説明

搬送装置

【課題】 搬送レールの延在方向に沿って被搬送物を走行させて搬送するときに、被搬送物が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合でも、簡易な構成で位置ずれを解消して、所定の位置に被搬送物を搬送することが可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】 下地板2を搬送レール3で支持した状態で、下地板2の受渡しが行われる受渡し部4に向けて、搬送レール3の延在方向に沿って下地板2を走行させて搬送する。このとき、搬送レール3は、下地板2を搬送する搬送方向上流側に配設される第1搬送レール31と、搬送方向下流側に配設される第2搬送レール32とで構成されている。そして、第2搬送レール32は、第1搬送レール31に対して、下地板2の幅手方向にずれた位置で下地板2を支持可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送レールの延在方向に沿って被搬送物を走行させて搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被搬送物である搬送台を、搬送レールの延在方向に沿って走行させて、搬送台を搬送する搬送装置が、たとえば特許文献1に開示されている。図9は、従来技術の搬送装置51において、下地板52を搬送レール53で支持した状態で、搬送レール53の延在方向に沿って走行させる様子を示す図である。この搬送装置51は、特許文献1に開示される搬送装置を適用したものである。
【0003】
搬送装置51においては、下地板52は板状に形成されており、搬送レール53は、下地板52の厚み方向一方の面を鉛直方向下方から上方に向けて支持する。このように下地板52を搬送レール53で支持した状態で、所定の受渡し部54に向けて、搬送レール53の矢符Aで示される延在方向に沿って下地板52を走行させて搬送する。搬送レール53で支持された状態で搬送される下地板52は、走行時に搬送レール53との間に発生する摩擦によって、搬送レール53で支持された面が摩耗する。このように下地板52の搬送レール53で支持された面が摩耗すると、下地板52は、その摩耗量に対応した長さYだけ鉛直方向下方にずれた位置で、搬送レール53に支持されることになる。そうすると、下地板52が受渡し部54の所定の位置に正確に搬送されなくなる。
【0004】
以上のような位置ずれの問題を解決する搬送装置が、たとえば特許文献2に開示されている。特許文献2に開示される搬送装置では、検出手段が、被搬送物を搬送する搬送部と、被搬送物の受渡しが行われる部位との位置ずれを検出する。そして、検出手段が出力する検出結果に基づいて、搬送部と受渡し部位とが、位置ずれが解消するように相対移動する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−332404号公報
【特許文献2】特開2006−32529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
下地板52の搬送レール53で支持された面が摩耗して、その摩耗量に対応した長さYだけ鉛直方向下方にずれた位置で、下地板52が搬送レール53に支持されるような場合であっても、特許文献2に開示される検出手段を適用することによって、位置ずれを解消することができる。しかしながら、位置ずれを検出する検出手段と、検出結果に基づいて位置ずれが解消するような制御を行うように構成される制御機構とが必要となり、搬送装置が複雑化してしまうという問題が生じる。
【0007】
したがって本発明の目的は、搬送レールの延在方向に沿って被搬送物を走行させて搬送するときに、被搬送物が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、簡易な構成で位置ずれを解消して、所定の位置に被搬送物を搬送することが可能な搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、板状に形成される下地板と、下地板の厚み方向一方の面を支持する搬送レールとを有し、下地板を搬送レールで支持した状態で、下地板の受渡しが行われる所定の受渡し部に向けて、搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送する搬送装置であって、
前記搬送レールは、下地板を搬送する搬送方向上流側に配設される第1搬送レールと、搬送方向下流側に配設される第2搬送レールとで構成され、
前記第2搬送レールは、前記第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能に構成されることを特徴とする搬送装置である。
【0009】
また本発明は、前記第2搬送レールの下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記第2搬送レールは、
下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同じになるように形成され、
前記第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向にずれた位置に配設されることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記第2搬送レールは、
前記第1搬送レールと接続される接続位置で低く、搬送方向に向って前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有する斜面部と、
