説明

換気機器

【課題】住宅の寝室等において使用される夜間換気機能を有する換気機器において、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがない夜間換気を可能とすることを目的とする。
【解決手段】ファン2、室内温度センサー3、外気温度センサー4、マイコン5を備え、マイコン5は時計19、メモリー20、室内温度予測プログラム21を有し、メモリー20は設定時刻と設定温度を予め記憶しておき、外気温度センサー4が検知した外気温度が室内温度センサー3が検知した室内温度よりも低い場合にマイコン5がファン2を作動させ、また室内温度予測プログラム21がファン2を停止した場合の設定時刻の室内温度を予測し、予測された設定時刻の室内温度が設定温度よりも低い場合にマイコン5がファン2を停止させる構成にしたことにより、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがない換気機器を得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間換気機能を有する換気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日中の気温が高い時期、あるいはそのような地域においては、日中に建物の躯体が蓄熱するため、夜になって外気温度が低下しても室内温度がなかなか低下しないということがよくある。そのような時期にエネルギー消費を抑えながら室内温度を下げるためには、夜に比較的涼しい外気を大量に室内に導入するという夜間換気が有効な手段である。
【0003】
従来、この種の換気機器においては、外気温度と室内温度と室内設定温度に基づいて換気運転が制御されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、その換気機器について図7を参照しながら説明する。図7は従来の換気機器101の構成を示す構成図である。
【0005】
図7に示すように、換気機器101は排気ファン102と給気ファン103と制御部104からなり、外気温度センサー105、室内温度センサー106を備えることにより、検知された外気温度、室内温度と予め設定された室内設定温度に基づいて換気ファン102、103が制御部104によって制御される。具体的な制御方法は、室内温度が室内設定温度より高く、かつ外気温度が室内温度より低い場合に排気ファン102と給気ファン103が運転され、換気を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−80630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の夜間換気用の換気機器においては、室内温度が室内設定温度以下になると換気を停止していた。そのため換気を停止した後にも漏気により低温の外気が室内に流入したり、壁面からの放熱によって躯体の温度がさらに低下したりして、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがあるという課題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことのない換気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明は、換気手段、室内温度検知手段、外気温度検知手段、制御部を備え、前記制御部は時計、情報記憶手段、室内温度予測手段を有し、前記情報記憶手段は設定時刻と設定温度を予め記憶しておき、前記外気温度検知手段が検知した外気温度が前記室内温度検知手段が検知した室内温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を作動させ、また前記室内温度予測手段が前記換気手段を停止した場合の前記設定時刻の室内温度を予測し、予測された前記設定時刻の室内温度が前記設定温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を停止させる換気機器であり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、換気手段、室内温度検知手段、外気温度検知手段、制御部を備え、前記制御部は時計、情報記憶手段、室内温度予測手段を有し、前記情報記憶手段は設定時刻と設定温度を予め記憶しておき、前記外気温度検知手段が検知した外気温度が前記室内温度検知手段が検知した室内温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を作動させ、また前記室内温度予測手段が前記換気手段を停止した場合の前記設定時刻の室内温度を予測し、予測された前記設定時刻の室内温度が前記設定温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を停止させるという構成にしたことにより、前記換気手段が停止した場合でも前記設定時刻の室内温度が概ね前記設定温度になるので、前記設定時刻を明け方頃に設定することにより、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがないという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の換気機器1の構成を示す断面図
