説明

搬送装置

【課題】クレセントチェーンを用いた搬送の自動化により、作業性の改善を図る。
【解決手段】複数のリンク65が順次連結されて環状に構成されるクレセントチェーン5と、このクレセントチェーン5に立設される複数の搬送具7を有し、搬送具7は、リンク65のトッププレート69に立設される支持部材91と、支持部材91に対して傾斜角度を変更可能に設けられる保持部材93とを備える。支持部材91の下端部の取付片は、複数のリンク65にまたがって配置される。取付片には、一端部に丸穴97aが形成され、他端部に長穴が形成されており、取付片は各穴97aを介して異なるリンク65にピン103,105がはめ込まれてクレセントチェーン5に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関するものであり、特にクレセントチェーンが使用される搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、縫製工場では、製品の完成までの時間を短縮させるために、できるだけ効率よく作業が進むように工夫がなされている。
4種類の布片を縫い合わせて一つの製品を完成させる場合を例にあげると、三人の作業者により順次縫い合わされて仕上げられることがある。
具体的には、一人目の作業者が、一つ目の布片と二つ目の布片を縫い合わせる。そして、二人目の作業者は、一人目の作業者が縫い合わせた物と、三つ目の布片を縫い合わせ、三人目の作業者は、二人目の作業者が縫い合わせた物と、四つ目の布片を縫い合わせて仕上げる。このように、各作業者が同じ作業のみを行うことで、時間の短縮を図っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、各作業者間の布片の搬送は、人力で行われており、さらなる作業性の改善が望まれていた。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、搬送の自動化により、作業性の改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の発明は、複数のリンクが順次連結されて環状に構成されるクレセントチェーンと、このクレセントチェーンのリンクに立設される支持部材と、この支持部材に設けられ、被搬送物が保持される保持部材とを備え、前記支持部材の下端部は、前記クレセントチェーンの走行方向に離隔した異なるリンクに、上下方向に沿うピンまわりに回転可能に取り付けられ、この取付部の少なくとも一方において、前記支持部材と前記リンクとが前記クレセントチェーンの走行方向に相対移動可能とされたことを特徴とする搬送装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記保持部材は、前記支持部材に対して取付角度を変更可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記保持部材は、上方へ開口する箱状部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記支持部材には、その上端部に前記保持部材が揺動可能に設けられる一方、その上下方向中途部と前記保持部材とが連結部材で架け渡され、この連結部材は、一端部が、前記保持部材に揺動可能に設けられる一方、他端部が、前記支持部材に相対移動可能に、かつ、複数箇所において位置決め可能とされたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の搬送装置である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記連結部材の他端部には、前記支持部材に設けられた上下に長い長穴に沿って上下動可能なガイド棒が設けられ、前記長穴に連続して上下方向複数個所に設けられた係止溝に、前記ガイド棒が係止されることで、前記支持部材に対する前記保持部材の傾斜角度を変更可能とされたことを特徴とする請求項4に記載の搬送装置である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記支持部材には、前記係止溝に対応した位置に、略くの字形の誘導板が揺動可能に配置されており、前記ガイド棒が前記支持部材の長穴を上方へ移動する際、前記誘導板の一片が、前記ガイド棒を前記係止溝へ案内する一方、前記ガイド棒が前記支持部材の長穴を下方へ移動する際、前記誘導板の他片が、前記係止溝への前記ガイド棒の進入を防止すると共に、前記誘導板の一片がバネの付勢力に対抗して軸まわりに回転されてガイド棒の下方への通過を許容することを特徴とする請求項5に記載の搬送装置である。
【0011】
請求項7に記載の発明は、前記クレセントチェーンが設けられるフレームは、直線状の第一レールと、左右両端部間の離隔距離が前記第一レールと同一であるが、直線部の中途に湾曲部を有する第二レールと、前記第一レールおよび/または第二レールにより構成され、並行に配置される往路と復路となる二つの走行路の両端部に設けられて、走行路を環状に連続させる第三レールとを備えることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の搬送装置である。
