説明

搬送装置、および記録装置、搬送方法

【課題】 搬送される被記録材に皺が生じることを抑制し、記録ヘッドによる記録品質の向上を図る。
【解決手段】 記録紙3が巻回された供給ロール11から記録紙3を供給する供給部16と、供給部16から供給された記録紙3に記録を行う記録ヘッド7に対向して設けられ記録紙3を支持するプラテン18と、記録ヘッド7で記録された記録紙3を巻取りロール12に巻き取る巻取り部20と、プラテン18上に支持された記録紙3を吸引する吸引用ファン52とを備える。供給ロール11または巻取りロール12はロール軸によって支持され、そのロール軸には支持筒の記録紙の搬送方向に直交する幅方向の中央部に対応する位置を支持する大径部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、比較的幅広の記録紙等の被記録材に画像等の記録を行う際に被記録材を搬送するための搬送装置、および記録装置、搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙等の被記録材にインク滴を吐出して文字や画像等の記録を行うインクジェット方式のプリンタが知られている。このインクジェット方式のプリンタには、被記録材として、被記録材の搬送方向に直交する幅が例えば2m〜2.5m程度の比較的幅広にされた紙や塩化ビニール等からなる被記録材に記録を行う比較的大型のプリンタがある。
【0003】
この種のプリンタは、被記録材に記録を行う記録ユニットと、この記録ユニットによって記録される被記録材を搬送する搬送ユニットとを備えている。記録ユニットは、被記録材にインク滴を吐出する記録ヘッドと、被記録材の搬送方向に直交する幅方向に記録ヘッドを走査させるヘッド移動機構とを有している。搬送ユニットは、被記録材が巻回された供給ロールから被記録材を供給する供給部と、記録ヘッドによって記録される被記録材を支持するプラテンと、記録ヘッドによって記録された被記録材を巻取りロールに巻き取る巻取り部とを有している。
【0004】
以上のように構成された従来のプリンタは、供給部の供給ロールから供給された被記録材が、プラテン上に支持されて、記録ヘッドによって記録が行われる。記録が行われた被記録材は、巻取り部の巻取りロールに巻き取られる。
【0005】
ところで、この種の従来のプリンタでは、特に繊維を編み込んだ基体を合成樹脂でラミネートした、いわゆるターポリンのような材質や粗密度の分布が不均一な布状の被記録材を使用する際に、搬送される被記録材の搬送方向に対して厚み方向に波打つ皺が生じ易く、皺が生じた被記録材に記録が行われた場合に、記録ヘッドから吐出されるインク滴の着弾位置がずれてしまう問題がある。このため、被記録材に記録された画像等の品質の低下を招いてしまう。また、このように皺が生じた状態で搬送される被記録材は、プラテンに対して部分的に浮き上がり、この浮き上がった部分が記録ヘッドに衝突して、記録ヘッドを破損させたり、被記録材をインク滴で汚損させたりする問題がある。
【0006】
プラテン上を搬送される被記録材に生じる皺を抑制するための対策としては、プラテンの下流側に凹凸案内部が設けられ、プラテンの記録領域と凸部とに被記録材を吸着させて支持する構成(特許文献1参照。)が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−6387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来のプリンタは、プラテンの下流側に凹凸案内部が設けられることで、プラテンの記録領域と凹凸案内部とを配置するスペースを被記録材の搬送方向に確保する必要があり、プリンタの搬送方向の大きさが大型化してしまう不都合がある。また、この従来のプリンタでは、被記録材の自重で撓んだ皺を、充分に矯正して平坦にすることが困難であった。
【0009】
そして、上述したプリンタでは、搬送される被記録材に皺を生じさせる要因として、以下の問題点が挙げられる。
【0010】
供給部で支持される供給ロールは、紙製の支持筒(以下、紙管と称する。)に被記録材が巻回されており、軸方向が水平にされたロール軸が紙管に挿入されて支持されている。このため、供給ロールは、被記録材の幅方向の中央箇所が、巻回された被記録材の自重によって陥没し、幅方向に対して撓んでしまう不都合がある。このように撓んだ供給ロールから引き出される被記録材には、皺が生じや易くなるという不都合がある。
【0011】
また、例えば塩化ビニールによってシート状に形成された被記録材を用いる場合には、供給ロールの巻回された被記録材が互いに貼り付き易く、しかも、被記録材の幅方向で貼り付いている箇所と貼り付いていない箇所とが存在したときに、この貼り付き状態の有無が部分的な張力のムラを生じ、供給される被記録材に皺を生じ易いという不都合がある。
