説明

摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置

【課題】被駆動面の摩耗を促進することなく付着した油等を確実に清掃する、摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置を提供する。
【解決手段】垂直支軸7まわりに回転可能な筒芯に巻回された拭取りシートS及び前記筒芯の回転に対して制動力を付与する錘10からなる拭取りシート支持手段3と、該支持手段3から引き出されたシートSが巻き掛けられた送りローラ14、送りローラ14を回転させる駆動装置13、送りローラ14を揺動可能に支持する揺動アーム12、揺動アーム12を送りローラ14が被駆動面31Aに圧接される方向に付勢する付勢手段15からなる拭取りシート送り手段4と、該送り手段4から送り出されたシートSの端部が固定された筒芯と一体となって回転する垂直回転軸と連結されたトルクモータ20からなる拭取りシート巻取り手段5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ローラ式駆動装置により駆動されるキャリアの被駆動面に付着した油、液剤及び塵埃等を拭き取ることにより清掃する清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の生産ラインにおいて自動車のボディを搬送するために用いられる、一定経路上を走行可能に走行レールに支持された複数の非自走式のトロリ(被案内装置)とこれらトロリの隣り合うもの同士に渡された連結ロッド(フレーム体)等によって構成されるキャリア(移動体)を、前記トロリ及び連結ロッドの側面又は前記連結ロッドの側面である被駆動面(受動面)に摩擦ローラ(送りローラ)を圧接することにより駆動する摩擦ローラ式駆動装置(送り装置)を備えた摩擦駆動式トロリコンベアがある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
また、台車の車輪に付着した塗料粒子等を人手によらず自動的に清掃する台車の車輪清掃装置として、トロリ案内レールに前後動自在に案内され、台車の一側において台車に同調して移動するブラシ保持用トロリ、ブラシ保持トロリに回転自在に取り付けられかつその先端が台車の車輪の外面に当接する清掃用ブラシ、清掃後にブラシ保持用トロリを引き戻すトロリ引き戻し用シリンダ、及び、清掃用ブラシとトロリ案内用レールとの間に位置する、車輪から清掃用ブラシ側に掻き取られた塗料粒子等を清掃用ブラシから拭い取るための長尺帯状の布等を備えてなるものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−25441号公報(図1−3)
【特許文献2】特開平11−291898号公報(図1−6)
【特許文献3】特公平1−20103号公報(第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2のような摩擦駆動式トロリコンベアでは、被駆動面の上側から落ちる油、液剤及び塵埃、並びに、自動車の新車塗装工程等における車体継ぎ目の防水のためのシーラ塗布後にその成分が蒸発したもの及び揮発性潤滑油が気化したもの等の空気中の浮遊物等が被駆動面に付着することがあり、その際には、摩擦ローラを圧接させる際にスリップが生じて摩擦ローラ式駆動装置による所期の駆動が行えなくなるため、被駆動面の清掃が必要になる場合がある。
また、特許文献3のような構成の清掃装置をキャリアの被駆動面の清掃に使用した場合には、清掃用ブラシにより被駆動面の摩耗が促進されるとともに、清掃用ブラシの回転方向が該ブラシの被駆動面との当接箇所が下流側へ移動する方向である場合には、清掃用ブラシにより掻き取った付着物が下流側に飛散して搬送方向に長い被駆動面に再び付着する場合があるし、清掃用ブラシの回転方向が該ブラシの被駆動面との当接箇所が上流側へ移動する方向である場合であっても、清掃用ブラシに対して被駆動面と反対側に位置する長尺帯状の布に清掃用ブラシが圧接されるため、この際に清掃用ブラシにより掻き取った付着物が下流側に飛散して搬送方向に長い被駆動面に再び付着する場合がある。
