説明

搾乳機の洗浄時制御方法

【課題】 乳量計の切換動作(弁部の駆動制御)を必要なときのみ行わせ、洗浄の中断時における無駄な動作を回避することにより省エネルギ性を高めるとともに、弁部等の劣化進行を回避する。
【解決手段】 洗浄動作モードXcの実行中に、乳量計3における器内検出部4の非検出状態が予め設定した待機設定時間Zi以上継続していることを条件に計量容器部3mを貯留側に切換えるとともに、器内検出部4が検出状態になった後は、予め設定した貯留設定時間Zsの経過後に計量容器部3mを排出側に切換え、この後、予め設定した排出設定時間Znの経過後に計量容器部3mを貯留側に切換える切換動作を行い、この後、待機設定時間Ziが経過する前に器内検出部4が検出することを条件に、切換動作を繰り返す制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留式の乳量計を搭載するとともに、搾乳動作モードと洗浄動作モードを設定した搾乳機を制御するための搾乳機の洗浄時制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のストールに係留された乳牛を搾乳する搾乳機を備える搾乳システムは知られており、例えば、特許文献1には、搾乳ユニットの自動搬送装置を備える搾乳システムが開示されている。
【0003】
この搾乳システムは、乳牛を係留する複数のストールの配列方向に沿って配した主レール及びこの主レールから分岐してストール間に配した複数の分岐レールを有するガイドレール部,主待機レールから所定間隔おきに分岐することによりホームポジションに配した複数の分岐待機レールを有する待機レール部,及び主待機レールとガイドレール部を接続する配送レール部を備えるとともに、各レール部を自走して搾乳ユニットを搬送する複数の搬送機(搾乳機)を備えている。これにより、搾乳機をガイドレール部に沿って移動させ、所定の分岐レールまで移動させたなら、搾乳ユニット(搾乳機)に備えるディストリビュータを、ストール側のミルクラインに付設したミルクタップに接続して搾乳を行うとともに、全搾乳が終了したなら搾乳機をホームポジションにおける分岐待機レールまで移動させて搾乳ユニットの洗浄を行うことができる。
【0004】
一方、搾乳ユニットには、通常、乳量計を付設することにより搾乳時における乳量の測定を行っている。搾乳ユニットに付設する乳量計としては、送乳ラインとなるミルクチューブの内部に臨ませた一対の電極を用いて流れる乳を検出する比較的簡易な構成によるフリーフロー式の乳量計が知られているが、近時、より正確な乳量測定が要請され、既に、本出願人も、この要請に応える貯留式の乳量計を特許文献2により提案した。
【0005】
この乳量計は、搾乳機に搭載可能であり、高い測定精度により乳量を測定することができるものであり、基本構成として、送乳ラインの中途に接続し、流入口から流入する乳を貯留可能な計量容器部と、この計量容器部の内部に配し、かつ貯留される乳の低位置の液面を検知する低位置電極部及び貯留される乳の高位置の液面を検知する高位置電極部を有する液面検知部と、計量容器部の下部に設けた流出口を開閉可能な弁機構部と、低位置電極部の検知により流出口を閉じ、かつ高位置電極部の検知により流出口を開くように弁機構部を制御する制御系とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−055122号公報
【特許文献2】特開2011−103813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来における乳量計を搭載した搾乳機は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0008】
第一に、貯留式の乳量計は弁機構部を備えるため、洗浄時にも弁機構部を駆動制御する必要がある。一方、搾乳ユニットを含む搾乳システムの洗浄は、通常、複数の異なる種類の洗浄液、具体的には、水道水,アルカリ洗浄液,酸リンス液及び殺菌液を、洗浄液槽に順次入替えて行うため、入替時には実質的な洗浄が中断する。この場合、搾乳ユニットと洗浄装置はそれぞれ独立した系統となるため、乳量計における弁機構部の駆動制御は、洗浄装置の動作状態に係わりなく継続してしまう。結局、洗浄液の入替時には、いわば無駄な動作が行われることになり、省エネルギ性を高める観点、更には弁部等の劣化進行を回避する観点からも更なる改善の余地があった。
【0009】
第二に、洗浄を行う場合、フリーフロー式の乳量計は、ミルクチューブに洗浄液を流すのみで電極の洗浄も可能となるが、貯留式の乳量計は、弁機構部を備えるため、洗浄時には、弁機構部を駆動制御する必要があり、しかも、十分な洗浄を行うには搾乳時に対して異なる制御により動作させることも必要となる。このため、搾乳ユニットのコントローラには、異なる制御パターンにより動作する搾乳動作モードと洗浄動作モードを設定しているが、搾乳時と洗浄時に、その都度、各動作モードに切換操作する必要があり、作業工数の増加及び作業能率の低下を招くとともに、切換を忘れた場合には、十分に洗浄できなくなるなどのトラブル要因となる虞れがあった。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した搾乳機の洗浄時制御方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る搾乳機の洗浄時制御方法は、上述した課題を解決するため、搾乳ゾーンHsで搾乳を行う搾乳動作モードXsとメンテナンスゾーンHcで洗浄を行う洗浄動作モードXcを設定したコントローラ2を備えるとともに、計量容器部3mに乳Mを一定量貯留して排出する動作を繰り返して計量を行う貯留式の乳量計3を付設した搾乳機Uを制御するに際し、洗浄動作モードXcの実行中に、乳量計3における器内検出部4の非検出状態が予め設定した待機設定時間Zi以上継続していることを条件に計量容器部3mを貯留側に切換えるとともに、器内検出部4が検出状態になった後は、予め設定した貯留設定時間Zsの経過後に計量容器部3mを排出側に切換え、この後、予め設定した排出設定時間Znの経過後に計量容器部3mを貯留側に切換える切換動作を行い、この後、待機設定時間Ziが経過する前に器内検出部4が検出することを条件に、切換動作を繰り返す制御を行うことを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、器内検出部4には、計量容器部3mの内部に臨ませた少なくとも一対の電極4p…を使用し、この電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edが予め設定した設定値Es以上を検出状態と判断することができるとともに、検出値Edが設定値Es未満を非検出状態と判断することができる。