説明

搾乳器インサート

搾乳器のユーザの胸部を受け入れる搾乳器インサートが開示されている。当該インサートは内側部と外側部とから形成され、外側部は内側部よりも高い硬度を呈することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搾乳器インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
搾乳器は、乳をユーザの胸から抽出するよく知られたデバイスである。乳児又は幼児が乳を胸から吸うことが自身で可能ではない場合、又は母親が乳児又は幼児から隔てられている、例えば仕事で乳児から離れている場合に搾乳器が用いられる。搾乳器は通常、乳を集めるための容器をもつ真空ポンプに接続された剛体の漏斗を有する。快適さと、ポンプを作動するために必要な真空シールとを提供するよう胸の輪郭に適応された剛体の漏斗内に、柔らかいエラストマのパッド(インサート)が概して配置されている。外側フレームと共にチャンバを形成する弾性壁をもつインサートを提供することが、米国特許公開公報US20040029486からも知られており、搾乳の間の快適さを更に改善するために、当該チャンバはガス、液体、又は固体を含む変形可能な媒体を保持できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに快適で最適な搾乳を提供するために、真空を保つ密閉性が維持されることも重要である。最も効率的な真空を得るために、漏斗内に位置するインサートへと胸部が容易に滑り込めば、これは有益である。しかしながら従来のエラストマのインサートは、自身の柔らかさに起因して胸部の皮膚がインサートと擦れて摩擦外傷に至る場合がある、高い摩擦係数をもっている。乳が出るのを刺激するために胸部及び/又は乳首上で蠕動運動を行っている搾乳器を使用する場合、インサートの蠕動運動は単に胸部組織への負圧力を用いるだけの搾乳器と比較して、皮膚と当該皮膚を更なる摩擦に晒すインサートとの間により大きな動的な接触部をつくるので、この症状は悪化するかも知れない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
搾乳器で用いるインサートを提供するために、本発明は上記の課題を解決又は実質的に軽減することを探求する。
【0005】
したがって、本発明は搾乳器のユーザの胸部を受け入れるための搾乳器インサートを提供し、当該インサートは内側部と外側部とから形成されており、当該外側部は、内側部よりも高い硬度を示す。
【0006】
好ましくは内側部は、弾力があり及び/又は柔軟性がある材料で作られている。
【0007】
好都合にも、内側部の動き又は変形が外側部に伝達されるよう外側部は可撓性がある。
【0008】
一実施例では、外側部は0.2 mm未満の厚さをもつ。
【0009】
代替の実施例では、外側部は0.5 mm以下の厚さをもつ。
【0010】
外側部が内側部を完全に封入してもよい。
【0011】
便宜的には、外側部は内側部の表面の一部を覆って延在する。
【0012】
好ましくは、外側部が全ての内側部の表面に付与される。
【0013】
一実施例では、外側部の一部が内側部に付与される。
【0014】
代替の実施例では、外側部全体が内側部から分離可能である。
【0015】
内側部が固体から成るものでもよい。
【0016】
便宜的には内側部は、外側部によって保持されるゲル、流体、又はガスなどの固体ではない物を有する。
【0017】
好ましい実施例がここで、添付の図面を引用して例のみの態様で説明されることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】漏斗内に配置された、本発明の一実施例によるインサートの断面を示す。
【図2】漏斗内に配置された、本発明の別の実施例によるインサートの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで図面を引用すると、図1は、乳を抽出するための搾乳器の漏斗2内に配置されているインサート1の実施例を例示している。当該インサート1は、小さな開口部6へと至る細い通路5に対向する大きな開口部4をもつ截頭円錐形の形状の壁構造3を有する。図1には例示されていないが、胸部がインサート1に受け入れられる際に気密シールを形成するために、インサート1は、きちんと漏斗2にフィットする。
【0020】
インサート1の壁構造3は、インサート1の大部分を形成する柔軟な内側部7と、当該内側部7を囲んでいる硬い外側部8とを有する。柔軟な内部部分7は、容易に変形して胸部の輪郭に適応するよう圧縮可能で弾力性のある材料で形成される。好ましくは柔軟な内側部7はショアA硬度40までの硬さをもつシリコーンゲル又はシリコーンゴムを有するが、しかしながら、快適さをユーザに提供し、胸部形状に適応することによって真空を実現するであろう弾力性があり且つ変形可能な特性をもつどのような材料でも作られることが可能であるので、この材料に限定されることはない。好ましくは、柔軟な内側部7は1 mm乃至5 mmの厚さをもつが、しかしながら必要な場合、特定の領域がより厚く作られることがある。何らかの流体、ゲル、又はガスが、取り囲んでいる硬い外側部8の中に含まれることができるので、図1に示されるインサートの形状は、柔軟な内側部7を有形の固体と固体ではないものとで作ることを可能にする。
【0021】
