説明

搬送台車、搬送装置及び搬送方法

【課題】中量物や重量物を搬送する搬送台車において、小型化を妨げることなく、各車輪にかかる偏荷重を抑制して耐久性を向上させること。
【解決手段】搬送対象物が載置される台座5とこの台座5を支持する走行台車3とを備え、走行台車3は、フレーム9に支持された同軸の2つの回転軸21a,21bに、回転可能に設けられた2つの車輪7a,7bと、フレーム9に支持され2つの車輪を独立に回転させる駆動装置と、車輪の回転軸と直交する方向の水平軸回りに揺動可能にフレームに支持される支持部材47とを有し、2つの車輪7a,7bは、支持部材47の両側に設けられ、支持部材47は、台座5の台座面と直交する軸回りに台座を回動可能に支持する軸受51を介して垂下して設けられること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車、搬送装置及び搬送台車を用いた搬送方法に係り、特に、重量物の搬送・据付けに好適な重量物搬送用の極低床搬送台車とこれを用いた搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的重量の大きな搬送対象物を搬送する装置として、特許文献1に記載される搬送台車が知られている。この搬送台車は、台車の上に搬送対象物が載置される台座を支持して構成される。台車は、2つの駆動ローラとフリーローラを備えており、2つの駆動ローラは、それぞれモータで別個に回転制御されるようになっている。台座は、回転自在に台車に支持された下板と、下板の上に載置され、空気の出入口が設けられた袋体と、袋体の上に載置されて搬送対象物が載置される上板を備えて構成される。袋体は、内部に空気を出し入れして膨張又は収縮させることにより上板を昇降させるエアジャッキとなっている。
【0003】
特許文献1では、このような搬送台車を複数台用いることにより、1つの搬送対象物を搬送するようになっている。この搬送方法としては、先ず、床面と床面上に載置された搬送対象物との間に複数の搬送台車を配置させ、袋体に空気を入れて各搬送台車の上板を上昇させることにより、上板の上に載置された搬送対象物を持ち上げる。そして、各搬送台車の移動速度と移動方向を同調制御して各搬送台車の相対位置を一定に保持したまま運行させることにより、搬送対象物を据付け位置まで搬送させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−206613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の搬送台車は、比較的小型でありながら、重量の大きな搬送対象物を搬送するため、走行中の車輪には非常に大きな荷重(負荷)が作用している。ここで、車輪にかかる荷重は、すべての車輪で均一であることが望ましいが、うねりや段差などのある路面では、各車輪にかかる荷重に偏りが生じることがある。例えば、特許文献1の搬送台車が路面を走行中、左右の車輪の一方が段差に乗り上げ、他方の車輪に浮きが生じると、乗り上げた方の車輪には非常に大きな荷重が作用することになる。このように車輪間に大きな偏荷重が生じた場合、車輪や車軸、或いは、車軸の軸受などに大きな損傷を招くおそれがある。
【0006】
一方、この種の搬送台車は小型化、特に接地面からの総高さの低床化の要望が強く、各車輪の偏荷重に対応するため、例えば、車輪や車軸或いは軸受などの耐久性を高める構造に変更した場合、台車全体の大型化を招いてしまい、小型化の要望に対応できなくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、中量物や重量物を搬送する搬送台車において、小型化を妨げることなく、各車輪にかかる偏荷重を抑制して耐久性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、搬送対象物が載置される台座とこの台座を支持する走行台車とを備えた搬送台車において、走行台車は、フレームと、このフレームに支持された同軸の2つの回転軸に回転可能に設けられた2つの車輪と、フレームに支持され2つの車輪を独立に回転させる駆動装置と、車輪の回転軸と直交する方向の水平軸回りに揺動可能にフレームに支持される支持部材とを有し、2つの車輪は、支持部材の両側に設けられ、この支持部材は、台座の台座面と直交する軸回りに台座を回動可能に支持する軸受を介して垂下して設けられることを特徴としている。
【0009】
