説明

携帯機器と連携して動作可能な車載装置を利用した保険料算出システム

【課題】走行距離に基づく保険料を、より簡易で安価に計算することができるようなシステムを提供する。
【解決手段】携帯機器と通信可能なように接続された車載機器は、車両の運転者が加入する自動車保険の保険期間中に、該車両を該運転者が運転する度に、該運転の開始時の走行距離および該運転の終了時の走行距離を走行距離計から取得して、該走行距離のデータを携帯機器に送信する。携帯機器は、受信した該運転毎の該運転の開始時の走行距離および該運転の終了時の走行距離のデータを記憶する。携帯機器または該携帯機器と通信接続可能な外部のサーバにおいて、該記憶された運転毎の該運転の開始時の走行距離と終了時の走行距離の差を、保険期間中のすべての運転について累積することにより累積走行距離を算出し、自動車保険の保険料算出に用いる走行距離として、該累積走行距離を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯機器と連携して動作可能な車載機器を利用した保険料算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車保険の保険料は、様々な要素に基づいて設定されるようになっている。この点について、下記の特許文献1には、車載のナビゲーション装置のナビゲーション機能を利用して、実際の車両の走行状況(走行経路、走行時間帯、走行速度等)に応じた保険料を計算するシステムを開示している。
【0003】
また、下記の特許文献2では、顧客から申告された、保険期間中に車両が走行すると予測された予測走行距離と、該保険期間の直前の保険期間に実際に走行した実績走行距離と、該保険期間の直前の保険期間に車両が走行すると予測された直前予測走行距離とに基づいて、保険料を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2005/083605号
【特許文献2】特開2006−113847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車保険において、運転者のリスクを評価して保険料を算出することが一般に行われている。保険業法施行規則第12条においては、その一つに、年間走行距離その他自動車の使用状況を用いてもよいとされている。
【0006】
ここでの年間走行距離は、過去の実績ではなく、保険契約期間の走行距離を示し、被保険者の自己申告による場合が多い。しかしながら、一般に、保険契約期間の年間走行距離を正確に予測することは困難であり、よって、超過した場合には申請により追加の保険料を支払うことで調整されている。しかしながら、超過申請は、保険会社および被保険者の両者にとって手続き的な負担が生じるうえ、仮に大幅超過を放置して事故が生じた場合、被保険者の告知義務違反に基づき保険金を受領できないおそれもある。
【0007】
他方、上記の特許文献1のように、車載専用のナビゲーション装置を前提とすると、該ナビゲーション装置を車両に搭載した上で、該装置に保険料計算のプログラムを実装する必要がある。これは、コストがかかり、容易に利用することは困難である。また、特許文献2のように、ユーザからの申告が必要となると、この申告処理が手続き上の負担となりうる。
【0008】
したがって、走行距離に基づく保険料を、より簡易で安価に計算することができるようなシステムが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一つの側面によると、保険料算出のためのシステムは、車両の走行距離を計測する走行距離計と、車両に搭載され、携帯機器と通信可能なように接続された車載機器とを備える。前記車載機器は、前記車両の運転者が加入する自動車保険の保険期間中に、該車両を該運転者が運転する度に、該運転の開始時の走行距離および該運転の終了時の走行距離を前記走行距離計から取得して、該走行距離のデータを前記携帯機器に送信する。前記携帯機器、または、該携帯機器と通信接続可能な外部のサーバにおいて、該運転毎の運転の開始時の走行距離と終了時の走行距離の差を、前記保険期間中のすべての運転について累積することにより累積走行距離を算出し、前記自動車保険の保険料算出に用いる走行距離として、該累積走行距離を用いる。
【0010】
この発明によれば、運転毎に、走行距離のデータが携帯機器に送信される。したがって、携帯機器、または該携帯機器と通信するサーバは、該運転毎の開始時の走行距離と終了時の走行距離の差、すなわち運転毎の実際の走行距離を累積することにより、保険期間中の累積走行距離(実績の走行距離)を算出することができる。結果として、車両に専用のナビゲーション装置を搭載することなく、実績としての走行距離を簡単かつ正確に取得することができ、該走行距離に基づく適切な保険料を算出することができる。
【0011】
この発明の一実施形態によると、前記外部のサーバは、前記自動車保険の保険会社のサーバであり、前記携帯機器は、該サーバが前記累積走行距離を用いた保険料算出を行えるように、前記運転毎の該運転の開始時の走行距離および該運転の終了時の走行距離、該開始時の走行距離と該終了時の走行距離の差、および該差を累積することにより算出される前記累積走行距離、の少なくとも一つを、該携帯機器の識別番号と共に、該サーバに送信する。
【0012】
この発明によれば、保険会社は、携帯機器の識別番号(たとえば、携帯電話の電話番号)毎に、累積走行距離を算出もしくは取得することができる。したがって、被保険者を特定して、該被保険者単位に走行距離を正確に把握することができるので、該被保険者に適切な保険料を算出することができる。たとえば、保険契約時に予定していた走行距離よりも累積走行距離が小さい場合には、保険料の過払い分について、繰り越し等のサービスを被保険者に通知することができる。また、予定していた走行距離より累積走行距離が大きい場合には、保険料の不足分について、携帯機器を介して被保険者に通知することができる。
【0013】
この発明の一実施形態によると、前記車載機器は、さらに、前記保険期間の開始日における走行距離および終了日における走行距離を前記走行距離計から取得して前記携帯機器に送信する。前記携帯機器は、前記保険会社のサーバに、前記保険期間の開始日における走行距離と終了日における走行距離、および、該開始日における走行距離と終了日における走行距離の差、の少なくとも一方を送信する。該サーバは、該開始日における走行距離と終了日における走行距離の差と、前記累積走行距離との比較に基づいて、該累積走行距離の信頼性を判定する。
【0014】
運転毎に、携帯機器に運転開始時および終了時の走行距離のデータを送信して記憶させないと、正確な累積走行距離は計算されないが、この発明によれば、該累積走行距離と、保険期間の開始日と終了日の間の走行距離とを比較するので、累積走行距離が、運転毎の走行距離をきちんと蓄積した結果に相当するものかどうかを判断することができる。こうして、保険会社は、累積走行距離の信頼性が高いかどうかを判断して、該判断の結果を保険料算出に用いることができる。
【0015】
本発明のその他の特徴及び利点については、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施例に従う、携帯機器と車載機器とが接続された車載処理システムの一形態を示す図。
