説明

揺動型運動装置

【課題】 使用者の脛があぶみの輪部に当ったとしても使用者の不快感を緩和することができる揺動型運動装置を提供する。
【解決手段】 揺動型運動装置は、使用者10が跨って着座可能な座席2を有し、この座席2を揺動運動させる運動装置本体1と、この運動装置本体1の左右に吊り下げられ、使用者10が足先12を挿入できる輪部4を有したあぶみ3Aとを備えている。上記あぶみ3Aの輪部4には、使用者10の足の甲の上方に位置する斜辺部4cに、使用者10の脛14に面部分が当るようにひねられたひねり部4dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に使用者を着座させた状態で該座席を揺動運動させることで、上記使用者に運動負荷を付与する揺動型運動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のように、座席に使用者を着座させた状態で該座席を揺動運動させることで、上記使用者に運動負荷を付与する揺動型運動装置は、子供から老人まで利用可能な手軽な運動器具として、当初のスポーツクラブから、一般家庭へと普及してきている。
【0003】
このような揺動型運動装置としては、例えば図9(a)に示すように、運動装置本体1に設けられた座席2を鞍状に形成して使用者10が跨って着座できるようにするとともに、この座席2の左右からあぶみ3を吊り下げ、このあぶみ3に使用者10が足をかけることができるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、上記運動装置本体1が座席2を揺動運動させることにより、使用者10に運動負荷が付与されるように構成されている。
【特許文献1】特開2004−216073
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記あぶみ3としては、上記特許文献1に記載されているようなL字状のものを用いることも可能であるが、近年では、使用者10が座席2から落下することを防止するために、図9に示したように、使用者10が足先12を挿入することのできる輪部4を有したものが採用されている。
【0005】
上記輪部4は、外側に膨らむ形状をなしており、具体的には、図9(b)に示すように、揺動型運動装置の幅方向内側で上下方向に延びる縦辺部4aと、この縦辺部4aの下端部から幅方向外側に延びる底辺部4bと、この底辺部4bの端部と上記縦辺部4aの上端部とを結ぶように延びる斜辺部4cとから構成されている。
【0006】
そして、この輪部4の上端部には取付け孔5aを有した吊り下げ部5が連設され、この吊り下げ部5が座席2に垂設された固定金具2aに取付けられることにより、あぶみ3が座席2に吊り下げられるようになっている。
【0007】
しかしながら、この輪部4を有したあぶみ3を用いた場合には、輪部4の斜辺部4cが使用者10の足の甲の上方に位置するために、座席2を揺動運動させて使用者10に運動負荷を付与したときに、使用者10の脛14がこの斜辺部4cの縁部分(黒丸a参照)に当たることがあり、その際に不快感を生じることがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、使用者の脛が輪部の斜辺部に当ったとしても使用者の不快感を緩和することができる揺動型運動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明に係る揺動型運動装置は、使用者が跨って着座可能な座席を有し、この座席を揺動運動させる運動装置本体と、この運動装置本体の左右に吊り下げられ、使用者が足先を挿入できる輪部を有したあぶみとを備えた揺動型運動装置であって、上記あぶみの輪部には、使用者の足の甲の上方に位置する斜辺部に、使用者の脛に面部分が当るようにひねられたひねり部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、使用者が輪部に足先を挿入しすぎないようにするために、上記あぶみの輪部の底辺部の上面は、使用者が足先を挿入する方向に対して上方に傾斜している構成や、上記あぶみの輪部の底辺部に、使用者の足先を当て止めるストッパーが設けられている構成が好ましく、上記ストッパーは、使用者が足先を挿入する方向に往復スライド可能であるとともに、複数のスライド位置に固定できるように構成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、上記あぶみの輪部の底辺部の上面には、使用者の足の裏に当る突起が設けられている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、あぶみの輪部の使用者の足の甲の上方に位置する斜辺部に、使用者の脛に面部分が当るようにひねられたひねり部を形成したから、座席を揺動運動させて使用者に運動負荷を付与したときに、使用者の脛が輪部に当ったとしても、使用者の不快感を緩和することができる。しかも、この不快感の緩和を、輪部の斜辺部をひねるだけの簡単な構成で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明の第1実施形態の揺動型運動装置は、図1に示すあぶみ3Aが、図9に示したのと同様に運動装置本体1の座席2に吊り下げられたものである。なお、運動装置本体1については上記で説明した背景技術と同様であるためその説明を省略し、以下にあぶみ3Aについて説明する。
【0015】
