説明

携帯式ラベル貼付け機

【課題】実際に携帯式ラベル貼付け機を使用する操作者や使用環境に応じて、操作レバーをグリップ側に引き寄せるために要する操作力を軽減したり、又は、グリップ側に引き寄せられた操作レバーが元の位置に戻る速度を向上させたりすることができる携帯式ラベル貼付け機を提供する。
【解決手段】この携帯式ラベル貼付け機は、(a)ラベル連続体がロール状に巻回されたロール体を保持する保持機構と、(b)保持機構に保持されたロール体からラベル連続体を引き出して搬送する搬送機構と、(c)筐体に設けられたグリップ10に対して回動可能な操作レバー、及び、グリップ10に対して操作レバーを一定方向に付勢する付勢部材を含み、操作レバーの回動に伴って搬送機構を駆動する操作機構と、(d)グリップ10の内部において付勢部材12の端部を選択的に位置決めすることにより、付勢部材12の付勢力を切換可能とする切換機構とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のラベル連続体がロール状に巻回されたロール体からラベル連続体を引き出して、必要に応じてラベルに印字を行い、ラベル連続体から分離されたラベルを被貼付け体に貼り付けるために用いられる携帯式ラベル貼付け機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されている携帯式ラベル貼付け機は、台紙(剥離紙)上に複数枚のラベルが仮着されたラベル連続体がロール状に巻回されたロール体を保持し、ロール体からラベル連続体を繰り出して、ラベル剥離部で台紙を転向させ、個々のラベルを台紙から剥離して被貼付け体に貼り付け可能としている。従って、ラベルの貼り付け後には、台紙は不要となって廃棄されるので、資源の無駄が生じていた。
【0003】
そこで、特許文献2に記載されているように、台紙のないラベル連続体を使用することができる携帯式ラベル貼付け機も開発されている。台紙のないラベル連続体を使用すれば、資源を無駄にすることがなく、環境に配慮した携帯式ラベル貼付け機を実現することができる。
【0004】
ところで、携帯式ラベル貼付け機には、筐体に設けられたグリップに対して所定の角度範囲内で回転可能な操作レバーが設けられており、操作レバーの回転に伴ってラベル連続体が搬送される。操作レバーは、例えば、コイルスプリングによって、グリップから離れる方向に付勢されている。
【0005】
操作者は、グリップと共に操作レバーを握って、コイルスプリングの付勢力に抗して操作レバーをグリップ側に引き寄せ、次に、操作レバーにかける力を抜いて操作レバーを元の位置に戻すことにより、ラベル連続体が搬送されて貼付けローラー上に単葉のラベルが配置される。さらに、操作者が、貼付けローラー上のラベルを被貼付け体に押し付けることにより、ラベルが被貼付け体に圧着されて貼り付けられる。
【0006】
ここで、操作レバーをグリップ側に引き寄せるために要する操作力や、操作レバーが元の位置に戻る速度は、携帯式ラベル貼付け機の機種に固有のものである。携帯式ラベル貼付け機に要求される性能としては、操作レバーをグリップ側に引き寄せるために要する操作力が小さいことと、複数のラベルを連続的に貼り付けるために、グリップ側に引き寄せられた操作レバーが元の位置に戻る速度が速いことである。
【0007】
しかしながら、操作力を小さくするためにコイルスプリングを弱めれば、操作レバーの戻り速度が遅くなってしまう。一方、操作レバーの戻り速度を速くするためには、コイルスプリングを強める必要があり、操作力が大きくなってしまう。このように、操作力を小さくすることと操作レバーの戻り速度を速くすることとは、相反する関係にある。また、操作者によって、適切な操作力も異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭55−150718号公報(第2図)
【特許文献2】特開2004−299757号公報(段落0003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、実際に携帯式ラベル貼付け機を使用する操作者や使用環境に応じて、操作レバーをグリップ側に引き寄せるために要する操作力を軽減したり、又は、グリップ側に引き寄せられた操作レバーが元の位置に戻る速度を向上させたりすることができる携帯式ラベル貼付け機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る携帯式ラベル貼付け機は、帯状のラベル連続体がロール状に巻回されたロール体からラベル連続体を引き出して、ラベル連続体から分離されたラベルを被