台盤に固定した据え置き型の提灯であって、
台盤の下面側には各支脚の差込部を差し込む取付孔が設けられ、差込部が取付孔に差し込まれた各支脚は、台盤の上面側から台盤を通して差込部にネジ込まれる固定用ネジによって台盤に固定するようにしてあり、
台盤には火袋の下部を止める火袋止め具が支脚と同数取り付けられており、火袋止め具は台盤に支脚を固定する前記固定用ネジによって台盤の上面側に取り付けられている、
提灯である。
【0010】
本発明にいう「固定要素」とは、各種ネジの他、例えばボルト、釘あるいは台盤の取付孔と協働する専用の金具等があげられるが、これらに限定するものではない。
【0011】
(作用)
本発明に係る提灯の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0012】
提灯において、台盤(1)に設けられ火袋(6)を止めるための火袋止め具(7)は、台盤(1)に支脚(2)を固定する固定用ネジ(8)等の固定要素によって台盤(1)に取り付けられている構造であるので、提灯を組み立てる際に必要な各支脚(2)を台盤(1)に固定する動作によって同時に火袋止め具(7)を取り付けることができる。
【0013】
これにより、従来の提灯のように火袋止め具を各支脚の固定部とは別の場所にあらかじめ取り付けておく必要はなく、提灯製造時における工程の低減を図ることができる。
また、固定要素として固定用ネジ(8)を使用すれば、従来のように火袋止め具を取り付けるために釘を使用した構造とは相違して、台盤(1)の損傷も回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、台盤に設けられ火袋を止めるための火袋止め具が、台盤に支脚を固定する固定用ネジ等の固定要素によって台盤に取り付けられている構造であるので、従来の提灯のように火袋止め具を各支脚の固定部とは別の場所にあらかじめ取り付けた構造のものと相違して提灯製造時における工程の低減を図ることができる。
また、固定要素として固定用ネジを使用すれば、従来のように火袋止め具を取り付けるために釘を使用した構造とは相違して、台盤の損傷も回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は本発明に係る提灯の一実施の形態を示す正面図、
図2は図1に示す提灯において火袋を想像線で表して内部を透視した斜視説明図、
図3は支脚の取付構造を示す拡大断面説明図である。
【0016】
提灯Aは、円形の台盤1、台盤1の下側に設けられる三本の支脚2、各支脚2の間隔を整える連結具3、台盤1の上側に設けられる二本の柱4、各柱4の上部に渡して設けられる取手5、台盤1の上側に各柱4を覆うように取り付けられる火袋6及び火袋6を台盤1に止める火袋止め具7で構成されている。各部を順に説明する。
【0017】
台盤1は木製で円形の板体であり、表面に塗装が施されている。台盤1は、径小でやや厚い本体部10と、その下部に設けられた径大でやや薄いフランジ部11で構成されている。本体部10の直径は、後述する火袋6の下輪60が外嵌めできるように設定されている。また、本体部10の厚さは、下輪60を嵌めたときに本体部10の上面と下輪60の上端がほぼ面一となるように、下輪60の高さと同じに形成されている。
【0018】
台盤1のほぼ中央には、電球(図示省略)等の灯具を取り付けるための灯具取付孔12が厚み方向へ貫通して設けられている。また、台盤1の上面側の直径線方向において縁部寄りの二箇所には、後述する柱4を取り付けるための口形状が四角形の柱取付孔13(図2に図示)が所要の深さに設けられている。
【0019】
さらに、台盤1の下面側には、各柱取付孔13と位置が重ならないように縁部寄りの三箇所に、後述する支脚2を取り付けるための口形状が四角形の支脚取付孔14が所要の深さに形成されている。そして、各支脚取付孔14の上部の天部140には、台盤1の上面側へ貫通したネジ挿通孔15が設けられている。
【0020】
支脚2は、上端部に差込部20が設けられている。差込部20は、台盤1の下面側に設けられた前記各支脚取付孔14にややきつく差し込むことができる太さの角棒状である。差込部20には、上面側から中心に雌ネジ部を有するネジ受21が埋設されている。また、支脚2の内側の面の中段部には、後述する連結具3の先端部を差し込む差込口22が設けられている。支脚2は、差込部20を支脚取付孔14に差し込むことによって、方向と差込部20の軸周方向の角度があらかじめ設定されている通りに固定される。
【0021】
各支脚取付孔14に差し込まれた各支脚2の差込部20のネジ受21には、台盤1の上面側からネジ挿通孔15を通して固定用ネジ8がネジ込まれている。固定用ネジ8はネジ部80を有し、その基端部にはツマミとなる径大なヘッド部81が固定されている。台盤1には、固定用ネジ8によって火袋止め具7が取り付けられている。
【0022】
火袋止め具7は金属製の細板状で、基部寄りには通し孔70が設けられ、先側は火袋6の下輪60を止める際に作業がしやすいように一部が上方へやや傾斜させてある。
火袋止め具7は、通し孔70をネジ部80に嵌め入れ、さらに固定用ネジ8を締め付けてヘッド部81と台盤1上面で通し孔70の回りを締め付けることにより、台盤1に固定されている。また、固定用ネジ8を緩めれば、火袋止め具7のネジ部80を中心とする方向を自在に設定できる。なお、前記とは逆に支脚2の差込部20にネジを立て、ネジ挿通孔15を通って台盤1上面に突出したネジにナットを螺合して火袋止め具7を取り付ける構造としてもよい。
【0023】