このあぶみ3Aは、略直角三角形状の輪部4と、この輪部4の上端部に連設される吊り下げ部5とを備えており、全体が合成樹脂により一体に成形されたものである。なお、本明細書では、運動装置本体1の左側に取付けられるあぶみのみを図示するが、運動装置本体1の右側に取付けられるあぶみは図示したものと対称形状となっている。
【0016】
上記吊り下げ部5は、上下方向に延びるとともに揺動型運動装置の幅方向に扁平な短冊板状をなしている。そして、その幅方向の中央部分には、上下方向に並ぶ複数(図例では3つ)の取付け孔5aが設けられていて、使用者10の足の長さに合わせて座席2に垂設された固定金具2a〔図9(a)参照〕への取付け位置が選択できるようになっている。
【0017】
上記輪部4は、揺動型運動装置の幅方向内側で上下方向に延びる縦辺部4aと、この縦辺部4aの下端部から揺動型運動装置の幅方向外側に延びる底辺部4bと、この底辺部4bの端部と上記縦辺部4aの上端部とを結ぶように延びる斜辺部4cとを有している。これらの縦辺部4a、底辺部4b、斜辺部4cは全て短冊板状をなしている。
【0018】
そして、使用者10が輪部4に足先12を挿入したときには、斜辺部4cが使用者10の足の甲の上方に位置することになる。
【0019】
上記縦辺部4a及び底辺部4bの幅方向W〔図1(a)参照〕は、共に輪部4に使用者10が足先12を挿入する方向と略平行となっている。そして、底辺部4bの上面4eには、使用者10が足先12を載せることができるようになっている。
【0020】
上記斜辺部4cの中間部分には、当該斜辺部4cの幅広の面部分が使用者10の脛14に当るようにひねられたひねり部4dが形成されている。このひねり部4dは、斜辺部4cの全体が半ひねりして形成されている。
【0021】
ここで、半ひねりとは、斜辺部4cの上端部が当該斜辺部4cの幅方向中央を走る中心線回りに上下両面が反転するようにひねられることをいう。この上端部のひねられる方向は、運動装置本体1の左側に取付けられる図例のあぶみ3Aでは右回りであり、図略の運動装置本体1の右側に取付けられるあぶみでは左回りである。
【0022】
そして、斜辺部4cの下端部及び上端部は、その幅方向Wが輪部4に使用者10が足先12を挿入する方向と略平行となる状態で、底辺部4bの端部及び縦辺部4aの上端部にそれぞれ連結されている。
【0023】
このように、本実施形態のあぶみ3Aでは、使用者10の足の甲の上方に位置する斜辺部4cに使用者10の脛14に面部分が当るようにひねられたひねり部4dを形成したから、座席2を揺動運動させて使用者10に運動負荷を付与したときに、使用者10の脛14が輪部4の斜辺部4cの面部分に当ったとしても、使用者10の不快感を緩和することができる。しかも、この不快感の緩和を、輪部4の斜辺部4cをひねるだけの簡単な構成で得ることができる。
【0024】
また、このあぶみ3Aの全体を合成樹脂により一体に成形したから、部品点数の増加を伴うことなく上記効果を得ることができる。
【0025】
なお、本発明の揺動型運動装置に用いられるあぶみは、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下の変更が可能である。
【0026】
例えば、輪部4と吊り下げ部5を一体に成形せずに、図2に示すあぶみ3Bのように、輪部4と吊り下げ部5を別々の部材で構成し、それらをかしめピン7で連結するようにしてもよい。この場合に、輪部4を構成する部材として、ひねり可能な軟質性の部材、例えばゴムまたは化学繊維等を編み込んでベルト状にしたもの等を用いて、これの一端側を半ひねりするとともに輪状にして輪部4を形成すれば、斜辺部4cを柔らかい部材で構成することができるため、さらに使用者10の不快感を緩和することができる。
【0027】
ただし、この場合には、輪部4の形状が安定し難いので、図3に示すあぶみ3Cのように、斜辺部4cのみをひねり可能な軟質性の部材で構成することが好ましい。そして、図示したように、吊り下げ部5と輪部4の縦辺部4aとが連続した直線状をなすように、かつ、これと輪部4の底辺部4bとで略L字状をなすような形状にすれば、輪部4やひねり部4dを形成するための複雑な形状の金型を用いることなく、簡単な形状の金型を用いてあぶみ3Cを製造することができ、コストダウンを図ることができる。また、板状の合成樹脂や金属片等を折り曲げてあぶみ3Cを製造することも可能である。
【0028】
さらには、上記ひねり部4dは、斜辺部4cの全体が半ひねりして形成されている必要はなく、図4に示すあぶみ3Dのように、斜辺部4cの中間部分が前向きにひねり起こされて形成されていてもよい。このようにしても、斜辺部4cの面部分が使用者10の脛14に当るようにひねることができる。ただし、この場合には、そのひねり状態を維持するために、斜辺部4cを合成樹脂等で成形することが好ましい。
【0029】
次に、図5に第2実施形態のあぶみ3Eを示す。なお、上述した実施形態と同一構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0030】
このあぶみ3Eでは、使用者10が輪部4に足先12を挿入しすぎないようにするための構造が採用されている。
【0031】
具体的には、輪部4の底辺部4bは、上面4eが輪部4に使用者10が足先12を挿入する方向に対して上方に傾斜する形状に形成され、断面が略台形状になっている。
【0032】
このようにすれば、使用者10は足の裏で底辺部4bの上面4eの勾配を感じ取って、適切な挿入位置に足先12を位置させることができる。従って、使用者10が輪部4に足先12を挿入しすぎて使用者10の脛14が輪部4の斜辺部4cに当ることが抑制される。
【0033】
