説明

搬送箱

【課題】 搬送する部品の容積に対して必要以上に過大な容積を要さず、しかもクランプ機構による部品を掴む作業が確実に行え、コンパクトで部品つかみ取り不良によるエラーが起こらない搬送箱を提供する。
【解決手段】 上面を開口し内部に部品Wを載置可能な筐体11であり、筐体11の対向する側面13aおよび側面13bには上面側から底面12側へ切欠した切欠部14を設ける。該切欠部14を設けることで、筐体11の外部でクランプ機構Dがクランプ手D2を広げておいて部品Wを掴み取れる。更に筐体11の底面12には、載置する部品Wの切欠部14と対向する底部が筐体底面12と当接しないよう部品Wを支持する支持板15を立設する。これにより部品Wの掴み取り時にはクランプ機構Dのクランプ手D2が部品Wの下部に確実に掴み取れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場等の製造工程で用いる部品を搬送するための搬送箱に係り、詳細には、自動化された部品搭載機によって取出される部品を搬送するための搬送箱に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化された組立工場等では、組立工程を行う自動機に対して部品を搭載する自動搭載機を用いている。
この自動搭載機では、クランプ機構を有する取出搬送部によって搬送箱内の部品を取出、組立工程の自動機に載置して自動組立等を行っていた。
即ち、自動搭載機における取出搬送部は、く字状の上方端が固定され下方端が開放され、開放された下方端が開閉可能なクランプ機構を有し、該クランプ機構を開状態としておいて被搬送物である部品位置に移動させ、閉状態にすることで部品をつかみ取っていた。
【0003】
詳細には、上面が開口された筐体形状をなす従来の搬送箱内に組立工程で用いる部品を入れておき、自動搬送機によって自動搭載機位置まで搬送する。この搬送された位置に於ける自動搭載機のクランプ機構と従来の搬送箱を表すのが、図5である。
従来における自動搭載機による部品の搬出は、図5に表すように、搬送箱101内にある部品Wを掴み取るために自動搭載機のクランプ機構100が開状態を取らせ、この開状態で搬送箱101内へクランプ機構100を挿入する。そして、クランプ機構100が搬送箱101内にある部品Wを掴み取り可能な位置まで移動したところで、クランプ機構100を閉状態とし部品Wを掴み取る。次いで自動搭載機はクランプ機構100を移動させ、掴み取った部品Wを搬送箱101内から搬出して搭載位置まで移動させていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図5に表すような従来の搬送箱101では、開状態としたクランプ機構100を搬送箱101の内部102に挿入しなければならないので、被搬送である部品Wに対して搬送箱101を大きくしておかなければならず、過大な容積を必要としてしまうという問題点を有した。
また、部品Wが搬送箱101の底部に直に載置されるので、クランプ機構100の把持部が部品Wの下へ入り込めず、クランプ機構100が部品Wを把持することができない虞があった。
更にまた、例えば、自動車の組立工程で行われる配線用電線部品のような所定の形状を維持できない様な部品を搬送して取出す際には、部品自体が所定形状を呈していないので、場合によってはクランプ機構100が部品の最下部まで入り込んで把持することができず、部品を取出した後、クランプ機構100による搬送途中で部品が滑落してしまう場合が生じた。
【0005】
この発明は、上記問題点に鑑み、過大な容積を必要とせず、しかも部品を確実に掴み取ることができる搬送箱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明は、
【0007】
上面を開口し内部に部品を載置可能な筐体であり、筐体の対向する側面には上面側から底面側へ切欠した切欠部を設け、筐体底面には、載置する部品の切欠部と対向する底部が筐体底面と当接しないよう部品を支持する支持板を立設することを特徴とする搬送箱、
