説明

揚水体型植物養生基盤

【課題】対象となる植物を養生するために必須となる水の給水体が生きたミズゴケ、乾燥ミズゴケおよび石質体に限らない揚水体を提供する。
【解決手段】水あるいは生物を生存・増殖させる水溶液を流せることが可能な開放部位をもつ輸送構造体3の上部より下の位置に別の水溶液出口をもつことを特徴とする植生基盤4、または液体を溜める部位から水あるいは生物を生存・増殖させる水溶液を輸送することができる構造体をもつ植生基盤4において、輸送部から植物養生部に液体を湿潤させることが可能な揚水体1を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植生基盤、具体的にはコケ植物全般、草本性植物全般、低木性の木本植物全般、および木本性植物の苗の養生を行うことを主要な目的とする植生基盤、および、その使用方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
これまでに、ミズゴケがもつ特性およびこれを用いた植物栽培増殖に関する研究により、ミズゴケあるいは乾燥させたミズゴケを介してコケ植物およびその他植物の栽培・増殖、さらには絶滅危惧植物であるミズゴケ属に属する種を含むその他希少種が安定かつ容易に大量栽培することが可能になった。さらに、溶液を溜めることの可能な構造体から養生面である石質基盤に浸潤させることで、ミズゴケあるいはこれを乾燥させた物体を介することなく、これら植物を養生させることに成功した。この発明はミズゴケを介しての養生基盤とともに、現在、ダムや湖水でのフロー栽培ならびに自然環境に生息する環境修復など屋外条件下を前提としたフィールドだけでなく屋上緑化、さらには壁面緑化におけるミズゴケ、ミズゴケ以外のコケ植物、またはシダ植物を含む維管束植物の生育基盤とし大きく貢献している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
均一に水を湿潤させるための解消方法として、これまでは、緑化資材として植物を養生させる機能をもたせるためには、水溜め場から供給される水を、植生部位である場所にミズゴケやこれを乾燥させた物体、あるいは保水能力をもつ限定された素材の石質を介さなければならないという問題点があった。これら問題点を克服することの可能な技術の提供が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者はこの課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、(1)水を流すことが可能な構造体の上部以外に、別の水出口をもつことを特徴とする植生基板、または(2)溶液を溜めることの可能な構造体から液体を輸送しそこから養生面に浸潤させる植生基盤において、輸送部と植物養生部との間に揚水させる構造領域を設けることで、ミズゴケ、これを乾燥させた物体、あるいは保水性の高い特定の石質を介することなく、養生部に液体を湿潤させ、かつ対象となる植物を養生させることに成功した。この養生基盤を提供することにより、上記の課題を解決できる本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、水を溜める構造の有無にかかわらず養生液を流せることが可能な輸送体を利用している植生基盤であれば、この輸送構造部と植物養生部との間に揚水体をもたせ、これを介して養生液を浸潤させることで、植物の養生が行えることを特徴とする植生基盤の使用方法を提供する発明である。
【0006】
なお、「ミズゴケ」とは、特に断らない限り、野生に生えた状態と実質的に同一の状態の生長可能なミズゴケである。また、「乾燥ミズゴケ」とは、前記の生長可能なミズゴケに加熱滅菌処理を施したミズゴケのことを意味し(市販品も可)、さらに、前記の生長ミズゴケを自然乾燥させて得られるミズゴケのことも意味する。いずれにしても、「乾燥ミズゴケ」とは、主に、殺菌死滅処理を加えたミズゴケ(市販品も可)を意味するものであるが、生長ミズゴケ(生命活動が維持されているミズゴケ)を単純に乾燥したものも含むものとし、その製造工程のことを特定する用語であり、それが水を含んでいるか否か、あるいは湿潤であるか否かは問題とならない。
【0007】
なお、養生液とは、特に断らない限り、任意生物を生存、生長あるいは増殖可能な全ての溶液である。また、蒸留水や培養液を含め、前記の生長可能な養生液に殺菌・消毒処理を施したものも範疇に含み(市販品も可)、さらに、前記の養生液に微生物などの生物が加えられても、自然増殖してもよい。いずれにしても、「養生液」とは、主に、水あるいは生物を生存あるいは成長・増殖させるための培養液であるものを意味するもので、生物の種類のいかんに問わず、水と同様に循環するものであれば問題とならない。