【0005】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、キャリアの被駆動面の摩耗を促進することなく被駆動面に付着した油、液剤又は塵埃等を確実に清掃することができ、被駆動面から清掃した油等の付着物が下流側へ飛散して被駆動面に再度付着することがない摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置は、前記課題解決のために、搬送経路を形成する走行レールに支持案内された非自走式キャリアの搬送方向に延びる被駆動面に摩擦ローラ式駆動装置の摩擦ローラを圧接することにより搬送する摩擦駆動式コンベアに用いられる、前記被駆動面の清掃装置であって、受け部材、該受け部材に立設された垂直支軸、該垂直支軸まわりに回転可能な筒芯に巻回され、その下面が前記受け部材により支持されたロール状の拭取りシートからなる拭取りシート支持手段と、該拭取りシート支持手段から引き出された前記拭取りシートが前記被駆動面に対向するように巻き掛けられた送りローラ、該送りローラを前記拭取りシートが前記拭取りシート支持手段から引き出される方向に回転させる駆動装置、前記送りローラを揺動支軸まわりに水平方向に揺動可能に支持する揺動アーム、及び、該揺動アームを前記送りローラが前記被駆動面に圧接される方向に付勢する付勢手段からなる拭取りシート送り手段と、該拭取りシート送り手段から送り出された前記拭取りシートの端部が固定された筒芯、該筒芯と一体となって回転する垂直回転軸及び前記拭取りシートの下面を支持する受け部材、並びに、前記垂直回転軸と連結され、前記拭取りシートを巻き取る方向に前記垂直回転軸を回転させるトルクモータからなる拭取りシート巻取り手段とを備えたものである。
【0007】
ここで、前記拭取りシート支持手段に、前記垂直支軸まわりに回転可能な筒芯の回転に対して制動力を付与する制動手段を設けてなると好ましい。
【0008】
また、前記送りローラの回転方向が、該送りローラに巻き掛けられた前記拭取りシートが前記キャリアの搬送方向と逆方向に移動する方向であると好ましい。
【0009】
さらに、前記被駆動面に洗浄液を噴霧するスプレー装置を、前記送りローラと前記被駆動面との圧接部よりも上流側に設置してなると好ましい。
【0010】
さらにまた、前記揺動支軸を、前記拭取りシート巻取り手段に巻き取られる前記拭取りシートの前記送りローラからの引出し方向線と該引出し方向線に直交する前記送りローラの半径方向線との交点の軌跡の略中間位置に配置してなると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置によれば、搬送経路を形成する走行レールに支持案内された非自走式キャリアの搬送方向に延びる被駆動面に摩擦ローラ式駆動装置の摩擦ローラを圧接することにより搬送する摩擦駆動式コンベアに用いられる、前記被駆動面の清掃装置であって、受け部材、該受け部材に立設された垂直支軸、該垂直支軸まわりに回転可能な筒芯に巻回され、その下面が前記受け部材により支持されたロール状の拭取りシートからなる拭取りシート支持手段と、該拭取りシート支持手段から引き出された前記拭取りシートが前記被駆動面に対向するように巻き掛けられた送りローラ、該送りローラを前記拭取りシートが前記拭取りシート支持手段から引き出される方向に回転させる駆動装置、前記送りローラを揺動支軸まわりに水平方向に揺動可能に支持する揺動アーム、及び、該揺動アームを前記送りローラが前記被駆動面に圧接される方向に付勢する付勢手段からなる拭取りシート送り手段と、該拭取りシート送り手段から送り出された前記拭取りシートの端部が固定された筒芯、該筒芯と一体となって回転する垂直回転軸及び前記拭取りシートの下面を支持する受け部材、並びに、前記垂直回転軸と連結され、前記拭取りシートを巻き取る方向に前記垂直回転軸を回転させるトルクモータからなる拭取りシート巻取り手段とを備えたので、駆動装置により送りローラを回転させることによりロール状の拭取りシートを拭取りシート支持手段から引き出しながら、拭取りシートが付勢手段により送りローラとともにキャリアの被駆動面に圧接されるため、該被駆動面に付着した油、液剤又は塵埃等の付着物を拭取りシートにより確実に拭き取ることができる。
【0012】
その上、キャリアの被駆動面に付着した油等の付着物が拭取りシートに吸収されるため、前記付着物が下流側へ飛散して被駆動面に再度付着することがない。
