説明

搾乳器用インサート

本発明は、搾乳器(1)の乳房受け漏斗(12)に取り付けるよう適応されたインサート(23)に関する。当該インサートは、乳頭受け空間を画定する円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁(26)を含み、該壁に対して使用者の乳頭は位置を定めることができ、当該インサートは、乳房受け漏斗に取り付けられる場合に、弾性的に変形可能な壁と乳房受け漏斗との間に圧力チャンバ(38)を画定するよう構成され、使用者の乳頭からの母乳の搾り出しに寄与するよう使用者の乳頭に蠕動動作が加えられるように、乳頭受け空間と圧力チャンバとの間に差圧が加えられた場合に、所定の様式で乳頭受け空間内に位置を定めた使用者の乳頭に向かって変形するよう前記壁は構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳器用インサートに関する。特に、本発明は、使用者から母乳を搾取するよう実施可能な搾乳器の乳房受け漏斗に取り付けるよう適応されたインサートに関する。本発明は、搾乳器用の乳房受け漏斗、及び、乳房受け漏斗を含む搾乳器にも関する。
【背景技術】
【0002】
搾乳器は、使用者の乳房から母乳を搾取するための良く知られた装置である。搾乳器は、乳児が自身で母乳を搾取することができない場合、又は、例えば、仕事中に乳児から離れている場合等、母親が乳児から離れている場合に使用することができる。母乳を搾取するための搾乳器の使用は、母乳の供給が少ない女性における授乳を刺激するために使用することもできる。
【0003】
従来の搾乳器は、真空を使用して、乳母の乳房から母乳の搾取を誘発している。装置のポンプ作用は、乳頭から採取容器に母乳を汲み出し、さらに、授乳中の女性の好みに調節することができる。
【0004】
使用者の乳房から母乳を搾取するための従来の搾乳器が、図1に示されている。そのような従来の搾乳器ユニット1は、本体2及び哺乳瓶3を含んでいる。哺乳瓶3は、ねじ込み継手によって本体2に取り付けられている。
【0005】
以下に記述されるように、真空ポンプユニット(図示せず)が、真空状態を作り出すために本体2内に形成され、ハンドル4は、本体2から延びている。搾乳器は、例えばハンドルを握ることによって、又は、フットペダルの操作によって、手動で操作することができる。搾乳器は、小さい電動機によって電動でもあり得る。
【0006】
乳房受け漏斗5は、使用者の乳房を受けるために、本体2に固定して取り付けられている。漏斗5は、口6及び首7を含む。口6は上端にて開いており、口6の内部表面は、上端から首7に向かって一点に集中して空洞の凹みを形成している。インサート8は、使用者の快適さを改善する、及び、母乳の搾り出しに寄与するために、漏斗5の口6内にはめ込むことができる。
【0007】
しかし、従来の搾乳器に関する問題は、そのような従来の搾乳器を使用した場合に、使用者が不快感又は難事を被ることで知られているということである。乳児が母親の乳房から摂食する場合、乳児は、母乳を得るために2つの動作、すなわち、吸う動作、並びに、乳首及び乳輪組織を含む母親の乳房の乳頭上での乳児の舌の動作により生じる蠕動運動を施行する。吸う動作は、乳房にひっついて離れないよう、及び、母乳の流れを誘発するよう負圧を加える。乳児は、乳輪及び乳首上で蠕動後搾り運動を行い、乳房から母乳の流れを誘発することもできる。この運動では、律動性収縮及び膨張の運動が、母乳の流れを誘発するよう行われる。
【0008】
蠕動(舌の)運動は、乳腺において産生された母乳が乳管内に放出されるのを可能にする「催乳」反射の原因であるホルモン産生を刺激する。従来の搾乳器はこの蠕動運動を生じず、そのため、蠕動運動の不足を補うため、高い負圧が、母乳の流れを得るために必要とされる。さらに、そのような動作の欠乏は、母乳を搾取することが不快及び無能であり、自然な動作を提供しないということを意味している。
【0009】
乳房に蠕動運動を加えようと試みるインサートを有する搾乳器は、US4249481に開示されている。しかし、この文献に開示されたインサートを有する搾乳器のそれぞれは、例えば、二重壁インサートの使用を必要とする、及び、インサートの壁間の差圧を加える込み入った構造を有している。従って、この文献において示された取り合わせは、複数の圧力孔等の複雑な構造を要求し、さらに、インサート及び関連する搾乳器を洗浄することを困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、前述の問題を実質的に軽減する又は克服し、さらに、乳を飲む乳児の動作により類似した方法での乳房からの母乳の搾り出しに寄与する搾乳器を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、搾乳器の乳房受け漏斗に取り付けるよう適応されたインサートを提供しており、当該インサートは、乳頭受け空間を画定する円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁を含み、該壁に対して使用者の乳頭は位置を定めることができる。当該インサートは、乳房受け漏斗に取り付けられる場合に、弾性的に変形可能な壁と乳房受け漏斗との間に圧力チャンバを画定するよう構成され、使用者の乳頭からの母乳の搾り出しに寄与するよう使用者の乳頭に蠕動動作が加えられるように、乳頭受け空間と圧力チャンバとの間に差圧が加えられた場合に、所定の様式で乳頭受け空間内に位置を定めた使用者の乳頭に向かって変形するよう前記壁は構成される。
【0012】
有利に、蠕動動作が使用者の乳頭に加えられるように負圧が乳頭受け空間に加えられる場合に、所定の様式で乳頭受け空間内に位置を定めた使用者の乳頭に向かって変形するよう壁は構成される。
【0013】
好ましくは、乳頭受け空間は使用者の乳頭を受けるための開口を有し、該開口に最も近い壁の剛性は、該開口に対して遠位の弾性的に変形可能な壁の剛性よりも低い。
【0014】
一実施形態において、前記壁のより厚い部分が前記使用者の乳頭に向かって変形するより前に、前記乳頭受け空間内に位置を定めた前記使用者の乳頭に向かって前記壁のより薄い部分が変形するように、弾性的に変形可能な壁は、前記開口から離れるに従い増す異なる壁厚を有する。
【0015】
好ましくは、開口の最も近くに配置された前記壁の第1の部分は、前記開口に対して遠位の前記壁の第2の部分が使用者の乳頭に向かって変形するより前に、前記乳頭受け空間内に位置を定めた使用者の乳頭に向かって変形するよう構成される。
【0016】
一実施形態において、乳頭受け空間と圧力チャンバとの間に差圧が加えられた場合に、第2の部分が前記使用者の乳房に向かって変形するより前に第1の部分が前記使用者の乳房に向かって変形してそこに正圧を加えるように、前記壁の第1の部分は楕円錐台形であり、第2の部分は円筒形である。
【0017】
一実施形態において、前記壁の第1の部分は、前記壁の第2の部分を形成する材料と比較してより低い剛性係数を有する材料から形成される。
【0018】
壁の上端及び下端の周りを円周方向に延びる、インサートを乳房受け漏斗に取り付けるための取り付け手段間を、弾性的に変形可能な壁は延び得る。
【0019】
好都合に、少なくとも1つのリブが弾性的に変形可能な壁に沿って縦に延びて、乳頭に向かう前記壁の崩壊を制御している。
【0020】
本発明の別の態様によると、インサートが一体形成される搾乳器用乳房受け漏斗が提供される。
【0021】
乳房受け漏斗は、剛性の外殻、及び、弾性的に変形可能な壁と剛性の外殻との間に形成された圧力チャンバを含むことができ、圧力チャンバは、弾性的に変形可能な壁の周りに延びている。
【0022】
有利に、乳房受け漏斗の外部の大気に対して圧力チャンバが開いているように、流体注入口が剛性の外殻を通って形成される。
【0023】
好都合に、インサートが、漏斗に対して取り外し可能に取り付けられる。
【0024】
本発明の別の態様によると、インサートが一体形成される乳房受け漏斗を含む搾乳器が提供される。当該搾乳器は、使用者の乳房が漏斗内に受けられた場合に漏斗に負圧を生じる手段を含む。
【0025】
好ましくは、当該搾乳器は、前記圧力チャンバ内に正圧を加えて、前記圧力チャンバ内の圧力が増えた場合に使用者の乳頭に向かって変形するよう弾性的に変形可能な壁に促す手段をさらに含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態が、付随の図面を参考にして単なる例によって次に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】現存の搾乳器の斜視図を例示している。
【図2】本発明の第1の実施形態による、搾乳器用乳房受け漏斗及びインサートの断面側面図を例示している。
【図3】図2に示された乳房受け漏斗及びインサートの断面側面図を例示している。
【図4】図3に示されたインサートの概略的な斜視図を例示している。
【図5】Y−Y線に沿った、図4に示されたインサートの概略的な断面図を例示している。
【図6】図2に示されたインサートの概略的な内部が見える斜視図を例示している。
【図7】弾性的に変形可能な壁が部分的に変形されて示された、図6に示されたインサートの別の概略的な内部が見える斜視図を例示している。
【図8】弾性的に変形可能な壁が完全に変形されて示された、図6に示されたインサートの別の概略的な内部が見える斜視図を例示している。
【図9】本発明の第2の実施形態による弾性的に変形可能な壁を有する搾乳器用インサートの概略的な内部が見える斜視図を例示している。
【図10】X−X線に沿った、図9に示されたインサートの概略的な断面図を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に図面、特に、図2及び3を参照すると、本体10及び母乳受け容器(図示せず)を含む搾乳器ユニットが示されている。乳児用哺乳瓶の形状をとることができる母乳受け容器は、クリップ(図示せず)等の別のはずせる取り付け手段を使用することができると理解されるはずであるけれども、ねじ込み継手11によって本体10に取り付けられる。
【0029】
以下に記述されるように、真空ポンプユニット(図示せず)が、真空状態を生じるために本体10内に配置され、ハンドル(図示せず)が、本体10から延びている。真空ポンプユニット(図示せず)は電動化され、ハンドルは、本体10内に配置されたバッテリーによって動力が供給される電動化された真空ポンプユニット(図示せず)を操作する。あるいは、ハンドルは、真空ポンプユニットを操作するよう手動で操作可能である。真空ポンプユニット(図示せず)は従来型であり、ポンプユニットのさらなる説明はここでは与えられない。
【0030】
乳房受け漏斗12は、使用者の乳房を受けるために搾乳器の本体10から延びている。漏斗12は、第1の殻部分13及び第2の殻部分14を含む。第1の殻部分13は、本体10から延び、本体10と一体形成されている。第1の殻部分13は、一末端にて真空ポンプユニットと連絡する管を画定し、本体10に対して遠位の末端にて開口15を有している。
【0031】
第2の殻部分14は、口16及び首17を含む。口16は、上端18にて開いており、口16の内部表面は、上端18から首17に向かって一点に集まり、空洞の凹みを形成している。口16に対して遠位の首17の下端は、第1の殻部分の開口15において取り外し可能に取り付けることができ、取り付け隆起部20が、第1の殻部分13に第2の殻部分14の下端を置き固定して保持するために、首17の下端の周りに形成されている。流体注入口22が、以下で明らかになる理由のために、第2の殻部分14の首17を通って形成される。第1及び第2の殻部分13、14は、硬質プラスチック等、剛性の非変形可能な材料から形成される。
【0032】
本実施形態において、漏斗12の第1の殻部分13は搾乳器1の本体10に固定して取り付けられるけれども、別の実施形態においては、漏斗12の第1の部分も第2の部分もそこから取り外し可能であることが理解されるはずである。そのような漏斗12は、漏斗5及び本体2の洗浄又は殺菌に寄与するよう、搾乳器1の本体10に対して取り外し可能に取り付けられる。さらに、本発明において漏斗12は、組立て及び洗浄に寄与するよう別個の第1及び第2の殻部分13、14を含むけれども、別の実施形態において漏斗は、一体形成された第1及び第2の殻部分によって画定される外殻を含むワンピース構造であることが正しく理解されるはずである。
