摺動補助装置
【課題】 比較的簡易な構成により適用される機器類の使い勝手や高級感を向上する。
【解決手段】本体8及び可動体9の一方に設けられて、ケース2内に配されて可動体と同方向へ摺動可能な一対のスライダー3,4と、各スライダーにそれぞれ移動変位可能に保持されてケース外に突出しているロック部材30,40と、ケース2に設けられて各スライダーのロック部材と係脱する係合部24,25と、両スライダーの間に設けられてスライダーの一方が他方から離間する方向へ摺動されると付勢力を蓄積可能となる付勢手段5とを有した引出・引込ユニット本体1と、本体8及び可動体9の他方に設けられて、スライダー3,4のロック部材を係合部24,25に係止することで当該スライダーをケースに拘束するケース拘束位置と、前記係止を解除して当該スライダーをケースに対し摺動可能にするケース拘束解除位置とに切り換える一対のストライカー10,15とからなる。
【解決手段】本体8及び可動体9の一方に設けられて、ケース2内に配されて可動体と同方向へ摺動可能な一対のスライダー3,4と、各スライダーにそれぞれ移動変位可能に保持されてケース外に突出しているロック部材30,40と、ケース2に設けられて各スライダーのロック部材と係脱する係合部24,25と、両スライダーの間に設けられてスライダーの一方が他方から離間する方向へ摺動されると付勢力を蓄積可能となる付勢手段5とを有した引出・引込ユニット本体1と、本体8及び可動体9の他方に設けられて、スライダー3,4のロック部材を係合部24,25に係止することで当該スライダーをケースに拘束するケース拘束位置と、前記係止を解除して当該スライダーをケースに対し摺動可能にするケース拘束解除位置とに切り換える一対のストライカー10,15とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出しや蓋体等のような可動体を本体に対し引込位置と引出位置とに摺動切り換える操作を助ける摺動補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可動体を本体に対し引込位置と引出位置とに摺動切り換える構造では、特許文献1に例示されるように、全ての切換操作を手動により行うと疲れたり高級感に欠けるため、可動体を引出位置又は引込位置の何れかの方向へ付勢しておき、該付勢された方向へ自動的に摺動されるよう処理される。
【0003】
図14は特許文献1の引出し用装置を示し、(a)は図示しない可動体の引込位置、(b)は引出位置での状態図である。符号50は本体の側壁、符号55は可動体側の駆動ピン、符号60は本体側壁と可動体との間に配置された傾斜部分、符号65はばね部材である。本体側壁50には案内トラック51が設けられている。該案内トラック51は、前後方向へ水平に延びる真っ直ぐな部分51aと、前方(図の右側)の弓形部分51bとで構成されている。傾斜部分60は、上解放したスロット61及びスロット61の前側から延びている斜めの側壁62を有し、ボルト63,63を案内トラック51に嵌合している。ばね部材65は、本体側に一端を係止し、他端を傾斜部分60に係止した状態で、可動体が引込位置から引出位置方向へ摺動される過程で付勢力を蓄積する。そして、この構造では、可動体が本体側に対し駆動ピン55をスロット61に嵌合した状態で組み込まれる。可動体が引込位置から引出位置へ摺動されるときは、傾斜部分60が案内トラック51の真っ直ぐな部分51aに沿って動かされた後、弓形部分51bで前方へ傾斜され、かつ駆動ピン55がスロット61から斜めの側壁62に動く。これにより、可動体は、ばね部材65の付勢力に抗して引出位置に係止つまりロックされると共に、後方へ押されることで駆動ピン55を斜めの壁部62からスロット61に戻した後、ばね部材65に蓄積された付勢力で引き込まれる。
【0004】