その上さらに、キャリアの被駆動面には柔らかな拭取りシートが圧接されるのみであるため、被駆動面の摩耗を促進することがなく、摩擦駆動式コンベアの信頼性を長期間に亘って維持することができる。
その上、拭取りシート送り手段から送り出された拭取りシートが拭取りシート巻取り手段の筒芯まわりに巻回され、その巻き径が変化しても、拭取りシート巻取り手段にトルクモータを設けていることから、該トルクモータにより弛みが生じないようにすることができるとともに、拭取りシートの破断を抑制することができる。
その上さらに、拭取りシート支持手段にモータを設けておらず、よってモータの駆動制御をする必要もないため、清掃装置の構成を簡素にしてコスト低減化を図ることができる。
その上、受け部材によりロール状の拭取りシートの下面が支持されており、垂直支軸まわりに回転可能な筒芯及び拭取りシートの自重が受け部材に掛かり、筒芯及び拭取りシートの回転に対して摩擦力が作用することから、この摩擦力により前記回転に対して制動力が付与されるため、拭取りシートが弛まない状態を保持する効果がある。
【0013】
また、前記拭取りシート支持手段に、前記垂直支軸まわりに回転可能な筒芯の回転に対して制動力を付与する制動手段を設けてなると、制動手段により拭取りシートが弛まない状態をより確実に保持しながら拭取りシート送り手段により引き出すことができる。
【0014】
さらに、前記送りローラの回転方向が、該送りローラに巻き掛けられた前記拭取りシートが前記キャリアの搬送方向と逆方向に移動する方向であると、前記効果に加え、被駆動面に付着した付着物が送りローラにより下流側へ飛散して被駆動面に再度付着することがない。
【0015】
さらにまた、前記被駆動面に洗浄液を噴霧するスプレー装置を、前記送りローラと前記被駆動面との圧接部よりも上流側に設置してなると、前記効果に加え、スプレー装置により噴霧された洗浄液により被駆動面を洗浄した後に拭取りシートにより拭き取られるため、被駆動面に付着した付着物をさらに確実かつ効率的に拭き取ることができる。
その上、送りローラに巻き掛けられた拭取りシートがキャリアの搬送方向と逆方向に移動する構成である場合には、多量の洗浄液を使用した場合であっても、該洗浄液及び前記付着物が送りローラにより下流側へ飛散して被駆動面に再度付着することがない。
【0016】
また、前記揺動支軸を、前記拭取りシート巻取り手段に巻き取られる前記拭取りシートの前記送りローラからの引出し方向線と該引出し方向線に直交する前記送りローラの半径方向線との交点の軌跡の略中間位置に配置してなると、前記効果に加え、トルクモータにより拭取りシートを巻き取る際に、その巻き径が変化することから変動する巻取り力によって、送りローラが被駆動面から離れる方向の揺動支軸まわりの変動モーメントが働くことがないことから、拭取りシートが長く拭取りシート巻取り手段の巻き径変化が大きい場合であっても、揺動アームにより揺動支軸まわりに水平方向に揺動可能に支持されて付勢手段により被駆動面に近づく方向に付勢された送りローラにより、均一な押付け力で拭取りシートを被駆動面に押し付けることができるため、安定かつ確実な拭取り作業を持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置の構成を示す平面図である。
【図2】拭取りシート送り手段まわりを示す縦断正面図である。
【図3】拭取りシート支持手段及び拭取りシート送り手段まわりを示す前方から見た部分縦断面である。
【図4】拭取りシート送り手段及び拭取りシート巻取り手段まわりを示す前方から見た部分縦断面である。
【図5】揺動アームの揺動中心である揺動支軸の配置を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置の別の構成例を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置の別の構成例を示す平面図である。
【図8】同じく拭取りシート支持手段及び拭取りシート送り手段まわりを示す前方から見た部分縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、キャリアの搬送方向(図中矢印F参照。)を前とし、左右は前方に向かっていうものとする。また、右方から見た図を正面図とする。
【0019】