【0033】
漏斗12の空洞の凹みと母乳受け容器(図示せず)との間に流体通路が提供されるように、口16を有する、本体10に連絡する空洞の通路を画定する漏斗の外殻を、漏斗12の第1及び第2の殻部分13、14は形成している。以下で説明されるように、空洞の通路は、使用者の乳房が漏斗12内に配置された場合に本体10内に配置された真空ポンプユニット(図示せず)が漏斗12内に負圧を生じるのを可能にする通路も提供する。
【0034】
図2及び3を参照すると、搾乳器1の乳房受け漏斗12に取り付けるよう適応されたインサート23が示されている。インサート23は、乳房受け漏斗12の第2の殻部分14内に取り外し可能にはめ込み得る。この配置の利点は、インサート23が漏斗12から取り外されるのを可能にするため、漏斗12及びインサート23を容易に洗浄並びに/又は殺菌することができるということである。インサート23は、適したゴム、シリコンエラストマー、又は、ラテックス材料等の弾性材料から形成される。あるいは、インサートは、熱可塑性エラストマーから形成される。
【0035】
インサート23は、上部24、下部25、及び、その間を延びる、円周方向に延びている弾性的に変形可能な壁26を含む。インサート23の上部24は、インサート23が漏斗12内に配置される場合に、第2の殻部分14の口16内に位置し、上部24の外面27は、第2の殻部分14の口16の内部表面に対して位置する。上部24は、第2の殻部分14の上端18の縁を越えて延び、上部24の外縁はそれ自体が折返され、前記縁と協同し且つ第2の殻部分14に対して上部24を固定して取り付けるようリップ28を形成する。従って、上部24は、第2の殻部分14に対して固定される。以下で明らかになるように、インサートの上部24の内部表面29は、それ自体が一点に集まって、使用者の乳房を受けるための円錐形状の空洞部分を形成している。
【0036】
インサート23の下部25は、インサート23が漏斗12内に配置される場合に首17の下端に位置し、それ自体が折り返されている下部25の縁によって形成された円周方向に延びるリップ30を有する。このリップ30は、第2の殻部分14の下端の縁を越えて延び、前記縁と協同して、第2の殻部分14に対して下部25を固定して取り付ける。従って、下部25は、第2の殻部分14に対して固定される。
【0037】
上記の実施形態において、インサート23は、インサート23の弾性的に変形可能な性質のために、それぞれ第2の殻部分14の上端及び下端の縁に重なって取り付けられるインサートの上部及び下部24、25によって第2の殻部分14内に取り外し可能に取り付けることができるけれども、本発明は、それに限定されないということ、及び、別の実施形態において、インサート23は第2の殻部分内に延び、接着剤によって固定して取り付けられるということが理解されるはずである。さらに、第1及び第2の殻部分13、14が一体形成される場合、インサートの下部25は、図6乃至8に示されているように、外殻から延びる肩に取り付けるよう構成することができる。
【0038】
円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁26は、インサートの上部及び下部25、26間を延び、その中に乳頭受け空間33を画定している。以下で詳細に説明されるように、乳首及び乳輪組織を含む使用者の乳頭は、インサート23の使用中弾性的に変形可能な壁26によって画定された乳頭受け空間33内にはめ込まれる。
【0039】
可撓性の波形膜34が、円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁26の上端にて形成され、インサート23の上部24と一体形成されている。以下で説明されるように、弾性的に変形可能な壁26の上端は、該弾性的に変形可能な壁26の上端を内側に変形させることができるように、前記波形膜34に対して外の方に広がっている。
【0040】
弾性的に変形可能な壁26は、インサートの上部24からインサートの下部25まで長手方向に沿って変わる壁厚を有している。乳頭受け空間33は、第1の殻部分13まで延び、使用者の乳房から搾り出された母乳がインサート23から排出されるのを可能にしている。
【0041】
弾性的に変形可能な壁26の内部表面35、及び、弾性的に変形可能な壁26の外部表面36は、インサートの上部24からインサートの下部25までに互いから離れるようそれているため、弾性的に変形可能な壁の壁厚は、その乳頭受け空間33の上端から増えている。
【0042】
弾性的に変形可能な壁26の厚さが長手方向に沿って増えるに従い、壁が前記乳頭受け空間33の下端に向かってより変形しないように、壁26の剛性が増える。
【0043】
漏斗12内にインサートが配置される場合、弾性的に変形可能な壁26の外部表面36、及び、第2の殻部分14の内部表面37は、以下で詳細に記述される圧力チャンバ38をその間に画定する。
【0044】
以下で明らかになるように、インサート23の上部及び下部24、25は、第2の殻部分14に対して固定され、それぞれ圧力チャンバの上部範囲及び下部範囲を画定している。
【0045】
図4及び5を参照すると、一対の直径の反対側にあるリブ39が、弾性的に変形可能な壁26の外部表面36に沿って縦に延びている。リブ39は、壁26と一体形成され、そこに沿って壁の剛性を上げるように局所的に厚い部分を提供する。従って、以下で説明されるように、壁が変形して乳頭受け空間33内に内側に崩壊するよう駆り立てられる場合に、リブ39は、壁26の長手方向に沿って局所的な剛性を提供するため、より低い剛性を有するリブに対して遠位の壁の部分によって壁は楕円形状に変形する。
【0046】
このリブ配置の利点は、乳児によって加えられる圧力及び動作に類似した壁26の楕円形の崩壊により、乳頭受け空間33内に配置された乳頭に対するインサート23によって加えられる圧力が非円形であるため、搾乳器を回転させることによって使用者が乳頭に対する圧力点を変えて、そこから母乳を搾り出すのに寄与する及び快適さを上げることが可能であるということである。さらに、リブは、乳頭に向かうインサートの崩壊を制御する。これは、乳首をはさんで締め付け得るために使用者に痛みを与える空間及びしわをインサートが形成するのを防ぐ。