また、器内検出部4には、計量容器部3mの内部に臨ませた温度センサ4tを使用し、この温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが予め設定した設定値Ts以上を検出状態と判断することができるとともに、検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断することができる。さらに、器内検出部4には、計量容器部3mの内部に臨ませた少なくとも一対の電極4p…及び計量容器部3mの内部に臨ませた温度センサ4tを使用し、電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edが予め設定した設定値Es以上かつ温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが予め設定した設定値Ts以上を検出状態と判断することができるとともに、電気伝導度の検出値Edが設定値Es未満かつ温度の検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断することができる。一方、待機設定時間Ziは、貯留設定時間Zs及び排出設定時間Znよりも長い時間に設定することができる。他方、洗浄動作モードXcへの切換は、交流電源Pp又はこの交流電源Ppを整流した整流電源Phの、一方を搾乳ゾーンHsにおける搾乳機Uを接続するタップ5sに供給し、かつ他方をメンテナンスゾーンHcにおける搾乳機Uを接続するタップ5mに供給するとともに、搾乳機Uをタップ5s,5mに接続した際に、コントローラ2により、タップ5s,5mから供給される電源が交流電源Ppであるか又は整流電源Phであるかを判別処理することにより行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る搾乳機の洗浄時制御方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 乳量計3における器内検出部4の非検出状態が予め設定した待機設定時間Zi以上継続していることを条件に計量容器部3mを貯留側に切換えるとともに、器内検出部4が検出状態になった後は、予め設定した貯留設定時間Zsの経過後に計量容器部3mを排出側に切換え、この後、予め設定した排出設定時間Znの経過後に計量容器部3mを貯留側に切換える切換動作を行い、この後、待機設定時間Ziが経過する前に器内検出部4が検出することを条件に、切換動作を繰り返す制御を行うようにしたため、乳量計3の切換動作(弁部の駆動制御)を必要なときのみ、即ち、実質的な洗浄中のみ行わせることができ、洗浄液の入替時における無駄な動作を回避できる。これにより、省エネルギ性を高めることができるとともに、弁部等の劣化進行を回避できる。
【0015】
(2) 好適な態様により、器内検出部4に、計量容器部3mの内部に臨ませた少なくとも一対の電極4p…を使用し、この電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edが予め設定した設定値Es以上を検出状態と判断するとともに、検出値Edが設定値Es未満を非検出状態と判断すれば、乳Mの液面検出に用いる既設の電極4p…を洗浄液の有無の検出に兼用できるため、部品の追加が不要となり、低コストに実施できる。
【0016】
(3) 好適な態様により、器内検出部4に、計量容器部3mの内部に臨ませた温度センサ4tを使用し、この温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが予め設定した設定値Ts以上を検出状態と判断するとともに、検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断すれば、乳Mの温度検出に用いる既設の温度センサ4tを洗浄液の有無の検出に兼用できるため、部品の追加が不要となり、低コストに実施できる。
【0017】
(4) 好適な態様により、器内検出部4に、計量容器部3mの内部に臨ませた少なくとも一対の電極4p…及び計量容器部3mの内部に臨ませた温度センサ4tを使用し、電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edが予め設定した設定値Es以上かつ温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが予め設定した設定値Ts以上を検出状態と判断するとともに、電気伝導度の検出値Edが設定値Es未満かつ温度の検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断すれば、洗浄液の有無の検出に異なる二つの検出手段を利用できるため、万が一、一方が誤検出した場合、例えば、夏場等において外気温が高くなり、温度センサ4tが誤検出したような場合であっても、これに基づく誤動作を回避でき、信頼性の高い検出系を構築できる。
【0018】
(5) 好適な態様により、待機設定時間Ziを、貯留設定時間Zs及び排出設定時間Znよりも長い時間に設定すれば、各洗浄処理の終了を確実に検出でき、本発明に係る洗浄時制御方法を的確かつ円滑(安定)に実施できる。
【0019】