【0012】
請求項8に記載の発明は、前記保持部材が設けられる支持部材が、前記クレセントチェーンに等間隔に複数設けられることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の搬送装置である。
【0013】
請求項9に記載の発明は、複数のリンクが順次連結されて環状に構成されるクレセントチェーンと、このクレセントチェーンのリンクに立設される支持部材と、この支持部材に対して傾斜角度を変更可能に設けられ、被搬送物が保持される保持部材とを備えることを特徴とする搬送装置である。
【0014】
さらに、請求項10に記載の発明は、前記支持部材の下端部は、前記クレセントチェーンの走行方向に離隔した異なるリンクに、上下方向に沿うピンまわりに回転可能に取り付けられ、この取付部の少なくとも一方において、前記支持部材と前記リンクとが前記クレセントチェーンの走行方向に相対移動可能とされたことを特徴とする請求項9に記載の搬送装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の搬送装置によれば、搬送の自動化により、作業性の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の搬送装置の一実施例について、図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の搬送装置の一実施例を示す平面図である。
図2は、図1の搬送装置のフレームおよびクレセントチェーンを示す平面図である。
【0018】
本実施例の搬送装置1は、環状の走行路を有するフレーム3と、このフレーム3の走行路に設けられる環状のクレセントチェーン5と、このクレセントチェーン5に取り付けられる複数の搬送具7とを主要部に備える。
本実施例では、搬送具7は、クレセントチェーン5に間隔をあけて、8個設けられている。この際、搬送具7はクレセントチェーン5に等間隔に取り付けられる。
【0019】
フレーム3は、複数のレールが組み合わされて構成される。本実施例では、フレーム3は、直線状の第一レール9、直線部の中途に湾曲部を有する第二レール11、および往路と復路とを接続する第三レール13の三種類のレールが組み合わされて構成され、これらのレールにより環状の走行路が形成される。
【0020】
図3は、図1の搬送装置の第一レールを示す図であり、(a)はその斜視図であり、(b)は係止具の概略縦断面図である。
【0021】
第一レール9は、縦断面略T字形の溝rを有する直線状の部材とされる。
具体的には、第一レール9は、図3に示す状態において、前後に離間して水平に配される一対の横片15,15と、この横片15,15の前後外側端部から上方へ延出する側片17,17と、この側片17,17の上端部から前後方向外側へ延出する上片19,19と、この上片19,19の前後外側端部から下方へ延出する第一垂直片21,21とを有する。
また、第一レール9は、第一垂直片21,21の下端部より若干上方位置から前後方向内側へ突出した後、下方へ延出する第二垂直片23,23と、この第二垂直片23,23の下端部から前後両側へ延出する係止片25,25とを有し、係止片25,25の前後外側端部は、若干上方へ延出している。
さらに、第一レール9は、横片15,15の前後内側端部から下方へ延出する溝片27,27と、この溝片27,27の中途部同士を連結する第一水平片29と、溝片27,27の下端部に水平に配置され、その両端部が第二垂直片23,23の下端部に当接する第二水平片31とを有する。
【0022】
このような構成の第一レール9は、横片15,15、側片17,17、溝片27,27、および第一水平片29により縦断面略T字形の溝rが形成されており、この溝rが、クレセントチェーン5の走行路の一部を構成する。
また、第一レール9の下部には、第二水平片31、第二垂直片23,23の下端部、および係止片25,25により、前後がコ字形とされた係合溝33が形成されている。
【0023】
第二レール11は、第一レール9と同じ断面形状とされ、図2において、左右に離間して配置される直線部11a,11bと、この直線部11a,11bの左右内側端部同士を連結する略U字形の湾曲部11cとを有する。具体的には、第二レール11は、図2において、左右方向に沿って延出する左側の直線部11aの右端部から手前側へ延出し、さらに奥側へ折り返した後、右側へ延出して直線部11bが設けられている。
【0024】
第三レール13は、第一レール9と同じ断面形状とされ、平面視において略コ字形に形成されている。
なお、本実施例では、第一レール9は、アルミニウムの押し出し成型品とされ、第二レール11および第三レール13は、直線状の前記押し出し成型品を適宜切断して組み合わせることで形成されている。
【0025】
