説明

摩擦材料を製造する方法並びにこの摩擦材料から製造された摩擦ライニング

摩擦材料、特に車両の摩擦ライニング用の摩擦材料を製造する方法により、主として繊維材料、充填剤、滑剤、金属成分及び結合剤を湿式処理する。これにより、この摩擦材料から、耐熱性の増大した摩擦ライニングを製造することができ、これは摩擦材料の結合剤として水ガラスを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の説明
本発明は、請求項1の上位概念による、摩擦材料、特に車両の摩擦ライニング用の摩擦材料を製造する方法に関する。
【0002】
本発明の別の態様は、この摩擦材料から製造された摩擦ライニングに関する。
【0003】
この摩擦材料は、作動させる部品に制動をかけるか若しくは動力を伝達するために使用される、プレスされ、硬化された成形体としての摩擦ライニング、例えばディスク−、ドラム−及びクラッチライニングの製造に利用される。摩擦ライニングの重要な使用分野は、車両、特に自動車、レール車両及び航空機である。しかし、摩擦ライニングは機械装置にも使用される。
【0004】
公知の摩擦材料は、摩擦ライニング混合物としても示すことができ、強化繊維、例えばガラス、アラミド、PAN、ビスコース;充填剤、例えば重晶石、カオリン又は雲母;粉末、細片又はワイヤの形の金属;滑剤、若しくは固体滑剤、例えば硫化アンチモン、硫化モリブデン又はグラファイトを有する。これらの成分は、少なくとも1種の有機結合剤、例えばフェノール樹脂、ゴム型、例えばSBR又はNBRにより結合される。湿式処理される摩擦材料のために、溶剤含有及び水性レゾールも使用される。
【0005】
この摩擦ライニングの全ての用途においては、これらが、摩擦率若しくは摩擦係数の可能な限り広範な温度安定性を有することが共通している。更に、これらは、この対応物の対応材料、例えば、クラッチ内の灰銑又は圧力板を可能な限りほとんど損傷させず、かつそれ自体摩耗が小さいことが望ましい。高温時の形状安定性も重要である。
【0006】
この摩擦ライニングの製品規格の要求、特に結合剤の選択によるものを満たすことが既に試験されているが、例えばノボラックヘキサメチレンテトラミン粉末樹脂を使用すると、このベースのノボラックが物理的に又は化学的に変性するか、又はこの材料の架橋密度は粉末樹脂の種々のヘキサメチレンテトラミン含有率により影響を受けるものであった。この場合、この温度安定性は、特にリン−、ホウ素−及びケイ素化合物での変性により影響を受けた(Kunststoffhandbuch, Band 10 (Duroplaste), herausgegeben von Prof. Dr. Wilbrand Woebcken, 2. Auflage 1988, Carl Hanser Verlag, Muenchen, Wien, ISBN 3-446-14418-8)。
【0007】
有機結合された摩擦ライニングを使用すると、高温負荷時にこの有機構成成分の分解反応が常に生じるにもかかわらず、摩耗現象及びフェード現象の増大がもたらされる。この場合、例えばディスクブレーキ中で1000℃までの温度ピークが生じうることを考慮しなければならない。増大するモータ出力及び車両重量並びに新規技術、例えばダブル変速伝導装置(DSG)に基づいて、温度安定性若しくは耐熱性に関しては、摩擦ライニングについて常により高度な要求がなされる。
【0008】
従って本発明の課題は、耐熱性が増大した摩擦ライニングを製造することができ、特にこの摩擦ライニングの有益な特性、すなわち、きしみ及び擦れを有しない特性を損なうことなく、かつ製造コストを可能な限り減らす摩擦材料を達成することである。
【0009】
前記課題は、本発明により、今までの慣用の結合剤に代えて水ガラスを使用することにより解決される。
【0010】
驚くべきことに、この単純な結合剤を用いれば、500℃を大幅に上回る高温時でも分解反応を示さず、同じ摩擦係数を示し、かつ本来の摩擦仕事が行われる安定した摩擦層を形成する摩擦ライニング用の摩擦材料を製造することができる。これに応じて、フェード現象は減少するか又は生じない。この摩耗率は、高温範囲内で安定である。従って、有機結合剤に代えて水ガラスを使用することを除いては、この摩擦材料の慣用成分を交換することは必ずしも必要ではない。
【0011】
水ガラスとしては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウムの何れも挙げられる。
【0012】
以下の測定の記載は、実質的に純粋なケイ酸カリウム及びそのビスコース水溶液に関するものである。
【0013】
この結合剤を広範な割合で、特に請求項2により、乾燥した摩擦材料全体に対して10〜70質量%の水ガラスを用いれば、極めて有用な摩擦材料を製造することができることを見出した。
【0014】
この場合、この慣用の構成成分の割合は、請求項3に記載された範囲で存在する。それぞれこの配合物の乾燥部分全体に対する10質量%及び70質量%の挙げられた水ガラスの2つの極限値の湿式配合物を、更に以下に規定する。
【0015】
従って、本発明の更なる態様によれば、摩擦ライニング、特に車両用の摩擦ライニングは、上述のとおり製造され、上述の有利な特性を有する摩擦材料から構成されている。
【0016】
以下に、この摩擦材料の両方の湿式配合物を具体的な実施例として挙げる。
【0017】
【表1】

【0018】
かかる湿式処理された摩擦材料から摩擦ライニングを製造するために、水を後続の乾燥工程内で再度除去する。他の点では、この摩擦ライニングの更なる製造は従来のとおりに実施する。
【0019】
上述の両方の配合物それぞれに応じて製造された摩擦材料からの摩擦ライニングは、700℃まで分解反応を示さなかった。この摩擦係数は、少なくとも550℃までは安定しまままであり、この試験ではこれより高い温度を発生させることはできなかった。これは、上述の温度まではフェード現象が生じないことを示すものであった。少なくとも550℃まで安定な摩擦層が生じた。この摩耗率は、少なくともこの高温範囲内で安定するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として繊維材料、充填剤、滑剤、金属成分及び結合剤を含有し、かつ湿式処理される摩擦材料、特に車両の摩擦ライニング用の摩擦材料を製造する方法において、
結合材として、水ガラスを使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦材料を製造する方法において、
乾燥した摩擦材料全体に対して10〜70質量%の水ガラスを使用することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦材料を製造する方法において、
摩擦材料全体が、
水ガラス 10〜70%
雲母 10〜5%
重晶石 10〜5%
ガラス繊維 14〜5%
グラファイト 20〜10%
銅 36〜5%
水 15〜105%
を含有し、その際、これらは乾燥した摩擦材料全体に対する質量%であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から4までの何れか1項に記載の摩擦材料から製造された摩擦ライニング、特に車両用の摩擦ライニング。

【公表番号】特表2008−503625(P2008−503625A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517201(P2007−517201)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006794
【国際公開番号】WO2006/000409
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany