説明

揚砂方法及び沈砂設備

【課題】より小量の水流で確実に集砂することができる揚砂方法及び沈砂設備を提供する。
【解決手段】沈砂池3に沈降した砂を揚砂する揚砂機10と、前記揚砂機10に向けて砂を集砂する集砂装置20とを備えている沈砂設備であって、前記沈砂池3の底面3Aを、前記揚砂機10の設置領域10Aに向けて下方に傾斜形成するとともに、前記集砂装置21に、前記底面3Aに沈降した砂を前記揚砂機10に向けて集めるように水を噴射する集砂ノズル群N1〜N10を備え、前記沈砂池3に水が貯留された状態で、前記揚砂機10を稼動させて揚砂し、前記沈砂池3の水面の低下に伴って変動する前記底面と水面との境界領域に前記集砂ノズル群N1〜N10から噴射された水が供給されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水ポンプ設備や雨水ポンプ設備、更には下水処理設備に構築され、沈砂池に沈降した砂を揚砂する揚砂機と、揚砂機に向けて砂を集砂する集砂装置とを備えている沈砂方法及び沈砂設備に関する。
【背景技術】
【0002】
沈砂設備は、沈砂池に堆積した土砂を外部に排出するため、適宜な時期に土砂を集砂ピットに集めて揚砂機により揚砂して沈砂池の外部に排砂するように構成されている。
【0003】
そのため、沈砂池の下流側に配置されるポンプ井に貯溜された雨水等を沈砂池の水中に位置したノズルから噴射させて、土砂を集砂ピットに移動させているが、水が貯溜された沈砂池の底部に堆積した土砂を水圧に打ち勝って移動させることが必要であるので、ノズルからの水の吐出圧を高圧に設定する必要があり、そのために大型のポンプを設置する必要があるという問題があった。
【0004】
また、沈砂設備が下水処理設備に設置されるものである場合には、高圧噴射により発生するミストや沈砂池に貯溜された下水の撹拌によって悪臭が発生する虞があるという問題もあった。
【0005】
そこで、特許文献1には、沈砂池の底部に複数の給水ノズルを設置して、各ノズルから供給される水で沈砂池の底部に堆積した土砂を集砂ピットに集める沈砂池の集砂方法において、沈砂池内を、その中に滞溜する水の水面が集砂ピット内に位置した排水状態とし、この状態でノズルから沈砂池の底部に水を流出させ、同時にそのノズルから流出した水を集砂ピットからくみ出すことによって、沈砂池内を前記状態に維持しつつ前記ノズルからの水で沈砂池の底部上に堆積した土砂を集砂ピットに向けて洗い流す方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3315489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の従来技術によれば、水面が集砂ピット内に位置した排水状態を維持しながら、つまり沈砂池の底部が水面から露出した状態いわゆるドライ状態で、ノズルから底部に水を流出させて底部に堆積した土砂を集砂ピットに向けて洗い流す構成であったために、土砂を確実に集砂ピットに向けて押し流すために、ある程度の強さの水流を確保する必要があり、集砂のためのポンプの小型化等の観点で一層の改良の余地があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、より小量の水流で確実に集砂することができる沈砂方法及び沈砂設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明による沈砂設備に対する揚砂方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、底面が揚砂機または揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜するように形成されている沈砂池に沈降した砂の揚砂方法であって、前記沈砂池に水が貯留された状態で、前記揚砂機を稼動させて揚砂するとともに前記沈砂池の水面を低下させる揚砂工程と、前記沈砂池の水面の低下に伴って変動する前記底面と水面との境界領域に水を供給するように集砂ノズル群から水を噴射する集砂工程とを含む点にある。
【0010】
揚砂工程で、沈砂池の底部に堆積している土砂が水とともに沈砂池の外部に排砂され、沈砂池の水面高さが次第に低下する。集砂工程で、底面と水面との境界領域に集砂ノズル群から噴射された水によって境界領域の土砂が水中で浮遊し、沈砂池の水面高さが低下するのに伴って、土砂が傾斜底面に沿って下流側の揚砂機に向けて引き込み搬送される。つまり、貯留水による土砂の引き込み現象、集砂ノズル群からの噴射水による土砂の浮遊現象との相乗効果によって土砂が効率的に集砂されるようになるので、集砂ノズル群から供給される水量が少なくても、十分に土砂を揚砂機またはその設置領域に集砂することができるようになる。