本実施例では、図1および図2に示すように、奥側に5つの第一レール9(9A〜9E)が左右に並べて配置されて接続される。
また、手前側に2つの第一レール9(9F,9G)および3つの第二レール11(11A〜11C)が左右に並べて配置されて接続される。
本実施例では、各第二レール11A〜11Cは、同形状とされる。また、第一レール9C,9D,9Eの左右寸法と、第二レール11の左右寸法が同じとされている。さらに、第一レール9A,9B,9F,9Gは、同じ左右寸法とされる。
【0026】
そして、奥側右端の第一レール9Eの右端部と、手前側右端の第二レール11Cの右端部に第三レール13(13A)の各端部が接続されると共に、奥側左端の第一レール9Aの左端部と、手前側左端の第一レール9Fの左端部に、第三レール13(13B)の各端部が接続される。
【0027】
本実施例では、各レール9,11,13同士を連結する際には、各レールの下端部の係合溝33に矩形板状の連結片37が着脱可能にはめ込まれて、レール同士が連結される。
具体的には、一方のレールの係合溝33に、連結片37の略半分がはめ込まれ(図3参照)、他方のレールの係合溝33に連結片37の残りの半分がはめ込まれて、レール同士が連結される。
【0028】
本実施例では、各レール9,11,13の両端部に、連結片37を位置決めする係止具39が設けられている。
具体的には、各レール9,11,13の第二水平片31の端部に、下方へ開口する円筒部41が設けられており、この円筒部41にコイルバネ43が収容されると共に、下端部に球体45が収容されている。そして、第二水平片31には、球体45より若干小径な開口部31aが形成されており、この開口部31aから球体45の一部が下方へ突出可能とされている。
また、連結片37の中央部には、左右に離間して穴37a,37aが形成されており、この穴37aに球体45の一部がはめ込まれることで連結片37の位置決めがなされて、連結片37が各レールに着脱可能に取り付けられる。
【0029】
このように各レール9,11,13が接続されることで、各レールの略T字形の溝rが連続し、環状の走行路が現出する。
そして、このフレーム3の環状の走行路に、クレセントチェーン5が設けられ、このクレセントチェーン5に搬送具7が取り付けられる。
【0030】
図4は、図1の搬送装置の搬送具を示す正面図であり、搬送具が直線状の走行路にある状態を示している。また、図5は、図4のA−A断面図であり、図6は、図4の平面図である。
【0031】
本実施例のクレセントチェーン5は、リンク65,65同士が軸杆により順次連結されて環状に構成される。
リンク65は、略コ字形のリンク本体67と、このリンク本体67に固定される三日月板状のトッププレート69とを有する。
【0032】
具体的には、リンク本体67は、上下に離間して板状の上片67aおよび下片67bが設けられ、これら各片67a,67bは、その基端部(図4において左側)が基端側へ行くに従って互いに近接する方向に傾斜して連結されている。
【0033】
トッププレート69は、先端部が略半円形状に前方へ突出しており、基端部が略半円形状に前方へ凹んだ形状とされ、上片67aの先端部に載せ置かれて上片67aと一体化される。この際、トッププレート69は、その先端部が、上片67aの先端部から先端側へ突出して設けられる。
【0034】
隣接するリンク65,65同士は、一方のリンク65の基端部が、他方のリンク65の先端部に挟み込まれ、リンク65,65同士が重なった位置に上下方向に沿って円柱状の軸杆71がはめ込まれて連結される。
軸杆71によりリンク65,65同士が連結された状態では、リンク65,65同士は、軸杆71まわりに回動可能とされる。同様にして、順次、リンク65,65同士が連結されて環状に構成される。
【0035】
このような構成のクレセントチェーン5は、各リンク65のトッププレート69の両端部が、各レール9,11,13の横片15,15に載置されて、フレーム3の走行路に設けられる。本実施例では、各レール9,11,13の横片15,15の上面に、樹脂製のガイドレール73が両面テープなどで固定されて、このガイドレール73にトッププレート69が載置される。
【0036】
そして、本実施例では、図1において、右側の第三レール13Aの奥側のコーナー部にスプロケット75が設けられ、このスプロケット75の歯にクレセントチェーン5が噛み合わされている。スプロケット75は、モータ77に接続されており、このモータ77の回転に伴ってスプロケット75が回転し、これによりクレセントチェーン5がフレーム3の走行路に沿って循環回走する。なお、第三レール13には、適宜切欠きが形成されており、この切欠きを介してスプロケット75がクレセントチェーン5を駆動する。
【0037】
本実施例では、クレセントチェーン5は、図1に示す状態において、反時計方向に走行し、手前側のレール9F,9G,11A,11B,11Cにより構成される走行路が往路とされ、奥側のレール9A〜9Eにより構成される走行路が復路とされる。
【0038】