前記斜面部の傾斜上端部から搬送方向に向って前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置で所定の長さで延びる平坦面を有する平坦部とを含んで構成されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記第2搬送レールは、下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールと接続される接続位置で第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同等で、搬送方向に向って第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅に対して連続的に変化するように形成される幅変化部を有することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記第2搬送レールは、
下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同じになるように形成され、
前記第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向に連続的にずれた位置となるように形成される位置変化部を有することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記下地板は、下地板の周縁部のうち搬送方向先端部において、前記第1および第2搬送レールに支持される支持面が、上方に向って傾斜するように形成される傾斜部を有することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとが接続される接続位置には、下地板を前記第1搬送レールから前記第2搬送レールに向けて案内する案内部材が配置され、
前記案内部材は、搬送方向後端部で低く、搬送方向に向って前記第2搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有する部材斜面部を含んで構成されることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、板状に形成される下地板と、下地板の厚み方向一方の面を支持する搬送レールとを有し、下地板を搬送レールで支持した状態で、下地板の受渡しが行われる所定の受渡し部に向けて、搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送する搬送装置であって、
前記搬送レールは、下地板を搬送する搬送方向上流側の領域に位置する第1搬送レール部と、搬送方向下流側の領域に位置する第2搬送レール部とで構成され、
前記第2搬送レール部は、前記第1搬送レール部に対して、下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能に構成されることを特徴とする搬送装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、板状に形成される下地板を搬送レールで支持した状態で、下地板の受渡しが行われる受渡し部に向けて、搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送する。このとき、搬送レールは、下地板を搬送する搬送方向上流側に配設される第1搬送レールと、搬送方向下流側に配設される第2搬送レールとに分割されている。そして、第2搬送レールは、第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能に構成されている。第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レールは、第1搬送レールに対して下地板の幅手方向にずれた位置であり、摩耗していない位置で下地板を支持することができる。そのため、複雑な制御機構を用いない簡易な構成で、摩耗量に対応した位置ずれを解消して、所定の受渡し部に下地板を搬送することができる。
【0018】
また本発明によれば、第2搬送レールの下地板を支持する支持面の幅が、第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅よりも大きい。そのため、第2搬送レールは、第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能となる。したがって、第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レールは、第1搬送レールに対して下地板の幅手方向にずれた位置であり、摩耗していない位置で下地板を支持することができる。
【0019】
また本発明によれば、第2搬送レールは、下地板を支持する支持面の幅が、第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同じになるように形成されて、第1搬送レールに対して下地板の幅手方向にずれた位置に配設される。そのため、第2搬送レールは、支持面の幅が同じであるにもかかわらず、第1搬送レールに対して下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能となる。したがって、第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レールは、第1搬送レールに対して下地板の幅手方向にずれた位置であり、摩耗していない位置で下地板を支持することができる。
【0020】
また本発明によれば、第2搬送レールは、斜面部と平坦部とを含んで構成される。斜面部は、第1搬送レールと第2搬送レールとが接続される接続位置で低く、搬送方向に向って第1搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有する。そのため、第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、下地板は、斜面部の傾斜面に案内されて、第1搬送レールから第2搬送レールに向けてスムーズに移動することができる。