【0011】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、底面が揚砂機または揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜するように形成されている沈砂池に沈降した砂の揚砂方法であって、前記沈砂池に水が貯留された状態で、前記揚砂機を稼動させて揚砂するとともに前記沈砂池の水面を低下させる揚砂工程と、前記沈砂池の底部の傾斜方向に沿って配置された集砂ノズル群から、前記沈砂池の水面の低下に伴って前記傾斜方向に沿って切り替えつつ水を噴射する集砂工程とを含む点にある。
【0012】
集砂工程では、沈砂池の水面の低下に伴って、底面の傾斜方向に沿って配置された集砂ノズル群からの水の噴射を切り替えるので、低下する水面高さに合わせて適切な場所へ水を噴射することができ、貯留水による土砂の引き込み現象と、集砂ノズル群からの噴射水による土砂の浮遊現象との相乗効果を効率よく奏させることができる。従って、土砂が効率的に集砂され、集砂ノズル群から供給される水量が少なくても、十分に土砂を揚砂機の設置領域に集砂することができるようになる。
【0013】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述した第一または第二特徴構成に加えて、前記集砂ノズル群は、前記底部の傾斜方向に沿って複数段に配列され、前記集砂工程では、前記沈砂池の水面の低下に伴って集砂ノズル群からの水の噴射が配列毎に切り替えられる点にある。
【0014】
揚砂工程で沈砂池の水面高さが次第に低下し、その際に底部に堆積している土砂が水とともに傾斜底面に沿って下流側の揚砂機に向けて引き込み搬送される。同時に集砂工程で、揚砂機またはその設置領域に向けて底部の傾斜方向に沿って複数段に配列した集砂ノズル群のうち、沈砂池の水面の低下に伴って変動する水面に応じてノズル群を切り替えて水が噴射されるので、集砂ノズル群から供給される水量が少なくても、土砂を効率的に傾斜底面に沿って流すことができるようになる。
【0015】
本発明による沈砂設備の第一特徴構成は、同請求項4に記載した通り、沈砂池に沈降した砂を揚砂する揚砂機と、前記揚砂機に向けて砂を集砂する集砂装置とを備えている沈砂設備であって、前記沈砂池の底面を、前記揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜形成するとともに、前記集砂装置に、前記底面に沈降した砂を前記揚砂機または前記揚砂機の設置領域に向けて集めるために水を噴射する集砂ノズル群を備え、前記沈砂池の水面の低下に伴って変動する前記底面と水面との境界領域に前記集砂ノズル群から噴射された水が供給されるように構成されている点にある。
【0016】
本発明の沈砂設備によれば、沈砂池に水が貯留された状態で揚砂機を稼動して揚砂することで、底部に堆積している土砂が水とともに傾斜底面に沿って下流側の揚砂機に向けて引き込み搬送されると同時に、沈砂池の水面高さが次第に低下する。その際、集砂装置は、底面と水面との境界領域に集砂ノズル群から水を噴射し、土砂を傾斜底面に沿って流す。つまり、貯留水による土砂の引き込み現象、集砂ノズル群からの噴射水による土砂の浮遊現象との相乗効果によって土砂が効率的に集砂されるようになるので、集砂ノズル群から供給される水量が少なくても、十分に土砂を揚砂機の設置領域に集砂することができるようになる。
【0017】
同第二の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、沈砂池に沈降した砂を揚砂する揚砂機と、前記揚砂機に向けて砂を集砂する集砂装置とを備えている沈砂設備であって、前記沈砂池の底面を、前記揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜形成するとともに、前記集砂装置は、前記底面に沈降した砂を前記揚砂機または前記揚砂機の設置領域に向けて集めるために水を噴射する集砂ノズル群が、前記底面の傾斜方向に沿って配置され、前記沈砂池の水面の低下に伴って前記集砂ノズル群からの水の噴射を切り替える手段を有する点にある。
【0018】
底面の傾斜方向に沿って配置された集砂ノズル群からの水の噴射を切り替える手段により、沈砂池の水面の低下に伴って水の噴射が切り替えられるので、貯留水による土砂の引き込み現象、集砂ノズル群からの噴射水による土砂の浮遊現象との相乗効果によって土砂が効率的に集砂され、集砂ノズル群から供給される水量が少なくても、十分に土砂を揚砂機の設置領域に集砂することができるようになる。