搬送具7は、図4〜図6に示すように、リンク65のトッププレート69に立設される支持部材91と、この支持部材91に軸まわりに揺動可能に設けられる保持部材93と、この保持部材93と支持部材91とを架け渡すように設けられる連結部材95とを備える。
【0039】
支持部材91は、クレセントチェーン5のトッププレート69に載置されて取り付けられる矩形板状の取付片97と、この取付片97の両端部に設けられ、上方へ延出する略L字形の支持片99,99と、この一対の支持片99,99間を架け渡すように設けられる矩形板状の中間片101とを有し、本実施例では、各片97,99,101は金属製とされる。
【0040】
取付片97が、クレセントチェーン5のトッププレート69に取り付けられる際、取付片97の両端部は、異なるリンク65に取り付けられる。
本実施例では、取付片97は、連続する3つのリンク65(65A〜65C)のトッププレート69をまたがるように配置される。
【0041】
具体的には、取付片97は、図4および図6に示す状態において、走行方向前方側となる右端部に、丸穴97aが上下に貫通して形成されており、左端部に、左右方向に沿う長穴97bが上下に貫通して形成されている。
【0042】
そして、取付片97は、3つのリンク65A,65B,65Cのトッププレート69にまたがるように配置されて、その右端部の丸穴97aを介して、3つのリンク65A,65B,65Cの内の右端のリンク65Cのトッププレート69および上片67aに、上下方向に沿ってピン103がはめ込まれる。
ピン103は、その外径が取付片97の丸穴97aに対応した径とされ、その上端部には、径方向外側へ拡径してツバ部が形成されており、ツバ部は、取付片97の丸穴97aより大径とされる。また、ピン103の下端部には、径方向に沿って貫通穴が形成されており、リンク65Cの上片67aに前後方向に沿ってはめ込まれる細長い丸棒材104が、ピン103の下端部の貫通穴にはめ込まれることでピン103はリンク65Cに固定される。
【0043】
また、取付片97の左端部の長穴97bを介して、3つのリンク65A,65B,65Cの内の左端のリンク65Aのトッププレート69および上片67aに、上下方向に沿ってピン105がはめ込まれる。
ピン105は、その外径が取付片97の長穴97bの前後寸法に対応した径とされ、その上端部には、径方向外側へ拡径してツバ部が形成されており、このツバ部は、取付片97の長穴97bの前後寸法より大径とされる。また、ピン105の下端部には、径方向に沿って貫通穴が形成されており、リンク65Aの上片67aに前後方向に沿ってはめ込まれる細長い丸棒材106が、ピン105の下端部の貫通穴にはめ込まれることでピン105はリンク65Aに固定される。
なお、取付片97は、各ピン103,105に対してピンまわりに回転可能とされる。また、ピン105は、取付片97の長穴97bに沿って移動可能とされる。
【0044】
支持片99は、図4に示す状態において、取付片97の左右各端部に立設されて溶接にて固定される矩形板状の一片107と、この一片107の奥側端部から上方へ延出する他片109とを有する。
なお、本実施例では、取付片97に固定される支持片99の一片107は、取付片97より若干奥側(図5において右側)へ延出している。
【0045】
支持片99の他片109には、上下方向に長い穴111が貫通して形成されている。
また、この貫通穴111には、奥側(図5において右側)へ延出する係止溝113,115が、上下に離間して2箇所形成されている。
本実施例では、各係止溝113,115は、その下辺が水平に形成され、上辺が奥側へ行くに従って下方へ傾斜する略台形状に形成されている。
【0046】
中間片101は、図4において、その左右両端部が、各支持片99の他片109の奥側辺に当接されて溶接にて固定されている。
本実施例では、各支持片99の他片109に中間片101が固定された状態において、各他片109は、中間片101より上方へ延出している。
【0047】
保持部材93は、支持部材91に軸まわりに揺動可能に取り付けられる保持部117と、この保持部117に固定される箱状部119とを有する。
保持部117は、金属板を屈曲して形成された略コ字形材とされ、その開放両端片121,121の長手方向中央部は、矩形状にさらに突出して形成されている。
【0048】
箱状部119は、一方向へのみ開口する矩形状の箱体とされ、本実施例では、箱状部119は、プラスチック製のケースとされる。
箱状部119は、その底面が保持部117の中央片123に載置されてネジ(不図示)により保持部117に固定される。
【0049】
保持部材93は、その保持部117の開放両端片121,121間に、支持部材91の各支持片99の他片109の上端部が配置される。そして、保持部117の開放両端片121,121および各支持片99の他片109を架け渡すように、細長い丸棒状の第一軸125が、図4において左右方向に沿って回転可能にはめ込まれる。
これにより、保持部材93は、支持部材91に第一軸125まわりに回転可能に保持される。
【0050】
