説明

摺動性およびプレス加工性に優れた潤滑めつき鋼板の製造方法

【目的】 摺動摩耗性およびプレス加工性に優れた潤滑めっき鋼板の製造方法に関する。
【構成】 亜鉛系めっき鋼板1、2の表面にクロメート処理3を行い、■水性樹脂、■シリカゾル、■極性基を付与した分子量1000〜4000、酸価1〜20、粒径3μm以下のポリオレフィンワックスと粒径3μm以下のテフロンを混合した潤滑剤を含有する塗料4を0.5〜5g/m2 塗布し、到達板温90〜200℃に急速焼付し、冷却する。
【効果】 プレス油を省略できるため、ユーザー工程を省力化でき、環境を汚さない低コストで高品質の性能が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は摺動摩耗性に優れ、且つ高速プレス加工性に優れた潤滑性および塗料密着性等の汎用的性能を有する非脱膜型潤滑めっき鋼板の製造方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】従来、加工後塗装されていたポスト塗装製品に代わって、薄い有機皮膜を被覆した表面処理鋼板が使用されている。この鋼板は下地に亜鉛系のめっき皮膜を有し、その上に有機皮膜を被覆したもので、溶接ができ、密着加工性および耐食性に良好な特性をもっている。
【0003】特開平3−39485号公報には、亜鉛系のめっき鋼板の上にクロメート皮膜処理を行い、水性樹脂にシリカとガラス転移点(Tg点)が40℃以上のワックスを分散した樹脂塗料をドライ膜厚で0.3〜3g/m2 被覆したものが開示されている。また、特開平3−28380号公報には、電気亜鉛めっき鋼板の上にクロメート処理を行い、カルボキシル化したポリエチレン樹脂とテフロン潤滑剤からなる塗料をドライ膜厚で0.5〜4.0g/m2 被覆して得られる潤滑鋼板が開示されている。これらの表面処理鋼板は、めっき、クロメート、有機皮膜の複合効果によって潤滑性、耐食性、溶接性、塗料密着性を与えるもので、生産性や品質改良を目的として現在も活発に開発が進められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来技術の潤滑鋼板は、プレス絞り加工性と摺動摩耗性の2つを改善するために適用されていた。しかしながら、両性能を満足する潤滑鋼板はいまだ完成されているとはいえない。プレス加工性については、最近の家電製品が個性重視のためデザインを複雑化し、プレス形状が複雑になっている上に、プレス方法がクランクプレスであるため、高速で延び、圧縮、しごき、曲げ、曲げ戻しを受ける加工が実施されるようになり、より高水準の潤滑皮膜が必要になっている。また、摺動摩耗性については硬質のニッケルやクロムめっきが必要であった。
【0005】さらに、従来技術は、プレス後脱脂することなくそのままプレコート塗装鋼板として使用する用途に対して必要な一般性能、たとえば上塗り塗料密着性、耐食性や溶接性が十分とはいえない。
【0006】また、製造面では塗料の安定性の問題がある。即ち塗料を構成する水性樹脂、潤滑剤およびシリカゾルがいずれも分散体であり、それぞれ単独では安定であるが、混合すると凝集しやすい問題がある。また、塗装においては新たに設備化するとコストアップになるため、既存のめっきライン内で簡単な製造条件で生産できる塗料でなければならない。これらの問題を全て解決した潤滑めっき鋼板の製造方法はいまだ確立されていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、めっき鋼板の表面にCr換算で5〜100mg/m2 のクロメート処理を行ったのち、その上層にシリカを水性樹脂100重量部に対して固形分で10〜70重量部、粒径が3μm以下、軟化温度が150℃以下の下記ポリオレフィンワックスディスパージョンと粒径が3μm以下、軟化温度が250℃以上のテフロンディスパージョンを9/1〜1/9の不揮発分重量比で混合したワックスを全固形分が水性樹脂100重量部に対して2〜30重量部となる割合で含有する潤滑塗料をドライ付着量として0.5〜5.0g/m2 被覆し、ただちに到達板温90〜200℃に焼付けて冷却することを特徴とする摺動性およびプレス加工性に優れた潤滑めっき鋼板の製造方法である。
記〔ポリオレフィンワックスディスパージョン〕エチレン系不飽和カルボン酸もしくはその無水物またはカルボキシル基含有誘導体を結合成分として含む極性基を有する分子量が1000〜4000、酸価1〜20の球形ポリオレフィンワックスを水または水溶液に分散させたディスパージョン。
