説明

携帯通信端末機電源・モード切り替えシステム

【課題】
航空機内などの携帯通信端末機の使用禁止エリア、劇場などのマナーモード設定エリア等で外部送信機による電源オフ信号などの強制力を用いず、機器使用者の自発的行動で携帯通信端末機を公共モードへ移行または電源オフすることのできる携帯通信端末機システムを提供する。
【解決手段】
通信を制限する制限領域であることを通知したい地点に設置した送信機と、携帯通信端末機により構成され、送信機により送信される信号は携帯通信端末機の着信音を発生させることができる。
またこの信号は、着信音の種類、発生回数、公共モードに設定されている場合に着信音を発生させるか否か、および公共モードであってもバイブレーション機能が設定されている場合にこれを解除し着信音を発生させるか否かを指定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機内、病院内など、携帯電話機などに代表される携帯通信端末機の使用禁止エリア、心臓ペースメーカーなど携帯通信端末機によって誤作動が予測される機器周辺などで携帯通信端末機の電源をオフするための、および劇場、映画館などのマナーモード、ドライブモード(以下、公共モードと表記する)設定エリアで携帯通信端末機の電源を公共モードへの変更を促すための、方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯通信端末機は、従来固定使用であった電話機を自由に持ち歩け、かつ、使用圏外でない限りどのような場所においても使用でき、あるいはインターネットと接続できるなど有用性と利便性を有した機器である。
しかし、携帯通信端末機を電源オンの状態で携帯することで、ペースメーカーや航空機の電子機器が誤作動をおこすことが指摘され、重大な事故に発展する可能性がある。
また、劇場、映画館、公共交通機関、試験会場などでは携帯通信端末機の着信音、バイブレーターの振動音などにより、そのスペースの公共性が損なわれる恐れがある。
【0003】
これらの問題に対処する方法として、携帯通信端末機には公共モードが装備されるほか、車内・機内アナウンス、ポスターなどにより公共モードへの移行、電源オフへの切り替えを促しているが、携帯通信端末機が小型であり衣服内あるいは鞄などの中にしまった状態で携帯する場合が多いため、外見から公共モードへの移行、電源オフの状態であるかの確認が困難で、他の人が所持する電源オン状態の携帯通信端末機によって知らず知らずのうちに重大な事故が引き起こされるという危険性、静粛性が求められるスペースで突然着信音が鳴り出してその空間の公共性を損なう可能性が常に存在している。
この様な状況のもとで、携帯通信端末機利用者の自発的な操作に頼らずに、携帯通信端末機の使用を制限する方法として以下が提案されている。
【0004】
特許文献1では、特定の電波を送信する送信機によって、この電波を受信した携帯通信端末機の電源を自動的にオフする携帯電話機を開示している。
【0005】
特許文献2では、制限領域の出入り口に第1送信機と第2送信機を設け、その送信機から発せられる信号の受信パターンに応じて制限領域内での送信動作を禁止および解除させる構成が開示されている。
【0006】
特許文献3では、電源をオフにするだけでなく、マナーモードへも強制的に切り替えるモード切替システムを開示している。
【0007】
特許文献4では、制限領域に電源がオンになっている携帯電話が持ち込まれようとした場合に自動的に外部機器が警告を行う使用制限システムが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−308687号公報
【特許文献2】特開2001−78263号公報
【特許文献3】特開2005−277973号公報
【特許文献4】特開2000−175267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した1から3の特許文献はともに、携帯通信端末機に自動的に電源オフあるいはマナーモードへの移行を行わせることで問題の解決を図っている。
しかし、これらの制御方法は強制的な方法であり、この方法で電源がオフになることで重要な連絡を受けられなかったなどのトラブルが想定されるなど、強制的方法の行使には実現しがたい問題が存在する。
【0010】
特許文献4では外部機器により警告を行うが、複数の携帯通信端末機所持者がそのエリアにいた場合に誰の携帯通信端末機の電源がオンになっているか良くわからず、携帯通信端末機自体は依然として鞄などの中に隠れた状態にある場合が多く、電源オフすることをそれ以上促しづらいという問題があった。
本発明は、強制力を用いず機器使用者の自発的行動で上記課題を解決することのできる携帯通信端末機システムおよびセーフティーネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の本発明では、通信を制限する制限領域であることを通知したい地点に設置した送信機と、携帯通信端末機からなり、前記携帯通信端末機は前記送信機から送信された信号を受信する受信部を有する通信手段と、前記送信機から送信される信号により着信音(音声を含む。以下同じ)を発生させる制御手段を備えることを特徴とする通信システムである。
【0012】
