説明

搾乳システムの洗浄装置及びその洗浄装置を用いた洗浄方法

【課題】 多機能性,多様性及び利用率を高めるとともに、哺乳瓶等の被洗浄物を自動洗浄可能にして洗浄性能(洗浄品質)を高める。また、搾乳設備全体の煩雑化を回避し、コストダウンに寄与する。
【解決手段】 搾乳システム50の少なくとも搾乳された乳Mを送る送乳ラインLmに、洗浄液槽3に収容された洗浄液Wを流して当該送乳ラインLmを洗浄する洗浄装置であって、搾乳システム50の送乳ラインLmにおけるミルクパイプ51の所定部位Xjに分岐部4を設け、この分岐部4により送乳ラインLmに流れる洗浄液Wの少なくとも一部を分流可能にする液流変更手段5を設けるとともに、この液流変更手段5により分流された洗浄液Wにより所定の被洗浄物Gを洗浄可能な洗浄ユニット2を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳システムにおける搾乳された乳を送る送乳ラインに洗浄液を流して洗浄する搾乳システムの洗浄装置及びその洗浄装置を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搾乳システムにおける送乳ラインに一又は二種類以上の洗浄液を流して当該送乳ラインを洗浄するようにした搾乳システムの洗浄装置としては、既に、本出願人が提案した特許文献1で開示される真空配管式搾乳機の洗浄装置が知られている。
【0003】
この洗浄装置は、洗浄槽と、洗浄水供給手段とを備えており、洗浄槽に満たした洗浄水にティートカップを浸せば、真空ポンプの真空圧によって洗浄水が吸引され、ティートカップを備える搾乳ユニット及びミルク輸送ライン、即ち、搾乳機(搾乳システム)を一巡した後、レシーバーに流入する。これにより、搾乳ユニット及びミルク輸送ラインを含む搾乳機は洗浄水により洗浄される。そして、洗浄水がレシーバーに満たされれば、レシーバー内の洗浄水はミルクポンプにより外部に排出され、廃棄又は洗浄槽に戻されるという基本的な洗浄動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−56288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1で開示される従来の洗浄装置は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
第一に、従来の洗浄装置は、搾乳機(搾乳システム)の洗浄を行う専用装置として構成されるため、他の用途(洗浄)には利用することができない。なお、洗浄槽を利用し、小物の被洗浄物などを手作業で洗浄することは可能であるとしても、利用の可能性はきわめて限定的となる。したがって、洗浄装置としての多機能性及び多様性が十分であるとは言えないとともに、利用率の観点からも難がある。
【0007】
第二に、搾乳機(搾乳システム)以外にも洗浄したい被洗浄物、具体的には、哺乳瓶が存在するが、このような哺乳瓶を洗浄する場合、従来は、専ら手作業に頼っていた。したがって、労力軽減を図り、作業能率及び作業性を高める観点からは、洗浄の自動化が望ましいが、別途、自動食器洗い機等の自動洗い機を用意する必要があり、搾乳設備全体のコストアップ及び煩雑化を招いてしまう。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した搾乳システムの洗浄装置及びその洗浄装置を用いた洗浄方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る搾乳システムの洗浄装置1は、上述した課題を解決するため、搾乳システム50の少なくとも搾乳された乳Mを送る送乳ラインLmに、洗浄液槽3に収容された洗浄液Wを流して当該送乳ラインLmを洗浄する洗浄装置であって、搾乳システム50の送乳ラインLmにおけるミルクパイプ51の所定部位Xjに分岐部4を設け、この分岐部4により送乳ラインLmに流れる洗浄液Wの少なくとも一部を分流可能にする液流変更手段5を設けるとともに、この液流変更手段5により分流された洗浄液Wにより所定の被洗浄物Gを洗浄可能な洗浄ユニット2を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る搾乳システムの洗浄装置1を用いた洗浄方法は、上述した課題を解決するため、搾乳システム50の少なくとも搾乳された乳Mを送る送乳ラインLmに、洗浄液槽3に収容された洗浄液Wを流して当該送乳ラインLmを洗浄する洗浄装置1を用いた洗浄方法であって、搾乳システム50の送乳ラインLmにおけるミルクパイプ51の所定部位Xjに、分岐部4を介して所定の被洗浄物Gを洗浄可能な洗浄ユニット2を接続し、送乳ラインLmを洗浄した洗浄液Wの少なくとも一部を分岐部4により分流させ、かつ洗浄ユニット2に供給することにより被洗浄物Gを洗浄することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る搾乳システムの洗浄装置1及びこの洗浄装置1を用いた洗浄方法は、好適な実施の態様により、搾乳システム50には、搾乳された乳Mを一時的に貯留するレシーバジャー52及びこのレシーバジャー52の乳出口52eに接続したミルクポンプ53を設けるとともに、分岐部4を設ける所定部位Xjとして、ミルクポンプ53の吐出口53e側に接続したミルクパイプ51(下流側ミルクパイプ51s)を選定できる。一方、液流変更手段5は、分岐部4に対して着脱可能な着脱部5sを一端に有し、かつ他端を洗浄ユニット2に連通させた洗浄液流入管部6を備えて構成してもよいし、或いは一端を分岐部4に連通させ、かつ他端を洗浄ユニット2に連通させた洗浄液流入管部6に接続して液流方向を変更可能な、又はミルクパイプ51と洗浄液流入管部6間に接続して液流方向を変更可能な、切換バルブ5vを備えて構成してもよい。この際、少なくとも洗浄液流入管部6に流れる洗浄液Wの流量を調整可能な流量調整手段7を設けることが望ましい。