説明

揚穀装置付き精米機

【課題】搗精することで摩擦熱により精白米の温度が上がってしまうが、精白米を精米機から排出する前のできるだけ早い段階で可及的に冷却することで食味の低下及び品質の劣化を抑止する。
【解決手段】米を搗精する搗精部と、この搗精部によって搗精された米を導出する送穀シュート8と、この送穀シュートの下端に連通して受けた米を上位排出する揚穀装置5とを備えた揚穀装置付き精米機において、上記揚穀装置は縦置きの揚穀管9とその内部で米を上方に移送する揚穀手段とから構成し、その揚穀管の米入口の近傍の管壁に通気部11を形成し、この通気部から揚穀管の内部空気を吸引する吸引ファンを設けるとともに、上記送穀シュートに外気吸込用の吸風口12を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精米機に関し、詳細には、搗精した精白米を揚穀して高位置から排出する際に排出米を冷却できる揚穀装置付き精米機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、精米機の搗精部は筒状の多孔壁の内部に精白ロールを配置してなり、これらの間に精白すべき米を供給して、摩擦により糠を剥離している。したがって、精米機を用いて米を搗精すると、摩擦熱により精白米の温度が上昇する。
【0003】
精白米の温度が高温になると米の風味や食味が落ちて品質が劣化するため、精米機による一連の精白処理は、搗精部に送風したりするなどして精白米を冷却しながら行なわれたり(特許文献1)、できるだけ温度が高くならないように搗精を複数回に分けて行なわれる。
【0004】
特許文献1に記載の精米装置は、除糠多孔壁と精白ロールとからなる摩擦系圧力式の精白機構と、この精白機構の精白室に送風又は精白室から吸引する冷却ファンを有し、精白ロールの回転負荷を検出して、この負荷情報に基いて冷却ファンを駆動制御している。
【0005】
しかし、精白ロールの回転負荷は精白室の温度と関連はあるものの、間接的に精白室の温度を検出しているため、玄米と糠の直の温度を制御しているものではなく、精白米の温度は摩擦熱によりある程度までは上昇してしまう。
【特許文献1】実公平02−121140
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、搗精することで摩擦熱により精白米の温度が上がってしまう点であり、精白米を精米機から排出する前のできるだけ早い段階で可及的に冷却することで食味の低下及び品質の劣化を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1記載のごとく、米を搗精する搗精部と、この搗精部によって搗精された米を導出する送穀シュートと、この送穀シュートの下端に連通して受けた米を上位排出する揚穀装置とを備えた揚穀装置付き精米機において、上記揚穀装置は縦置きの揚穀管とその内部で米を上方に移送する揚穀手段とから構成し、その揚穀管の米入口の近傍の管壁に通気部を形成し、この通気部から揚穀管の内部空気を吸引する吸引ファンを設けるとともに、上記送穀シュートに外気吸込用の吸風口を設けた。
【0008】
請求項2記載のごとく、前記揚穀手段は、前記揚穀管内で回動するオーガスクリューとした。
【0009】
請求項3記載のごとく、前記搗精部から米を排出する排出部を筒状に形成し、その出口を前記送穀シュートの上端開口内に配置し、この上端開口内の上記排出部との間の隙間によって前記吸風口を形成した。
【0010】
請求項4記載のごとく、前記搗精部と連通して搗精糠を吸引排出する除糠ファンを設け、この除糠ファンは、その吸引側を分岐することにより前記通気部と連通する前記吸引ファンを兼ねる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のごとく、送穀シュートに吸風口を設けるとともに揚穀管の米入口近傍の管壁に通気部を形成して吸引ファンを接続したことにより、送穀シュートから揚穀装置に向かって吸引風の流れが生じ、また送穀シュートと揚穀装置との連通部では乱流が発生して、排出部から順次排出された後ゆっくりと揚穀される精白米を確実に冷却することができ、また、排出された精白米は摩擦等によって加熱されることがないため十分に冷却される。