このように走行台車と支持部材を車輪の回転軸と直交する方向、つまり走行台車の進行方向の軸回りで相対的に回動させることにより、片方の車輪が段差などに乗り上げたときには、その車輪の乗り上げと連動して、走行台車が支持部材に対して相対的に回動するため、段差に乗り上げたときの車輪の浮きを防ぐことができ、その結果、車輪にかかる偏荷重を抑制することができる。また、走行台車が軸回りに回動しても、同じ軸に支持される支持部材はその影響を受けないため、支持部材に支持される台座は水平状態が保持される。したがって、搬送対象物の荷重は常に真下の支持部材の方向に作用するため、各車輪にかかる荷重の変動を抑制することができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、支持部材は、2つの車輪の間に配置するとともに、軸を介してフレームに支持するだけの簡単な構造で済むため、走行台車の小型化を妨げることなく、コンパクトな構造を実現することができる。具体的には、フレームに、2つの車輪の間に車輪の回転軸と直交して互いに間隔を開けて設けられる2枚の仕切壁を設け、支持部材をフレームの2枚の仕切壁に挟まれた空間内に収納させることが好ましい。
【0011】
また、台座は、支持部材に軸受を介して支持される下板と、この下板上に載置され空気出入口を備えた袋体と、搬送対象物が載置され袋体の上に載置される上板とからなるものとする。このように上板と下板との間に空気の出し入れで膨張又は収縮する柔構造の袋体を設けることにより、搬送台車が路面を走行中、下板が傾くことがあっても、袋体が搬送対象物の重みで変形するため、上板の水平が保たれる。これにより、うねりや段差のある路面を走行していても、搬送対象物を傾けることなく安定して搬送することができ、かつ、各車輪の偏荷重を抑制することができる。また、車輪が段差に乗り上げたときの衝撃を吸収することができる。
【0012】
また、走行台車は、2つの車輪に対して進行方向の前方及び後方に向かって、それぞれフレームの底面が上方向に傾斜する傾斜面が形成されてなるものとする。このように底面を傾斜面とすることにより、搬送台車がうねりや段差などがある路面を走行していても、底面と段差などの接触を抑制することができるため、うねりや段差などの乗り越えを容易化することができる。
【0013】
また、台座は、下板の互いに対向する端部とこの下板の端部と対向する上板の端部とがそれぞれ連結部材で連結され、連結部材は、第1乃至第4の板状部材が3つの回転軸部で回動可能に連結された3軸の蝶番からなり、第1の板状部材は下板の端部に取り付けられ、第4の板状部材は上板の端部に取り付けられ、第2の板状部材と第3の板状部材は、袋体側に折り畳まれるように弾性部材で付勢されてなるものとする。
【0014】
このように下板と上板を連結部材で連結し、弾性部材で連結部材の動作方向を規制することにより、袋体を膨張又は収縮させたときの上板の昇降を案内することができるため、下板に対する上板のずれや傾きなどを抑制することができる。
【0015】
この場合において、連結部材は、第2の板状部材と第3の板状部材が折り畳まれたときに、3つの回転軸部が互いに当接しないように、3つの回転軸部の位置が互いにずらして設けられるものとする。このように回転軸部の位置をずらして配置することにより、連結部材が折り畳まれたときの厚みを最小化することができるため、上板を最下位まで降下させたときの搬送台車の高さを低くすることができる。
【0016】
また、台座は、下板の袋体が載置される面と上板の袋体と対向する面の少なくとも一方に、袋体の外縁に沿って突出する突条部が設けられているものとする。このように突条部を設けることで、袋体は突条部に案内されて膨張又は収縮し、特に、収縮する袋体を適正な位置に収納することが可能となる。
【0017】
また、走行台車の駆動装置は、モータとモータの動力を車輪に伝達する減速歯車列を含んでなり、この駆動装置は車輪の高さの範囲内に設けられているものとする。このようにすることで、走行台車の高さを低くすることができ、かつ、適正な走行速度を確保することができる。
【0018】
さらに、上記のような搬送台車を複数備え、この複数の搬送台車の台座を互いに連結させた状態で、搬送対象物を搬送するようにしてもよい。このように複数の搬送台車を連結させて一つの搬送装置とすることにより、搬送対象物の大きさや重量などに応じて搬送装置の構成を適宜切り替えることができるため、搬送形態の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、中量物や重量物を搬送する搬送台車において、小型化を妨げることなく、各車輪にかかる偏荷重を抑制して耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用される搬送台車を正面から見たときの断面図である。
【図2】本発明が適用される搬送台車における走行台車の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は右側面図、(c)は正面図である。