(6) 好適な態様により、洗浄動作モードXcへの切換を、交流電源Pp又はこの交流電源Ppを整流した整流電源Phの、一方を搾乳ゾーンHsにおける搾乳機Uを接続するタップ5sに供給し、かつ他方をメンテナンスゾーンHcにおける搾乳機Uを接続するタップ5mに供給するとともに、搾乳機Uをタップ5s,5mに接続した際に、コントローラ2により、タップ5s,5mから供給される電源が交流電源Ppであるか又は整流電源Phであるかを判別処理することにより行うようにすれば、洗浄時には、洗浄動作モードXcに、自動で切換えることができ、作業工数の低減及び作業能率の向上を実現できる。しかも、切換を忘れるなどの不具合を回避できるため、十分に洗浄できなくなるなどのトラブル要因も解消できる。しかも、構成上は、既存の電源供給設備及びコントローラ2を備えれば足り、別途追加する構造上の部材や装置が不要となる。したがって、設備の煩雑化を招く虞れがないとともに、少数の電子部品追加により実現できることから低コスト性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適実施形態に係る洗浄時制御方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
【図2】同洗浄時制御方法による洗浄時の洗浄パターン及び乳量計の開閉パターンのタイミングチャート、
【図3】同洗浄時制御方法を実施できる搾乳機を備える搾乳システムにおける搾乳機搬送系の概要図、
【図4】同搾乳機の全体側面図、
【図5】同搾乳機に搭載する乳量計の原理的構成図、
【図6】同搾乳機を備える搾乳システムにおける送乳系の概要図、
【図7】同搾乳機(搾乳ユニット)の制御系のブロック回路図、
【図8】同搾乳機を備える搾乳システムの動作モード切換方法を実施できる要部の構成を示すブロック系統図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明の理解を容易にするため、搾乳機Uを備える搾乳システム50の概要について、図3〜図8を参照して説明する。
【0023】
図3は、繋留牛舎H内に設置された搾乳システム50における搾乳機U…を搬送する搬送系の概要を示す。繋留牛舎Hは多数のストールAs…が配列するストール群A1…が設けられた搾乳ゾーンHsとこの搾乳ゾーンHsに隣接したメンテナンスゾーンHcを有する。搾乳ゾーンHsでは、各ストールAs…が通路52に沿って順次配されるとともに、各ストールAs…には乳牛C…が繋留される。例示した繋留牛舎Hは、二つの平行したストール群A1,A2を備える。一方、メンテナンスゾーンHcには、図6に示す洗浄装置61等のメンテナンス設備をはじめ、送乳系におけるレシーバジャー62及びバルククーラ63等を備えるとともに、管理コンピュータ等を設置する管理室を備える。
【0024】
そして、ストール群A1(A2も同じ)の上方には、当該ストール群A1に沿った搾乳システム50のガイドレール51を設置する。ガイドレール部51は、ストール群A1に沿って配した主レール51mと、この主レール51mの中途位置から直角方向に分岐し、かつストールAsとAs…間に配した複数の分岐レール51s…を備える。この場合、分岐レール51s…は、配列するストールAs…に対して一つ置き、即ち、相隣る分岐レール51sと51s…間に二つのストールAs…が入るように配する。また、メンテナンスゾーンHcにはホームレール51hを配し、このホームレール51hの端部と主レール51m…の端部を移送レール51tにより連結する。これにより、ガイドレール51の全体が構成される。
【0025】
一方、図3及び図4に示すように、ストール群A1における分岐レール51sの先端近傍には、ストール群A1に沿ったミルクライン(ミルクパイプ)Lm及び真空ライン(真空パイプ)Lvを配設するとともに、ミルクラインLm及び真空ラインLvにおける各分岐レール51sに対向する位置には搾乳用タップ(ミルクタップ)5s…を付設する。この搾乳用タップ5s…には、後述する搾乳機Uの先端に設けたディストリビュータ33が着脱する。搾乳用タップ5sは、ミルクラインLm及び真空ラインLvとの接続口を有するとともに、電源ラインLe(図8参照)の接続端子を有する。この場合、電源ラインLeは、後述する搾乳ユニットUa,Ubの電源となる交流電圧24〔V〕を供給する。具体的には、図8に示すように、商用交流電源AC100〔V〕に、電源プラグ14等を介して降圧トランスを用いた電圧変換部15の一次側を接続し、電圧変換部15の二次側にAC24〔V〕の交流電源Ppを得ている。
【0026】
他方、図6には、搾乳した乳Mを送る搾乳システム50における送乳系の概要を示す。ミルクラインLmは、上述したように、各ストールAs…に沿って配するとともに、一端側及び他端側を、それぞれレシーバジャー62に接続する。なお、図6中、5s…は、ミルクラインLmの中途に付設した前述の搾乳用タップを示す。また、メンテナンスゾーンHcに配したミルクラインLmの中途には、洗浄用タップ5m…を付設する。この洗浄用タップ5m…も基本的には前述した搾乳用タップ5sと同様に構成する。さらに、レシーバジャー62には、モイスチャートラップ65を介して真空ポンプ66を接続するとともに、レシーバジャー62の近傍に位置するミルクラインLmにはエアインジェクタ67を接続する。また、エアインジェクタ67とレシーバジャー62間のミルクラインLmには開閉バルブ68を直列に接続するとともに、洗浄用タップ5m…とエアインジェクタ67間におけるミルクラインLmには、エアインジェクタ67側が低くなる段差部Lpを形成する。さらに、レシーバジャー62の底部に設けた乳出口にはミルクポンプ69の吸入口を接続するとともに、このミルクポンプ69の吐出口は、ミルクパイプLsを介してバルククーラ63に接続する。また、61は洗浄装置を示し、洗浄液Wを収容する洗浄液槽71及びこの洗浄液槽71に洗浄剤を供給する洗浄剤供給部72等を備える。洗浄剤供給部72から供給される洗浄剤には、アルカリ洗浄剤,酸リンス剤及び殺菌剤が含まれる。
【0027】
一方、図3及び図4に示すように、ガイドレール51には、搾乳機U…を装填する。例示の場合、二台の搾乳機U,Uが装填されており、各搾乳機U…はそれぞれガイドレール51に沿って独立して移動できる。搾乳機Uは、ガイドレール部51上を駆動モータにより走行するキャリア部31及びこのキャリア部31に一体の主コントローラ32を備え、キャリア部31は主コントローラ32により駆動制御される。この場合、キャリア部31の停止や移動方向の制御は、キャリア部31に設けた検出部(検出センサ)がガイドレール部51の所定位置に配した被検出部を検出することにより行われる。また、搾乳機Uの先端には、前述した洗浄用タップ5m…に対して着脱するディストリビュータ33を備える。
【0028】