【0012】
請求項2記載のごとく、揚穀手段を揚穀管内で回動するオーガスクリューとしたことにより、高速に回動するオーガスクリューによって揚穀装置の入口付近で精白米が散乱されるとともに、送穀シュートと揚穀装置との連通部で発生する乱流のため十分な冷却効果が得られる。
【0013】
請求項3記載のごとく、搗精部から米を排出する排出部付近に吸風口を形成したことにより、搗精部から順次排出される精白米を送穀シュートの全長にわたって冷却することができ、吸引ファンによる冷却効果が向上する。
【0014】
請求項4記載のごとく、吸引ファンを除糠ファンで構成したことにより、新たにファンを設ける必要がなく、簡単な構成で安価に冷却装置を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る精米機の冷却装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る精米機の実施態様を示す側面図である。
【0016】
本実施形態における精米機1は、精白される米を投入して貯留するホッパ2と、ホッパ2から供給された米を搗精する搗精部3と、搗精部3から米糠を吸引する除糠ファン4と、搗精部3で搗精された精白米を導出する送穀シュート8と、この送穀シュート8の下端に連通して排出された精白米を高位置にある排出口6へ輸送する揚穀装置5とを備えている。
【0017】
搗精部3は精穀ロール14と除糠網15とにより構成され、除糠網15に除糠ファン4が接続されて、摩擦によって米から剥離した糠を除糠網15から吸引する。
排出部7は図示しないバネと、このバネによって搗精部3方向へ付勢される圧力板16とにより構成される。
【0018】
図2は本発明の要部を示す分解斜視図である。搗精部3で搗精された精白米を排出する排出部7と、この排出部7から排出された精白米を揚穀装置5へ送る送穀シュート8と、精白米を高位置に輸送する揚穀装置5の揚穀管9とが示されている。
【0019】
排出部7を送穀シュート8の上面に形成した開口に連通し、開口部に隙間を形成して吸風口12とする。送穀シュート8は送穀部8aと吸引部8bとを備え、精白米をうける送穀部8aは排出部7側から揚穀装置5へ向かって下方に傾斜させる。吸引部8bには吸引ファンに接続される吸引ダクト13を設ける。送穀シュート8の側面を揚穀装置5の揚穀管9と接続する。
【0020】
揚穀装置5は、筒状の揚穀管9の内部にオーガスクリュー(図示しない)を配置して構成される。揚穀装置5の揚穀管9の一部に通気部11を設ける。通気部11は、揚穀管9の管壁を開口し、その開口穴に精白米よりも小さい網目を有する網や金網などを取付けて形成する。この通気部11を介して送穀シュート8の吸引部8bを接続する。吸引ダクト13に接続する吸引ファンには、搗精部3と接続して米糠を吸引する除糠ファン4を兼用する。
網上部11は、揚穀管9の管壁に精白米よりも小さい穴を多数設けて形成してもよい。
【0021】
次に、上記のごとく構成した精米機の動作について説明する。
ホッパ2は上面が大きく開口し、この開口部から投入された米が、ホッパ2の下端から搗精部3へ一定量づつ供給され、供給された米は搗精部3で搗精される。搗精部3に供給された米は精穀ロール14と除糠網15とに挟まれて互いに擦りあい、この搗精部3に接続された除糠ファン4によって、米糠が除糠網15の網目から吸引される。
【0022】
搗精部3において所望の精白度に搗精された精白米は圧力板16と搗精部3との隙間から押出されて排出部7から順次排出される。送穀シュート8は、排出部7から排出された精白米をうけて、この精白米を揚穀装置5へと案内する。揚穀装置5へ案内された精白米は、オーガスクリュー10によって上方へ移送され、高位置に開口した排出口6から排出される。
【0023】
次に、送穀シュート8及び揚穀装置5における風の流れについて図3を参照して説明する。図3は本発明の要部を示す図で、図1のA−A断面図である。
【0024】
