説明

搬送装置及び記録装置

【課題】使用環境の変化や被記録材の膨潤に伴う被記録材の変形や波打ちが発生した場合であっても、被記録材を安定して吸着して搬送する。
【解決手段】記録紙を表面に支持して搬送するための搬送ベルト31を備える。搬送ベルト31には、内部に複数の電極板36aが設けられる。複数の電極板36aは、記録紙を搬送ベルト31に吸着させる静電吸着力を発生する電極板36aと、発熱することによって搬送ベルト31の表面温度を調整して表面の電気抵抗値を制御する電極板36aとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材を搬送坦持体に吸着して搬送を行う搬送装置、及びこの搬送装置を備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にインクジェット記録装置は、被記録材に記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うものであり、記録ヘッドのコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、ランニングコストが安いなどの利点を有している。加えて、インクジェット記録装置は、ノンインパクト方式であるので、騒音が少なく、しかも、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であるという利点を有している。中でも、被記録材の幅方向に多数の吐出口が配列されたラインタイプの記録ヘッドを有するフルライン型の記録装置では、更なる記録動作の高速化を図ることが可能になる。
【0003】
ところが、フルライン型の記録装置において、例えばカラー記録を行うために、ラインタイプの記録ヘッドが被記録材の搬送方向に多数並んで設けられている構成が採られる。この構成の場合には、最も上流側に位置する記録ヘッドから、最も下流側に位置する記録ヘッドまでの距離がかなり長くなるので、記録領域において被記録材の浮き上がりが発生し、それが記録画像の乱れや被記録材のジャム等の原因になる可能性がある。そのため、被記録材が浮き上がらないように下方へ付勢する必要がある。具体的には、被記録材に近接する位置に電極が設けられ、その電極に電荷を与えて静電気力を発生させることで、被記録材を静電気力で吸着して浮き上がりを防ぐ方法が一般的に知られている。
【0004】
従来のインクジェット記録装置は、給紙装置によって給紙されてきた被記録材が、記録領域において、搬送坦持体としての搬送ベルトに内蔵された吸着力発生装置によって、搬送ベルトの上面に吸着され保持されるように構成されている。そして、一般的に、被記録材は、記録ヘッドによって記録されながら搬送ベルトによって搬送される。
【0005】
ここで、図12から図15を参照して、特許文献1に開示されているような従来の搬送ベルト及び吸着発生装置について説明する。まず、搬送ベルト周辺の構成について、図12を参照して簡単に説明する。図12に示すように、搬送部103の搬送ベルト131は、厚さが0.1mm〜0.2mm程度のポリエチレンやポリカーボネートなどの合成樹脂からなる無端ベルトであり、記録紙Pを吸着して保持しながら移動する。図13から図15に示すように、搬送ベルト131の内部には、後述する吸着力発生装置136が設けられている。この吸着力発生装置136は、搬送ベルト131に接する給電ブラシ152(図12参照)に0.5kV〜10kV程度の電圧を印加することで、各記録ヘッド107K,107C,107M,107Yの下方の記録領域で搬送ベルト131に静電吸着力を発生する。なお、給電ブラシ152は所定の高電圧を発生する高圧電源(不図示)に接続されている。
【0006】
ローラ132,134,135は、搬送ベルト131を支持して適度な張力を与えている。ローラ134は紙送りモータ160に接続されている。また、紙押さえローラ140用の支持部材139がピンチローラ133の回転軸を回転中心として取り付けられており、記録紙Pを搬送ベルト131側に押さえ付ける押圧部材としての紙押さえローラ140が、この支持部材139に回動可能に取り付けられている。紙押さえローラ140は、付勢部材(不図示)の付勢力によって搬送ベルト131側に付勢されている。
【0007】
一対のクリーニングローラ138は、搬送ベルト131を挟んで圧力を加えるように設けられている。一対のクリーニングローラ138は、搬送ベルト131に付着したインク等の汚れを除去するためにインクの吸収を可能にし、かつ耐久性の劣化を防止するために、気孔径が小さい(例えば10μm〜30μm程度が好ましい)連泡体のスポンジで形成されている。また、搬送ベルト131の近傍には、一対のクリーニングローラ138によって搬送ベルト131が清掃された後に、搬送ベルト131を除電するための除電ブラシ137が設けられている。
【0008】
なお、搬送ベルト131の下方には、両面記録を可能にする両面搬送路が設けられている。片面の記録が完了した記録紙Pは、排紙側に搬送され、記録紙Pの後端が排紙ローラ及び拍車ローラに到達したときに、排紙ローラが逆転して両面搬送路に導き入れる。そして、記録紙Pは、搬送ローラとピンチローラとの間を通って、再度、搬送ベルト131上に載せられて両面記録が行われる。
【0009】
次に、吸着力発生装置136について、図13から図15を参照して説明する。図13は、図12における矢印f方向から見た図であり、搬送ベルト131に設けられた吸着力発生装置136の電極パターン等を示す説明図である。図14は、図13におけるA−A線断面図であり、図15は図13におけるB−B線断面図である。
【0010】
図13から図15に示すように、搬送ベルト131の内部には、吸着力発生装置136が設けられている。吸着力発生装置136は、導電性の金属からなる電極板136aと、アース板136bとから構成されている。図13に示すように、搬送ベルト131の内部には、それぞれ独立して複数の電極板136a及び複数のアース板136bが交互に配置されている。これら電極板136a及びアース板136bは、搬送ベルト131の移動方向と直交する方向に延ばされて、櫛歯状構造に構成されている。