図1〜図4に示した本実施の形態の摩擦駆動式コンベア30は、トロリコンベアであり、複数のトロリ32,…間を連結ロッド33により連結してなる非自走式キャリア31の左右に形成された前後方向に延びる被駆動面31Aに、図示しない摩擦ローラ式駆動装置の摩擦ローラを圧接することにより搬送するものである。
ここで、トロリ32,…には、走行車輪34,…及びサイドローラ35,…が取り付けられており、搬送経路に沿って配設されたヨーク37,…に固定された左右の走行レール36,36上部の立起部にサイドローラ35,…が当接するため左右方向への振れ止めがされた状態で、走行レール36,36のコ字状開口部に走行車輪34,…が係合しているため、各トロリ32,…は走行レール36,36に沿って移動可能であり、よってキャリア31は搬送経路に沿って移動することができる。
【0020】
摩擦駆動式コンベア30における被駆動面31Aの清掃装置1は、その基台2上に、ロール状の拭取りシートSを支持する拭取りシート支持手段3、拭取りシート支持手段3から拭取りシートSを引き出すとともに、送りローラ14に巻き掛けた拭取りシートSをキャリア31の被駆動面31Aに圧接する拭取りシート送り手段4、及び、拭取りシート送り手段4により送り出された拭取りシートSを巻き取る拭取りシート巻取り手段5等を備えたものである。
ここで、拭取りシートSは、例えば不織布であり、吸油性及び吸水性を高めることが容易であるため拭き取り効果を高くすることができるとともに、織布に対して生産性が高いためランニングコストを低減することができる。
【0021】
拭取りシート支持手段3は、図1及び図3に示すように、基台2に固定された支持台6、支持台6の上端に固定された受け部材である受けフランジ9、受けフランジ9の中央に立設された垂直支軸7、垂直支軸7に外嵌され、該支軸7まわりに回転可能な筒芯8に巻回され、その下面が受けフランジ9により支持されたロール状の拭取りシートS、及び、筒芯8の回転に対して制動力を付与する制動手段である、垂直支軸7に外嵌され筒芯8の上端面上に載置された錘10からなる。
回転しない受けフランジ9の上面に下端面が当接する筒芯8に対して、その上端面上に錘10の負荷が掛かっていることから、筒芯8の回転に対して作用する摩擦力が増大するため、この摩擦力により筒芯8の回転に対して比較的大きな制動力が付与される。
【0022】
よって、拭取りシート送り手段4により拭取りシートSが引き出されて筒芯8が回転する際に前記制動力が付与されるため、特に筒芯8まわりの巻き径が小さくなった場合においても前記制動力により拭取りシートSが弛むことなく、拭取りシート送り手段4により引き出された拭取りシートSを送りローラ14に安定かつ確実に巻き掛けてキャリア31の被駆動面31Aの拭取りに使用することができる。
なお、制動手段として錘10以外に回転ダンパー等を用いてもよい。
このように拭取りシート支持手段3にモータを設けておらず、よってモータの駆動制御をする必要もないため、清掃装置1の構成を簡素にしてコスト低減化を図ることができる。
【0023】
また、拭取りシート送り手段4は、図1及び図2に示すように、揺動支軸11まわりに水平方向に揺動する揺動アーム12、揺動アーム12上に固定された、例えばハイポイドギヤやベベルキヤ等を用いた直交軸構成のギヤドモータであり、出力軸13Aが上方へ突出する駆動装置13、駆動装置13の出力軸13Aに固定されたローラ本体14A及び該本体14Aの外周に沿って外嵌された、例えばゴムである弾性ローラ14Bからなり、拭取りシート支持手段3から引き出された拭取りシートSがキャリア31の被駆動面31Aに対向するように巻き掛けられた送りローラ14、並びに、支持片15A、支持片15Aにより支持され、揺動アーム12の基端部に横設された操作片12Aを送りローラ14がキャリア31の被駆動面31Aに圧接される方向に付勢する圧縮コイルばね15B、及び、操作片12Aの圧縮コイルばね15Bにより付勢される面の反対側の面を受けるストッパ15Cからなる。
ここで、駆動装置13は、送りローラ14を拭取りシートSが拭取りシート支持手段3から引き出される方向(図1中の矢印A参照。)に等速回転させるものであり、支持片15A、圧縮コイルばね15B及び操作片12Aが、送りローラ14がキャリア31の被駆動面31Aに圧接される方向に揺動アーム12を付勢する付勢手段15を構成する。
【0024】
