説明

摩擦撹拌接合装置

【課題】コストアップを抑制し、破損の防止を図りながらワークの押圧が可能な摩擦撹拌接合装置を提供する。
【解決手段】工具保持部12と、工具保持部12に保持された工具11による接合方向の前方に設けられ、被接合部材W1の接合箇所表面を押圧する押圧手段13とを備え、押圧手段13は、被接合部材Wに向けて荷重を与える荷重付与部30と、荷重付与部30と工具保持部12に保持された工具11との間に設けられて被接合部材W1における上記接合箇所表面に当接する第一ローラ33と、荷重付与部30に対して第一ローラ33と反対側に設けられて被接合部材Wの表面に当接する第二ローラ34と、荷重付与部30に取り付けられて、第一ローラ33及び第二ローラ34を支持する支持部32とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対して摩擦撹拌接合を行なう摩擦撹拌接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二つの部材からなるワークを接合する方法の一つとして摩擦撹拌接合が知れられている。摩擦撹拌接合とは、ワークの接合箇所に、工具のショルダ面と呼ばれる面で所定の加圧力で加圧した状態で該工具を回転させることにより、ワーク表面に摩擦熱を生じさせ、この摩擦熱によってワークを軟化させて接合させるものである。
【0003】
このような摩擦撹拌接合においては、ワークが成形時に変形してしまうことや、摩擦撹拌接合中の熱変形等によって、ワークである被接合部材同士の突き合わせ部の上面に段差、即ち目違いが生じることがある。そして、この目違いが発生した状態で摩擦撹拌接合を実行した場合、接合部にトンネル状空洞や溝等の接合不良が発生し、接合強度が低下してしまうおそれがある。ここで例えば特許文献1には、このような接合不良の発生を防止する手法が開示されている。
【0004】
特許文献1の摩擦撹拌接合装置では、回転ツールの前進方向延長上において、二つの被接合部材の端部上面を加圧ローラによって加圧しながら、被接合部材同士の段差である目違いを所定の範囲内に入るようにした状態にして摩擦撹拌接合を行なっている。そしてこの加圧ローラは、加圧部を回転ツールになるべく近接させるように、この加圧ローラを支持する押付け軸が上下方向の中途位置から屈曲して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−202645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている手法では、加圧ローラの押付け軸が屈曲していることによって、強い加圧力を作用させると、この荷重付与部に大きなモーメントが生じることとなり、破損のおそれがあった。また、破損を防止するために高剛性の材料を上記押付け軸に用いた場合には、大幅なコストアップとなってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、コストを抑えて破損の防止を図りながら、目違いの抑制が可能な摩擦撹拌接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る摩擦撹拌接合装置は、工具保持部と、前記工具保持部に保持された工具による接合方向の前方に設けられ、ワークの接合箇所表面を押圧する押圧手段とを備え、前記押圧手段は、前記ワークに向けて荷重を与える荷重付与部と、前記荷重付与部と前記工具保持部に保持された工具との間に設けられて前記ワークにおける前記接合箇所表面に当接する第一の当接部と、前記荷重付与部に対して前記第一の当接部と反対側に設けられて前記ワークの表面に当接する第二の当接部と、前記荷重付与部に取り付けられて、前記第一の当接部及び前記第二の当接部を支持する支持部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような摩擦撹拌接合装置においては、ワークの押圧の際に、第一の当接部及び第二の当接部から荷重付与部にモーメントが作用するが、第一の当接部と第二の当接部とが荷重付与部を中心に対向して設けられているため、第一の当接部及び第二の当接部それぞれに発生するモーメントが互いに打ち消しあう。従って、荷重付与部がワークに対して大きな押圧力を付与した場合であっても、荷重付与部の破損を防止でき、押圧手段の第一の当接部が工具による接合方向の前方において工具に隣接して、確実にワークの接合箇所表面を押圧可能となる。
【0010】
また、前記支持部は、前記接合方向に直交する軸回りに回転可能に、前記荷重付与部に取り付けられていてもよい。
【0011】
支持部が回転可能とされていることで、ワークの表面に凹凸がある場合に、この凹凸に対して支持部が追従して動くことが可能となり、確実に接合箇所表面を押圧することができる。
【0012】
さらに、前記第一の当接部及び前記第二の当接部が、前記接合方向に直交する回転軸回りに回転可能に前記支持部に支持されて、前記回転軸に沿う方向に外周面が径方向外側に張り出すように形成された凸曲面をなすローラであってもよい。