【図3】本発明が適用される搬送台車において、左半分は台座の上面図、右半分は走行台車の上面図である。
【図4】本発明が適用される搬送台車の台座の組み立て作業と台座の動作を説明する図である。
【図5】本発明が適用される搬送台車において、台座を走行台車に組み付ける作業を説明する正面図である。
【図6】本発明が適用される搬送台車において、台座を走行台車に組み付ける作業を説明する側面図である。
【図7】本発明が適用される搬送台車が平坦な路面を走行するときの動作を説明する正面図である。
【図8】本発明が適用される搬送台車の片方の車輪が段差に乗り上げたときの動作を説明する正面図である。
【図9】本発明が適用される複数の搬送台車を互いに連結させたときの構成を示す上面図である。
【図10】図9において、各搬送台車が互いに連結される部分の構造を拡大して示す図である。
【図11】図10と異なる他の連結部分の構造を示す図である。
【図12】図9と搬送台車の台数が異なる他の実施の形態を示す上面図である。
【図13】図9、図12と搬送台車の台数が異なる他の実施の形態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用してなる搬送台車の実施の形態について図面を参照して説明する。図1乃至図3に示すように、搬送台車1は、走行台車3と台座5を備えている。走行台車3は、2つの車輪7を有しており、各車輪7の回転が別個に制御されることにより、直進、操蛇、旋回の各動作が可能になっている。台座5は、走行台車3の上に回動可能に支持されており、搬送対象物を載置して昇降させるジャッキ機能を有している。なお、走行台車3は、2つの車輪7とともに1又は複数の補助輪又は走行面を摺動する補助足を設けることにより、自走可能になっている。以下、補助輪、補助足については説明を省略する。
【0022】
まず、走行台車の構造について説明する。図2に示すように、走行台車3は、フレーム9と、2つの車輪7a,7bと、駆動装置と、図示しない制御装置を備えている。駆動装置は、モータ11と、減速歯車列13から構成される。なお、走行台車3は、駆動装置が左右対称となるため、図2(a)の左側の駆動装置は省略し、右側の駆動装置のみを説明する。
【0023】
図2(a)に示すように、フレーム9は、真上から見たときに矩形に形成される枠体15を中心に、この枠体15の長い方の側壁(以下、長壁Aという。)から水平方向に4本の延出部17a〜17dが連設されている。枠体15の内側は、枠体15を構成する短い方の側壁(以下、短壁Bという。)と平行な2枚の仕切壁19a,19bにより3つの部屋に仕切られている。そして、一方の短壁B1と仕切壁19aとの間には車輪7aが設けられ、他方の短壁B2と仕切壁19bとの間には車輪7bが設けられている。車輪7aの回転軸21aは、短壁B1と仕切壁19aとにそれぞれ軸受を介して回転自在に支持されており、車輪7bの回転軸21bは、短壁B2と仕切壁19bとにそれぞれ軸受を介して回転自在に支持されている。回転軸21aと回転軸21bは同軸に設けられ、これらは仕切壁19a,19bと直交するように配置されている。
【0024】
延出部17a,17bは、一方の長壁A1から互いに平行に延出され、その延出させた面の側面には、モータ11を支持する貫通穴23が設けられている。この延出部17a,17bは、それぞれ短壁B1,B2と段差を形成するように、長壁A1の左右の端よりも内側から延出されている。延出部17c,17dは、他方の長壁A2の左右の両端から互いに平行に延出され、その延出させた面の側面には、制御装置を支持する貫通穴25が設けられている。
【0025】
駆動装置は、車輪7ごとに別個に設けられており、モータ11の回転動力が減速歯車列13を介して車輪7に伝達されるようになっている。減速歯車列13は、モータ11の回転軸に同軸となるように固定した小歯車27と、小歯車27と噛み合う中歯車29と、中歯車29の回転軸と同軸となるように固定した従動歯車31と、従動歯車31と噛み合う外輪歯車33を備えている。
【0026】
中歯車29と従動歯車31の回転軸35は、短壁B2と仕切壁19bとに、それぞれ軸受を介して回転自在に支持されている。従動歯車31は、短壁B2の内側(枠体15の中)に配置される一方、中歯車29は、短壁B2の外側(枠体15の外)に配置されている。外輪歯車33は、車輪7bの回転軸21bに同軸となるように固定され、短壁B2の内側に配置されている。中歯車29の歯車外径は、小歯車27の歯車外径よりも大きく、外輪歯車33の歯車外径よりも小さく設定されている。
【0027】