なお、被洗浄物Gには、少なくとも、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb,Gmc,Gmr),哺乳瓶Gmの関連部品の一又は二以上を含ませることができる。したがって、洗浄ユニット2には、少なくとも、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb,Gmc,Gmr),哺乳瓶Gmの関連部品の一又は二以上を所定の位置にセットするためのセッティング部8を設けることが望ましい。また、洗浄ユニット2には、被洗浄物Gに対して洗浄液Wを噴射して洗浄する一又は二以上の洗浄ノズル9…を設けることができる。さらに、この洗浄ユニット2には、洗浄に使用した後の洗浄液Wを自然落下により排出可能な自然落下排出手段10d又は洗浄に使用した後の洗浄液Wをミルクポンプ53の圧力により排出される他の洗浄液Wに合流させて排出可能な合流排出手段10mを設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る搾乳システムの洗浄装置1及びこの洗浄装置1を用いた洗浄方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 搾乳システム50の送乳ラインLmにおけるミルクパイプ51の所定部位Xjに分岐部4を設け、この分岐部4により送乳ラインLmに流れる洗浄液Wの少なくとも一部を分流可能にする液流変更手段5を設けるとともに、この液流変更手段5により分流された洗浄液Wにより所定の被洗浄物Gを洗浄可能な洗浄ユニット2を備えるため、洗浄装置1は、搾乳システム50を洗浄する機能に加え、洗浄ユニット2により送乳ラインLm以外の洗浄、即ち、他の被洗浄物Gの洗浄も可能になり、洗浄装置1における多機能性及び多様性を高めることができるとともに、利用率の向上にも寄与できる。
【0014】
(2) 分岐部4により分流された洗浄液Wにより所定の被洗浄物Gを洗浄可能な洗浄ユニット2を備えるため、送乳ラインLmの洗浄に加えて、哺乳瓶等の所定の被洗浄物Gも自動で洗浄することができ、所定の被洗浄物Gの洗浄における労力を軽減し、全体の作業能率及び作業性を高めることができるとともに、洗浄性能(洗浄品質)を高めることができる。しかも、別途の自動食器洗い機等の自動洗い機が不要になるため、搾乳設備全体の煩雑化を回避し、コストダウンにも寄与できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、搾乳システム50に、搾乳された乳Mを一時的に貯留するレシーバジャー52及びこのレシーバジャー52の乳出口52eに接続したミルクポンプ53を設けるとともに、分岐部4を設ける所定部位Xjを、ミルクポンプ53の吐出口53e側に接続したミルクパイプ51sを選定すれば、分岐部4を、ミルクポンプ53の吐出圧を利用可能な最適部位に設けることができる。したがって、洗浄ユニット2の洗浄能力を最大レベルに高めることができ、被洗浄物Gの洗浄を確実に行うことができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、液流変更手段5を、分岐部4に対して着脱可能な着脱部5sを一端に有し、かつ他端を洗浄ユニット2に連通させた洗浄液流入管部6を備えて構成すれば、洗浄ユニット2は、着脱部5sにより搾乳システム50の送乳ラインLmに対して着脱可能になるため、洗浄ユニット2は、子牛が生まれた必要なときだけ送乳ラインLmに接続すればよく、使用しないときは送乳ラインLmから離脱できる。したがって、洗浄ユニット2は、邪魔にならない場所に衛生的に保管可能となる。
【0017】
(5) 好適な態様により、液流変更手段5を、一端を分岐部4に連通させ、かつ他端を洗浄ユニット2に連通させた洗浄液流入管部6に接続して液流方向を変更可能な、又はミルクパイプ51と洗浄液流入管部6間に接続して液流方向を変更可能な、切換バルブ5vを備えて構成すれば、洗浄ユニット2を使用する際には、切換バルブ5vを切換操作すれば足りるため、洗浄ユニット2を容易かつ速やかに使用できる。
【0018】
(6) 好適な態様により、少なくとも洗浄液流入管部6に流れる洗浄液Wの流量を調整可能な流量調整手段7を設ければ、被洗浄物Gを洗浄する洗浄液Wの流量及び圧力を最適な状態に設定できるため、被洗浄物Gに対する洗浄能力を常に一定に維持できるとともに、大型又は小型など、様々なタイプの洗浄ユニット2に適応させることができ、汎用性を高めることができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、被洗浄物Gに、少なくとも、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb,Gmc,Gmr),哺乳瓶Gmの関連部品の一又は二以上を含ませれば、比較的洗浄頻度が高い哺乳瓶Gmに対する洗浄自動化及び洗浄性能アップを容易に実現できる。
【0020】
(8) 好適な態様により、洗浄ユニット2に、少なくとも、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb,Gmc,Gmr),哺乳瓶Gmの関連部品の一又は二以上を所定の位置にセットするためのセッティング部8を設ければ、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb…),哺乳瓶Gmの関連部品に対する洗浄時の位置や角度を設定できるため、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmr…),哺乳瓶Gmの関連部品に対する洗浄をより安定かつ良好に行うことができる。
【0021】