【0008】
【作用】本発明方法により製造する潤滑めっき鋼板の断面を図1に示す。下層から鋼板1、めっき2、クロメート3、そして潤滑皮膜4で構成される。潤滑皮膜4には2種類の潤滑剤(○:ポリオレフィン、●:テフロン)が分散されている。以下、各皮膜ごとに説明する。
【0009】本発明が対象とするめっき鋼板は、電気めっき、溶融めっき、蒸着めっきで製造される亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、分散めっき鋼板、重ねめっき鋼板、アルミニウムおよびアルミニウム合金めっき鋼板を包含するものである。特に亜鉛合金めっき鋼板は、摺動摩耗性とプレス性、耐食性について優れた性能が得られる。めっき量は特に限定する必要がないが、本発明では5〜100g/m2 が望ましい。
【0010】冷延鋼板に上記の既存の方法でめっきを行った後、クロメート処理を行う。クロメート付着量はCr換算で5〜100mg/m2 である。クロメート処理の種類は、電解クロメート、エッチングクロメート、塗布クロメートのいずれも本発明に適用できるが、水性塗料を塗装する時点でクロメート皮膜が溶解しにくく且つ板温の低い電解もしくはエッチングクロメートが望ましい。Cr付着量を限定した理由は、Crが5mg/m2 未満では耐食性が得られにくく、100mg/m2 超ではクロメート自身の凝集破壊が生じ、密着性が得られないためである。
【0011】潤滑皮膜としてワックスを適用することは公知であるが、残念ながら、プレス性と摺動摩耗性の両方を満足するものではない。また、ワックスの不活性な化学的特性から汎用的な表面特性が得られず、高濃度の乳化剤を用いて分散させた塗料を得るため皮膜中に乳化剤が残存し、表面特性の良好な皮膜が得られない欠点があった。本発明はこの難しい問題を解決した。
【0012】本発明で使用する潤滑塗料は、揮発性溶剤を含まない水性樹脂、シリカゾル、および反応性に富む粒径が3μm以下の球形ポリオレフィンワックスディスパージョンと反応性に富む粒径が3μm以下のテフロンディスパージョンを混合した成分とする。水性樹脂としてはオレフィンアクリル樹脂、ポリオレフィンアイオノマー、エポキシ樹脂、ウレタンエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニール樹脂を用いることができる。特にオレフィンアクリル樹脂、ポリオレフィンアイオノマー、ウレタンエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0013】組成重量比は、水性樹脂100に対してシリカゾルを10〜70、および粒径が3μm以下で軟化温度が150℃以下の球形ポリオレフィンワックス(POW)と粒径が3μm以下で軟化温度が250℃以上のテフロンワックス(TFW)を混合したワックスを2〜30重量部の範囲とする。
【0014】シリカゾルの役割は、皮膜耐食性および皮膜強度を改善し、摺動摩耗性を向上させることである。また、プレス加工時においては、発熱に対する樹脂の耐熱性が改善される。シリカゾルの樹脂100に対する重量比が10未満では十分な耐食性、摺動摩耗性が得られず、70超では皮膜が硬く伸びないため加工に追従できなくなり、プレス性が低下する。樹脂100に対するシリカゾルの好ましい重量比範囲は30〜60である。また、シリカゾルの形状は細かい粒子が好ましく、直径5〜50nmの球形シリカゾル、または直径5〜50nmで長さ/太さ比が1〜5に化学的に結合させた線状シリカを使用する。シリカゾルの直径が5nm未満では塗料の安定性が実用範囲を越えるため好ましくなく、50nm超では耐摩耗性が低下する。
【0015】ポリオレフィンワックスおよびテフロンワックスは動摩擦係数を下げ、プレス加工性、摺動摩耗性を向上させる。本発明に用いるポリオレフィンワックスは、従来のワックスとは異なり、表面特性に優れ且つ水性樹脂液に均一に分散しやすいワックスディスパージョン、即ちエチレン系不飽和カルボン酸もしくはその無水物またはカルボキシル基含有誘導体を結合成分として含む極性基を有する分子量が1000〜4000、酸価1〜20の粒径が3μm以下の球形ワックスを、乳化剤をワックスに対して5%以下、好ましくは乳化剤を用いることなく水または水溶液に分散させたディスパージョンである。テフロンワックスについては、分子量は数万から数十万で、極性基グラフト重合処理テフロンが望ましいが、密度が大きく、ポリオレフィンのように皮膜の表面に濃化(ブリージングまたは浮きと呼ばれる)し難いため、従来の活性剤で分散したディスパージョンを使用することができる。