請求項2記載の本発明では、前記送信機から送信される信号は、前記携帯通信端末機が内蔵する複数の着信音の中からいずれの着信音を発生させるか指定するコード(以下、着信音種別コードと表記する)を有する制御信号であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の本発明では、前記送信機から送信される信号は、発生させる着信音の発生回数を指定するコード(以下、着信音発生回数コードと表記する)を有する制御信号であることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の本発明では、前記送信機から送信される信号は、前記携帯通信端末機が公共モードに設定されている場合、着信音を発生させるか否かを指定するコード(以下、公共モード解除コードと表記する)を有する制御信号であることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の本発明では、前記送信機から送信される信号は、前記携帯通信端末機が公共モードに設定されている場合であってもバイブレーション機能が設定されている場合、着信音を発生させるか否かを指定するコード(以下、振動制御コードと表記する)を有する制御信号であることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の本発明では、前記携帯通信端末機は前記送信機から送信された信号に含まれる各コードにより、着信音を発生させるか否かを判定する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電源をオフにすることを希望するエリアの入り口に前記送信機を設置することで、電源オンの状態である携帯通信端末機が持ち込まれようとした場合、送信機から送信された信号により携帯通信端末機自体から着信音を発生させることができる。すなわち、電源がオンになっていることを着信音により周囲に通知することができる。その通知は前記従来の方法として開示されてきた強制力による方法とは異なり、制限を緩める方法で行うため利用者の理解を得やすい。
【0018】
また、着信音は携帯通信端末機が内蔵する複数の着信音の中から送信機の設置者側で選択できるため、あらかじめ携帯通信機共通の着信音を取り決めてこれを内蔵することで設置状況に応じた警告、案内メッセージを着信音として発生させることができる。
【0019】
また、設置状況に応じて発生回数もコントロールすることができる。この機能により上記エリアが固定的なエリアでなく心臓ペースメーカー設置者周辺など可動エリアであった場合、携帯通信端末とエリアの相対位置を把握して着信音を発生させることが可能である。
【0020】
更に、公共モードとすることを希望するエリアにおいても、同様の方法で公共モードへ移行することを促すことができ、この場合、すでに公共モードに設定してある携帯通信端末機については着信音を発生させない。
【0021】
また、公共モードに設定している場合であっても、より静粛性が求められ、バイブレーション機能に設定していることで、バイブレーターから発生される振動音が懸念されるエリアではバイブレーション機能の解除を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の実施の形態1を示す説明図である。
この説明図では病院の玄関、航空機の搭乗口、劇場など携帯通信端末機の持込が制限されるエリアの入口での制御を想定している。
【0023】
送信機1は携帯通信端末機の使用制限のない無制限領域Aと、携帯通信端末機の使用が制限されているため電源をオフあるいは発信音を鳴らさない状態にセットしなければいけない制限領域Bとの境界部付近に設置されている。具体的には制限領域Bの周りを囲む壁3に設けられた出入り口3a付近に設置されている。なお図1においては、壁3の外側の領域が無制限領域Aであり、壁3の内側が制限領域Bである。
また、送信機1を囲む小区域Cは、携帯通信端末機2が送信機1から送信された信号Pを検出できる範囲を示している。
【0024】
無制限領域Aから制限領域Bへ、電源がオンになっている携帯通信端末機2が持ち込まれるとき、小区域Cを通過することで、携帯通信端末機2は信号P1を受信する。
携帯通信端末機2は信号P1の制御コードと携帯通信端末機自体のモードを判定し、制御コードに抵触する場合公共モード設定の如何にかかわらず着信音を発生する。
【0025】
図2は本発明の実施の形態2を示す説明図である。
この説明図では心臓ペースメーカー設置者など携帯通信端末機の使用制限エリアが移動する場合の制御を想定している。
【0026】
携帯通信端末機の使用が制限されているため電源をオフあるいは発信音を鳴らさない状態にセットしなければいけない制限領域は携帯通信端末機の使用制限のない無制限領域Dの中で自由に移動できる。送信機4は制限領域Eの中心部付近にあり、制限領域とともに移動できるように設置されている。
【0027】
また、送信機4を囲む小区域Eは、携帯通信端末機5が送信機4から送信された信号P4を検出できる範囲を示し、上記制限領域と近似している。(以降、この小区域Eを制限領域Eと表記する)
【0028】
無制限領域Dから制限領域Eへ、電源がオンになっている携帯通信端末機5が持ち込まれるとき、携帯通信端末機5は信号P4を受信する。
携帯通信端末機5は信号P4の制御コードと通信機自体のモードを判定し、制御コードに抵触する場合公共モード設定の如何にかかわらず着信音を発生する。着信音は携帯通信端末機5が制限領域E内にある限り信号P4を受信して発生し続けるが、制限領域E外へ移動すると制御コードで求められた回数を発生した後に停止する。
【0029】
図3は、図1、2に示す通信システムを構成する送信機の一例を示すブロック図である。
【0030】
送信機は、アンテナ6、無線送信部7、制御部8、およびメモリ9を有する。
制御部8は端末の制御全般を行う装置であり、他のモジュールと直接または間接的に接続されている。メモリ9は制御部8のプログラム、制御内容および処理結果などを格納するための記憶装置である。無線送信部7は、制御部8によって制御された信号を、アンテナ6を通して送信する。
【0031】
図4は、図1、2に示す通信システムを構成する携帯通信端末機の一例を示すブロック図である。
【0032】
