説明

携帯用照明具

【課題】本発明は、電池の限られた電力で一定の範囲を明るく照明でき、面発光するため眩しくなく、輪郭が柔らかくぼけた自然な影が形成される、LEDを使用した携帯用照明具を提供する。
【解決手段】
本発明は、照明発光用の照射窓を有するフレーム内部に光源用LED、導光板を設置し、LEDはフレーム内の1つの隅に設置され、該隅から導光板に導入された導入光を導光板面上に形成された同心円形状のプリズム反射面から窓部外部に照明光とし照射する構成とし、フレームの一辺に電池収納用ハウジングを設けた携帯用照明具である。1/2照射角が13〜35度の範囲にあることが適当で、窓部の面積は40〜150mm2が適当で、フレームの厚さを4〜10mm2とするのが好ましい。導光板の出光面の反対側には反射板を設置することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板と発光ダイオードを用いた携帯用照明具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下LED)を光源として用いた懐中電灯や携帯用の電池式電灯が市場に出回っており夜間の歩行用照明、停電時の非常用照明などとして使われている。
【0003】
LED光源の懐中電灯は、配光が狭すぎること、また不自然な配光ムラが発生すること、点光源を直視すると非常に眩しいといった欠点がある。このため、読書や身繕い、長時間の作業やその他の一般的な生活用の照明具としてこれを使用する場合には不便であることが多い。
特許文献1では、ハンドバッグ、化粧ケースなどに入れて携帯するに適した形状の面状照明装置として、LEDと導光板を使用した携帯型面状照明装置が提案されている。
【0004】
この特許文献1によれば、導光板を用いて薄型で広い面積が発光する携帯用照明装置が提供される。広い面積が発光することで、点光源を直視したときに眩しいという問題は解消される。また、導光板からの照射光を正面方向に集める目的で導光板上にプリズムシートなどの光学シートを設けることが提案されており、限られた電力で必用な範囲を明るく照らすための機能も考慮されている。しかしながら、このような光学シートを用いる場合の配光角度は充分には狭く出来ない。稜線の直交する2枚のプリズムシートを使用した場合に最も強い集光機能が(すなわち最も狭い配光角度が)得られることが知られているが、その場合でも照射特性は1/2照射角度で40度程度である。また、このような構成では高価な光学シートを使用するため装置価格が上昇するといった問題も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−335227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、LEDを用いて広い面積から照射角度が適度に制御された照明光を照射でき、一定の範囲が明るく照明できる携帯用照明具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、略正方形もしくは略矩形形状の、4〜10mmのフレーム厚さを有する携帯用照明具であって、該フレームの片面には照射窓部分があり、照射窓部分以外の部分は光が漏れないように不透明樹脂で覆われており、フレームの一辺に電池収納用ハウジングがあり、フレーム内には一つの隅にLED光源が設置され該LEDからの発光光が導入される円形状もしくは四角形以上の多角形状の導光板があり、該導光板の裏面にはLED光源位置を略中心とする同心円状のプリズム反射面が配列形成されており、面光源として照射窓部から照射させる様に構成された携帯用照明具である。
【0008】
本発明の照明具は、LED光源を用い、導光板を設置したフレームの一つの隅から導光板内に入光させ、導光板面裏面に形成された同心円形状のプリズム反射面からフレームの窓部を通して照明光として照射することを特徴とする。
本発明の携帯用照明装置では、照射窓部全体が面発光するため、眩しさが抑えられ、輪郭が柔らかくぼけた自然な影が形成される。複数のLEDが直接並んで発光するような照明具においては、個々のLEDに対応して複数の影がずれて多重影が形成される。この不自然な多重影は目障りで利用者に不快感を与えるため問題となる。本発明の照明具によって形成される柔らかくぼけた影は不快感が無く好ましい。このため、一般的な生活行動にこれを使用した場合に好適で良質な照明を提供する照明装置となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広い面積の発光面を持った、極めて薄型の軽量・携帯用のLED照明具を実現することができる。この照明具はベルトなどに固定できる金具などの固定具を付属させることにより、夜間歩行時の腰部に携帯させ、歩行前面を幅広く照明することができる。また、暗所での身繕い、読書、その他諸々の作業において快適な照明を提供できる。この際、壁や点状から吊り下げる固定具を備えていると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の照明具の外観を示す正面及び側面図。
【図2】本発明の照明具の構成部品の透視レイアウトを示す正面及び側面図。