除糠ファンによって吸引された風は図示のごとく、送穀シュート8の上面に設けた吸風口12から入って送穀部8aを通過して揚穀管9に流入した後、網上部11を通って送穀シュート8の吸引部8bに入り、吸引ダクト13から吸引される。一方、精白米は排出部7から排出され、送穀シュート8を通過して揚穀装置5に供給される。揚穀装置5のオーガスクリュー10は高速で回転しているため、揚穀管9に供給された精白米はオーガスクリュー10によって弾かれ、揚穀管9の入口付近で散乱されるとともに、吸引風により冷却される。
【0025】
上記のごとく構成した精米機は以下に述べる効果を奏する。
除糠ファン4が揚穀管9の管壁に設けた通気部11に吸引ダクト13を介して接続されるとともに送穀シュート8に吸風口12が設けられているため、吸風口12から外気を取込んで送穀シュート8から揚穀管9へと通風しているため、排出部7から順次排出される精白米を少量づつ確実に冷却することができるし、さらに排出された精白米は摩擦等によって加熱されていないため十分に冷却することができる。
また、送穀シュート8と揚穀装置5との連通部では乱流が発生し、高い冷却効果が得られる。
【0026】
さらに、揚穀装置5へと案内される精白米は、高速に回転するオーガスクリュー10によって弾かれて揚穀装置5の入口付近で撹拌されるため、揚穀装置5の下部に留まっている間は、上記した吸引風の乱流による効果によって十分に冷却される。
【0027】
吸風口12は送穀シュート8の上位に設けられているため、外気は送穀シュート8の始端から終端にかけて通風し、精白米は送穀シュート8の全長にわたって冷却されて、十分な冷却効果が得られる。
【0028】
吸引ファンは除糠ファン4で構成されており、新しくファンを設ける必要が無いため、安価に構成することができるし、余計なスペースを必要とせず、小型で高性能の精米機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る精米機の実施態様を示す側面図
【図2】本発明の要部を示す分解斜視図
【図3】図1のA−A断面図
【符号の説明】
【0030】
1 精米機
2 ホッパ
3 搗精部
4 除糠ファン
5 揚穀装置
6 排出口
7 排出部
8 送穀シュート
8a 送穀部
8b 吸引部
9 揚穀管
10 オーガスクリュー
11 通気部
12 吸風口
13 吸引ダクト
14 精穀ロール
15 除糠網
16 圧力板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を搗精する搗精部と、この搗精部によって搗精された米を導出する送穀シュートと、この送穀シュートの下端に連通して受けた米を上位排出する揚穀装置とを備えた揚穀装置付き精米機において、
上記揚穀装置は縦置きの揚穀管とその内部で米を上方に移送する揚穀手段とから構成し、その揚穀管の米入口の近傍の管壁に通気部を形成し、この通気部から揚穀管の内部空気を吸引する吸引ファンを設けるとともに、上記送穀シュートに外気吸込用の吸風口を設けたことを特徴とする揚穀装置付き精米機。
【請求項2】
前記揚穀手段は、前記揚穀管内で回動するオーガスクリューからなることを特徴とする請求項1記載の揚穀装置付き精米機。
【請求項3】
前記搗精部から米を排出する排出部を筒状に形成し、その出口を前記送穀シュートの上端開口内に配置し、この上端開口内の上記排出部との間の隙間によって前記吸風口を形成したことを特徴とする請求項1記載の揚穀装置付き精米機。
【請求項4】
前記搗精部と連通して搗精糠を吸引排出する除糠ファンを設け、この除糠ファンは、その吸引側を分岐することにより前記通気部と連通する前記吸引ファンを兼ねることを特徴とする請求項1記載の揚穀装置付き精米機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−205015(P2006−205015A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18838(P2005−18838)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000113919)マルマス機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】