を提供する。従って、この発明では、搬送箱内に載置した部品は、搬送箱の切欠部と対向した位置で部品底部が搬送箱底面から浮いた状態となる。この状態で、部品を取出すためのクランプ機構が、開状態では切欠部外に位置し、閉状態となり部品を掴む際に、切欠部から部品の下側に入り込み、閉状態をとってから上方へ移動することで、開口された筐体上面から部品を取出す。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、搬送箱の筐体を構成する側壁に切欠部を設けているので、クランプ機構は、搬送箱内に載置されている被搬送物を取出すために搬送箱の外部で挟持部を開状態とした後に再び挟持部を閉じながら搬送箱内の被搬送物を挟持可能となるので、搬送箱内で被搬送物を挟持するために開状態とする必要はなく、筐体は被搬送物を載置可能な堆積があればよいので搬送箱をコンパクトに構成できるという特有の効果を有する。
また、被搬送物は、搬送箱内で支持板上に載置されることで、搬送箱底面と被搬送物底面との間にクランプ機構が挟持するための間隙を構成するので、クランプ機構の挟持部が被搬送物の下部にスムーズに入り込めるという特有の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
搬送箱は、上面を開口した樹脂製の筐体からなり、筐体を構成する対向する一組の側壁を、その中央を上部から下部にかけて切欠して切欠部を構成する。筐体内の底面には、支持板を立設する。支持板は、長手方向中央上部を凹状に形成し、凹状部に部品を載置可能な形状を成した板状体からなり、板状体の左右両端が切欠部を設けた対向する側壁夫々の側となるように該側壁間に位置させると共に、相互に対向させて平行に立設させる。このように支持板を立設することで、対向する側壁に設けた切欠部相互は挿通状態となり、クランプ機構を筐体外部から筐体内部に挿入可能となる。
被搬送物では、予め搬送箱に設けた支持板上に載置する。すると、被搬送物の下部と筐体底面との間に間隙が生ずることとなる。また、該間隙は、対向する支持板間にあるので同じく対向して設けた切欠部間に位置して、筐体外部と連通する。
このように構成する搬送箱では、搬送箱の外側で開状態をとったクランプ機構が切欠部から搬送箱内へ侵入するように閉状態へと移行して、支持板に支持された被搬送物と筐体の底部との間隙から被搬送物下部へ入り込み閉状態となって被搬送物を搬送箱の上方へ引上げ、被搬送物を搬送箱外へ搬出できる。
【実施例1】
【0010】
以下にこの発明の実施例を図面に基づき説明する。図1はこの発明を用いたシステムを表す説明図であり、図2はこの発明を表す説明図であり、図3はこの発明に於ける搬送箱およびクランプ機構の他の例を表す説明図であり、図4はこの発明に於ける支持板の他の例を表す説明図である。
【0011】
Aはこの発明を実施する搬送システムであり、1はこの発明にかかる搬送箱である。搬送システムAは、自走式の搬送台車Bによって被搬送物Wを加工機Cへ搬送する。自走式の搬送台車Bによる被搬送物Wの搬送時には、被搬送物Wは搬送箱1に載置して搬送する。そして、加工機Cへ搬送された被搬送物Wは、クランプ機構Dによって搬送箱1から運び出され加工機Cへと運ばれる。
クランプ機構Dは、図2に表すように、伸縮および回転等が自在で所望位置へ移動可能な可動式のアームD1が基台部に固定されてなり、アームD1の先端には、く字状に折曲させた開閉自在な一対のクランプ手D2を設けてなる。このように構成するクランプ機構Dは、クランプ手D2が所望位置となるようにアームD1を移動して搬送箱1内の被搬送物Wを挟持可能である。
搬送箱1は、合成樹脂を型成型あるいは接着剤・ビス等によって成型し、上部が開口した形状の筐体11に形成する。勿論、搬送箱1は合成樹脂以外の材料によって形成しても良く、金属板を用い折曲げ加工や溶接加工等によって形成しても良い。
筐体11は、底面12から立設する側壁13によって構成する。側壁13のうち底面長手方向に立設されている対向する1組の側壁13a及び13bには、図に表すように、上面の開口部分から底面12にかけて長手方向略中央を切欠して切欠部14を設ける。従って、側壁13a及び13bは該切欠部14によって2分割されたように立設される。このように切欠部14を設けることで、クランプ機構Dのクランプ手D2は、搬送箱1内に載置される被搬送物Wを挟持して持ち上げる際に、クランプ手D2が搬送箱1外部で開状態を取った後、被搬送物Wを挟持するために切欠部14から進入可能となるので、搬送箱1内にクランプ機構Dのクランプ手D2が開状態とするスペースが不要となる。尚、この実施例では、切欠部14は側壁13aおよび13bに夫々1箇所ずつ設けたが、図3に表すように夫々の側壁13aおよび13bに複数の切欠部14を対向するように設けても良い。この場合にはクランプ機構Dのクランプ手D2も該切欠部14に合わせて複数設ければ良い。
【0012】