貼付け体に貼り付けるために用いられる携帯式ラベル貼付け機であって、(a)ラベル連続体がロール状に巻回されたロール体を保持する保持機構と、(b)保持機構に保持されたロール体からラベル連続体を引き出して搬送する搬送機構と、(c)筐体に設けられたグリップに対して回動可能な操作レバー、及び、グリップに対して操作レバーを一定方向に付勢する付勢部材を含み、操作レバーの回動に伴って搬送機構を駆動する操作機構と、(d)グリップの内部において付勢部材の端部を選択的に位置決めすることにより、付勢部材の付勢力を切換可能とする切換機構とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1つの観点によれば、グリップの内部において付勢部材の端部を選択的に位置決めすることにより付勢部材の付勢力を切換可能とする切換機構を設けたので、実際に携帯式ラベル貼付け機を使用する操作者や使用環境に応じて、操作レバーをグリップ側に引き寄せるために要する操作力を軽減したり、又は、グリップ側に引き寄せられた操作レバーが元の位置に戻る速度を向上させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯式ラベル貼付け機の一方の側板を取り除いた状態を示す側面図である。
【図2】図1に示すプラテンユニットの分解斜視図である。
【図3】図1に示す操作レバー及びプラテンユニットの要部斜視図である。
【図4】プラテンユニットが筐体に対して閉じられた状態を示す側面図である。
【図5】プラテンユニットが筐体に対して開かれた状態を示す側面図である。
【図6】図1に示す携帯式ラベル貼付け機の一部を拡大して示す一部断面図である。
【図7】図6に示す携帯式ラベル貼付け機のVII−VIIに沿った一部断面図である。
【図8】図1に示す操作レバー及びラベル切断機構の斜視図である。
【図9】図8に示すラベル切断機構の分解斜視図である。
【図10】図9に示すラベル切断機構の組立図である。
【図11】操作レバーが握持されてラベル連続体の切断が開始される状態における切断コマ及び連動機構の側面図である。
【図12】図11に示す切断コマ及び連動機構の切断動作を説明するための図である。
【図13】図11に示す切断コマ及び連動機構の復帰動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯式ラベル貼付け機の一方の側板を取り除いた状態を示す側面図である。携帯式ラベル貼付け機1は、帯状のラベル連続体3がロール状に巻回されたロール体からラベル連続体3を引き出して、ラベル連続体3から分離されたラベル3aに必要に応じて印字を行い、ラベル3aを被貼付け体(図示せず)に貼り付けるために用いられるものであり、特に、台紙(剥離紙)のないラベル連続体に適応可能である。
【0014】
台紙のないラベル連続体は、例えば、帯状のラベル基材に所定の間隔で幅方向にミシン目(マイクロミシン目)を形成することによって個々のラベルを分離可能とし、ラベル基材の裏面の左右両側縁部に粘着剤層を細帯状に設け、ラベル基材の表面の相当部分に剥離剤層(シリコーンオイル層等)を細帯状に設けたものであり、ラベル基材の表面における左右の剥離剤層の間の領域を印字領域としている。また、ラベル連続体を正確に移送するために、ラベル基材において、ミシン目の中央部には、例えば、長円形状を有する1つ又は複数の移送用スリットが形成されていても良い。
【0015】
図1に示すように、携帯式ラベル貼付け機1は、筐体を構成する左右1対の側板2(図1においては、一方の側板のみを示す)と、ラベル連続体3がロール状に巻回されたロール体を保持する保持機構4と、操作レバー5と、プラテンユニット6と、印字器7と、ラベル切断機構8と、貼付けローラー9とを含んでいる。
【0016】
保持機構4は、側板2に設けられたホルダー軸13の回りに回動することにより側板2に対して開閉可能に取り付けられたホルダーカバー14と、このホルダーカバー14の内部に設けられたラベル保持軸15とを含み、ラベル連続体3がロール状に巻回されたロール体をラベル保持軸15に装填保持することが可能である。
【0017】
左右1対の側板2には、操作者が握持可能なグリップ10が一体的に設けられている。操作レバー5は、このグリップ10に対して、レバー軸11の回りに回動可能に取り付けられている。操作レバー5とグリップ10との間には、任意の付勢部材が設けられており、操作レバー5が図1に示すような解放時離反状態となるように、グリップ10に対して操作レバー5を一定方向に付勢している。付勢部材としては、コイルスプリングやねじりコイルバネ等を用いることができるが、以下においては、例として、コイルスプリング12を用いる場合について説明する。