【0019】
同第三の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述した第一または第二特徴構成に加えて、前記集砂ノズル群が、前記揚砂機または前記揚砂機の設置領域に向けて前記底部の傾斜方向に沿って複数段に配列され、各集砂ノズル群からの水の噴射が配列毎に切り替えられる点にある。
【0020】
揚砂機の設置領域に向けて底部の傾斜方向に沿って複数段に配列した集砂ノズル群のうち、沈砂池の水面の低下に伴って変動する底面と水面との境界領域に最も近いノズル群から水を噴射することで、集砂ノズル群から供給される水量が少なくても、土砂を効率的に傾斜底面に沿って流すことができるようになる。
【0021】
同第四の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記底面に仕切板が前記揚砂機に向けて設置され、各仕切板により複数の流路が形成され、各流路に集砂ノズルが配置されるように前記集砂ノズル群が配列されている点にある。
【0022】
各集砂ノズルからの噴射水が流下方向に交差する方向に分散されることなく、また、近接する集砂ノズルからの噴射水が互いに干渉することなく、仕切板によって形成される流路に沿って流れるため、集砂ノズル群から供給される水量が少なくても、土砂を効率的に傾斜底面に沿って流すことができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明によれば、より小量の水流で確実に集砂することができる沈砂方法及び沈砂設備を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による沈砂設備が採用された雨水ポンプ場の断面図で、(a)は流入ゲートが開放された排水状態を示す断面図、(b)は流入ゲートが閉塞された沈砂地の洗浄状態を示す断面図
【図2】(a)は本発明による沈砂設備の平面説明図、(b)は断面説明図
【図3】(a)から(f)は本発明による揚砂方法の説明図
【図4】(a)から(m)は本発明による揚砂方法の別実施形態を示す説明図
【図5】(a)から(k)は本発明による揚砂方法の別実施形態を示す説明図
【図6】本発明による揚砂方法の別実施形態を示す説明図
【図7】(a)は本発明による沈砂設備の別実施形態を示す平面説明図、(b),(c)はそれぞれノズル群の別実施形態の説明図
【図8】(a)は本発明による沈砂設備の別実施形態を示す平面説明図、(b)は断面説明図
【図9】本発明による沈砂設備の別実施形態を示す平面説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、雨水ポンプ設備を例に本発明による沈砂方法及び沈砂設備を説明する。
【0026】
図1(a),(b)に示すように、雨水ポンプ設備1は、雨水流入渠から流入する雨水を設備内に流入或いは遮断する流入ゲート2と、雨水に同伴して流入する土砂を沈殿させる沈砂池3と、河川等に排水するために一旦雨水を貯留するポンプ井4を備えている。
【0027】
流入ゲート2から流入した雨水は、粗目のバースクリーン装置5によって流木や樹脂容器等の大きな固形異物等が除去され、沈砂池3で土砂が沈殿され、更に除塵機6で細かな異物が除塵された後にポンプ井4に貯水される。
【0028】
ポンプ井4には、軸流または斜流方式の排水ポンプP1が配置され、降雨時にポンプ井4に流入した雨水は、当該排水ポンプP1によって河川等に排水される。
【0029】
沈砂池3やポンプ井4は、底板7と床スラブ8の間に構築され、床スラブには流入ゲート2の開閉装置、バースクリーン装置5や除塵機6等が固定され、更に排水ポンプP1の動力装置9等が設置されている。
【0030】
沈砂池3には、沈降した砂を揚砂するべく、土砂が混入した雨水を吸引可能な水中サンドポンプである揚砂機10が設置されるとともに、揚砂機10に向けて砂を集砂する集砂装置20が設置された沈砂設備が構築されている。
【0031】
図1(a)には、降雨時に流入ゲート2が開放され、ポンプ井4に流入した雨水が排水ポンプP1によって河川等に排水されている状態が示されている。
【0032】
また、図1(b)には、その後、流入ゲート2が閉塞され、ポンプ井4の水位が低下して、沈砂池3に沈殿した土砂を除去する洗浄処理に移行する状態が示されている。
【0033】
