説明

搬送ベルトの製造方法

【課題】製造工程に起因するムラを防止することで良好に媒体を搬送できる、搬送ベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】媒体を載置するとともに搬送する搬送ベルトの製造方法である。ベルト本体50の一方面50a側に流体噴射ヘッド5のノズル5aから流体を噴射して、一方向に延在する複数の凸部71の各々が略平行に配置されてなる凹凸パターン70を有する機能層を形成する。機能層の形成工程においては、流体噴射ヘッド5とベルト本体50とを相対的に移動させつつ、ノズル5aから噴射した流体をベルト本体50の周方向と非直交方向に沿って配置して複数の凸部71を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット型プリンタにおいては、紙などの媒体を搬送しながらインクジェットヘッドから当該媒体へインクを噴射することで、媒体に記録を行うようになっている。媒体を搬送する手段としてローラに掛け渡された搬送ベルトが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−347039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記搬送ベルトの表面には、媒体との間で摩擦力を生じさせるための高摩擦層や磁気エンコーダー層が形成されているが、従来の搬送ベルトを製造する工程では、高摩擦層や磁気エンコーダー層にムラが生じる可能性があった。高摩擦層にムラが生じると、ベルト本体の平坦度が低下し、印字品質が低下してしまう。また、磁気エンコーダー層にムラが生じると良好な読み取りができなくなるため、結果的に印字品質が低下してしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、製造工程に起因するムラを防止することで良好に媒体を搬送できる、搬送ベルトの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の搬送ベルトの製造方法は、媒体を載置するとともに搬送する搬送ベルトの製造方法であって、前記ベルト本体の一方面側に流体噴射ヘッドのノズルから流体を噴射して、一方向に延在する複数の凸部の各々が略平行に配置されてなる凹凸パターンを有する機能層を形成する工程を有し、前記機能層の形成工程においては、前記流体噴射ヘッドと前記ベルト本体とを相対的に移動させつつ、前記ノズルから噴射した前記流体を前記ベルト本体の周方向と非直交方向に沿って配置して前記複数の凸部を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明の搬送ベルトの製造方法によれば、ベルト本体の周方向と非直交方向に沿って配置された複数の凸部からなる凹凸パターンを有する機能層を形成することができる。例えば機能層をベルト本体上の摩擦層として用いる場合、機能層を構成する凹凸パターンの凸部がベルト本体の周方向と非直交方向に延在しているので、搬送方向に沿って生じる凸部に起因する周期的なムラを緩和することができる。よって、機能層上に載置される媒体の平面度の低下が防止され、媒体を良好に搬送可能な搬送ベルトを製造できる。また、例えば機能層をエンコーダー層の下地層として用いる場合、周期的なムラがノイズとなってエンコーダーの読み取り品質を低下させることがなく、媒体を良好に搬送可能な搬送ベルトを得ることができる。
【0008】
また、上記搬送ベルトの製造方法においては、前記機能層の形成工程においては、前記ベルト本体の回転動作に連動して前記流体噴射ヘッドを前記ベルト本体の幅方向に移動しつつ、前記ノズルから前記流体を噴射するのが好ましい。
この構成によれば、ベルト本体の回転動作に連動して流体噴射ヘッドがベルト本体の幅方向に移動されるので、ベルト本体の周方向と非直交方向に沿って配置された複数の凸部を簡便且つ確実に形成することができる。
【0009】
また、上記搬送ベルトの製造方法においては、前記機能層の形成工程においては、前記ベルト本体の回転動作を停止した状態で前記流体噴射ヘッドを前記ベルト本体の周方向と非直交方向に移動しつつ、前記ノズルから前記流体を噴射するのが好ましい。
この構成によれば、流体噴射ヘッドをベルト本体に対して直接傾けて移動することで凸部を所定の方向に沿って良好に形成することができる。また、凸部を形成するに際し、流体噴射ヘッドのみを駆動すればよいので制御を単純化できる。
【0010】
また、上記搬送ベルトの製造方法においては、前記機能層の形成工程においては、前記ベルト本体の周方向の途中で前記相対移動の方向を変えることで複数の前記凹凸パターンを形成するのが好ましい。
この構成によれば、各々の凸部の延在方向が異なる複数の凹凸パターンを有する機能層を形成できるので、凸部に起因する周期ムラをより低減させた搬送ベルトを提供できる。