【図2】本発明の換気機器1の構成を示す室内側立面図
【図3】本発明の換気機器1の動作に関する情報の流れを示すブロック図
【図4】本発明の換気機器1の夜間換気モードでのフローを示すフロー図
【図5】(a)換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係を示す概念図、(b)測定データと補正後の換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係を示す概念図
【図6】本発明の換気機器22の構成を示す断面図
【図7】従来の換気機器101の構成を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の請求項1記載の換気機器は、換気手段、室内温度検知手段、外気温度検知手段、制御部を備え、前記制御部は時計、情報記憶手段、室内温度予測手段を有し、前記情報記憶手段は設定時刻と設定温度を予め記憶しておき、前記外気温度検知手段が検知した外気温度が前記室内温度検知手段が検知した室内温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を作動させ、また前記室内温度予測手段が前記換気手段を停止した場合の前記設定時刻の室内温度を予測し、予測された前記設定時刻の室内温度が前記設定温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を停止させるという構成を有する。これにより、前記換気手段が停止した場合でも前記設定時刻の室内温度が概ね前記設定温度になるので、前記設定時刻を明け方頃に設定することにより、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがないという効果を奏する。
【0013】
また、前記情報記憶手段は前記換気手段が停止した状態での室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係を予め記憶しておき、前記室内温度予測手段は前記室内温度検知手段が検知した室内温度と前記外気温度検知手段が検知した外気温度との室内外温度差と前記情報記憶手段が記憶している前記換気機器を停止した場合の室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係と前記時計の時刻情報をもとに前記換気機器を停止した場合の前記設定時刻の室内温度を予測し、予測された前記設定時刻の室内温度が前記設定温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を停止させるという構成にしてもよい。これにより、前記換気手段が停止した場合でも前記設定時刻の室内温度が概ね前記設定温度になるので、前記設定時刻を明け方頃に設定することにより、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがないという効果を奏する。
【0014】
また、前記室内温度予測手段は、ある時間に前記室内温度検知手段が検知した室内温度と、同じ時間に前記外気温度検知手段が検知した外気温度と、単位時間後に前記室内温度検知手段が検知した室内温度とを用いて、前記情報記憶手段が記憶している前記換気機器を停止した場合の室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係を補正するという構成にしてもよい。これにより、室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係を実際に前記換気機器が設置された建物の性能、部屋のサイズ、就寝時の在室人数といった特性に応じて補正することができるので、前記室内温度予測手段が予測する前記設定時刻の室内温度の精度を上げることができるという効果を奏する。
【0015】
また、前記設定時刻を変更する設定時刻変更手段と、前記設定温度を変更する設定温度変更手段を備えた構成にしてもよい。これにより、前記設定時刻を時期により異なる明け方の時刻に合わせて調節することができ、また前記設定温度を使用者の好みに応じて調節することができるという効果を奏する。
【0016】
また、停止モード、常時換気モード、夜間換気モードの運転モードを有し、前記運転モードを切替えられる運転モード切替手段を備えた構成にしてもよい。これにより、使用者の好みに応じて前記換気機器を常時換気用の換気機器としても使用できるという効果を奏する。
【0017】
また、前記夜間換気モードが選択された場合に、前記室内温度検知手段が検知した室内温度と前記外気温度検知手段が検知した外気温度を表示する温度表示手段を備えた構成にしてもよい。これにより、前記外気温度検知手段が検知した外気温度が前記室内温度検知手段が検知した室内温度よりも低いかどうかを使用者が自ら確認することができるという効果を奏する。
【0018】