【0008】
「揚水体」は、毛細管現象による水の移動を含め、紙、布、綿、パルプなどの天然の植物性繊維素材、およびスポンジなどの化学合成系のプラスチック素材、発泡性のセラミック・陶磁、グリーンビズ、モルタル、コンクリート二次製品、レンガ、タイル、など、養生液を水位よりも上部に引き上げることが可能な構造体であればよく、その材質およびその組み合わせは特に限定されるものではない。またミズゴケ、砂岩・泥岩などの砕屑性、凝灰岩などの火砕性、氷河堆積岩などの破砕性といった堆積岩、溶岩・火山噴出物・マグマなどから形成される火成岩、あるいは生物の堆積物でできる石灰岩、人工的につくられるなコンクリート材や、これら粉砕物を単独あるいは複合して形状化したものも揚水体の範疇に含める。例えば、薄層揚水体表面加工として、粒形を一律にした砂や溶岩の粉末粒子を接着剤等で固着するものなどである。
【0009】
「輸送体」は、養生液を養生部に移動させるものであればよく、上部が開放された水路状の構造(水路ともいう)や、流入および流出部を主な開放部とするパイプ状の構造、あるいは水を溜めることが可能な袋状構造など、形状やその役割・用途は限定されない。
【0010】
揚水体がもつ、従来と異なる重要な利点は、これまでは吸水性素材の中でもミズゴケまたは石質に限定されていたが、本発明においてはこのような単独素材での利用や素材自体が限定されなくても利用できる点であり、例えば、非吸水性や疎水性の素材表面あるいは内部に吸水性素材を付着・充填させたり、あるいはそれらを粒上にしたものを混合して形状化した物体で、輸送体から養生部に養生液を浸潤させ、植物の養生が可能になった点である。
【0011】
植物を養生する基盤の厚さは特に限定されないが、養生面が水平式において厚さは1mm〜100mm程度で、好適範囲は7mm〜30mmであり、養生面が水平式以外において厚さは1mm〜10m程度で、好適範囲は30mm〜900mmである。
【0012】
本基盤において、輸送体または水路の膜の厚さは特に限定されないが、0.1mm〜100mm程度、通常は2mm〜50mmが好適である。また、その素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたものが、水路体を構成する好適な素材として例示される。
【0013】
本基盤において養生されるコケ植物は特に限定されず、自然界に自生しているコケ植物をそのまま用いることも可能であり、栽培法で得たコケ植物を用いることも可能である。また、いわゆる培養法〔例えば、「植物バイオテクノロジーII」,東京化学同人:現代化学・増刊20の第39頁「蘚苔類の培養」(小野著)等参照のこと〕を用いた「培養ゴケ」を用いることも可能であるが、通常は、栽培法で得たコケ植物を用いることが好ましい。
この栽培されたコケ植物は、通常の栽培法で得たコケ植物を用いることができるが、特に、本発明においては、以下の方法で得られる、コケ植物断片群を用いることが好ましい。
すなわち、生長したコケ植物の群落の頂部近傍を切断し、切断したコケ植物断片を収穫物として用い、切断されたコケ植物の群落の養生を継続して行い、かつ、この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行う、コケ植物の栽培方法において得られる、上記コケ植物の断片群を、本発明において用いることができる。
【0014】
ここで、生長したコケ植物の群落は、天然のコケ植物の群落であっても、通常のパレット栽培で得られるコケ植物の群落であっても、コケ植物を固定した人工基盤を養生して得られるコケ植物の群落であってもよい。コケ植物の群落は、平置きの状態で養生したものであっても、壁面や法面等において養生したものであってもよい。頂部付近の切断を行う時期は、上記の生長したコケ植物におけるコケ植物が、概ね2〜3cm程度に達した時点が好適である。コケ植物の群落の頂部近傍の切断は、コケ植物の群落の上部(緑が多い部分)を、種々の切断器具、たとえば、ハサミ、バリカン、サンダー等を用いて行うことができる。また、ほうきや刷毛等で、コケ植物の群落の上部をなでつけることによっても、コケ植物の頂部近傍は容易に切断され、所望するコケ植物の断片を得ることができる。
【0015】
上述した切断工程の後、切断して得たコケ植物の断片は、「収穫物」として、本栽培基において載置されるコケ植物として用いることができる。また、切断された後のコケ植物の群落は、養生を継続して行いコケ植物を再び生長させることができる。この再生長させたコケ植物の群落に対して、再び切断工程を行うことで、コケ植物の断片群を再度得ることができる。この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行うことにより、効率的にコケ植物を「収穫物」として得ることができる。