図2(a),(b)には、沈砂池3の詳細な構成が示されている。沈砂池3の底面3Aのうち水の流下方向中央部であって、横幅方向に帯状に形成された最深部10Aに揚砂機10が設置され、底面3Aが当該揚砂機10の設置領域10A、つまり最深部10Aに向けて下方に滑らかに傾斜するように形成されている。底面3Aの勾配を3度〜20度の範囲に設定するのが好ましい。
【0034】
沈砂池3の底面3Aに沈降した砂を底面3Aの傾斜方向に流すように、揚砂機10に向けて水を噴射する複数の集砂ノズル群N1〜N10と、ポンプ井4に設置され、集砂ノズル群N1〜N10に集砂用の水を供給する取水ポンプP2と、取水ポンプP2と各集砂ノズル群N1〜N10とを接続する送水管WPに介装され、各集砂ノズル群N1〜N10に個別に水を供給するバルブ機構V1〜V10により集砂装置20が構成されている。
【0035】
尚、集砂ノズル群N1〜N10は、底面3Aに沈降した砂を底面3Aの傾斜方向に押し流し、揚砂機10が設置された領域に集砂可能であれば、底面3Aの傾斜方向に流すように水が噴射されればよく、必ずしも揚砂機10に向けて水を噴射するような姿勢である必要なない。
【0036】
集砂ノズル群N1〜N10は、それぞれ底部3Aの横幅方向に沿って配置された送水管に取り付けられた複数のノズルで構成され、揚砂機10の設置領域10Aに向けて底部3Aの傾斜方向に沿って複数段(図中、揚砂機10を中心に左右対称にそれぞれ5段)に配列されている。
【0037】
更に、底面3Aに高さが数〜数十cmの樹脂製または金属製の仕切板21が設置され、各仕切板21により揚砂機10の設置領域10Aに向けて砂を流す複数の流路3Bが形成され、各流路3Bに集砂ノズルが同数(一つまたは複数)配置されるように集砂ノズル群N1〜N10が配列されている。尚、図中、符号40は、沈砂池3を水の流れ方向に沿って領域を2等分する中央壁を示す。尚、仕切板21は底面3Aに埋設されたアンカーボルト等に締着されている。
【0038】
揚砂機10の設置領域10Aに集砂された砂を攪拌して水中に浮遊させる攪拌ノズルNdが、揚砂機10の周囲及び設置領域10Aの横幅方向両端部に配置され、取水ポンプP2からの水が送水管を介して当該攪拌ノズルNdに供給される。
【0039】
揚砂機10の周囲に集砂された土砂が、攪拌ノズルNdから噴出される水流によって攪拌され、揚砂機10周囲で水中に浮遊するため、揚砂機10によって土砂と水が円滑に吸い揚げられるようになる。
【0040】
ポンプ井4での排水が進み、ポンプ井4と沈砂池3とが分離され、沈砂池3に水が貯留された状態、つまり、沈砂池3のうち揚砂機10の設置領域とは離隔した領域に沈降した砂が水没した状態で揚砂機10を稼動させて揚砂し、沈砂池3の水面の低下に伴って変動する底面3Aと水面WSとの境界領域対応するに何れかの集砂ノズル群、好ましくは直近のノズル群から噴射された水が供給されるように、各集砂ノズル群N1〜N10からの水の噴射を配列毎に切り替えるようにバルブ機構V1〜V10が開閉される。
【0041】
以下、図3に基づいて具体的に説明する。流入ゲート2が閉塞され、ポンプ井4に溜まった雨水が排水ポンプP1により河川に排水されて水位が低下し、雨水が沈砂池3とポンプ井4で分離される状態になると、沈砂池3の洗浄、つまり沈降した土砂の除去が開始される。
【0042】
図2(a)及び図3(a)に示すように、平面視で沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域に揚砂機10から最も離隔した集砂ノズル群N1,N2が位置する水位WL1の近傍で、揚砂機10及び取水ポンプP2を稼動させ、攪拌ノズルNdから水を噴射するとともにバルブ機構V1,V2を開放して集砂ノズル群N1,N2から洗浄用の水を噴射する。
【0043】
沈砂池3に水が貯留された状態で揚砂機10を稼動させて揚砂すると沈砂池3の水面高さが次第に低下し、その際に底部3Aに堆積している土砂が水とともに傾斜底面3Aに沿って下流側の揚砂機10に向けて引き込み搬送されると同時に、底面3Aと水面WSとの境界領域に集砂ノズル群N1,N2から噴射された水によって土砂が傾斜底面3Aに沿って集められる。
【0044】
つまり、沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域では、沈砂池3に残留した貯留水による土砂の引き込み現象と、集砂ノズル群からの噴射水による土砂の浮遊現象との相乗効果によって効率的に土砂が集砂される。
【0045】