さらに、搾乳機Uは、キャリア部31の両側に吊下げた左右一対の搾乳ユニットUa,Ubを備える。搾乳ユニットUa(搾乳ユニットUbも同じ)は自動離脱装置41を備えるとともに、乳牛Cの各乳頭に装着する四つのティートカップ42…,ミルククロー43等を備える。そして、ティートカップ42…,ミルククロー43,自動離脱装置41及びディストリビュータ33間はミルクチューブLmt…により接続するとともに、ティートカップ42…,自動離脱装置41及びディストリビュータ33間は真空チューブLvt…により接続する。
【0029】
また、自動離脱装置41はハウジング41hにより覆われ、このハウジング41h内には、搾乳ユニットUaの全体の制御を司るコンピュータ機能を有する図7に示す搾乳ユニットコントローラ2を内蔵する。このコントローラ2は、CPU,メモリ(ROM,RAM等)11m等のハードウェアを有するコントローラ本体11を備え、メモリ11mには、各種データを登録するデータエリア11md及び各種プログラム(ソフトウェア)を格納するプログラムエリア11mpを有し、少なくとも各種プログラムには、搾乳ゾーンHsで搾乳を行うための搾乳動作モードXsとメンテナンスゾーンHcで洗浄を行うための洗浄動作モードXcに係わる処理プログラム(シーケンス制御プログラム)が含まれるとともに、本実施形態に係る洗浄時制御方法を実行する処理プログラムが含まれる。一方、ハウジング41hの正面側に設けた制御パネルには、図7に示す表示部11v及び操作部11sを配設し、この表示部11v及び操作部11sはコントローラ本体11に接続する。この場合、表示部11vには、本実施形態に係る洗浄時制御方法に関連して、洗浄中であることを、例えば、「洗浄」の文字により表示する洗浄表示部12sと、洗浄液Wの入替中であることを、例えば、「待機」の文字により表示する待機表示部12wを設ける。さらに、自動離脱装置41の内部には、巻上モータ46を配設する。この巻上モータ46により、ミルククロー43に接続した離脱用ワイヤ45を巻上げることができる。
【0030】
他方、自動離脱装置41の内部には、タップ5s(ディストリビュータ33)から供給される交流電源Ppを直流化することにより搾乳ユニットUaの動作用電源として出力する整流回路49a及び平滑回路49bからなる直流電源回路49を備える。具体的には、図7に示すように、入力側から、サージアブソーバSA1、ノイズ除去用のリアクタンスL1,L2及びコンデンサC1、整流用のダイオードスタックDs、平滑コンデンサC2を備え、図示のように結線される。これにより、直流電源回路49の入力には、ディストリビュータ33(タップ5s)からAC24〔V〕が印加され、直流電源回路49の出力には、直流化されたDC電源を得ることができ、このDC電源は搾乳ユニットUaにおける動作用電源として用いられる。なお、図7中、17はドライブ回路、18はパルセータ(バルブ)を示す。
【0031】
さらに、自動離脱装置41のハウジング41hの背面側には乳量計3を搭載する。この乳量計3は、計量容器部3mに乳Mを一定量貯留して排出する動作を繰り返して計量を行う貯留式の乳量計を用いる。搾乳ユニットUaに、このような乳量計3を搭載すれば、搾乳機Uにおいて乳量を正確に測定という基本的なニーズに確実に応えることができる。乳量計3の構成を図5に示す。例示の乳量計3は、ミルクチューブLmtの中途に接続する計量容器部3mを備える。計量容器部3mは、縦方向中間部の二カ所に括れ部を有し、この括れ部により区画された、中間部を計量室Rm,上部を気液分離室Rs,下部を気液混合緩衝室Rdとして機能させる。また、上側の括れ部により中間口3msが形成され、下側の括れ部により流出口3meが形成されるため、この中間口3msと流出口3me間に、上下に一対の弁体を有する弁部22を配する。さらに、気液分離室Rsの上部には乳Mの流入口3miを臨ませ、この流入口3miに上流側のミルクチューブLmtを接続するとともに、気液混合緩衝室Rdの底部には乳Mの排出口3moを設け、この排出口3moに下流側のミルクチューブLmtを接続する。
【0032】
他方、計量容器部3mには器内検出部4を配設する。この器内検出部4は、計量容器部3mの内部に臨ませ、かつ上下方向の三つの位置(高さ)にそれぞれ配した三つの電極4p…を備えるとともに、計量容器部3mの内部に臨ませた温度センサ4tを備える。この場合、搾乳時において、電極4p…は、各電極4p…間の電気伝導度を検出することにより、流入した乳Mの液面を検出する機能を有するとともに、温度センサ4tは、流入した乳Mの温度を検出する機能を有する。また、図5に示すように、各電極4p…及び温度センサ4tは検出処理部25の入力部に接続するとともに、検出処理部25の出力部はコントローラ本体11に接続する。
【0033】
これにより、洗浄時において、電極4p…は、各電極4p…間の電気伝導度を検出することにより、洗浄液Wの有無を検出する機能を有するとともに、温度センサ4tは、温度を検出することにより洗浄液Wの有無を検出する機能を有する。この場合、電極4p…により検出した電気伝導度(EC)の検出値Edが予め設定した設定値Es(例えば、5.0〔mS/cm〕)以上を検出状態と判断するとともに、検出値Edが設定値Es未満を非検出状態と判断する。また、温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが予め設定した設定値Ts以上を検出状態と判断するとともに、検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断する。そして、本実施形態では、洗浄時において、電極4p…と温度センサ4tの双方を利用し、電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edが設定値Es以上かつ温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが設定値Ts以上を検出状態と判断するとともに、電気伝導度の検出値Edが設定値Es未満かつ温度の検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断するようにした。この検出状態の判断と非検出状態の判断は、検出処理部25で行われる。
【0034】