(9) 好適な態様により、洗浄ユニット2に、被洗浄物Gに対して洗浄液Wを噴射して洗浄する一又は二以上の洗浄ノズル9…を設ければ、洗浄ノズル9…から洗浄液Wを噴射できるため、被洗浄物Gに対する洗浄をより確実かつ良好に行うことができるとともに、特に、セッティング部8と組合わせることにより最良のパフォーマンスを発揮させることができる。
【0022】
(10) 好適な態様により、洗浄ユニット2に、洗浄に使用した後の洗浄液Wを自然落下により排出する自然落下排出手段10dを設ければ、簡易な構造により構成できるとともに、他方、洗浄に使用した後の洗浄液Wをミルクポンプ53の圧力により排出される他の洗浄液Wに合流させて排出する合流排出手段10mを設ければ、合流時の吸引(負圧)作用により洗浄ユニット2からの洗浄液Wの排出を、より効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の好適実施形態に係る洗浄装置の回路構成図、
【図2】同洗浄装置により洗浄する哺乳瓶及び哺乳瓶の構成部品を示す一部断面正面図、
【図3】同洗浄装置に備える洗浄ユニットの内部構造図、
【図4】同洗浄ユニットにおけるセッティング部及び洗浄ノズルの断面構成図、
【図5】同洗浄装置の洗浄パターンの一例を示すタイミングチャート、
【図6】同洗浄装置を用いた洗浄方法の処理手順を説明するフローチャート、
【図7】本発明の変更実施形態に係る洗浄装置の一部を示す回路構成図、
【図8】本発明の他の変更実施形態に係る洗浄装置の一部を示す回路構成図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
最初に、本実施形態に係る洗浄装置1により洗浄を行う搾乳システム50の概要及び被洗浄物Gとなる哺乳瓶Gmについて、図1及び図2を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、乳牛に対して搾乳を行うための搾乳システム50は、搾乳された乳Mを一時的に貯留するレシーバジャー52を備える。このレシーバジャー52には、ミルクパイプ51の一端及び他端をそれぞれ接続する。即ち、ミルクパイプ51は、一端をレシーバジャー52に接続し、乳牛が飼育される各ストール(不図示)に沿って配するとともに、他端もレシーバジャー52に接続する。各ストールに沿って配するミルクパイプ51は、図1中、仮想線で示す部分となる。また、四つのティートカップ57…を有する一又は二台以上の搾乳ユニット56…を備える。図1の搾乳ユニット56は、洗浄ポジションに移動させ、この洗浄ポジションにおけるミルクパイプ51に設けた洗浄用タップ51wに接続した状態を示すが、搾乳時には、搾乳を行う乳牛の近傍まで移動させ、その近傍に位置するミルクタップに接続して使用する。このミルクタップは図示を省略したが、各ストールの位置に対応してミルクパイプ51の所定位置に設けられる。
【0027】
レシーバジャー52には、モイスチャートラップ58を介して真空ポンプ59を接続するとともに、レシーバジャー52の近傍に位置するミルクパイプ51にはエアインジェクタ60を接続する。また、エアインジェクタ60とレシーバジャー52間のミルクパイプ51には開閉バルブ61を直列に接続する。さらに、洗浄用タップ51wとエアインジェクタ60間におけるミルクパイプ51には、エアインジェクタ60側が低くなる段差部51pを形成する。一方、レシーバジャー52の底部に設けた乳出口52eにはミルクポンプ53の吸入口53iを接続するとともに、このミルクポンプ53の吐出口53eは、ミルクパイプ51(下流側ミルクパイプ51s)を介してバルククーラ63に接続する。なお、レシーバジャー52の内部には、流入した乳M又は洗浄液Wが満たされたことを検出するフロートスイッチ等の液面検出器を備える。したがって、搾乳ユニット56,下流側ミルクパイプ51sを含むミルクパイプ51,レシーバジャー52,ミルクポンプ53,バルククーラ63は、搾乳システム50における少なくとも搾乳された乳Mを送る送乳ラインLmとなる。
【0028】
この搾乳システム50により搾乳を行う際は、搾乳ユニット56を、搾乳を行う乳牛の近傍まで移動させ、その近傍に位置するミルクタップに接続するとともに、各ティートカップ57…を乳牛の乳房に装着すれば、搾乳ユニット56により搾乳が行われ、搾乳された乳Mは、ミルクタップを介してミルクパイプ51に流入するとともに、ミルクパイプ51内を送乳された後、レシーバジャー52に流入する。レシーバジャー52に乳Mが満たされれば、液面検出器により検出され、ミルクポンプ53がONする。この結果、レシーバジャー52の乳Mは、乳出口52eから排出され、ミルクポンプ53及び下流側ミルクパイプ51sを送乳されてバルククーラ63に収容される。
【0029】
他方、図2には被洗浄物Gとなる哺乳瓶Gmを示す。例示する哺乳瓶Gmは、構成部品として、哺乳瓶本体部Gmb,固定キャップ部Gmc及びゴム製乳首部Gmrを備え、これらの哺乳瓶本体部Gmb,固定キャップ部Gmc,ゴム製乳首部Gmrもそれぞれ被洗浄物G…となる。したがって、哺乳瓶本体部Gmbに対して固定キャップ部Gmc及びゴム製乳首部Gmrを組付けることにより哺乳瓶Gmが構成される。なお、哺乳瓶の形態によって、分解することなく洗浄できる場合には、哺乳瓶Gmの全体を被洗浄物Gとして洗浄できる。また、被洗浄物Gとして、哺乳瓶Gmの関連部品(付属部品)を適用してもよい。このように、被洗浄物Gに、少なくとも、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb,Gmc,Gmr),哺乳瓶Gmの関連部品の一又は二以上を含ませれば、比較的洗浄頻度が高い哺乳瓶Gmに対する洗浄自動化及び洗浄性能アップを容易に実現できる。
【0030】
次に、搾乳システム50及び被洗浄物Gを洗浄する本実施形態に係る洗浄装置1の構成について、図1〜図4を参照して説明する。
【0031】