【0021】
そして、平坦部は、斜面部の傾斜上端部から搬送方向に向って第1搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置で所定の長さで延びる平坦面を有する。そのため、斜面部に案内されて平坦部に移動してきた下地板は、第1搬送レールの支持面と同等位置で、平坦部によって支持される。したがって、下地板は、平坦部から所定の受渡し部に向けてスムーズに移動することができる。
【0022】
また本発明によれば、第2搬送レールは、下地板を支持する支持面の幅が、第1搬送レールと接続される接続位置で第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同等で、搬送方向に向って第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅に対して連続的に変化するように形成される幅変化部を有する。そのため、第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レールの幅変化部上を走行する下地板は、第1搬送レールに対して下地板の幅手方向に連続的にスムーズにずれた位置で支持されながら移動することができる。
【0023】
また本発明によれば、第2搬送レールの位置変化部は、第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向に連続的にずれた位置となるように形成される。そのため、第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レールの位置変化部上を走行する下地板は、第1搬送レールに対して下地板の幅手方向に連続的にスムーズにずれた位置で支持されながら移動することができる。
【0024】
また本発明によれば、下地板は、下地板の周縁部のうち搬送方向先端部において、第1および第2搬送レールに支持される支持面が、上方に向って傾斜するように形成される傾斜部を有する。そのため、第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、下地板は、傾斜部に案内されて第1搬送レールから第2搬送レールに向けてスムーズに移動することができる。
【0025】
また本発明によれば、第1搬送レールと第2搬送レールとが接続される接続位置には、案内部材が配置され、該案内部材は、部材斜面部を含んで構成される。部材斜面部は、搬送方向後端部で低く、搬送方向に向って第2搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有する。そのため、第1搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、下地板は、部材斜面部の傾斜面に案内されて、第1搬送レールから第2搬送レールに向けてスムーズに移動することができる。
【0026】
また本発明によれば、板状に形成される下地板を搬送レールで支持した状態で、下地板の受渡しが行われる受渡し部に向けて、搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送する。このとき、搬送レールは、下地板を搬送する搬送方向上流側の領域に位置する第1搬送レール部と、搬送方向下流側の領域に位置する第2搬送レール部とが連続している。そして、第2搬送レール部は、第1搬送レール部に対して、下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能に構成されている。第1搬送レール部の延在方向に沿って下地板を走行させて搬送するときに下地板が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レール部は、第1搬送レール部に対して下地板の幅手方向にずれた位置であり、摩耗していない位置で下地板を支持することができる。そのため、複雑な制御機構を用いない簡易な構成で、摩耗量に対応した位置ずれを解消して、所定の受渡し部に下地板を搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態である搬送装置1の構成を示す図である。図1(a)は搬送装置1の構成を示す上面図であり、図1(b)は側面図である。搬送装置1は、金属または半導体から成る固体原料が溶融された融液から薄板状の基板を製造する基板製造装置に用いられる。基板製造装置では、搬送装置1によって搬送された下地板2を融液に浸漬して、下地板2の表面に結晶を凝固成長させて薄板状の基板を製造する。このような基板製造装置においては、高温雰囲気下であるとともに、純度および結晶性において質の高い結晶を成長させるために、水分などの不純成分の含有量が極めて少ない高純度の不活性ガスであるアルゴンガスなどで装置内を充填している。そのため、基板製造装置に用いられる搬送装置1においても、その設置環境は、200〜250℃の高温雰囲気であるとともに、高純度のアルゴンガスなどで充填された環境である。
【0028】
搬送装置1は、下地板2と、搬送レール3と、受渡し部4とを含んで構成される。搬送装置1は、下地板2を搬送レール3で支持した状態で、受渡し部4に向けて、水平方向に延びる搬送レール3の延在方向に沿って下地板2を走行させて搬送する。
【0029】
下地板2は、前述のように、凝固成長された結晶から成る薄板状の基板を製造するときの下地となる。下地板2は、板状に形成される板状部2aと、断面が台形に形成される突出部2bとを有する。下地板2は、板状部2aの厚み方向一方の面に突出部2bが接続された構造となっている。板状部2aの厚み方向両面のうち、突出部2bが接続された面である下面が、後述する搬送レール3に支持される面となり、他方の面が、結晶が凝固成長される面となる。突出部2bは、後述する受渡し部4が有するあり溝部4bと嵌合する部位である。また、下地板2を構成する材料は、前述した融液に混交するコンタミネーションを防ぐような材料から選ばれる必要があり、本実施の形態ではカーボンが選ばれる。下地板2は、搬送レール3に支持された状態で、所定の受渡し部4に向けて、搬送レール3の延在方向に沿って走行して搬送される。