図3(b)に示すように、沈砂池3に残留した貯留水の水位が次第に低下し、平面視で沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域に集砂ノズル群N3,N4が位置する水位WL2の近傍に達すると、バルブ機構V1,V2を閉塞するとともにバルブ機構V3,V4を開放して集砂ノズル群N3,N4から洗浄用の水を噴射する。
【0046】
上述と同様、沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域では、沈砂池3に残留した貯留水による土砂の引き込み現象、集砂ノズル群からの噴射水による土砂の浮遊現象との相乗効果によって効率的に土砂が集砂される。
【0047】
以下同様に、図3(c),(d),(e)に示すように、貯留水の水位がWL3,WL4,WL5と次第に低下するに連れて、バルブ機構の開閉状態が切り替えられて水が噴射される集砂ノズル群が、N5,N6→N7,N8→N9,N10と切り替えられ、沈砂池3の底面3Aに沈降した土砂が流路3B毎に揚砂機10の設置領域10Aに集砂される。
【0048】
この状態で攪拌ノズルNdから噴射される水により水中に浮遊する土砂が揚砂機10によって沈砂池3から除去される。揚砂機10で吸い上げられた水は、固液分離機構で土砂が除去された後にポンプ井4に送水されて、河川に放流される。
【0049】
このように、沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域で、集砂ノズル群からの噴射水による土砂の浮遊現象ばかりでなく、沈砂池3に残留した貯留水による土砂の引き込み現象との相乗効果によって効率的に土砂が集砂されるので、集砂ノズル群からの噴射水の流量をそれほど大きく設定する必要がなくなるのである。その結果、洗浄のための取水ポンプP2として、容量の小さな小型且つ安価なポンプを採用することができるようになる。
【0050】
即ち、本発明による揚砂方法は、沈砂池3に水が貯留された状態で、揚砂機10を稼動させて揚砂する揚砂工程と、揚砂工程の実行時に、沈砂池3の水面の低下に伴って変動する底面3Aと水面WSとの境界領域に水を供給するように集砂ノズル群N1〜N10から水を噴射する集砂工程とを含み、集砂工程では、沈砂池3の水面の低下に伴って変動する底面3Aと水面WSとの境界領域に集砂ノズル群N1〜N10から噴射された水が供給されるように、各集砂ノズル群N1〜N10からの水の噴射が配列毎に切り替えられる。
【0051】
集砂ノズル群N1〜N10から噴射する水量を更に少なくする必要がある場合、または、沈砂の量が多い池の場合には、以下に説明する態様で集砂することも可能である。
【0052】
図4(a)に示すように、平面視で沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域に揚砂機10から最も離隔した上流側(ここでは、上流側を例示するが下流側であってもよい)の集砂ノズル群N1が位置する水位WL1の近傍で、揚砂機10及び取水ポンプP2を稼動させ、攪拌ノズルNdから水を噴射するとともにバルブ機構V1を開放して集砂ノズル群N1から洗浄用の水を噴射する。
【0053】
図4(b)に示すように、沈砂池3に残留した貯留水の水位が次第に低下し、平面視で沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域に集砂ノズル群N3が位置する水位WL2の近傍に達すると、バルブ機構V1を閉塞するとともにバルブ機構V3を開放して集砂ノズル群N3から水を噴射する。
【0054】
以下同様に、図4(c),(d),(e)に示すように、貯留水の水位がWL3,WL4,WL5と次第に低下するに連れて、バルブ機構の開閉状態が切り替えられて水が噴射される集砂ノズル群が、N5→N7→N9と切り替えられ、沈砂池3の底面3Aのうち揚砂機10より上流側に沈降した土砂が流路3B毎に揚砂機10の設置領域10Aに集砂される。
【0055】
図4(f)に示すように、揚砂機10で揚水した後に、図4(g)に示すように、取水ポンプP2からの水を沈砂池3に充填して水位をWL1に回復させる。このとき、揚砂機10を停止すると共に、攪拌ノズルNdを介して充填する。
【0056】
その後、図4(h)に示すように、平面視で沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域に揚砂機10から最も離隔した下流側の集砂ノズル群N2が位置する水位WL1の近傍で、揚砂機10及び取水ポンプP2を稼動させ、攪拌ノズルNdから水を噴射するとともにバルブ機構V2を開放して集砂ノズル群N2から洗浄用の水を噴射する。
【0057】