【0012】
また、従来のプリンタでは、搬送される被記録材自身の荷重分布の不均一によって、巻取りロールの紙管に巻き取られる被記録材の巻取り位置が幅方向に徐々に変位し、紙管の幅方向に対して巻取り状態が偏ってしまう、いわゆる巻き癖が発生してしまう。このため、極端な巻き癖が生じた巻取り状態で被記録材が巻き取られることで、記録ヘッドで記録が行われる被記録材に皺が生じさせてしまうおそれがある。
【0013】
そこで、本発明は、搬送される被記録材に皺が生じることを抑制し、記録ヘッドによる記録品質を向上することができる搬送装置、記録装置、搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る搬送装置は、被記録材が支持筒に巻回された供給ロールを支持するロール軸を有し、供給ロールから被記録材を供給する供給部と、この供給部から供給された被記録材に記録を行う記録ヘッドで記録された被記録材を巻取りロールに巻き取る巻取り部とを備え、供給部から巻取り部に被記録材を搬送する。そして、ロール軸には、支持筒の、被記録材の搬送方向に直交する幅方向の中央部に対応する位置を支持する大径部が設けられる。
【0015】
以上のように構成された本発明に係る搬送装置によれば、被記録材が巻回された支持筒が、ロール軸の大径部によって、被記録材の幅方向の中央部に対応する位置が支持されることで、供給ロールがロール軸に支持された状態で、支持筒に巻回された被記録材の幅方向の中央部に撓みが生じることが抑えられ、被記録材に生じる皺が抑制される。
【0016】
また、本発明に係る搬送装置が備える供給部のロール軸には、大径部が軸方向に移動可能に設けられてもよい。これによって、被記録材の搬送方向に直交する幅が異なる複数種の被記録材に容易に対応することが可能になる。
【0017】
また、本発明に係る他の搬送装置は、被記録材が巻回された供給ロールから被記録材を供給する供給部と、この供給部から供給された被記録材に記録を行う記録ヘッドで記録された被記録材を巻取りロールに巻き取る巻取り部とを備え、供給部から巻取り部に被記録材を搬送する。そして、この搬送装置は、記録ヘッドと供給部との間の被記録材の搬送経路上に設けられ、被記録材に搬送方向と逆方向の張力を付与する供給側テンションローラを備える。
【0018】
以上のように構成された本発明に係る搬送装置によれば、記録ヘッドと供給部との間の被記録材の搬送経路上で、供給側テンションローラによって被記録材に搬送方向と逆方向の張力を幅方向に対して等分布で付与することで、記録ヘッドと供給部との間の被記録材が弛むことが抑えられるので、被記録材に生じる皺が抑制される。
【0019】
また、本発明に係る他の搬送装置は、被記録材が巻回された供給ロールから被記録材を供給する供給部と、この供給部から供給された被記録材に記録を行う記録ヘッドで記録された被記録材を巻取りロールに巻き取る巻取り部とを備え、供給部から巻取り部に被記録材を搬送する。そして、この搬送装置は、供給ロールから引き出された被記録材の内周面と、供給ロールの外周面とに跨って被記録材に押圧され、供給ロールの外周面から被記録材の内周面を分離させる分離ローラを備える。
【0020】
以上のように構成した本発明に係る搬送装置によれば、分離ローラによって、供給ロールから引き出される被記録材の内周面が、供給ロールの外周面から円滑に引き剥がされて分離される。このため、供給ロールから引き出される被記録材は、供給ロールから円滑に引き出され、供給ロールの外周面と被記録材の内周面との幅方向に不均一な貼り付き状態を起因として生じる張力のムラにより皺が生じることが良好に抑制される。
【0021】
また、本発明に係る他の搬送装置は、被記録材が巻回された供給ロールから被記録材を供給する供給部と、この供給部から供給された被記録材に記録を行う記録ヘッドで記録された被記録材を巻取りロールに巻き取る巻取り部とを備え、供給部から巻取り部に被記録材を搬送する。また、この搬送装置は、記録ヘッドと巻取りロールとの間の被記録材の搬送経路上に設けられ、巻取りロールに巻き取られる被記録材に搬送方向と逆方向の張力を自重で付与する巻取り側テンションローラと、巻取りロールに対する巻取り側テンションローラの相対位置を規制するガイド部材とを備える。そして、ガイド部材は、巻取り側テンションローラに当接される当接面が、鉛直方向に対して傾斜される。
【0022】