【0030】
受渡し部4は、後述する搬送レール3に支持された状態で搬送される下地板2の受渡しが行われる部位である。受渡し部4は、搬送レール3に支持された状態で搬送されてきた下地板2を、後工程である結晶成長処理を行う処理部へと水平方向および鉛直方向に移動して運搬する。受渡し部4は、支持部4aとあり溝部4bとを有する。支持部4aは、搬送レール3上を走行して搬送された下地板2の下面を支持する。受渡し部4は、支持部4aの下地板2を支持する支持面が、搬送レール3の下地板2を支持する支持面に対して、鉛直方向にずれることがないように配置されている。あり溝部4bは、支持部4aの下地板2を支持する支持面に対して凹んだ凹所となって、下地板2の突出部2bと嵌合可能に形成されている。
【0031】
搬送レール3は、受渡し部4に向けて水平方向に延びる一対のレールであり、下地板2の厚み方向一方の面を支持した状態で、搬送される下地板2を受渡し部4に案内する。搬送レール3を構成する材料は、前述した下地板2と同様に、融液に混交するコンタミネーションを防ぐような材料から選ばれる必要があり、本実施の形態ではカーボンが選ばれる。搬送レール3は、第1搬送レール31と第2搬送レール32とを有する。第1搬送レール31は、下地板2を支持する支持面が、受渡し部4の支持部4aの下地板2を支持する支持面に対して、鉛直方向にずれることがないように配置されている。第1搬送レール31は、下地板2が搬送される搬送方向Aの上流側に配設されて、下地板2を支持した状態で、搬送される下地板2を第2搬送レール32に向けて案内する。
【0032】
図2は、搬送装置1において、下地板2を搬送レール3で支持した状態で、搬送レール3の延在方向に沿って走行させる様子を示す図である。図2(a)は下地板2を走行させる様子を側面側から見た図であり、図2(b)は正面側から見た図である。第1搬送レール31で支持された状態で搬送される下地板2の下面は、走行時に第1搬送レール31との間に発生する摩擦によって、第1搬送レール31との接触位置が摩耗して、摩耗部2cが形成される。このとき、搬送装置1の設置環境は、前述したように、高温雰囲気であるとともに、水分が少ない高純度のアルゴンガスなどで充填された環境であるので、より摩耗しやすい。このように、下地板2の下面が第1搬送レール31との接触位置において摩耗して摩耗部2cが形成されると、下地板2は、その摩耗量に対応した長さYだけ鉛直方向下方にずれた位置で、第1搬送レール31に支持されることになる。このように摩耗部2cが形成された下地板2は、第2搬送レール32に向けて搬送される。
【0033】
第2搬送レール32は、第1搬送レール31に対して下地板2が搬送される搬送方向Aの下流側に配設されて、受渡し部4に向けて延びる。搬送装置1においては、第2搬送レール32の下地板2を支持する支持面の幅W2は、第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面の幅W1よりも大きくなるように設定されている。これによって、第2搬送レール32は、第1搬送レール31に対して、下地板2の幅手方向にずれた位置で下地板2を支持可能となる。そのため、第2搬送レール32は、第1搬送レール31上を走行時に摩耗部2cが形成された下地板2を、摩耗部2cとは異なる位置で支持することができ、摩耗量に対応した位置ずれを解消して搬送することができる。このとき、第2搬送レール32は、第1搬送レール31に対して下地板2の幅手方向にずれた位置に配設してもよく、ずれていない位置に配設してもよい。
【0034】
また、第2搬送レール32は、斜面部32aと平坦部32bとを有する。斜面部32aは、第1搬送レール31と第2搬送レール32とが接続される接続位置で低く、搬送方向Aに向って第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有するように形成される。斜面部32aは、傾斜下端部から傾斜上端部までの水平方向の長さL1と、鉛直方向の長さL2とにおいて、長さL1に対する長さL2の割合(L2/L1)が、1/2以下、好ましくは1/200〜1/2の範囲となるように設定される。これによって、第1搬送レール31上を走行時に摩耗部2cが形成された下地板2は、摩耗部2cに対して幅手方向にずれた位置で斜面部32aに支持されながら案内されて、第2搬送レール32が有する平坦部32bに向けてスムーズに移動することができる。
【0035】
平坦部32bは、斜面部32aの傾斜上端部から搬送方向Aに向って第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面と同等位置で所定の長さで延びる平坦面を有するように形成される。平坦部32bは、斜面部32aに支持されながら案内された下地板2を、摩耗部2cに対して幅手方向にずれた位置で支持する。また、平坦部32bの下地板2を支持する支持面が、第1搬送レール31および受渡し部4が有する支持部4aの下地板2を支持する支持面に対して、鉛直方向にずれることがないように配置されている。そのため、平坦部32bで支持された下地板2は、摩耗量に対応した鉛直方向の位置ずれが解消された状態で、受渡し部4に向けて搬送されることになる。このように、位置ずれが解消された状態で受渡し部4に下地板2が搬送されると、下地板2の突出部2bと、受渡し部4のあり溝部4bとが正確に嵌合することができる。
【0036】