なお、この使用者10が輪部4に足先12を挿入しすぎないようにするための構造としては、図6〜8に示すあぶみ3F〜3Hのようにすることもできる。
【0034】
図6に示すあぶみ3Fでは、底辺部4bに使用者10の足先12を当て止めるストッパー4fが連設されている。このストッパー4fは、底辺部4bの前側の所定位置で上面4eよりも上方に突出するように断面略L字状をなしている。
【0035】
このようなストッパー4fを設ければ、使用者10が輪部4に足先12を挿入したときにその足先12がストッパー4fに当って、それ以上に足先12を輪部4に挿入できなくなる。
【0036】
なお、このストッパー4fにおいては、図7に示すあぶみ3Gのように、輪部4に使用者10が足先12を挿入する方向と平行な方向、すなわち前後方向に往復スライド可能となっていることが好ましい。
【0037】
このあぶみ3Gでは、底辺部4bの上面4eの中央に前後方向に延びる溝4hが設けられているとともに、ストッパー4fに底辺部4bの溝4hに嵌り込み可能な被ガイド片4iが設けられており、被ガイド片4iが溝4hの側面に案内されてストッパー4fが前後方向、すなわち輪部12に使用者10が足先12を挿入する方向にスライドするようになっている。
【0038】
また、上記溝4hの側面は複数の凹凸を繰り返す形状、いわゆる鋸歯状に形成され、上記被ガイド片4iの先端部は二股状に形成されているとともにその側面には溝4hの側面に係合可能な突起が設けられていて、被ガイド片4iの先端部が弾性変形することによりストッパー4fのスライドが可能となっているとともに、これらの係合によってストッパー4fが複数のスライド位置に固定できるようになっている。
【0039】
このように構成すれば、使用者10の足の長さに応じて簡単にストッパー位置を変更することができる。
【0040】
さらには、図8に示すあぶみ3Hのように、底辺部4bの上面4eに半球状の突起4gを設けてもよい。この突起4gを設ける位置は、使用者10の足の裏に当る位置に設ければよいが、親指の付け根に対応する位置に設けることが好ましい。
【0041】
このようにしても、使用者10は足の裏でこの突起4gを感じ取って、適切な挿入位置に足先12を位置させることができる。
【0042】
なお、上記実施形態のあぶみ3A〜3Hは、上記実施形態で示したように運動装置本体1の座席2から吊り下げてもよいし、運動装置本体1の座席2の直下に位置する部分から吊り下げてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る第1実施形態のあぶみの斜視図であり、(a)は輪部に足先を挿入する前の状態を示し、(b)は輪部に足先を挿入した後の状態を示す。
【図2】変形例のあぶみの斜視図である。
【図3】変形例のあぶみの斜視図である。
【図4】変形例のあぶみの斜視図であり、(a)は全体を示し、(b)はひねり部の拡大図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態のあぶみの斜視図である。
【図6】変形例のあぶみの斜視図である。
【図7】変形例のあぶみの斜視図である。
【図8】変形例のあぶみの斜視図である。
【図9】従来の揺動型運動装置を示す図であり、(a)は正面図、(b)はあぶみの斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 運動装置本体
2 座席
3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3H あぶみ
4 輪部
4a 内辺部
4b 足載置部
4c 斜辺部
4d ひねり部
4e 上面
4f ストッパー
4g 突起
5 吊り下げ部
10 使用者
12 足先
14 脛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が跨って着座可能な座席を有し、この座席を揺動運動させる運動装置本体と、この運動装置本体の左右に吊り下げられ、使用者が足先を挿入できる輪部を有したあぶみとを備えた揺動型運動装置であって、
上記あぶみの輪部には、使用者の足の甲の上方に位置する斜辺部に、使用者の脛に面部分が当るようにひねられたひねり部が形成されていることを特徴とする揺動型運動装置。
【請求項2】
上記あぶみの輪部の底辺部の上面は、使用者が足先を挿入する方向に対して上方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の揺動型運動装置。
【請求項3】
上記あぶみの輪部の底辺部には、使用者の足先を当て止めるストッパーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の揺動型運動装置。
【請求項4】
上記ストッパーは、使用者が足先を挿入する方向に往復スライド可能であるとともに、複数のスライド位置に固定できるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の揺動型運動装置。
【請求項5】
上記あぶみの輪部の底辺部の上面には、使用者の足の裏に当る突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の揺動型運動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−141752(P2006−141752A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336951(P2004−336951)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)