また、前記換気手段を逆回転による送風が可能なファンとし、前記常時換気モードが選択された場合には前記換気手段が排気を行い、前記夜間換気モードが選択された場合には前記換気手段が給気を行うという構成にしてもよい。これにより、常時換気の場合には室内の汚染空気を確実に排出し、また夜間換気の場合には比較的低温の外気を室内に直接導入するため冷房効果が大きいという効果を奏する。
【0019】
また、前記換気手段を逆回転による送風が可能なファンとし、前記室内温度検知手段と前記外気温度検知手段を1つの検知手段とした構成にしてもよい。これにより、検知手段を1つのみ搭載すればよいのでコストを削減できるという効果を奏する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
実施の形態1の換気機器1について、図1〜図5を参照しながら説明する。
【0022】
まずは換気機器1の構成について図1を参照しながら説明する。図1は換気機器1の構成を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、換気機器1は住宅の壁面に埋め込まれ、室内の空気を室外に排出する装置である。換気機器1は換気手段としてのファン2、室内温度検知手段としての室内温度センサー3、外気温度検知手段としての外気温度センサー4、制御部としてのマイコン5を備える。また換気機器1は室内側にカバー6、周囲に筐体7、外気側にシャッター8とそれを支える枠9を備える。また、換気機器1の外側にはフード10を設置して風雨の室内への吹き込みや虫の室内侵入を防ぐのが望ましい。
【0024】
ファン2は比較的大きい風量を確保できるプロペラファンとし、ファン2の外側にはオリフィス11を配置する。ファン2は5〜15回/h程度の換気量が確保できるものとする。夜間換気は特に寝室において使用されることが多いので、静音性に考慮して上記の換気量が確保できる他の種類のファンとしてもよい。ファン2を回転させるモーター12はマイコン5の指示を受けて作動するように構成する。
【0025】
なお換気機器1は必ずしも壁面に埋め込まれた形態でなくてもよい。所望の換気量を確保できるのであれば、換気機器1を天井埋め込み型とし、ファン2をシロッコファン等の高静圧型ファンとしてもよい。
【0026】
室内温度センサー3は例えばカバー6上のような室内空気に暴露される位置に配置され、室内の温度を検知する。外気温度センサー4は例えば枠9上のような外気に暴露される位置に配置され、外気温度を検知する。室内温度センサー3と外気温度センサー4のセンサーは比較的精度がよく、安価なもの(例えば熱電対)とする。
【0027】
次に換気機器1の構成について図2を参照しながら説明する。図2は換気機器1の室内側立面図である。
【0028】
換気機器1はカバー6の中央にフィルター13、カバー6の下部に運転モード切替手段及び設定時刻変更手段及び設定温度変更手段としてのスイッチ14、設定時刻変更手段及び設定温度変更手段としてのボタン15、温度表示手段としての第1モニター16、第2モニター17を備える。
【0029】
フィルター13は室内空気の粉塵等を除いた空気を換気機器1の内部に導入することにより、ファン2などに汚れを着きにくくする。フィルター13のフィルターは比較的圧力損失が少ないもの、例えば不織布とする。
【0030】
スイッチ14はマイコン5に接続され、使用者の指示をマイコン5に伝える。使用者がスイッチ14を1回押すごとに、運転モードが切替えられるようにする。運転モードとしでは停止モード、常時換気モード、夜間換気モードを備えるようにする。このように夜間換気モードだけでなく常時換気モードを持つことにより、使用者の好みに応じて換気機器1を常時換気用の換気機器としても使用することができる。
【0031】
また、使用者がスイッチ14を1回長押しするごとに、上記の運転モード切替、設定温度変更モード、設定時刻変更モードと切替えられるようにする。
【0032】
ボタン15はマイコン5に接続され、使用者の設定温度と設定時刻についての指示をマイコン5に伝える。ボタン15は上下の1組のボタンで構成し、スイッチ14の操作により設定温度変更モードになっている場合に、ボタン15を操作することにより設定温度を上げ下げすることができるようにする。またスイッチ14の操作により設定時刻変更モードになっている場合に、ボタン15を操作することにより設定時刻を早くしたり遅くしたりすることができるようにする。
【0033】
このように設定時刻と設定温度を変更できるようにすることで、設定時刻を時期により異なる明け方の時刻に合わせて調節することができ、また設定温度を使用者の好みに応じて調節することができる。
【0034】
第1モニター16と第2モニター17はマイコン5に接続され、マイコン5の指示を受けて情報を表示する。スイッチ14の操作により設定温度変更モードまたは設定時刻変更モードになっている場合、マイコン5はスイッチ14からの情報を受けて第1モニター16に設定温度または設定時刻の情報を表示する。またスイッチ14の操作により夜間換気の運転モードになった場合については後述する。
【0035】
以上、換気機器1の構成について図1、図2を参照しながら説明した。
【0036】
次に換気機器1の動作について図3を参照しながら説明する。図3は換気機器1の動作に関する情報の流れを示すブロック図である。
【0037】