【0011】
各電極板136a及び各アース板136bの端部には、幅広に拡大された端子136a’,136b’が設けられており、搬送ベルト131の両側端において、各端子136a’,136b’が外部に露出されて被給電部になっている。そして、各端子136a’,136b’に所定の圧力で接触する導電性の給電ブラシ152(図12参照)が設けられており、高圧電源(不図示)によって電極板136aの端子136a’に正又は負の電圧が印加される。また、アース板136bの端子136b’は接地されている。このように電極板136a及びアース板136bを有して構成された吸着力発生装置136は、吸着力発生領域に配置されている。この吸着力発生領域において、吸着力発生装置136は、図14及び図15に示すように、ポリエチレンやポリカーボネート等の合成樹脂からなるベース層136cと表面層136dとで挟み込まれて保護されている。このように構成されることで、搬送ベルト131の内部には、吸着力発生装置136が組み込まれている。
【0012】
電極板136aに電圧が印加されたとき、静電気力が図14中の矢印方向に発生し、図14に示すような電気力線が形成される。そして、電極板136aとアース板136bとの間の電位差によって、搬送ベルト131の上方に吸着力が発生し、記録紙Pの記録面上に、電極板136aに印加された電圧と同じ極性の電荷(表面電位)が発生する。なお、記録紙Pの吸着力は、電極板136aとアース板136bとの間の導電性金属が存在しない領域が最も小さくなる。
【0013】
次に、吸着搬送の動作について図12から図15を参照して説明する。記録紙Pは、搬送ローラ132とピンチローラ133とで挟まれて搬送ベルト131上に置かれ、紙押さえローラ140によって搬送ベルト131側に押さえ付けられる。さらに、記録紙Pは、吸着力発生装置136が発生した静電吸着力によって搬送ベルト131の平面部に吸着される。続いて、記録紙Pは、搬送ベルト131に吸着された状態で搬送ベルト131が回転することによって記録部へ搬送される。そして、記録紙Pは、各記録ヘッド107K,107C,107M,107Yによって記録されながら、紙送りモータ160及びローラ134の作動によって矢印A方向へ送られる。
【0014】
記録紙Pに多量のインクが吐出された場合には、記録紙Pが膨潤し、波打ち(コックリング)が発生することがある。この場合には、吸着力発生装置136で発生する静電吸着力によって記録紙Pを搬送ベルト131側に吸着することで、記録紙Pが記録ヘッド107K,107C,107M,107Y側へ浮き上がることを抑えている。これによって記録紙Pが記録ヘッド107K,107C,107M,107Yに接触することなく安定して記録動作を行うことが可能にされている。
【0015】
また、温度や湿度などの環境の変化に伴って、記録紙Pの端部が波打ったりカールが発生したりすることがある。このような場合であっても、紙押さえローラ140によって記録紙Pを搬送ベルト131側に押し付け、波打ちやカールを抑えた状態で吸着力発生領域へ搬送することができるので、記録部において記録紙Pの安定した吸着を行うことができる。
【特許文献1】特開平11−151843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、近年のインクジェット記録装置では、高精細な画質を得るために、記録紙Pと記録ヘッド107K,107C,107M,107Yとの間隔を小さく(例えば0.5mm〜1.5mm)、かつ一定に保ちながら高精度に搬送を行うことが要求されている。特に、ラインヘッドを用いた1パスの高速記録装置においては、記録紙Pと記録ヘッド107K,107C,107M,107Yの間隔が画質に直接影響を及ぼす要因となっている。このように記録紙Pと記録ヘッド107K,107C,107M,107Yとの間隔を更に小さくすることに伴って、特に片面記録時に記録紙Pにインクが多量に吐出された場合に生じる、記録紙の波打ちやカールをより一層抑えることが必要になっている。そのため、搬送ベルト131による記録紙Pの強い吸着力を得ることが今まで以上に望まれている。さらに、使用環境が変化したときに、ベルトへの吸着条件が変化し、吸着力が低下することがあったので、常に安定して高い吸着力を得ることが望まれている。
【0017】
なお、このような問題は、搬送ベルト107K,107C,107M,107Yに限らず、剛性を有するドラムなど他の形態の被記録材を支持して搬送するための搬送担持体においても同様に生じるおそれがある。
【0018】
そこで、本発明は、使用環境の変化や被記録媒材の膨潤に伴って被記録材に変形や波打ち(コックリング)が発生したときも、被記録材を安定して吸着して搬送することができる搬送装置と、この搬送装置を備える記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した目的を達成するため、本発明に係る搬送装置は、被記録材を表面に支持して搬送するための搬送担持体を備え、搬送担持体には、内部に複数の電極が設けられる。そして、複数の電極は、被記録材を搬送担持体に吸着させる静電吸着力を発生する電極と、発熱することによって搬送担持体の表面温度を調整して表面の電気抵抗値を制御する電極とを含んでいる。
【0020】
また、本発明に係る記録装置は、本発明の搬送装置と、被記録材に画像を形成する画像形成装置と、を備える。搬送担持体は、被記録材を画像形成装置に対向する位置に搬送する。
【0021】