【図2】この発明の一実施例に従う、車両内における携帯機器の設置の一形態を示す図。
【図3】この発明の一実施例に従う、携帯機器および車載機器の機能ブロック図。
【図4】この発明の一実施例に従う、携帯機器および車載機器の機能ブロック図。
【図5】この発明の一実施例に従う、走行距離履歴のデータを示す図。
【図6】この発明の一実施例に従う、車載機器によって実行される、走行距離取得プロセスのフローチャート。
【図7】この発明の一実施例に従う、携帯機器によって実行される、走行距離受信プロセスのフローチャート。
【図8】この発明の一実施例に従う、外部のサーバによって実行される、保険料計算プロセスのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。まず、図1〜図3を参照して、この発明の一実施形態の前提となる、携帯機器と連携可能な車載機器を備える車載処理システムの概略的な構成を説明する。
【0018】
携帯機器10は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、およびスマートフォンのような、携帯可能であり、かつ情報処理機能および通信機能を備えた端末である。この実施形態では、携帯電話を例として説明する。
【0019】
携帯電話10は、データを表示するディスプレイ(表示画面)11、音および音声(以下、単に音声と呼ぶ)を出力するスピーカ12、および、携帯電話10に備えられたキー(ボタン)のように、ユーザが携帯電話10に何らかのデータ(信号)を入力するための入力操作部13を備えている。
【0020】
携帯電話10は、従来の音声通話機能だけでなく、中央処理装置(CPU)とメモリを有するコンピュータとしての情報処理機能を備えており、図には、それぞれ処理部14および記憶部15として示されている。たとえば、入力操作部13によって入力された信号に応じて、記憶部15に記憶されたプログラムが処理部14によって実行され、その情報処理の結果が、ディスプレイ11上に表示され、および(または)スピーカ12を介して音声出力される。
【0021】
携帯電話10は、通信機能を備えており、図には、通信部16および車内通信部17として示されている。通信部16は、アンテナを介して外部のネットワーク31に接続し、音声通話またはデータ通信のための信号を送受信する機能を備えている。図には、外部のネットワーク31としてインターネットが示されており、通信部16は、該インターネットを経由して外部のサーバ32に接続し、外部のサーバ32とデータ通信を行うことができる。
【0022】
また、車内通信部17は、車両に搭載される車載機器20の車内通信部27と、外部接続端子18を介して接続し、該車載機器20とデータ通信のための信号を送受信する機能を備えている。
【0023】
携帯電話10には、種々のアプリケーション(適用業務)が実装されており、各アプリケーションは、記憶部15に記憶された1または複数のプログラムを実行することによって実現される。この実施形態では、該アプリケーションの一つとして、ナビゲーションが実装されている。したがって、通信部16には、アンテナを介して、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される信号(GPS信号)を受信する機能も備えられている。
【0024】
ここで、外部のサーバ32を、ナビゲーションのサービスを提供するサーバ(ナビサーバ)とすると、処理部14は、該ナビゲーションのプログラムの実行を介して、受信したGPS信号から現在位置を検出すると共に、該現在位置を示すデータを、通信部16を介してサーバ32に送信することができる。これに応じて、該サーバ32は、該現在位置周辺の地図データを携帯電話10に送信する。処理部14は、通信部16を介して該地図データを受信し、該地図データ上に該現在位置を重畳して、ディスプレイ11上に表示することができる。また、入力操作部13を介して目的地を示すデータが入力されたことに応じて、処理部14は、該目的地を通信部16を介して該サーバ32に送信することができる。これに応じて、該サーバ32は、該現在位置から目的地までの最適な経路(ルート)を検索して携帯電話10に送信する。処理部14は、通信部16を介して受信した該最適な経路を、地図データ上に重畳してディスプレイ11上に表示することができる。なお、最近のナビゲーション機能には、交通情報の提供や近傍の施設検索等の様々な機能が付加されており、この実施形態においても、所望のものを含めることができる。
【0025】
車載機器20は、データを表示する表示画面を有する表示装置21、音および音声を出力するスピーカ22、および該表示画面上に構成されるタッチパネル(タッチパネルディスプレイ)や該車載機器20に備えられた所定のキーなどを介してユーザが該車載機器に何らかのデータ(信号)を入力するための入力操作部23を備えている。表示装置21は、図2に示すように、運転者が視認しかつ操作可能なように、たとえば車両のダッシュボード50に該タッチパネルディスプレイ31とキーやボタン等の入力操作部23が組み込まれるように設置されることができる。なお、入力操作部23には、マイクロホン(図示せず)を含めることができ、音声データを該マイクロホンを介して入力できるようにしてもよい。表示装置21およびスピーカ22を総称して、以下、出力装置と呼ばれることがある。
【0026】
車載機器20は、中央処理装置(CPU)とメモリを有するコンピュータである電子制御装置(ECU)を備えており、これらが、図には、それぞれ処理部24および記憶部25として示されている。たとえば、入力操作部23によって入力された信号に応じて、記憶部25に記憶されたプログラムが処理部24によって実行され、その情報処理の結果が、表示装置21上に表示され、および(または)スピーカ22を介して音声出力される。
【0027】
携帯電話10に設けられた前述の車内通信部17および外部接続端子18に対応して、車載機器20には、車内通信部27および外部接続端子28が設けられている。外部接続端子18と外部接続端子28が互いに接続されることにより、携帯電話10の車内通信部17と車載機器20の車内通信部27は、互いに、所定のプロトコルに従って通信可能なように接続される。
【0028】
たとえば、携帯電話10の外部接続端子18と、車載機器20の外部接続端子28とを、USB(Universal Serial Bus)接続によって接続することにより、車内通信部17および27は互いに通信可能となる。たとえば、図2に示すように、車両のダッシュボード50に所定の挿入口51を設け、該挿入口51の底部に外部接続端子28を設ける。携帯電話10を該挿入口51に設置することにより、外部接続端子18と28とが互いに接続され、これにより、携帯電話10と車載機器20とは通信可能な状態となる。こうして、携帯電話10を、車載機器20と連携して動作可能なように、車載処理システムに一体的に組み込むことができる。
【0029】
代替的に、携帯電話10と車載機器20とを、ブルートゥース(Bluetooth)のような所定の無線通信を介して接続するようにしてもよい。
【0030】