以上のように構成した本発明に係る搬送装置によれば、巻取り側テンションローラが巻取りロールに近接するように移動したときに、ガイド部材が、巻取り側テンションローラに、水平方向に対して斜め鉛直下方に向けて反力を付与する。このように反力が作用することで、巻取り側テンションローラは、軸方向の中央を回動中心として、両端部が巻取り部の巻取りロールに対して交互に近接離間する揺動運動を行う。このような揺動運動することによって、巻取り側テンションローラは、巻取りロールに巻回される被記録材記の巻き位置の幅方向の変位が自動的に矯正されて、巻取りロールに巻き癖が発生することが抑制され、巻取りロールに被記録材を良好に巻き取られる。したがって、巻取りロールに生じる巻き癖に伴って、搬送される被記録材に皺が生じることが抑制される。
【0023】
また、本発明に係る搬送装置が備える供給部のロール軸には、被記録材が支持筒に巻回された供給ロールの支持筒の内周部に係合する係合手段が設けられ、支持筒に巻回された被記録材の端面を基準として、ロール軸の軸方向に対して位置決めされた支持筒が、係合手段によって係合されることが好ましい。このように、被記録材の端面を基準として位置決めされた支持管の内周部に、係合手段が係合されることで、ロール軸の軸方向に対して供給ロールが高精度に位置決めされて固定される。
【0024】
また、本発明に係る記録装置は、上述した本発明に係る搬送装置を備え、記録ヘッドによって被記録材に記録を行う。
【発明の効果】
【0025】
上述したように本発明によれば、搬送される被記録材に皺が生じることを抑制し、記録ヘッドによる記録品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの構成を説明するための側面図である。
【図2】搬送ユニットの供給部のロール軸を示す斜視図である。
【図3】供給ロールがロール軸に支持された状態を示す断面図である。
【図4】チャッキング部材を示す断面図である。
【図5】チャッキング部材を示す斜視図である。
【図6】プラテンを示す斜視図である。
【図7】プラテンの凹部を示す斜視図である。
【図8】他のプラテンの凹部を示す斜視図である。
【図9】巻取りロールを示す斜視図である。
【図10】巻取り側テンションローラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
本実施形態に係るインクジェットプリンタでは、被記録材として、例えば、搬送方向に直交する幅寸法が例えば2m〜2.5m程度の比較的幅広にされた紙や合成樹脂等からなる被記録材が用いられるが、便宜上、記録紙を一例に説明する。
【0029】
図1に示すように、インクジェットプリンタは、記録紙3に記録を行う記録ユニット5と、この記録ユニット5によって記録される記録紙3を搬送する搬送ユニット6とを備えている。
【0030】
記録ユニット5は、図1および図6に示すように、記録紙3にインク滴を吐出する記録ヘッド7と、記録紙3の搬送方向に直交する幅方向に記録ヘッド7を走査させるヘッド移動機構8とを有している。ヘッド移動機構8は、記録ヘッド7を保持するキャリッジ9と、このキャリッジ9を記録紙3の幅方向に移動可能に案内するガイドレール10と、キャリッジ9をガイドレール10に沿って駆動するための駆動モータ(不図示)等を有して構
成されている。
【0031】
搬送ユニット6は、図1に示すように、記録紙3の搬送経路の順に、記録紙3を供給する供給ロール11を支持する供給部16と、記録ヘッド7側に搬入される記録紙3をガイドするフロントペーパガイド17と、記録ヘッド7によって記録される記録紙3を支持するプラテン18と、記録ヘッド7側から搬出される記録紙3をガイドするリアペーパガイド19と、記録ヘッド7によって記録された記録紙3を巻き取る巻取りロール12を支持する巻取り部20とを有している。
【0032】
また、この搬送ユニット6は、供給ロール11から引き出される記録紙3を押圧して供給ロール11の外周面から記録紙3の内周面を分離させる分離ローラ21と、供給部16と記録ユニット5の記録ヘッド7との間の搬送経路上で記録紙3に搬送方向と逆方向の張力を自重で付与する供給側テンションローラ22と、記録ユニット5の記録ヘッド7と巻取り部20との間の搬送経路上で巻取りロール12に巻き取られる記録紙3に搬送方向と逆方向の張力を自重で付与する巻取り側テンションローラ23とを有している。
【0033】
供給部16は、記録紙3が紙製の支持筒4(以下、紙管4と称する。)に巻回された供給ロール11の紙管4を支持するロール軸26と、このロール軸26を回転自在に支持する支持構造体(不図示)と、供給ロール11を間欠的に回転駆動する駆動機構(不図示)とを有している。
【0034】
ロール軸26は、図2および図3に示すように、円筒状に形成されており、外周部に、紙管4の幅方向の中央を支持する大径部である円環状のスペーサ28が軸方向に移動可能に設けられている。このスペーサ28は、供給ロール11の記録紙3の幅に応じて、ロール軸26の軸方向に沿って任意の位置に移動され、軸方向の両側が固定ネジ等で固定されており、複数種の記録紙3の幅寸法にそれぞれ対応することが可能にされている。