【0016】
また、本発明が適用され得る生物は、ミズゴケは、コケ植物蘚類 ミズゴケ科 ミズゴケ属(Sphagnum L.)に属する全てを意味し、例えば、日本国原産のものであれば、オオミズゴケ(Sphagnum palustre L.)、イボミズゴケ(Sphagnum papillosum Lindb.)、ムラサキミズゴケ(Sphagnum magellanicum Brid.)、キレハミズゴケ(Sphagnum aongstroemii C.Hartm)、キダチミズゴケ(Sphagnum compactum DC.)、コアナミズゴケ(Sphagnum microporum Warnst.ex Card)、コバノミズゴケ(Sphagnum calymmatophyllum Warnest.& Card.)、ユガミミズゴケ(Sphagnum subsecundum Nees ex Sturm)、ホソバミズゴケ(Sphagnum girgensohnii Russow)、チャミズゴケ(Sphagnum fuscum(Schimp.)H.Klinggr.)、ヒメミズゴケ(Sphagnum fimbriatum Wilson ex Wilson & Hook.f.)、スギハミズゴケ(Sphagnum capillifolium(Ehrh.)Hedw.)、ホソベリミズゴケ(Sphagnum junghuhnianum Dozy & Molk.Subsp.Pseudomolle(Warnest.)H.Suzuki)、ワタミズゴケ(Sphagnum tenellum Hoffm.)、ハリミズゴケ(Sphagnum cuspidatum Hoffm.)、アオモリミズゴケ(Sphagnum recurvum P.Beauv.)、ウロコミズゴケ(Sphagnum squarrosum Crome)等を挙げることができる。また、日本国以外の地域原産のミズゴケを、本発明に適用することも可能であることは勿論である。
【0017】
ミズゴケ以外のコケ植物では、蘚苔類に属する全てを意味し、例えば、ハリガネゴケ(Bryum capillare Hedw.)、ヤノネゴケ(Bryhnia novae−angliae(Sull.& Lesq.)Grout)、

キミズゼニゴケ)(Pellia endiviaefolia Mitt.)、カマサワゴケ(Philonotis falcata(Hook.)Mitt.)、オオシッポゴケ(Dicranum nipponense Besch.)、アオシノブゴケ(Thuidium

Molk.)Dozy & Molk.)、オオハリガネゴケ(Bryum pseudotriquetrum(Hedw.)Gaertn.)、ヒロハツヤゴケ(Entodon challengeri(Paris)Card.)、カガミゴケ(Brotherella henonii(Duby)M.Fleisch.)、クサゴケ(Callicladium haldanianum(Grev.)H.A.Crum)、コツボゴケ(Plagiomnium acutum(Lidb.)T.J.Kop.)、コバノチョウチンゴケ(Trachycystis microphylla(Dozy & Molk.)Lindb.)、トヤマシノブゴケ(Thuidium kanedae Sakurai)、キブリツボミゴケ(Jungermannia virgata(Mitt.)Steph.)、オオミズゴケ(Sphagnum palustre L.)、ジャゴケ(Conocephalum conicum(L.))、コウヤノマンネングサ(Climacium

アカゴケ(Ceratodon purpureus(Hedw.)Brid.)、ギンゴケ(Bryum argenteum Hedw.)、ミヤマサナダゴケ(Plagiothecium nemorale(Mitt.)A.Jaeger)、ケゼニゴケ(Dumortiera hirsuta(Sw.)Nees)、ハイゴケ(Hypnum plumaeforme Wilson)、ウマスギゴケ(Polytrichum commune Hedw.)、オオスギゴケ(Polytrichum formosum Hedw.)、フロウソウ(Climacium dendroides(Hedw.)F.Weber & Mohr)、オオシラガゴケ(Leucobryum scabrum Sande Lac.)、