【0011】
また、上記搬送ベルトの製造方法においては、前記機能層として前記媒体との間に摩擦力を生じさせる摩擦層を形成するのが好ましい。
この構成によれば、上述のように摩擦層の凸部に起因する周期ムラが低減され、良好な平面度を維持した状態で媒体を搬送可能なベルトを提供できる。
【0012】
また、上記搬送ベルトの製造方法においては、前記機能層としてエンコーダーを形成するのが好ましい。
この構成によれば、上述のように周期的なムラに起因するエンコーダーの読み取り性能の低下が防止された搬送ベルトを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェットプリンターの構成を模式的に示す図である。
【図2】搬送ユニットの構成を示す図である。
【図3】搬送ベルトの製造方法を説明するための図である。
【図4】第1の加工処理を説明するための図である。
【図5】第2の加工処理を説明するための図である。
【図6】第3の加工処理を説明するための図である。
【図7】図6に続く搬送ベルトの製造工程説明図である。
【図8】第2の実施形態に係る搬送ベルトの製造工程説明図である。
【図9】図8に続く搬送ベルトの製造工程説明図である。
【図10】第2の実施形態に係る製造工程の変形例を説明する図である。
【図11】搬送ベルトの製造工程の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、本発明の方法によって製造された搬送ベルトを備えた搬送装置をインクジェットプリンターに搭載した場合を例に挙げて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、インクジェットプリンター1の構成を模式的に示す図である。
図1(a)はインクジェットプリンター1の側面図であり、図1(b)はインクジェットプリンター1の平面図である。
【0016】
図1(a)及び図1(b)に示すように、インクジェットプリンター1は、記録ユニット2と、給紙ユニット3と、排紙ユニット4とを有しており、記録用紙(被搬送体)Pなどの媒体に記録を行う流体噴射装置である。インクジェットプリンター1は、記録ユニット2が給紙ユニット3と排紙ユニット4との間に挟まれるように配置されている。
【0017】
記録ユニット2は、記録用紙Pに記録を行うユニットである。記録ユニット2には、搬送ユニット(搬送装置)20及び記録ヘッド21が設けられている。搬送ユニット20は、記録用紙Pを支持しつつ搬送する。記録用紙Pを搬送するための搬送ローラ22(図2参照)が搭載されている。記録ヘッド21は、記録用紙Pにインクを噴射可能に設けられており、不図示のインク供給源に接続されている。
【0018】
給紙ユニット3は、記録用紙Pを支持する支持部材30と、当該記録用紙Pを記録ユニット2へ給紙する給紙ローラ31とを有している。支持部材30は複数枚の記録用紙Pを支持可能になっている。給紙ローラ31は、主動ローラ31a及び従動ローラ31bを有しており、当該主動ローラ31a及び従動ローラ31bの間に記録用紙Pを挟んで給紙するようになっている。主動ローラ31aは不図示の駆動機構に接続されている。
【0019】
排紙ユニット4は、記録用紙Pを支持する支持部材40と、当該記録用紙Pを記録ユニット2から排紙する排紙ローラ41とを有している。支持部材40は、複数枚の記録用紙Pを支持可能になっており、例えばトレイ状に形成されている。排紙ローラ41は、給紙ローラ31と同様、主動ローラ41a及び従動ローラ41bを有しており、2つのローラの間に記録用紙Pを挟んで排紙するようになっている。主動ローラ41aは不図示の駆動機構に接続されている。
【0020】
図2は、記録ユニット2の搬送ユニット20の構成を示す図である。図2(a)は、搬送ユニット20の側面図であり、図2(b)は、搬送ユニット20の平面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、搬送ユニット20は、搬送ローラ(第1駆動機構)22と、搬送ベルト23と、プラテン24と、側板25と、駆動機構26とを有している。
【0021】
搬送ローラ22は、主動ローラ22a、従動ローラ22b及びテンションローラ22cの3種類のローラを有している。主動ローラ22aは、記録用紙Pの搬送方向の先端側に配置されており、駆動機構26の駆動制御によって回転するようになっている。従動ローラ22bは、記録用紙Pの搬送方向の後端側に設けられており、図2(a)に示すように主動ローラ22aと同一の高さ位置に配置されている。テンションローラ22cは、図2(a)に示すように主動ローラ22a及び従動ローラ22bよりも高さ位置の低い位置に配置されており、図2(b)に示すように平面視で主動ローラ22aと従動ローラ22bとの中間の位置に配置されている。