使用者がスイッチ14及びボタン15を操作すると、その情報を受けてマイコン5が第1モニター16、第2モニター17、ファン2を回転させるモーター12、シャッター8を開閉させるモーター18に指示を出して必要な運転を行う。その際、マイコン5は指示を出すために必要な情報を室内温度センサー3、外気温度センサー4、時計19、情報記憶手段としてのメモリー20、室内温度予測手段としての室内温度予測プログラム21から受け取るものとする。
【0038】
時計19は時刻情報をマイコン5に提供するためのものである。メモリー20は各種情報を記憶しておき、必要なときにマイコン5に情報を提供するためのものである。メモリー20は予め設定温度と設定時刻についての情報を記憶しておき、それらが変更された場合には変更された設定温度と設定時刻を新たに記憶しておく。またメモリー20は、換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係を予め記憶しておく。室内温度予測プログラム21の動作については後述する。
【0039】
次に、常時換気モードが選択された場合の換気機器1の動作について説明する。
【0040】
使用者がスイッチ14で常時換気モードを選択すると、その情報がマイコン5に伝わる。マイコン5はモーター18に指示を出し、シャッター8を開けさせる。同時にマイコン5はモーター12に指示を出し、ファン2を回転させる。常時換気モードの場合のファン2の風量は比較的少なくてよく、例えば8畳の部屋を0.5回/h換気するだけの風量(16m3/h程度)とする。
【0041】
次に、夜間換気モードが選択された場合の換気機器1の動作について図4を参照しながら説明する。図4は夜間換気モードでのフローを示すフロー図である。
【0042】
S1は使用者がスイッチ14を操作して夜間換気モードを選択するステップである。スイッチ14の操作については前述の通りである。
【0043】
マイコン5はスイッチ14からの夜間換気モードが選択されたという情報を受け、S2のステップに移行する。S2は室内温度と外気温度を検知するステップである。
【0044】
S2の詳細について説明する。まずマイコン5はその夜間換気モードが選択される前にどのような運転モードになっていたかを判断し、停止モードになっていた場合はそのまま温度検知を行う。一方常時換気モードか夜間換気モードになっていた場合、つまりファン2が作動していた場合は、マイコン5はモーター12に指示を出してファン2を停止させ、同時にモーター18に指示を出してシャッター8を閉じ、時計19を用いて時間を測り、ファン2が停止してから一定時間(例えば5分)後の室内温度センサー3と外気温度センサー4の温度をそれぞれその時の室内温度と外気温度としてメモリー20に記憶させる。このようにすることで、外気温度センサー4の周囲温度が外気温度に近くなった状態で温度を検知することができる。
【0045】
マイコン5はS2の温度検知が終わった後、S3に移行する。S3は室内温度と外気温度を表示するステップである。
【0046】
S3の詳細について説明する。マイコン5はメモリー20に記憶させていた室内温度についての情報を第1モニター16に表示させ、同様にメモリー20に記憶させていた外気温度についての情報を第2モニター17に表示させる。このとき、どちらが室内温度でどちらが外気温度かが判るように第1モニターの上部に「室内温度」、第2モニターの上部に「外気温度」と記載する等の工夫をすることが望ましい。このように検知された室内温度および外気温度を表示することで、外気温度が室内温度よりも低いかどうかを使用者が自ら確認することができる。使用者が夜間換気モードを選択しても外気温度が室内温度以上である場合はファン2が作動しない(この部分についてはS4で説明する)が、その原因は外気温度が室内温度以上であるためということを使用者が納得することができる。また、外気温度が室内温度より低くなってファン2が作動してもファン2は室内の空気を排出するだけなので使用者は本当に外気温度が室内温度よりも低いのかどうかを実感することができないが、そのような場合においても検知された室内温度と外気温度を確認することで使用者は納得して夜間換気をすることができる。
【0047】
マイコンはS3の温度表示が終わった後、S4に移行する。S4は室内温度と外気温度を比較するステップである。
【0048】
S4の詳細について説明する。マイコン5はメモリー20に記憶させていた室内温度と外気温度を比較し、外気温度が室内温度以上の場合は時計19を用いて時間を測り、一定時間(例えば15分)後にS2に戻り、再び温度検知を行う。また外気温度が室内温度よりも低い場合はS5に移行する。
【0049】
S5について説明する。マイコン5は時計19を用いて、その時点での時刻からメモリー20が記憶している設定時刻までの残り時間を計算し、それが一定値t1(例えば5時間)以上である場合はS6に移行し、換気を行う。またそれが一定値t1よりも小さい場合はS7に移行し、設定時刻の室内温度予測を行う。これは、例えば設定時刻が朝の6時であるときに夕方の18時に夜間換気モードにしたとすると、設定時刻までの残り時間が12時間もあり、設定時刻の室内温度を予測するにしてもその精度が保証できず、場合によっては運転を終了してしまう可能性もある。このように設定時刻までの残り時間が一定値t1以上である場合はひとまず換気を行うことにより、夜間換気をしたいという使用者のニーズを確実に満足させることができる。