【0047】
上記の例証的な実施形態による搾乳器1及びインサート23の操作が、次に、図3乃至8を参考にして記述される。
【0048】
使用者は、漏斗12の第2の殻部分14内にインサート23をはめ込み、インサート23は、そのはね返る性質のために変形してそのはめ込みを可能にする。インサートの上部24は口16の内部表面に対して位置し、第2の殻部分14の縁を越えて延び、リップ28は前記縁と協同して、第2の殻部分14に対して上部24を固定して取り付けている。
【0049】
同様に、インサートの下部25は首17の下端に対して位置し、円周方向に延びるリップ30は、第2の殻部分14の下端の縁を越えて延び、それと協同して、第2の殻部分14に対して下部25を固定して取り付けている。弾性的に変形可能な壁26の外部表面36、及び、第2の殻部分14の内部表面37は、互いから一定の間隔を有して置かれ、弾性的に変形可能な壁26のまわりで円周方向に延びるため乳頭受け空間33を円周方向に取り囲む圧力チャンバ38を形成している。
【0050】
流体注入口22は、圧力チャンバ38と搾乳器の外部の大気との間に流体連絡を提供する。しかし、以下で説明されるように、別の実施形態において流体注入口22は、空気ポンプ等の圧力手段(図示せず)に接続され、圧力チャンバ内に正差圧を提供する。詳細に記載してきたインサートを受けるよう特別に構成された搾乳器が記述されてきたけれども、別の実施形態においてインサートは、従来の搾乳器と共に使用するために構成されるということが理解されるはずである。例えば、別の実施形態では、インサート内に通路が形成され、注入口の外側の大気から圧力チャンバまでの流体連絡を可能にする。
【0051】
インサート23が乳房受け漏斗12の第2の殻部分14内にはめ込まれると、使用者は、次に、前記第2の殻部分14の首17の下端を第1の殻部分13の開口15内にはめ込む。首17の下端のまわりに形成された取り付け隆起部20は、第1の殻部分13内に第2の殻部分14の位置を定め、固定して保持し、インサートの下部25の円周方向に延びるリップ30が、第1の殻部分13の内部表面に対して配置され、第1及び第2の殻部分13、14を固定する。
【0052】
搾乳器1及びインサート23は、従って、組み立てられた状態にあり、使用者は、漏斗の第2の殻部分14の口16内に乳房をはめ込む。使用者の乳輪及び/又は乳房は、上部24によって形成された円錐形の空洞部分内に配置され、前記インサートの上部24の内部表面29に対して位置し固定される。従って、使用者の乳頭は、壁26の内部表面35の最も近くに位置するように、インサート23内にはめ込まれ、乳頭受け空間33内に配置される。
【0053】
真空ポンプユニット(図示せず)を作動させることによって、乳頭受け空間33内に負圧が形成される。乳頭に負圧を加えることによって、負圧は、従来の搾乳器の様式で使用者の乳房から母乳の搾り出しを誘発するのに寄与し、さらに、支援が外部からほとんど提供されないか又は全く提供されない場合でさえも乳房に相対する位置に搾乳器1を維持するのに寄与する。
【0054】
乳頭受け空間33内に負圧が加えられる場合に、乳頭受け空間33内に配置された乳頭の表面の相当な部分がインサート23の弾性的に変形可能な壁26の内部表面35の最も近くにあるように、乳頭は、乳頭受け空間33内に押し出される。
【0055】
乳頭受け空間33内に負圧が加えられるに従い、大気との間に流体連絡を提供する流体注入口22のため大気圧にある圧力チャンバ38と乳頭受け空間33との間に差圧が形成される。
【0056】
乳頭受け空間33と圧力チャンバ38との間に生じる差圧は、弾性的に変形可能な壁26が、乳頭受け空間33内に内側に広がる原因となる。弾性的に変形可能な壁26の変化する壁厚のため、壁厚は、インサートの上部24に最も近い壁のより薄い部分26aからインサートの下部25に最も近い壁のより厚い部分26bまで増し、上部24に最も近い壁は低い剛性を有しており、その剛性は、下部25に向かって増す。
【0057】
従って、乳頭受け空間33と圧力チャンバ38との間に生じる差圧が増すに従い、弾性的に変形可能な壁36のより薄い部分26aは、乳頭受け空間33内に内側に広げられ、より厚い部分26bのより高い剛性は、前記より厚い部分が初めに変形するのを防ぐ(図7を参照)。後に、差圧が増すに従い、壁26のより多くの部分が、次第に変形させられ、乳頭受け空間33内に内側に広げられる。従って、壁26は、乳頭受け空間の一末端からそのもう一方の末端に向かって内側に次第に広げられる。
【0058】
弾性的に変形可能な壁26のより薄い部分38aが内側に広げられるに従い、可撓性の波形膜34は延ばされる。これは、膜の弾力性、及び、引き延ばされた膜の波形のため可能である(図6乃至8を参照)。
【0059】
乳頭受け空間内の圧力が下げられるに従った、変化する壁26の厚さによる弾性的に変形可能な壁26の漸進的な変形は、インサート23に、使用者の乳首から母乳の搾り出しを促進する且つ従来の搾乳器の動作と比較して乳児により類似の蠕動動作を使用者の乳首及び乳輪に対して与えさせる。さらに、本発明の利点は、弾性的に変形可能な壁26が広がるために、乳頭受け空間内に真空状態を生じることだけが必要であるということである。母乳は、従って、使用者の乳房から搾り出され、漏斗12の第1及び第2の殻部分13、14によって画定された通路を通して漏斗12から搾乳器1の本体内、及び、母乳受け容器3内に排出される。
【0060】
弾性的に変形可能な壁26がその元の位置に外側に広げられるよう、乳頭受け空間33内の圧力は、差圧を減らすために増やされる。従って、弾性的に変形可能な壁26は、壁26のはね返る性質により、乳頭から離れてその元の位置に外側に広がるよう駆り立てられる。差圧が減らされるに従い、壁26のより厚い部分26bは、より薄い部分26aがその元の形状及び位置に戻る前に、その元の形状及び位置に戻る。
【0061】