なお、支持部材91の中間片101には、細長い貫通穴101aが形成されて軽量化が図られている。また、保持部材93の保持部117の中央片123にも、円形の貫通穴123aが2つ形成されて軽量化が図られている。
【0051】
連結部材95は、金属板を屈曲して形成された略コ字形材とされる。
連結部材95は、その上端部が、第一軸125より下方位置において、保持部117の開放両端片121,121間に配置される。そして、連結部材95の開放両端片127,127および保持部117の開放両端片121,121を架け渡すように、細長い丸棒状の第二軸129が、図4において左右方向に沿って回転可能にはめ込まれる。
これにより、連結部材95は、その上端部が保持部材93に第二軸129まわりに回転可能に保持される。
【0052】
また、連結部材95は、その下端部が支持部材91の支持片99,99間に配置されると共に、その下端部の開放両端片127,127に、丸棒状のガイド棒131が架け渡されており、ガイド棒131の両端部は、開放両端片127,127から図4において左右外側へ突出している。
そして、このガイド棒131の左右両端部が、支持部材91の各支持片99の長穴111に通されている。
【0053】
また、本実施例では、図5に示すように、支持部材91の中間片101に、コ字形の取付具133が設けられている。そして、この取付具133の中央部に、コイルバネ135の一端部が接続されており、連結部材95の中央片136の下端部に、コイルバネ135の他端部が接続されている。
【0054】
このような構成の搬送具7は、保持部材93が支持部材91に対して3箇所で位置決め可能とされる。
まず、図5に示すように、連結部材95に設けられたガイド棒131が、支持片99の下側の係止溝115に入り込んだ状態においては、保持部材93が支持部材91に対して約45度傾斜した状態で保持される。
なお、本実施例では、連結部材95と支持部材91との間に設けられたコイルバネ135が連結部材95を奥側(図5において右側)へ付勢しており、ガイド棒131は係止溝115の奥側へ付勢されることで、係止溝115からの脱落が防止される。
【0055】
図7は、搬送具の箱状部を略水平に配置した状態を示す図であり、図8は、箱状部を略垂直に配置した状態を示す図である。
【0056】
図5の状態から、ガイド棒131を支持片99の下側の係止溝115から外して上方へ引き上げ、図7に示すように、上側の係止溝113へはめ込むことで、保持部材93は、ほぼ水平な状態で支持部材91に保持され、箱状部119の開口部は上方へ向けられる。この際、コイルバネ135の付勢力によりガイド棒131の係止溝113からの脱落が防止される。
さらに、ガイド棒131をどの係止溝113,115にもはめ込まず、図8に示すように、支持片99の長穴111の下端部に配置させると、保持部材93は、ほぼ垂直な状態で支持部材91に保持され、箱状部119の開口部は、手前側(図8において左側)へ向けられる。
【0057】
本実施例では、搬送具7が、直線状の走行路を移動する際には、図6に示すように、リンク65は左右方向に沿って一列に配置されており、ピン105は、取付片97の長穴97bの左端部に配置される。
【0058】
図9は、搬送具が第二レールの湾曲部を移動している状態を示す概略平面図である。
【0059】
そして、搬送具7が、第二レール11の湾曲部11cを移動する際には、クレセントチェーン5が湾曲することで、図9に示すように、ピン103,105同士の距離が縮まる。しかしながら、ピン105が、取付片97の長穴97bの右端部へ移動することで、湾曲部11cにおいても搬送具7がスムーズに移動する。同様に、第三レール13のコーナー部においても搬送具7はスムーズに移動する。
【0060】
なお、本実施例では、前記各連結片37に、棒状の脚部Lの上端部が接続されて、フレーム3は脚部Lに保持される。
【0061】
本実施例の搬送装置1は、その用途を特に問わないが、例えば縫製工場で使用される場合、図1に示すように、各第二レール11の湾曲部11cに近接してミシンS1〜S3が配置され、各ミシンに作業者M1〜M3が配置される。
そして、クレセントチェーン5により搬送具7が移動し、左側の第三レール13Bの位置において、略水平に配置された箱状部119に布片が載置された後、箱状部が約45度に傾けられる。なお、箱状部119には、4種類の布片が載置されるとする。
左端の作業者M1は、移動してきた搬送具7の箱状部119から、一つ目の布片と二つ目の布片を取り出して、ミシンS1で縫い合わせ、同じ箱状部119に戻す。
【0062】
次の中央の作業者M2は、左端の作業者M1が縫い合わせた物と、三つ目の布片とを取り出してミシンS2で縫い合わせ、同じ箱状部119に戻す。
また、右端の作業者M3は、中央の作業者M2が縫い合わせた物と、四つ目の布片とを箱状部119から取り出してミシンS3で縫い合わせて製品を完成させ、同じ箱状部119に戻す。