また、本発明に係る他の搬送装置は、被記録材を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトの内部に設けられ搬送ベルトの移動方向と直交する幅方向に延ばされた複数の電極と、複数の電極における隣り合う電極の間に電位差が生じるように複数の電極の少なくとも一部に電圧を印加する制御手段と、搬送ベルトの表面温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段が検出した表面温度に基づいて搬送ベルトの表面温度が所定の範囲内になるように温度調整する温度調整手段と、を備える。
【0022】
また、本発明に係る他の記録装置は、本発明の搬送装置と、被記録材に画像を記録する記録手段と、を備え、記録手段が搬送ベルトによって搬送されている被記録材に記録を行う。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被記録材を搬送担持体に吸着させる吸着力の不足によって、搬送時に被記録材のばたつきや浮き上がりが生じることを防ぎ、被記録材を安定して吸着して搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態の被記録材の搬送装置を備える記録装置について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態の記録装置1の全体構成を示す断面図である。実施形態の記録装置1は、給紙部2、搬送部(搬送装置)3、記録部(画像形成装置)7、排紙部4、及び両面搬送部6を有している。
【0026】
給紙部2は、被記録材としての記録紙Pが積載される圧板21と、記録紙Pを給紙する給送回転体22とがベース20に取り付けられて構成されている。圧板21はベース20に結合された回転軸aを中心として揺動可能であり、圧板バネ24の付勢力によって給送回転体22に向けて付勢されている。圧板21の、給送回転体22と対向する部分には、記録紙Pが重なって搬送されるのを防止するために、人工皮等の摩擦係数が比較的大きい材料によって形成された分離パッド25が設けられている。さらに、ベース20には、記録紙Pの一端部を覆い、記録紙Pを1枚ずつ分離するための分離爪26と、圧板21と給送回転体22の当接を解除するリリースカム(不図示)とが設けられている。
【0027】
また、手差し給紙用の給送回転体90が設けられている。給送回転体90は、外部コンピュータ等からの記録命令信号に従って、手差しトレイ91上に置かれた記録紙Pを搬送部3の搬送ローラ32へ給紙する。
【0028】
搬送部3は、記録紙Pを表面に支持して搬送するための搬送担持体としての搬送ベルト31を有しており、搬送ベルト31の表面に記録紙Pを吸着して搬送する。搬送ベルト31は、従来の構成と同様に、図2から図4に示すように、電極板(電極)36a及びアース板36bからなる櫛歯電極構造である吸着力発生装置36と、ベース層36c及び表面層36dとを有して構成されている。この搬送ベルト31は、駆動ローラ34によって駆動され、この駆動ローラ34と、従動ローラである搬送ローラ32及び圧力ローラ35に架け渡されている。
【0029】
搬送ベルト31は、厚さが0.1mm〜0.2mm程度のポリエチレンやポリカーボネートなどの合成樹脂によって、つなぎ目がない無端形状に形成されており、記録紙Pを吸着して保持しながら移動する。この搬送ベルト31の内部には、吸着力発生装置36が設けられている。この吸着力発生装置36は、搬送ベルト31と接している給電ブラシ52に0.5kV〜10kV程度の電圧を印加させることにより、搬送ベルト31に静電吸着力を発生させる。給電ブラシ52は、所定の高電圧を発生する高圧電源(不図示)に接続されている。なお、高圧電源及び給電ブラシ52は電圧供給用の制御部54(図6参照)に含まれている。
【0030】
図1,7,8に示すように、搬送ローラ32と駆動ローラ34はプラテン30に回転可能に取り付けられている。圧力ローラ35は、一端がプラテン30に揺動可能に取り付けられているアーム50の他端に、回転可能に取り付けられ、アーム50がバネ51によって押圧されることによって、搬送ベルト31に例えば2.0kgf(19.6N)程度の張力を付与している。また、プラテン30は、搬送ベルト31の下方に配置されており、搬送ベルト31が下方へ変位するのを規制する働きをしている。
【0031】
搬送ベルト31に従動するピンチローラ33は、搬送ローラ32と対向する位置に、この搬送ローラ32と当接して設けられている。ピンチローラ33は、バネ(不図示)の弾性力によって搬送ベルト31に圧接されており、搬送ベルト31と共に回転することによって記録紙Pを記録部7へ搬送する。また、ピンチローラ33は、本体フレーム(不図示)と導通されており、搬送ベルト31の表面である表面層36dに蓄積されている電荷を除去する。
【0032】
さらに、記録紙Pが搬送されてくる搬送部3の入口には、記録紙Pを案内する上ガイド27及び下ガイド28が設けられている。上ガイド27には記録紙Pの前端及び後端を検出するためのPEセンサレバー23が設けられている。
【0033】
クリーニングローラ対38が、搬送ベルト31を挟んで圧力を加えるように設けられている。このクリーニングローラ対38は、搬送ベルト31に付着したインク等の汚れを除去するためにインクを吸収することが可能であり、かつ耐久性の劣化を防止するために気孔径の小さい(10μm〜30μm程度が好ましい)連泡体のスポンジで形成されている。また、クリーニングローラ対38で清掃された後に、搬送ベルト31を除電するための除電ブラシ37が設けられている。
【0034】
搬送部3の搬送ローラ32の、記録紙搬送方向における下流側には、画像情報に基づいて画像を形成する記録部7が設けられている。記録部7は、記録紙Pの搬送方向と直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプの画像形成装置又は記録手段であるインクジェット記録ヘッドを備えて構成されている。インクジェット記録ヘッドは、記録紙Pの搬送方向上流側から、黒色用の記録ヘッド7K、シアン用の記録ヘッド7C、マゼンタ用の記録ヘッド7M、イエロー用の記録ヘッド7Yの順に所定間隔で並んで配置されている。これら各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yは、ヘッドホルダ7Aに取り付けられている。各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yは、内蔵するヒータ等によってインクに熱を与えてインクを膜沸騰させ、この膜沸騰による気泡の成長又は収縮によって生じる圧力変化によってノズル(不図示)からインクを吐出させる。
