説明

携帯電話装置

【目的】 一旦電源をオフにした後に電源を回復した際、記憶していたチャンネルの電界の強さ及びコントロールデータを使用して、電界の最大点の探索を繰り返すこと無く、最大の電界を持つ適合システムにいち早く同調することにより、待機、ページ,通話に入る携帯電話を提供する。
【構成】 電源オフ直前の同調およびベストリストのコントロールチャンネルに関するデータをCPUブロック内不揮発性メモリ23に保持し、電源回復後においては、このコントロールチャンネルに最初に同調し、メッセージデータを受信することにより、エラーがあるときと無いときで電源オフ時と回復時の位置の移動を判断し、移動していないときは、そのまま動作を続ける一方、移動したと判断したときには、ベストリスト作成処理を行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電話装置、特に無線通信による携帯電話、区域内携帯電話に関する。
【0002】
【従来の技術】図3は、一般的なセルラー方式アナログ携帯電話のブロック図である。以下に、この携帯電話の構成を作用と共に説明する。まず、受信動作について説明する。アンテナから入力された高周波信号(以下、RF(radio frequency)信号という)は、RFフィルタ、RFアンプ1にて入力受信RF信号だけが取り出され増幅される。同調用のVCORX(受信側 voltage controlled oscillator)7は、TCXO(temperature compensated crystal oscillator)で構成されており、CPU23からの制御信号によりPLL(phase locked loop)周波数シンセサイザ(可変分周器)9の信号を受けて基準クロック信号を作り出す。この基準クロック信号とRFアンプ1からのRF信号とを第1MIX回路2でミキシングし、トランジスタの非直線部分を使って発生する周波数スペクトラムの差分のみを1Fフィルタ、1Fアンプ回路3を通して取り出す。これにより第1中間周波数を取り出す。
【0003】次にTCXOを利用して、又は他の発振回路で、VCOIF(VCO intermediate frequency)8として一定のクロック信号を発生し、このクロック信号と第1中間周波数とを第2MIX回路4において、上述した第1中間周波数取り出しと同様な手法でミキシングを行い、IFフィルタ、IFアンプ回路5を通して第2中間周波数を取り出す。この第2中間周波数信号検波回路6で帯域制限をかけつつ検波し、復調する。この処理後に、音声信号部分は音声帯域のLPF(low−pass filtor)回路17で取り出されることになる。音声信号(相手機の送信側で圧縮されている)は、音声伸張回路18で伸張され、音声処理回線制御回路15において、スピーカやイヤホーンなどに供給できるような信号とするための増幅処理やインピーダンス変換などが行われ、スピーカ、リンガーに出力される。
【0004】また、メッセージなどのディジタルデータは、検波復調の後にBPF(バンドパスフィルタ、band−pass filtor)19を通ることで高周波成分がカットされ、CPU23からの制御信号により、ゲートアレイ(gatearray)やDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)などで構成されるデータ復調回路20を経て復号や誤り訂正などの処理が行われる。次に、これらのデータは、CPU23でメモリ(RAM)に格納され、この格納されたデータ(メッセージなど)に基づいた処理をCPU23が行う。
【0005】次に、送信動作について説明する。ユーザより発せられたマイクからの音声信号は、音声処理回線制御回路15で電気信号に変換され,さらに、音声圧縮回路14で圧縮処理される。また、メッセージなどのディジタルデータについては、CPU23からのコントロールでメモリ(RAM)内の各種テーブルを用いることによりデータ変調回路21においてコード変換や誤り訂正が行われる。また、アナログデータについては、監視用トーンがあり、変調回路21で受信側のトーンを利用して、そのまま増幅または、再発生される。なお、DTMF信号についても同様の経路を経て送出される。音声やデータは、変調MIX回路12で変調をかけられ、更に、設定チャンネルに応じたVCOTX11からの信号とミキシングされる。そして、必要な周波数成分だけがRFフィルタRFアンプ回路13で取り出され、さらに、パワーアンプで電力増幅され、その上で出力分だけを効率良くアンテナを通して送出するようになっている。
【0006】なお、表示処理回路24は、LEDやLCDなどの表示素子のコントロール、キーの制御を行う回路である。また、DTMF及びメロディ発生回路22はCPU23の指示のもとで作動する。レベル検出回路10はベストリスト(与えられた受信コントロールチャンネルの電界感度レベルの高い順に並べたリスト)作成に際して各チャンネルの電界の受信感度レベルを検出するものである。