【0022】
搬送ベルト23は、環状に設けられており、表面に記録用紙Pを載置可能になっている。搬送ベルト23は、例えば全周が2m、幅が700mm〜800mmとなっている。また、厚みは、例えば0.125mmとなっている。
【0023】
搬送ベルト23は、内面が主動ローラ22a、従動ローラ22b及びテンションローラ22cにそれぞれ接していると共にテンションローラ22cによって張力が加えられた状態で掛け渡されている。主動ローラ22aの回転により、当該回転が搬送ベルト23に伝達されて搬送ベルト23が回転し、搬送ベルト23の回転により従動ローラ22b及びテンションローラ22cが回転するようになっている。
【0024】
搬送ベルト23の表面には摩擦係数の高い高μ層(機能層)10が形成されている。この高μ層10は記録用紙Pとの間で摩擦力を生じさせる摩擦層として機能するものであり、記録用紙Pを摩擦力によって搬送可能となっている。また、搬送ベルト23には表面側を吸引する吸引孔11が設けられており、当該吸引孔11は不図示の吸引機構に接続されている。当該吸引孔11によって記録用紙Pを吸着して搬送できるようになっている。また、搬送ベルト23には磁気エンコーダー(機能層)12も形成されている。
【0025】
プラテン24は、搬送ベルト23の内面側に設けられており、図2(b)に示すように平面視で主動ローラ22aと従動ローラ22bとの間に配置されている。プラテン24は、搬送ベルト23のうち記録用紙Pを搬送する位置を支持することで、記録ヘッド21と記録用紙Pとの間の距離を一定に保っている。
【0026】
側板25は、図2(a)に示すように上記3つの搬送ローラ22を支持する板状部材であり、側面視で搬送ベルト23の搬送面に対して突出するように設けられている。当該側板25は図2(b)に示すように平面視でプラテン24のうち搬送方向の側部に沿って設けられている。このため、記録用紙Pは搬送ベルト23の回転により、側板25の上記突出部分をガイドとして側板25の間を搬送されて通過するようになっている。
【0027】
ここで、図3、4を参照して搬送ベルト23の特徴的構成である高μ層10の構成について説明する。なお、図3(a)は高μ層10の平面形状を示す拡大図であり、図3(b)は高μ層10の構成を示す斜視拡大図である。なお、図3(a)、(b)においては磁気エンコーダー12の図示を省略している。また、図4(a)は磁気エンコーダー12の平面形状を示す図であり、図4(b)は磁気エンコーダー12の構成を示す斜視拡大図である。なお、図4(a)、(b)においては高μ層10の図示を省略している。
【0028】
高μ層10は、図3(a)、(b)に示されるように後述するインクジェット法により形成された凹凸パターン70を有している。この凹凸パターン70は、一方向(図3(a)中、符号Aで示される方向)に沿って延在するとともに各々が略平行に配置される複数の凸部71と、これら複数の凸部71の間に設けられる凹部72とを含むものである。凹凸パターン70(高μ層10)は、例えば摩擦係数の高い材料(例えば、ポリウレタン塗料)から構成されている。
【0029】
すなわち、凹凸パターン70は凸部71と凹部72とが規則的に配置されることで構成されたものとなっている。具体的に凸部71は、搬送ベルト23の基材をなすベルト本体50の周方向と非直交方向に沿って延在している。本実施形態においては、凸部71は、ベルト本体50の周方向(図3(a)中に示されるX方向)の直交方向(図3(a)中に示されるY方向)に対して45°の角度θをなすように延在している。
【0030】
磁気エンコーダー12は、図4(a)、(b)に示されるように後述するインクジェット法により形成された凹凸パターン80からなる磁性層12aを有している。この凹凸パターン80(磁性層12a)は、一方向(図4(a)中、符号Bで示される方向)に沿って延在するとともに各々が略平行に配置される複数の凸部81と、これら複数の凸部81の間に設けられる凹部82とを含むものである。磁気エンコーダー12は、後述のように磁性層12a(凹凸パターン80)に磁気を書き込むことで構成されている。
【0031】
すなわち、凹凸パターン80は凸部81と凹部82とが規則的に配置されることで構成されたものとなっている。具体的に凸部81は、搬送ベルト23の基材をなすベルト本体50の周方向(図4(a)、(b)中、X方向)と非直交方向に沿って延在している。具体的に本実施形態においては、凸部81はベルト本体50の周方向(図4(a)中に示されるX方向)の直交方向(図3(a)中に示されるY方向)に対して155°の角度θをなすように延在している。すなわち、磁気エンコーダー12の凸部81の延在方向は、高μ層10の凸部71の延在方向(符号Aで示される方向)に直交した状態となっている。
【0032】
次に、図5から図7を参照しつつ、上記搬送ベルト23の製造方法を説明する。