そして、右側の第三レール13Aの位置において、箱状部119から製品が取り出され、箱状部119が略垂直に配置されて、搬送具7は復路を移動し、左側の第三レール13Bの位置において、箱状部119が水平に配置されて、上記と同様の作業が繰り返される。
【0063】
このように、本実施例の搬送装置1によれば、流れ作業で製品を縫製することができ、時間の短縮および人員を削減することが可能となる。
また、本実施例では、箱状部119の傾斜角度を変更可能としており、作業者が作業し易い角度で作業することができる。さらに、復路において箱状部119を垂直に配置しておくことで、往路と復路との間隔が狭い場合でも、箱状部119,119同士が接触することがない。
また、本実施例では、支持部材91が複数のリンクにまたがって配置されることで、保持部材93が大きくなった場合でも、安定して搬送することができる。
【0064】
さらに、本実施例では、クレセントチェーン5の走行速度を比較的遅く設定しており、各作業者が、箱状部119から布片を取り出し、縫い終わった後に同じ箱状部119に戻すことができる速度とされる。また、第二レール11の湾曲部11cを搬送具7が走行することで、上記各作業者の近傍を箱状部119が通過する時間が長くなり、作業者は布片を取り出した箱状部119と同じ箱状部119に縫い終わった物を戻すことができる。
本実施例では、第二レール11は、その直線部11a,11bの溝rの前後方向中央部と、直線部11a,11bから最も離間した湾曲部11cの溝rの前後方向中央部との直線距離x(図2参照)が、20cm〜80cm程度に設定され、より好ましくは30cm〜50cmに設定される。
【0065】
さらに、本実施例では、各レール同士が着脱可能に接続されるので、作業の工程数に応じて、フレーム3の形状を変更することができる。たとえば、図1において、奥側右端の第一レール9Eにさらに第一レール9C〜9Eを一つ接続し、手前側右端の第二レール11Cにさらに第二レール11を一つ接続して、フレームの左右寸法を長くすることが可能である。また、第二レール11と第一レール9C〜9Eが同じ左右寸法であるので、奥側の第一レール9C〜9Eに換えて第二レール11を奥側に取り付けることなどが可能である。
【0066】
なお、本発明の搬送装置は、上記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。
たとえば、上記実施例では、搬送具の取付片を複数のリンクにまたがって配置し、両端部を異なるリンクに接続したが、リンクやそのトッププレートが大きい場合、搬送具の幅が小さい場合などには、一つのリンクに搬送具を取り付けてもよい。
【0067】
また、支持部材に対する保持部材の角度変更の仕方は適宜変更可能である。
さらに、上記実施例では、保持部材を支持部材に対して傾斜角度を変更可能に設けたが、箱状部が水平に配置された状態や約45度に傾斜した状態など、角度が一定とされる構成としてもよく、搬送具の構成は適宜変更可能である。
【0068】
また、各レールの形状、およびレールの組み合わせ方は適宜変更可能である。
さらに、上記実施例では、リンクにピン103,105を固定したが、取付片97に下方へ突出してピンを設け、リンク側に長穴を設けるようにしてもよい。また、搬送具の個数や取付位置も適宜変更可能である。
【0069】
さらに、保持部材93を支持部材91に対して第一軸125まわりに揺動させて、ガイド棒131を引き上げる際に、ガイド棒131の両端部を支持片99の長穴111の係止溝113,115に誘導する誘導部材151を設けてもよい。
図10〜図12は、さらに誘導部材が設けられた状態を示す図であり、図10は誘導部材151が設けられた搬送具を示す正面図であり、図11および図12は、その一部概略縦断面図と斜視図である。
【0070】
本変形例では、上記実施例における支持部材91の中間片101の左右両端部の上下方向中途部に、略L字形の取付部153が設けられる。取付部153は、中間片101の上下方向中途部から左右方向外側へ延出する矩形状の一片153aと、この一片153aの外側端部から手前側へ突出する他片153bとを有する。
そして、本変形例では、この取付部153に誘導部材151が取り付けられる。なお、本変形例では、右側の取付部153の上下二箇所に、誘導部材151,151がそれぞれ取り付けられる。
【0071】
誘導部材151は、支持片99の長穴111に配置される誘導板155と、この誘導板155に一端部が固定され、他端部が取付部153の他片153bに回転可能に保持される取付軸157とを有する。
誘導板155は、板片を屈曲して形成された略「く」の字形材とされ、奥側から手前側(図11において右側から左側)へ行くに従って拡幅するように支持片99の長穴111に配置され、その下端部は、係止溝113,115の下辺113a,115aより若干上方に配置される。
【0072】
取付軸157は、その左端部が誘導板155の屈曲部に固定され、右端部には、周方向に沿って環状の溝157aが形成されている。
また、取付軸157の左端部には、径方向外側へ拡径してツバ部159が形成されている。
【0073】