【図3】本発明の照明具の導光板の正面図。
【図4】導光板の側面断面における光の挙動を説明する図。
【図5】導光板の光の挙動を説明する斜視図。
【図6】入光面凹凸と暗部を説明する正面図。
【図7】出光面凹凸の実施例を模式的に示す斜視図。
【図8】照射角度分布の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の携帯用照明具の外観図であり、図2には特徴となる構成部品の透視レイアウト図を、図3には導光板の構造図示す。
照明具の片面には照射窓2があり、照射窓全体が発光するようになっている。フレーム1の一辺には電池6が配置されLEDと電気的接触を形成してある。収納電池は単5または単4など小型電池が好ましく、1〜6個程度が電池用ハウジング3内に収納される。LED5がフレームの一つの隅に設置され、この光源からの光を導光板4に設けた入光面8から導入すると導光面上の同心円状プリズム反射面10で反射し、照射窓から照射する。
導光板は照射窓2より一回り大きい発光領域7と入光面8からの光を広げる導光領域9からなる。照射窓が狭すぎる場合には眩しさが抑えられず、広すぎる場合には携帯に不都合となるため、照射窓の望ましい面積は40〜150cmである。
【0012】
本発明の照明装置では照射窓から適度に照射角度が制限された照射となっている。照射角度が制御されていることにより、電池の限られた電力で照らしたい一定の範囲を充分な明るさで照明することが可能となる。照射角度が広すぎると照度が低下する、連続点灯時間が短くなるという問題が発生する。一方で照射角度が狭すぎると照明範囲が狭くなりすぎ実用的に不都合である。望ましい照射角度として1/2照射角が15〜35度である。ここで1/2照射角度は、照射窓の法線中心方向に対して照度が半分となる位置どおしの成す角度を指す。照射角度は出光面に設けられる拡散パターンや導光板状に拡散フィルムを設けることによって適切にコントロールされる。
【0013】
導光板から指向性を持った光が出射される原理について、導光板4の断面を示す図4により説明する。LED5が発した光は、入光面8より導光板4の内部に入射され、上下の空気界面での反射を繰り返し伝播される。導光板の裏面には微小な同心円形状のプリズム反射面10が配列形成されており、プリズム反射面に当たった光は照射窓側に反射され出射される。ここで、プリズム反射面の角度αが約45度にあるときには、出射光の配光角度分布11は法線付近にピークを持つ分布となる。
【0014】
図5の斜視図で示すように、LED5から入光面8に入った光は導光板内を放射状に広がって伝播する。プリズム稜線は放射状に進行する光の進行方向と直交しており、反射面からの反射光は、法線方向にピークを持つ狭い照射角度の光を出射させる。(図4では反射プリズムの断面形状が分かりやすいように矩形の導光板形状とした)
【0015】
プリズム反射面が形成される発光領域は、照射窓の形状に相応する、あるいは一回り広い領域であることが望ましい。それによってプリズム反射面から反射されて導光板出光面から出射される光が無駄なく照射窓から照射される。プリズム反射面のピッチは0.1mm〜1mmの範囲が好ましい。ピッチが大きすぎると一本一本の反射プリズムがぎらついて光って見えるため好ましくなく、一方で細かすぎると成形工程で金型形状を忠実に転写できなくなるため照射角度の制御が充分に出来なくなる。
【0016】
入光面が平面であった場合、導光体内の光の広がり角度は導光板の材質の屈折率によって規定され、アクリル樹脂の場合には約86度で広がることになる。照射窓とLEDのレイアウトによって照射窓の周縁部まで光が広がらず図6aのように暗部12ができてしまうことになる。このような場合には周縁部まで自然な分布で発光させる目的で、図6bのように入光面に凹凸13を形成することが好適である。入光面凹凸によってより大きな角度まで放射状に広がり伝播するようになり暗部が解消される。
【0017】
本発明の導光板において、プリズム反射面から出射される光の照射角度は狭すぎるため、照射角度を適度に広げる光拡散手段を組み合わせることが好適である。このための方法としては次の2つの方法がある。
【0018】
一つは導光板の出光面側に光拡散用の部材を、空気層を介して積層する方法である。光を拡散する原理としては、表面にランダムな凹凸の形成された部材の表面屈折を利用する方法、屈折率差のあるフィラーを分散した部材の多重屈折を利用する方法、表面に特定の幾何パターンの凹凸を賦形した部材の表面屈折を利用する方法などが挙げられる。特に、入光面と平行方向の指向性が狭くなることから、その方向に強く光を散乱させるように、異方性の拡散能を有する拡散フィルム(例:恵和製オパルスPC−150)を配置することも好適である。この光拡散用部材は、導光板上のプリズム反射面のピッチが直接視認されてしまうことによるギラツキ感を解消する効果を持たせることもできる。
【0019】