まず、図5(a)に示すように、搬送ベルト23の基材となるベルト本体50を加工用主動ローラ62と加工用従動ローラ63とに掛け渡す。なお、ベルト本体50は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシート状部材を溶着することで構成される。
【0033】
続いて、ベルト本体50に対し、搬送ベルト23を形成するための所定の加工を行う。本実施形態では、所定の加工として複数の加工処理、例えば3つの加工処理を行っている。第1の加工処理は、ベルト本体50の表面50aに摩擦力を付与する処理である。また、第2の加工処理は、ベルト本体50に吸引孔11を形成する穴あけ処理である。また、第3の加工処理は、ベルト本体50の側部に磁気エンコーダー12を形成する処理である。
【0034】
以下、加工処理について具体的に説明する。
まず、図5(a)及び図5(b)に示すように、不図示の駆動機構によって加工用主動ローラ62及び加工用従動ローラ63を回転させベルト本体50を回転移動させた状態とし、インクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)5のノズル5aから摩擦係数の高い材料(例えば、ポリウレタン塗料)を含んだ液状体(流体)71aをベルト本体50の表面(一方面)50aに噴射して、一方向に延在する複数の凸部71の各々が略平行に配置されてなる凹凸パターン70を有する上記高μ層10を形成する。
【0035】
具体的に本実施形態では、ベルト本体50の回転動作に連動してインクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)5をベルト本体50の幅方向(図5(b)中、Y方向)に移動しつつ、ノズル5aから液状体を吐出する。これにより、ノズル5aから吐出した液状体をベルト本体50の周方向(同図中、X方向)と非直交方向に沿って配置する(具体的に本実施形態では、図3(a)に示したようにベルト本体50の幅方向に対して45°の角度をなすように配置される)。
【0036】
上記動作を繰り返すことにより、ベルト本体50の表面50aの全体に液状体を塗布する。そして、液状体を乾燥してベルト本体50の表面50aに凸部71及び凹部72を形成する。よって、ベルト本体50の表面50aには、図3(a)、(b)に示したように、所定方向に凸部71と凹部72とが規則的に配置されてなる凹凸パターン70を備えた高μ層10が形成される(第1の加工処理)。
【0037】
ベルト本体50の表面50aに高μ層を形成した後、図6(a)及び図6(b)に示すように、ベルト本体50を回転移動させた状態で、金型9によってベルト本体50に貫通孔を形成し、吸引孔11とする(第2の加工処理)。なお、図6(a),(b)においては、図面を分かり易くするため、ベルト本体50に形成されている高μ層10を簡略化して図示している。
【0038】
この吸引孔11は、例えばベルト本体50の表面50a側を吸引するものである。また、加工用主動ローラ62の上方にエアブロー装置7を配置し、ベルト本体50に対してエアーを吹き付けることにより、吸引孔11及びベルト本体50に付着した異物を除去するようにする。
【0039】
ベルト本体50に吸引孔11を形成した後、図7(a)及び図7(b)に示すように、ベルト本体50を回転移動させた状態で、インクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)8によって磁性体材料を吐出し、ベルト本体50の側部に磁性層12aを形成する。本実施形態では、上記高μ層12と同様、ベルト本体50の回転動作に連動してインクジェットヘッド8をベルト本体50の幅方向に移動しつつ、ノズル5aから磁性体材料を吐出する。これにより、ノズル8aから吐出した磁性体材料をベルト本体50の周方向(同図中、X方向)と非直交方向に沿って配置する。本実施形態では、磁性体材料をベルト本体50の幅方向(同図中、Y方向)に対して155°の角度θをなす方向(凸部71の延在方向と直交する方向)に沿って配置する。
そして、上述のようにして形成した磁性層12aに対し、磁気書き込みヘッドを用いて磁気(N極、S極)を書き込む。これによりベルト本体50の側部に磁気エンコーダー12を形成することができる(第3の加工処理)。このようにして、高μ層10、吸引孔11及び磁気エンコーダー12を有する搬送ベルト23が形成される。
【0040】
ところで、インクジェットヘッド5から液状体を吐出することで高μ層(凹凸パターン70)10を形成する場合、各凸部71間で僅かながら塗布ムラが生じてしまう。そのため、凸部71がベルト本体50の周方向に直交する方向に延在していると、搬送ベルト23の周方向(回転方向)に沿って凸部71が規則的に配置されることとなり、凸部71に起因する周期ムラ(周期的な凹凸)によって搬送ベルト23上に載置される記録用紙Pの平面度が低下し、印字品質が低下するおそれがある。