【0018】
操作者は、グリップ10と共に操作レバー5を握って、コイルスプリング12の付勢力に抗して操作レバー5をグリップ10側に引き寄せ、次に、操作レバー5にかける力を抜いて操作レバー5を元の位置に戻すことにより、プラテンユニット6、印字器7、及び、ラベル切断機構8を駆動する。その後、操作者は、貼付けローラー9を用いて、ラベル連続体3から分離された単葉のラベル3aを被貼付け体に貼り付ける操作を行うことになる。
【0019】
プラテンユニット6は、操作レバー5の回動に伴ってラベル連続体3を貼付けローラー9の方向に搬送する搬送機構であり、先端部(図中左端)からラベル3aを送り出し、貼付けローラー9によりラベル3aを被貼付け体に貼り付け可能とする。
【0020】
図2は、図1に示すプラテンユニットの分解斜視図である。プラテンユニット6は、プラテンフレーム18と、移送ローラー19と、押付けエレメント20とを含み、移送ローラー19と押付けエレメント20との間は互いに接離可能となっている。
【0021】
プラテンフレーム18は、プラテン開閉軸21の回りに回転することにより筐体に対して開閉可能となるように筐体に取り付けられる。プラテンフレーム18の先端側の左右には、1対の係脱ローラー26が突出するように形成されており、開閉用つまみ49(図1)に連結された開閉用係脱片と係脱可能になっている。開閉用つまみ49を操作してプラテンユニット6全体を筐体に対して開閉することにより、図1に示すラベル連続体3をプラテンフレーム18と移送ローラー19との間に挿通して装填することが可能となる。
【0022】
移送ローラー19は、プラテンフレーム18に形成された開口に、ローラー軸27の回りに回転可能に取り付けられ、ラベル連続体3の表面(剥離剤層)に当接して回転することにより、保持機構4(図1)に保持されたロール体からラベル連続体3を引き出して移送する。
【0023】
ラベル連続体3において、マイクロミシン目の中央部に1つ又は複数の移送用スリットが形成されている場合には、移送ローラー19に、1列又は複数列の移送用爪33が所定のピッチで設けられても良い。それらの移送用爪33は、ラベル連続体3の移送用スリットに係脱可能となっている。図2に示す例においては、2列の移送用爪33が設けられた円周部の間に、中央円周溝32が形成され、それらの円周部の両側には、左右1対の外側円周溝34が形成されている。
【0024】
図3は、図1に示す操作レバー及びプラテンユニットの要部斜視図である。操作レバー5は、その先端側に二股形状のヨーク部5aを有し、このヨーク部5aに印字器7(図1)が取り付けられる。また、操作レバー5においてレバー軸11の下方に延びる連結アーム28の連結軸29には、移送回動用爪30が往復動可能に取り付けられている。この移送回動用爪30は、図中上方に付勢され、移送ローラー19においてローラーギア25の側面に放射状に設けられた複数の移送用突起31の各々に係脱可能となって、移送ローラー19を回転させる。操作レバー5及び連結アーム28〜移送用突起31は、図1に示すグリップ10〜コイルスプリング12と共に、操作レバー5の回転に伴ってプラテンユニット6等を駆動する操作機構を構成する。
【0025】
また、プラテンユニット6は、駆動ギア22と、従動ギア23と、これら駆動ギア22及び従動ギア23の回りに掛け回された移送用無端ベルト24とを含んでいる。駆動ギア22〜移送用無端ベルト24は、移送ローラー19から供給されるラベル連続体3を所定の方向に移送する移送機構を構成する。駆動ギア22が移送ローラー19のローラーギア25に係合することにより、移送ローラー19の回転に伴って移送用無端ベルト24が駆動される。移送用無端ベルト24は、ラベル連続体の裏面(粘着剤層)に当接してラベル連続体を移送する。なお、従動ギア23の替わりに、円柱状ローラーを用いるようにしても良い。
【0026】
ここで、操作者がグリップ10(図1)と共に操作レバー5を握持することにより、操作レバー5が第1の位置(図中下側)から第2の位置(図中上側)に回転する。これにより、連結アーム28に連結軸29を介して連結された移送回動用爪30が、それまで係合していた1つの移送用突起31の図中左側に隣接するもう1つの移送用突起31に係合するようになる。
【0027】
また、操作レバー5の回転に伴って、ラベル切断機構8(図1)が、移送用無端ベルト24上のラベル連続体をマイクロミシン目に沿って切断し、ラベル連続体から単葉のラベルを分離する。さらに、ヨーク部5aに取り付けられた印字器7(図1)が、ラベル連続体から分離された単葉のラベルに押印を行う。