polymorpha L.)、ネズミノオゴケ(Myuroclada maximowiczii(Borcz.)Steere & W.B.Schofield)、フデゴケ(Campylopus unbellatus(Arn.)Paris)、エダツヤゴケ(Entodon flavescens(Hook.)A.Jaeger)、オオウロコゴケ(Heteroscyphus coalitus(Hook.)Schiffn.)、ヒノキゴケ(Pyrrhobryum dozyanum(Sande Lac.)Manuel)およびこれら近縁種を特に挙げることができる。
【0018】
さらに、Atrichum undulatum(Hedw.)、P.Beauv(Namigata−Tachigoke)等のAtrichum P.Beauv.(Tachigoke−zoku);Pogonatum inflexum(Lindb.)Lac.(Ko−sugigoke)等のPogonatum P.Beauv(Niwa−sugigoke−zoku);Polytrichastrum formosum(Hedw.)G.L.Smith等のPolytrichastrum G.L.Smith(Miyama−sugigoke−zoku);Polytrichum commune Hedw.(Uma−sugigoke)等のPolytrichum Hedw.(Sugigoke−zoku);Ceratodon purpureus(Hedw.)Bird.(Yanoueno−akagoke)等のCeratodon Bird.(Yanouenoaka−goke−zoku);Dicranum japonicum Mitt.(Shippogoke)、Dicranum nipponense Besch(O−shippogoke)、Dicranum scoparium Hedw.(Kamojigoke)、Dicranum polysetum Sw.(Nami−shippogke)等のDicranum Hedw.(Shippogoke−zoku);Leucobryum scabrum Lac.(O−shiragagoke)、Leucobryum juniperoideum(Brid.)C.Mull.(Hosoba−okinagoke)等のLeucobryum Hampe(Shiragagoke−zoku);Bryum argenteum Hedw.(Gingoke)等のBryum Hedw.(Hariganegoke−zoku);Rhodobryum giganteum(schwaegr.)Par.(O−kasagoke)等のRhodobryum(Schimp.)Hampe(Kasagoke−zoku);Plagiomniumacutum(Lindb.)T.Kop.(Kotsubogoke)等のPlagiomnium T.Kop.(Tsuru−chochingoke−zoku);Trachycystis microphylla(Dozy et Molk.)Lindb.(Kobano−chochingoke)等のTrachycystis Lindb.(Kobano−chochingoke−zoku);Pyrrhobryum dozyanum(Lac.)Manuel(Hinokigoke)等のPyrrhobryum Mitt.(Hinokigoke−zoku);Bartramia pomiformis Hedw.(O−tamagoke)等のBartramia Hedw.(tamagoke−zoku);Climacium dendroides(Hedw.)Web.et Mohr(Furoso)、Climacium japonicium Lindb.(Koyano−mannengusa)等のClimacium Web.et Mohr(Koyano−mannengusa−zoku);Racomitrium ericoides(Web.et Brid)Brid(Hai−sunagoke)、Racomitrium japonicium Dozy et Molk.(Ezo−sunagoke)、Racomitrium canescens(Hedw.)Brid.ssp.latifolium(Sunagoke)、Racomitrium barbuloides Card.(Kobanosunagoke)等のRacomitrium Brid.(Shimofurigoke−zoku);Hypnum plumaeforme Wils.(Haigoke)等のHypnum Hedw.,nom.cons.(Haigoke−zoku);Thuidium Kanedae Sak.(Toyama−shinobugoke)等のThuidium Bruch et Schimp.in B.S.G.(Shinobugoke−zoku)、Sphagnum L.等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