図2(c)に示すように、モータ11と駆動装置は、走行台車3の接地面から車輪7の高さhまでの高さの範囲内に設けられている。より具体的には、モータ11の回転軸と、中歯車29の回転軸35と、車輪7bの回転軸21bは、互いに平行かつ略水平の高さ位置に配置されている(図2(a),(b))。小歯車27と中歯車29は、外側からフレーム9に取り付けられたカバー37の内側に収納されている。
【0028】
フレーム9の延出部17c,17dの貫通穴25に支持された制御装置、例えば制御ボックスは、外部のコントローラからの指令に基づいて、モータ11などに駆動信号を出力するようになっている。
【0029】
また、本実施の形態の走行台車3は、図2(b)に示すように、2つの車輪7に対して進行方向の前方及び後方に向かって、それぞれ底面が上方向に傾斜するように、フレーム9の床面が傾斜構造となっている。
【0030】
一方、走行台車3のフレーム9には、長壁A1,A2の対向する位置に、それぞれ貫通穴39,41が設けられ、この貫通穴39,41には、通し軸43(図3)が挿通されている。通し軸43は、仕切壁19a,19bに挟まれた枠体15内の空間を横切って、各車輪7の回転軸21の軸方向と直交する水平方向に延在して設けられ、基端の鍔部45が貫通穴39の周縁にボルトなどで締結されることにより、フレーム9に固定されている。ここで、回転軸21の軸方向と直交する水平方向とは、回転軸21の軸線と直角に交わる水平な軸線の延在方向に限られず、この軸線と平行な軸線の延在方向も含まれるものとする。本実施の形態において、通し軸43の軸線は、回転軸21の軸線と直角に交わる水平な軸線を接地面側に平行移動させた位置に配置されている。
【0031】
図1、3に示すように、通し軸43の軸回りには、ブロック状の支持部材47が揺動可能に支持されている。支持部材47は、通し軸43が挿通される貫通穴49を有しており、この貫通穴49に通し軸43が挿通された状態で、枠体15内の仕切壁19a,19bに挟まれた空間に収納されている。
【0032】
支持部材47の上端面には、台座5を回転自在に支持する軸受51が設けられ、この軸受51は、図4に示すように、内輪53と、外輪55と、内輪53と外輪55との間に配置された複数の円筒状のころ57を備えて構成される。
【0033】
次に、この支持部材47に支持される台座5の構造について説明する。図1に示すように、台座5は、支持部材47に軸受51を介して支持される下板59と、この下板59に載置されて空気出入口を備えた袋状のエアバッグ61と、搬送対象物が載置されてエアバッグ61の上に載置される上板63と、下板59と上板63とを連結させる連結部材65を備えて構成される。エアバッグ61は、内部に空気を出し入れすることにより、膨張又は収縮して、上板63を昇降させるようになっている。なお、エアバッグ61に出し入れする空気は、例えば搬送台車を走行させる工場などに設置された空気の供給源からホースを通じて供給され、制御装置などからの信号又は手動によりバルブユニットが動作することにより供給量などが制御されるようになっている。
【0034】
下板59と上板63は、いずれも、略正方形の平面状に形成され(図3)、下板59よりも上板63が大きく形成されている。図4に示すように、下板59の中央部には、一方の面から突出する中空の筒状部67が設けられ、この筒状部67が、支持部材47の軸受51に支持されるようになっている。つまり、支持部材47は、下板59と直交する中心軸の回りに下板59を回動可能に支持する軸受51を介して垂下して設けられている。より具体的には、下板59の筒状部67が支持部材47の軸受51の内輪53に圧入された状態で、下板59に対して支持部材47と反対側から、基端に鍔部71を有する円筒状の取付部材69が筒状部67に挿入され、この挿入された取付部材69の先端部分が支持部材47にボルトで締結されるようになっている。ここで、下板59は、取付部材69の鍔部71との間に隙間を有しているため、軸受51により支障なく回動することができる。さらに、下板59には、取付部材69の後ろ側から筒状の蓋体73が取り付けられている。
【0035】
このようにして支持部材47に支持された下板59の他方の面、つまり支持部材47と反対側の面には、エアバッグ61が粘着シート(例えば、両面テープ)などで貼り付けられ、さらに、エアバッグ61の上には、上板63が載置される。また、図1に示すように、下板59のエアバッグ61が載置される面と、上板63のエアバッグ61と対向する面には、それぞれエアバッグ61の四隅などの外縁に沿って突出する突条部75が設けられている。
【0036】