【0028】
一方、操作者がグリップから操作レバー5を解放することにより、操作レバー5が第2の位置から第1の位置に回転して、連結アーム28に連結軸29を介して連結された移送回動用爪30が、係合している移送用突起31を押し込む。これにより、移送ローラー19がローラー軸27の回りに所定の角度だけ回転して、保持機構4(図1)に保持されたロール体からラベル連続体を引き出して移送する。また、ローラーギア25を介して駆動ギア22が回転するので、移送用無端ベルト24が所定の距離だけ駆動され、移送ローラー19から供給されるラベル連続体を所定の方向に移送する。
【0029】
移送用無端ベルト24の表面には、移送されるラベル連続体の裏面(粘着剤層)が接触するので、非粘着性の物性を有するシリコーンあるいはフッ素系のゴム材で移送用無端ベルト24を作製するか、又は、移送用無端ベルト24の表面に剥離剤等を塗布しておくことが望ましい。また、移送用無端ベルト24は、印字器7によるラベル連続体への押印動作の受け台ともなるので、プラテンフレーム18(図2)において、印字器7に対向する移送用無端ベルト24の内側に、受圧用プレートが配置されても良い。
【0030】
再び図2を参照すると、押付けエレメント20は、エレメントフレーム35と、上下左右2対のバックアップローラー36と、バックアップローラー36の内側に位置する左右1対のバックアップリング37と、ねじりコイルバネ38と、左右1対の板バネ39とを含んでいる。
【0031】
エレメントフレーム35は、移送ローラー19の円周部に対向する左右1対の支持フレーム41と、支持フレーム41から外側に跨るように突出する左右1対の拡幅フレーム42と、支持フレーム41に設けられてバックアップローラー36及びバックアップリング37を取り付けるための上下1対の回転軸43とを含んでいる。ねじりコイルバネ38は、押付けエレメント20から移送ローラー19を離反させ、それらの間にラベル連続体を挿通可能とする間隙を形成可能とする。
【0032】
図4は、プラテンユニットが筐体に対して閉じられた状態を示す側面図である。プラテンユニット6が筐体に対して閉じられると、移送ローラー19と押付けエレメント20とが互いに押し付けられた状態になる。その際に、バックアップローラー36及びバックアップリング37(図2)が、ラベル連続体を移送ローラー19側に押し付ける。
【0033】
ここで、バックアップローラー36及びバックアップリング37は、ラベル連続体の裏面(粘着剤層)に線接触するので、粘着剤層との粘着力を極力小さくすることができると共に、左右1対の板バネ39によって、所定のバネ弾性をもった押付けが可能である。なお、バックアップローラー36及びバックアップリング37は、非粘着性の物性を有するシリコーンあるいはフッ素系のゴム材で作製するか、又は、表面に剥離剤等を塗布しておくことが望ましい。
【0034】
バックアップリング37が、移送ローラー19に形成された外側円周溝34に沿って回転することにより、移送ローラー19と押付けエレメント20との間にラベル連続体が挟持される。また、移送ローラー19の移送用爪33(図2)がラベル連続体の表面側から移送用スリットに係合し、移送ローラー19の回転によってラベル連続体が移送用無端ベルト24上に送り出される。
【0035】
図5は、プラテンユニットが筐体に対して開かれた状態を示す側面図である。プラテンユニット6が筐体に対して開かれると、移送ローラー19が押付けエレメント20から離間して、それらの間にラベル連続体3を導入するための間隙40が形成される。
【0036】
支持フレーム41に固定された拡幅フレーム42は、プラテンフレーム18の外壁面に設けられたエレメント軸47の回りに回動可能に取り付けられており、プラテンフレーム18を押付けエレメント20に対して相対的に回動可能としている。
【0037】
ねじりコイルバネ38は、一方の支持フレーム41の外壁面に設けられたバネ取付け軸44に回転可能に支持されており、プラテンフレーム18の内壁面に設けられた第1のバネ受け45と、上記一方の支持フレーム41に設けられた第2のバネ受け46とに両端が当接することにより、プラテンフレーム18を押付けエレメント20に対して解放状態(図5)となる方向に付勢する。
【0038】
板バネ39は、移送ローラー19とは反対側の支持フレーム41の背面に取り付けられており、操作レバーのレバー軸11(図3)の部分に当接することにより、ねじりコイルバネ38と協動して、プラテンフレーム18を筐体に対して解放状態(図5)となる方向に付勢する。
【0039】