【0013】
このようなローラによって、回転軸に沿う方向にワークが傾斜する場合でも、ローラがワークに肩当りすることを防止でき、ワークの傷付きを防止しながら、確実に押圧が可能となる。
【0014】
また、前記押圧手段を冷却する第一冷却手段をさらに備えていてもよい。
【0015】
第一冷却手段によって、接合にともなって発生する熱の影響で押圧手段の損傷を防止でき、より確実に押圧しながら接合可能となる。
【0016】
さらに、前記第一冷却手段が、前記押圧手段のうちの前記第一の当接部を冷却してもよい。
【0017】
第一の当接部は、押圧手段のうち工具から最も近い位置に配置されるため、熱の影響を受け易いが、第一の当接部を冷却することによって押圧手段の冷却をより効果的に行なうことができる。
【0018】
また、前記工具保持部に保持された工具に対して前記接合方向の後方となる位置で、前記接合箇所表面を冷却する第二冷却手段をさらに備えていてもよい。
【0019】
第二冷却手段によって、接合後に速やかに接合箇所の熱除去が可能となる。
【0020】
さらに、前記工具保持部に保持された工具の接合方向後方に設けられ、前記ワークの前記接合箇所表面を押圧する補助押圧手段をさらに備えていてもよい。
【0021】
このような補助押圧手段によって、工具の接合方向後方においてもワークを押圧可能となり、さらに確実にワークを押圧した状態で接合を行なうことができる。
【0022】
また、前記第一の当接部と前記工具保持部に保持された工具との間における前記ワークを構成する被接合部材同士の目違いを検出する目違い検出手段をさらに備えていてもよい。
【0023】
このような目違い検出手段によって、被接合部材同士の間に発生する目違いを検出できるため、この目違いによって押圧手段の押圧力を変化させ、目違いを抑制しながら接合を行なうことができ、さらなる接合強度向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の摩擦撹拌接合装置によれば、第一の当接部と第二の当接部とによって、押圧手段のコスト抑制と破損防止を達成しながらワークが押圧され、目違いの抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る摩擦撹拌接合装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る摩擦撹拌接合装置の押圧手段を上方から見た図であって、図1の矢視Aを示すものである。
【図3】本発明の実施形態に係る摩擦撹拌接合装置の補助押圧手段を接合方向から見た図であって、図1の矢視Bを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る摩擦撹拌接合装置1について説明する。
摩擦撹拌接合装置1は、ワークWを摩擦撹拌接合によって接合する装置である。以下では、板状をなす一対の被接合部材W1からなるワークWにおいて、被接合部材W1の接合端面同士を突き合わせ、一対の被接合部材W1を裏当て19に載置した状態で、上方から摩擦撹拌接合装置1によって接合する例について説明する。
【0027】
図1に示すように摩擦撹拌接合装置1は、接合を行なうための工具11を保持する工具保持部12と、被接合部材W1を押圧する押圧手段13及び補助押圧手段14と、押圧手段13を冷却する第一冷却手段15と、接合箇所を冷却する第二冷却手段16とを備えている。
【0028】
なお以下では、接合が進行する方向を接合方向とし、この接合方向に直交するワークWの表面に沿う方向を直交方向とし、また、工具11が挿入される方向を高さ方向とする。
【0029】
工具11は、軸線Pを中心として形成されて互いに一体をなすショルダ部20及びピン21を有している。
ショルダ部20は、軸線Pを中心とした円柱状をなしており、このショルダ部20の下端面は、ワークWの表面側に配置されてこの表面を押圧するショルダ面20aとされている。
ピン21は、外形がショルダよりも小さく形成されるとともにショルダ面20aの中央から高さ方向下方に向かって突出する円柱状をなし、摩擦撹拌接合時にワークW内に挿入される。
【0030】
工具保持部12は、軸線Pを中心とする円柱状をなしており、工具11の上端部においてショルダ部20を軸線Pの径方向外側から挟み込むようにして工具11を保持している。
【0031】
またこの工具保持部12は、上端部が加工機本体10の下端部に固定されており、加工機本体10の移動にともなって、工具保持部12及び工具11が高さ方向、接合方向、及び直交方向へ移動可能とされている。さらに加工機本体10における不図示の主軸の回転にともなって、これら工具保持部12及び工具11は軸線P中心に回転可能とされている。
【0032】
押圧手段13は、工具保持部12に保持された工具11の接合方向前方に設けられ、被接合部材W1同士が接合される接合箇所を押圧するものである。