圧力チャンバ38と乳頭受け空間33との間に差圧を周期的に生じることによって、繰返しの蠕動動作が、インサート23に配置された使用者の乳頭に対して与えられる。従って、乳頭受け空間内に加えられる負圧は、蠕動運動の適用による従来の搾乳器を使用して母乳を得るのに必要とされるものよりも少ない。さらに、壁26が内側に変形する場合、乳頭受け空間33内の負の気圧に曝露される乳首及び乳輪の部分は減らされるため、真空レベル知覚も減らされる。
【0062】
インサート23は、インサート23の変形可能な性質のため、第2の殻部分14が第1の殻部分13から取り外された場合に、前記第2の殻部分から取り外し可能であり、漏斗12の外殻に対してインサート23を取り外し可能に取り付けるための他の配置も考えられるけれども、インサート23の上部及び下部24、25は、第2の殻部分の縁からはずすよう操作することができる。漏斗12から取り外し可能であるインサート23の利点は、インサートを洗浄し易いということである。さらに、限られた数のインサートの要素のため、インサート及び搾乳器の組立体は、組立て易く、製造が簡単である。
【0063】
本発明の第2の例証的な実施形態が、次に、図9及び10を参考にして記述される。この実施形態において、インサート及び該インサートを受けるよう構成された搾乳器は、全般的に第1の実施形態に対するものと同じであるため、詳細な説明は本明細書において省略される。全般的に第1の例証的な実施形態に対するものと同じであるインサート及び搾乳器の要素は、同じ参照番号を保ち、図3に示されているように、インサートは搾乳器と共に使用される。しかし、この実施形態において、断面図での弾性的に変形可能な壁の形状は異なる。
【0064】
次に図9及び10を参照すると、搾乳器1の乳房受け漏斗12に取り付けるよう適応されたインサート40が示されている。インサート40は、乳房受け漏斗12の第2の殻部分14に取り外し可能にはめ込むことができる。この取合せの利点は、インサート40が漏斗12から取り外されるのを可能にするため、漏斗12及びインサート40を容易に洗浄及び/又は殺菌することができるということである。インサート40は、適したゴム、シリコンエラストマー、又は、ラテックス材料等の弾性材料から形成される。あるいは、インサート40は、熱可塑性エラストマーから形成される。
【0065】
インサート40は、上部41、下部42、及び、その間を延びる、円周方向に延びている弾性的に変形可能な壁43を含む。第1の例証的な実施形態に対して記述してきたように、インサート40が漏斗12内に配置されてそこに取り外し可能に取り付けられる場合に、インサート40の上部41は、上部41が第2の殻部分14に対して固定されるように、第2の殻部分14の口16内に位置する。インサートの上部41の内部表面43は、それ自体一点に集まって、使用者の乳房を受けるために円錐形の空洞部分を形成する。同様に、第1の例証的な実施形態に対して記述してきたように、インサート40が漏斗12内に配置されてそこに取り外し可能に取り付けられる場合に、インサート40の下部42は、下部42が第2の殻部分14に対して固定されるように、首17の下端に位置する。
【0066】
上記の実施形態においてインサート40は、インサート40の弾性的に変形可能な性質のため第2の殻部分14の上端及び下端の縁にそれぞれ重なってその上に固定されるインサートの上部及び下部41、42によって、第2の殻部分14内に取り外し可能に取り付けることができるけれども、本発明は、それに限定されないということ、及び、別の実施形態においてインサート23は第2の殻部分内に延びることができ、接着剤によって固定して取り付けることができるということが理解されるはずである。
【0067】
円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁43は、インサートの上部及び下部41、42間を延び、その中に乳頭受け空間45を画定する。以下で詳細に説明されるように、使用者の乳頭は、インサート40の使用中、弾性的に変形可能な壁43によって画定された乳頭受け空間45内にはめ込まれる。
【0068】
可撓性の波形膜46は、円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁43の上端にて形成され、インサート40の上部41と一体形成される。弾性的に変形可能な壁43の上端は、波形膜46に対して外側に広がっている。
【0069】
本実施形態による弾性的に変形可能な壁43は、断面において均一の厚さを含む。弾性的に変形可能な壁43の外部表面47は、第2の殻部分14の内部表面37に面しており、前記壁43の内部表面48は、乳頭受け空間45を画定している。
【0070】
弾性的に変形可能な壁43のうち、上部41から延びる第1の部分49は楕円錐台形である。本明細書において、壁43の第1の部分49は、断面図において楕円形である。乳頭受け空間45が上部41に対して末端に向かって細くなるように、第1の部分49は、第1の部分49と下部42との間を延びる第2の部分50まで上部41から一点に集まっている。
【0071】
第2の部分50は、断面図では円形である円筒形又あるいは円錐台形である。第1の部分49及び第2の部分50は合体し且つ一体形成されて、弾性的に変形可能な壁43を画定している。
【0072】
壁の横断面形が楕円形から円形に変化するため、弾性的に変形可能な壁26の形状がその長手方向に沿って変化するに従い、乳頭受け空間45を画定している壁の変形性がその上端から下端にかけて減るように、変形に対する抵抗力は増す。
【0073】
以下で詳細に記述されるように、漏斗12内にインサートが配置される場合、首17の領域における弾性的に変形可能な壁43の外部表面47及び第2の殻部分14の内部表面37は、その間に圧力チャンバを画定する。
【0074】
上記の例証的な実施形態によるインサートの操作が、次に、図9及び10を参考にして記述される。この第2の例証的な実施形態による搾乳器及びインサートの操作は、全般的に第1の例証的な実施形態に対するものと同じであるため、詳細な説明は本明細書において省略される。
【0075】
インサートは、搾乳器1内にはめ込まれる。この第2の例証的な実施形態において、詳細に記述してきたインサートを受けるよう特別に構成された搾乳器が使用されるけれども、別の実施形態においてインサートは、従来の搾乳器と共に使用するために構成されることが理解されるはずである。