【0016】本発明で使用するポリオレフィンワックスの種類は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブチレンワックスである。
【0017】本発明で使用するテフロンワックスディスパージョンは、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、パーフロロアルコキシエチレン(PFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)等である。
【0018】即ち、ポリオレフィンは極性基を付与して化学的反応性を確保し、ワックスの滑り性を低下させることなく水溶液に分散させて、真球に近い形状で軟化点が低い。一方、テフロンは動摩擦係数を極端に下げる劈開性に基づく潤滑性を有し、硬質で軟化点が高く、さらに極性基をグラフト重合付与したものは化学的反応性に優れる。これらの異なる性質と潤滑機能を持つワックスを混合することにより、オレフィン自身の半溶融性滑り性とテフロンの劈開性コロ潤滑の両性能を合わせ持ったベアリング特性を有する高度の潤滑特性が得られる。ベアリング潤滑機構の観点からTFWは250℃以上の軟化温度を、POWは滑り性の観点から150℃以下の低い軟化温度を有するワックスとする必要がある。
【0019】POWとTFWを加えた全ワックス濃度は水性樹脂100に対して2〜30重量の範囲で、且つPOW/TFWが9/1〜1/9の範囲とする。POW/TFWが9/1〜1/1の範囲で特に良好な性能が得られる。樹脂100に対する濃度比が2未満では摺動摩耗性、高速の深絞り加工に対する十分な特性が得られにくい。また、30超では表面特性、特に上塗り塗料密着性、耐食性が低下する。POW/TFWが(9超)/1では摺動特性が低下し、1/(9超)ではプレス加工性が低下する。
【0020】極性基は、触媒の存在下で、ポリオレフィンワックスを酸素、オゾンあるいは硝酸等の酸化剤で酸化処理することによって得られる酸化ポリオレフィンワックス、あるいはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸モノマーとポリオレフィンワックスとをベンゾール等で溶解し、重合開始剤(パーオキサイド、レドックス、重金属触媒等)と共に窒素気流中で加熱してグラフト化して得る。
【0021】分子量の限定理由は、ワックスの潤滑特性である。理想的には2000〜4000とする。変性ポリオレフィンの酸価は、表面特性および分散性から限定する。酸価1未満では塗料密着性が得られず、酸価20超では摩擦抵抗が大きくプレス性が劣化する。ポリオレフィンの好ましい酸価の範囲は3〜15である。
【0022】ワックスの粒径は、3μm超では加工によってワックス自身が凝集破壊を起こし、密着加工性が低下する。また、製造面においてもロールへのビルドアップが生じ易い問題がある。皮膜の膜厚以下の細かい粒子が望ましい。
【0023】以下、潤滑皮膜を被覆する方法について述べる。
【0024】クロメート処理を行った後、潤滑塗料をドライ付着量として0.5〜5.0g/m2 塗布し、ただちに到達板温90〜200℃に焼付けて皮膜化する。ドライ付着量を限定したのは、潤滑性、耐食性ともにドライ付着量に比例して向上し、ドライ付着量0.5g/m2 未満では潤滑性、耐食性が得られず、ドライ付着量5.0g/m2 超では溶接できず、また生産面においてロールへのビルドアップや、急速加熱による泡立ちが発生しやすく実用的ではないからである。最も好ましいドライ付着量は1〜3g/m2 である。塗布方法はロールコーター、エアーナイフコーター、静電塗装等の既存の方法を採用できる。
【0025】塗装後、ただちに焼付ける。本発明においては、できるだけ短時間に焼き付ける急速加熱方法により良好な結果が得られる。即ち、塗装後数秒以内に焼き付け炉に入れ、10秒以内に到達板温90〜200℃に焼き付ける方法が好ましい。その理由は、前述したように本発明の目的とする表面特性の優れた潤滑皮膜を得るためワックスの表面濃化を抑制するためである。極性基を付与せず乳化剤で分散する従来のワックス含有塗料は表面に不活性なワックスが浮いて表面を占有し、上塗り塗料密着性が得られない。焼付方法としては熱風、赤外線、誘導加熱、ガス直火炉、電気炉等の公知の方法を採用できるが、前述したように急速加熱焼付方法が望ましい。
【0026】本発明に用いる潤滑塗料には、必要によりメラミン、アミン等の架橋剤やシランカップリング剤、顔料等を加えることができる。
【0027】
【実施例】実施例中の浴成分は不揮発分としての濃度比である。実施例の記号と内容は表1の通りである。粒径はレーザー光散乱法もしくは透過電顕から判定し、分子量はGPC、極限粘度から、軟化点は環球法(JISK2531)で測定したものである。
【0028】
【表1】


【0029】実施例1めっき量20g/m2 の電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm)の表面に市販のエッチングクロメート処理を行い、水洗後表2に示す潤滑塗料をロールコーターにて塗布したのち、2秒以内にガス直火炉に入れ5秒で到達板温150℃に焼付け、水冷して潤滑めっき鋼板を作成した。
【0030】得られた潤滑めっき鋼板について、回転式の摺動摩耗試験機で摺動摩耗性を評価した。500gの荷重の端子に10mmに打ち抜いたプラスチック(ビデオケース)を貼り、円盤に切った試料の表面に乗せ、毎分60回転させて50回毎に試料表面を観察し、めっきに傷が入った回数で評価した。プレス角筒クランクプレスにて「かじり」を評価した。クランクプレスの条件は、しわ抑え圧6トンで粗板(0.8×220×180mm)を65×115mm、高さ50mmに成形し、粘着テープ(ニチバンセロテープ)にて側面を剥離し、模造紙に貼り色差計にて明度(L)を測定し、粘着テープを直接模造紙に貼付けたブランクの明度(L2 )との差(L2 −L)をΔL値で示した。耐食性は塩水噴霧試験で白錆が面積率5%発生した時間、塗料密着性は市販のメラミンアルキッド樹脂塗料をドライ付着量で20g/m2 塗布し、熱風120℃20分焼付け、エリクセン試験機で9mm絞ったのち粘着テープ(ニチバンセロテープ)にて剥離し、目視評価(剥離面積率)した。また、連続スポット溶接性は、試験板200×300mmを2枚合わせて20mm間隔で電流9kA、加圧力250kgf、電極先端径4.5mm、通電時間12サイクル条件でスポット溶接を行い、溶接可能な点数で評価した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】


【0032】No.1〜4は潤滑皮膜の付着量を0.5、1.0、2.0、3.0g/m2 に変化させた本発明例で、膜厚が厚いほど摺動摩耗性およびクランクプレスのかじりがなく良好な潤滑性を示す。耐食性は付着量に比例して優れる。しかし、溶接性においてはNo.1、2は良好な結果を得たが、高付着量のNo.3、4は溶接しにくい。
【0033】No.5、6はクロメート付着量を変化させた本発明例で、塗布量の少ないNo.5は耐食性がやや低下し、高付着量のNo.6は塗料密着性で少し剥離するが、いずれも良好な結果を得た。
【0034】No.7〜9はシリカの含有比率を変えた例で、率の低いNo.7は耐食性でやや低く、シリカの含有率の高いNo.9は摩耗性に非常に優れる。しかし、クランクプレスではかじりが発生した。No.8はバランスの良い結果を得た。
【0035】No.10、11はシリカの種類を変えた本発明例で、良好な潤滑性、耐食性、塗料密着性を得た。
【0036】No.12〜15はPOW/TFWを変えた本発明例である。No.12はバランスの良い結果を得た。TFW比の低いNo.13は摺動摩耗性能が多少低下するがプレス性が良好である。全ワックス濃度の低いNo.14は潤滑性能が低くなる。濃度の高いNo.15は潤滑性が優れているが、塗料密着性で少し剥離した。しかし、いずれも実用可能な性能を得た。
【0037】No.16は潤滑剤を含まない比較例で、潤滑性が劣る。No.17はTFWを含まない比較例で、摺動摩耗性が劣る。No.18はPOWを含まない比較例で、プレス性でのかじりがひどい。
【0038】実施例2板厚0.8mmの冷延鋼板に既存の方法でめっき量20g/m2 の10%Ni−Zn合金電気めっきを行い、その表面をクロム酸/硫酸=30/0.3g/l浴中で電流密度10A/dm2 、2秒間電解後水洗してCr付着量60mg/m2 被覆し、表3に示す水性樹脂の異なる潤滑塗料をロールコーターにて塗布し、ただちに樹脂によって異なる板温120〜170℃にガス直火炉にて焼き付け、水冷して潤滑めっき鋼板を作成した。評価は実施例1に準じて行い、得た結果を表3に示す。
【0039】
【表3】


【0040】Ni−Zn合金めっき下地ではいずれも摺動摩耗性、耐食性が向上した。
【0041】No.19はオレフィンアクリル樹脂とアンモニア中和シリカの塗料に潤滑剤として酸価5のPOWとPTFEを加えた本発明例で、バランスの良い良好な結果を得た。No.20〜23はオレフィンアクリル樹脂に異なる種類のPOWを配合した本発明例で、いずれも良好な結果を得た。No.24はPOWとして高分子量の樹脂を用いた比較例、No.25は低分子量のポリエチレンを用いた比較例で、いずれもクランクプレス性が悪い。
【0042】No.26、27は極性基としてマレイン酸グラフ重合させたテフロンを用いた本発明例、No.28はPFEを用いた本発明例であり、バランスの良い良好な性能を示した。No.31は水性樹脂としてポリエチレンアイオノマー、No.32はポリエステルを使用した本発明例である。摺動摩耗性、プレス性、耐食性に良好な結果が得られた。No.33は焼付板温が170℃の本発明例で、摺動摩耗性がより改善された。No.34は板温が低い100℃に焼き付けた本発明例で、耐食性、摺動摩耗性で若干性能が低くなるが実用可能水準であった。
【0043】実施例320%Fe−Zn電気亜鉛合金めっき鋼板(めっき量20g/m2 )に電解クロメート(No.35)、溶融亜鉛めっき鋼板(めっき量40g/m2 )の表面に市販の塗布クロメートをCr付着量50mg/m2 狙い(No.36)で行い、表2に示すNo.2の条件で潤滑めっき鋼板を作成した。
【0044】No.35は摺動摩耗回数500回で、クランクプレスでかじりが殆ど無く(ΔL=−0.1)、耐食性は1000時間、塗料密着性も良好な結果を得た。No.36は摺動摩耗回数が300回、プレスかじりはΔL=−0.2、耐食性は500時間、塗料密着性剥離は2%と略良好な結果を得た。
【0045】
【発明の効果】本発明法により製造しためっき鋼板は、プレス油を塗布することなく摺動摩耗性に優れ、高速深絞りができ、さらに皮膜を除去することなくそのまま耐食性皮膜、塗装下地めっき鋼板として使用できることから、脱脂工程の省略、脱脂用溶剤蒸発による環境破壊の防止、職場の環境改善等のメリットがあり、幅広い分野に適用可能な高品質表面処理鋼板であり、製品のトータルコストをミニマム化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法により製造した潤滑めっき鋼板の皮膜の断面図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2 めっき
3 クロメート
4 潤滑皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】 めっき鋼板の表面にCr換算で5〜100mg/m2 のクロメート処理を行ったのち、その上層にシリカを水性樹脂100重量部に対して固形分で10〜70重量部、粒径が3μm以下、軟化温度が150℃以下の下記ポリオレフィンワックスディスパージョンと粒径が3μm以下、軟化温度が250℃以上のテフロンディスパージョンを9/1〜1/9の不揮発分重量比で混合したワックスを全固形分が水性樹脂100重量部に対して2〜30重量部となる割合で含有する潤滑塗料をドライ付着量として0.5〜5.0g/m2 被覆し、ただちに到達板温90〜200℃に焼付けて冷却することを特徴とする摺動性およびプレス加工性に優れた潤滑めっき鋼板の製造方法。
記〔ポリオレフィンワックスディスパージョン〕エチレン系不飽和カルボン酸もしくはその無水物またはカルボキシル基含有誘導体を結合成分として含む極性基を有する分子量が1000〜4000、酸価1〜20の球形ポリオレフィンワックスを水または水溶液に分散させたディスパージョン。
【請求項2】 水性樹脂として揮発性溶剤を含まないオレフィンアクリル樹脂、ポリオレフィンアイオノマー、エポキシ樹脂、ウレタンエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、または酢酸ビニール樹脂を用いる請求項1記載の方法。
【請求項3】 シリカとして直径5〜50nmの球形シリカゾルまたは線形シリカゾルを用いる請求項1記載の方法。
【請求項4】 めっき鋼板として亜鉛合金めっき鋼板を用いる請求項1記載の方法。

【図1】
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