連結具3は、いわゆる三角といわれるもので、周方向へ等角度で三箇所に放射状に設けられた差込部30を有している。連結具3は、台盤1に取り付けられた三本の支脚2の各差込口22に差込部30を差し込んで各支脚2をつなぐようにして装着される。
なお、各支脚2は、前記のように方向と差込部20の軸周方向の角度があらかじめ設定されている通りに固定されており、しかも後述するように台盤1にネジ止めされるので、連結具3は必ずしも必要としない。
【0024】
柱4は、下端部に差込部40(図1に図示)が設けられている。差込部40は、台盤1の上面側に設けられた前記各柱取付孔13にややきつく差し込むことができる太さの角棒状である。
柱4は、差込部40を各柱取付孔13に差し込むことによって、方向(垂直方向)と差込部40の軸周方向の角度があらかじめ設定されている通りに固定される。各柱4の上部には、雲を象った取手5がダボによって取り付けられている。なお、各柱4は各支脚2と同様にネジ止めにより台盤1に固定することもできる。また、取手5も柱4にネジ止めすることができる。
【0025】
火袋6は、下輪60と上輪61及び中袋62により構成されている。中袋62は螺旋状に巻いた骨に和紙等を張り付けて形成されている。
火袋6は、まず下輪60を台盤1の本体部10に嵌め込み、前記各火袋止め具7を回して下輪60上部を押さえ、さらに中袋62を伸ばして、上輪61に二箇所に設けてある吊り紐63を各柱4の上部外面側に設けてあるピン41に掛けて装着される。
【0026】
(作用)
図1ないし図3を参照して、本実施の形態に係る提灯Aの作用を説明する。
提灯Aを組み立てる際には、まず、台盤1の各支脚取付孔14に差込部20を差し込んで各支脚2を仮止めし、各支脚2間に連結具3を取り付ける。
【0027】
次に、固定用ネジ8のネジ部80を火袋止め具7の通し孔70に差し込み、ネジ挿通孔15からネジ部80を入れて支脚2の差込部20のネジ受21にネジ込み、火袋止め具7の先部が台盤1の本体部10の縁からはみ出さないようにして適当な力で締め付けておく。これにより、各支脚2は台盤1に固定されており、抜け外れることはない。
【0028】
このように、火袋止め具7は、台盤1に各支脚2を固定する固定用ネジ8によって台盤1に取り付けられている構造であるので、提灯Aを組み立てる際に必要な各支脚2を台盤1に固定する動作によって同時に火袋止め具7を取り付けることができ、合理的である。
【0029】
これにより、従来の提灯のように火袋止め具を各支脚の固定部とは別の場所にあらかじめ取り付けておく必要はなく、提灯製造時における工程の低減を図ることができる。
また、火袋止め具7は固定用ネジ8で台盤1に取り付けられるので、例えば釘を使用した構造とは相違して、台盤の損傷も回避することができる。
【0030】
後は、台盤1の各柱取付孔13に柱4を取り付け、火袋6を各柱4に通し、下輪60を台盤1の本体部10に嵌め込み、各火袋止め具7を回して下輪60上部を押さえる。柱4上部に取手5を取り付け、火袋6の中袋62を伸ばして吊り紐63を各柱4のピン41に掛けて装着する。
【0031】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る提灯の一実施の形態を示す正面図。
【図2】図1に示す提灯において火袋を想像線で表して内部を透視した斜視説明図。
【図3】支脚の取付構造を示す拡大断面説明図。
【符号の説明】
【0033】
A 提灯
1 台盤
10 本体部
11 フランジ部
12 灯具取付孔
13 柱取付孔
14 支脚取付孔
140 天部
15 ネジ挿通孔
2 支脚
20 差込部
21 ネジ受
22 差込口
3 連結具
30 差込部
4 柱
41 ピン
5 取手
6 火袋
60 下輪
61 上輪
62 中袋
63 吊り紐
7 火袋止め具
70 通し孔
8 固定用ネジ
80 ネジ部
81 ヘッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台盤(1)、柱(4)、取手(5)、支脚(2)及び火袋(6)を有し、支脚(2)を固定要素(8)により台盤(1)に固定した据え置き型の提灯であって、
台盤(1)には火袋(6)の下部を止める所要数の火袋止め具(7)が取り付けられており、火袋止め具(7)は台盤(1)に支脚(2)を固定する前記固定要素(8)によって台盤(1)に取り付けられている、
提灯。
【請求項2】
台盤(1)、柱(4)、取手(5)、支脚(2)及び火袋(6)を有し、支脚(2)を固定用ネジ(8)により台盤(1)に固定した据え置き型の提灯であって、
台盤(1)の下面側には各支脚(2)の差込部(20)を差し込む取付孔(14)が設けられ、差込部(20)が取付孔(14)に差し込まれた各支脚(2)は、台盤(1)の上面側から台盤(1)を通して差込部(20)にネジ込まれる固定用ネジ(8)によって台盤(1)に固定するようにしてあり、
台盤(1)には火袋(6)の下部を止める火袋止め具(7)が支脚(2)と同数取り付けられており、火袋止め具(7)は台盤(1)に支脚(2)を固定する前記固定用ネジ(8)によって台盤(1)の上面側に取り付けられている、
提灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−157408(P2010−157408A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334541(P2008−334541)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(592244778)株式会社ヤマグチ (2)
【Fターム(参考)】