【0076】
使用者は、漏斗12の第2の殻部分14内にインサート40をはめ込み、インサートは、そのはね返る性質のため変形してそのはめ込みを可能にする。インサートの上部41は第2の殻部分14の縁と協同して、第2の殻部分14に対して上部41を固定して取り付けている。同様に、インサートの下部42は第2の殻部分14の下端の縁と協同して、第2の殻部分14に対して下部42を固定して取り付けている。弾性的に変形可能な壁43の外部表面47、及び、第2の殻部分14の内部表面37(図3を参照)は、互いから一定の間隔を有して置かれ、弾性的に変形可能な壁26のまわりで円周方向に延びるため乳頭受け空間45を円周方向に取り囲む圧力チャンバ38を形成している。前記圧力チャンバは、インサートの上部41から下部42まで延びている。
【0077】
第2の殻部分14内に形成された流体注入口22は、圧力チャンバと搾乳器の外部の大気との間に流体連絡を提供する。しかし、別の実施形態において流体注入口22は、空気ポンプ等の圧力手段(図示せず)に接続され、圧力チャンバ内に正差圧を提供する。
【0078】
インサート40が乳房受け漏斗12の第2の殻部分14内にはめ込まれると、使用者は、次に、第2の殻部分14を第1の殻部分13に取り付けて、搾乳器1及び漏斗12を組み立てる。使用者は、漏斗の第2の殻部分14の口16内に乳房をはめ込む。使用者の乳輪及び/又は乳房は、上部41によって形成された円錐形の空洞部分内に位置し固定される。従って、使用者の乳頭は、乳首及び乳輪が壁43の内部表面48の最も近くに位置するように、乳首受け空間45内に配置される。
【0079】
真空ポンプユニット(図示せず)を作動させることによって、乳頭受け空間45内に負圧が形成される。乳頭に負圧を加えることによって、負圧は、従来の搾乳器の様式で使用者の乳房から母乳の搾り出しを誘発するのに寄与し、さらに、支援が外部からほとんど提供されないか又は全く提供されない場合でさえも乳房に相対する位置に搾乳器1を維持するのに寄与する。
【0080】
負圧が加えられる場合に、乳頭受け空間45内に配置された乳頭の表面の相当な部分がインサート40の弾性的に変形可能な壁43の内部表面47の最も近くにあるように、乳頭は、乳頭受け空間45内に押し出される。
【0081】
乳頭受け空間45内に負圧が加えられ、さらに、圧力が大気圧から減らされるに従い、大気圧にある圧力チャンバと乳頭受け空間45との間に差圧が形成される。
【0082】
乳頭受け空間45と圧力チャンバとの間に生じる差圧は、弾性的に変形可能な壁43が乳頭受け空間45内に内側に広がる原因となる。第1及び第2の部分49、50間での形状の差のため、第2の部分50は、その円形の断面のために、楕円の横断面形を有する第1の部分49よりも大きな剛性を有する。従って、壁20の第2の部分50が変形させられて乳頭受け空間45内に広がる前に、第1の部分49は、乳頭受け空間45内に配置された使用者の乳首及び乳輪に向かって広げられる。
【0083】
乳頭受け空間45と圧力チャンバとの間に生じる差圧が増すに従い、弾性的に変形可能な壁36の楕円形の第1の部分49は、乳頭受け空間45内に内側に広げられ、円形の第2の部分50のより高い剛性は、前記第2の部分が初めに変形するのを防ぐ。後に、差圧が増すに従い、第2の部分50が変形させられるため、壁45のより多くの部分が、次第に変形させられ、乳頭受け空間45内に内側に広げられる。従って、壁40は、乳頭受け空間45の一末端からそのもう一方の末端に向かって内側に次第に広げられる。
【0084】
弾性的に変形可能な壁43の第1の部分49が内側に広げられるに従い、可撓性の波形膜46は、膜の弾力性、及び、引き延ばされた膜の波形のため延ばされる。
【0085】
乳頭受け空間45内の圧力が下げられるに従って、変化する壁43の横断面形による弾性的に変形可能な壁26の漸進的な変形は、インサート40に、使用者の乳頭から母乳の搾り出しを促進する且つ従来の搾乳器の動作と比較して乳児により類似の蠕動動作を使用者の乳頭に対して与えさせる。さらに、本発明の利点は、弾性的に変形可能な壁43が広がるために、乳頭受け空間内に真空状態を生じることだけが必要であるということである。母乳は、従って、使用者の乳房から搾り出され、漏斗12の第1及び第2の殻部分13、14によって画定された通路を通して漏斗12から搾乳器1の本体内、及び、母乳受け容器3内に排出される。
【0086】
弾性的に変形可能な壁43をその元の位置に外側に広げさせるよう、乳頭受け空間45内の圧力は、乳頭受け空間と圧力チャンバとの間に生じる差圧を減らすために増やされる。従って、弾性的に変形可能な壁43は、前記壁43のはね返る性質により、乳頭から離れてその元の位置に外側に広がるよう駆り立てられる。差圧が減らされるに従い、壁43の第2の部分50は、第2の部分50と比較した場合の第1の部分49の剛性における差のため、第1の部分49がその元の形状及び位置に戻る前に、その元の形状及び位置に戻る。
【0087】
インサート40の乳頭受け空間45内に差圧を周期的に生じることによって、繰返しの蠕動動作が、そこに配置された使用者の乳頭に対して与えられる。
【0088】
この取合せの利点は、乳頭受け空間45内に配置された乳頭に対してインサート40によって加えられる圧力が、壁43の第1の部分49における楕円形の断面のために円形ではなく、乳児によって加えられる圧力及び動作に類似しているため、使用者は、搾乳器を回転させることによって乳頭に対する圧力点を変え、そこからの母乳の搾り出し及び快適さを高めることに寄与することが可能であるということである。
【0089】
上記の実施形態において、第1の部分は楕円錐台形であり、第2の部分は円筒形であるけれども、本発明はそれに限定されないということ、及び、壁によって画定された乳頭受け空間45内に配置された使用者の乳頭に向かって前記壁の第1の部分が変形するのを、第2の部分が前記使用者の乳頭に向かって変形する前に可能にして乳頭に対して蠕動動作を提供するいかなる構成においても、弾性的に変形可能な壁を形成することができるということが理解されるはずである。さらに、圧力チャンバと乳頭受け空間との間に差圧が形成された時にそれぞれが異なる可撓性を有するいかなる数の部分からも壁は形成することができる。