【特許文献1】特公平5−023763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来構造では、例えば、可動体が引出位置から引込位置へはほぼ全て自動で摺動されるが、その分だけ引込位置から引出位置へは強い引き操作力が必要となり使い勝手が悪くなる。また、可動体をばね部材65の付勢力に抗して係止するロック機構として、駆動ピン55を傾斜部材60の前傾斜によりスロット61から抜け出るようにし、斜めの側壁62に係合するため、係合力が弱く、振動等によってロック解除される虞がある。しかも、従来構造では、可動体が本体から一旦取り外されると、傾斜部分60が駆動ピン55から解放されて同(a)に示されるようにスロット61を上向きにした状態でばね部材65の付勢力で本体内に引き込まれるため、可動体を本体に再び組み付けることが難しく、可動体を本体側へ強制的に押し込むと駆動ピン55などが損傷し易くなる。また、従来構造では、可動体を引込位置方向へ摺動する場合と、引出位置方向へ摺動する場合との両方の操作を補助する機能を有しておらず作動特性が制約されている。
【0006】
本発明の目的は、以上のような課題を解消して、例えば、比較的簡易な構成により適用される装置の使い勝手や高級感を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、本体に対し可動体を引出位置から引込位置へ引き込む操作及び引込位置から引出位置へ引き出す操作を助ける摺動補助装置において、前記本体及び前記可動体の一方に設けられて、ケース内に配置されて前記可動体と同方向へ摺動可能な一対のスライダーと、前記各スライダーにそれぞれ移動変位可能に保持されて先端をケース外に突出しているロック部材と、前記ケースに設けられて前記各スライダーのロック部材と係脱する係合部と、前記両スライダーの間に設けられてスライダーの一方が他方から離間する方向へ摺動されると付勢力を蓄積可能となる付勢手段とを有した引出・引込ユニット本体と、 前記本体及び前記可動体の他方に設けられて、前記スライダーのロック部材を前記係合部に係止することで当該スライダーを前記ケースに拘束するケース拘束位置と、前記係止を解除して当該スライダーを前記ケースに対し摺動可能にするケース拘束解除位置とに切り換える一対のストライカーとからなることを特徴としている。
【0008】
(要部説明)以上の本発明装置では、特に、可動体を引込位置から途中位置まで引き出したとき、及び可動体を引出位置から途中位置まで引き込んだときに、前記対応するスライダー(つまり、このスライダーはケース拘束解除位置、もう一方のスライダーがケース拘束位置にある)がストライカーを介してケース拘束解除位置からケース拘束位置へ切り換えられる(付勢手段はこの過程で付勢力を蓄積する)ことで、それまでに付勢手段に蓄積された付勢力を保持すると共に、前記対応すスライダーがケース拘束位置からケース拘束解除位置へ切り換えられることにより可動体を前記付勢手段に蓄積された付勢力により途中位置から引出位置や引込位置へ摺動するようにしたものである。換言すると、本発明の要部構造は、本体及び可動体の一方に引出・引込ユニット本体を設け、他方にロック部材を可動体の摺動方向と略直交する方向へ動かして係合部に係脱するストライカーを設ける点、両スライダーがケース拘束位置とケース拘束解除位置とにあるとき付勢手段の付勢力を解放したり付勢力を蓄積可能となり、両スライダーが共にケース拘束位置にあるとき付勢手段に蓄積された付勢力を保持(維持)する点にある。
【0009】
なお、本明細書において、「ケース拘束位置」は、図面を参照すると、対応するスライダー3又は4がケース2に対し一体的に連結されて、単独での摺動が不能になる意味である(これはスライダー3又は4が可動体9と一体的に連結ないしは作動連結されたロック位置として捉えることも可能である)。これに対し、「ケース拘束解除位置」は、図面を参照すると、対応するスライダー3又は4がケース2に対し非連結となり、単独で摺動可能になる意味である(これはスライダー3又は4が可動体9と非連結ないしは作動連結を解放したロック解除位置として捉えることも可能である)。また、本発明の各ロック部材と各ストライカー(なお、形態例の場合は異なるもので構成した)はそれぞれ同じ形状のもので構成でき、主部材の兼用化により製造費等を低減可能にする。
【0010】