図1、図3に示すように、下板59の互いに対向する端部(少なくとも2箇所)と、この下板59の複数の端部と対向する上板63の端部とは、それぞれ連結部材65で連結されている。本実施の形態では、下板59と上板63の各辺の中央付近における4箇所がそれぞれ連結部材で連結されている。この連結部材65は、第1〜第4の板状部材77,79,81,83が、3つの回転軸部85,87,89で回動可能に連結された3軸の蝶番構造となっている。第1の板状部材77は、下板59の端部に取り付けられ、第4の板状部材83は、下板59の端部と対向する上板63の端部に取り付けられている。また、図示していないが、第2の板状部材79と第3の板状部材81は、連結部材65がエアバッグ61側に折り畳まれる方向にバネなどの弾性部材で付勢されている。
【0037】
図4(下図)に示すように、エアバッグ61の伸縮に応じて上板63は昇降するが、この上板63の昇降に伴って、連結部材65が適宜折れ曲がるようになっている。連結部材65は、例えば、エアバッグ61の空気が完全に抜き出されて上板63が最下位に降下した状態で、完全に折り畳まれた状態となる。ここで、3つの回転軸部85,87,89は、連結部材65が折り畳まれた状態で互いに当接しないように、互いにずらした位置に設けられている。すなわち、連結部材65が完全に折り畳まれたときには、回転軸部85,87,89は、略水平方向に配列された状態となり、このとき、上板63の最下位の高さが最も低くなる。
【0038】
図3に示すように、下板59には、中央の筒状部67に貫通穴が設けられており、さらに1箇所の角部の近傍に貫通穴が設けられている。そして、これらの2つの貫通穴は、下板59の支持部材47と反対側の面に形成される溝91で連通されている。この溝91は、例えば、図示しない制御装置とモータ11とを接続する電線の配索用の通路となっている。ここで、通し軸43は、中空状に形成されるとともに、この中空穴93と連通する横穴95が側面に形成されたものを用いるものとし(図6)、この通し軸43が支持部材47の貫通穴49に挿通されたときに、横穴95が筒状部67の中心穴と連通するように配置する。これにより、制御装置に一端が接続された電線は、下板59の角部の貫通穴、溝91、蓋体73、取付部材69、通し軸43の横穴95、中空穴93を順次経由して配索された後、モータ11に他端が接続される。
【0039】
このような台座5を走行台車3に組み付ける方法としては、図5、6に示すように、台座5が取り付けられた支持部材47を、フレーム9の仕切壁19a,19bに挟まれた枠体15内の空間に挿入するとともに、通し軸43をフレーム9の貫通穴39,41に挿通させる。そして、通し軸43の基端の鍔部45を貫通穴39の周縁に当接させてボルトなどで締結する。これにより、支持部材47はフレーム9と連結された通し軸43の軸回りで揺動可能に支持された状態となり、支持部材47に支持される台座5においても、支持部材47と連動して通し軸43の軸回りで揺動可能となる。
【0040】
次に、このようにして構成される搬送台車1の動作について、搬送台車1が路面を走行するときの動作を中心に、図7、8を参照して説明する。図7,8の矢印Cは、台座5に載置された搬送対象物の荷重が走行台車3に作用する方向を示している。
【0041】
図7に示すように、搬送台車1が水平で平坦の路面を走行するとき、2つの車輪7の回転軸21と台座5はいずれも水平方向を向いている。したがって、このとき、通し軸43を介して互いに回動可能な支持部材47とフレーム9(走行台車3)は、相対的な回転角度がゼロとなっている。
【0042】
これに対し、搬送台車1がうねりや段差などのある路面を走行するときは、左右の車輪7a,7bが交互に段差などに乗り上げることが想定される。図8に示すように、片方の車輪7bが段差Yに乗り上げたときには、車輪7bが段差Yに乗り上げるのと連動して、フレーム9が支持部材47に対して通し軸43を中心として、車輪7bが段差に乗り上げる方向(矢印Z)に相対的に回動(揺動)する。これにより、搬送台車1は、走行台車3の片方の車輪7bが段差に乗り上げたときに、もう一方の車輪7aの浮きを防ぐことができ、車輪7a,7bにかかる偏荷重を抑制することができる。また、車輪7a,7bの偏荷重が抑制されることにより、車輪7や車輪7の回転軸21或いは回転軸21の軸受部などの損傷を防ぐことができるため、搬送台車1の耐久性を向上させることができる。
【0043】
ここで、支持部材47は、フレーム9の枠体15内の仕切壁19a,19bに挟まれた空間に収納されているが、支持部材47と仕切壁19a,19bとの間には、隙間が形成されている。このため、支持部材47は、仕切壁19a,19bと当接しない範囲で、通し軸43の回りを揺動することができる。なお、支持部材47と仕切壁19a,19bとの間にバネ部材を介在させ、仕切壁19a,19b側からそれぞれ支持部材47を押し付けるように、バネ部材で付勢するように構成してもよい。このようにすれば、フレーム9が回動したときに弾性力による復元力が作用するため、サスペンションとしての機能が向上し、うねりや段差のある路面での走行性を安定化させることができる。