更に、搬送箱1には支持板15を設ける。支持板15は、合成樹脂からなる板状体を対向させて筐体11の底面12から立設する。この時、1対の支持板15は、側壁13に設ける対向した切欠部14間に設け、その位置は支持板15の端部が夫々切欠部14の左右端に位置するように固設する。このように設ける支持板15では、搬送箱1内に載置される被搬送物Wと搬送箱1の底面12との間にクランプ機構Dのクランプ手D2を挿入可能な間隙が設けられるので、クランプ手D2の進入を容易にする。また、支持板15は、筐体11の底面12に立設した状態で上縁が凹状となるように形成する。このように支持板15を、上縁が凹状になり、両端が切り立ったように形成して底面14および側壁13aおよび13bと固定することで、支持板15が側壁13aおよび13bと固定できる部位を多くすることができるので側壁13aおよび13bおよび底面14との固定が強固にできると共に、凹状部に部品を載置した際に、載置した部品の端部が支持板15の切り立った両端部に沿って位置するので、載置した部品がクランプ手D2の挿入を邪魔しにくくできる。尚、支持板15の形状は、特に上縁を凹状に形成しなくともフラットに形成しても良く、また、図4に表すように、台形形状に形成しても良い。
【0013】
次いで、この発明を用いたシステムの流れを説明する。
【0014】
図1に表すように、作業Eは被搬送物Wを、搬送されてきた空箱状体の搬送箱1へ載置し、更に該搬送箱1を搬送台車Bに載置する。この搬送箱1の載置は、作業者Eが行うのではなく、ベルトコンベア等の搬送装置によって搬送されてきた搬送箱1を自動的に搬送台車Bへ載置してもよい。
【0015】
搬送台車Bは、搬送箱1が載置されると予め定められたルートに沿って加工機Cへ移動する。詳細には、搬送箱1に被搬送物Wを載置した作業者Eが被搬送物W載置終了の後、収納完了ボタンを押圧することで搬送台車Bの搬送が開始される。
加工機Cでは、加工機Cに隣接して設置されたクランプ機構Dが、搬送箱1内の被搬送物Wを加工機Cへ移動する。即ち、クランプ機構Dは、クランプ手D2を搬送されてきた搬送箱1位置へアームD1およびクランプ手D2を回動等することで、クランプ手D2を搬送箱1に対向して設けた切欠部14の外部となるよう移動させる。この状態では、クランプ手D2は対向して設けた切欠部14の外部で開状態である。
【0016】
次いで、クランプ手D2を閉状態とすることで、クランプ手D2が搬送箱1の底面12と被搬送物Wとの間に進入して閉状態となり、クランプ手D2上に被搬送物Wが載ることで被搬送物Wを挟持した状態となる。
【0017】
この状態でクランプ機構Dは、再びアームD1およびクランプ手D2を移動させて加工機Cが被搬送物Wを加工するための所望位置へ移動させて載置する。
尚、搬送台車Bは、被搬送物Wを搬送箱1から移動された後、予め定められたルートに沿って再び被搬送物Wを載置されるべく作業者Eの位置へ移動する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明は、工場内に於ける部品の自動搬送や、食品工場などに於ける製品の自動搬送等に用いることができ、機械部品や食品に限らずあらゆる物を載置して搬送し、搬送終了時に載置した被搬送物を搬送箱から自動的に取出す自動工程において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明を実施するシステムの実施例を表す説明図
【図2】この発明の実施例を表す斜視説明図
【図3】この発明の実施例に於ける部品の他の例を表す説明図
【図4】この発明の実施例に於ける部品の他の例を表す説明図
【図5】従来例を表す説明図
【符号の説明】
【0020】
A 搬送システム
B 搬送台車
C 加工機
D クランプ機構
D1 アーム
D2 クランプ手
E 作業者
W 被搬送物
1 搬送箱
11 筐体
12 底面
13 側壁
13a 切欠部を設けた側壁
13b 切欠部を設けた側壁
14 切欠部
15 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口し内部に部品を載置可能な筐体であり、筐体の対向する側面には上面側から底面側へ切欠した切欠部を設け、筐体底面には、載置する部品の切欠部と対向する底部が筐体底面と当接しないよう部品を支持する支持板を立設することを特徴とする搬送箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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