これらのコケ植物は、単独種類のコケ植物を用いることは勿論のこと、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。特に、強い日照を好むコケ植物(例えば、スナゴケ、ツノゴケ等)と、日陰を好むコケ植物(例えば、ハイゴケ、シッポゴケ、ヒノキゴケ、カサゴケ、トヤマシノブゴケ、チョウチンゴケ類等)を組み合わせて用いることにより、本栽培体が用いられる日照環境に依存せずに、コケ植物の生育を維持することが可能となる。
【0020】
コケ以外の「他の植物」としては、いわゆる水生植物(水中〜水周辺を中心に生活する植物の総称)一般を挙げることができる。具体的には、シュロガヤツリ、地性ラン(アツモリソウ、クマガイソウ、ミズトンボ、シュンラン、トキソウ、カキラン、サギソウ、パフィオペディルム属、フラグミペディウム属、コチョウラン等)、ユキノシタ科に属する植物、アヤメ科に属する植物、モウセンゴケ科に属する植物(モウセンゴケ、コモウセンゴケ、ドロセラファルコネリー、ドロセラペティオラリス、ドロセラアデラエ、アフリカナガバノモウセンゴケ、ドロセラピグミー、イトバモウセンゴケ、ナガバノモウセンゴケ、イシモチソウ、ハエトリソウ、ドロソフィラムルシタニカム、ムジナモ等)、ムシトリスミレ属に属する植物、ビブリス属に属する植物、ウツボカズラ属に属する植物、セファロータス属に属する植物、サラセニア属に属する植物、ダーリングトニア属に属する植物、ホソバノセイタカギク等を例示できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、ミズゴケあるいはこれを乾燥させた物体、および、保水性をもつ石質体に限定されることなく、養生液を輸送部から均一に養生面に浸潤または滲水させ、植物を養生することができる。尚、本発明は揚水体から液体を浸潤または滲水させることにあるため、植物または生物の養生のみに限らず、その使用目的が限定されるものではない。
【0022】
以下、本発明について、図面を用いつつ説明する。
図1は、壁面型植物養生基盤における揚水体の構成図である。揚水体1の開口部2は輸送体(水路)3と養生部4の間に設置され、開口部をはさんだ揚水体の一方の基部は、水路壁5の上部にある輸送体にある養生液の水位6よりも下の位置になるように設置することで、揚水体を介して養生液移動7がおこり養生部4に浸潤する。輸送体3は筒状が一般的である。ただし形状は四角柱、円柱、円錐、楕円体、棒状体といった球状以外の形でもよく、特に形状を定めるものではない。尚、養生部4の形状は板状のものが一般的で、厚さは1mm〜100mm程度で、好適範囲は7mm〜30mmである。
【0023】
図2は、立体型植物養生基盤における底部に給水装置を設置した基盤側面の断面図である。揚水体8が設置されている輸送体9は立体の上部面と一致させ、かつ、輸送体9の淵全域に揚水体8を設置することにより、立体型植物養生基盤(立体型基盤または単に立体ともいう)の側面全てに施工された養生部10に養生液を浸潤する。この際、給水パイプ11を通じてポンプアップされた養生液は排水パイプ12を通じてもどされるが、立体型基盤の上部に上げられる養生液の量は水位調整弁12aにより水位が調節され一定量を維持できるしくみになっている。排水パイプ12によりもどされた養生液は底部の養生液貯蔵部13に返して循環させることも可能である。養生液貯蔵部水位14は架台15にとりつけたポンプ16によって調整される。パイプの素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたものが、水路体を構成する好適な素材として例示される。
【0024】
図3は、立体型植物養生基盤の上部に設置した揚水体を蓋状に形状施工したときの断面図である。図2の立体上部は開放されているのに対し、蓋状揚水体17の設置により閉鎖された空間部18ができる。蓋状揚水体17の間隙形状は、蓋有輸送体19の淵の形状にあわせる。防水のための素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたもの、あるいはシリコンコーティング素材が、本素材として例示される。
【0025】
図4は、水路側の揚水体底部と養生部側の揚水体底部が同じ位置にある形状をした両足揚水体の断面図であり、図5は水路側の揚水体底部位置よりも養生部側の揚水体底部位置が低い形状をした水側短揚水体断面図である。両足揚水体20aは両足揚水体用水路21aの水位22aよりも下位に設置する。同様に、水側短揚水体20bは、水側短揚水体用水路21bの水位22bよりも下位に設置する。養生部を設置した際の上部位置が水路位置より低い場所にあっても、養生液の浸潤の調整は揚水体の形状を変えることによって可能である。