【0007】図4は、携帯電話装置において行われる処理の概要を示したものであり、CPU23の制御のもと電源投入処理L1、初期化処理L2、ページングチャンネル選択処理L3、アイドル処理、ページ応答処理、オーダー、応答待機処理、オリジネーション処理、オーダー応答処理、会話処理、会話解除処理、出力停止システム決定処理、自主登録処理、ハンドオフ処理がなされる。
【0008】電源投入処理L1から、アイドル処理迄の具体的内容は図5に示す通りであり、初期化処理L2や、ページングチャンネル選択処理L3等においては、CPU23の指示のもとで、ベストリスト作成処理が行われる。これは、携帯電話が移動体であることから、各セル(基地局の担当地域)に有るか否かを、携帯電話自身で確認するために行うものであり、当該ベストリストに基づいて感度最大点からチャンネルを合わせてデータを捉えるようにしている。なお、以上の処理、フローは携帯電話装置において広く採用されている技術であるため、その目的、内容等の説明は省略する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の無線通信による一般の携帯電話では、図4のフローチャートに示したように、ベストリストを取る作業がある。ところで、コントロールチャンネルは、セルラー方式アナログ携帯電話では、20チャンネル以上有るのが通例であリ、チャンネルを移動してPLL(フェーズロックドループ)がロックするまで1チャンネル当たり20ms程度の時間がかかり、このため、全チャンネルをスキャンするのに400ms以上必要とする事になる。このため、通話中に電池が切れる等の理由により、一旦通話停止、電源断がなされ、しかる後、電池の換装等により電源が回復し、ユーザが通話を再開すべく新たに発呼操作をなす場合等に、全チャンネルのスキャンがなされる前にユーザは既に発呼のための押しボタン操作を開始しており、ひいては、発呼操作のやり直し、かけ間違い等が生じる等の不都合がある。本発明は、かかる電源のオン、オフに際しては、通常は携帯電話はほぼ同一地点にいる点に着目し、ベストリストの作業を中止して、発呼、着呼迄に入れる準備時間を短縮し得る携帯電話を提供する事を目的とするためなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係わる一般の公衆電話回線とは別に無線通信により複数の電話機と会話及びコントロールデータの送受信ができる携帯電話装置においては、チャンネルの電界の強さを検知する電界検知手段と上記電界検知手段からの情報による電源切断直前のチャンネルの電界の強さと通信制御手段からの電源切断直前のコントロールデータに関する情報とを電源切断にもかかわらず記憶しておく不揮発生記憶手段と、電源回復時に上記不揮発性記憶手段の記憶している電界の強さとコントロールデータに関する情報を使用することより電界の最大点の探索を繰り返すこと無く、最大の電界の強さを持つ適合システムにいち早く同調し、待機、ページ、通話に入らせる制御手段とを有していることを特徴としている。
【0011】
【作用】上記構成により、本発明に係わる携帯電話装置においては、電源が一旦断となった後に電源が回復した場合には、不揮発性記憶手段が記憶している電源切断直前のチャンネルの電界の強さとコントロールデータに関する情報をもとに制御手段が電界の最大点の探索を繰り返すこと無く、最大の電界の強さを持つ適合システムにいち早く同調し、待機、ページ、通話に入らせる。
【0012】
【実施例】本発明に係わる携帯電話装置を実施例に基づき説明する。図1は本発明に係わる携帯電話装置の一実施例の回路構成図であり、基本的には従来技術に係わるものと同じである。このため、従来技術に係わるものと同じ構成回路については同一の番号を付すことによりその説明は省略する。
【0013】ただ、電源が断となってもその内容が消去されない不揮発性メモリ23aをCPU23に内蔵している点がことなる。更に初期化処理、ページングチャンネル選択処理等の基本的フロー及びこれらのフローがCPU23の制御、指示のもとでなされることも同じである。このため、本発明に係わる携帯電話装置においても、図4に示す従来技術に係わる携帯電話装置の処理フロー図はそのまま適用しうる。ただ、初期化処理やページングチャンネル選択処理等で行うベストリスト作成処理が異なる。
【0014】また、これら回路構成、処理内容の相違、すなわち本発明に係わる機能発揮のためCPL23に内蔵されているプログラム等には所要の改良がなされているのは勿論である。次に、本発明に係わるベストリスト作成処理のフローを図2を基に説明する。本図は従来技術に係わる携帯電話装置における初期化とページチャンネル選択の処理フローを示す図5に相応するものである。なお、電源投入処理L1は従来技術に係わるものと異ならない。