このように、器内検出部4に、計量容器部3mの内部に臨ませた少なくとも一対の電極4p…を使用し、この電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edが設定値Es以上を検出状態と判断するとともに、検出値Edが設定値Es未満を非検出状態と判断すれば、乳Mの液面検出に用いる既設の電極4p…を洗浄液Wの有無の検出に兼用できるため、部品の追加が不要となり、低コストに実施できる利点がある。また、器内検出部4に、計量容器部3mの内部に臨ませた温度センサ4tを使用し、この温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが設定値Ts以上を検出状態と判断するとともに、検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断すれば、乳Mの温度検出に用いる既設の温度センサ4tを洗浄液Wの有無の検出に兼用できるため、部品の追加が不要となり、低コストに実施できる利点がある。特に、本実施形態のように、器内検出部4として、電極4p…と温度センサ4tの双方を利用し、電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edが設定値Es以上かつ温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdが設定値Ts以上を検出状態と判断するとともに、電気伝導度の検出値Edが設定値Es未満かつ温度の検出値Tdが設定値Ts未満を非検出状態と判断するようにすれば、洗浄液Wの有無の検出に異なる二つの検出手段を利用できるため、万が一、一方が誤検出した場合、例えば、夏場等において外気温が高くなり、温度センサ4tが誤検出したような場合であっても、
これに基づく誤動作を回避でき、信頼性の高い検出系を構築できる。
【0035】
また、計量容器部3mの上端には弁駆動部24を設け、この弁駆動部24と弁部22は通気シャフト26により接続する。弁駆動部24は負圧が付与されることにより弁部22を上昇させ、負圧が解除されることにより弁部22を下降させる。このため、この負圧の付与(ON)又は解除(OFF)を行う電磁駆動式の三方バルブ19を備えており、この三方バルブ19はコントローラ2から付与されるバルブ切換信号により切換えられる。なお、この三方バルブ19もハウジング41hの内部に配設される。その他、乳量計3において、27は通気筒部、28はサンプリング口をそれぞれ示す。
【0036】
このような搾乳システム50により、搾乳時には、搾乳ユニットコントローラ2の動作モードを搾乳動作モードXsに切換える。これにより、少なくとも乳量計3は乳量を測定する動作を行う。また、搾乳機Uは、ホームポジションからホームレール51h,移送レール51t,主レール51mに沿って分岐レール51sまで移動し、分岐レール51sの定位置に達すれば、先端のディストリビュータ33が搾乳用タップ5sに装着される。自動搬送方式の場合、ディストリビュータ33が搾乳用タップ5sに装着されるまでは自動で行われる。そして、一方の搾乳ユニットUa(他方の搾乳ユニットUbも同じ)における各ティートカップ42…を乳牛Cの乳頭に装着すれば、搾乳ユニットUaにより搾乳が行われ、搾乳された乳Mは、ミルクチューブLmtを通して乳量計3に送られる。乳量計3は、上述したように、搾乳動作モードXsにより乳量の測定を行う。
【0037】
即ち、乳量計3に送られた乳Mは、流入口3miから計量容器部3mの内部に流入する。流入初期では、弁部22は下降位置(閉位置)にあり、中間口3msは開き、かつ流出口3meは閉じているため、乳Mは、計量容器部3mの内部に貯留される。そして、乳Mの液面が器内検出部4の高位置(最上位置)の電極4pに達すれば、コントローラ2は、三方バルブ19を切換制御して弁部22を上昇位置(開位置)へ変位させる。これにより、中間口3msが閉じ、かつ流出口3meが開き、計量室Rm内の乳Mは流出口3meを通って気液混合緩衝室Rdに流入し、排出口3moから排出される。排出された乳MはミルクチューブLmtを通ってディストリビュータ33に至り、搾乳用タップ5sを介してミルクラインLmに流入する。一方、弁部22を上昇位置へ変位させた後、予め設定した設定時間が経過すれば、三方バルブ19を切換制御して弁部22を下降位置に復帰させる。以上の動作(処理)は搾乳が終了するまで繰り返される。コントローラ2では、計量室Rmにより計量した回数をカウントすることにより全乳量、更には流量(速度)等を演算処理により求める。さらに、ミルクラインLm内に流入した乳Mは、ミルクラインLm内を送乳され、レシーバジャー62に流入する。レシーバジャー62に乳Mが満たされれば、ミルクポンプ69がONし、レシーバジャー62の乳Mは、ミルクポンプ69及びミルクパイプLsを送乳されてバルククーラ63に収容される。
【0038】
他方、全ての搾乳が終了すれば、搾乳機Uはホームポジションに戻され、洗浄装置71により搾乳機U…を含めた搾乳システム50全体の洗浄処理が行われる。洗浄時には、搾乳機Uを洗浄用タップ5mに装着するとともに、搾乳ユニットコントローラ2の動作モードを洗浄動作モードXcに切換える。これにより、少なくとも乳量計3は洗浄のための動作を行う。洗浄時には、図6に示すように、搾乳ユニットUa…の各ティートカップ42…を洗浄液Wを収容した洗浄液槽71に浸漬する。また、エアインジェクタ67及び開閉バルブ68をそれぞれ閉側に切換え、真空ポンプ66を作動させる。これにより、ミルクラインLmには、負圧が生じ、洗浄液槽71の洗浄液Wはティートカップ42…により吸入され、乳量計3に送られる。乳量計3では、後述する洗浄動作モードXcによる駆動制御(動作)が行われる。
【0039】
一方、乳量計3の排出口3moから排出された洗浄液Wは、ディストリビュータ33に至り、さらに洗浄用タップ5mを介してミルクラインLmに流入するとともに、この際、洗浄液Wは段差部Lpに貯留される。洗浄液Wが段差部Lpに満たされる時間(設定時間)に達したなら、エアインジェクタ67を開側に切換える。この結果、空気がミルクラインLmに進入し、段差部Lpに貯留された洗浄液Wは、スラグ流となってミルクラインLmを一巡するように流れた後、レシーバジャー62に流入する。以上の動作を繰り返し、レシーバジャー62に洗浄液が満たされれば、ミルクポンプ69がONする。これにより、レシーバジャー62の洗浄液Wは、ミルクポンプ69及びミルクパイプLsを流れてバルククーラ63に流入し、バルククーラ63の出口から外部に排出される。なお、ミルクパイプLsを流れる洗浄液Wは、バルククーラ63に流入されることなく、切換バルブ等を介して洗浄液槽71に戻してもよい。