図1中、1は洗浄装置を示し、洗浄液Wを収容する洗浄液槽3,この洗浄液槽3に洗浄剤を供給する洗浄剤供給部71,洗浄ポジションの近傍に位置するミルクパイプ51に設けた複数の洗浄用タップ51w…を備える。洗浄剤供給部71から供給される洗浄剤には、アルカリ洗浄剤,酸リンス剤及び殺菌剤が含まれる。したがって、洗浄剤供給部71には、少なくとも、アルカリ洗浄剤を供給する第一供給部71a,酸リンス剤を供給する第二供給部71b,殺菌剤を供給する第三供給部71cを備える。また、バルククーラ63に至る下流側ミルクパイプ51sには三方切換バルブ72を直列に接続し、下流側ミルクパイプ51sを流れる洗浄液Wを、バルククーラ63側に流して廃棄する経路と、戻し管73を介して洗浄液槽3に戻す経路を選択可能に構成する。さらに、戻し管73の中途には三方切換バルブ74を接続し、洗浄液槽3に戻す経路と外部に廃棄する経路を選択可能に構成する。以上が本実施形態に係る洗浄装置1の基本構成となる。
【0032】
一方、洗浄装置1には、別途の洗浄ユニット2を備える。この洗浄ユニット2は、使用するときは搾乳システム50の送乳ラインLmに装着し、使用しないときは送乳ラインLmから離脱することができる。このため、送乳ラインLmにおけるミルクパイプ51の所定部位Xjには分岐部4を設け、この分岐部4(分岐側)に対して洗浄ユニット2を着脱可能に構成する。分岐部4を設ける所定部位Xjは、ミルクポンプ53の吐出口53e側に接続した下流側ミルクパイプ51sを選定する。このように、所定部位Xjとして下流側ミルクパイプ51sを選定すれば、分岐部4を、ミルクポンプ53の吐出圧を利用可能な最適部位に設けることができる。したがって、洗浄ユニット2の洗浄能力を最大レベルに高めることができ、被洗浄物Gの洗浄を確実に行うことができる。なお、分岐部4の径を選定することにより、ミルクパイプ51と分岐部4の分流割合を設定できる。分流とは一方が0になる場合を含む。
【0033】
また、洗浄ユニット2は、一端に着脱部5sを設け、かつ他端を洗浄ユニット2に連通させた洗浄液流入管部6を備える。この着脱部5sは、前述した分岐部4に連通する被着脱部4sに対して着脱させることができる。この場合、被着脱部4sと着脱部5sは、被着脱部4sに着脱部5sを挿入して接続した際には、接続が自動でロックされ、被着脱部4sと着脱部5sが連通するとともに、被着脱部4sから着脱部5sを離脱させる際は、ロック解除操作によりロックを解除し、被着脱部4sから着脱部5sを引抜くことができ、かつ引抜いた際には、被着脱部4sが弁部により自動で閉じられる機能を備えるワンタッチ管継手機構により構成する。
【0034】
これにより、分岐部4により送乳ラインLmに流れる洗浄液Wの少なくとも一部を分流可能にする液流変更手段5が構成され、被着脱部4sに着脱部5sを装着(接続)した際には、送乳ラインLmに流れる洗浄液Wの少なくとも一部が、分岐部4及び洗浄液流入管部6を通して洗浄ユニット2に供給される。このように、液流変更手段5を、分岐部4に対して着脱可能な着脱部5sを一端に有し、かつ他端を洗浄ユニット2に連通させた洗浄液流入管部6を備えて構成すれば、洗浄ユニット2は、着脱部5sにより搾乳システム50の送乳ラインLmに対して着脱可能になるため、洗浄ユニット2は、子牛が生まれた必要なときだけ送乳ラインLmに接続すればよく、使用しないときは送乳ラインLmから離脱できる。したがって、洗浄ユニット2は、別途、邪魔にならない場所に衛生的に保管可能となる。
【0035】
さらに、洗浄液流入管部6には、この洗浄液流入管部6に流れる洗浄液Wの流量を調整可能な流量調整手段7を設ける。例示の流量調整手段7は、洗浄液流入管部6の中途に一端を接続して分岐させたリリース配管部23と、このリリース配管部23の中途に直列に接続した流量調整バルブ24により構成する。これにより、流量調整バルブ24を調整すれば、被洗浄物Gを洗浄する洗浄液Wの流量及び圧力を最適な状態に設定できるため、被洗浄物Gに対する洗浄能力を常に一定に維持できるとともに、大型又は小型など、様々なタイプの洗浄ユニット2に適応させることができ、汎用性を高めることができる。また、流量調整バルブ24の下流側であってリリース配管部23の中途には三方切換バルブ25を直列に接続し、リリース配管部23を流れる洗浄液Wを、廃棄管26sを介して廃棄する経路と、戻し管26rを介して洗浄液槽3に戻す経路を選択可能に構成する。
【0036】
一方、洗浄ユニット2は、洗浄液流入管部6から供給される洗浄液Wにより所定の被洗浄物G、即ち、例示する哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb,Gmc,Gmr)を洗浄できるように構成する。洗浄ユニット2は、図3に示すように、外装となるキャビネット31を備え、このキャビネット31の内部には、哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb,Gmc,Gmr)、即ち、哺乳瓶本体部Gmb,固定キャップ部Gmc及びゴム製乳首部Gmrを所定の位置にセットするためのセッティング部8を備える。セッティング部8は、キャビネット31の内部における所定の高さに固定した水平の支持プレート32を備え、図4に示すように、支持プレート32の所定位置に、哺乳瓶本体部Gmbを支持する一又は二以上の瓶本体支持部32b…を設けるとともに、ゴム製乳首部Gmrを支持する一又は二以上の乳首支持部32r…を設ける。瓶本体支持部32bは、支持プレート32の上面から上方に起立し、哺乳瓶本体部Gmbの瓶口が挿入可能な円筒状に形成する。乳首支持部32rは、支持プレート32の上面から上方に起立し、ゴム製乳首部Gmrの先端口を貫通する棒状に形成するとともに、ゴム製乳首部Gmrの内壁面に当接して当該ゴム製乳首部Gmrの横方向変位を規制する規制リング32rsを有する。なお、瓶本体支持部32b…の内方及び乳首支持部32r…の下方に位置する支持プレート32には、洗浄ノズル9…又はこの洗浄ノズル9…から噴射された洗浄液Wが通る開口を設けてある。また、固定キャップ部Gmc…は、網製の袋又はボックスに入れ、キャビネット31の内部空間に配することができる。このようなセッティング部8を設ければ、哺乳瓶Gmの構成部品(Gmb…,Gmc…,Gmr…)をはじめ、哺乳瓶Gmや哺乳瓶Gmの関連部品に対する洗浄時の位置や角度を設定できるため、哺乳瓶Gm,哺乳瓶Gmの構成部品(Gmr…),哺乳瓶Gmの関連部品に対する洗浄をより安定かつ良好に行うことができる。