【0044】
また、搬送台車1が走行中、通し軸43の軸回りでフレーム9が回動しても、支持部材47はその影響をほとんど受けることがないため、支持部材47に支持される台座5は、水平状態が保持される。このため、走行台車3が傾いても、搬送対象物の荷重は、図8の矢印Cの方向、つまり台座5の真下の方向に常に作用するため、各車輪7a,7bにかかる荷重の変動を抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、下板59と上板63との間に、空気の出し入れで膨張収縮する柔構造のエアバッグ61を設けている。このため、例えば、搬送台車1が路面を走行中、下板59が傾くことがあっても、エアバッグ61が搬送対象物の重みで傾きを抑制するように変形するため、搬送対象物が載置される上板63は、水平に保持される。したがって、搬送対象物を傾けずに安定して搬送させることができ、かつ、各車輪7a,7bの偏荷重を抑制することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、走行台車3が、2つの車輪7a,7bに対して進行方向の前方及び後方に向かって、それぞれフレーム9の底面が上方向に傾斜する傾斜面を有している。これにより、搬送台車1がうねりや段差などがある路面を走行する場合でも、底面が上方向に持ち上がって形成される分、底面と段差などの接触を抑制することができるため、うねりや段差を容易に乗り越えることができ、このような路面での走行性能を向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、台座5の下板59と上板63とを、蝶番からなる複数の連結部材65で連結し、この連結部材65をエアバッグ61側に折り曲げる方向に弾性部材で付勢させている。このように下板59と上板63を連結部材65で連結し、弾性部材で連結部材65の動作方向を規制することにより、エアバッグ61を膨張又は収縮させたときの上板63の昇降をスムーズに案内することができる。これにより、下板59に対する上板63のずれや傾きを抑制することができ、上板63の昇降動作を適正に保つことができる。加えて、エアバッグ61の空気が完全に抜き出されて上板63が最下位となり、連結部材65が最も折り畳まれた状態となったとき、3つの回転軸部85,87,89が、略水平方向に一列に配列されるようにずらして設けられるため、上板63の最下位の高さを最も低くすることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、下板59と上板63に、それぞれエアバッグ61の外縁に沿って突出する突条部75を設けている。このため、膨張又は収縮するエアバッグ61は、そのエアバッグ61を挟んで両側に設けられた突条部75の内側に案内されるため、特に、収縮する際のエアバッグ61を適正な位置に収納することができる。本実施の形態では、突条部75をエアバッグ61の四隅の外縁に設ける例を説明したが、例えば、エアバッグ61を挟んで対向する位置に設けるのであれば、この例に限られるものではない。また、突条部75は、下板59と上板63の少なくとも一方に設けられていれば、上記の効果を得ることができるが、エアバッグ61の高い収納性を得るためには、両方に設けられていることが好ましい。
【0049】
また、本実施の形態では、フレーム9の枠体15の内側を2枚の仕切壁19a,19bで仕切り、この2枚の仕切壁19a,19bに挟まれた枠体15内の領域、つまり2つの車輪7a,7bの間の領域に支持部材47を収納させるようにしている。このため、台座5の支持構造を最も低くすることができる。また、本実施の形態では、モータ11と駆動装置は、走行台車3の接地面から車輪7の高さの範囲内に配置し、駆動装置は減速歯車列で構成するようにしている。このため、走行台車3を低く形成しながら、適正な走行速度を確保することができる。
【0050】
本実施の形態の搬送台車1は、基本的には、後述するように複数の搬送台車1を連結させて用いるものであるが、例えば、1台で走行させる場合には、補助輪又は走行面を摺動する補助足を設けることにより自走可能とすることができる。
【0051】
以上述べたように、本実施の形態の重量物搬送用の搬送台車1によれば、搬送台車1の総高さを例えば300mm以下に抑えることができ、全体的にもコンパクトな構造を実現することができる。また、うねりや段差のある路面を走行する場合でも、各車輪7の偏荷重を抑制することができるため、走行性を向上させるだけでなく、車輪7や車輪7の回転軸21或いは回転軸21の軸受部などの損傷を防ぐことができ、搬送台車1の耐久性を向上させることができる。
【0052】