【0040】
また、本実施形態に係る搾乳システム50は、搾乳動作モードXsと洗浄動作モードXcを自動で切換える動作モードの切換機能を備えている。この場合、搾乳用タップ5s…側には、図8に示すように、交流電源Ppを整流し、この整流した整流電源Phを洗浄用タップ5m…に供給できる電源供給手段Fpを設ける。この場合、電源供給手段Fpには、交流電源Ppを全波整流して整流電源Phを得る全波整流回路47を設ける。具体的には、整流用のダイオードスタックを使用し、電源ラインLe(AC24〔V〕)にダイオードスタックの一次側を並列接続するとともに、ダイオードスタックの二次側を電源ラインLetを介して洗浄用タップ5m…に接続する。このように、電源供給手段Fpに、交流電源Ppを全波整流して整流電源Phを得る全波整流回路47を設けて構成すれば、基本的には、一個のダイオードスタックの追加で足りるため、電源供給手段Fpの実施容易化及び低コスト化を図る観点から最も望ましい形態で実施できる利点がある。
【0041】
他方、搾乳ユニットUa(搾乳ユニットUbも同じ)のコントローラ2には、図7及び図8に示すように、タップ5s,5mから供給される電源が交流電源Ppであるか又は整流電源Phであるかを判別処理する電源判別手段Fdと、この電源判別手段Fdの判別処理の結果に基づいて搾乳動作モードXs又は洗浄動作モードXcに切換処理するモード切換機能Fccを有する動作モード切換手段Fcを設ける。この場合、電源判別手段Fdは、判別回路Fdcとして構成する。判別回路Fdcは、交流電源Ppを整流処理して半波成分Ppsを出力し、かつ整流電源Phを整流処理して0成分Phoを出力する整流出力回路48を備える。この整流出力回路48として、具体的には、図7に示すように、整流用のダイオードDpを使用することができる。このように、電源判別手段Fdに、交流電源Ppを整流処理して半波成分Ppsを出力し、かつ整流電源Phを整流処理して0成分Phoを出力する整流出力回路48を設ければ、一個のダイオードを基本とした整流回路により実現できるため、電源判別手段Fdの実施容易化及び構成簡易化を図る観点から最も望ましい形態により実施できる利点がある。
【0042】
なお、48cはダイオードDpの出力を安定化させる安定化回路である。この安定化回路48cは機能上、必須ではないが、設けることにより、より確実かつ安定した判別を行うことができる。安定化回路48cは、ダイオードDpの出力が入力する入力側から、平滑用のコンデンサC3、分圧抵抗R1,R2、オペアンプOP1、基準電圧部Esを備える。したがって、ダイオードDpは、前述した直流電源回路49のリアクタンスL2の二次側から整流出力回路48の入力側に対して順方向に接続する。また、オペアンプOP1の出力部はコントローラ本体11に接続する。これにより、整流出力回路48と安定化回路48cは判別回路を構成し、電源判別手段Fdとして機能する。さらに、コントローラ2は、オペアンプOP1の出力部から付与される「1」信号又は「0」信号に基づいて搾乳動作モードXs又は洗浄動作モードXcに切換処理する動作モード切換手段Fcを構成する。
【0043】
次に、本実施形態に係る洗浄時制御方法について、各図を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0044】
図2は、洗浄動作モードXcによる洗浄時の洗浄パターンPwを示している。例示の洗浄パターンPwでは、すすぎ処理(5〔分〕)→入替期間(8〔分〕)→アルカリ洗浄処理(15〔分〕)→入替期間(8〔分〕)→すすぎ処理(10〔分〕)→入替期間(8〔分〕)→酸リンス処理(10〔分〕)が行われ、さらに、この後、入替期間を経て殺菌処理が行われる。入替期間は洗浄液槽71に収容する各洗浄液W…の入替に要する時間であり、全体では無視できない長い時間となる。また、図2中、Pvsは、乳量計3における弁部22の開閉パターンを示している。同図から明らかなように、弁部22の開閉動作は、各洗浄処理(すすぎ処理,アルカリ洗浄処理,すすぎ処理,酸リンク処理,殺菌処理)においてのみ実行され、入替期間(待機状態)では開閉動作は行われず、停止状態となる。本実施形態に係る洗浄時制御方法は、このような弁部22の合理的な開閉動作(開閉パターン)を自動で実行できるようにしたものである。以下、具体的な処理手順について説明する。
【0045】
今、搾乳機Uのディストリビュータ33が洗浄用タップ5mに装着(接続)された場合を想定する。これにより、整流電源Phが電源ラインLetから洗浄用タップ5mを介してディストリビュータ33に供給される。そして、直流電源回路49により直流化されることにより、搾乳ユニットUa,Ubの動作用電源(直流電源)として供給される。また、整流電源Phは、ダイオードDpにより整流され、ダイオードDpの出力には0成分Phoが出力する。この結果、オペアンプOP1の出力部にも「0」信号が出力し、コントローラ2に付与される。コントローラ2に「0」が付与されれば、モード切換機能Fccにより、洗浄動作モードXcが選択され、洗浄動作モードXcによる処理が行われる(ステップS1)。このように、コントローラ2は、整流電源Phが供給されることにより、洗浄処理が行われることを、いわば自動で判別し、洗浄動作モードXcを選択する。一方、洗浄動作モードXcが選択されることにより、コントローラ2は、洗浄待機状態となり、表示部11vでは、待機表示部12wにより「待機」が表示される。洗浄待機状態では、弁部22が下降位置(閉位置)にあり、流出口3meを閉じ、中間口3msを開く。即ち、貯留側に切換わっている。
【0046】