【0037】
さらに、キャビネット31の内部であって、支持プレート32の下方及び上方には、セッティング部8にセットされた哺乳瓶本体部Gmb…,ゴム製乳首部Gmr…及び固定キャップ部Gmc…に対して洗浄液Wを噴射して洗浄する一又は二以上の洗浄ノズル9…を配する。この場合、支持プレート32の下方には、哺乳瓶本体部Gmb…及びゴム製乳首部Gmr…の内側を洗浄する下ノズルユニット34を配設するとともに、支持プレート32の上方、即ち、哺乳瓶本体部Gmb…及びゴム製乳首部Gmr…の上方には、当該哺乳瓶本体部Gmb…及びゴム製乳首部Gmr…の外側を洗浄する上ノズルユニット35を配設する。下ノズルユニット34は、水平に配した基管部34sに、各洗浄ノズル9…を上方に向けて設けるとともに、上ノズルユニット35は、水平に配した基管部35sに、各洗浄ノズル9…を下方に向けて設ける。この際、下ノズルユニット34の各洗浄ノズル9…は、各哺乳瓶本体部Gmb…及び各ゴム製乳首部Gmr…に対応した位置に配するとともに、上ノズルユニット35の各洗浄ノズル9…は、キャビネット31の内部に均等に噴射できる配置とする。このような洗浄ノズル9…を設ければ、当該洗浄ノズル9…から洗浄液Wを噴射できるため、被洗浄物Gに対する洗浄をより確実かつ良好に行うことができるとともに、特に、セッティング部8と組合わせることにより最良のパフォーマンスを発揮させることができる。
【0038】
そして、各基管部34s及び35sの一端は、図1に示すように、洗浄液流入管部6に連通させるとともに、各基管部34s及び35sの他端は閉塞する。また、洗浄ユニット2には、キャビネット31の底面に一端を接続し、洗浄に使用した後の洗浄液Wを排出する排出管36eを設ける。この排出管36eの他端(下端)には三方切換バルブ37に接続する。これにより、排出管36eを流れる洗浄液Wを、廃棄管36sを介して廃棄する経路と、戻し管36rを介して洗浄液槽3に戻す経路を選択可能に構成する。この排出構造は、洗浄に使用した後の洗浄液Wを洗浄液槽3から自然落下により排出する自然落下排出手段10dとなる。したがって、洗浄ユニット2は、洗浄液槽3よりも上方の位置に配する。このような自然落下排出手段10dを設ければ、簡易な構造により構成できる利点がある。その他、洗浄ユニット2において、38は洗浄液流入管部6に接続した洗浄液Wの水圧を検出する圧力計を示す。
【0039】
他方、41は、搾乳システム50及び洗浄装置1の全体の制御を司るコントローラを示す。コントローラ41は、CPU,ROM,RAM等のハードウェアを有するとともに、各種プログラム、特に、本実施形態に係る洗浄方法を実行する洗浄モードの処理プログラム(シーケンスプログラム)を含む各種ソフトウェアを有するコンピュータ機能を備える。なお、コントローラ41には、図示を省略した操作部及び表示部が付属する。したがって、コントローラ41のセンサ入力ポートには、レシーバジャー52に備える液面検出器及び圧力計38等を接続するとともに、コントローラ41の出力ポートには、流量調整バルブ24,三方切換バルブ25,37,72,真空ポンプ59,ミルクポンプ53,エアインジェクタ60,開閉バルブ61及び洗浄剤供給部71等を接続する。
【0040】
次に、本実施形態に係る洗浄装置1を用いた洗浄方法を含む洗浄装置1の全体動作について、図1〜図6を参照して説明する。
【0041】
まず、洗浄ユニット2を使用しない場合の洗浄動作について、図5に示すタイミングチャートに基づいて説明する。
【0042】
この場合、送乳ラインLmに対して洗浄ユニット2は非装着(非接続)となる。したがって、着脱部5sは被着脱部4sに対して離脱状態にある。また、コントローラ41では洗浄モードが選択される。一方、搾乳ユニット56は、洗浄ポジションまで移動させ、図1に示す洗浄用タップ51wに接続するとともに、四つのティートカップ57…は洗浄液槽3の内部に収容する。
【0043】
最初に、洗浄液槽3の内部に水道水を供給し、図5に示すかけ流しのすすぎ処理S100を行う。この場合、エアインジェクタ60及び開閉バルブ61をそれぞれ閉側に切換えるとともに、三方切換バルブ72及び74を洗浄液槽3側に切換えた後、真空ポンプ59を作動させる。これにより、送乳ラインLmには、負圧が生じ、洗浄液槽3の水道水はティートカップ57…により吸入され、洗浄用タップ51wを介してミルクパイプ51に流入するとともに、この際、水道水は段差部51pに貯留される。水道水が段差部51pに満たされる時間(設定時間)に達したなら、エアインジェクタ60を開側に切換える。この結果、空気がミルクパイプ51に進入し、段差部51pに貯留された水道水は、スラグ流となってミルクパイプ51を一巡するように流れた後、レシーバジャー52に流入する。以上の動作を繰り返し、レシーバジャー52に水道水が満たされれば、液面検出器により検出されるため、ミルクポンプ53がONする。これにより、レシーバジャー52の水道水は、乳出口52eから排出され、ミルクポンプ53及び下流側ミルクパイプ51sを流れるとともに、戻し管73を介して洗浄液槽3に戻される。このすすぎ処理S100は、予め設定した時間(処理時間)だけ行なう。
【0044】