以上の本発明において、前記各スライダーは一端側に設けられた保持部に前記ロック部材をスライダーの摺動方向と略直交する向きに保持していると共に、前記ケースは前記各ロック部材の先端側をケース側面に設けた長溝からケース外へそれぞれ突出していること(請求項2)、前記ストライカーは、前記ロック部材の先端側と当接して該ロック部材を前記対応する係合部に係脱可能にする第1作動部と、前記ロック部材と異なるロック部材が前記係合部に係止されていない係止解除状態で前記引込方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を許容し、該ロック部材が一旦通過した後に前記引出方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を規制する第2作動部とを有していること(請求項3)、前記付勢手段は、一端が前記一方のスライダーに係止され、途中の部分が前記一方のスライダーに設けられた迂回部を介して折り返され、他端が前記他方のスライダーに係止されているコイル形のばね部材であること(請求項4)、前記各スライダーは、摺動方向に沿って延びかつ互いに対向可能な位置にラックを形成していると共に、前記スライダーのラックに噛み合うギアを有したダンパー手段により制動可能となっていること(請求項5)が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の摺動補助装置は次のような利点を有している。
・請求項1の発明では、引出・引込ユニット本体及びストライカーにより、可動体を引込位置から引出位置へ切り換える過程、及び可動体を引出位置から引込位置へ切り換える過程、つまり各途中位置から付勢手段の付勢力により自動的に最終の引出位置と最終の引込位置へそれぞれ摺動でき、その点から使い勝手を向上できる。具体的には、単一のユニット構成により引き込みと引き出しの両補助機能を達成できるため、組込性及びメンテナンス性に優れ、設置スペース上の制約を受け難い点などで有利となる。
・請求項2の発明では、各スライダーが保持部にロック部材を保持した状態で、各ロック部材の先端側をケースの長溝から同方向へ突出するため、例えば、各ロック部材をケースの異なる側面から突出する構成に比べてコンパクト化が図られ、設置時の自由度が得られる。
・請求項3の発明では、図12の例から分かるように、可動体が本体側より外され、しかもロック部材が外したときと異なる位置にずれたときにも、本体側へのセットと共に正常駆動に復帰可能にする。
・請求項4の発明では、付勢手段として定圧ばねより安価なコイル形のばね部材であっても、迂回部を介することによりばね動作時のフリクッションを解消できると共に効率的なレイアウトを実現できる。
・請求項5の発明では、可動体が付勢手段の付勢力により急速に摺動されないようにダンパーにより制動される構成として、簡易性に優れ、制動力をギアを介して安定に付与でき、形態例のように制動力をスライダーの摺動過程の一部だけに作用させることも実現し易くする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の最良な形態を図面を参照しながら説明する。図1と図2は本発明形態の装置作動を模式的に示し、図1は付勢力を蓄積した状態、図2(a),(b)は付勢力を解放した状態である。図3は前記装置を構成している主部材同士の関係を示す構成図である。図4(a),(b)は装置のケース本体をダンパーと共に示す上面図と側面図、図5は前記ケース本体に取り付けられるカバーを示す上面図である。図6は前記装置を構成している一方のスライダーであり、(a)はロック部材と共に示す上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。図7は他方のスライダーであり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はロック部材と共に示す下面図である。図8及び図9はスライダーをケースに拘束したり解放する原理図である。図10及び図11は装置を使用したときの基本作動を示す図、図12は外した可動体を本体に組み付けるときの原理図である。なお、図面中、特に図1と図2及び図8〜図13は作動を分かり易くするため一部を省略している。以下の説明では、摺動補助装置の用途例を概説した後、装置構造、作動の順に詳述する。
【0013】