車載機器20には、車両の走行状態を検出するためのセンサ29が接続されている。この実施形態では、該センサ29は、車速を検出するためのセンサであり、たとえば、車速センサ、加速度センサ、車輪速センサ等によって実現されることができる。センサ29によって検出された車速は、処理部24に渡される。なお、車両が停止しているか否かを検出するときには、上記の車速を検出するセンサに代えて、パーキングブレーキが作動しているか否かを検出するパーキングブレーキセンサを、センサ29として用いてもよい。
【0031】
また、この実施形態では、車両に走行距離計(オドメーター)41が設けられている。走行距離計41は、車両の現在までの走行距離を累積した値(以下、単に走行距離と呼ぶ)を計測して表示する装置である。走行距離計41によって検出される現在の走行距離は、処理部24に渡される。
【0032】
図3は、図1に示す車載処理システムによって実現される基本的な通信形態を説明するために、携帯電話10の処理部14および車載機器10の処理部24を機能ブロック図で表したものである。これらの機能は、CPUによって実行される。また、データ処理に用いるメモリ115、211が示されており、これらは、記憶部15および25にそれぞれ実現される。なお、外部接続端子18、28は省略されている。
【0033】
アプリケーション実行部111は、たとえばユーザによる何らかの入力操作に応じて所望のアプリケーションを実行する際、対応するプログラムを、たとえば記憶部15の不揮発性メモリ(図示せず)から読み出して実行する。該プログラムによって処理された結果、出力されるべき表示画面のデータおよび(または)音声のデータが生成される。
【0034】
表示画面は、典型的には、テキスト(文字)および画像などのコンテンツと、ウィンドウ、ダイアログボックス、タスクバー、ボタン、チェックボックス、テキストフィールド等のGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)部品とから構成される。プログラム内で、所望のテキストデータを指定する(テキストデータ自体を記述してもよいし、該テキストデータのファイルを記述してもよい)ことにより、該テキストデータを描画することができる。画像データ(たとえば、JPEGのような画像データ)についても同様である。また、各種のGUI部品は、たとえば該携帯電話10に搭載されるOS(オペレーティング・システム)によって予めライブラリとして提供されて記憶部15に記憶されており、プログラム内で所望のGUI部品を指定することによって、該GUI部品を描画することができる。たとえば、Javaのプログラムにおいては、Buttonクラスをプログラムで定義することにより、ボタンというGUI部品を描画することができる。さらに、プログラム内で音声データのファイルを指定することにより、該音声データの再生を実行することができる。
【0035】
アプリケーション実行部111は、プログラムを実行したとき、該プログラム内で、指定されたテキストおよび画像のデータを描画する命令があれば、それらの描画命令を表示制御部113に出力する。この命令に応じて、表示制御部113は、該指定されたテキストおよび画像のデータを、たとえば記憶部15や通信部16を介して取得し、これを、VRAMのような表示画面用のメモリ115に出力(描画)する。また、アプリケーション実行部111は、プログラムを実行したとき、該プログラム内に指定されたGUI部品があれば、その描画命令を表示制御部113に出力する。これに応じて、表示制御部113は、指定されたGUI部品を記憶部15から読み込み、これを、メモリ115に出力(描画)する。さらに、アプリケーション実行部111は、プログラムを実行したとき、該プログラム内で指定された音声データがあれば、該音声データの再生命令を音声制御部114に出力する。音声制御部114は、指定された音声データのファイルを、たとえば記憶部15や通信部16を介して取得する。
【0036】
送受信制御部117は、携帯電話10のアプリケーションに対し、車載機器20というデバイスのドライバとしての役割を果たすように設けられており、その機能はソフトウェアプログラムによって実現されることができる。より具体的には、送受信制御部117は、メモリ115に格納された一画面分のデータから、車載機器20の表示装置21の画面解像度と同じ解像度を有するビットマップデータ(画面データと呼ぶ)を該メモリ115から切り出すと共に、音声制御部114によって取得された音声データのファイルを受け取り、該画面データおよび音声データのファイルを、車内通信部17を介して車載機器20に送信する。
【0037】
好ましくは、送受信制御部117は、画面データ(表示画面)に関する属性情報を表示制御部113から取得し、これを、該画面データと共に、車内通信部17を介して車載機器20に送信する。属性情報は、車載機器20の表示装置21に画面データを出力するに際して、後述する出力制御部213によって使用される情報である。属性情報に基づいて、車両の安全性の観点から、車載機器20上での出力が許容される画面データかどうかが判断される。
【0038】
表示制御部113は、前述したように、プログラムを実行することにより出力される描画命令に従って、表示画面を構成するコンテンツやGUI部品をメモリ115に出力するので、送受信制御部117は、表示画面の該属性情報を、表示制御部113からの情報に基づいて取得することができる。
【0039】
属性情報には、たとえば、アプリケーション(プログラム)の種類、要求される入力操作の数および種類、表示項目の数、表示項目の色、表示される文字数等を含めることができる。
【0040】
こうして、画面データとその属性情報、および音声データが、送受信制御部117から、車内通信部17を介して車載機器20に送信される。車載機器20の車内通信部27は、これらを受け取り、画面データおよび音声データを、一時的にメモリ211に記憶すると共に、属性情報を、出力制御部213に渡す。
【0041】
出力制御部213は、受け取った属性情報と、センサ29により検出された車両の走行状態とに基づいて、受け取った画面データおよび音声データの表示装置21およびスピーカ22への出力形態を制御する。
【0042】
この制御は、上で述べたように、安全性の観点から行われる。すなわち、携帯電話10で実行されるアプリケーションは、車両用に予め設計されていないことが多い。したがって、該アプリケーションの実行によって出力される情報を、そのまま、車両に搭載された表示装置21やスピーカ22を介して出力すると、車両の運転に影響を及ぼすおそれがあり、安全性を確保できないおそれがある。
【0043】
そのため、出力制御部213を設け、属性情報および走行状態に基づいて、受け取った画面データが、安全性の観点から決められた所定の条件を満たすかどうかを判断する。
該所定の条件を満たすならば、該受け取った画面データを、加工することなく、そのまま表示装置21上に出力する。該所定の条件を満たさなければ、該受け取った画面データを、該所定の条件を満たす程度にまで加工処理を施し、該加工処理が施された画面データを、表示装置21上に出力する。該所定の条件を満たす程度にまで加工処理を施すことができないと判断した場合には、該画面データの表示装置21上への出力を禁止する。
【0044】