【0035】
各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yが取り付けられたヘッドホルダ7Aは、一端部が軸71に揺動可能に固定されており、他端部に形成された突出部7Bがレール72に係合し、ノズル面と記録紙Pとの距離(紙間距離)が規定されている。
【0036】
排紙部4は、排紙ローラ41と拍車42を有しており、記録部7で画像形成された記録紙Pを排紙トレイ43に排出する。排紙ローラ41は、伝達手段(不図示)を介して駆動ローラ34の回転力が伝達されて駆動される。拍車42は、記録後の記録面上を転がるので、記録紙Pとの接触面積が小さくされて、記録後の記録面に接触したときであっても記録紙Pの記録像をできるだけ乱すことがないように構成されている。
【0037】
両面搬送部6は、両面記録を行うために両面搬送路内に複数の送りローラを有しており、片面の記録が完了して排紙側に搬送された記録紙Pが導き入れられたときに、記録紙Pを反転させる。そして、両面搬送部6は、記録紙Pを搬送ローラ32とピンチローラ33との間を通して、再度、搬送ベルト31上に記録紙Pを載せるように構成されている。
【0038】
このような構成のインクジェット方式の記録装置1による記録方法について簡単に説明する。まず、記録前の待機状態では、給紙部2のリリースカムが圧板21を所定位置まで押し下げて、圧板21と給送回転体22の当接を解除している。この状態で搬送ローラ32が作動して、その駆動力がギア等によって給送回転体22及びリリースカムに伝達されると、リリースカムが圧板21から離れて圧板21は上昇し、給送回転体22と圧板21上の記録紙Pとが当接する。そこで、給送回転体22の回転に伴い記録紙Pがピックアップされ、分離爪26によって1枚ずつに分離されて搬送部3に給紙される。給送回転体22は、記録紙Pを搬送部3に送り込むまで回転し、再び記録紙Pと給送回転体22との当接を解除した待機状態となって搬送ローラ32が停止して駆動力が遮断される。
【0039】
このように搬送部3に送られた記録紙Pは、上ガイド27及び下ガイド28に案内されて、搬送ローラ32とピンチローラ33との間に送られる。このとき、搬送されてきた記録紙Pの前端をPEセンサレバー23が検出し、前端の位置に基づいて記録紙Pの記録位置が決定される。また、記録紙Pは、紙送りモータによって搬送ローラ32を介して搬送ベルト31が回転することによって搬送される。
【0040】
記録紙Pが記録部7に搬送されたとき、各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yが各色のインクを吐出する。適切なタイミングで記録紙Pを搬送しながら、各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yから吐出された各色のインクを記録紙Pで受けることによって、記録紙Pの片面に所望の画像(文字や模様等を含む)が形成される。
【0041】
記録紙Pの片面の記録が完了した後、記録紙Pは排紙側に搬送され、この記録紙Pの後端が排紙ローラ41と拍車ローラ42との間に到達したとき、排紙ローラ41が逆転して記録紙Pは逆方向に搬送され、両面搬送部6に導き入れる。記録紙Pは、両面搬送路内に配置された複数の送りローラによって搬送されて、反転した状態で、搬送ローラ32とピンチローラ33との間を通されて、再度、搬送ベルト31上に載せられる。そして、再び各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yから各色のインクを吐出して、記録紙Pの裏面に所望の画像(文字や模様等を含む)が形成される。
【0042】
このように両面の記録が完了した後、駆動ローラ34によって排紙ローラ41が駆動されて排紙ローラ41が正転して、記録紙Pは排紙ローラ41と拍車42との間を通って排紙トレイ43に排出される。
【0043】
次に、本発明の主たる特徴である搬送部3の構成について、主に図7から図11を参照してさらに詳しく説明する。図7は搬送部3全体の構成を示す斜視図であり、図8は搬送部を示す断面図である。
【0044】
まず、搬送部3のフレームであるプラテン30について説明する。図7から図9に示すように、プラテン30には、各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yに対向する位置に、ノズル列方向(搬送ベルト31の搬送方向と直交する方向)に、かつノズル面(フェース面)と平行に、凸部30aが設けられている。各凸部30aの先端面30b、すなわち各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yに対向する面は、搬送ベルト31の搬送方向に予め定められた幅を有しており、互いに同一平面内に位置している。凸部30aは、充分な吸着力を得るために導電性を有する材料によって形成されている。凸部30aは、搬送ベルト31が摺動する先端面30bに、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルム又は高分子量ポリエチレンフィルムなどの低摩擦層30c(厚さが100μm、摩擦係数が0.2)が全面に形成されている。これによって、凸部30aは、搬送ベルト31の搬送時における摩擦の低減と、回転時の回転負荷の安定化とを図り、高い搬送精度が確保されている。
【0045】