次いで、洗浄液槽3に、水道水を供給するとともに、洗浄剤供給部71の第一供給部71aからアルカリ洗浄剤を供給し、アルカリ洗浄液を生成する。そして、図5に示すアルカリ洗浄処理S101を行う。この場合、基本的な動作は、すすぎ処理S100と同様に行われる。このアルカリ洗浄処理S101は、予め設定した時間(処理時間)だけ行い、処理時間が経過したなら洗浄液槽3内のアルカリ洗浄液は廃棄する。次いで、洗浄液槽3に、水道水を供給し、図5に示す循環によるすすぎ処理S102を行う。この場合も、基本的な動作は、すすぎ処理S100と同様に行われる。このすすぎ処理S102は、予め設定した時間(処理時間)だけ行い、処理時間が経過したなら洗浄液槽3内の水道水は廃棄する。
【0045】
次いで、洗浄液槽3に、水道水を供給するとともに、洗浄剤供給部71の第二供給部71bから酸リンス剤を供給し、酸リンス液を生成する。そして、図5に示す酸リンス処理S103を行う。この場合も、基本的な動作は、すすぎ処理S100と同様に行われる。この酸リンス処理S103は、予め設定した時間(処理時間)だけ行い、処理時間が経過したなら洗浄液槽3内の酸リンス液は廃棄する。次いで、洗浄液槽3に、水道水を供給するとともに、洗浄剤供給部71の第三供給部71cから殺菌剤を供給し、殺菌液を生成する。そして、図5に示す殺菌処理S104を行う。この場合も、基本的な動作は、すすぎ処理S100と同様に行われる。この殺菌処理S104は、予め設定した時間(処理時間)だけ行い、処理時間が経過したなら洗浄液槽3内の殺菌液は廃棄する。
【0046】
なお、以上の動作は、バルククーラ63に乳Mが貯留されている場合の動作であるが、バルククーラ63に乳Mが貯留されていない場合には、三方切換バルブ72をバルククーラ63側に切換え、バルククーラ63に対する一連の洗浄処理を行った後、バルククーラ63の排乳管51oを介して洗浄液槽3内に戻したり、或いは外部に廃棄してもよい。
【0047】
次に、洗浄ユニット2を使用する場合の洗浄動作について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
この場合、送乳ラインLmに対して洗浄ユニット2を接続する(ステップS1)。即ち、被着脱部4sに着脱部5sを挿入して装着(接続)する。これにより、洗浄液流入管部6と分岐部4は連通状態となる。なお、コントローラ41では洗浄モードが選択される点、搾乳ユニット56は、洗浄ポジションまで移動させ、図1に示す洗浄用タップ51wに接続するとともに、四つのティートカップ57…は洗浄液槽3の内部に収容する点は、上述した洗浄ユニット2を使用しない場合と同じである。
【0049】
また、洗浄ユニット2を最初に使用する際には、流量調整バルブ24により流量調整を行う(ステップS2)。この場合、例えば、レシーバジャー52に水道水を収容し、ミルクポンプ53を作動させれば、水道水はミルクパイプ51sを流れ、一部が分岐部4を介して洗浄液流入管部6及び各ノズルユニット34,35に供給されるとともに、洗浄ノズル9…から噴射されるため、この際の噴射状態が最適となるように、流量調整バルブ24を調整する。調整が終了したなら、そのときの水圧を圧力計38により検出し、その検出値を記録する。この検出値は、後の設定等に利用できる。なお、この調整は実際の洗浄動作時に行ってもよい。
【0050】
一方、洗浄ユニット2のセッティング部8には、哺乳瓶Gm…の構成部品である哺乳瓶本体部Gmb…,ゴム製乳首部Gmr…及び固定キャップ部Gmc…をそれぞれセットする(ステップS3)。また、洗浄液槽3には、最初の洗浄液W、即ち、すすぎ用の水道水を供給する(ステップS4)。なお、エアインジェクタ60及び開閉バルブ61はそれぞれ閉側に切換えるとともに、三方切換バルブ72,74は洗浄液槽3側に、三方切換バルブ25は戻し管26r側に、三方切換バルブ37は戻し管36r側に、それぞれ切換える。そして、真空ポンプ59を作動させる(ステップS5)。これにより、図5に示すかけ流しのすすぎ処理S100が行われる。この場合、上述したように、送乳ラインLmに負圧が生じ、洗浄液槽3の水道水はティートカップ57…により吸入され、洗浄用タップ51wを介してミルクパイプ51に流入するとともに、段差部51pに貯留される。水道水が段差部51pに満たされる時間(設定時間)に達したなら、エアインジェクタ60を開側に切換える。この結果、空気がミルクパイプ51に進入し、段差部51pに貯留された水道水は、スラグ流となってミルクパイプ51を一巡するように流れるため、水道水によるミルクパイプ51の洗浄(すすぎ処理)が行われる(ステップS6)。そして、ミルクパイプ51を流れた水道水は、レシーバジャー52に流入する(ステップS7)。以上の動作を繰り返せば、レシーバジャー52に水道水が満たされ、この状態は液面検出器により検出される(ステップS8)。
【0051】
液面検出器による検出によりミルクポンプ53が作動する(ステップS9)。ミルクポンプ53の作動により、レシーバジャー52の水道水は、乳出口52eから排出され、ミルクポンプ53及び下流側ミルクパイプ51sを流れる(ステップS10)。そして、下流側ミルクパイプ51sを流れた水道水が分岐部4に至れば、水道水は分流され、一部が分岐部4を介して洗浄ユニット2に供給される(ステップS11)。これにより、洗浄ユニット2において水道水による洗浄、即ち、すすぎ処理S100が行われる(ステップS12)。なお、分岐部4において残りの水道水は、下流側ミルクパイプ51sを流れて洗浄液槽3に戻されるとともに、リリース配管部23を流れる水道水も洗浄液槽3に戻される。
【0052】
また、洗浄ユニット2において、下ノズルユニット34に供給された水道水は、洗浄ノズル9…から上方に噴射され、哺乳瓶本体部Gmb…及びゴム製乳首部Gmr…の内側の洗浄(すすぎ処理)が行われるとともに、上ノズルユニット35に供給された水道水は、洗浄ノズル9…から下方に噴射され、哺乳瓶本体部Gmb…及びゴム製乳首部Gmr…の外側の洗浄(すすぎ処理)が行われる。さらに、下ノズルユニット34及び上ノズルユニット35により固定キャップ部Gmc…の洗浄(すすぎ処理)が行われる。このすすぎ処理S100はかけ流しとなるため、使用された水道水は排出管36e及び戻し管36rを介して洗浄液槽3に戻される。なお、この際に上述した流量調整バルブ24による流量調整を行ってもよい。