図6は、図1に示す携帯式ラベル貼付け機の一部を拡大して示す一部断面図であり、図7は、図6に示す携帯式ラベル貼付け機のVII−VIIに沿った一部断面図である。本実施形態においては、実際に携帯式ラベル貼付け機を使用する操作者や使用環境に応じて、操作レバー5をグリップ10側に引き寄せるために要する操作力を調整するために、付勢部材であるコイルスプリング12の付勢力を切換可能とする切換機構が設けられている。
【0040】
この切換機構は、例えば、図6及び図7に示すように、偏心カム16と、スプリング受けプレート17とを含み、グリップ10の内部においてコイルスプリング12の第1の端部(図中上側)を選択的に位置決めすることにより、コイルスプリング12の付勢力を切換可能としている。
【0041】
偏心カム16は、グリップ10の内部に設けられたガイド部10aに回転可能に支持され、偏心した回転軸16aと、回転軸16aの中心からの距離が異なる複数の平面部分を含む外周面とを有している。回転軸16aは、角錐又は円錐形状を有しており、偏心カム16と一体的に製造されても良いし、偏心カム16と別個に製造されて偏心カム16の貫通孔に挿入されても良い。
【0042】
スプリング受けプレート17は、偏心カム16とコイルスプリング12の第1の端部との間に配置され、偏心カム16の回転位置に応じてコイルスプリング12の第1の端部を位置決めする位置決め部材として機能する。コイルスプリング12の第2の端部(図中下側)は、操作レバー5に形成されたスプリング受け溝5bに挿入されている。
【0043】
偏心カムの回転軸16aには、軸方向と直交する面において多角形(正六角形又は正方形等)の形状を有する調整孔16bが、軸方向と平行に形成されている。この調整孔16bは、図7に示すように、回転軸16aの軸方向の全てに亘って形成されても良いし、あるいは、回転軸16aの軸方向の一部に形成されても良い。また、図7に示すように、グリップ10において、偏心カムの回転軸の調整孔16bに対応する位置に開口10bが形成されている。
【0044】
この開口10bを介して、六角レンチ等の操作ピン80を偏心カムの回転軸の調整孔16bに挿入して偏心カム16を回転させることにより、コイルスプリング12の第1の端部の位置を変更することができる。図6に示すように、偏心カム16の外周面に含まれている1つの平面部分がスプリング受けプレート17に接しているときに、コイルスプリング12の付勢力によって偏心カム16の状態が安定する。
【0045】
図6に示す偏心カム16の場合には、スプリング受けプレート17に接する外周面から回転軸16aの中心までの距離を、L1、L2、L3の何れかに設定することが可能である(L1<L2<L3)。
【0046】
距離L1を選択した場合には、スプリング受けプレート17とスプリング受け溝5bとの間の距離、即ち、コイルスプリング12の取付け長さが最大となり、コイルスプリング12の付勢力が最小となって、操作レバー5をグリップ10側に引き寄せるために要する操作力を軽減することができる。
【0047】
一方、距離L3を選択した場合には、コイルスプリング12の取付け長さが最小となり、コイルスプリング12の付勢力が最大となって、グリップ10側に引き寄せられた操作レバー5が元の位置に戻る速度(操作レスポンス)を向上させることができる。これは、複数のラベルを連続的に貼り付ける際に適している。
【0048】
また、距離L2を選択した場合には、コイルスプリング12の取付け長さが中間的な値となり、コイルスプリング12の付勢力も中間的な値となって、操作力と戻り速度とをバランスさせることができる。
【0049】
次に、ラベル切断機構の詳細について説明する。
図8は、図1に示す操作レバー及びラベル切断機構の斜視図である。図9は、図8に示すラベル切断機構の分解斜視図である。図10は、図9に示すラベル切断機構の組立図である。図9に示すように、ラベル切断機構8は、切断コマ51と、連動機構52とを含んでいる。
【0050】
切断コマ51は、移送用無端ベルト24上で移送されて来たラベル連続体の幅方向に、マイクロミシン目及び/又は移送用スリットに沿って往復運動することにより、ラベル連続体を切断して単葉のラベルに分離する。切断コマ51の材料としては、所定の剛性及び非粘着性を有することが望ましく、例えば、ポリアセタール(POM)等の樹脂や、必要に応じてシリコーンやフッ素系のコーティング剤(剥離剤)等が塗布されたポリカーボネート(PC)やアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の樹脂を採用しても良い。
【0051】