図4(i)に示すように、沈砂池3に残留した貯留水の水位が次第に低下し、平面視で沈砂池3の底面3Aと水面WSとが交わる境界領域に集砂ノズル群N4が位置する水位WL2の近傍に達すると、バルブ機構V2を閉塞するとともにバルブ機構V4を開放して集砂ノズル群N4から洗浄用の水を噴射する。
【0058】
以下同様に、図4(j),(k),(l)に示すように、貯留水の水位がWL3,WL4,WL5と次第に低下するに連れて、バルブ機構の開閉状態が切り替えられて水が噴射される集砂ノズル群が、N6→N8→N10と切り替えられ、沈砂池3の底面3Aのうち揚砂機10より下流側に沈降した土砂が流路3B毎に揚砂機10の設置領域10Aに集砂され、図4(m)に示すように、揚砂機10で最終的に揚水した後に取水ポンプP2、揚砂機10を停止する。
【0059】
更には、図5(a)から(j)に示すように、上述と同様の水位WL1で揚砂機10及び取水ポンプP2を稼動させ、攪拌ノズルNdから水を噴射するとともにバルブ機構V1を開放して集砂ノズル群N1から洗浄用の水を噴射し、その後水位がWL1からWL10に低下するに連れて、下流側の集砂ノズル群N2(図5(b)参照)、上流側の集砂ノズル群N3(図5(c)参照)というように、上流側のノズル群と下流側のノズル群を交互に稼動させ、図5(k)に示すように、揚砂機10で最終的に揚水した後に取水ポンプP2、揚砂機10を停止する。
【0060】
図5に示す態様では、揚砂機10の上流側のノズル群N1,N3,N5,N7,N9の配置に対して、揚砂機10の下流側のノズル群N2,N4,N6,N8,N10の配置が相対的に揚砂機10側に偏位していることが好ましいが、図2に示したように対称に位置していてもよい。ノズル群N1とN2、N3とN4、N5とN6、N7とN8、N9とN10が一定時間で複数回切り替わるように運転してもよい。
【0061】
図6には、揚砂方法の他の実施形態が示されている。本実施形態では、ノズル群N1,N3,N5,N7,N9の中間にノズル群N1´,N3´,N5´,N7´,N9´が配置され、ノズル群N2,N4,N6,N8,N10の中間にノズル群N2´,N4´,N6´,N8´,N10´が配置されている。
【0062】
水位がWL1からWL2の間では、ノズル群N1,N2、及びN1´及びN2´から噴射し、水位がWL2に達するとこれらのノズル群を止水し、水位がWL2からWL3の間では、ノズル群N3,N4、及びN3´及びN4´から噴射し、水位がWL3に達するとこれらのノズル群を止水するというノズル群の切替処理が繰り返される。つまり、集砂時に低下する水位に対して、底面と水面の境界領域近傍の水面に水を噴射することにより、集砂効果を向上させることができる。
【0063】
同様に、水位がWL1からWL1´の間では、ノズル群N1,N2、及びN1´及びN2´から噴射し、水位がWL1´に達するとノズル群N1,N2を止水し、水位がWL1´からWL2の間では、ノズル群N1´及びN2´、及びN3,N4から噴射し、水位がWL2に達するとノズル群N1´及びN2´を止水するというノズル群の切替処理が繰り返される。この場合も、集砂時に低下する水位に対して、底面と水面の境界領域近傍の水面に水を噴射することにより、集砂効果を向上させることができる。
【0064】
図7(a)には、底面3Aに設置された仕切板21の別実施形態が示されている。仕切板21は揚砂機10に向けて連続して設置されている必要はなく、各ノズル群Nから噴射された水によって揚砂機10に向けて案内するように構成されていれば、揚砂機10に向けて間歇的に設置されていてもよい。
【0065】
図7(b)に示すように、各ノズルから噴射される水が水面の低下に伴って移動する水際に向けて直接に到達するように、水面の低下に伴ってノズルが揚砂機10の方向に移動する移動機構を介して取り付けられていてもよい。この場合、ノズル先端と水面との間隔が一定間隔となるように移動機構が構成されているとさらによい。油圧機構或いは電動モータを介したリンク機構によって移動機構を構成することができる。
【0066】
図7(c)に示すように、各ノズルから噴射される水が水面の低下に伴って移動する水際に向けて直接に到達するように、水面の低下に伴ってノズルが傾斜するようにとりつけられていていてもよい。油圧機構或いは電動モータを介した回動機構に各ノズル群が取り付けられていればよい。
【0067】
何れの場合であっても、水位計を設置して沈砂池3の水位の変化を検出し、検出した水位の変化に基づいて各ノズル群Nを切り替え、或いは、各ノズル群Nを移動機構によって移動させ、更には、各ノズル群Nを回動機構によって回動させればよい。そのために、水位計の出力信号を入力し、水位によってノズル群を切り替え、或いは、各ノズル群を移動機構によって移動させ、更には、各ノズル群を回動機構によって回動させる制御盤を設置すればよい。