【0053】
そして、レシーバジャー52に収容された水道水の排出が終了すれば、ミルクポンプ53は停止する(ステップS13,S14)。このすすぎ処理S100は、予め設定した時間(処理時間)だけ行い、処理時間が経過したならすすぎ処理S100は終了し、真空ポンプ59を停止(運転停止又は真空解除)する(ステップS15,S16)。この後、洗浄液槽3内の水道水は廃棄する(ステップS17)。廃棄が終了したなら、洗浄液槽3に、水道水を供給するとともに、洗浄剤供給部71の第一供給部71aからアルカリ洗浄剤を供給し、アルカリ洗浄液を生成する(ステップS18,S19)。この後、図5に示すアルカリ洗浄処理S101を行う(ステップS5…)。この場合、基本的な動作はすすぎ処理S100と同様に行われる。
【0054】
これ以降の洗浄動作は、図5に基づいて説明した洗浄ユニット2を使用しない場合の洗浄動作と同様の動作が行われるとともに、上述した洗浄ユニット2を使用する場合のすすぎ処理S100と同様の動作が行われる。即ち、アルカリ洗浄処理S101が終了した後は、循環によるすすぎ処理S102、酸リンス処理S103、殺菌処理S104が順次行われる。そして、全処理工程が終了したなら洗浄モードを終了させる。この際、送乳ラインLmから洗浄ユニット2を離脱させるなどの必要な終了処理を行う(ステップS18,S20)。なお、前述した洗浄ユニット2を使用しない場合と同様に、三方切換バルブ72をバルククーラ63側に切換え、バルククーラ63に対する一連の洗浄処理を行った後、バルククーラ63の排乳管51oを介して洗浄液槽3内に戻したり、或いは外部に廃棄してもよい。
【0055】
このように、本実施形態に係る洗浄装置1及びこの洗浄装置1を用いた洗浄方法によれば、搾乳システム50の送乳ラインLmにおけるミルクパイプ51の所定部位Xjに分岐部4を設け、この分岐部4により送乳ラインLmに流れる洗浄液Wの少なくとも一部を分流可能にする液流変更手段5を設けるとともに、この液流変更手段5により分流された洗浄液Wにより所定の被洗浄物Gを洗浄可能な洗浄ユニット2を備えるため、洗浄装置1は、搾乳システム50を洗浄する機能に加え、洗浄ユニット2により送乳ラインLm以外の洗浄、即ち、他の被洗浄物Gの洗浄も可能になり、洗浄装置1における多機能性及び多様性を高めることができるとともに、利用率の向上にも寄与できる。また、分岐部4により分流された洗浄液Wにより所定の被洗浄物Gを洗浄可能な洗浄ユニット2を備えるため、送乳ラインLmの洗浄に加えて、哺乳瓶等の所定の被洗浄物Gも自動で洗浄することができ、所定の被洗浄物Gの洗浄における労力を軽減し、全体の作業能率及び作業性を高めることができるとともに、洗浄性能(洗浄品質)を高めることができる。しかも、別途の自動食器洗い機等の自動洗い機が不要になるため、搾乳設備全体の煩雑化を回避し、コストダウンにも寄与できる。
【0056】
次に、本発明の変更実施形態に係る洗浄装置1について、図7及び図8を参照して説明する。
【0057】
図7に示す変更実施形態は、洗浄ユニット2に、洗浄に使用した後の洗浄液Wをミルクポンプ53の圧力により排出される他の洗浄液Wに合流させて排出する合流排出手段10mを設けたものである。したがって、戻し管36rの排出端を戻し管26rの中途に合流接続するとともに、廃棄管36sの排出端を廃棄管26sの中途に合流接続する。これにより、戻し管26r及び廃棄管26sに流れる洗浄液Wは、ミルクポンプ53の圧力により排出される他の洗浄液Wとなるため、戻し管36r及び廃棄管36sから排出される洗浄液Wには、合流時の吸引(負圧)作用が働き、洗浄ユニット2からの洗浄液Wの排出を効率的に行うことができる。
【0058】
図8に示す変更実施形態は、液流変更手段5を構成するに際し、一端を分岐部4に連通させ、かつ他端を洗浄ユニット2に連通させた洗浄液流入管部6に接続して液流方向を変更可能な切換バルブ5vを備えて構成したものである。この場合、洗浄液流入管部6と分岐部4は常時接続された状態となる。これにより、洗浄ユニット2を使用しない場合には、切換バルブ5vを切換えることにより洗浄液流入管部6を遮断状態にし、他方、洗浄ユニット2を使用する場合には、切換バルブ5vを切換えることにより洗浄液流入管部6を連通状態にすればよい。このような、切換バルブ5vを備えて構成すれば、洗浄ユニット2を使用する際には、切換バルブ5vを切換操作すれば足りるため、洗浄ユニット2を容易かつ速やかに使用できる。なお、切換バルブ5vを分岐部4に接続、即ち、ミルクパイプ51と洗浄液流入管部6間に接続して液流方向を変更可能に構成してもよい。これにより、切換バルブ5vは分岐部4を兼ねることになるが、同様の切換を行うことができる。
【0059】
また、図8は、分岐部4の下流側に位置する下流側ミルクパイプ51sに、流量調整バルブ24sを直列に接続した例を示す。この場合、分岐部4において分流の割合を設定できるため、前述した洗浄ユニット2側の流量調整バルブ24やリリース配管部23等は不要となる。なお、図7及び図8において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。
【0060】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0061】