【0035】
また、ロール軸26の一端部には、駆動モータ(不図示)によってタイミングベルト(不図示)を介して回転駆動力が伝達されるドライブリング(不図示)に当接し、回転力を受けるスクローラリング29が固定されて設けられている。このロール軸26の一端部には、供給ロール11の紙管4をロール軸26の軸方向に対して位置決めして固定するためのチャッキング部材31が固定されて設けられている。
【0036】
チャッキング部材31は、図4および図5に示すように、供給ロール11の紙管4に係合される複数の係合針32と、各係合針32を一端部に支持し中央部が支軸35に回動可能に設けられた複数のチャックアーム33と、これらチャックアーム33を回動させるためのスクリューシャフト36と、このスクリューシャフト36を回転操作するための回転摘み37とを有している。
【0037】
また、ロール軸26には、各係合針32が進退する複数のスリット38が形成されており、これらスリット38に対応する位置に、係合針32にユーザーが触れることを防ぐための円筒状の保護スリーブ39が設けられている。この保護スリーブ39には、ロール軸26の各スリット38に対応する位置に、係合針32が進退するスリット40が形成されている。
【0038】
スクリューシャフト36には、ロール軸26の内部に臨む一端部に、チャックアーム33を作動させるための作動部材41が固定されて設けられており、外方に露出された他端部に、回転摘み37が固定されている。作動部材41は、チャックアーム33の一端部に当接されるカム面41aが形成されており、スクリューシャフト36の回転に伴って、スクリューシャフト36の軸方向に移動される。チャックアーム33は、支持部材43に支軸35を介して回動可能に支持されており、この支持部材43にスクリューシャフト36が回転自在に設けられている。
【0039】
以上のように構成されたチャッキング部材31は、回転摘み37を回転操作することでスクリューシャフト36が回転され、スクリューシャフト36の回転に伴って作動部材41が軸方向に移動される。作動部材41は、軸方向の移動量に応じて、カム面41aによってチャックアーム33を支軸35回りに回動させて、係合針32をスリット38,40から突出させて、各係合針32を紙管4の内周面に係合させる。
【0040】
また、供給ロール11は、図示しないゲージ等を用いることで、スクローラリング29の端面に対して、紙管4に巻回された記録紙3の端面の位置が位置決めされる。このように、ロール軸26の軸方向に対して位置決めされた供給ロール11は、上述のチャッキング部材31によって、紙管4の内周面に各係合針32を係合させることによって固定される。
【0041】
従来、ロール軸に対して供給ロールの紙管を位置決めする場合には、紙管の端面にスクローラリングの端面を突き当てることで固定されていた。つまり、従来の位置決め方法では、供給ロールの紙管の端面を基準としてロール軸に対して位置決めされていたため、紙管に対する記録紙の巻き位置のバラツキによって、ロール軸に対する記録紙の位置にバラツキが生じるという不都合があった。
【0042】
しかしながら、本実施形態では、図4に示すように、スクローラリング29の端面と、紙管4に巻回された記録紙3の端面との間隙dをゲージ等で高精度に位置決めし、記録紙3の端面を基準として、ロール軸26の軸方向に対して高精度に位置決めされた紙管4を、チャッキング部材31を用いて固定することで、紙管4に対する記録紙3の巻き位置のバラツキに関わらずに、ロール軸26の軸方向に対して記録紙3を高精度に位置決めすることができる。
【0043】
分離ローラ21は、図1に示すように、供給部16の供給ロール11に隣接する位置に、軸方向が供給部16のロール軸26と平行にされて配置されている。分離ローラ21は、供給ロール11から引き出された記録紙3の内周面と、供給ロール11の外周面とに跨って、記録紙3の幅方向に亘って押圧されている。この分離ローラ21は、両端が各支持アーム44によって支持されており、これら支持アーム44がロール軸26の両端に回動可能に支持されている。
【0044】
そして、この分離ローラ21は、供給ロール11から引き出される記録紙3の内周面が供給ロール11の外周面に付着して剥がれ難い場合に、引き出された記録紙3の内周面と共に、ロール軸26を回動中心として上方に移動され、分離ローラ21が自重で下降することに伴って、引き出された記録紙3の内周面を供給ロール11の外周面から円滑に引き剥がして分離する。これによって、記録紙3は、供給ロール11から幅方向に張力の偏りが生じることなく円滑に引き出され、皺が生じることが良好に抑制されている。