【0050】
S6について説明する。マイコン5はモーター12に指示を出し、ファン2を回転させる。夜間換気モードの場合のファン2の風量は室内の熱を排出するという目的なので比較的大きくする必要があり、例えば8畳の部屋を10回/h換気するだけの風量(320m3/h程度)とする。マイコン5は時計19を用いて時間を測り、設定時刻までの残り時間がt1よりも小さくなった時点でS7に移行する。
【0051】
なお換気機器1の夜間換気モードは夜間に寝室で使用されることを考慮すると、騒音が大きくては使用者の睡眠の妨げになる可能性もある。このために夜間換気モードに強ノッチと弱ノッチを設定する等の風量を調節できるような工夫があることが望ましい。
【0052】
以下、S7について詳細に説明する。S7は換気機器1を停止した場合の設定時刻の室内温度を予測するステップである。
【0053】
はじめにマイコン5は温度検知を行う。温度検知の手順はS2で説明したものと同様である。但しその直前にS2により温度検知を行っていた場合はS7で改めて温度検知することはしないようにする。マイコン5は検知された室内温度と外気温度をメモリー20に記憶させる。
【0054】
次にマイコン5は時計19の時刻情報、メモリー20が記憶している室内温度と外気温度、同じくメモリー20が記憶している換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係を室内温度予測プログラム21に提供する。換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係を図5(a)に概念的に示す。当然ながら、そのときの室内外温度差が大きいほど、単位時間あたりの室内温度低下は大きい。単位時間は例えば1時間とする。
【0055】
室内温度予測プログラム21は与えられた情報から、単位時間あたりの室内温度低下が設定時刻までの残り時間の間同様であると仮定し、設定時刻の室内温度を予測する。例えば設定時刻まで3時間あり、そのときの室内外温度差から1時間で室内温度が1度低下するということであれば、設定時刻には現在より室内温度が3度低くなると予測する。
【0056】
メモリー20が予め記憶する換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係は、建物の性能、部屋のサイズ、就寝時の在室人数等についてある一定の条件を仮定した場合の関係であり、実際に換気機器1が設置された住宅においてはそれらの仮定が満足されない可能性が高い。したがって、換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係を補正する機能があることが望ましい。
【0057】
上記のような補正機能を追加する場合、換気機器1が停止モードになっているときにマイコン5がある時間の室内温度と同じ時間の外気温度と単位時間(例えば1時間)後の室内温度を測定し、室内温度予測プログラム21はその測定データを室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下に換算し、それらの近似曲線を計算により求める。求められた近似曲線は補正後の換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係としてマイコン5がメモリー20に改めて記憶させる。図5(b)に測定データと補正後の換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係を概念的に示す。図5(b)では簡単のため近似曲線を直線とした。
【0058】
このようにすることで室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係を実際に換気機器1が設置された建物の性能、部屋のサイズ、就寝時の在室人数といった特性に応じて補正することができるので、室内温度予測プログラム21が予測する設定時刻の室内温度の精度を上げることができる。
【0059】
なお補正用の温度を測定する場合、実際に夜間換気をする状況と同様の状況であることが望ましい。具体的には夜間である(日射の影響がない)こと、在室人数が就寝時の人数と同じであること、窓の開閉状況が就寝時のそれと同じであることなどである。但し窓については基本的に就寝時には閉じられていることを想定している。これは上記の要因によって室内での発熱量や換気量が変わり、換気機器1を停止した場合の室内外温度差と単位時間あたりの室内温度低下についての関係が変化してしまうためである。よって補正用の温度測定を行うタイミングはいつでもよいわけでない。このためには補正用の温度測定を行うのに適した条件がそろっているときに使用者が補正用の温度測定をマイコン5に指示するような構成になっていることや、換気機器1が停止モードになっている場合にマイコン5が夜間の決まった時刻に補正用の温度測定を行うような構成になっていることが望ましい。
【0060】