【0090】
本発明の第3の例証的な実施形態が次に記述される。この例証的な実施形態において、インサート及び搾乳器を受けるよう構成された搾乳器は、全般的に第2の例証的な実施形態に対するものと同じであるため、詳細な説明は本明細書において省略される。しかし、この実施形態において、弾性的に変形可能な壁の第1及び第2の部分は、異なる剛性係数を有した異なる材料から形成される。
【0091】
インサートは、上部、下部、及び、その間を延びる、円周方向に延びている弾性的に変形可能な壁を含む。円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁は、インサートの上部及び下部間を延び、その中に乳頭受け空間を画定する。使用者の乳頭は、インサートの使用中、弾性的に変形可能な壁によって画定された乳頭受け空間内にはめ込まれる。
【0092】
本実施形態による弾性的に変形可能な壁は、断面において均一の厚さを含む。弾性的に変形可能な壁のうち、上部41から延びる第1の部分は、第1の材料から形成される。第1の部分は、第1の部分とインサートの下部との間を延びる第2の部分までインサートの上部から一点に集まっている。
【0093】
弾性的に変形可能な壁の第2の部分は、第2の材料から形成される。第2の材料は、第1の材料よりも高い剛性係数を有しているため、変形する傾向が少ない。第1の部分及び第2の部分は一体形成され、弾性的に変形可能な壁を画定する。
【0094】
弾性的に変形可能な壁がその長手方向に沿って変化する材料のため、その上端に最も近い壁の剛性がその下端に最も近い壁の剛性よりも低いように、弾性的に変形可能な壁の剛性は変化する。
【0095】
上記の例証的な実施形態によるインサートの操作が次に記述される。この第3の例証的な実施形態による搾乳器及びインサートの操作は、全般的に第1の例証的な実施形態に対するものと同じであるため、詳細な説明は本明細書において省略される。この第3の例証的な実施形態において、詳細に記述してきたインサートを受けるよう特別に構成された搾乳器が使用されるけれども、別の実施形態においてインサートは、従来の搾乳器と共に使用するために構成されることが理解されるはずである。
【0096】
使用者は、漏斗の第2の殻部分内にインサートをはめ込み、第1の殻部分に対して第2の殻部分を取り付け、インサートは、そのはね返る性質のため変形してそのはめ込みを可能にする。使用者は、漏斗の第2の殻部分の口内に乳房をはめ込み、使用者の乳輪及び/又は乳房は、上部41によって形成された円錐形の空洞部分内に位置し固定される。
【0097】
真空ポンプユニット(図示せず)を作動させることによって、乳頭受け空間45内に負圧が形成され、大気圧にある圧力チャンバと乳頭受け空間との間に差圧が形成される。従って、乳頭受け空間内に配置された乳頭の表面の相当な部分がインサートの弾性的に変形可能な壁の内部表面の最も近くにあるように、乳頭は、乳頭受け空間内に押し出される。
【0098】
乳頭受け空間と圧力チャンバとの間に生じる差圧は、弾性的に変形可能な壁が乳頭受け空間内に内側に広がる原因となる。第1及び第2の部分の材料の剛性における差のため、壁の第2の部分が変形させられる前に、第1の部分は、乳頭受け空間内に配置された使用者の乳頭に向かって広げられる。
【0099】
乳頭受け空間と圧力チャンバとの間に生じる差圧が増すに従い、弾性的に変形可能な壁の第1の部分は、乳頭受け空間内に内側に広げられ、第2の部分のより高い剛性は、前記第2の部分が初めに変形するのを防ぐ。後に、差圧が増すに従い、第2の部分が変形させられるため、壁のより多くの部分が、次第に変形させられ、乳頭受け空間内に内側に広げられる。従って、壁は、乳頭受け空間の一末端からもう一方の末端に向かって内側に次第に広げられる。
【0100】
弾性的に変形可能な壁の第1の部分が内側に広げられるに従い、可撓性の波形膜は、膜の弾力性、及び、引き延ばされた膜の波形のため延ばされる。
【0101】
第1及び第2の材料の異なる剛性特性による弾性的に変形可能な壁の漸進的な変形は、インサートに、使用者の乳頭から母乳の搾り出しを促進する且つ従来の搾乳器の動作と比較して乳児により類似の蠕動動作を使用者の乳頭に対して与えさせる。
【0102】
弾性的に変形可能な壁をその元の位置に外側に広げるため、乳頭受け空間内の圧力は、乳頭受け空間と圧力チャンバとの間に生じる差圧を減らすために増やされる。差圧が減らされるに従い、壁の第2の部分は、第2の部分と比較した場合の第1の部分の剛性における差のため、第1の部分がその元の形状及び位置に戻る前に、その元の形状及び位置に戻る。
【0103】
インサートの乳頭受け空間内に差圧を周期的に生じることによって、繰返しの蠕動動作が、そこに配置された使用者の乳頭に対して与えられる。
【0104】
上記の例証的な実施形態において本発明は、搾乳器用の乳房受け漏斗の首にはめ込み可能であるインサートとして記述されているけれども、本発明はそれに限定されないことが理解されるはずである。本発明の別の実施形態においてインサートは、取り外し可能に取り付けることができる漏斗、又は、搾乳器と一体形成された漏斗の首と一体化して形成される。そのような実施形態では、外殻が漏斗の首から形成され、乳頭受け口がそこに固定して取り付けられる。
【0105】
上記の実施形態のそれぞれは、互いとは無関係に記述されているけれども、本発明はそれに限定されないということ、及び、上記の実施形態は組み合わせることができるということが当業者には明らかになる。例証的な実施形態において、弾性的に変形可能な壁は、第1及び第2の部分を含み、該第1及び第2の部分はそれぞれ、異なる程度の可撓性で異なる形状を有するよう形成され、壁の厚さはその長手方向に沿って変化する。同様に、そのようなインサートは、異なる剛性を有した材料の組合せから形成することもでき、及び/又は、局所的な厚さを有することができる。
【0106】