図8〜図10に示すように、連動機構52は、縦レール部材(第1のレール部材)53と、連結プレート54と、リンクバー55と、バースターブラケット56と、横レール部材(第2のレール部材)57とを含んでいる。
【0052】
縦レール部材53は、一方の側板2(図1)の内壁面に固定されており、その中央部に縦ガイド溝58が形成され、この縦ガイド溝58内に連結プレート54が上下往復動可能に組み付けられている。連結プレート54は、図8に示す操作レバー5の一方のヨーク部5aに形成されたヨーク連結孔59に嵌め込まれる連結ピン60を有しており、操作レバー5に連動して縦レール部材53に沿って往復動する。また、連結プレート54には、リンク連結孔61が形成されており、このリンク連結孔61にリンクバー55の連結ピン62が嵌め込まれて、操作レバー5(ヨーク部5a)からの駆動力がリンクバー55に伝達される。
【0053】
リンクバー55には、連結ピン62と反対側の端部に、左右1対のブラケット連結ピン63が設けられている。リンクバー55は、連結プレート54とバースターブラケット56との間に連結されて、縦レール部材53及び横レール部材57に対して傾斜した姿勢の状態で、連結プレート54の往復動に応じてバースターブラケット56を往復動させる。
【0054】
バースターブラケット56は、ブラケット本体64と、左右1対の支点ピン65と、左右1対の姿勢規制ピン66と、左右1対の弾性突起67とを含み、移送用無端ベルト24(図2)の幅方向に沿って往復動可能である。バースターブラケット56には、切断コマ51が回転自在に取り付けられている。
【0055】
図9に示すブラケット本体64には、バー連結孔68が形成されており、このバー連結孔68にリンクバー55のブラケット連結ピン63が嵌め込まれて、ブラケット本体64にリンクバー55が連結される。従って、リンクバー55を縦レール部材53及び横レール部材57に対して傾斜した状態で移動させることにより、バースターブラケット56と共に切断コマ51をラベル連続体の幅方向に往復運動させることができる。
【0056】
横レール部材57は、移送用無端ベルト24(図2)の上部に位置するように、移送用無端ベルト24の幅方向に沿って、縦レール部材53に対して直角に配置される。横レール部材57には、バースターブラケット56の支点ピン65及び姿勢規制ピン66が案内されるガイド窓69が、その左右側の壁面に形成されている。
【0057】
ガイド窓69は、バースターブラケット56をラベル連続体の幅方向にガイドすると共に、その動作範囲を規制する。支点ピン65及び姿勢規制ピン66は、横レール部材57に形成されたガイド窓69に沿って移動可能である。姿勢規制ピン66は、ガイド窓69の上方内壁面69a又は下方内壁面69bに接離して、バースターブラケット56の姿勢、即ち、切断コマ51のラベル連続体に対する接離態勢(押付け及び離反)を規制する。また、図10に示すように、横レール部材57の底面部には、移送用無端ベルト24(図2)の幅方向に沿って姿勢制御窓70が形成されている。
【0058】
図11は、操作レバーが握持されてラベル連続体の切断が開始される状態における切断コマ及び連動機構の側面図である。図12は、図11に示す切断コマ及び連動機構の切断動作を説明するための図であり、図12(A)は、切断コマ及び連動機構の要部側面図、図12(B)は、切断コマ及び移送用無端ベルトの拡大正面図である。図13は、図11に示す切断コマ及び連動機構の復帰動作を説明するための図であり、図13(A)は、切断コマ及び連動機構の要部側面図、図13(B)は、切断コマ及び移送用無端ベルトの拡大正面図である。
【0059】
図1に示すグリップ10から操作レバー5を解放した状態では、コイルスプリング12がヨーク部5aを引き上げる力によって、図9及び図10に示す連動機構52において、連結プレート54が縦レール部材53の縦ガイド溝58内で最上位に位置している。従って、連結プレート54にリンクバー55を介して連結されたバースターブラケット56が、支点ピン65の回りに反時計方向に僅かに回転し、姿勢規制ピン66が横レール部材57のガイド窓69の上方内壁面69aに当接して、切断コマ51がラベル連続体の表面から僅かに上方に離反している状態にある。
【0060】
グリップ10と共に操作レバー5が握持されると、図11に示すように、ヨーク部5aからの駆動力(矢印A1)が連結プレート54からリンクバー55に伝達される。これにより、姿勢規制ピン66が支点ピン65の回りに時計方向に僅かに回転して(矢印A2)、下方内壁面69bに当接する。従って、切断コマ51が、移送用無端ベルト上のラベル連続体3より下方に入り込むことができるレベル位置に下がる。