以上のように、搬送装置1では、摩耗量に対応した位置ずれを解消するような複雑な制御機構を用いない簡易な構成で、位置ずれを解消する。また、搬送装置1においては、下地板2が繰返し搬送レール3上を走行される場合であっても、下地板2を搬送レール3上を走行させて搬送する毎に、毎回位置ずれが解消するように制御する必要がなく、搬送効率が低下することを抑制することができる。
【0037】
また、第2搬送レール32上を受渡し部4に向けて走行することで、下地板2の下面が第2搬送レール32との接触位置で摩耗してしまい、第2搬送レール32上でも鉛直方向の位置ずれが発生してしまう可能性がある。このような第2搬送レール32上での位置ずれを防止するために、第2搬送レール32の搬送方向Aに延びる長さX3を、第1搬送レール31の搬送方向Aに延びる長さX2よりも短く設定し、第2搬送レール32による摩耗を減らす。このとき、下地板2の摩耗を考慮すると、第2搬送レール32の長さX3は、できる限り短く設定するのがよいが、本実施の形態では、下地板2の搬送方向Aに延びる長さX1とほぼ同じになるように設定する。これは、斜面部32aに支持されながら案内されて移動してきた下地板2が、平坦部32bにおいて確実に、水平方向に平行な状態で支持されるようにするためである。
【0038】
図3は、本発明の第2実施形態である搬送装置10の構成を示す図である。搬送装置10は、前述した搬送装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。搬送装置10においては、搬送レール30が有する第2搬送レール33が特徴的である。第2搬送レール33は、搬送装置1が有する第2搬送レール32と同様に、斜面部33aと平坦部33bとを有するが、第2搬送レール33においては、第2搬送レール33の下地板2を支持する支持面の幅は、第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面の幅と同じになるように設定されている。そして、第2搬送レール33は、第1搬送レール31に対して、下地板2の幅手方向にずれた位置に配設される。そのため、第2搬送レール33は、第1搬送レール31に対して、下地板2の幅手方向にずれた位置で下地板2を支持可能となる。したがって、第1搬送レール31の延在方向に沿って下地板2を走行させて搬送するときに下地板2が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レール33は、第1搬送レール31に対して下地板2の幅手方向にずれた位置であり、摩耗していない位置で下地板2を支持することができる。
【0039】
図4は、本発明の第3実施形態である搬送装置11の構成を示す図である。搬送装置11は、前述した搬送装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。搬送装置11においては、搬送レール34が有する第2搬送レール38が特徴的である。第2搬送レール38は、搬送装置1が有する第2搬送レール32のような斜面部を有さない。そして、第2搬送レール38は、下地板2を支持する支持面の幅が、第1搬送レール31と接続される接続位置で第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面の幅と同等で、搬送方向Aに向って第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面の幅に対して連続的に変化するように形成される幅変化部38aを有する。本実施の形態では、幅変化部38aは、搬送方向Aに向って第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面の幅に対して連続的に大きくなるように形成されている。
【0040】
そのため、第1搬送レール31の延在方向に沿って下地板2を走行させて搬送するときに下地板2が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レール38の幅変化部38a上を走行する下地板2は、第1搬送レール31に対して下地板2の幅手方向に連続的にスムーズにずれた位置で支持されながら移動することができる。
【0041】
図5は、本発明の第4実施形態である搬送装置12の構成を示す図である。搬送装置12は、前述した搬送装置10に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。搬送装置12においては、搬送レール35が有する第2搬送レール39が特徴的である。第2搬送レール39は、搬送装置10が有する第2搬送レール33のような斜面部を有さない。そして、第2搬送レール39は、下地板2を支持する支持面の幅が、第1搬送レール31の下地板2を支持する支持面の幅と同じになるように形成され、第1搬送レール31に対して、下地板2の幅手方向に連続的にずれた位置となるように形成される位置変化部39aを有する。
【0042】
そのため、第1搬送レール31の延在方向に沿って下地板2を走行させて搬送するときに下地板2が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レール39の位置変化部39a上を走行する下地板2は、第1搬送レール31に対して下地板2の幅手方向に連続的にスムーズにずれた位置で支持されながら移動することができる。
【0043】
図6は、本発明の第5実施形態である搬送装置13の構成を示す図である。搬送装置13は、前述した搬送装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。搬送装置13においては、搬送レール36が有する第2搬送レール40および下地板20が特徴的である。第2搬送レール40は、斜面部を有さない以外は、搬送装置1が有する第2搬送レール32と同様である。そして、下地板20は、板状に形成される板状部20aと、断面が台形に形成される突出部20bとを有する。ここで、下地板20は、板状部20aに傾斜部20cが形成されている以外は、搬送装置1が有する下地板2と同様である。傾斜部20cは、板状部20aの周縁部のうち搬送方向先端部に位置する部分である。そして、傾斜部20cは、第1搬送レール31および第2搬送レール40に支持される支持面が、上方に向って傾斜するように形成されている。このとき、傾斜部20cにおいては、傾斜下端部から傾斜上端部までの水平方向の長さと鉛直方向の長さとは、搬送装置1が有する第2搬送レール32の斜面部32aと同様にして設定される。