また、電極4p…により当該電極4p…間の電気伝導度(EC)が検出され、この検出結果は検出処理部25に付与されるとともに、温度センサ4tにより温度が検出され、この検出結果も検出処理部25に付与される。これにより、検出処理部25では、電気伝導度(EC)の検出結果となる検出値Edと予め設定した設定値Es(例示は、0.5〔mS〕)を比較し、検出値Edが設定値Es以上であるか否かを判断する(ステップS2)。さらに、温度の検出結果となる検出値Tdと予め設定した設定値Ts(例示は、35〔℃〕)を比較し、検出値Tdが設定値Ts以上であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0047】
一方、洗浄装置61による洗浄処理が開始すれば、最初にすすぎ処理が行われる。すすぎ処理では、洗浄液Wとなる水道水(温水)がティートカップ42…から吸入され、乳量計3に流入する。この際、乳量計3の弁部22は、貯留側となる下降位置(閉位置)にあるため、洗浄液Wは計量容器部3mに貯留される。この結果、検出値Edは設定値Es以上になるとともに、検出値Tdも設定値Ts以上になり、双方が検出状態となるため、コントローラ2のタイマ機能が計時を開始するとともに、表示部11vでは、洗浄表示部12sにより「洗浄」が表示される。即ち、実質的な洗浄状態となる(ステップS3,S4,S5)。洗浄状態では、計量容器部3m内に洗浄液Wが満ち、オーバーフローした洗浄液Wは通気シャフト26の上端口から排出される。これにより、乳量計3に対する第一の洗浄態様による洗浄が行われる。この状態は予め設定した貯留設定時間Zs(例えば、10〔秒〕)だけ継続する。
【0048】
そして、タイマ機能により貯留設定時間Zsを計時すれば、コントローラ2は、弁部22を排出側となる上昇位置(開位置)に切換える(ステップS6,S7)。また、コントローラ2は計時をリセットし、再計時を開始する(ステップS7,S8)。これにより、貯留された洗浄液Wは流出口3meから排出されるとともに、排出後は、洗浄液Wが計量容器部3mに満ちることなく流れ落ち、流出口3me及び排出口3moからそのまま排出される。これにより、乳量計3に対する第二の洗浄態様による洗浄が行われる。この状態は予め設定した排出設定時間Zn(例えば、10〔秒〕)だけ継続する。そして、タイマ機能により排出設定時間Znを計時すれば、コントローラ2は、弁部22を貯留側となる下降位置(閉位置)に切換える(ステップS9,S10)。また、コントローラ2は計時をリセットし、再計時を開始する(ステップS10,S11)。
【0049】
以後、すすぎ処理が終了するまで、弁部22の開閉動作が繰り返して行われ、乳量計3に対する効果的な洗浄が行われる(ステップS12,S13,S5…)。他方、すすぎ処理が終了すれば、乳量計3に対する洗浄液Wの流入が無くなる。これにより、貯留設定時間Zsを経過しても弁部22は閉じた状態を維持する。そして、予め設定した待機設定時間Zi(例えば、1〔分〕)が経過すれば、コントローラ2は、すすぎ処理が終了したものと判断し、洗浄待機状態に切換わる。この結果、表示部11vでは、待機表示部12wにより「待機」が表示される。洗浄待機状態では、弁部22が下降位置(閉位置)にあるため、洗浄液Wの入替期間が経過し、次のアルカリ洗浄処理が開始するまで、弁部22の開閉動作が停止した洗浄待機状態を維持する(ステップS14,S15,S2…)。なお、待機設定時間Ziは、このような判定を行うため、前述した貯留設定時間Zs及び排出設定時間Znよりも長い時間を設定する。これにより、各洗浄処理の終了を確実に検出でき、本発明に係る洗浄時制御方法を的確かつ円滑(安定)に実施できる。以上の一連の動作は、最終の殺菌処理が終了するまで、同様に繰り返して行われる(S2…S15)。
【0050】
よって、このような本実施形態に係る洗浄時制御方法によれば、乳量計3における器内検出部4の非検出状態が予め設定した待機設定時間Zi以上継続していることを条件に計量容器部3mを貯留側に切換えるとともに、器内検出部4が検出状態になった後は、予め設定した貯留設定時間Zsの経過後に計量容器部3mを排出側に切換え、この後、予め設定した排出設定時間Znの経過後に計量容器部3mを貯留側に切換える切換動作を行い、この後、待機設定時間Ziが経過する前に器内検出部4が検出することを条件に、切換動作を繰り返す制御を行うようにしたため、乳量計3の切換動作(弁部の駆動制御)を必要なときのみ、即ち、実質的な洗浄中のみ行わせることができ、洗浄液の入替時における無駄な動作を回避できる。これにより、省エネルギ性を高めることができるとともに、弁部等の劣化進行を回避できる。
【0051】
なお、洗浄が終了し、次回の搾乳時に、ディストリビュータ33を搾乳用タップ5sに接続すれば、交流電源Ppが電源ラインLeから搾乳用タップ5sを介してディストリビュータ33に供給される。そして、直流電源回路49により直流化されることにより、搾乳ユニットUa,Ubの動作用電源(直流電源)として供給される。また、これにより、自動で搾乳動作モードXsに切換えられる。即ち、交流電源Ppは、整流出力回路48に付与され、ダイオードDpにより整流される。この出力は交流電源Ppを半波整流した半波成分Ppsとなるとともに、この半波成分PpsはコンデンサC3により平滑された後、分圧抵抗R1,R2により分圧(降圧)される。さらに、分圧された電圧は、オペアンプOP1の非反転入力部に付与されるとともに、オペアンプOP1の反転入力部には基準電圧部Esから基準電圧が付与されるため、オペアンプOP1の出力部には、「1」信号が出力し、コントローラ2に付与される。コントローラ2に「1」信号が付与されれば、モード切換機能Fccにより、搾乳動作モードXsが自動で選択される。これにより、搾乳動作モードXsによる処理が行われる(ステップS21,S22,S23)。即ち、コントローラ2は、交流電源Ppが供給されることにより、搾乳処理が行われることを、いわば自動で判別し、搾乳動作モードXsを選択する。
【0052】