【0026】
図6は、揚水体の間隙部分が広い形状をした幅広両足揚水体の断面図である。また図7は揚水体の上部の形状を変形させた上部異形揚水体の断面図である。幅広両足揚水体20cは幅広両足揚水体の水路21cの水位22cよりも下位に設置する。幅広い間隙をもつ揚水体は、水路底と水路外の間にある水路淵をまたいで揚水体を置き、養生液を水路外に浸潤させる使用法も可能である。尚、間隙幅は1mm〜300mm程度で、好適範囲は2mm〜50mmである。上部異形揚水体20dは上部異形揚水体の水路21dの水位22dよりも下位に設置する。上部異形揚水体20dの上部構造は四角柱、円柱、円錐、楕円体、棒状体といったコンベックス(蒲鉾状)以外の形でもよく、特に形状を定めるものではない。
【0027】
図8は水路側の揚水体底部位置よりも養生部側の揚水体底部位置が低い形状をした水側長揚水体断面図である。水側長揚水体20bは、水側短揚水体用水路21bの水位22bよりも下位に設置する。養生部を設置した際の上部が水路位置より高い位置にあっても、水路側の揚水体底部を長くし、養生面側の揚水体を短くすることによって、養生液の浸潤の調整は可能である。
【0028】
図9は揚水体を防水性素材や疎水性素材で覆ったカバー付き揚水体の断面図である。カバー内揚水体20fは幅広両足揚水体の水路21fの水位22fよりも下位に設置する。カバー内揚水体20fの揚水体カバー23の素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたもの、あるいはシリコンコーティング素材が、本素材として例示される。
【0029】
図10は薄い揚水体あるいは揚水体素材の粒体を防水性素材や疎水性素材に付着させた薄層揚水体の断面図である。薄層揚水体水路21gの水位22gよりも薄層揚水体24は下位に設置する。薄層揚水体を固着する素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたものが本座素材として例示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】壁面型植物養生基盤の輸送体水路から養生部に設置した揚水体の構成図である。
【図2】立体型植物養生基盤における底部に給水装置を設置した基盤側面の断面図である。
【図3】立体型植物養生基盤の上部に設置した揚水体を蓋状に形状施工したときの断面図である。
【図4】両足揚水体の断面図である。
【図5】水側短揚水体断面図である。
【図6】揚水体の間隙部分が広い形状をした幅広両足揚水体の断面図である。
【図7】揚水体の上部の形状を変形させた上部異形揚水体の断面図
【図8】水側長揚水体断面図である。
【図9】カバー付き揚水体の断面図である。
【図10】薄層揚水体の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水あるいは生物を生存・増殖させる水溶液(以下、養生液という)を流せることが可能な開放部位をもつ輸送体、または養生液の溜め場をもつ植生基盤の輸送体において、これら輸送構造部と植物養生部との間に揚水することが可能な構造体(以下、揚水体という)をもつ植物の養生基盤。
【請求項2】
前記養生基盤において、揚水体がミズゴケや石質の素材に限定されないことを特徴とする、請求項1記載の養生基盤。
【請求項3】
前記養生基盤において、揚水体が液体を維持することを特徴とする、請求項2記載の養生基盤。
【請求項4】
前記養生基盤の輸送部側に位置する揚水基部から吸水した液体を吸い上げることの可能な素材構造をもつことを特徴とする、請求項3記載の養生基盤。
【請求項5】
前記養生基盤の輸送体側の揚水基部から吸い上げられた養生液が揚水体を介して植物養生部に均一に養生液を浸潤させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の養生基盤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の養生基盤において、生きたミズゴケや乾燥ミズゴケを用いることなく、養生部位に浸潤させ、コケ植物または他の植物の養生を行うことを特徴とする、養生基盤の使用方法。

【公開番号】特開2013−99308(P2013−99308A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258241(P2011−258241)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(507203744)
【Fターム(参考)】