そして、この押圧手段13は、加工機本体10に取り付けられる押圧手段本体29と、押圧手段本体29内に配置される荷重付与部30と、荷重付与部30の下端部に接続される支持部32と、支持部32において接合方向前後の端部に設けられる第一ローラ(第一の当接部)33及び第二ローラ(第二の当接部)34とを有している。
【0033】
押圧手段本体29は、加工機本体10の接合方向前方側に接続される部材であり、内部には被接合部材W1に荷重を付与する荷重付与部30が配置されている。また、この押圧手段本体29の高さ方向下方からは、荷重付与部30の一部が突出している。
【0034】
荷重付与部30は、押圧手段本体29内に配置され、押圧手段本体29の内部に収容されるバネ部材35と、このバネ部材35の押し込み量を調節可能なモーター36と、バネ部材35の下端に接続される連結部31とを有している。
【0035】
連結部31は、高さ方向に延在する部材であり、上端部はバネ部材35に接続されてモーター36によって高さ方向に移動可能とされている。またこの連結部31は、押圧手段本体29から高さ方向下方に突出しており、下端部には、直交方向を延在方向とする支持部回転軸37が設けられ、この支持部回転軸37を介して支持部32と接続されている。
【0036】
支持部32は、荷重付与部30の連結部31を挟んで接合方向前後対称に延在して設けられる直方体形状をなす部材である。またこの支持部32は、接合方向の中央部で上記支持部回転軸(軸)37によって連結部31と接続されており、この支持部回転軸37を中心に回転可能とされている。
【0037】
図2に示すように、第一ローラ33は、支持部32の接合方向後方側の端部に、工具11に隣接する位置に設けられ、直交方向を延在方向とする第一ローラ回転軸(回転軸)38及び不図示の軸受によってこの第一ローラ回転軸38を中心に回転可能とされているローラ部材である。そしてこの第一ローラ33の外周面は、直交方向である第一ローラ回転軸38の延在方向に沿って、第一ローラ回転軸38の径方向外側に向かって張り出しており、延在方向中央部において最も外径が大きくなる凸曲面をなすクラウンロールとされている。
【0038】
第二ローラ34は、第一ローラ33とは荷重付与部30を挟んで接合方向の反対側の端部である支持部32の接合方向前方側の端部に設けられており、第二ローラ回転軸(回転軸)39及び不図示の軸受によって、この第二ローラ回転軸39を中心に回転可能とされ、第一ローラ33同様に、延在方向中央部において最も外径が大きくなる凸曲面をなすクラウンロールとされている。
【0039】
また、これら第一ローラ33及び第二ローラ34は、被接合部材W1の表面に当接するように配置されており、荷重付与部30のモーター36及びバネ部材35によって、連結部31及び支持部32を介して被接合部材W1への押圧力を変更可能とされている。
【0040】
補助押圧手段14は、工具11の接合方向後方に設けられ、接合箇所を押圧するものである。
そして、この補助押圧手段14は、加工機本体10に接続される補助押圧手段本体40と、補助押圧手段本体40から高さ方向下方に突出して設けられる支持部41と、支持部41の下端部に設けられる補助ローラ42とを有している。
【0041】
補助押圧手段本体40は、加工機本体10において接合方向後方側に接続される部材である。
【0042】
支持部41は、補助押圧手段本体40の高さ方向下方に突出して設けられ、高さ方向に延在する部材であり、その下端部には、直交方向を延在方向とする補助ローラ回転軸43が設けられており、この補助ローラ回転軸43を介して補助ローラ42と接続されている。
【0043】
図3に示すように、補助ローラ42は、支持部41の下端部において、補助ローラ回転軸43及び不図示の軸受によってこの補助ローラ回転軸43を中心に回転可能に接続されるローラ部材であり、被接合部材W1の表面に当接するように配置されている。そしてこの補助ローラ42には、直交方向である補助ローラ回転軸43の延在方向の中央部付近において、補助ローラ回転軸43の延在方向に沿って、径方向外側から内側に向かって凹む切欠き部44が設けられており、即ち、接合箇所を踏まないような断面H状をなしている。
【0044】
第一冷却手段15は、工具保持部12と押圧手段本体29との間に配されて、加工機本体10の下面より突出して設けられる噴出口45を有している。この噴出口45の先端は、第一ローラ回転軸38及び第二ローラ回転軸39と、各々の上記軸受とへ向かっており、図示しない冷却手段本体より送り込まれた冷却空気WAが、第一ローラ回転軸38及び第二ローラ回転軸39と上記各々の軸受とに、噴出可能となるように配置されている。
【0045】
第二冷却手段16についても同様に、工具保持部12と補助押圧手段本体40との間に配されて、加工機本体10の下面より突出して設けられる噴出口46を有している。そしてこの噴出口46の先端は、工具11に対して接合方向後方において被接合部材W1の表面の接合箇所へ、図示しない冷却手段本体より送り込まれた冷却空気WAが噴出可能となるように配置されている。
【0046】