S8について説明する。マイコン5は室内温度予測プログラム21が予測した設定時刻の室内温度とメモリー20が記憶している設定温度を比較する。予測された設定時刻の室内温度が設定温度以上である場合にはS9に移行し、そうでない場合はS11に移行する。
【0061】
S9について説明する。S9は夜間換気を行うステップである。マイコン5はモーター12に指示を出し、ファン2を回転させる。風量についてはS6で説明した内容と同様である。マイコン5は時計19を用いてS9に移行してからの時間を測り、一定時間(例えば30分)後にS7に移行する。但しS9の間に設定時刻になった場合は直ちにS10に移行する。
【0062】
S10について説明する。マイコン5はモーター12に指示を出してファン2を停止させ、同時にモーター18に指示を出してシャッター8を閉じさせる。ファン2は停止させたが夜間換気モードは継続することになるので、ステップとしては再びS2に戻ることになる。
【0063】
なお、S10のように夜間換気モードの間に夜間換気が適さない状況であると判断されたときにファン2を停止させているが、在室者がいることを考慮してファン2を小風量で作動させて常時換気と同様の状態にさせてもよい。
【0064】
従来の夜間換気用の換気機器においては、室内温度が室内設定温度以下になると換気を停止していた。そのため換気を停止した後にも漏気により低温の外気が室内に流入したり、壁面からの放熱によって躯体の温度がさらに低下したりして、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがあるという課題があった。しかし換気機器1を上記のように停止後の室内温度低下を含めて設定時刻の室内温度を予測し、その予測された温度に基づいて制御することにより、設定時刻の室内温度を概ね設定温度にすることができる。従って設定時刻を明け方頃に設定することにより、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがないようにすることができる。夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうと在室者の体温が低下して健康的な悪影響が出る可能性があるが、換気機器1を使用することによりそのようなことがなくなる。また室内温度が設定温度になるまで換気をせず、設定時刻の室内温度が設定温度より低くなると予測された時点で換気を停止するので、無駄なエネルギーを消費することがなくなる。
【0065】
(実施の形態2)
実施の形態2の換気機器22について、図6を参照しながら説明する。図6は換気機器22の構成を示す断面図である。換気機器22の構成は実施の形態1の換気機器1とほぼ同様であるので、そのような部分に関しては換気機器1と同じ符号を使用するとともに説明を省略する。異なる点は換気機器1に搭載されていた室内温度センサー3と外気温度センサー4がなく、かわりに温度センサー23が搭載されているという点である。温度センサー23はモーター12を支える支柱24等に設置され、ファン2が作動した場合に換気機器22を通る空気に暴露されるようにする。またファン2とモーター12には逆回転可能なものを選定し、空気を室内から屋外に排出するだけでなく屋外から室内に導入することもできるようにする。
【0066】
換気機器22の動作フローも換気機器1とほぼ同様であるので、そのような部分に関しては換気機器1と同じ符号を使用するとともに説明を省略する。以下、換気機器22の動作フローについて換気機器1と異なる点について2点説明する。
【0067】
1点目はS2とS7で温度検知をするが、その温度検知のやりかたについてである。温度検知をする際、マイコン5は温度センサー23を用いて室内温度と外気温度を順番に測定する。それまでファン2が排気方向に作動していた場合ははじめに室内温度を測定し、逆の場合ははじめに外気温度を測定する。室内温度を測定する場合、マイコン5はモーター12に指示を出してファン2を排気方向に回転させ、時計19を用いて時間を測り、一定時間(例えば2分)後の温度センサー23の温度を室内温度としてメモリー20に記憶させる。また外気温度を測定する場合、マイコン5はモーター12に指示を出してファン2を給気方向に回転させ、時計19を用いて時間を測り、一定時間(例えば2分)後の温度センサー23の温度を外気温度としてメモリー20に記憶させる。温度センサー23はファン2を通る空気に暴露されるので、比較的少ない時間で室内温度または外気温度に近い温度を検知するようになると考えられる。
【0068】
このように温度センサー23で室内温度と外気温度の両方を検知することにより温度センサーを1つのみ搭載すればよいので、温度センサーを2つ搭載した場合よりもコストを削減することができる。
【0069】
2点目はS6とS9で夜間換気モードでの換気をするが、そのときにマイコン5がモーター12に指示を出してファン2を給気方向に回転させるという点である。つまり常時換気の場合は室内の汚れた空気を屋外に排出するのが目的であるので排気を行い、夜間換気の場合は屋外の比較的低温の空気を室内に導入することが目的であるので給気を行うということである。
【0070】