【0041】
同様に、インクジェットヘッド8から磁性体材料を吐出することで磁性層12a(凹凸パターン80)を形成する場合、各凸部81間で僅かながら塗布ムラが生じてしまう。そのため、凸部81がベルト本体50の周方向に直交する方向に延在していると、搬送ベルト23の周方向(回転方向)に沿って凸部81が規則的に配置されることとなる。このような磁気エンコーダー12を接触方式のセンサーで読み取ると、凸部81に起因する周期ムラ(周期的な凹凸)がノイズとなって磁性層12aに書き込まれた磁気の読み取り品質が低下するおそれがある。
【0042】
これに対し、上記方法によって製造された搬送ベルト23によれば、凹凸パターン70を構成する凸部71がベルト本体50の周方向と非直交方向(本実施形態では、ベルト本体50の幅方向に対して45°の角度をなす方向)に沿って延在したものとなる。また、凹凸パターン80を構成する凸部81がベルト本体50の周方向と非直交方向(本実施形態では、ベルト本体50の幅方向に対して155°の角度をなす方向)に沿って延在したものとなる。したがって、記録用紙Pの搬送方向に生じる凸部71、凸部81に起因するムラを分散させることができる。よって、凹凸パターン70上に載置される記録用紙Pの平面度の低下を防止することができ、記録用紙Pに対して良好な印字を行うことができる。さらに、磁気エンコーダー12の高精度な読み取りが可能となるため、高信頼性の印字品位を得ることができる。
【0043】
(第2の実施形態)
続いて、搬送ベルトの第2の実施形態について説明する。本実施形態での搬送ベルトは、高μ層が複数の凹凸パターンを有し、且つベルト本体の周方向において、複数の凹凸パターンの各々における凸部の延在方向がそれぞれ異なっている点のみ第1の実施形態と異なっている。よって、第1の実施形態と共通の構成部材については同一の符号を付し、その説明については省略若しくは簡略化する。
【0044】
図8は本実施形態に係る搬送ベルト123を展開した際の平面構成を示す図である。なお、図8においては図面を分かり易くするため、ベルト本体50の表面50aに形成される高μ層112のみを図示している。
本実施形態に係る高μ層112は、図8に示されるように複数(本実施形態では、2つ)の凹凸パターン170を有している。具体的に凹凸パターン170は、第1の凹凸パターン171と第二の凹凸パターン172とを含んでいる。第1の凹凸パターン171と第二の凹凸パターン172とは、ベルト本体50の周方向(図8中、X方向)において、凸部171a,172aの延在方向がそれぞれ異なっている。
【0045】
具体的に第1の凹凸パターン171を構成する凸部171aは、第1の実施形態の凸部71と同一の方向に延在するようにベルト本体50上に設けられている。また、第2の凹凸パターン172を構成する凸部172aは、上記凸部171aと直交する方向に延在するようにベルト本体50上に設けられている。
【0046】
上記高μ層112を製造する場合、図9に示されるようにベルト本体50の周方向に沿ってインクジェットヘッド5におけるベルト本体50に対する相対移動の方向を変えることで上記凹凸パターン171、172を構成する凸部171a、172a(凹凸パターン171,172)を形成することができる。
【0047】
本実施形態によれば、高μ層112が各々の凸部171a,172aの延在方向が異なる第1、第2の凹凸パターン171、172を有するので、記録用紙Pの搬送方向に生じる凸部171、172に起因するムラを第1の実施形態に比べ、より分散させることができる。
【0048】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態では、ベルト本体50の回転動作に連動してインクジェットヘッド5をベルト本体50の幅方向に移動させつつ、ノズル5aから液状体を吐出することで凸部71を形成する場合について説明したが、図10に示すようにベルト本体50の回転動作を停止した状態で、インクジェットヘッド5自体をベルト本体50の周方向と非直交方向(例えば、ベルト本体50の幅方向に対して45°の角度をなす方向)に移動しつつ、ノズルから液状体を吐出するようにしてもよい。このようにインクジェットヘッド5をベルト本体50に対して直接傾けた状態で移動することで凸部71を所定の方向に沿って良好に形成することができる。また、凸部71を形成するに際し、インクジェットヘッド5のみを駆動すればよいので制御を単純化できる。
【0049】
また、上記実施形態では、ベルト本体50の幅方向に対して移動しつつ液状体を吐出するシリアル方式のインクジェットヘッドについて説明したが、ベルト本体50の幅に対応するライン方式のインクジェットヘッド105を用い、ベルト本体50の回転動作を停止した状態で、図11に示すようにインクジェットヘッド105をベルト本体50の周方向と非直交方向(例えば、ベルト本体50の幅方向に対して45°の角度をなす方向)に移動しつつ、ノズル5aから液状体を吐出するようにしてもよい。さらに、図9に示した場合と同様、インクジェットヘッド105のベルト本体50に対する移動の方向を、例えばベルト本体50の幅方向に対して155°の角度をなす方向に変えるようにしてもよい。このようにすれば、上記凹凸パターン171、172を構成する凸部171a、172a(凹凸パターン171,172)を第2の実施形態に比べて短時間で形成することができる。
【0050】
また、上記実施形態では凹凸パターンにおける凸部の延在方向がベルト本体50の周方向と非平行状態とする場合を例としたが、本発明では凹凸パターンにおける凸部がベルト本体50の周方向と平行に延在するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、吸引孔11を形成する際に、金型を用いて形成する例を説明したが、これに限られることは無く、例えばレーザ照射を用いる構成であっても構わない。
また、上記実施形態では、加工用主動ローラ62及び加工用従動ローラ63に掛け渡した状態で搬送ベルト23を形成するようにしたが、上記搬送ユニット20に用いられる搬送ローラ22、プラテン24、側板25及び駆動機構26を組み立て、ベルト本体50を掛け渡して搬送ベルト23を製造するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
P…記録用紙(媒体)、5…インクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)、5a…ノズル、10…高μ層(摩擦層、機能層)、8…インクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)、8a…ノズル、12…磁気エンコーダー(機能層)、20…搬送ユニット(搬送装置)、21…記録ヘッド、22…搬送ローラ、23…搬送ベルト、70…凹凸パターン、71…凸部、80…凹凸パターン、81…凸部、105…インクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)、170…凹凸パターン、171…第1の凹凸パターン、172…第2の凹凸パターン、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を載置するとともに搬送する搬送ベルトの製造方法であって、
前記ベルト本体の一方面側に流体噴射ヘッドのノズルから流体を噴射して、一方向に延在する複数の凸部の各々が略平行に配置されてなる凹凸パターンを有する機能層を形成する工程を有し、
前記機能層の形成工程においては、前記流体噴射ヘッドと前記ベルト本体とを相対的に移動させつつ、前記ノズルから噴射した前記流体を前記ベルト本体の周方向と非直交方向に沿って配置して前記複数の凸部を形成することを特徴とする搬送ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記機能層の形成工程においては、前記ベルト本体の回転動作に連動して前記流体噴射ヘッドを前記ベルト本体の幅方向に移動しつつ、前記ノズルから前記流体を噴射することを特徴とする請求項1記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記機能層の形成工程においては、前記ベルト本体の回転動作を停止した状態で前記流体噴射ヘッドを前記ベルト本体の周方向と非直交方向に移動しつつ、前記ノズルから前記流体を噴射することを特徴とする請求項1記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記機能層の形成工程においては、前記ベルト本体の周方向の途中で前記相対移動の方向を変えることで複数の前記凹凸パターンを形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記機能層として前記媒体との間に摩擦力を生じさせる摩擦層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記機能層としてエンコーダーを形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送ベルトの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−208823(P2010−208823A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58283(P2009−58283)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】