【0068】
水位計の設置に替えて、揚砂機10を稼動させた後の経過時間を計測する時計機能を制御盤に備え、揚砂機10を稼動させた後の経過時間に基づいて各ノズル群Nを切り替え、或いは、各ノズル群Nを移動機構によって移動させ、更には、各ノズル群Nを回動機構によって回動させてもよい。
【0069】
図8には、本発明による沈砂設備の更に別の態様が示されている。沈砂池3の中心部に揚砂機が設置される最深部10Aが形成され、周囲の四辺から最深部に向けて傾斜するように底面3Aが形成されている。
【0070】
そして、沈砂池3の周囲の四辺の内側にそれぞれに平行に配置された給水管50に複数のノズルNが接続されたノズル群が構成されている。各ノズルNは底面3Aの傾斜方向に土砂を流す向きに取り付けられている。
【0071】
沈砂池3の底面3Aを、揚砂機10の設置領域10Aに向けて下方に傾斜形成するとともに、集砂装置20に、底面3Aに沈降した砂を底面3Aの傾斜方向に流すように水を噴射する集砂ノズル群Nを備え、沈砂池3に水が貯留された状態で、揚砂機10を稼動させて揚砂し、沈砂池3の水面の低下に伴って変動する底面と水面との境界領域に集砂ノズル群Nから噴射された水が供給されるように構成されている。
【0072】
各集砂ノズルNの傾斜角度が沈砂池3の水面の低下に伴って浅くなるように可変に駆動する駆動機構を介して取り付けられていることが更に好ましい。
【0073】
図9には、本発明による沈砂設備の更に別の態様が示されている。図8に示した基本的構成に加えて、給水管50の内側に更に第二の給水管51が設けられ、第二の給水管51に複数のノズルNが接続されたノズル群が構成されている。水面の低下に伴って、給水管50のノズル群から給水管51のノズル群に切り替えられるように構成されている。
【0074】
上述した実施形態では、沈砂池3の底面3Aのうち水の流下方向中央部であって、横幅方向に帯状に形成された最深部10Aに揚砂機10が設置される場合を説明したが、揚砂機10の設置領域10Aは、沈砂池3の底面3Aのうち水の流下方向中央部に限るものではなく、沈砂池3の最上流側に最深部10Aを形成して揚砂機10を設置する態様であってもよく、沈砂池3の最下流側に最深部10Aを形成して揚砂機10を設置する態様であってもよい。
【0075】
更に、横幅方向に帯状に形成された最深部10Aの中央部に揚砂機10が設置される場合を説明したが、横幅方向に帯状に形成された最深部10Aであって、その横幅方向の端部に揚砂機10が設置される態様であってもよい。
【0076】
上述した実施形態では、雨水ポンプ設備を例に本発明による沈砂設備、及び沈砂設備に対する揚砂方法を説明したが、本発明は他に汚水ポンプ設備、下水処理設備等、沈砂池を必要とする任意の水処理設備に適用できる。
【0077】
上述した実施形態では、沈砂池3の底面3Aの勾配を3度〜20度の範囲に設定し、滑らかな傾斜面に形成される例を説明したが、勾配はこの範囲に限るものではなく、また、滑らかな傾斜面に形成される例に限るものではない。例えば、傾斜方向に複数の段差が形成され、ステップ的に傾斜する構成であってもよい。段差と段差の間の面は傾斜面であることが特に好ましい。
【0078】
以上、説明したように、本発明による揚砂方法は、底面が揚砂機または揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜するように形成されている沈砂池に沈降した砂の揚砂方法であって、沈砂池に水が貯留された状態で、揚砂機を稼動させて揚砂するとともに沈砂池の水面を低下させる揚砂工程と、沈砂池の水面の低下に伴って変動する前記底面と水面との境界領域に水を供給するように集砂ノズル群から水を噴射する集砂工程とを含み、更には、沈砂池に水が貯留された状態で、揚砂機を稼動させて揚砂するとともに沈砂池の水面を低下させる揚砂工程と、沈砂池の底部の傾斜方向に沿って配置された集砂ノズル群から、沈砂池の水面の低下に伴って傾斜方向に沿って切り替えつつ水を噴射する集砂工程とを含む。
【0079】