換気機器1のように夜間換気を排気によって行うことも可能であるが、その場合は屋外、住宅内の他の部屋、換気機器1が設置されている部屋という順に空気が流れるため、屋外の冷熱が住宅内の他の部屋に先に奪われてしまい、換気機器1が設置されている部屋の温度がなかなか低下しない可能性がある。一方換気機器22のように屋外の空気を直接換気機器22が設置されている部屋に導入すれば、屋外の冷熱が住宅内の他の部屋に先に奪われてしまうというようなことがない。また、夜間換気モードの場合はファン2の風量が比較的大きいので、ファン2から噴き出す気流により在室者の体感温度を下げるという効果も期待できる。
【0071】
このように常時換気モードが選択された場合にはファン2が排気を行い、夜間換気モードが選択された場合にはファン2が給気を行うことにより、常時換気の場合には室内の汚染空気を確実に排出し、また夜間換気の場合には比較的低温の外気を室内に直接導入するため冷房効果が大きいという効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明にかかる換気機器は、夜の間に室内温度が下がりすぎてしまうことがない夜間換気を可能とするものであるので、住宅の寝室等において使用される夜間換気機能を有する換気機器等として有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 換気機器
2 ファン
3 室内温度センサー
4 外気温度センサー
5 マイコン
14 スイッチ
15 ボタン
16 第1モニター
17 第2モニター
19 時計
20 メモリー
21 室内温度予測プログラム
22 換気機器
23 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気手段、室内温度検知手段、外気温度検知手段、制御部を備え、前記制御部は時計、情報記憶手段、室内温度予測手段を有し、前記情報記憶手段は設定時刻と設定温度を予め記憶しておき、前記外気温度検知手段が検知した外気温度が前記室内温度検知手段が検知した室内温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を作動させ、また前記室内温度予測手段が前記換気手段を停止した場合の前記設定時刻の室内温度を予測し、予測された前記設定時刻の室内温度が前記設定温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を停止させる換気機器。
【請求項2】
前記情報記憶手段は前記換気手段が停止した状態での室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係を予め記憶しておき、前記室内温度予測手段は前記室内温度検知手段が検知した室内温度と前記外気温度検知手段が検知した外気温度との室内外温度差と前記情報記憶手段が記憶している前記換気機器を停止した場合の室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係と前記時計の時刻情報をもとに前記換気機器を停止した場合の前記設定時刻の室内温度を予測し、予測された前記設定時刻の室内温度が前記設定温度よりも低い場合に前記制御部が前記換気手段を停止させる請求項1に記載の換気機器。
【請求項3】
前記室内温度予測手段は、ある時間に前記室内温度検知手段が検知した室内温度と、同じ時間に前記外気温度検知手段が検知した外気温度と、単位時間後に前記室内温度検知手段が検知した室内温度とを用いて、前記情報記憶手段が記憶している前記換気機器を停止した場合の室内外温度差と単位時間当たりの室内温度低下についての関係を補正する請求項2に記載の換気機器。
【請求項4】
前記設定時刻を変更する設定時刻変更手段と、前記設定温度を変更する設定温度変更手段を備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の換気機器。
【請求項5】
停止モード、常時換気モード、夜間換気モードの運転モードを有し、前記運転モードを切替えられる運転モード切替手段を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の換気機器。
【請求項6】
前記夜間換気モードが選択された場合に、前記室内温度検知手段が検知した室内温度と前記外気温度検知手段が検知した外気温度を表示する温度表示手段を備えた請求項5に記載の換気機器。
【請求項7】
前記換気手段を逆回転による送風が可能なファンとし、前記常時換気モードが選択された場合には前記換気手段が排気を行い、前記夜間換気モードが選択された場合には前記換気手段が給気を行う請求項5または6のいずれか一項に記載の換気機器。
【請求項8】
前記換気手段を逆回転による送風が可能なファンとし、前記室内温度検知手段と前記外気温度検知手段を1つの検知手段とした請求項1から7のいずれか一項に記載の換気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100932(P2013−100932A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244237(P2011−244237)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】