【0044】
そのため、第1搬送レール31の延在方向に沿って下地板20を走行させて搬送するときに下地板20が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、下地板20は、傾斜部20cに案内されて第1搬送レール31から第2搬送レール40に向けてスムーズに移動することができる。
【0045】
図7は、本発明の第6実施形態である搬送装置14の構成を示す図である。搬送装置14は、前述した搬送装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。搬送装置14の第2搬送レール40は、斜面部を有さない以外は、搬送装置1が有する第2搬送レール32と同様である。そして、搬送装置14においては、第1搬送レール31と第2搬送レール40とが接続される接続位置には、下地板2を第1搬送レール31から第2搬送レール40に向けて案内する案内部材41が配置される。案内部材41は、第1搬送レール31に対して下地板2の幅手方向にずれた位置に配置され、搬送方向Aに延びて第2搬送レール40に接続される。そして、案内部材41は、部材斜面部41aと部材平坦部41bとを有する。
【0046】
部材斜面部41aは、搬送方向後端部で低く、搬送方向に向って第2搬送レール40の下地板2を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有するように形成される。このとき、部材斜面部41aにおいては、傾斜下端部から傾斜上端部までの水平方向の長さと鉛直方向の長さとは、搬送装置1が有する第2搬送レール32の斜面部32aと同様にして設定される。そのため、第1搬送レール31の延在方向に沿って下地板2を走行させて搬送するときに下地板2が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、下地板2は、部材斜面部41aの傾斜面に案内されて、部材平坦部41bに向けてスムーズに移動することができる。
【0047】
部材平坦部41bは、部材斜面部41aの傾斜上端部から搬送方向に向って第2搬送レール40の下地板2を支持する支持面と同等位置で所定の長さで延びる平坦面を有するように形成されて、第2搬送レール40に接続される。そのため、部材斜面部41aに案内されて部材平坦部41bに移動してきた下地板2は、第2搬送レール40の支持面と同等位置で、部材平坦部41bによって支持される。したがって、下地板2は、部材平坦部41bから第2搬送レール40に向けてスムーズに移動するとともに、第2搬送レール40から所定の受渡し部4に向けてスムーズに移動することができる。
【0048】
図8は、本発明の第7実施形態である搬送装置15の構成を示す図である。搬送装置15は、前述した搬送装置11に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。搬送装置15においては、搬送レール42が特徴的である。搬送レール42は、搬送装置11が有する搬送レール34のように2つの搬送レールに分割されていない。搬送レール42は、搬送方向A上流側の領域に位置する第1搬送レール部43と、搬送方向A下流側の領域に位置する第2搬送レール部44とを有する。そして、第2搬送レール部44は、第1搬送レール部43に対して、下地板2の幅手方向にずれた位置で下地板2を支持可能に構成されている。搬送装置15においては、第1搬送レール部43が搬送装置11における第1搬送レール31の役割を担い、第2搬送レール部44が搬送装置11における第2搬送レール38の役割を担う。
【0049】
本実施の形態では、第2搬送レール部44は、下地板2を支持する支持面の幅が、第1搬送レール部43と接続される接続位置で第1搬送レール部43の下地板2を支持する支持面の幅と同等で、搬送方向Aに向って第1搬送レール部43の下地板2を支持する支持面の幅に対して連続的に大きくなるように形成される幅変化部位44aを有する。そのため、第1搬送レール部43の延在方向に沿って下地板2を走行させて搬送するときに下地板2が摩耗して、その摩耗量に対応した位置ずれが発生した場合であっても、第2搬送レール部44の幅変化部位44a上を走行する下地板2は、第1搬送レール部43に対して下地板2の幅手方向に連続的にスムーズにずれた位置で支持されながら移動することができる。
【0050】
以上のような本実施の形態は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば、下地板を支持する先端部における搬送レールの形状を、第1搬送レールと第2搬送レールとの下地板を支持する支持面がそれぞれ異なる形状となるように構成して、第2搬送レールが第1搬送レールに対して下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能に構成してもよい。
【0051】
また、第1搬送レールと第2搬送レールとが接続される接続位置において、第2搬送レールに斜面部を設ける例を示したが、必要に応じて、たとえば、第2搬送レールと受渡し部との接続位置近傍などに、斜面部を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態である搬送装置1の構成を示す図である。