(用途例)本発明の摺動補助装置は、引出・引込ユニット本体1と、ストライカー10,15とを組として構成され、機器類側の本体に対しトレーやリッド等の可動体を引込位置と引出位置とに摺動切り換える操作を補助するものである。図13は具体的な本体及び可動体の一例を示している。符号8は機器類側の本体である。該本体8は、前面開口した空間部8aを形成している複写機やシステムキッチン等の対応部を想定している。符号9は空間部8aに対応した可動体である。該可動体9は、前壁に指等を掛けるスリット9a等を有した引出部材であり、空間部8aの内側面に取り付けられた案内レール8bに沿って前後に摺動される。そして、この形態では、可動体9の底面にあって後両側に引出・引込ユニット本体1がそれぞれ付設されていると共に、各引出・引込ユニット本体1と対応して案内レール9側にストライカー10,15が付設されている。但し、原理的には、引出・引込ユニット1を本体8に付設し、ストライカー10,15を可動体9に付設することも可能である。使用組数は、2セット(引出・引込ユニット本体1を2個と、ストライカー10,15を各2個)用いた例であるが、例えば、可動体9が軽かったり小さくなれば1セットでも差し支えない。なお、本体8と可動体9との間には、案内レール8bに限られず、案内用の他のレール構造が採用されることもある。
【0014】
(構造)引出・引込ユニット本体1は、ケース2内に配置されて可動体9と同方向へそれぞれ摺動可能な2つのスライダー3,4と、両スライダー3,4の間に介在されてスライダー同士が相対的に離間することにより付勢力を蓄積可能となるばね部材5と、可動体9の摺動速度をスライダー3,4を介して制動するダンパー6と、各スライダー3,4に組み込まれて可動体9の摺動方向と略直交する方向へ移動変位可能なロック部材30,40とで構成されている。細部は以下の通りである。
【0015】
ケース2は、図3〜図5のごとく本体20及びカバー28からなり、可動体9の摺動方向に長くかつ偏平な矩形容器状となっている。ここで、本体20は、枠状の縦壁21で内側を区画し、又、長手方向に対向している縦壁のうち、片側が前後略中間より後端までが切り欠かれて段差22となっている。該段差22は、ケース2として見たときにケース側面に開口した長溝となる。縦壁21で区画されている内底面には、幅方向の略中間に位置して後側(図4の左側)から前後略中間まで延びている案内リブ23と、両側付近に位置して後側から前側(図4の右側)の少し手前まで延びている支持リブ26a,26bと、前後略中間で支持リブ26a,26bの間に位置して凹状となったダンパー配置用窪み部27とが設けられている。案内リブ23には係合部24,25が前後部分に設けられている。各係合部24,25は、案内リブ23のうち段差22と対向した側を凹状にした形状である。係合部24にはロック部材30が係脱し、係合部25にはロック部材40が係脱する。窪み部27は、ダンパー収容部を形成し、内周面が段部となっていて、後述するダンパー6(の本体6a)を一方向にだけ回転可能にする。窪み部27の形状は、例えば、図示のものを略90度回転させた様な形状に設計されることもある。以上の本体20は、スライダー3,4やばね部材5を内部に配置した後、カバー28で閉じられる。この場合、カバー28は、縦壁21に対応した縦壁29と、段差22に対応した段差29aを有し、本体20に適宜な係合手段などにより一体化される。以上のケース2は、例えば、本体20及びカバー28を薄肉ヒンジ部を介して一体成形されることもある。
【0016】
ここで、ダンパー6は、外周に複数の歯(突起でもよい)を形成しかつ内部に作動油を充填している本体6aと、本体6aに軸等を介して回動自在に支持されて前記作動油の抵抗を受けているギア6bとを少なくとも有し、例えば、時計回りに回動するときは空転(本体6aが窪み部27内で空転)し、逆時計回りに回動するときには本体6aが窪み部27の内周形状にて回転不能となりギア6bを介し相手側部材(スライダー)を制動する。換言すると、この構造は、本体6aが回転するときは制動作用を付与できず、回転不能になった状態でギア6bを介して制動可能状態となる。そして、以上のダンパー6は、後述する各スライダー3,4との関係において、ギア6bが各スライダー3,4のラック38,48同士の間に配置されるよう付設されると共に、通常は両ラック38,48のうち、片側のラックと噛み合っている。
【0017】