次に、上述した実施の形態の搬送台車1を複数備え、この複数の搬送台車1を互いに連結させた状態で搬送対象物を搬送する搬送装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態の搬送装置は、複数の搬送台車1を有するため、各搬送台車1は2つの車輪7a,7bがあればよく、補助輪又は走行面を摺動する補助足がなくてもよい。
【0053】
図9に示すように、本実施の形態の搬送装置は、4台の搬送台車1を矩形の角に1台ずつ配置させ、各搬送台車1の台座5をそれぞれ断面が矩形の角パイプ97で互いに連結させた構造になっている。以下、各搬送台車1の連結構造について、具体的に説明する。
【0054】
図10に示すように、上板63には、平板状の連結板材99の一部が当接された状態で、上板63と連結板材99がボルトで固定されている。連結板材99には、断面矩形の中空の支持パイプ101が取り付けられており、この支持パイプ101には角パイプ97が所定の長さまで挿入されてから、支持パイプ101と角パイプ97がボルト103で固定されている。このような連結構造によれば、角パイプ97を支持パイプ101内で摺動させて所定の長さに調整することにより、搬送台車1間の距離を所定の範囲で適宜調整することができる。
【0055】
本実施の形態では、4台の搬送台車1を互いに連結させた状態で、各搬送台車1の上板63をエアバッグ61で所定の高さに上昇させ、4台の搬送台車1で1つの搬送対象物を支える。このように4台の搬送台車1を1組とした搬送装置は、搬送対象物を支えたまま、外部のコントローラからの無線或いは有線を介した指令により、各搬送台車1の移動速度と移動方向が同調制御され、これにより搬送対象物が所望のルートにしたがって目的地まで搬送される。このように複数の搬送台車1を連結させて一つの搬送装置とすることにより、搬送対象物の大型化や重量の増加にも対応することができる。特に、本実施の形態では、搬送対象物の大きさや荷重などに応じて、搬送台車1間の距離を適宜調整することができるため、様々な搬送対象物に対応(例えば、4台の搬送台車1で最大100トンの搬送対象物を搬送可)することができ、搬送対象物を安定して搬送させることができる。
【0056】
また、このような搬送装置がうねりや段差のある路面を走行するときには、各搬送台車1において、車輪7の回転軸21を通し軸43の軸回りで揺動させながら走行させることができるため、すべての搬送台車1の各車輪7に対して、偏荷重を抑制することができる。これにより、車輪7や車輪7の回転軸21或いは回転軸21の軸受部などの損傷を防ぐことができるため、搬送装置の耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、各搬送台車1は、エアバッグ61を介して上板63の上に搬送対象物を載置しているため、搬送装置が路面を走行中、いずれかの搬送台車1の下板59が傾くことがあっても、エアバッグ61が搬送対象物の重みで傾きを抑制するように変形するため、上板63は水平に保持される。したがって、搬送対象物を傾けずに安定して搬送させることができ、かつ、各車輪7の偏荷重を抑制することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、各搬送台車1を連結させる構造として、連結板材99に取り付けられた支持パイプ101に角パイプ97を挿入し、ボルトで固定する構造を説明したが、このように搬送台車1間の距離を調整可能とする場合に限らず、搬送台車1間の距離が予め設定されている場合には、図11に示すように、角パイプ97に代えて、例えば断面がL字状のアングル材105を直接、上板63にボルトで固定するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、4台の搬送台車1を連結させた搬送装置について説明したが、この例に限られるものではなく、例えば、図12に示すように、6台の搬送台車1を連結させて構成するようにしてもよいし、図13に示すように、8台の搬送台車1を連結させて構成するようにしてもよい。このように支持パイプ101などの連結材を使用することにより、所望の台数の搬送台車1を自在に連結させて構成することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、複数の搬送台車1の台座5を互いに連結させて1つの搬送装置として走行させる例を説明したが、それぞれの搬送台車1の移動速度と移動方向を同調制御して、搬送台車1間の相対位置を一定に保持するように制御することにより、台座5を連結させなくても、複数の搬送台車1で1つの搬送対象物を搬送させることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 搬送台車