このような摩擦撹拌接合装置1においては、工具11が被接合部材W1同士の接合箇所に押し付けられ、回転しながら接合方向前方に向かって移動する。この際、押圧手段13によって接合方向の前方の接合箇所表面が押圧されながら、被接合部材W1同士が接合される。従って、被接合部材W1同士の目違いを抑制でき、接合箇所において接合不良の発生を防止が可能となり、接合強度向上を図ることができる。
【0047】
また、押圧手段13においては、第一ローラ33と第二ローラ34とが被接合部材W1に当接して被接合部材W1の押圧を行なう。この際、第一ローラ33が被接合部材W1から受ける反力によって、連結部31には図1の紙面上において反時計回りのモーメントが作用する。一方、第二ローラ34は被接合部材W1から受ける反力によって、連結部31には図1の紙面上において時計回りのモーメントが作用する。
【0048】
ここで、これら第一ローラ33と第二ローラ34とは、連結部31を中心に対向して設けられているため、上述の荷重付与部30に作用するモーメントは互いに打ち消し合い、連結部31へ作用するモーメントの影響を回避できる。
【0049】
また、支持部32は、支持部回転軸37によって回転可能に連結部31に接続されているため、被接合部材W1の表面の凸凹に追従することが可能となり、より確実に被接合部材W1の表面を押圧することができる。
【0050】
また、押圧手段13の第一ローラ33及び第二ローラ34がクラウンロールとされていることによって、被接合部材W1の表面が直交方向に傾斜する場合でも、被接合部材W1の表面への肩当りを防止でき、面接触させることが可能となるため、被接合部材W1の表面を傷付けることなく押圧し、確実に接合を行なうことができる。
【0051】
また、補助押圧手段14の補助ローラ42が断面H状をなしていることによって、接合済みの接合箇所を踏むことなく、被接合部材W1を押圧し、接合方向後方においても被接合部材W1の持ち上がりを防止することが可能となり、接合箇所のさらなる品質向上につながる。
【0052】
そして、第一冷却手段15によって、第一ローラ33及び第二ローラ34の上記軸受が接合時の熱によって損傷することを防止でき、押圧手段13の耐久性向上で、さらに確実に目違いを抑制しながら接合を行なうことができる。
【0053】
さらに、第二冷却手段16によって、速やかに接合後の接合箇所の冷却を行なうことが可能となる。
【0054】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置1においては、押圧手段13の第一ローラ33と第二ローラ34とが、連結部31を中心に対向して、接合方向に対称となる位置に設けられているため、大きな押圧力を必要とする場合においても高剛性の材料を用いる必要がない。このため、大幅なコストアップとならずに荷重付与部30の破損を防止しながら目違いを抑制し、接合を行なうことができる。
【0055】
さらに、支持部32が連結部31に対して支持部回転軸37によって回転支承されていることや、第一ローラ33及び第二ローラ34がクラウンロールとなっていること、また補助押圧手段14を採用することによって、確実に被接合部材W1の押圧が可能となり、目違いの発生を抑制して接合不良の発生を防止し、接合強度向上を図ることができる。
【0056】
また、第一冷却手段15及び第二冷却手段16によって、押圧手段13及び接合箇所の熱の除去が可能となり、被接合部材W1の押圧を確実に行ないながら、接合した後に速やかに接合箇所を冷却することが可能となり、さらなる接合強度向上を図ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、被接合部材W1同士に目違いが発生している場合に、この目違いを事前に検知する目違い検出手段を別途設け、検出した値に対応して押圧手段13におけるモーター36を駆動し、押圧力を変化させることによってより効果的に目違いを抑制しながら接合を行なうことができる。
【0058】
そして、このような目違い検知手段としては、非接触に被接合部材W1の高さ方向位置を計測して、被接合部材W1同士の高さ方向位置の差異から目違いを検出することができる光学式や超音波式の変位計を用いることが可能である。
また、通電センサ等を用いて、被接合部材W1の高さ方向位置が所定値となった時点で、この通電センサと被接合部材W1との間が通電することによって高さ方向位置を計測して目違いを接触検出してもよい。
さらに、画像センサ等によって目違い部分の撮影を行い、目違い部分の大きさを視覚的に認識して目違いを検出してもよい。
【0059】
また、本実施形態において、押圧手段13の第一ローラ33と第二ローラ34とは、連結部31を挟んで、荷重付与部30からの接合方向の距離が等しくなる対称位置に設けられている。しかし、必ずしもこの接合方向の距離が等しくなる必要は無く、少なくとも連結部31を挟んで接合方向の反対側に設けられればよい。
【0060】
また、押圧手段13における第一ローラ33及び第二ローラ34はクラウンロールでなくてもよい。