例えば、分岐部4を設けるミルクパイプ51の所定部位Xjとして、ミルクポンプ53の吐出口53e側に接続した下流側ミルクパイプ51sを選定した場合を例示したが、レシーバジャー52とミルクポンプ53を接続する配管,バルククーラ63の排乳管51o等、他の部位を排除するものではない。したがって、当該排乳管51oもミルクパイプ51に含まれる。また、液流変更手段5における着脱部5sと被着脱部4sの着脱構造は、同一機能を発揮する他の公知の着脱構造を利用できるとともに、切換バルブ5vの構造も同一機能を発揮する他の公知の切換バルブを利用できる。さらに、流量調整手段7として流量調整バルブ24を用いる場合を示したが、流量を調整できる機能を有するものであれば、バルブ以外の機能部品であってもよい。なお、流量調整バルブ24は、洗浄液流入管部6に接続してもよい。他方、洗浄に使用した洗浄液Wは、必要により三方切換バルブ25,37,74等を介して外部に廃棄してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る搾乳システムの洗浄装置及びその洗浄装置を用いた洗浄方法は、搾乳システムの洗浄装置に追加して利用できるとともに、哺乳瓶等の搾乳システムで使用する各種被洗浄物の洗浄に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1:洗浄装置,2:洗浄ユニット,3:洗浄液槽,4:分岐部,5:液流変更手段,5v:切換バルブ,5s:着脱部,6:洗浄液流入管部,7:流量調整手段,8:セッティング部,9…:洗浄ノズル,10d:自然落下排出手段,10m:合流排出手段,50:搾乳システム,51:ミルクパイプ,51s:ミルクパイプ(下流側ミルクパイプ),52:レシーバジャー,52e:乳出口,53:ミルクポンプ,53e:吐出口,M:乳,Lm:送乳ライン,W:洗浄液,Xj:所定部位,G:被洗浄物,Gm:哺乳瓶,Gmb:哺乳瓶の構成部品,Gmc:哺乳瓶の構成部品,Gmr:哺乳瓶の構成部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳システムの少なくとも搾乳された乳を送る送乳ラインに、洗浄液槽に収容された洗浄液を流して当該送乳ラインを洗浄する洗浄装置において、前記搾乳システムの前記送乳ラインにおけるミルクパイプの所定部位に分岐部を設け、この分岐部により前記送乳ラインに流れる洗浄液の少なくとも一部を分流可能にする液流変更手段を設けるとともに、この液流変更手段により分流された洗浄液により所定の被洗浄物を洗浄可能な洗浄ユニットを備えることを特徴とする搾乳システムの洗浄装置。
【請求項2】
前記搾乳システムは、搾乳された乳を一時的に貯留するレシーバジャー及びこのレシーバジャーの乳出口に接続したミルクポンプを備えるとともに、前記ミルクパイプの所定部位として、前記ミルクポンプの吐出口側に接続したミルクパイプを選定してなることを特徴とする請求項1記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項3】
前記液流変更手段は、前記分岐部に対して着脱可能な着脱部を一端に有し、かつ他端を前記洗浄ユニットに連通させた洗浄液流入管部を備えて構成することを特徴とする請求項1又は2記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項4】
前記液流変更手段は、一端を前記分岐部に連通させ、かつ他端を前記洗浄ユニットに連通させた洗浄液流入管部に接続して液流方向を変更可能な、又は前記ミルクパイプと前記洗浄液流入管部間に接続して液流方向を変更可能な、切換バルブを備えて構成することを特徴とする請求項1又は2記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項5】
少なくとも前記洗浄液流入管部に流れる洗浄液の流量を調整可能な流量調整手段を備えることを特徴とする請求項3又は4記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項6】
前記被洗浄物には、少なくとも、哺乳瓶,哺乳瓶の構成部品,哺乳瓶の関連部品の一又は二以上を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄ユニットは、少なくとも、前記哺乳瓶,前記哺乳瓶の構成部品,前記哺乳瓶の関連部品の一又は二以上を所定の位置にセットするためのセッティング部を備えることを特徴とする請求項6記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄ユニットは、前記被洗浄物に対して洗浄液を噴射して洗浄する一又は二以上の洗浄ノズルを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄ユニットは、洗浄に使用した後の洗浄液を自然落下により排出する自然落下排出手段又は洗浄に使用した後の洗浄液を前記ミルクポンプの圧力により排出される他の洗浄液Wに合流させて排出する合流排出手段を備えることを特徴とする請求項2〜8記載の搾乳システムの洗浄装置。
【請求項10】
搾乳システムの少なくとも搾乳された乳を送る送乳ラインに、洗浄液槽に収容された洗浄液を流して当該送乳ラインを洗浄する洗浄装置を用いた洗浄方法において、前記搾乳システムの前記送乳ラインにおけるミルクパイプの所定部位に、分岐部を介して所定の被洗浄物を洗浄可能な洗浄ユニットを接続し、前記送乳ラインを洗浄した洗浄液の少なくとも一部を前記分岐部により分流させ、かつ前記洗浄ユニットに供給することにより被洗浄物を洗浄することを特徴とする搾乳システムの洗浄装置を用いた洗浄方法。
【請求項11】
前記被洗浄物には、少なくとも、哺乳瓶,哺乳瓶の構成部品,哺乳瓶の関連部品の一又は二以上を含むことを特徴とする請求項10記載の搾乳システムの洗浄装置を用いた洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200191(P2012−200191A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67029(P2011−67029)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)