また、出力制御部213は、音声出力が、該所定の条件を満たすかどうかを判断する。該所定の条件を満たすならば、受け取った音声データをそのまま再生して、スピーカ22を介して出力する。該所定の条件を満たさなければ、該所定の条件を満たす時点まで該出力を時間的に遅延させる。該所定の条件を満たすのが困難と判断した場合には、該音声データのスピーカ22を介しての出力を禁止する。
【0045】
該所定の条件には、たとえば、(1)車両の走行状態に基づく条件、(2)アプリケーション(プログラム)の処理内容に基づく条件、(3)表示内容に基づく条件、(4)音声に基づく条件、を含めることができる。
【0046】
一例として簡単に述べると、上記(1)に関し、車速が所定値以上の高速走行をしてないこと、という条件を規定し、センサ29により検出された走行状態が該条件を満たすかどうかを判断する。上記(2)に関し、たとえばナビゲーションというカテゴリに分類されるアプリケーションであること、という条件を規定し、受け取った属性情報から、受け取った画面データが該条件を満たすかどうかを判断する。これらの条件を満たすならば、受け取った画面データの表示装置21上への出力を許可し、いずれかの条件を満たさなければ、該画面データの表示装置21上への出力を禁止する。
【0047】
上記(3)に関し、表示画面内の項目数が所定値以下であること、表示画面内の色が認識しやすい色であること、表示画面内の文字数が所定値以下であること、等の条件を規定し、受け取った属性情報から、受け取った画面データが該条件を満たすならば、該画面データの表示装置21上への出力を許可し、該条件を満たさなければ、該条件を満たす程度にまで該画面データを加工した上で、該画面データを表示装置21上に出力する。上記(4)に関し、車両に搭載された他の制御装置による音声出力(たとえば、バッテリ制御、エアバッグ制御等が制御装置によって行われており、これらの制御装置による警告や音声メッセージ)と干渉しないことという条件を規定し、該条件を満たすならば、受け取った音声データのスピーカ22への出力を許可し、満たさなければ、該条件を満たす状況に至るまで音声データのスピーカ22への出力を時間的に遅延させ、もしくは該出力を禁止する。
【0048】
このように、携帯電話10によって実行されたアプリケーションのプログラムが出力する情報を、車両の安全性を確保する観点から決められた所定の条件を満たすようにした上で、車載機器20の出力装置に出力するので、車両の安全性を確保しつつ、携帯電話のアプリケーションによって提供されるサービスを、車両の乗員は享受することができる。たとえば、携帯電話10でナビゲーションのアプリケーションを実行することにより出力される地図情報等を、車載機器20の表示装置21上に表示させることができる。したがって、携帯電話のナビゲーション機能を、車両用のナビゲーションとして、安全に利用することができる。
【0049】
なお、車載機器20の表示装置21に上記のようにして表示された画面データには、加工された後であっても、たとえばキー入力やボタン選択などの入力操作を要求する部分が含まれていることがある。この場合、表示装置21のタッチパネルや所定のキー等の入力操作部23を介して、ユーザは、入力操作を行うことができる。該入力操作に応じた信号は、車内通信部27を介して携帯電話10に送信される。携帯電話10の送受信制御部117は、車内通信部17を介して該信号を受け取り、必要であればアプリケーション実行部111が解釈可能な形態の信号に変換して、該アプリケーション実行部111に渡す。アプリケーション実行部111は、現在実行中のプログラムに従って、該信号に応じた処理を行う。その結果、新たな表示画面を出力する場合には、前述したような処理を経て、画面データが、その属性情報と共に、再び送受信制御部117から車載機器20へと送信される。
【0050】
このように、アプリケーションのプログラム実行は、携帯電話10で行われるが、その結果として生成される表示画面および音声のデータは、車載機器20の表示装置21およびスピーカ22を介して出力される。このとき、携帯電話10のディスプレイ11およびスピーカ12に対する該表示画面および音声の出力については、禁止することができる。たとえば、携帯電話10の処理部14は、車載機器20が接続されたことを検知することにより、表示制御部113および音声制御部114に対し、ディスプレイ11およびスピーカ12への出力を禁止する信号を出力することができる。
【0051】
上記では、携帯機器10と車載機器20の間のデータ通信に関して説明したが、携帯機器10の音声通話機能にも、車載機器20を利用することができる。たとえば、携帯機器10は、車載機器20と接続されたことを検知して、音声通話を行うための音声データの入出力先を、車載機器20に切り換える。そして、携帯機器10によって外部と音声通話の接続がなされたとき、携帯機器10が受信した音声データは、車載機器20に伝えられてスピーカ22を介して出力され、車載機器20の入力操作部23に備えられたマイクロホンを介して入力された音声データは、携帯電話10に伝えられた外部に送信される。こうして、車両の乗員は、ハンズフリーで音声通話を行うことができる。なお、音声通話についても、出力制御部213によるスピーカ22を介しての出力の制御を行うようにしてもよい。
【0052】
以上のように、この実施形態では、携帯電話と車載機器が一体的なシステムを構成し、互いに通信可能なようになっている。本願発明は、このような通信形態を利用し、車両の運転者が加入する自動車保険(以下、対人、対物、搭乗者、および車両等、想定されうるものを含むことができる)の保険料計算に用いる走行距離を、より簡易な手法で正確に取得し、これにより、被保険者(運転者)への保険料に関するサービスを向上させようとするものである。
【0053】
図4は、この発明の一実施形態に従う、図1〜図3を参照して説明した構成を利用した保険料算出システムを、機能ブロック図で表したものである。図1および図3と同じブロックには、同じ符号が付されている。なお、図3を参照して説明した、ドライバとしての役割を果たす送受信制御部117は、ここでは、携帯電話10と車載機器20との間で走行距離のデータを通信する際に、必要なデータ形式の変換等を行うよう設けられている。また、メモリ118は、記憶部15に実現される。
【0054】
この実施形態では、自動車保険の適用を受ける被保険者が、保険契約で定められた保険期間中に運転者として車両に乗車したとき、該被保険者は、自身の携帯電話10を、たとえば図2に示すように所定位置に設置することにより、該携帯電話10を車載機器20に接続し、運転を開始する。携帯電話10の電源および車載機器20の電源は、オンにされているものとする。
【0055】
車載機器20には、走行距離取得部215が設けられている。車両のイグニションがオンされたことに応じて、走行距離取得部215は、走行距離計41から現在の走行距離を取得し、該走行距離のデータを、車内通信部27を介して携帯電話10に送信する。なお、携帯電話10が接続されていないと、走行距離を携帯電話10に送信することができないので、走行距離取得部215は、車両のイグニションがオンにされ、かつ携帯電話10が車載機器20に接続されていることを検知した場合に、該走行距離を取得して携帯電話10に送信するようにしてもよい。
【0056】