硬い外側部8は、低い摩擦係数を有する何らかのプラスチック材料、例えばポリウレタン、ポリエチレン、テフロン、及びナイロン、又はショアA硬度60よりも高い硬度をもつエラストマで作られることが可能である。硬い外側部8の低い摩擦係数はインサート1に素材の滑らかな特性を与え、従来のインサートで使われているエラストマの大きな摩擦によって生じる不快感無しで、胸部を容易にインサート1に滑り込ませることを可能にする。硬い外側部8の厚みは、下部にある柔軟な内側部7の弾性特性を遮蔽しないよう可撓性がなければならない。これ故、硬い外側部8の適切な厚さは、0.2 mmよりも薄くなければならないか、又は柔軟な内側部7が容易に変形する場合、外側部8は0.5 mm以下の厚さを有することが可能であろう。
【0022】
柔軟な内側部7により提供される弾力のある特性が外側部の特定の厚さにより維持され、インサート1が胸部の輪郭に適応できるようになる点において、種々異なる材料特性とインサートの形状との組合せは従来のインサートに勝る有意な長所を提供することを理解されたい。滑らかで弾力のあるインサートが更に、ポンプが作動する際に真空を得るアシストを実現するよう、外側部の低い摩擦は胸部が容易にインサートに受け入れられることを助ける。
【0023】
本発明の代替の実施例ではインサートは、柔軟な内側部の表面の一部を覆って延在するに過ぎない硬い外側部を有し、両方の材料は2つの有形の固体から形成されている。例えば図2は、柔軟な内側部17の表面を覆って、ポンプ動作の間に胸部の皮膚と接触する硬い外側部18を有するインサート10を例示している。この構成は、使用の間、インサートが漏斗内に確実に位置するよう大きな摩擦がインサートと漏斗との間に維持される反面、皮膚とインサートとの間の摩擦を減じる。さらに、図示されていない実施例では、硬い外側部が柔軟な内側部を図2に例示されているよりも大かれ少なかれ覆って延在することを理解されたい。
【0024】
上に記した、柔軟な内側部と硬い外側部とが有形な固体から作られている場合、両者はお互いに完全に接続されるか、又は化学的な結合又は機械的な結合を介した領域で部分的に取り付けられることが可能であると想定される。例えば図2に示すように、柔軟な内側部17の表面の一部を覆って延在する硬い外側部18が、大きな開口部14の場所で互いに取り付けられてもよい。図2に例示されている実施例に対する代替の構造は、硬い材料と柔らかい材料とが完全に分離可能である場合を含み、必要な場合は置き換えか、又は高い摩擦係数を有する既存のインサートに硬い外表面の層を提供するかの何れかを可能にする。
【0025】
上記の実施例において、硬い外側部及び柔軟な内側部を形成している構成要素が、インサートを形成する前に予め作られていることができる。代替的には、外表面層が柔軟な内側部に用いられるので最初は液体状態にあることができ、後に固化される。これは外側部全体が、内側部の同じ領域をコーティングすることを可能にする。
【0026】
外側部により提供されるスムースな感覚が、更に摩擦を減らすように当該材料の表面粗さを減じることによって更に改善されることができる点を理解されたい。代替的には、外側部の表面を粗くすることができ、同材料にシルクのような性質を与え、これによって皮膚とインサートとの間の摩擦を減じる。
【0027】
本発明が、好ましい実施例のみを引用して説明された。添付の請求項の範囲に含まれる実施例に対する修正及び変更は、本発明の保護範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳器のユーザの胸部を受け入れる搾乳器インサートであって、当該インサートが内側部と外側部とから形成されており、前記外側部が前記内側部よりも高い硬度を示す、搾乳器インサート。
【請求項2】
前記内側部が弾力性及び/又は柔軟性がある材料から作られる、請求項1に記載の搾乳器インサート。
【請求項3】
前記内側部の動き又は変形が前記外側部に伝達されるように、当該外側部は可ぎょう性を有する、請求項1及び2に記載の搾乳器インサート。
【請求項4】
前記外側部が0.2 mm未満の厚さをもつ、請求項1乃至3に記載の搾乳器インサート。
【請求項5】
前記外側部が0.5 mm以下の厚さをもつ、請求項1乃至3に記載の搾乳器インサート。
【請求項6】
前記外側部が前記内側部を完全に封入する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の搾乳器インサート。
【請求項7】
前記外側部が前記内側部の表面の一部を覆って延在する、請求項1乃至5に記載の搾乳器インサート。
【請求項8】
前記外側部が全ての前記内側部の表面に付される、請求項6及び7に記載の搾乳器インサート。
【請求項9】
前記外側部の一部が前記内側部に付される、請求項6及び7に記載の搾乳器インサート。
【請求項10】
前記外側部全体が前記内側部から分離可能である、請求項7に記載の搾乳器インサート。
【請求項11】
前記内側部が固体から成る、請求項1乃至10の何れか一項に記載の搾乳器インサート。
【請求項12】
前記外側部によって保持されるゲル、流体、又はガスなどの固体ではないものを前記内側部が有する、請求項1乃至6に記載の搾乳器インサート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522614(P2012−522614A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504109(P2012−504109)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051411
【国際公開番号】WO2010/116295
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】