取付軸157は、その右端部が取付部153の他片153bに左右方向に沿って回転可能にはめ込まれ、ワッシャ161が通された後、環状溝157aにEリング163がはめ込まれる。これにより、取付軸157の左右方向の移動が規制され、誘導部材151が取付部153に取付軸157まわりに回転可能に保持される。
【0074】
また、誘導板155の上片155aには、コイルバネ165の一端部が取り付けられており、このコイルバネ165の他端部は取付部153の一片153aに取り付けられている。これにより、誘導板155は、その上片155aが取付軸157まわりに奥側(図11において右側)へ付勢され、上片155aは係止溝113,115の上辺113b,115bに当接しており、図11において時計方向への一定以上の回転が規制されている。
また、この状態では、誘導板155は、その上片155aがほぼ垂直に配置され、下片155bが手前側へ行くに従って下方へ傾斜して配置されている。
【0075】
このように誘導部材151が設けられている場合、ガイド棒131が支持片99の長穴111の下端部に配置された状態から、保持部材93を支持部材91に対して第一軸125まわりに揺動させて、ガイド棒131を引き上げていくと、ガイド棒131の先端部が、誘導板155の傾斜した下片155bに当接することで、係止溝115側へ誘導され、係止溝115内へ突入し、ガイド棒131の先端部は係止溝115内に配置される。
【0076】
また、さらにガイド棒131を引き上げると、ガイド棒131は、誘導板155の上片155aに当接し、誘導板155はコイルバネ165の付勢力に対抗して取付軸157まわりに、図11において反時計方向に回転して、ガイド棒131は上方へ移動する。
そして、上記と同様に、ガイド棒131は、誘導板155の下片155bに当接して、係止溝113側へ誘導され、係止溝113内へ突入して、ガイド棒131の先端部は係止溝113内に配置される。
【0077】
ガイド棒131の先端部が係止溝113内に配置された状態からガイド棒131を下げる際には、一旦ガイド棒131を上方へ引き上げて、上記と同様に誘導板155の上片155aを図11において反時計方向に回転させて長穴111の上端部にガイド棒131の先端部を配置し、そのまま下降させていけばよい。
この際、ガイド棒131の先端部は、誘導板155の下片155bに当接し、誘導板155は、コイルバネ165の付勢力に対抗して取付軸157まわりに、図11において反時計方向に回転して、ガイド棒131は下方への移動が可能となる。
【0078】
このように、ガイド棒131の先端部は、上方へ移動する際には、誘導板155の奥側(図11において右側)を通過し、下方へ移動する際には、誘導板155の手前側(図11において左側)を通過する。
【0079】
そして、本変形例では、ガイド棒131を上方へ移動させる際、ガイド棒131の先端部が誘導板155により自動的に係止溝113,115側へ案内されることで、保持部材93の位置決めが容易となる。
また、本変形例では、ガイド棒131を下方へ移動させる際、ガイド棒131の先端部が一旦、誘導板155に当接することで、クッションの役目を果し、急な下降を防止することができる。さらに、ガイド棒131を下方へ移動させる際、誘導板155の上片155aにより各係止溝113,115への進入が防止され、ガイド棒131の先端部が各係止溝113,115へ進入することがなく、スムーズに下降させることができる。
【0080】
なお、本変形例では、右側の取付部153にのみ誘導部材151を設けたが、これに代えて、またはこれに加えて左側の取付部153にも誘導部材151を設けてもよい。
また、対角線上に誘導部材151を設けるようにしてもよい。つまり、下側の係止溝115,115に対しては右側の取付部153に誘導部材151が設けられ、上側の係止溝113,113に対しては左側の取付部153に誘導部材151を設けるようにしてもよく、その取付位置は適宜変更可能である。
さらに、誘導板155を付勢するバネ(165)の種類やその取付方法など、誘導板155の付勢の仕方は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の搬送装置の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1の搬送装置のフレームおよびクレセントチェーンを示す平面図である。
【図3】図1の搬送装置の第一レールを示す図であり、(a)はその斜視図であり、(b)は係止具の概略縦断面図である。
【図4】図1の搬送装置の搬送具を示す正面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】図1の搬送装置の搬送具の箱状部を略水平に配置した状態を示す図である。
【図8】図1の搬送装置の搬送具の箱状部を略垂直に配置した状態を示す図である。
【図9】図1の搬送装置の搬送具が第二レールの湾曲部を移動している状態を示す概略平面図である。
【図10】図1の搬送装置の搬送具に、さらに誘導部材が設けられた状態を示す図であり、誘導部材が設けられた搬送具を示す正面図である。