携帯電話10と車載機器20の接続の検知は、任意の適切な手法で実現されることができる。たとえば、車載機器20または携帯電話10から、該携帯電話10の外部接続端子18と車載機器20の外部接続端子28との接続を定期的に調べ、接続されていれば接続検知信号を発するようにすることができる。
【0057】
一実施形態では、携帯電話10には、アプリケーションの一つとして、自動車保険のアプリケーションが設けられており、該アプリケーションには、走行距離受信のためのプログラムが含まれている。走行距離受信のプログラムは、該走行距離のデータが車載機器20から受信されたことに応じて、アプリケーション実行部111によって記憶部15から読み出されて起動されることができる。アプリケーション実行部111は、該プログラムに従って、該受信した走行距離のデータを、運転開始時の走行距離として、メモリ118に記憶する。このとき、該走行距離のデータを現在の日時と関連づけて記憶することができる。走行距離の記憶を終えたならば、該プログラムは終了する。
【0058】
上記の形態では、車両のイグニションのオンに応じて、走行距離取得部215が自動的に走行距離計41から走行距離を取得して携帯電話10に送信している。代替的に、車両のイグニションオンに応じて、または携帯電話10と車載機器20の間の接続検知に応じて、アプリケーション実行部111が走行距離受信のプログラムを起動し、該プログラムの実行を介して走行距離を要求する信号を車内通信部17を介して送信してもよい。該要求信号に応じて、走行距離取得部215は、走行距離計41から走行距離を読み取って携帯電話10に送信することができる。
【0059】
次に、運転者が、運転を終えて、車両のイグニションをオフにしたことに応じて(イグニションをオフしても、車載機器20の電源を、たとえばバックアップ電源でオン状態に維持することができる)、走行距離取得部215は、走行距離計41から現在の走行距離を取得し、該走行距離のデータを、車内通信部27を介して携帯電話10に送信する。該走行距離のデータが受信されたことに応じて、走行距離受信のプログラムがアプリケーション実行部111により実行され、これにより、受信した走行距離のデータは、運転終了時の走行距離として、メモリ118に記憶される。この場合も、現在の日時と関連づけて記憶することができる。走行距離のデータを記憶したならば、該プログラムは終了する。
【0060】
代替的に、車両のイグニションオフに応じて、走行距離取得部215が、該イグニションがオフされたことを示す信号を携帯電話10に送信し、この信号に応じて、アプリケーション実行部111が走行距離受信のプログラムを起動してもよい。該プログラムの実行を介して、走行距離を要求する信号が車内通信部17を介して車載機器20に送信される。該要求信号に応じて、走行距離取得部215は、走行距離計41から走行距離を読み取って携帯電話10に送信することができる。
【0061】
こうして、運転者が車両に乗車して運転する度に、該運転の開始時の走行距離と該運転の終了時の走行距離が対となって取得されて、自身の携帯電話10のメモリ118に、履歴として蓄積される(走行距離履歴と呼ぶ)。たとえば、図5の(a)に示すように、運転を行うたびに、運転開始時の日時と走行距離、および運転終了時の日時と走行距離が、一つのレコードとして記憶され、走行距離履歴を作成していくことができる。
【0062】
携帯電話10に蓄積された走行距離履歴のデータは、様々な形態で、保険料算出に利用されることができる。これについて、以下に説明する。
【0063】
第1の形態では、携帯電話10の自動車保険のアプリケーションに、保険料計算のプログラムが含まれている。たとえば、入力操作部13を介したユーザからの何らかの入力操作に応じて、アプリケーション実行部111は、保険料計算プログラムを記憶部15から読み出して実行する。保険料計算プグラムの実行を介して、アプリケーション実行部111は、該携帯電話10の運転者の保険契約の保険期間の始期日(保険の補償が開始する日であり、開始日とも呼ぶ)から終期日(保険の補償が終了する日であり、終了日とも呼ぶ)までの間の上記の走行距離履歴(メモリ118に記憶されている)を参照し、当該期間における、各レコードの運転開始時の走行距離と運転終了時の走行距離の差を算出する。該差は、該運転において実際に走行した距離を示している。アプリケーション実行部111は、該プログラムの実行を介して、該差を、当該期間に記憶されたすべてのレコードについて累積(積算)する。
【0064】
たとえば、図5の(a)に示すように、保険期間の開始日(より正確には、保険契約で定められている、始期日の所定の日時)後の最初の運転において、運転開始時の走行距離がD1および終了時の走行距離がD2とすると、該差は、D2−D1により算出され、該差の累積値(初期値はゼロであり、以下、累積走行距離と呼ぶ)は、D3=D2−D1となる。次の運転において、運転開始時の走行距離がD5および終了時の走行距離がD6とすると、該差は、D6−D5により算出され、これが、累積走行距離の前回値D3に加算され、累積走行距離の今回値D4(=(D6−D5)+D3)が算出される。このような累積処理を、保険期間の終了日(より正確には、保険契約で定められている、終期日の所定の日時)前の最後の運転まで行うことにより、保険期間中に被保険者が実際に走行した走行距離(累積走行距離)を算出することができる。
【0065】
保険料計算プログラムは、該算出された累積走行距離を用いて、所定のアルゴリズムに従って、自動車保険の保険料計算を行う。なお、保険料計算のアルゴリズムは、該運転者が加入している自動車保険の内容等に依存して予め決まっており、よって、該自動車保険の保険会社から提供されるものを用いることができる。
【0066】
保険料計算を終えたならば、計算結果を表示するための画面を描画する命令が、表示制御部113に出力される。表示制御部113は、図3を参照したような手法で、該命令に従って、保険料の計算結果を表示するための画面をメモリ115(図3を参照、図4では省略されている)に出力(描画)し、これが読み出されてディスプレイ11に表示される。
【0067】
なお、携帯電話10が車載機器20に接続されている形態で保険料計算のアプリケーションが起動されたならば、図3を参照して述べたような手法で、計算結果の画面を、車載機器20の表示装置21に表示させることができる。また、携帯電話10が車載機器20に接続されている形態では、車載機器20の入力操作部23を介したユーザ操作に応じて、携帯電話10の保険料計算のアプリケーションを起動させるようにしてもよい。たとえば、入力操作部23を介したユーザ操作に応じた信号が携帯電話10に送信され、該信号に応じて、アプリケーション実行部111が保険料計算のプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0068】
上記では、運転開始時と終了時の走行距離の差の算出処理、および該差の累積処理は、保険料を計算する際に行われた。代替的に、車載機器20から、運転終了時の走行距離のデータを受信したときに、アプリケーション実行部111が、たとえば走行距離受信のプログラムを介して、該差の算出処理および該差の累積処理を行い、走行距離履歴としてメモリ118に記憶してもよい。たとえば、図5の(b)に示すように、運転を終了するたびに、運転開始時の走行距離と終了時の走行距離の差が算出され、該差の今回値(たとえば、図の(D6−D5))が、累積走行距離の前回値(たとえば、図のD3)に加算されることにより、累積走行距離の今回値(たとえば、図のD4(=D3+(D6−D5))が算出され、これが記憶されることとなる。