各スライダー3,4は、ケース本体20内に並行に配置されて、両者が相対的に接近したり離間したりする関係(図1中の上下方向に移動可能)となっている。ここで、スライダー3は、長片部31の一端側に設けられて幅方向に貫通した孔32aを区画している保持部32と、他端側に設けられた円板部33と、長片部31の上面長手方向に設けられた溝状のばね配置部34及び摺動用リブ36a,36bと、ばね配置部34内に設けられた掛け止め用軸35と、円板部33に軸33a等を介して回転自在に取り付けられたばね案内用の滑車37と、長片部31の下面長手方向に段差を形成し、該段差に沿って設けられたラック38と、長片部31の下面長手方向に設けられた摺動用リブ36cなどを有している。そして、スライダー3は、保持部32に対しロック部材30を孔32aに差し込んで移動可能に支持した状態で、ケース本体20の内部にあって、案内リブ23と縦壁21のうち段差22側の縦壁部分との間に配置されて、保持部32が図1や図2(a)のごとく段差22の前側端面に当接した前位置と、図2(b)のごとく段差22の後側端面にスライダー4の保持部43を介して当接した後位置との距離だけ自在に摺動される。また、前記ロック部材30は、保持部32の外に配置される先端爪30aと、孔32aに差し込まれる本体部30bとからなる。本体部30bは、複数のスリット30cを介して弾性が幅方向に付与されており、孔32aに対し移動変位可能に差し込まれる。そして、以上のスライダー3は、図1や図2(a)のごとくロック部材30が孔32aに深く入り込んで本体部30bの後端を案内リブ23の係合部24に係止したケース拘束位置と、図2(b)のごとくロック部材30が孔32aから突出する量を増大して係合部24から外れたケース拘束解除位置とに切り換えられる。
【0018】
これに対し、スライダー4は、長片部41の一端側に薄板状屈曲部42を介し設けられて幅方向に貫通した孔43aを区画している保持部43と、長片部41の上面長手方向に設けられた溝状のばね配置部44及び摺動用リブ46a,46bと、ばね配置部44内に設けられた掛け止め用軸45と、長片部41の下面長手方向に段差を形成し、該段差に沿って設けられたラック48と、長片部41の下面長手方向に設けられた摺動用リブ46cと、屈曲部42の下面側に設けられて孔43aの対応内面と連続しているガイド溝42aなどを有している。そして、スライダー4は、保持部43に対しロック部材40を孔43aに差し込んで移動可能に支持した状態で、ケース本体20の内部にあって、案内リブ23と縦壁21の対応する縦壁部分との間に配置されて、保持部43が図1や図2(b)のごとく段差22の後側端面に当接した後位置と、図2(a)のごとく段差22の前側端面にスライダー3の保持部32を介して当接した前位置との距離だけ自在に摺動される。また、前記ロック部材40は、保持部43の外に配置される先端爪40aと、孔43aに差し込まれる本体部40bとからなる。本体部40bは、複数のスリット40cを介して弾性が幅方向に付与されており、孔43aに対し移動変位可能に差し込まれる。そして、以上のスライダー4は、図1と図2(b)のごとくロック部材40が孔43aに深く入り込んで本体部40bの後端を案内リブ23の係合部25に係止したケース拘束位置と、図2(a)のごとくロック部材40が孔43aから突出する量を増大して係合部25から外れたケース拘束解除位置とに切り換えられる。
【0019】
ばね部材5は、コイル形のばね材が用いられており、一端がスライダー3側の軸35に係止され、途中部分がばね配置部34から滑車37を介してばね配置部44に配置され、他端がスライダー4側の軸45に係止されている。そして、ばね部材5は、図1のごとく両スライダー3,4が相対的に離間するよう摺動されると付勢力を蓄えて、両スライダー3,4がケース拘束位置でその付勢力を保持し、図2のごとくスライダー3,4が接近するよう摺動されると付勢力を解放する。付勢力を解放するときは、スライダー3,4の一方がケース拘束位置、他方がケース拘束解除位置に切り換えられる。以上のようなばね部材5は、全長が長くなっているため安定したばね荷重を得ることができ、両スライダー3,4の間に滑車37を介することによりばね動作時のフリクッションを解消できると共に効率的なレイアウトを実現できる。しかも、スプールに巻回されているばね板をハウジングから引き出すコンストンばねないしは定圧ばねよりも簡易でコスト的にも有利となる。
【0020】