【0045】
供給側テンションローラ22は、分離ローラ21に隣接する位置に、軸方向が供給部16のロール軸26と平行にされて配置されており、供給ロール11から引き出された記録紙3を幅方向に亘って自重で鉛直下方に押圧している。また、供給側テンションローラ22の軸方向の両端は、各ガイド部材46によって移動範囲が規制されている。これらガイド部材46には、供給側テンションローラ22を鉛直方向への移動のみに規制するためのガイド溝46aが形成されている。
【0046】
また、供給部16のロール軸26に支持される供給ロール11は、記録紙3の巻き方向
、つまり記録紙3の記録面側が紙管4に対して内側または外側にされて巻回されているのかに応じて、ロール軸26に支持された供給ロール11からの記録紙3の引き出し位置が異なる。このため、ガイド部材46は、供給側テンションローラ22によって記録紙3に適切な張力を付与するために、ロール軸26に対して移動可能に設けられており、このガイド部材46の位置によって、ロール軸26に対する供給側テンションローラ22の相対位置が良好に調整されている。
【0047】
そして、供給側テンションローラ22を通過した記録紙3は、鉛直上方に搬送され、供給側テンションローラ22によって鉛直下方に向かう張力が付与されている。このように供給側テンションローラ22によって搬送方向と逆方向の張力が幅方向に等分布で付与された記録紙3は、フロントペーパガイド17と供給部16との間の記録紙3が弛むことが抑えられ、またフロントペーパガイド17の後述する摺接面17a上に良好に押し付けられるので、皺の発生が抑制されると共に後述ヒータによって効率的に予備加熱される。さらに、供給側テンションローラ22は、上述した分離ローラ21と同様に、供給ロール11から引き出される記録紙3にも、搬送方向の張力を付与するので、分離ローラ21と協働して供給ロール11から記録紙3を良好に分離させて、記録紙3が円滑に引き出される。
【0048】
フロントペーパガイド17は、鉛直下方から搬送された記録紙3を水平方向に搬送させる円弧状の摺接面17aを有しており、このフロントペーパガイド17の裏面に接合されたヒータ(不図示)によって加熱されることで、記録ヘッド7によって記録される記録紙3を予め加熱する。
【0049】
プラテン18は、図1及び図6に示すように、記録ヘッド7の移動領域に対向する位置に配置されており、例えばアルミニウム等の熱伝導率が比較的高い材料によって平板状に形成されている。プラテン18は、記録紙3の搬送方向に平行な寸法が、記録ヘッド7のノズル(不図示)によって記録が行われる記録領域の寸法とほぼ等しく形成されている。
【0050】
そして、このプラテン18には、図7に示すように、記録ヘッド7に対する対向面上に、記録ヘッド7による記録領域に対応して、複数の凹部48が記録紙3の幅方向に配列されている。各凹部48は、略四角形に形成されており、長辺が、記録紙3の搬送方向の上流側と下流側に亘る大きさに形成され、枠状の凸壁49によって全周に亘って包囲されている。各凹部48は、上流側と下流側とを連続する長辺が、記録紙3の搬送方向と平行に形成されている。
【0051】
なお、各凹部48は、深さが0.3〜0.4mm程度に形成されており、記録紙3の幅方向に平行な幅が8mm以上に形成されている。また、プラテン18に支持された記録紙3と記録ヘッド7との間隙は、1.6〜2.9mm程度に設定されている。
【0052】
また、各凹部48内の底面には、複数の吸引穴51が、記録紙3の搬送方向と平行に所定のピッチで配列されている。また、搬送される記録紙3の幅方向の端部に対応する位置の凹部48は、底面の面積が比較的大きく形成されて、吸引穴51の個数が増やされており、記録紙3の幅方向の端部を良好に吸着保持することが可能にされている。プラテン18の下方には、図1に示すように、複数の吸引用ファン52が配設されており、これら吸引用ファン52による空気流路に、プラテン18の各吸引穴51がそれぞれ連通されている。
【0053】
また、プラテン18の下方に隣接する位置には、ヒータ(不図示)が配置されており、このヒータによってプラテン18が加熱されることで、記録ヘッド7から吐出されて記録紙3に着弾したインクを乾燥させる。
【0054】
以上のように構成されたプラテン18によれば、上流側と下流側とに亘って形成された凹部48が、全周に亘って凸壁49で包囲されて形成されたことによって、この凹部48内に各吸引穴51を介して充分な吸引力を発生させて、凹部48内の底面上に沿って記録紙3が上流側と下流側とに亘って良好に吸着されて平坦に支持される。したがって、プラテン18に支持される記録紙3は、搬送方向に生じ易い皺が矯正され、皺による記録ヘッド7と記録紙3の記録面との間隙が均一化され、記録ヘッド7による記録品質が向上される。