【0069】
上記の第1の形態では、保険料の計算自体が、携帯電話10に設けられた保険料計算のプログラムによって行われた。第2の形態では、所定の外部のサーバに、保険料計算プログラムを設け、該外部のサーバが保険料計算を行うようにしてもよい。ここで、図1の外部のサーバ32が該所定の外部のサーバとすると、携帯電話10の保険料計算のアプリケーションが、たとえば入力操作部13を介したユーザ操作に応じて起動されたならば、アプリケーション実行部111は、メモリ118に記憶された、保険期間における上記の走行距離履歴のデータを、通信部16を介して外部のサーバ32に送信する。
【0070】
外部のサーバ32は、該走行距離履歴のデータを受信する。サーバ32は、所定の保険料計算プログラムを実行することにより、該受信したデータを使用して保険料を計算する。計算された保険料を示すデータは、携帯電話10に返信される。アプリケーション実行部111は、受信した保険料のデータを、前述したように、表示制御部113を介してディスプレイ11に表示する。なお、前述したように、保険料計算で使用されるのは累積走行距離のデータであるので、運転開始時の走行距離および運転終了時の走行距離に代えて、両者の差、もしくは累積走行距離のデータをサーバ32に送信するようにしてもよい。
【0071】
さらに、第3の形態では、外部のサーバは、当該被保険者が契約している自動車保険の保険会社のサーバである。ここで、図1の外部のサーバ32が該保険会社のサーバとすると、携帯電話10の自動車保険のアプリケーションに含まれる前述した走行距離受信のプログラムが、車載機器20から受信した運転開始時および運転終了時の走行距離のデータを、携帯電話10の識別番号と共に、通信部16を介して該サーバ32に送信する。ここで、図5(a)に示すように、各走行距離のデータと共に、該走行距離を取得した日時のデータを送信してもよい。また、携帯電話10の識別番号は、携帯機器を識別可能なものであればよく、たとえば電話番号でよい。
【0072】
該送信のタイミングは、任意の適切な時期に設定されることができる。たとえば、車載機器20から走行距離のデータを受信したことに応じて自動的に、すなわち携帯電話10のユーザ操作を必要とすることなく、サーバ32に送信することができる。この場合、前述したように、車載機器20から受信した走行距離のデータをメモリ118に記憶することは必ずしも必要とされない。しかしながら、保険会社に送信したものと同じものを携帯電話10のメモリ118に残すことにより、たとえば何らかの故障(たとえば、通信エラー)等に起因して再送信等を行うのに利便性が向上する。代替的に、入力部13を介したユーザ操作に応じて、該送信を行ってもよい。
【0073】
サーバ32は、これらのデータを受信したならば該データを記憶する。保険会社のサーバ32には、被保険者毎に、対応する携帯電話10の識別番号が登録されて記憶されている。したがって、受信した携帯電話10の識別番号に基づいて被保険者を特定し、該被保険者毎に、図5の(a)または(b)に示すような走行距離履歴を生成することができる。こうすることにより、保険会社のサーバの記憶装置には、被保険者毎に、リアルタイムで運転毎の走行距離が記録されていくので、保険会社は、走行距離の累積状況を速やかに把握することができる。
【0074】
なお、この場合も、運転開始時の走行距離および運転終了時の走行距離のデータに代えて、両者の差、もしくは累積走行距離のデータをサーバ32に送信するようにしてもよい。たとえば、保険期間が満了したときに、該満了したときの累積走行距離のデータのみをサーバ32に送信するようにしてもよい。
【0075】
こうして、保険期間が満了したとき、保険会社は、保険期間が満了した時の累積走行距離を、被保険者毎に、自身のサーバ32で算出もしくは取得することができる。サーバ32は、該累積走行距離を用い、所定の保険料計算プログラムの実行を介して保険料を計算することができる。したがって、現在契約している保険契約の保険料が適切であったかどうかを、速やかに把握することができる。
【0076】
契約時においては、予定走行距離に基づいて保険料が決定されている。仮に、上記のように算出された累積走行距離が該予定走行距離より長くなると、累積走行距離に基づく保険料は、予定走行距離に基づく保険料より高くなり、差額保険料の支払いが必要となることがある。このような場合には、保険会社は、速やかにこれを把握して、携帯電話10への何らかの通知(たとえば、メール)により被保険者に知らせたり、差額保険料の支払いについて督促することができる。また、携帯電話10に設けられている電子マネーの決済機能によって、差額保険料を支払ってもらうことができる。従来は、自己申告によって実績の走行距離を保険会社に報告していたが、このような報告手続きが不要となり、また、被保険者にとっても、実績の走行距離の報告漏れを防止することができる。
【0077】
逆に、累積走行距離が該予定走行距離より短くなると、累積走行距離に基づく保険料は、予定走行距離に基づく保険料より低くなり、保険料の過払いが生じる。このような場合には、保険会社は、速やかにこれを把握して、携帯電話10への何らかの通知により被保険者に知らせることができる。また、たとえば翌年の保険料から割り引く旨の通知を行ったり、過払い分を被保険者に返却するよう電子クーポンや電子マネー等の形態で携帯電話10に送信することができる。従来は、自己申告によって実績の走行距離を保険会社に報告していたため、過払いが生じても、自動的に過払い分が何らかのサービスで被保険者に返ることは困難であった。この発明によれば、過払い分に応じたサービスを被保険者にフィードバックすることができるので、被保険者へのサービスを向上させることができる。
【0078】
また、こうして算出された該累積走行距離を、翌年度の保険契約の保険料を算出する際にも用いることができる。たとえば、今年度の該累積走行距離を、翌年度の予定走行距離として用い、該翌年度の保険契約の保険料を算出することができる。こうして算出された翌年度の保険料についても、保険会社のサーバ32は、携帯電話10を介して被保険者に知らせることができる。
【0079】
このように、車両を運転する際に携帯電話を車両に持ち込むだけで、運転者毎に実際の走行距離を簡単に把握して、保険料の計算に利用することができる。携帯電話は個人を識別することができるので、たとえば運転者を識別するために何らかのログイン操作を車載機器に対して行うというような従来の手法を必要とすることなく、被保険者を簡単に特定することができる。
【0080】
また、1つの車両を複数の運転者が共用する場合でも、携帯電話を車両に持ち込むだけで運転者毎の走行距離を把握することができるので、運転者毎に適切な保険料を算出することができる。たとえば、1つの車両を、保険料が比較的高く設定される20歳代の運転者と、保険料が比較的低く設定される50歳代とで共用する場合(たとえば、車両が家族共用の場合)、双方の運転者による走行距離の割合に応じた保険料を算出することができる。