他の方法は、導光板の出光面側に光を広げるための凹凸を形成する方法である。ただし、導光板表面の凹凸はそれ自体、導光板内を伝播する光を外部へ取り出してしまう作用もある。ここで取り出される光は適切な照射角度からは外れてしまうため、照明効率を悪化させる要因となる。したがって凹凸の形成パターンはこうした作用を抑えることを考慮したパターンであることが望ましい。それ自体から光を外部へ取り出してしまわないような凹凸形状は、導光体内を伝播する光の進行方向に対しては小さな傾斜とすることである。例として図7に示すように、直線状の稜線を持つ凸条14を入光面と垂直に配列したパターンが適用できる。凸条のピッチは、細かい方が肉眼で直視した場合に一本一本が識別できずに全体として柔らかく均一に発光しているように見え好ましく、0.05〜0.2mmが好ましい。
【0020】
以上の二つの光拡散手段は、双方を同時に適用することも可能で、これらの光拡散能を適宜選択することによって、最適な照射角度が実現されると同時に、照射窓を直視したときにギラツキが緩和され全体が柔らかく発光する高品位な照明具が提供される。
図8は、本発明の照明具の照射角度分布を実測した結果の一例である。ここで照射窓中心法線上を0°とし、入光面側をマイナスとしている。この測定結果では1/2照射角は17.5°となっており、40cm法線上の照度は135ルクスであった。LEDとして日亜化学製NSW150Tを1個使用し、単5アルカリ乾電池3個を使用している。LED電流115mAで、40cm離れた位置で充分に本を読める明るさが得られている。
【0021】
導光板の板厚は、全体に同一な平板形状としてもよいが、照明具を軽くする観点からは、入光対向方向に向かって徐々に薄くなるようなクサビ型とすることも好適である。
導光板の裏面に形成された反射プリズムから全ての光が照射窓側に反射されるのではなく、一部の光は裏側に透過してしまう。この透過光を有効に照明に利用するために、導光板の裏面外部には拡散反射性の部材が配置されていることが望ましい。白色のフレームを使用するか、より強い反射を持たせるために反射板を配置することが適宜行える。反射板としては白色の樹脂シートやマット加工したアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、銀蒸着フィルムなどが使用できる。
【0022】
本発明のフレーム形状は矩形、正方形などいずれの形状でも良いが、特に正方形または矩形状が好ましい。フレームはABS樹脂、ポリカーボネート樹脂など適宜の合成樹脂て形成され、その背面及び辺部は遮光性材料で遮光されており、前面に照明光を照射する窓部が設けられている。窓形状は円形、楕円形、矩形、正方形或いは多角形状とすることができる。導光板はアクリル樹脂やポリカーボネートなど透明樹脂で形成され、その厚さは全体の小型化、軽量化の観点から1〜4mm程度に薄くすることが好ましい。
【0023】
本発明の照明具に用いられるLEDとしては白色LEDが好ましいが、必要に応じて装飾用として赤、青などの単色LEDを用いてもよい。
必要に応じLEDの発熱を放熱するための機構を有する。放熱板として銅板やマグネシウム板などを反射板の裏側に設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明で構成された携帯用照明具は、従来の懐中電灯とは全く異なる装飾用照明としても用いることができる。また、軽量・小型化しているため前頭部など人体に装着して使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…フレーム
2…照射窓
3…電池収納用ハウジング
4…導光板
5…LED
6…電池
7…発光領域
8…入光面
9…導光領域
10…プリズム反射面
11…照射角度分布
12…暗部
13…入光面凹凸
14…凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略正方形もしくは略矩形形状の、4〜10mmのフレーム厚さを有する携帯用照明具であって、該フレームの片面には照射窓があり、照射窓部分以外の部分は光が漏れないように不透明樹脂で覆われており、フレームの一辺に電池収納用ハウジングがあり、フレーム内にはその一つの隅にLED光源が設置され、該LEDからの発光光が導入される円形状もしくは三角形以上の多角形状の導光板があり、該導光板の裏面にはLED光源と同心円状にプリズム反射面が配列形成され、導入光を面光源として照射窓から照射させる様に構成された携帯用照明具
【請求項2】
照射窓の照射特性が1/2照射角で13〜35度の範囲にあることを特徴とする請求項1の携帯用照明具
【請求項3】
照射窓の面積が40〜150cmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2の携帯用照明具
【請求項4】
導光板の表面(出光面)に直線状の稜線を持つ凸状を入光面と垂直に配列したパターンを有することを特徴とする請求項1、2または3の携帯用照明具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252989(P2012−252989A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134610(P2011−134610)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(591054303)コルコート株式会社 (27)
【Fターム(参考)】