【0055】
また、本実施形態のインクジェットプリンタは、プラテン18に凹部48が設けられたことによって、従来のように、プラテンの下流側に凹凸案内部が設けられる構成に比較して、記録紙3の搬送方向に対する小型化を図ることが可能になる。
【0056】
ところで、上述したプラテン18は、各凹部48の上流側と下流側とを連続する長辺が、記録紙3の搬送方向と平行に形成された構成が採られたが、搬送方向に対して所定の傾斜角をもって傾斜されて形成される構成が望ましい。このように構成された他のプラテンについて説明する。
【0057】
図8に示すように、他のプラテン118は、記録ヘッド7に対する対向面上に、複数の凹部148が記録紙3の幅方向に配列されている。各凹部148は、略四辺形に形成されており、長辺が、記録紙3の搬送方向の上流側と下流側に亘る大きさに形成され、枠状の凸壁149によって全周に亘って包囲されている。また、各凹部148の深さ、および記録紙3の幅方向に平行な幅(短辺)は、上述した凹部48と同様に形成されている。
【0058】
そして、各凹部148は、搬送方向の上流側と下流側とを連続する長辺が、搬送方向に対して傾斜角θ1をもって傾斜されて形成されている。各凹部148の傾斜角θ1は、90度未満、例えば40度程度にされている。なお、図示しないが、各凹部は、傾斜角θ1で
傾斜されると共に、例えばプラテンの幅方向の中心線に対して線対称になるように配列されてもよい。
【0059】
以上のように構成されたプラテン118は、凹部148内の底面と凸壁149の側面とがなす隅部近傍で、記録紙3がプラテン118に接触し難いため、この部分に対応する記録紙3の箇所がヒータによって乾燥され難いという不都合がある。しかしながら、このプラテン118によれば、凹部148の長辺が搬送方向に対して傾斜角θ1で傾斜されてい
ることによって、凹部148内の底面と凸壁149の側面とがなす隅部近傍が、搬送される記録紙3の移動に伴って、記録紙3の幅方向に対して常に変動することになる。このため、プラテン118によれば、記録紙3の乾燥され難い箇所を幅方向に変動させて、記録紙3の乾燥状態の不均一が生じることが良好に抑制され、記録紙3に直線状の跡等が生じることを防ぐことができる。
【0060】
リアペーパガイド19は、プラテン18側から水平方向に搬送された記録紙3を鉛直下方に搬送させる円弧状の摺接面19aを有しており、このリアペーパガイド19に隣接して配置されたヒータ(不図示)によって加熱されることで、記録ヘッド7によって記録された記録紙3を加熱する。
【0061】
巻取り部20は、図1および図9に示すように、記録紙3が巻回される巻取りロール12の紙管4を支持する円筒状のロール軸54と、このロール軸54を回転自在に支持する支持フレーム(不図示)と、巻取りロール12を間欠的に回転駆動する駆動機構(不図示)とを有している。また、ロール軸54の一端部には、駆動モータ(不図示)によってタイミングベルト(不図示)を介して回転駆動力が伝達されるドライブリング(不図示)に当接し、回転力を受けるスクローラリング55が固定されて設けられている。
【0062】
巻取り側テンションローラ23は、図9に示すように、巻取り部20の巻取りロール12に隣接する位置に、軸方向が巻取り部20のロール軸54と平行にされて配置されている。巻取り側テンションローラ23は、搬送される記録紙3を幅方向に亘って自重で鉛直下方に押圧することで、巻取りロール12に巻き取られる記録紙3に搬送方向と逆方向の張力を付与している。
【0063】
また、巻取り側テンションローラ23の軸方向の両端は、図9および図10に示すように、各ガイド板56に当接されており、巻取りロール12に対する巻取り側テンションローラ23の相対位置が規制されることで、巻取り側テンションローラ23の移動が規制されている。これらガイド板56は、一端部が、供給部16や巻取り部20等の構成部材を支持する支持ベース58上に固定されて設けられている。このガイド板56には、図10に示すように、巻取り側テンションローラ23の両端部の外周面に摺接される摺接面56aが形成されており、この摺接面56aが鉛直方向に対して所定の傾斜角θ2をもって傾斜された状態で固定されている。
【0064】
そして、ガイド板56は、摺接面56aの傾斜角θ2が例えば30度程度にされており
、巻取り側テンションローラ23の端部が巻取りロール12側に近接するように移動したときに、摺接面56aによって、巻取り側テンションローラ23の端部に、斜め鉛直下方の反力を付与し、巻取り側テンションローラ23の端部の移動を規制するように作用する。
【0065】