また、本発明による沈砂設備は、沈砂池に沈降した砂を揚砂する揚砂機と、揚砂機に向けて砂を集砂する集砂装置とを備えている沈砂設備であって、沈砂池の底面を、揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜形成するとともに、集砂装置に、底面に沈降した砂を揚砂機または揚砂機の設置領域に向けて集めるために水を噴射する集砂ノズル群を備え、沈砂池の水面の低下に伴って変動する底面と水面との境界領域に前記集砂ノズル群から噴射された水が供給されるように構成され、更には、沈砂池の底面を、揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜形成するとともに、集砂装置に、底面に沈降した砂を揚砂機または揚砂機の設置領域に向けて集めるために水を噴射する集砂ノズル群を備え、集砂ノズル群は、底面の傾斜方向に沿って配置され、沈砂池の水面の低下に伴って前記集砂ノズル群からの水の噴射を切り替える手段を有する。
【0080】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1:雨水ポンプ設備
2:流入ゲート
3:沈砂池
3A:底部
3B:流路
4:ポンプ井
5:バースクリーン装置
6:除塵機
10:揚砂機
10A:設置位置
20:集砂装置
21:仕切板
P1:排水ポンプ
P2:取水ポンプ
N,N1〜N10:集砂ノズル群
V1〜V10:バルブ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面が揚砂機または揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜するように形成されている沈砂池に沈降した砂の揚砂方法であって、
前記沈砂池に水が貯留された状態で、前記揚砂機を稼動させて揚砂するとともに前記沈砂池の水面を低下させる揚砂工程と、前記沈砂池の水面の低下に伴って変動する前記底面と水面との境界領域に水を供給するように集砂ノズル群から水を噴射する集砂工程とを含む揚砂方法。
【請求項2】
底面が揚砂機または揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜するように形成されている沈砂池に沈降した砂の揚砂方法であって、
前記沈砂池に水が貯留された状態で、前記揚砂機を稼動させて揚砂するとともに前記沈砂池の水面を低下させる揚砂工程と、前記沈砂池の底部の傾斜方向に沿って配置された集砂ノズル群から、前記沈砂池の水面の低下に伴って前記傾斜方向に沿って切り替えつつ水を噴射する集砂工程とを含む揚砂方法。
【請求項3】
前記集砂ノズル群は、前記底部の傾斜方向に沿って複数段に配列され、前記集砂工程では、前記沈砂池の水面の低下に伴って集砂ノズル群からの水の噴射が配列毎に切り替えられる請求項1または2記載の揚砂方法。
【請求項4】
沈砂池に沈降した砂を揚砂する揚砂機と、前記揚砂機に向けて砂を集砂する集砂装置とを備えている沈砂設備であって、
前記沈砂池の底面を、前記揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜形成するとともに、
前記集砂装置に、前記底面に沈降した砂を前記揚砂機または前記揚砂機の設置領域に向けて集めるために水を噴射する集砂ノズル群を備え、
前記沈砂池の水面の低下に伴って変動する前記底面と水面との境界領域に前記集砂ノズル群から噴射された水が供給されるように構成されている沈砂設備。
【請求項5】
沈砂池に沈降した砂を揚砂する揚砂機と、前記揚砂機に向けて砂を集砂する集砂装置とを備えている沈砂設備であって、
前記沈砂池の底面を、前記揚砂機の設置領域に向けて下方に傾斜形成するとともに、
前記集砂装置は、前記底面に沈降した砂を前記揚砂機または前記揚砂機の設置領域に向けて集めるために水を噴射する集砂ノズル群が、前記底面の傾斜方向に沿って配置され、
前記沈砂池の水面の低下に伴って前記集砂ノズル群からの水の噴射を切り替える手段を有する沈砂設備。
【請求項6】
前記集砂ノズル群が、前記揚砂機または前記揚砂機の設置領域に向けて前記底部の傾斜方向に沿って複数段に配列され、
各集砂ノズル群からの水の噴射が配列毎に切り替えられる請求項4または5記載の沈砂設備。
【請求項7】
前記底面に仕切板が前記揚砂機に向けて設置され、各仕切板により複数の流路が形成され、各流路に集砂ノズルが配置されるように前記集砂ノズル群が配列されている請求項4から6の何れかに記載の沈砂設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−94738(P2013−94738A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240402(P2011−240402)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(595011238)クボタ環境サ−ビス株式会社 (19)