【0081】
また、カーシェアリングシステムが実現されているが、このようなシステムにおいても、上記の手法により、運転者毎の走行距離を保険料に反映させることができる。したがって、各運転者のリスクに応じた保険料のみを運転者に負担してもらうことができ、保険料サービスの向上を図ることができる。
【0082】
なお、累積走行距離に基づく保険料を計算するには、上記のように、保険期間のデータが必要となり、これは、任意の適切な手法で取得することができる。たとえば、上記の第1および第2の形態では、携帯電話10の入力操作部13を介して、保険期間の開始日と終了日を、ユーザにより入力する。これにより、アプリケーション実行部111は、保険期間の開始日と終了日の間の上記の走行距離履歴をメモリ118から読み出すことができ、該読み出した走行距離履歴を用いて、保険料を計算することができる。上記の第3の形態では、外部のサーバ32が保険会社のサーバであるので、該サーバ32は、各被保険者の保険期間の開始日と終了日は認識している。したがって、携帯電話10から受信した該携帯電話10の識別番号から、対応する被保険者を特定し、該被保険者の保険期間の開始日と終了日の間の走行距離のデータに基づいて、該保険期間の累積走行距離を取得ないし計算することができ、よって、該累積走行距離に基づく保険料を計算することができる。
【0083】
一実施形態では、上記の運転毎の運転開始時および終了時の走行距離とは別個に、保険期間の開始日での走行距離と、終了日での走行距離とが走行距離計41から取得され、その差が算出される。該算出された差は、上記のように運転毎の走行距離に基づいて算出された、保険期間が満了したときの累積走行距離と比較される。このような比較を行うのは、累積走行距離の正確性ないし信頼性を判定するためである。
【0084】
たとえば、携帯電話10を車載機器20に接続することなく車両を運転すると、走行距離計41で表示される走行距離は増加していくが、携帯電話10に走行距離のデータが送信されないので、上記の累積走行距離は増加しない。このような状態では、正確な累積走行距離を把握することが困難である。したがって、保険期間が満了したとき、保険期間の開始日と終了日の走行距離の差と、該保険期間が満了したときの累積走行距離とを比較し、両者の差が所定値以下であれば、累積走行距離の信頼性が高いと判定して、該累積走行距離を用いた保険料を計算する。
【0085】
累積走行距離の信頼性を判定するためのものであるので、上記の差の算出および比較処理は、典型的には、第3の形態の、外部のサーバ32が保険会社のサーバである場合に、該サーバ32の保険料計算プログラムの一環で実行される。しかしながら、第1および第2の形態の、携帯電話10のアプリケーションに対応するプログラムに、該差の算出および比較処理を記述し、該プログラムの実行を介して該信頼性の判定を行うようにしてもよい。
【0086】
保険期間の開始日と終了日の走行距離の取得は、任意の適切な手法で実現されることができる。前述したように、第1および第2の形態では、入力操作部13を介したユーザ操作により、保険期間の開始日と終了日とを取得することができ、第3の形態では、保険会社のサーバが、該開始日と終了日を認識している。したがって、前述した走行距離履歴から、保険期間の開始日(前述したように、より正確には、契約における始期日について規定される所定の日時以降)の最初の運転の運転開始時の走行距離を、保険期間開始日の走行距離として取得すると共に、保険期間の終了日(前述したように、より正確には、契約における終期日について規定される所定の日時まで)の最後の運転の運転終了時の走行距離を、保険期間終了日の走行距離として取得することができる。
【0087】
代替的に、保険期間開始日と終了日の走行距離を、走行距離履歴のデータとは別個の手法で取得してもよい。たとえば、携帯電話10の自動車保険のアプリケーションに、保険期間開始日と終了日の走行距離受信のためのプログラムを含める。運転者は、保険期間の開始日に、前述したように、携帯電話10を車両に持ち込み、車載機器20に接続する。たとえば携帯電話10の入力操作部13を介したユーザ操作に応じて、または車載機器20の入力操作部23を介したユーザ操作に応じて、アプリケーション実行部111は、保険期間開始日の走行距離受信のプログラムを実行する。該プログラムの実行を介して、アプリケーション実行部111は、走行距離を要求する信号を、車載機器20に送信する。この信号に応じて、走行距離取得部215は、走行距離計41から走行距離を取得し、これを、携帯電話10に送信する。アプリケーション実行部111は、該受信した走行距離のデータを、保険期間開始日の走行距離として、メモリ118に記憶する。保険期間の終了日においても、同様の操作を行うことにより、保険期間の終了日の走行距離を取得することができる。こうして、携帯電話10には、保険期間の開始日と終了日の走行距離のデータが記憶されるので、該データを用いて、携帯電話10の保険料計算のプログラムは、上記の比較処理を行い、累積走行距離の信頼性を判定することができる。または、該データを、通信部16を介して外部のサーバ32に送信することにより、外部のサーバ32の保険料計算のプログラムが、上記の比較処理を行い、累積走行距離の信頼性を判定することができる。または、外部のサーバ32が保険会社のサーバである場合には、該データを、通信部16を介して保険会社のサーバに送信することにより、保険会社のサーバの保険料計算プログラムが、上記の比較処理を行い、累積走行距離の信頼性を判定することができる。
【0088】
1つの車両を一人の運転者が使用する場合には、運転毎に累積した累積走行距離は、保険期間の開始日と終了日の走行距離の差と、ほぼ等しくなるはずである。したがって、上記の比較処理により、累積走行距離の信頼性を判定することができる。しかしながら、1つの車両を複数の運転者が使用する場合には、該複数の運転者の累積走行距離を合計することにより、保険期間の開始日と終了日の走行距離の差と、ほぼ等しくなるはずである。したがって、保険会社のサーバは、1つの車両を複数の運転者が使用する場合は、該複数の運転者のそれぞれの累積走行距離を合計することによって、これら運転者の累積走行距離の信頼性を判定することができる。
【0089】
図6は、この発明の一実施形態に従う、走行距離取得部215によって実行されるプロセスのフローチャートを示す。このプロセスは、所定時間間隔で実行されることができる。
【0090】
ステップS11において、車両のイグニションがオンされたかどうかを判断する。車両のイグニションがオンされたならば、ステップS12において、走行距離計41から走行距離を取得し、該走行距離のデータを、運転開始時の走行距離のデータとして、携帯電話10に送信する。
【0091】
ステップS13において、車両のイグニションがオフされたかどうかを判断する。車両のイグニションがオフされたならば、ステップS14において、走行距離計41から走行距離を取得し、該走行距離のデータを、運転終了時の走行距離のデータとして、携帯電話10に送信する。
【0092】
車両のイグニションがオンもオフもされていなければ、当該プロセスを抜ける。
【0093】