一方、搬送ベルト31は、図3、図4及び図9に示すように、記録紙Pを吸着する面である表面側に位置する、イオン導電体が添加されて構成される中抵抗層(表面層)36dと、絶縁層(ベース層)36cと、を有して構成された積層構造である。また、搬送ベルト31は、表面層36dとベース層36cとの間に位置する、電極板36aが設けられた中間層を有しており、電極板36aに電荷を与えて静電気力を発生させ、記録紙Pを表面層に吸着させるように構成されている。なお、表面層36dが有するイオン導電体は、イオンがキャリアとなって電気が流れる物質、すなわち電界質である。
【0046】
また、中間層には、接地されたアース板36bが設けられている。この中間層には、それぞれ独立している複数の電極板36a及び複数のアース板36bが交互に配置され、これら電極板136a及びアース板136bが搬送ベルト31の移動方向と直交する幅方向に延ばされた櫛歯状構造に構成されている。また、図2及び図4に示すように、各電極板36a及び各アース板36bの端部には、幅広に拡大された端子36a’,36b’が設けられており、搬送ベルト131の両側端において、各端子36a’,36b’が外部に露出されて被給電部を構成している。これら電極板36aの端子36a’には、正又は負の電圧が印加されて正極又は負極とされる。
【0047】
一般に、物体は、表面の電気抵抗値(以下、単に抵抗値と称する)に応じて絶縁体、半導体、導体にそれぞれ区分されている。被記録材(記録紙P)である紙は、絶縁体に属しており、一般的に抵抗値が1010Ω・cm〜1012Ω・cm程度である。記録紙Pの抵抗値と搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値とがほぼ同一(例えば1011Ω・cm)である場合には、吸着力が十分に作用する。しかし、表面層36dの電気抵抗値が紙の抵抗値よりも大きい場合には、電流が流れ難くなり、吸着力が低下する。また、表面層36dの抵抗値が紙の抵抗値よりも小さい場合には、電流が流れ易くなり過ぎて、吸着力が低下してしまう。
【0048】
上述のように、搬送ベルト31は、電極板36a及びアース板36bからなる櫛歯状の電極構造の吸着力発生装置36が、ベース層36c及び表面層36dとで挟まれて構成されている。これらベース層36cと表面層36dは、接着剤又は熱溶着等によって互いに接合されている。しかし、搬送ベルト31がインクジェット記録装置内に装着された状態で長期間放置された場合、搬送ベルト31を構成する各部材の材質に固有の剛性(曲がり易さ)の違いによって、搬送ベルト31に曲がり癖がついてしまう。すなわち、搬送ベルト31には、搬送ローラ32、駆動ローラ34、圧力ローラ35に当接して特に曲がりが大きい部位に曲がり癖がつく(クリープが発生する)おそれがあった。従来、この状態で搬送動作を開始した場合、搬送ローラ32と駆動ローラ34とに架け渡された搬送ベルト31の、記録ヘッド7K,7C,7M,7Yに対向する部分が、圧力ローラ35によって搬送ベルト31に加えられた張力によって移動方向に引っ張られる。しかしながら、曲がり癖が付いた部分に癖形状が残っているので、この部分に0.5mm〜1.0mm程度の凹凸形状(波打ち)が発生するのを防ぐことが困難であった。
【0049】
記録動作時に、記録紙Pが、搬送ベルト31の曲がり癖形状が残っている部分に位置しないように制御する方法も考えられる。しかし、インクジェット記録装置においては、上述したように記録ヘッド7K,7C,7M,7Yと記録紙Pとの間隔が狭い(0.5mm〜1.5mm)ので、癖形状によっては、記録紙Pが記録ヘッド7K,7C,7M,7Yのノズル面を擦ってしまう。このため、ノズル部の破損や、記録紙Pを介して異なるインク同士が混色したり異なるインク同士が化学反応して固化したりするといった現象を起こしてしまい、記録不能になることもある。そこで、各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yの間に拍車を設けて搬送ベルト31を上方から押さえ、記録紙Pの波打ちを矯正する構成も考えられる。しかし、少なくとも高速記録時には、画質の劣化や、拍車跡の発生や搬送ベルト31の表面層の劣化による高電圧のリークといった問題が生じる。このため、各記録ヘッド7K,7C,7M,7Yの間に拍車が設けられる構成は、フルライン型の高速インクジェット記録装置には適していない。
【0050】
さらに、搬送ベルト31上の記録紙Pに波打ちや浮き上がり等の異常が生じたときに、記録紙異常検出センサによって検出し、搬送ベルト31を回転駆動する紙送りモータ60等の駆動源の電源を遮断することも考えられる。しかし、その方法では、高速インクジェット記録装置の場合、搬送ベルト31は、高速で回転しているので、慣性力の影響で瞬時に停止することができずに、搬送ベルト31上の記録紙Pが記録ヘッド7K,7C,7M,7Yのノズル面を擦ってしまう可能性がある。この場合、やはり記録ヘッド7K,7C,7M,7Yのノズル部の破損や、記録紙Pを介して異なるインク同士が混色したり、異なるインク同士が化学反応して固化したりするといった現象を起こすおそれがあるので、高速インクジェット記録装置には適していない。
【0051】
そこで、これら問題を解決し、実際の動作状況において搬送ベルト31の、搬送ローラ32、駆動ローラ34、圧力ローラ35に当接する部分に曲がり癖がつく(クリープが発生する)のを抑え、搬送時に搬送ベルト31がばたつくのを抑える原理について説明する。
【0052】
本実施形態では、櫛歯状の電極板36aを有する搬送ベルト31に高電圧(0.5kV〜10kV)を印加することで静電気力を発生させて、搬送ベルト31の上面で記録紙Pを吸着する。また同様に、搬送ベルト31は、その下面でプラテン30の凸部30aを吸着することによって、搬送ベルト31の上下方向の変位が抑制されて、安定した搬送が実現されている。搬送ベルト31が発生する吸着力に関しては、図10(a)に示すように、直列接続されたコンデンサと見なしてモデル化することができる。この場合、搬送ベルト31とプラテン30との間の距離dと、吸着力Fとの関係は、以下の関係式1で算出され、図10(b)に示す関係となる。