携帯通信端末機は、制御部10、メモリ11、アンテナ12、無線(送)受信部13、音声入力部14、音声出力部15、バイブレーター16、ディスプレイ17、操作入力部18を有する。
【0033】
制御部10は端末の制御全般を行う装置であり、他のモジュールと直接または間接的に接続されている。メモリ11は制御部10のプログラム、着信音、制御内容および処理結果などを格納するための記憶装置である。無線(送)受信部13は、制御部10によって制御された信号を、アンテナ12を通して送信する。図示されているアンテナ12および無線(送)受信部13は、図1に示す送信機1から送信される信号P1、図2に示す送信機4から送信される信号P4を受信する手段であるが携帯通信端末機が行う通話や通信のための電波信号等を(送)受信するためのものと同一であっても、別であっても差し支えない。(本図では同一として表している)
【0034】
音声入力部14には符号化部とマイクがあり、マイクで集音した音を電気信号に変換して制御部へ送る。音声出力部15は、音源部とスピーカーを備え、スピーカーの音量や発音の可否を自由に設定できる。バイブレーター16は物理的振動を発生して端末全体を振るわせる。
ディスプレイ17は、情報を視覚的に提示する。操作入力部18はボタンやキーなどで端末に対し信号を発生する。
【0035】
図5は、図1、2に示す通信システムの携帯端末機における信号受信処理の一例を示す流れ図である。
まず、ステップS1で送信機から送信された信号を検出したかどうかチェックする。信号を検出しなければステップS6で電源OFFになっていないことを確認し、再びステップS1で信号の検出を行う。
信号を検出すると、現在公共モードの設定中であるか否かの自己チェックをステップS2で行う。公共モードに設定されていない場合は着信音を発生させるステップS7へ進む。
【0036】
公共モードの設定中である場合はその後ステップS3でバイブレーション機能の設定状態を自己チェックし、設定状態であった場合は信号に付加された振動制限コードの有無をステップS4でチェックするが、ここで振動制限コードが付加されている場合には着信音を発生させるステップS7へ進む。
ステップS3でバイブレーションが設定されていない場合、およびS4で振動制限コードが付加されていない場合、ともに公共モード解除コードが付加されているか否かチェックするステップS5へ進む。ステップS5で公共モード解除コードが付加されている場合には着信音を発生させるステップS7へ進むが、付加されていない場合にはステップS6で電源OFFになっていないことを確認し再びステップS1で信号の検出を行う。
【0037】
ステップS7では着信音種別コードを確認した後、ステップS8で着信音発生回数コードを確認し、次にステップS9で指定された着信音を指定された回数発生する。着信音発生後はステップS10で電源OFFになっていないことを確認し再びステップS1で信号の検出を行う。
ステップS6およびステップS10で電源OFFが確認された場合には処理を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態2を示す説明図である。
【図3】図1、2に示す通信システムを構成する送信機の一例を示すブロック図である。
【図4】図1、2に示す通信システムを構成する携帯通信端末機の一例を示すブロック図である。
【図5】図1、2に示す通信システムの携帯端末機における信号受信処理の一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0039】
1 送信機
2 携帯通信端末
3 壁
3a 出入り口
4 送信機
5 携帯通信端末機
6 アンテナ
7 無線送信部
8 制御部
9 メモリ
10 制御部
11 メモリ
12 アンテナ
13 無線(送)受信部
14 音声入力部
15 音声出力部
16 バイブレーター
17 ディスプレイ
18 操作入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信を制限する制限領域であることを通知したい地点に設置した送信機と携帯通信端末機からなり、前記携帯通信端末機は送信機から送信された信号を受信する受信部を有する通信手段と、前記送信機から送信される信号により着信音(音声を含む。以下同じ)を発生させる制御手段を備える通信システムである。
【請求項2】
前記送信機から送信される信号は、前記携帯通信端末機が内蔵する複数の着信音の中からいずれの着信音を発生させるか指定するコード(着信音種別コード)を有する制御信号。
【請求項3】
前記送信機から送信される信号は、発生させる着信音の発生回数を指定するコード(着信音発生回数コード)を有する制御信号。
【請求項4】
前記送信機から送信される信号は、前記携帯通信端末機がマナーモード、ドライブモードなど(以下、公共モードと称する)に設定されている場合、着信音を発生させるか否かを指定するコード(公共モード解除コード)を有する制御信号
【請求項5】
前記送信機から送信される信号は、前記携帯通信端末機が公共モードに設定されている場合であってもバイブレーション機能が設定されている場合、着信音を発生させるか否かを指定するコード(振動制御コード)を有する制御信号
【請求項6】
前記携帯通信端末機は前記送信機から送信された信号に含まれる各コードにより、着信音を発生させるか否かを判定する制御手段を備える通信システム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−40915(P2011−40915A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185325(P2009−185325)
【出願日】平成21年8月8日(2009.8.8)
【出願人】(709004662)
【Fターム(参考)】