図7および図8は、前述した第3の形態に基づいている。図7は、この発明の一実施形態に従う、アプリケーション実行部111で実行されるプロセス、より具体的には走行距離受信のためのプログラムのフローチャートを示す。このプロセスは、車載通信機器20から走行距離のデータが受信されたことに応じて実行されることができる。
【0094】
ステップS21において、車載機器20から、運転開始時の走行距離のデータを受信したかどうかを判断する。受信したならば、ステップS22において、該走行距離のデータを、メモリ118に、現在の日時と共に記憶する。
【0095】
ステップS23において、車載機器20から、運転終了時の走行距離のデータを受信したかどうかを判断する。受信したならば、ステップS24において、該走行距離のデータを、メモリ118に、現在の日時と共に記憶する。
【0096】
車載機器20から、運転開始時の走行距離のデータも運転終了時の走行距離のデータも受信されなければ、当該プロセスを抜ける。
【0097】
ステップS25において、該記憶された、運転開始時および運転終了時の走行距離のデータを、該携帯電話10の識別番号(電話番号)と共に、外部のサーバ32である保険会社のサーバへ送信する。サーバでは、該識別番号に基づいて被保険者が特定され、これにより、被保険者毎に、運転開始時および終了時の走行距離のデータが蓄積され、走行距離履歴が生成される。
【0098】
図8は、この発明の一実施形態に従う、外部のサーバ32が保険会社のサーバである場合に、該サーバにより実行されるプロセス、より具体的には保険料計算のためのプログラムのフローチャートを示す。この例では、被保険者毎に、保険期間が満了したときに、保険料計算を行うようにしている。
【0099】
ステップS31において、保険期間が満了したかどうかを判断する。保険期間が満了していなければ、当該プロセスを抜ける。保険期間が満了したならば、ステップS32において、図7のプロセスで受信されて記憶されている該被保険者の走行距離履歴のデータから、該保険期間中の走行距離履歴のデータを読み出す。
【0100】
ステップS33において、該読み出した走行距離履歴のデータに基づいて、該保険期間中の累積走行距離を計算する。すなわち、運転毎に、開始時の走行距離と終了時の走行距離の差を算出し、該差を、保険期間中のすべての運転について累積(加算)することにより、該累積走行距離を計算する。
【0101】
ステップS34において、保険期間の開始日の走行距離および終了日の走行距離を取得し、両者の差を算出する。前述したように、保険期間の開始日の走行距離および終了日の走行距離は、上記の走行距離履歴から取得してもよいし、該走行距離履歴とは別個に車載通信装置20から携帯電話10を介して取得されたものでもよい。
【0102】
ステップS35において、ステップS33において算出された累積走行距離と、ステップS34において算出された差とを比較し、両者の間の差の大きさ(絶対値)が所定値以下かどうかを判断する。所定値以下ならば(S35がYes)、累積走行距離の信頼性が高いと判定し(S36)、ステップS37に進む。ステップS37において、累積走行距離を用いて、所定のアルゴリズムにより保険料を計算する。所定値以下でなければ(S35がNo)、累積走行距離の信頼性は低いと判定し(S39)、当該プロセスを抜ける。
【0103】
ステップS38において、保険料を計算した結果、現在の保険料に対する過不足分(差額保険料)を算出し、該差額保険料に対応するサービスを提供する。前述したように、過払いの場合と払い不足の場合とがあり、それぞれに対応するサービスの処理を、ステップS38で自動的に起動して、携帯電話10に対して提供することができる。たとえば、払い不足の保険料通知するためのメールを携帯電話10に送信したり、過払いの保険料に対応する所定の電子クーポンを発行して、これを、携帯電話10に送信することができる。
【0104】
なお、信頼性が低いと判断された場合には、累積走行距離の信頼性が低い理由について調べるために、たとえば携帯電話10にメールを送信して運転者(被保険者)と連絡を取るような対応を行うことができる。
【0105】
なお、1つの車両を複数の運転者で共用する場合には、前述したように、これらの運転者の累積走行距離を加算し、該加算したものと、ステップS34で算出された差とを、ステップS35で比較すればよい。該加算したものと、該差との間の差の大きさが所定値以下ならば、これらの運転者の累積走行距離の信頼性は高いと判定し、そうでなければ、これらの運転者の累積走行距離の信頼性は低いと判定することができる。
【0106】
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0107】
10 携帯機器(携帯電話)
20 車載機器
41 走行距離計
215 走行距離取得部
32 外部のサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行距離を計測する走行距離計と、
前記車両に搭載され、携帯機器と通信可能なように接続された車載機器とを備え、
前記車載機器は、前記車両の運転者が加入する自動車保険の保険期間中に、該車両を該運転者が運転する度に、該運転の開始時の走行距離および該運転の終了時の走行距離を前記走行距離計から取得して、該走行距離のデータを前記携帯機器に送信し、
前記携帯機器、または、該携帯機器と通信接続可能な外部のサーバにおいて、該運転毎の運転の開始時の走行距離と終了時の走行距離の差を、前記保険期間中のすべての運転について累積することにより累積走行距離を算出し、前記自動車保険の保険料算出に用いる走行距離として、該累積走行距離を用いる、
保険料算出のためのシステム。
【請求項2】
前記外部のサーバは、前記自動車保険の保険会社のサーバであり、前記携帯機器は、該サーバが前記累積走行距離を用いた保険料算出を行えるように、前記運転毎の該運転の開始時の走行距離および該運転の終了時の走行距離、該開始時の走行距離と該終了時の走行距離の差、および該差を累積することにより算出される前記累積走行距離、の少なくとも一つを、該携帯機器の識別番号と共に、該サーバに送信する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記車載機器は、さらに、前記保険期間の開始日における走行距離および終了日における走行距離を前記走行距離計から取得して前記携帯機器に送信し、
前記携帯機器は、前記保険会社のサーバに、前記保険期間の開始日における走行距離と終了日における走行距離、および、該開始日における走行距離と終了日における走行距離の差、の少なくとも一方を送信し、
該サーバは、該開始日における走行距離と終了日における走行距離の差と、前記累積走行距離との比較に基づいて、該累積走行距離の信頼性を判定する、
請求項1または2に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−221579(P2011−221579A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86429(P2010−86429)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.JAVA
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)