【0061】
さらに、押圧手段本体29の内部に設けられたバネ部材35は、油圧や空圧によって作動するアクチュエータ等であってもよい。そして空圧のアクチュエータを採用した場合には、作動流体となる圧縮空気を、例えば工場設備で常用される工場エアー等を用いることができるため、コスト低減につながる。
【0062】
また、第一冷却手段15及び第二冷却手段16は必ずしも設置する必要はなく、第一ローラ回転軸38、第二ローラ回転軸39、補助ローラ回転軸43、及びこれらの軸受を冷却可能であれば、設置位置についても限定されない。また冷媒としては冷却空気WAに限定されない。そして、第一冷却手段15は必ずしも第一ローラ回転軸38及び第二ローラ回転軸39の両方を冷却する必要はなく、より接合箇所からの熱の影響を受け易い第一ローラ回転軸38のみを冷却するように配置してもよい。
【0063】
さらに、補助押圧手段14については設置しなくてもよく、この場合コスト低減につながる。
【0064】
また、本発明はボビンツールを用いて接合を行なう際に適用してもよく、また、摩擦撹拌接合をスポット接合に用いるスポットFSWへも適用が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…摩擦撹拌接合装置、10…加工機本体、11…工具、12…工具保持部、13…押圧手段、14…補助押圧手段、15…第一冷却手段、16…第二冷却手段、19…裏当て、20…ショルダ部、20a…ショルダ面、21…ピン、29…押圧手段本体、30…荷重付与部、31…連結部、32…支持部、33…第一ローラ(第一の当接部)、34…第二ローラ(第二の当接部)、35…バネ部材、36…モーター、37…支持部回転軸(軸)、38…第一ローラ回転軸(回転軸)、39…第二ローラ回転軸(回転軸)、40…補助押圧手段本体、41…支持部、42…補助ローラ、43…補助ローラ回転軸、44…切欠き部、45…噴出口、46…噴出口、W…ワーク、W1…被接合部材、P…軸線、WA…冷却空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具保持部と、
前記工具保持部に保持された工具による接合方向の前方に設けられ、ワークの接合箇所表面を押圧する押圧手段とを備え、
前記押圧手段は、前記ワークに向けて荷重を与える荷重付与部と、
前記荷重付与部と前記工具保持部に保持された工具との間に設けられて前記ワークにおける前記接合箇所表面に当接する第一の当接部と、
前記荷重付与部に対して前記第一の当接部と反対側に設けられて前記ワークの表面に当接する第二の当接部と、
前記荷重付与部に取り付けられて、前記第一の当接部及び前記第二の当接部を支持する支持部とを備えることを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記接合方向に直交する軸回りに回転可能に、前記荷重付与部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項3】
前記第一の当接部及び前記第二の当接部が、前記接合方向に直交する回転軸回りに回転可能に前記支持部に支持されて、前記回転軸に沿う方向に外周面が径方向外側に張り出すように形成された凸曲面をなすローラであることを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項4】
前記押圧手段を冷却する第一冷却手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項5】
前記第一冷却手段が、前記押圧手段のうちの前記第一の当接部を冷却することを特徴とする請求項4に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項6】
前記工具保持部に保持された工具に対して前記接合方向の後方となる位置で、前記接合箇所表面を冷却する第二冷却手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項7】
前記工具保持部に保持された工具の接合方向後方に設けられ、前記ワークの前記接合箇所表面を押圧する補助押圧手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項8】
前記第一の当接部と前記工具保持部に保持された工具との間における前記ワークを構成する被接合部材同士の目違いを検出する目違い検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の摩擦撹拌接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−86137(P2013−86137A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229577(P2011−229577)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】