【図2】搬送装置1において、下地板2を搬送レール3で支持した状態で、搬送レール3の延在方向に沿って走行させる様子を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態である搬送装置10の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態である搬送装置11の構成を示す図である。
【図5】本発明の第4実施形態である搬送装置12の構成を示す図である。
【図6】本発明の第5実施形態である搬送装置13の構成を示す図である。
【図7】本発明の第6実施形態である搬送装置14の構成を示す図である。
【図8】本発明の第7実施形態である搬送装置15の構成を示す図である。
【図9】従来技術の搬送装置51において、下地板52を搬送レール53で支持した状態で、搬送レール53の延在方向に沿って走行させる様子を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1,10,11,12,13,14,15,51 搬送装置
2,20,52 下地板
3,30,34,35,36,37,42,53 搬送レール
31 第1搬送レール
32,33,38,39,40 第2搬送レール
41 案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成される下地板と、下地板の厚み方向一方の面を支持する搬送レールとを有し、下地板を搬送レールで支持した状態で、下地板の受渡しが行われる所定の受渡し部に向けて、搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送する搬送装置であって、
前記搬送レールは、下地板を搬送する搬送方向上流側に配設される第1搬送レールと、搬送方向下流側に配設される第2搬送レールとで構成され、
前記第2搬送レールは、前記第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能に構成されることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第2搬送レールの下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第2搬送レールは、
下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同じになるように形成され、
前記第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向にずれた位置に配設されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第2搬送レールは、
前記第1搬送レールと接続される接続位置で低く、搬送方向に向って前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有する斜面部と、
前記斜面部の傾斜上端部から搬送方向に向って前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置で所定の長さで延びる平坦面を有する平坦部とを含んで構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第2搬送レールは、下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールと接続される接続位置で第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同等で、搬送方向に向って第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅に対して連続的に変化するように形成される幅変化部を有することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第2搬送レールは、
下地板を支持する支持面の幅が、前記第1搬送レールの下地板を支持する支持面の幅と同じになるように形成され、
前記第1搬送レールに対して、下地板の幅手方向に連続的にずれた位置となるように形成される位置変化部を有することを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記下地板は、下地板の周縁部のうち搬送方向先端部において、前記第1および第2搬送レールに支持される支持面が、上方に向って傾斜するように形成される傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとが接続される接続位置には、下地板を前記第1搬送レールから前記第2搬送レールに向けて案内する案内部材が配置され、
前記案内部材は、搬送方向後端部で低く、搬送方向に向って前記第2搬送レールの下地板を支持する支持面と同等位置まで所定の長さで延びる傾斜面を有する部材斜面部を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項9】
板状に形成される下地板と、下地板の厚み方向一方の面を支持する搬送レールとを有し、下地板を搬送レールで支持した状態で、下地板の受渡しが行われる所定の受渡し部に向けて、搬送レールの延在方向に沿って下地板を走行させて搬送する搬送装置であって、
前記搬送レールは、下地板を搬送する搬送方向上流側の領域に位置する第1搬送レール部と、搬送方向下流側の領域に位置する第2搬送レール部とで構成され、
前記第2搬送レール部は、前記第1搬送レール部に対して、下地板の幅手方向にずれた位置で下地板を支持可能に構成されることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−184788(P2009−184788A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27050(P2008−27050)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)