ストライカー10は、スライダー3側のロック部材30をケース拘束位置とケース拘束解除位置とに切り換えると共に、図2(b)や図10(d)のごとくスライダー3のケース拘束解除位置で可動体9を引き出したときに本体8から不用意に抜け出ないよう規制する部材である。形状的には、図1や図13に示されるごとく、本体8側への取付部11と、取付部11の一側面に沿ってかつ一段高くなっているガイド部12と、ガイド部12の前側面に設けられた第1作動部13と、ガイド部12の後端方向に延設されて上下方向に揺動可能な第2作動部14とを有している。第1作動部13は、ロック部材30の先端爪30aを受け入れ可能な大きさで、かつ、前後に対向したカム面13a,13bを有している。カム面13aは後側に位置している。カム面13bは、ガイド部12から突設された弾性変形可能な舌片部13cの内面にて形成されている。第2作動部14は、ガイド部12に対し薄肉部14aを介して延設され、かつ、先端側がガイド部12より少し高くなっている。該先端には、先に行く程、大きく欠肉されたテーパ状の傾斜部14bが設けられている。なお、図8〜図11はストライカー10を下側より見た状態で示し、図12はストライカー10を上側より見た状態で示している。
【0021】
これに対し、ストライカー15は、スライダー4側のロック部材40をケース拘束位置とケース拘束解除位置とに切り換えると共に、図2(a)や図11(d)のごとくスライダー4のケース拘束解除位置で可動体9を本体8の空間部8aに過剰に引き込まれないよう規制する部材である。形状的には、図1や図13に示されるごとく本体8側への取付部16と、取付部16の一側面に沿ってかつ一段高くなっているガイド部17と、ガイド部17の外側面に設けられた作動部18とを有している。作動部18は、ロック部材40の先端爪40aを受け入れ可能な大きさで、かつ、前後に対向したカム面18a,18bを有している。カム面18aは前側に位置している。カム面18bは、弾性変形可能な舌片部18cの内面にて形成され、ガイド部17の外側面に突出している。なお、本発明装置は、ストライカー10,15を同じ形状、つまり上述したスイライカー10の形状かストライカー15の形状にしても正常に作動するが、この形態のごとく専用品とすることで後述する作動4を実現できる。
【0022】
(作動1)以上の摺動補助装置の基本作動として、図1と図2はばね部材5が付勢力を蓄積した状態、摺動用として解放した状態を示している。ここで、図1の両スライダー3,4は、各ロック部材30,40を対応した係合部24,25に係止したケース拘束位置にあり、両者の間が最大まで離間されている。この状態では、ばね部材5が両スライダー3,4の離間距離に比例した付勢力を蓄積している。図2はその蓄積された付勢力が解放された2つの状態を示している。つまり、図2(a)は、引出・引込ユニット本体1(可動体9)が図1の左側へ移動されてスライダー4側のロック部材40をストライカー15の作動により係合部25から係止解除し、かつ、ばね部材5の付勢力よって左側へ自動的に移動された状態である。図2(b)は、引出・引込ユニット本体1(可動体9)が図1の右側へ移動されてスライダー3側のロック部材30をストライカー10の作動により係合部24から係止解除し、かつ、ばね部材5の付勢力よって右側へ自動的に移動された状態である。この構造では、このようにして引出・引込ユニット本体1(可動体9)がばね部材5の付勢力で自動的に移動される。移動過程では、引出・引込ユニット本体1(可動体9)がダンパー6により制動されて緩やかに動かされる。
【0023】
(作動2)図8と図9は摺動補助装置の基本作動として、上述したロック部材が係止と係止解除とに切り換えられるときの動きを示している。
・図8はロック部材30が係止解除されるとき、つまりケース2(引出・引込ユニット本体1や可動体9と同じ)から不図示のスライダー30を解放するときの動きを示している。図8(a)はケース2が図1の右へ移動されて、ロック部材30(の先端爪30a)が第1作動部13のカム面13bに当接した状態である。図8(b)は引出・引込ユニット本体1(可動体9)が更に右側へ移動されることで、その移動力がロック部材30を押し上げる力に変換、つまりロック部材30がカム面13bから受ける先端爪30aの応力により押し上げられて係合部24から係止解除された状態である。図8(c)はロック部材30が係合部24から係止解除されることで、スライダー3がケース拘束解除位置となる結果、ケース2(可動体9)がそれまでに蓄えられたばね部材5の付勢力によりストライカー10に対し前方へ移動された状態である。