したがって、本実施形態に係る搾乳機Uのモード切換機能Fccによれば、搾乳機Uをタップ5s,5mに接続した際に、搾乳機Uに備えるコントローラ2により、タップ5s,5mから供給される電源が交流電源Ppであるか又は整流電源Phであるかを判別処理し、搾乳動作モードXs又は洗浄動作モードXcに切換処理するため、搾乳時又は洗浄時には、それぞれ対応する搾乳動作モードXs又は洗浄動作モードXcに、自動で切換えることができ、作業工数の低減及び作業能率の向上を実現できる。しかも、切換を忘れるなどの不具合を回避できるため、乳量の測定が不能になったり十分に洗浄できなくなるなどのトラブル要因も解消できる。また、交流電源Pp又はこの交流電源Ppを整流した整流電源Phの、一方を搾乳ゾーンHsにおける搾乳機Uを接続するタップ5sに供給し、かつ他方をメンテナンスゾーンHcにおける搾乳機Uを接続するタップ5mに供給する電源供給手段Fpを備えるとともに、搾乳機Uに備えるコントローラ2に、タップ5s,5mから供給される電源が交流電源Ppであるか又は整流電源Phであるかを判別処理する電源判別手段Fdと、この電源判別手段Fdの判別処理の結果に基づいて、搾乳動作モードXs又は洗浄動作モードXcに切換処理する動作モード切換手段Fcとを設けたため、構成上は、既存の電源供給設備及びコントローラ2を備えれば足り、別途追加する構造上の部材や装置が不要となる。したがって、設備の煩雑化を招く虞れがないとともに、少数の電子部品追加により実現できることから低コスト性に優れる利点がある。
【0053】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の手法,構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、乳量計3の内部構造は、例示に限定されるものではなく、計量容器部3mを貯留側又は排出側に選択的に切換える機能を有すれば足り、各種タイプの乳量計3に適用できる。また、例示は、電極4p…により検出した電気伝導度の検出値Edと温度センサ4tにより検出した温度の検出値Tdの双方を利用する場合について説明したが、電気伝導度の検出値Ed又は温度の検出値Tdのいずれか一方のみを利用する場合を排除するものではない。さらに、洗浄動作モードXcへの切換は、交流電源Pp又はこの交流電源Ppを整流した整流電源Phを利用して自動で切換える場合を例示したが、手動により切換える場合を排除するものではない。なお、搾乳機Uとして、一対の搾乳ユニットUa,Ubを搭載するタイプを例示したが、一つの搾乳ユニットUaを搭載するタイプであってもよい。したがって、この場合には、搾乳ユニットUaが搾乳機Uとなる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る洗浄時制御方法は、貯留式の乳量計を搭載するとともに、搾乳動作モードと洗浄動作モードを設定した各種の搾乳機に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
2:コントローラ,3:乳量計,3m:計量容器部,4:器内検出部,4p…:電極,4t:温度センサ,5s:タップ,5m:タップ,U:搾乳機,Hs:搾乳ゾーン,Hc:メンテナンスゾーン,M:乳,Ed:電気伝導度の検出値,Es:電気伝導度の設定値,Td:温度の検出値,Ts:温度の設定値,Pp:交流電源,Ph:整流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳ゾーンで搾乳を行う搾乳動作モードとメンテナンスゾーンで洗浄を行う洗浄動作モードを設定したコントローラを備えるとともに、計量容器部に乳を一定量貯留して排出する動作を繰り返して計量を行う貯留式の乳量計を付設した搾乳機を制御する搾乳機の洗浄時制御方法であって、前記洗浄動作モードの実行中に、前記乳量計における器内検出部の非検出状態が予め設定した待機設定時間以上継続していることを条件に前記計量容器部を貯留側に切換えるとともに、前記器内検出部が検出状態になった後は、予め設定した貯留設定時間の経過後に前記計量容器部を排出側に切換え、この後、予め設定した排出設定時間の経過後に前記計量容器部を貯留側に切換える切換動作を行い、この後、前記待機設定時間が経過する前に前記器内検出部が検出することを条件に、前記切換動作を繰り返す制御を行うことを特徴とする搾乳機の洗浄時制御方法。
【請求項2】
前記器内検出部は、前記計量容器部の内部に臨ませた少なくとも一対の電極を使用し、この電極により検出した電気伝導度の検出値が予め設定した設定値以上を検出状態と判断するとともに、前記検出値が前記設定値未満を非検出状態と判断することを特徴とする請求項1記載の搾乳機の洗浄時制御方法。
【請求項3】
前記器内検出部は、前記計量容器部の内部に臨ませた温度センサを使用し、この温度センサにより検出した温度の検出値が予め設定した設定値以上を検出状態と判断するとともに、前記検出値が前記設定値未満を非検出状態と判断することを特徴とする請求項1記載の搾乳機の洗浄時制御方法。
【請求項4】
前記器内検出部は、前記計量容器部の内部に臨ませた少なくとも一対の電極及び前記計量容器部の内部に臨ませた温度センサを使用し、前記電極により検出した電気伝導度の検出値が予め設定した設定値以上かつ前記温度センサにより検出した温度の検出値が予め設定した設定値以上を検出状態と判断するとともに、前記電気伝導度の検出値が前記設定値未満かつ前記温度の検出値が前記設定値未満を非検出状態と判断することを特徴とする請求項1記載の搾乳機の洗浄時制御方法。
【請求項5】
前記待機設定時間は、前記貯留設定時間及び前記排出設定時間よりも長い時間に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の搾乳機の洗浄時制御方法。
【請求項6】
前記洗浄動作モードへの切換は、交流電源又はこの交流電源を整流した整流電源の、一方を前記搾乳ゾーンにおける前記搾乳機を接続するタップに供給し、かつ他方を前記メンテナンスゾーンにおける前記搾乳機を接続するタップに供給するとともに、前記搾乳機を前記タップに接続した際に、前記コントローラにより、前記タップから供給される電源が前記交流電源であるか又は前記整流電源であるかを判別処理することにより行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の搾乳機の洗浄時制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102700(P2013−102700A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246638(P2011−246638)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)