また、巻取り側テンションローラ23の両端には、記録紙3の幅方向の位置をガイドするフランジ59が設けられている。ガイド板56は、巻取り側テンションローラ23の端部の外周面とフランジ59の側面とにそれぞれ摺接されている。また、ガイド板56は、巻取り側テンションローラ23によって記録紙3に適切な張力を付与するために、巻取り部20のロール軸54に対して移動可能に設けられており、このガイド板56の位置によって、ロール軸54に対する巻取り側テンションローラ23の相対位置が良好に調整されている。
【0066】
以上のように構成された巻取り側テンションローラ23は、記録紙3が巻取りロール12に幅方向に対して巻取り位置が偏って巻き取られる、いわゆる巻き癖が生じた場合に、紙管4に偏って巻き取られた記録紙の幅方向の変位に伴って、巻取り側テンションローラ23の一端部が巻取りロール12に近接するように移動され、この移動された一端部がガイド板56の摺接面56aによって移動が規制されることで、巻取り側テンションローラ23の他端部が巻取りロール12に近接するように移動され、紙管4に巻回される記録紙3の幅方向の巻き位置が円滑に矯正される。
【0067】
つまり、巻取り側テンションローラ23は、紙管4に巻き取られる記録紙3に生じた巻き癖の状態に伴って、軸方向の中央部を回動中心として、両端部が巻取り部20のロール軸54に対して交互に近接離間する揺動運動を行う。このような揺動運動することによって、巻取り側テンションローラ23は、巻取りロール12に巻回される記録紙3の巻き位置の幅方向の変位が自動的に矯正されるので、巻取りロール12に巻き癖が発生することが抑制され、紙管4に記録紙3を良好に巻き取ることができる。
【0068】
以上のように構成されたインクジェットプリンタは、供給部16の供給ロール11から引き出された記録紙3が、分離ローラ21によって供給ロール11から良好に分離されて、円滑に引き出される。供給ロール11から引き出された記録紙3は、供給側テンションローラ22によって張力が付与され、フロントペーパガイド17を経て記録ヘッド7に搬送される。
【0069】
次に、プラテン18上に搬送された記録紙3は、複数の凹部48内の底面上に良好に吸着されて支持され、記録ヘッド7からインク滴が吐出されて画像等の記録が行われる。続いて、記録ヘッド7によって記録が行われた記録紙3は、リアペーパガイド19を経て搬送され、巻取り側テンションローラ23によって張力が付与され、巻取りロール12に巻き癖が発生することが抑制され、巻取りロール12に記録紙3が良好に巻き取られる。
【0070】
上述したように、インクジェットプリンタによれば、凹部48が設けられたプラテン18を備えることによって、凹部48内の底面上に沿って記録紙3が良好に吸着されて支持されるので、記録紙3の搬送方向に生じる皺が矯正され、記録ヘッド7による記録品質を向上することができる。
【0071】
また、このインクジェットプリンタによれば、供給ロール11の紙管4が、ロール軸26に設けられたスペーサ28によって、記録紙3の幅方向の中央部に対応する位置が支持されることによって、供給ロール11がロール軸26に支持された状態で、記録紙3の幅方向の中央部に撓みが生じることが抑えられ、記録紙3に生じる皺を抑制することができる。
【0072】
また、このインクジェットプリンタによれば、記録ヘッド7と供給部16との間の記録紙3の搬送経路上に設けられ、記録紙3に搬送方向と逆方向の張力を付与する供給側テンションローラ22を備えることによって、記録ヘッド7と供給部16との間の記録紙3が弛むことが抑えられ、記録紙3に生じる皺を抑制することができる。
【0073】
また、このインクジェットプリンタによれば、供給ロール11の外周面から記録紙3の内周面を分離させる分離ローラ21を備えることによって、記録紙3の幅方向に均等な張力が作用して供給ロール11から記録紙3が円滑に引き出され、引き出される記録紙3に皺が生じることを良好に抑制することができる。
【0074】
また、このインクジェットプリンタによれば、巻取りロール12に巻き取られる記録紙3に搬送方向と逆方向の張力を自重で付与する巻取り側テンションローラ23と、巻取りロール12に対する巻取り側テンションローラ23の相対位置を規制するガイド板56とを備えることによって、巻取り側テンションローラ23が軸方向の中央を回動中心とする揺動運動を行うので、巻取りロール12に巻き癖が発生することが抑制され、巻取りロール12に記録紙3を良好に巻き取ることができる。したがって、巻取りロール12に生じる巻き癖に伴って、搬送される記録紙3に皺が生じることを抑制することができる。
【産業上の利用分野】
【0075】
本発明は、ロール状に巻回された記録紙に記録する記録装置に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