さらに、拭取りシート巻取り手段5は、図1及び図4に示すように、基台2に固定された支持台16、ボルト21,…、ナット22,…により支持台16内に内装され、出力軸20Aが上方へ突出するトルクモータ20、支持台16に対して回転可能に支持され、カップリング23によりトルクモータ20の出力軸20Aに連結された垂直回転軸17、垂直回転軸17とともに回転する受け部材である受けフランジ19、垂直回転軸17に外嵌され、拭取りシート送り手段4から送り出された拭取りシートSの端部が固定された筒芯18、垂直回転軸17上端の雄ねじ部17Aに下面に形成された雌ねじ部24Aが螺合し、筒芯18を上側から押さえるアイナット24からなる。
よって、トルクモータ20のトルクは、垂直回転軸17と一体となって回転する、拭取りシートSの端部が固定された筒芯18に伝達される。
【0025】
拭取りシート送り手段4の駆動装置13により等速回転する送りローラ14から送り出された拭取りシートSが、拭取りシート巻取り手段5により巻き取られるにしたがって、筒芯18まわりの巻き径が大きくなるため、等速回転する送りローラ14に対して筒芯18の回転速度を調節する必要があるが、筒芯18に連結されるモータとして、大きな起動トルクと垂下特性を有し、回転速度−トルク特性の全域、特に低速及び拘束時での安定した運転が得られるトルクモータ20を用いているため、複雑な張力制御をすることなく、巻取り径が変動しても拭取りシートに弛みが生じないようにしながら略一定の張力で拭取りシートSを巻き取ることができるとともに、比較的破れやすい拭取りシートSの破断を抑制することができる。
【0026】
以上のような清掃装置1の構成によれば、駆動装置13により送りローラ14を回転させることによりロール状の拭取りシートSを拭取りシート支持手段3から引き出しながら、拭取りシートSが付勢手段15により送りローラ14とともにキャリア31の被駆動面31Aに圧接されるため、被駆動面31Aに付着した油、液剤又は塵埃等の付着物を拭取りシートSにより確実に拭き取ることができる。
また、キャリア31の被駆動面31Aに付着した油等の付着物が拭取りシートSに吸収されるため、前記付着物が下流側へ飛散して被駆動面31Aに再度付着することがない。
さらに、キャリア31の被駆動面31Aには柔らかな拭取りシートSが圧接されるのみであるため、被駆動面31Aの摩耗を促進することがなく、摩擦駆動式コンベア30の信頼性を長期間に亘って維持することができる。
【0027】
さらにまた、図1に示すように、キャリア31の被駆動面31Aにアルカリイオン水等の洗浄液25Aを噴霧するスプレー装置25を、送りローラ14と被駆動面31Aとの圧接部よりも上流側に設置していることから、スプレー装置25により噴霧された洗浄液25Aにより被駆動面31Aを洗浄した後に、該被駆動面31Aが拭取りシートSにより拭き取られるため、被駆動面31Aに付着した油、液剤又は塵埃等の付着物をさらに確実かつ効率的に拭き取ることができる。
その上、送りローラ14の回転方向Aが、送りローラ14に巻き掛けられた拭取りシートSがキャリア31の搬送方向Fと逆方向に移動する方向であることから、送りローラ14に巻き掛けられた拭取りシートSがキャリア31の搬送方向Fと逆方向に移動するため、多量の洗浄液25Aを使用した場合であっても、該洗浄液25A及び前記付着物が送りローラ14の回転により下流側へ飛散して被駆動面31Aに再度付着することがない。
【0028】
以上のような洗浄装置1の構成において、例えば図1に示すように洗浄装置1が設置された箇所にキャリア31が搬送され(搬送方向は図中矢印F参照。)、キャリア31の先頭のトロリ32により送りローラ14が押されて揺動アーム12が付勢手段15の付勢力に抗して右方へ揺動すると、揺動アーム12の遊端部の側面である検出面12Bがキャリア検出センサ26から離反する。
したがって、この状態変化をキャリア検出センサ26により検出することにより、キャリア31の到着を検出することができるため、例えばプログラマブルコントローラによる指令により駆動装置13及びトルクモータ20を駆動することにより、拭取りシートSを例えば10〜30mm/min程度の速度で送りながら、前述のとおり被駆動面31Aを清掃することができる。
【0029】
また、キャリア31の到着を検出した際には、例えばプログラマブルコントローラによる指令により電磁弁をオンにして図示しないポンプからスプレー装置25へ洗浄液25Aを供給することにより、洗浄液25Aがキャリア31の被駆動面31Aへ噴霧されるため、前述のとおり送りローラ14の上流側で被駆動面31Aを洗浄することができる。
ここで、洗浄液25Aの噴霧状態は、洗浄液噴霧検出センサ29により検出することができる。
なお、洗浄装置1によりキャリア31の被駆動面31Aを洗浄する際のキャリア31の搬送速度は、例えば200〜400mm/min程度とする。
【0030】
キャリア31が通過して、付勢手段15の付勢力により、揺動アーム12が、その基端部に横設された操作片12Aがストッパ15Cに当止される位置まで左方へ揺動し、検出面12Bがキャリア検出センサ26に接近した際には、この状態変化をキャリア検出センサ26により検出することにより、例えばプログラマブルコントローラによる指令により駆動装置13及びトルクモータ20の駆動並びにスプレー装置25からの洗浄液25Aの噴霧を停止する。
よって、キャリア31が無い状態では、送りローラ14により拭取りシートSを送ることがないため拭取りシートSを無駄なく使用することができるとともに、スプレー装置25から洗浄液25Aが噴霧されないため洗浄液25Aを無駄にすることがない。
また、図1において、何らかの不具合により拭取りシートSが破断した際には、この不具合を投光部と受光部からなる破断検知センサ27,28により検出することができるため、ロール状の拭取りシートSを交換する等の対策を迅速に行うことができる。
【0031】
図1及び図5に示すように、揺動アーム12の揺動中心である揺動支軸11は、拭取りシート巻取り手段5に巻き取られる拭取りシートSの送りローラ14からの引出し方向線(例えば図5に示すL1及びL2参照。)と該引出し方向線に直交する送りローラ14の半径方向線(例えば図5に示すR1及びR2参照。)との交点(例えば図5に示すC1及びC2参照。)の軌跡の略中間位置に配置される。
揺動支軸11は、清掃装置1の使用条件によっては、図6に示すように、送りローラ14の外周面から離して配置することもできるが、図5に示すような配置にすることにより、トルクモータ20により拭取りシートSを巻き取る際に、その巻き径が変化することから変動する巻取り力によって、送りローラ14がキャリア31の被駆動面31Aから離れる方向の揺動支軸11まわりの変動モーメントが働くことがないことから、拭取りシートSが長く拭取りシート巻取り手段5の巻き径変化が大きい場合であっても、揺動アーム12により揺動支軸11まわりに水平方向に揺動可能に支持されて付勢手段15により被駆動面31Aに近づく方向に付勢された送りローラ14により、均一な押付け力で拭取りシートSを被駆動面31Aに押し付けることができるため、安定かつ確実な拭取り作業を持続することができる。
【0032】
以上の説明においては、拭取りシート支持手段3に錘10等の制動手段を設ける場合を示したが、例えば図7及び図8に示すように、図1及び図3において制動手段である錘10を無くした構成としてもよい。
このような構成であっても、基台2に固定された支持台6の上端に固定された受け部材である受けフランジ9により拭取りシートSの下面が支持されており、垂直支軸7まわりに回転可能な筒芯8及び拭取りシートSの自重が受けフランジ9に掛かり、筒芯8及び拭取りシートSの回転に対して摩擦力が作用するため、この摩擦力により前記回転に対して制動力が付与される。
この制動力は、図1及び図3のように制動手段(錘10)がある場合の制動力よりは小さいものであるが、拭取りシートSが弛まない状態を保持する一定の効果がある。
【0033】
また、送りローラ14と被駆動面31Aとの圧接部よりも上流側にスプレー装置25を設置する構成を示したが、スプレー装置25を設置しない構成としてもよく、このような構成であっても、被駆動面31Aに付着した油、液剤又は塵埃等の付着物を拭取りシートSにより拭き取って清掃することができる。
さらに、送りローラ14の回転方向が、送りローラ14に巻き掛けられた拭取りシートSがキャリア31の搬送方向と逆方向に移動する方向である場合を示したが、送りローラ14の回転方向を拭取りシートSがキャリア31の搬送方向と同方向に移動する方向としてもよい。
ただし、送りローラ14の回転方向が拭取りシートSがキャリア31の搬送方向と逆方向に移動する方向であると、被駆動面31Aに付着した付着物が送りローラ14により下流側へ飛散して被駆動面31Aに再度付着することがない。