【0061】
このとき、図11に示すように、切断コマ51は、ラベル連続体3の図中左端縁部よりも僅かに左方に位置している。操作レバー5のさらなる握持により、切断コマ51がこの状態から右方に移動するので、切断コマ51がラベル連続体3の側面部に切り込んで行くことになる。
【0062】
操作レバー5がさらに握持されると、操作レバー5からの駆動力の伝達によって連結プレート54がさらに下降し、リンクバー55を介してバースターブラケット56に駆動力が伝達する。これにより、図12に示すように、バースターブラケット56が横レール部材57のガイド窓69の右端に向けて移動し、切断コマ51が、移送用無端ベルト24の横断凹部24aに沿って移動する。
【0063】
切断コマの円周先端部51aは、ラベル連続体3の端縁部分に所定の押圧力を印加しながら移送用無端ベルト24の横断凹部24a内に入り込み、ラベル連続体3の端縁部分に延在しているマイクロミシン目の端から順々にラベル連続体3を破断させて行く。その結果、ラベル連続体3を比較的小さな力で切断して、ラベル連続体3を単葉のラベルに分離することができる。
【0064】
移送用無端ベルト24の横断凹部24aは、切断コマ51の円周先端部51aの形状に合わせて比較的細く形成されているので、円周先端部51aとラベル連続体3のマイクロミシン目との相対的位置が多少ずれたとしても、ラベル連続体3のマイクロミシン目又はその近傍が横断凹部24a内に入り込むことができる。従って、上述のような切断動作を的確に行うことができる。
【0065】
操作レバー5を完全に握りきった状態で、切断コマ51がラベル連続体3の切断を完了する。次に、操作レバー5が解放されると、コイルスプリング12(図1)が連結プレート54に作用する引き上げ力により、リンクバー55が連結プレート54によって引き上げられて行く。これにより、切断コマ51がラベル連続体3から離反し始める。
【0066】
図13に示すように、バースターブラケット56が支点ピン65の回りに反時計方向に回転し、姿勢規制ピン66がガイド窓69の上方内壁面69aに当接して、切断コマ51がラベル連続体3の表面から浮き上がった状態となる。操作レバー5の解放に伴い、連結プレート54及びリンクバー55が上方に復帰し、バースターブラケット56が元の位置に復帰する。
【0067】
操作レバー5が解放される過程において、図2に示す移送ローラー19によってラベル連続体3が所定の角度だけ移送されると共に、移送用無端ベルト24によってラベル連続体3が所定の距離だけ移送される。従って、ラベル連続体3の移動中においては、切断コマ51がラベル連続体3と接触又は干渉せず、ラベル連続体3の移送に支障がないようにしている。
【0068】
ただし、操作レバー5の握持及び解放によるラベル連続体3の切断動作及び移送動作の僅かなタイミング差によって、切断コマ51がラベル連続体3又は移送用無端ベルト24の横断凹部24aに係合している状態のままでラベル連続体3が移送されたとしても、切断コマの円周先端部51aのテーパー形状と、移送用無端ベルト24の横断凹部24aのテーパー形状とは、ほぼ同一の傾斜面となるように形成されているので(図13(B)を参照)、ラベル連続体3の移送を停止させてしまうことなく、切断コマ51が移送用無端ベルト24の横断凹部24aから上方へ離反することができる。
【0069】
再び図1を参照すると、印字器7は、操作レバー5における二股形状のヨーク部5aの先端部側に取り付けられており、操作者がグリップ10と共に操作レバー5を握持すると、印字器7も回転する。それにより、インキローラー48によって印字器7の活字部7aにインキが塗布され、移送用無端ベルト24の上面に付着して移送されて来るラベル3aに活字部7aが当接することにより、ラベル3aに所定の情報が印字される。ここで、印字器7及びインキローラー48は、移送用無端ベルト24上のラベル3aに印字を行う印字機構を構成している。なお、既に印字が行われているラベル連続体3を用いる場合には、ラベル3aに印字を行う必要がないので、印字器7を取り外す等によって、印字を省略することができる。
【0070】
貼付けローラー9は、携帯式ラベル貼付け機1の筐体の先端下方部(図1における左端下方部)に位置すると共に、その円周の一部が筐体の外部に露出しており、移送用無端ベルト24によってプラテンユニット6の先端部分に搬送されて来たラベル3aに当接する。操作者が貼付けローラー9上のラベル3aを被貼付け体に押し付ける貼付け操作を行うことにより、ラベル3aが貼付けローラー9によって被貼付け体に圧着されて貼り付けられる。
【0071】
以上の実施形態においては、台紙のないラベル連続体を使用する場合について説明したが、本発明は、台紙付きの一般的なラベル連続体を使用する携帯式ラベル貼付け機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…携帯式ラベル貼付け機、2…側板、3…ラベル連続体、3a…ラベル、4…保持機構、5…操作レバー、5a…ヨーク部、5b…スプリング受け溝、6…プラテンユニット、7…印字器、7a…活字部、8…ラベル切断機構、9…貼付けローラー、10…グリップ、10a…ガイド部、10b…開口、11…レバー軸、12…コイルスプリング、13…ホルダー軸、14…ホルダーカバー、15…ラベル保持軸、16…偏心カム、16a…回転軸、16b…調整孔、17…スプリング受けプレート、18…プラテンフレーム、19…移送ローラー、20…押付けエレメント、21…プラテン開閉軸、22…駆動ギア、23…従動ギア、24…移送用無端ベルト、24a…横断凹部、25…ローラーギア、26…係脱ローラー、27…ローラー軸、28…連結アーム、29…連結軸、30…移送回動用爪、31…移送用突起、32…中央円周溝、33…移送用爪、34…外側円周溝、35…エレメントフレーム、36…バックアップローラー、37…バックアップリング、38…ねじりコイルバネ、39…板バネ、40…間隙、41…支持フレーム、42…拡幅フレーム、43…回転軸、44…バネ取付け軸、45…第1のバネ受け、46…第2のバネ受け、47…エレメント軸、48…インキローラー、51…切断コマ、51a…円周先端部、52…連動機構、53…縦レール部材、54…連結プレート、55…リンクバー、56…バースターブラケット、57…横レール部材、58…縦ガイド溝、59…ヨーク連結孔、60、62…連結ピン、61…リンク連結孔、63…ブラケット連結ピン、64…ブラケット本体、65…支点ピン、66…姿勢規制ピン、67…弾性突起、68…バー連結孔、69…ガイド窓、69a…上方内壁面、69b…下方内壁面、70…姿勢制御窓、80…操作ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のラベル連続体がロール状に巻回されたロール体からラベル連続体を引き出して、ラベル連続体から分離されたラベルを被貼付け体に貼り付けるために用いられる携帯式ラベル貼付け機であって、
ラベル連続体がロール状に巻回されたロール体を保持する保持機構と、
前記保持機構に保持されたロール体からラベル連続体を引き出して搬送する搬送機構と、
筐体に設けられたグリップに対して回動可能な操作レバー、及び、前記グリップに対して前記操作レバーを一定方向に付勢する付勢部材を含み、前記操作レバーの回動に伴って前記搬送機構を駆動する操作機構と、
前記グリップの内部において前記付勢部材の端部を選択的に位置決めすることにより、前記付勢部材の付勢力を切換可能とする切換機構と、
を具備する携帯式ラベル貼付け機。
【請求項2】
前記切換機構が、
前記グリップに回転可能に支持され、偏心した回転軸、及び、前記回転軸の中心からの距離が異なる複数の平面部分を含む外周面を有する偏心カムと、
前記偏心カムと前記付勢部材の端部との間に配置され、前記偏心カムの回転位置に応じて前記付勢部材の端部を位置決めする位置決め部材と、
を含む、請求項1記載の携帯式ラベル貼付け機。
【請求項3】
前記偏心カムの回転軸に、軸方向と直交する面において多角形の形状を有する調整孔が、軸方向と平行に形成されており、
前記グリップにおいて、前記偏心カムの回転軸の調整孔に対応する位置に開口が形成されている、
請求項2記載の携帯式ラベル貼付け機。
【請求項4】
前記操作レバーが第1の位置から第2の位置に回転したときに、前記搬送機構によって搬送されたラベルに印字を行う印字機構をさらに具備し、
前記搬送機構が、前記操作レバーの第2の位置から第1の位置への回転に伴ってラベルを所定の距離だけ搬送する、
請求項1〜3のいずれか1項記載の携帯式ラベル貼付け機。
【請求項5】
前記操作レバーの第1の位置から第2の位置への回転に伴って、前記搬送機構によって搬送されたラベル連続体を切断して単葉のラベルに分離する切断機構をさらに具備する、請求項4記載の携帯式ラベル貼付け機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−95456(P2013−95456A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238608(P2011−238608)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】