3 記録紙
5 記録ユニット
6 搬送ユニット
7 記録ヘッド
11 供給ロール
12 巻取りロール
16 供給部
18 プラテン
20 巻取り部
48 凹部
49 凸壁
51 吸引穴
52 吸引用ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材が支持筒に巻回された供給ロールを支持するロール軸を有し、前記供給ロールから前記被記録材を供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記被記録材に記録を行う記録ヘッドで記録された前記被記録材を巻取りロールに巻き取る巻取り部と、を備え、前記供給部から前記巻取り部に前記被記録材を搬送する搬送装置において、
前記ロール軸には、前記支持筒の、前記被記録材の搬送方向に直交する幅方向の中央部に対応する位置を支持する大径部が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ロール軸には、前記大径部が軸方向に移動可能に設けられている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ロール軸は回転するドライブリングに当接して回転するスクローラリングを前記ロール軸の端部に有し、さらに前記ロール軸は前記支持筒の内周部に係合する係合手段を有し、前記支持筒と前記系合手段の系合位置を前記ロール軸の軸方向に可変することで前記支持筒に巻回された前記被記録材の端面と前記スクローラリングまでの距離を所定の距離にするように位置決めすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドと前記供給部との間の前記被記録材の搬送経路上に設けられ、前記被記録材に搬送方向と逆方向の張力を付与する供給側テンションローラを備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記供給側テンションローラは、自重で張力を付与する請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記供給ロールから引き出された前記被記録材の内周面と、前記供給ロールの外周面とに跨って前記被記録材に押圧され、前記供給ロールの外周面から被記録材の内周面を分離させる分離ローラを備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記分離ローラは、前記ロール軸と平行に移動可能に設けられ、前記被記録材を自重で押圧する請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドと前記巻取りロールとの間の前記被記録材の搬送経路上に設けられ、前記巻取りロールに巻き取られる前記被記録材に搬送方向と逆方向の張力を自重で付与する巻取り側テンションローラと、
前記巻取りロールに対する前記巻取り側テンションローラの相対位置を規制するガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、前記巻取り側テンションローラに当接される当接面が、鉛直方向に対して傾斜されていることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の搬送装置を備え、前記記録ヘッドによって前記被記録材に記録を行う記録装置。
【請求項10】
被記録材が支持筒に巻回された供給ロールを支持するロール軸を有し、前記供給ロールから前記被記録材を供給する供給部と、前記供給部から供給された前記被記録材に記録を行う記録ヘッドで記録された前記被記録材を巻取りロールに巻き取る巻取り部とを備え、前記供給部から前記巻取り部に前記被記録材を搬送する搬送装置の搬送方法において、
前記支持筒の前記被記録材の搬送方向に直交する幅方向の中央部に対応する位置を前記ロール軸に設けられた大径部によって支持する工程と、前記大径部によって前記支持筒の前記中央部を支持しながら前記被記録材を搬送する工程と、を有することを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−168220(P2010−168220A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60962(P2010−60962)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【分割の表示】特願2005−49552(P2005−49552)の分割
【原出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】