【0015】次に図4に示す初期化処理L2の処理に相当する処理の内容であるが、先ず第1に、電源をオン後の初めての初期化処理か否かが検査される(a1)。初めての場合、そのまま先の不揮発性メモリに記憶しているデータの(後述する)専用コントロールチャンネルに同調し、データの同期をとってパラメータオーバーヘッドメッセージの検査に入る(a4)。ここで、パラメータオーバーヘッドメッセージデータが誤り無く捉えきることができれば、電源オフした場所と、再度電源オンした場所が同じ基地局内にいる(位置の誤差の範囲)と考えられ、次のページングチャンネル選択処理L3に進む。従って、従来技術に係わる携帯電話装置にとっては不可欠の専用コントロールチャンネルをスキャンし、ベストリストを作成すること(a2)と、そのベストリスト順に同期をとっていく作業(a3)を省くことが可能となる。次に、電源をオフし、次回電源をオンしたとき、上記省略処理を可能とするために、CPU23はこの専用コントロールチャンネルに関するデータ(同期チャンネルデータ、ベストリスト等)を不揮発性メモリ23aに記憶する(a5)。
【0016】同様に、図4に示すページングチャンネル選択処理L3に相当する処理の内容であるが、先ず第1に、電源をオン後の初めてのページングチャンネル選択処理か否かが検査される(b1)。同時に、初期化処理でベストリストをとらずに同調しているかの検査も行う。どちらの検査ともに旨くいっている場合、そのまま先の不揮発性メモリに記憶しているデータの(後述する)ページングコントロールチャンネルに同調し、データの同期をとってパラメータオーバーヘッドメッセージの検査に入る(b4)。ここで、パラメータオーバーヘッドメッセージデータが誤り無く捉えきることができれば、電源オフしたときのこの移動機のページ、オーダー等個別メッセージを受信する場所と現在の個別メッセージを受信する場所が同じ基地局内にいる(位置の誤差の範囲)と考えられ、次のアイドルでこれらの信号を待機する処理(b6)に進む。従って、ページングコントロールチャンネルをスキャンし、ベストリスト作成すること(b2)と、そのベストリスト順に同期をとっていく作業(b3)とを省くことが可能となる。さらに、初期化の場合と同様、電源をオフし、次回電源をオンしたときに、上記省略処理を可能とするために、CPU23はこのページングコントロールチャンネルに関するデータ(同調チャンネルデータ、ベストリスト等)を不揮発性メモリ23aに記憶する作業(b5)も行っている。これにより、一旦電源オフ後、電源が回復した時の準備時間が大幅に短縮され、ひいては発呼動作がスムーズになされる。
【0017】以上、本発明を実施例に基づき説明したが、本発明は何も上記実施例に限定されるものではない。すなわち、例えばコントロールチャンネルに関するデータは、この段階で不揮発性メモリに書き込むのではなく、電源をオフする寸前にまとめて書き込むようにしてもよいのは勿論である。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、電池などの取り替えなどで電源を一旦オフにした後に、電源が回復したときに、過去の同調コントロールチャンネルを利用することにより、全コントロールチャンネルをスキャンし、ベストリストをとり、ベストリスト順に同期をとって同調する作業を省略できるため、発呼、着呼に入るまでの時間を大幅に短縮する事ができ、ひいては、発呼のやり直し、誤発呼等を防止しえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本説明に係わる携帯電話装置の一実施例のブロック図である。
【図2】上記実施例の本発明に係わる処理のフローチャートである。
【図3】従来技術に係わる携帯電話装置の一般的なブロック図である。
【図4】上記携帯電話装置の一般的な処理の概要を示すフロー図である。
【図5】上記携帯電話装置の一般的なアイドル迄の作業のフローチャートである。
【符号の説明】
10 レベル検出回路
23 CPU
23a 不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般の公衆電話回線とは別に無線通信により複数の電話機と会話及びコントロールデータの送受信ができる携帯電話装置において、チャンネルの電界の強さを検知する電界検知手段と、上記電界検知手段からの情報による電源切断直前のチャンネル電界の強さと通信制御手段からの電源切断直前のコントロールデータに関する情報とを電源切断にもかかわらず記憶しておく不揮発性記憶手段と、電源回復時に上記不揮発性記憶手段の記憶している電界の強さとコントロールデータに関する情報を使用することにより電界の最大点の探索を繰り返すこと無く、最大の電界の強さを持つ適合システムにいち早く同調し、待機、ページ、通話に入らせる制御手段とを有していることを特徴とする携帯電話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−153044
【公開日】平成5年(1993)6月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−316052
【出願日】平成3年(1991)11月29日
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)