3 走行台車
5 台座
7a,7b 車輪
9 フレーム
11 モータ
13 減速歯車列
19a,19b 仕切壁
21a,21b 回転軸
43 通し軸
47 支持部材
51 軸受
59 下板
61 エアバッグ
63 上板
65 連結部材
75 突条部
77 第1の板状部材
79 第2の板状部材
81 第3の板状部材
83 第4の板状部材
85 回転軸部
87 回転軸部
89 回転軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が載置される台座とこの台座を支持する走行台車とを備えた搬送台車において、
前記走行台車は、フレームと、該フレームに支持された同軸の2つの回転軸に回転可能に設けられた2つの車輪と、前記フレームに支持され前記2つの車輪を独立に回転させる駆動装置と、前記車輪の回転軸と直交する方向の水平軸回りに揺動可能に前記フレームに支持される支持部材とを有し、
前記2つの車輪は、前記支持部材の両側に設けられ、該支持部材は、前記台座の台座面と直交する軸回りに前記台座を回動可能に支持する軸受を介して垂下して設けられることを特徴とする搬送台車。
【請求項2】
前記台座は、前記支持部材に前記軸受を介して支持される下板と、該下板上に載置され空気出入口を備えた袋体と、前記搬送対象物が載置され前記袋体の上に載置される上板とからなることを特徴とする請求項1に記載の搬送台車。
【請求項3】
前記フレームは、前記2つの車輪の間に、該車輪の回転軸と直交して互いに間隔を開けて設けられる2枚の仕切壁を有し、
前記支持部材は、前記フレームの前記2枚の仕切壁に挟まれた空間に収納されることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送台車。
【請求項4】
前記走行台車は、前記2つの車輪に対して進行方向の前方及び後方に向かって、それぞれ前記フレームの底面が上方向に傾斜する傾斜面が形成されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送台車。
【請求項5】
前記台座は、前記下板の互いに対向する端部とこの下板の端部と対向する前記上板の端部とがそれぞれ連結部材で連結され、
前記連結部材は、第1乃至第4の板状部材が3つの回転軸部で回動可能に連結された3軸の蝶番からなり、前記第1の板状部材は前記下板の端部に取り付けられ、前記第4の板状部材は前記上板の端部に取り付けられ、前記第2の板状部材と前記第3の板状部材は、前記袋体側に折り畳まれるように弾性部材で付勢されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の搬送台車。
【請求項6】
前記連結部材は、前記第2の板状部材と前記第3の板状部材が折り畳まれたときに、前記3つの回転軸部が互いに当接しないように、3つの回転軸部の位置が互いにずらして設けられることを特徴とする請求項5に記載の搬送台車。
【請求項7】
前記台座は、前記下板の前記袋体が載置される面と前記上板の前記袋体と対向する面の少なくとも一方に、前記袋体の外縁に沿って突出する突条部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の搬送台車。
【請求項8】
前記走行台車の前記駆動装置は、モータと該モータの動力を前記車輪に伝達する減速歯車列を含んでなり、該駆動装置は、前記車輪の高さの範囲内に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の搬送台車。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の搬送台車を複数備え、この複数の搬送台車の前記台座を互いに連結させた状態で、前記搬送対象物を搬送する搬送装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の搬送台車を複数用意し、この複数の搬送台車に搬送対象物を載置し、個々の搬送台車の移動速度と移動方向とを同調制御することにより、前記搬送対象物を所望のルートにしたがって目的地まで搬送させる搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−79423(P2011−79423A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233338(P2009−233338)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000178011)山九株式会社 (48)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)