【図11】図10の一部概略縦断面図である。
【図12】図10の一部概略斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1 搬送装置
3 フレーム
5 クレセントチェーン
7 搬送具
65 リンク
69 トッププレート
91 支持部材
93 保持部材
95 連結部材
97 取付片
103 ピン
105 ピン
119 箱状部
155 誘導板
155a 上片(他片)
155b 下片(一片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクが順次連結されて環状に構成されるクレセントチェーンと、
このクレセントチェーンのリンクに立設される支持部材と、
この支持部材に設けられ、被搬送物が保持される保持部材とを備え、
前記支持部材の下端部は、前記クレセントチェーンの走行方向に離隔した異なるリンクに、上下方向に沿うピンまわりに回転可能に取り付けられ、
この取付部の少なくとも一方において、前記支持部材と前記リンクとが前記クレセントチェーンの走行方向に相対移動可能とされた
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記支持部材に対して取付角度を変更可能に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記保持部材は、上方へ開口する箱状部を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記支持部材には、その上端部に前記保持部材が揺動可能に設けられる一方、その上下方向中途部と前記保持部材とが連結部材で架け渡され、
この連結部材は、一端部が、前記保持部材に揺動可能に設けられる一方、他端部が、前記支持部材に相対移動可能に、かつ、複数箇所において位置決め可能とされた
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記連結部材の他端部には、前記支持部材に設けられた上下に長い長穴に沿って上下動可能なガイド棒が設けられ、
前記長穴に連続して上下方向複数個所に設けられた係止溝に、前記ガイド棒が係止されることで、前記支持部材に対する前記保持部材の傾斜角度を変更可能とされた
ことを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記支持部材には、前記係止溝に対応した位置に、略くの字形の誘導板が揺動可能に配置されており、
前記ガイド棒が前記支持部材の長穴を上方へ移動する際、前記誘導板の一片が、前記ガイド棒を前記係止溝へ案内する一方、
前記ガイド棒が前記支持部材の長穴を下方へ移動する際、前記誘導板の他片が、前記係止溝への前記ガイド棒の進入を防止すると共に、前記誘導板の一片がバネの付勢力に対抗して軸まわりに回転されてガイド棒の下方への通過を許容する
ことを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記クレセントチェーンが設けられるフレームは、
直線状の第一レールと、
左右両端部間の離隔距離が前記第一レールと同一であるが、直線部の中途に湾曲部を有する第二レールと、
前記第一レールおよび/または第二レールにより構成され、並行に配置される往路と復路となる二つの走行路の両端部に設けられて、走行路を環状に連続させる第三レールとを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の搬送装置。
【請求項8】
前記保持部材が設けられる支持部材が、前記クレセントチェーンに等間隔に複数設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の搬送装置。
【請求項9】
複数のリンクが順次連結されて環状に構成されるクレセントチェーンと、
このクレセントチェーンのリンクに立設される支持部材と、
この支持部材に対して傾斜角度を変更可能に設けられ、被搬送物が保持される保持部材と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
前記支持部材の下端部は、前記クレセントチェーンの走行方向に離隔した異なるリンクに、上下方向に沿うピンまわりに回転可能に取り付けられ、
この取付部の少なくとも一方において、前記支持部材と前記リンクとが前記クレセントチェーンの走行方向に相対移動可能とされた
ことを特徴とする請求項9に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−64889(P2010−64889A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235532(P2008−235532)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(303064189)アレックスエンジニアリング株式会社 (9)