上記の実施形態において注入口は、圧力チャンバ内の圧力が大気圧であるように、大気に対して開いているけれども、本発明はそれに限定されないということ、及び、別の実施形態において注入口は、チャンバ内に循環圧力を生じるよう搾乳器の本体内に配置された真空ポンプユニット(図示せず)等の圧力発生手段(図示せず)に接続されるということが理解されるはずである。従って、この実施形態において圧力チャンバと乳頭受け空間との間に差圧を生じるために、圧力チャンバ内に正圧を生じて、上記の蠕動動作において弾性的に変形可能な壁23、43を、乳頭受け空間33、45内に配置された乳頭に向かって広げさせるため、そこに乳頭を束縛することが可能である。圧力チャンバ内での正圧の発生は、蠕動運動の力が増やされるのを可能にする。
【0107】
主張は本願において特定の特徴の組合せに対して明確に述べられてきたけれども、本発明の開示の範囲は、明示的又は暗示的に本明細書に開示されたいかなる新規の特徴若しくはいかなる新規の特徴の組合せ、又は、そのいかなる一般概念も、いかなる特許請求における現在の特許請求と同じ発明に関するであろうとなかろうと、本発明と同じ技術的問題のいずれか又は全てを軽減するであろうとなかろうと含むということが理解されるべきである。本出願人等は、本明細書によって、そのような特徴及び/又は特徴の組合せに対して新たな主張を、本願又は本願から得られるいかなるさらなる出願の遂行の間にも明確に述べることができると告知している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳器の乳房受け漏斗に取り付けるよう適応されたインサートであって、乳頭受け空間を画定する円周方向に延びる弾性的に変形可能な壁を含み、該壁に対して使用者の乳頭は位置を定めることができ、当該インサートは、乳房受け漏斗に取り付けられる場合に、前記弾性的に変形可能な壁と乳房受け漏斗との間に圧力チャンバを画定するよう構成され、使用者の乳頭からの母乳の搾り出しに寄与するよう使用者の乳頭に蠕動動作が加えられるように、前記乳頭受け空間と前記圧力チャンバとの間に差圧が加えられた場合に、所定の様式で前記乳頭受け空間内に位置を定めた使用者の乳頭に向かって変形するよう前記壁は構成される、インサート。
【請求項2】
蠕動動作が使用者の乳頭に加えられるように負圧が前記乳頭受け空間に加えられる場合に、所定の様式で前記乳頭受け空間内に位置を定めた使用者の乳頭に向かって変形するよう前記壁は構成される、請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
前記乳頭受け空間は使用者の乳頭を受けるための開口を有し、該開口に最も近い前記壁の剛性は、該開口に対して遠位の前記弾性的に変形可能な壁の剛性よりも低い、請求項1又は2に記載のインサート。
【請求項4】
前記壁のより厚い部分が前記使用者の乳頭に向かって変形するより前に、前記乳頭受け空間内に位置を定めた前記使用者の乳頭に向かって前記壁のより薄い部分が変形するように、前記弾性的に変形可能な壁は、前記開口から離れるに従い増す異なる壁厚を有する、請求項3に記載のインサート。
【請求項5】
前記開口の最も近くに配置された前記壁の第1の部分は、前記開口に対して遠位の前記壁の第2の部分が使用者の乳頭に向かって変形するより前に、前記乳頭受け空間内に位置を定めた使用者の乳頭に向かって変形するよう構成される、請求項3に記載のインサート。
【請求項6】
前記乳頭受け空間と前記圧力チャンバとの間に差圧が加えられた場合に、前記第2の部分が前記使用者の乳房に向かって変形するより前に前記第1の部分が前記使用者の乳房に向かって変形してそこに正圧を加えるように、前記壁の第1の部分は楕円錐台形であり、前記第2の部分は円筒形である、請求項5に記載のインサート。
【請求項7】
前記壁の第1の部分は、前記壁の第2の部分を形成する材料と比較してより低い剛性係数を有する材料から形成される、請求項5に記載のインサート。
【請求項8】
前記壁の上端及び下端の周りを円周方向に延びる、当該インサートを乳房受け漏斗に取り付けるための取り付け手段間を、前記弾性的に変形可能な壁は延びる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項9】
少なくとも1つのリブが前記弾性的に変形可能な壁に沿って縦に延びて、前記乳頭に向かう前記壁の崩壊を制御する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のインサートを含む、搾乳器用乳房受け漏斗。
【請求項11】
剛性の外殻、及び、前記弾性的に変形可能な壁と前記剛性の外殻との間に形成された圧力チャンバを含み、該圧力チャンバは、前記弾性的に変形可能な壁の周りに延びている、請求項10に記載の乳房受け漏斗。
【請求項12】
当該乳房受け漏斗の外部の大気に対して前記圧力チャンバが開いているように、流体注入口が前記剛性の外殻を通って形成される、請求項11に記載の乳房受け漏斗。
【請求項13】
前記インサートが取り外し可能に取り付けられる、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の乳房受け漏斗。
【請求項14】
請求項13に記載の乳房受け漏斗を含む搾乳器であって、使用者の乳房が前記漏斗内に受けられた場合に前記漏斗に負圧を生じる手段を含む、搾乳器。
【請求項15】
前記圧力チャンバ内に正圧を加えて、前記圧力チャンバ内の圧力が増えた場合に使用者の乳頭に向かって変形するよう前記弾性的に変形可能な壁に促す手段をさらに含む、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の搾乳器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−521254(P2012−521254A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501452(P2012−501452)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051222
【国際公開番号】WO2010/109398
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】