【0053】
F=εS(V−V1−V2)2/2d2 ・・・・関係式1
なお、関係式1において、ε:誘電率、S:面積、V:電極板36aに供給される電圧、V1:搬送ベルト31のベース層36cにおける電圧、V2:プラテン30の低摩擦層30cにおける電圧、とする。
【0054】
しかしながら、この関係式は、常温時に搬送する場合にのみあてはまるものであり、高温時及び低温時には、この関係式で算出される吸着力Fよりも実際の吸着力が小さくなってしまう。これは、搬送ベルト31の材質自体が絶縁性を有していても、イオン導電体が添加された構成の中抵抗層(表面層36d)は、温度変化に伴って搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値が変化する特性を有していることに起因している。すなわち、本発明は、搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値と、被記録材の抵抗値との差が大きくなることによって、記録紙Pを吸着し難くなることを見出した。
【0055】
図11に、搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値と温度との関係を示す。図11において、縦軸は搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値を示し、横軸は搬送ベルト31が置かれている環境の温度を示す。
【0056】
搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値は、イオン導電体を添加することによって制御できる。しかし、図11中に破線で示すように、温度によって表面層36dの抵抗値は変化し、特に低温時には表面層36dの抵抗値が上がってしまい、表面層36dと記録紙Pとの抵抗値の差が大きくなり、上述したように十分な吸着力を得ることができなかった。
【0057】
そこで、本実施形態では、搬送ベルト31の表面温度を検出する温度検出手段が設けられている。本実施形態では、検出センサが検出した温度が所定温度範囲から逸脱したときに、加熱手段又は冷却手段の少なくとも一方を含む温度調整手段によって、搬送ベルト31の表面温度が所定の温度範囲内になるように温度調整されるように構成されている。
【0058】
図5に本実施形態における回路図を示す。図5において、制御部54は、各種の制御指令を出すCPU310と、制御データなどが書き込まれたROM311と、記録データ等を展開する領域となるRAM312とを有している。
【0059】
制御部54は、給紙ローラ22を駆動する給紙モータ316、駆動ローラ34を駆動する搬送モータ317を制御する。また、制御部54は、記録部(記録ヘッド7Y、7M、7C、7K)を駆動するヘッドドライバ313、給紙モータ316、搬送モータ317をそれぞれ駆動するための複数のモータドライバ314を制御する。また、制御部54は、コンピュータ、デジタルカメラ等のホスト装置400とのデータの送受信を行うインターフェース318を制御する。
【0060】
さらに、制御部54は、搬送ベルト31を加熱する加熱手段としての加熱部319と、搬送ベルト31を冷却する冷却手段としての冷却部320をそれぞれ制御する。
【0061】
図6に、加熱部319の一構成例を示す。図6に示すように、記録装置1内の搬送ベルト31の表面温度を、温度検出手段としての検出センサ55によって検出する。そして、検出センサ55が温度変化を検出したときに、制御部54はその温度変化に基づいて、加熱部である搬送ベルト31内の電極板36aに温度調整用の電圧を印加して加熱する。この構成によって、搬送ベルト31の表面層36dの温度がほぼ一定になるように調整し、環境の変化にかかわらずに搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値を制御して一定に保っている。その結果、搬送ベルト31の静電吸着力がほぼ一定に保たれるので、記録紙Pをより一層確実に吸着することができる。
【0062】
例えば、搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値の、図11に示す高温環境の上限値を基準として、それよりも低温の環境下では、表面層36dの抵抗値が小さくなるように表面層36dの温度を調整する。これによって、様々な環境条件においても、搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値がほぼ一定に保たれる(図11の実線参照)。具体的には、検出センサ55が検出した搬送ベルト31の表面層の温度が、第1の所定温度以下になったときに電極に所定の加熱電圧を印加し、第1の所定温度よりも高い第2の所定温度以上になったときに加熱電圧を下げる又はゼロにする。また、搬送ベルト31の表面層36dの温度に応じた電圧を電極に印加するように構成されてもよい。
【0063】
すなわち、静電吸着力発生のために所定の電位に保たれている電極板36aに交流電圧を重ねて印加し、静電吸着力を発生させながら、サインカーブをなすように変化する交流電圧成分によって発熱させている。
【0064】
そして、本実施形態では、温度調整装置として新たな装置を追加することなく、搬送ベルト31の中間層に従来から配置されていた静電吸着力発生装置である電極板36aを利用して温度調整を行うように構成されてことで、製造コストの増加が抑えられている。この電極板36aは、所定の電圧が印加されたとき、初期抵抗に応じた電流が流れて発熱し、その電圧に応じて発熱する。制御部54は、画像形成装置である記録ヘッド7K,7C,7M,7Yの直下に位置する、搬送ベルト31内の複数の電極板36aにおける隣り合う電極板36aの間に電位差が生じるように静電吸着力発生用の電圧を印加する。また、制御部54は、直下の位置を除く他の位置、すなわち搬送ベルト31周囲の位置に配置された少なくとも一部の電極板36aに、温度調整用の電圧を印加する。これによって、製造コストを増加させることなく、静電吸着装置と温度調整装置とを兼用することが可能になり、被記録材に対して安定した十分な吸着力を維持できる。ただし、電圧印加範囲は、記録装置1のレイアウトに応じて任意に変更可能である。