さらにまた、摩擦駆動式コンベア30がトロリコンベアである場合について説明したが、非自走式台車(キャリア)の搬送方向に延びる側面である被駆動面に摩擦ローラ式駆動装置の摩擦ローラを圧接することにより駆動する摩擦駆動式台車コンベアであってもよく、あるいは、オーバーヘッドコンベアであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
A 送りローラの回転方向
F 搬送方向
S 拭取りシート
L1,L2 引出し方向線
R1,R2 引出し方向線に直交する送りローラの半径方向線
C1,C2 引出し方向線と半径方向線との交点
1 清掃装置
3 拭取りシート支持手段
4 拭取りシート送り手段
5 拭取りシート巻取り手段
7 垂直支軸
8 筒芯
9 受けフランジ(受け部材)
10 錘(制動手段)
11 揺動支軸
12 揺動アーム
13 駆動装置
13A 出力軸
14 送りローラ
15 付勢手段
15A 支持片
15B 圧縮コイルばね
17 垂直回転軸
18 筒芯
19 受けフランジ(受け部材)
20 トルクモータ
20A 出力軸
24 アイナット
25 スプレー装置
25A 洗浄液
30 摩擦駆動式コンベア
31 キャリア
31A 被駆動面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路を形成する走行レールに支持案内された非自走式キャリアの搬送方向に延びる被駆動面に摩擦ローラ式駆動装置の摩擦ローラを圧接することにより搬送する摩擦駆動式コンベアに用いられる、前記被駆動面の清掃装置であって、
受け部材、該受け部材に立設された垂直支軸、該垂直支軸まわりに回転可能な筒芯に巻回され、その下面が前記受け部材により支持されたロール状の拭取りシートからなる拭取りシート支持手段と、
該拭取りシート支持手段から引き出された前記拭取りシートが前記被駆動面に対向するように巻き掛けられた送りローラ、該送りローラを前記拭取りシートが前記拭取りシート支持手段から引き出される方向に回転させる駆動装置、前記送りローラを揺動支軸まわりに水平方向に揺動可能に支持する揺動アーム、及び、該揺動アームを前記送りローラが前記被駆動面に圧接される方向に付勢する付勢手段からなる拭取りシート送り手段と、
該拭取りシート送り手段から送り出された前記拭取りシートの端部が固定された筒芯、該筒芯と一体となって回転する垂直回転軸及び前記拭取りシートの下面を支持する受け部材、並びに、前記垂直回転軸と連結され、前記拭取りシートを巻き取る方向に前記垂直回転軸を回転させるトルクモータからなる拭取りシート巻取り手段と、
を備えたことを特徴とする摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置。
【請求項2】
前記拭取りシート支持手段に、前記垂直支軸まわりに回転可能な筒芯の回転に対して制動力を付与する制動手段を設けてなる請求項1記載の摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置。
【請求項3】
前記送りローラの回転方向が、該送りローラに巻き掛けられた前記拭取りシートが前記キャリアの搬送方向と逆方向に移動する方向である請求項1記載の摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置。
【請求項4】
前記被駆動面に洗浄液を噴霧するスプレー装置を、前記送りローラと前記被駆動面との圧接部よりも上流側に設置してなる請求項1又は3記載の摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置。
【請求項5】
前記揺動支軸を、前記拭取りシート巻取り手段に巻き取られる前記拭取りシートの前記送りローラからの引出し方向線と該引出し方向線に直交する前記送りローラの半径方向線との交点の軌跡の略中間位置に配置してなる請求項1記載の摩擦駆動式コンベアにおける被駆動面の清掃装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−100431(P2010−100431A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123904(P2009−123904)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)