【0065】
例えば、温度調整装置として、熱源や温風送風装置を加熱対象物(搬送ベルト31)の近傍に配置して温度調整する場合には、一定の温度まで上昇させるまでに時間がかかり、温度を下降させるときにも時間がかかってしまう不都合がある。しかし、本実施形態では、上述したように加熱対象物である搬送ベルト31自体に内蔵された電極板36aによって、搬送ベルト31を直接加熱するので、エネルギーの損失が抑えられ、温度の上昇及び下降に要する時間を短くすることができる。
【0066】
また、環境温度が急激に変化したときに、搬送ベルト31の表面層36dに結露が生じて微少な水分が付着してしまうことがある。この場合、静電吸着を行うために印加された電圧は、表面層36dに付着した微少な水分を通じて流れてしまうので、吸着力が発生しなくなってしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、搬送ベルト31の表面層36dが温度調整されるので、搬送ベルト31は、結露が発生する程度まで装置全体の温度が低く、かつ温度差がある環境下に置かれることが避けられるので、結露によって吸着力が低下するおそれがない。
【0067】
なお、温度検出手段としては、温度検出対象である搬送ベルト31の表面層36dに熱電対センサ(温度検出器)を直接押し当てる接触式や、搬送ベルト31から放出される赤外線によって表面温度を計測する非接触式等が用いられてもよい。また、温度検出手段としては、温度検出対象搬送ベルト31の表面層36dの抵抗値を計測して温度に換算する方式が用いられてもよい。
【0068】
また、加熱部319としては、ヒータ等の他の熱源や温風送風装置が用いられてもよい。また、冷風送風装置等の冷却部320が設けられ、温度が第2の所定温度よりも高い第3の所定温度以上になったときに搬送ベルト31を冷却するように構成されてもよい。
【0069】
〔他の実施形態〕
上述した実施形態では、異なる色のインクによって記録する、複数個の記録ヘッド7K,7C,7M,7Yを用いるカラー記録用のインクジェット記録装置の構成例を挙げて説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明は、例えば、1つの記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置や、同一色彩で濃度が異なる複数色のインクで記録する複数の記録ヘッドを用いる階調記録用のインクジェット記録装置などに適用することができる。つまり、本発明は、記録ヘッドの個数にかかわらずに同様に適用することが可能であり、上述と同様の作用効果が得られる。
【0070】
画像形成装置(記録ヘッド)としては、記録ヘッドとインクタンクが一体化されたカートリッジタイプのものや、記録ヘッドとインクタンクとを別体に構成し、記録ヘッドとインクタンクがインク供給チューブを介して接続された構成のものなどが用いられてよい。本実施形態は、記録ヘッド及びインクタンクの構成がどのようなものであっても同様に適用することが可能であり、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0071】
さらに、本発明は、記録ヘッドを被記録材の搬送方向と直交する方向に移動させながら記録動作を行う、いわゆるシリアルタイプの記録装置にも有効に適用できる。また、本発明は、記録ヘッドが、記録可能な被記録材の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録装置であっても、複数の記録ヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1つの記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。加えて、上述したシリアルタイプの構成や、記録装置本体に固定された記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効に適用できる。さらに、本発明は、記録装置1本体に装着されることによって、記録装置本体との電気的な接続や記録装置本体からのインクの供給が可能になる、交換可能なチップタイプの記録ヘッドに適用されてもよく、有効である。またさらに、本発明は、記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも適用されてよく、有効である。
【0072】
なお、本発明をインクジェット記録装置に適用する場合には、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いる画像形成装置を使用するものに適用できる。特に、本発明は、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式の画像形成装置を使用するインクジェット記録装置において優れた効果が得られる。このような記録方式によれば、記録の高密度化及び高精細化を実現できる。
【0073】
また、上述したインクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末装置として用いられる構成に限定されるものではない。このような構成の他、本発明は、記録ヘッドの他にスキャナ等をキャリッジに装着することが可能なインクジェット入出力装置や、リーダ等と組み合わせた複写装置や、送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
【0074】
また、本発明における、被記録材を搬送する搬送坦持体は、上述した実施形態のようなベルト形状に限定されるものではなく、剛性を有するドラム形状に構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1の実施形態の記録装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】記録装置が備える搬送部を示す平面図である。
【図3】図2における搬送部を示すA−A線断面図である。
【図4】図2における搬送部を示すB−B線断面図である。
【図5】記録装置が備える制御部を示すブロック図である。
【図6】搬送部の要部を示すブロック図である。
【図7】搬送部の全体構成を示す斜視図である。
【図8】搬送部を示す断面図である。
【図9】搬送部の要部を示す拡大図である。
【図10】(a)は搬送ベルトとプラテンをコンデンサと見なしてモデル化した回路図、(b)は吸着力と、搬送ベルトとプラテンとの間の距離との関係を示す図である。
【図11】搬送ベルトの表面層の抵抗値と、温度との関係を示す図である。
【図12】従来の記録装置が備える搬送部の構成を示す断面図である。
【図13】従来の記録装置が備える搬送部を示す平面図である。
【図14】図13における搬送部を示すA−A線断面図である。
【図15】図13における搬送部を示すB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0076】
3 搬送部
31 搬送ベルト(搬送担持体)
36a 電極板
36d 表面層
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を表面に支持して搬送するための搬送担持体を備え、
前記搬送担持体には、内部に複数の電極が設けられ、
前記複数の電極は、前記被記録材を前記搬送担持体に吸着させる静電吸着力を発生する前記電極と、発熱することによって前記搬送担持体の表面温度を調整して前記表面の電気抵抗値を制御する前記電極とを含んでいる搬送装置。
【請求項2】
前記搬送担持体の前記表面温度を検出する温度検出手段を有し、
前記電極に印加される電圧が、前記温度検出手段によって検出された前記表面温度に基づいて調整される、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送坦持体は、つなぎ目がない無端形状の搬送ベルトである、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記複数の電極は、正極と負極が交互に配置された櫛歯状の電極構造である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の搬送装置と、前記被記録材に画像を形成する画像形成装置と、を備え、
前記搬送担持体は、前記被記録材を前記画像形成装置に対向する位置に搬送する、記録装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は、前記被記録材にインクを吐出するインクジェット記録ヘッドである、請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記複数の電極のうち、前記画像形成装置と対向する位置に配置された前記電極には、静電吸着力発生用の電圧が印加され、前記画像形成装置と対向する位置を除く他の位置に配置された他の前記電極には、温度調整用の電圧が印加される、請求項5又は6に記載の記録装置。
【請求項8】
被記録材を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの内部に設けられ、前記搬送ベルトの移動方向と直交する幅方向に延ばされた複数の電極と、前記複数の電極における隣り合う前記電極の間に電位差が生じるように前記複数の電極の少なくとも一部に電圧を印加する制御手段と、前記搬送ベルトの表面温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段が検出した前記表面温度に基づいて前記搬送ベルトの前記表面温度が所定の範囲内になるように温度調整する温度調整手段と、を備える搬送装置。
【請求項9】
前記温度調整手段は、前記搬送ベルトを加熱する加熱手段を有し、前記温度検出手段が検出した前記表面温度が第1の所定温度以下のときに前記加熱手段によって前記搬送ベルトを加熱する、請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記温度調整手段は、前記温度検出手段が検出した前記表面温度が前記第1の所定温度よりも高い第2の所定温度以上のときに前記加熱手段による加熱を停止する、請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記温度調整手段は、前記搬送ベルトを冷却する冷却手段を有し、前記温度検出手段が検出した前記表面温度が前記第2の所定温度よりも高い第3の所定温度以上のときに前記冷却手段によって前記搬送ベルトの冷却を行う、請求項10に記載の搬送装置。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれか1項に記載の搬送装置と、前記被記録材に画像を記録する記録手段と、を備え、前記記録手段が前記搬送ベルトによって搬送されている被記録材に記録を行う記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−137941(P2010−137941A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314727(P2008−314727)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】