・これに対し、図9はロック部材30が再び係止されるとき、つまりケース2(引出・引込ユニット本体1や可動体9と同じ)に不図示のスライダー30を拘束するときの動きを示している。図9(a)はケース2が図8(c)の状態から左側へ移動された直前の状態である。図9(b)はケース2(可動体9)が前記したばね部材5の付勢力を蓄積しながら更に左側へ移動されることで、その移動力がロック部材30を押し下げる力に変換、つまりロック部材30がカム面13aから受ける応力により押し下げられようとしている状態である。図8(c)はケース2(可動体9)が更に左側へ移動されることで、ロック部材30が押し下げられて係合部24に係止され(不図示のスライダー3がケース拘束位置となる)、それまでに蓄積されたばね部材5の付勢力を保持している状態である。なお、以上の例はロック部材30側であるが、ロック部材40も同様な動きで図1と図2(a)とに切り換えられる。
【0024】
(作動3)図10と図11は摺動補助装置の用途例として可動体9を機器類側の本体8の空間部8aから引き出したり、引き込むときの作動を示している。なお、図10と図11は符号を主部材だけに付したが、細部は対応する図1〜図7を参照されたい。
・図10(a)は、可動体9が図11(d)や図2(a)のごとく本体側空間部8aに収まっている引込位置から手動で引き出している引出途中の状態である。この過程では、引出・引込ユニット本体1のスライダー3,4のうち、一方スライダー3のロック部材30が係止状態、スライダー4のロック部材40が図2(a)の係止解除状態から先端爪40aを作動部18のカム面18aに当接しながら係合部25に係止される。つまり、可動体9は、ダンパー6を空転しながら引き出されると共に、スライダー3がケース拘束位置にあるため、ばね部材5が可動体9の摺動に伴って付勢力を次第に増大し蓄積する。そして、蓄積した付勢力は、ロック部材40が係止状態に切り換えられたときに図1と同様に保持される。
・図10(b)は、そのようにして蓄積した付勢力を保持した(つまりばね部材5の中立)状態で、可動体9が更に引き出されている状態を示している。
【0025】
・図10(c)は、可動体9が更に引き出されて、スライダー3のロック部材30がストライカー10により係止解除に切り換えられた直後の状態を示している。この過程は、図8と同様であり、ロック部材30が先端爪30aをストライカー10の第1作動部13のカム面13bに当接し、該カム面13bから受ける反力ないしはカム作用により先端爪30aを介し押し上げられ、その結果、係合部24から係止解除される。
・図10(d)は、そのようにしてロック部材30が係止解除、つまりスライダー3がケース拘束解除位置に切り換えられることにより、図2(b)と同様に可動体9がばね部材5の付勢力により自動的に最終の引出位置まで摺動された状態である。この構造では、(c)〜(d)に至る間、ダンパー6がスライダー4のラック48とギア6bとの噛み合いを介して可動体9の摺動速度を制動する。この結果、可動体9は、途中位置から最終の引出位置まだ緩やかな速度で摺動されることになる。
【0026】
・図11(a)は、可動体9を図10(d)の引出位置から途中位置まで引き込め操作したときの状態を示している。この引き込め過程では、ロック部材40が係止位置(スライダー4がケース拘束位置)であり、ロック部材30が係止解除位置(スライダー3がケース拘束解除位置)となっているため、ばね部材5が可動体9の摺動に伴って付勢力を次第に増大するよう蓄積する。そして、ロック部材30が図9(b),(c)と同様に係合部24と対向したときに、第1作動部13のカム面13aから受ける先端爪30aの応力により押し下げられて係合部24に係止され(スライダー3がケース拘束位置となる)、蓄積されたばね部材5の付勢力を保持する。
・図11(b)は、そのようにして蓄積した付勢力を保持した(つまりばね部材5の中立)状態で、可動体9が更に引き込められている状態を示している。
【0027】
・図11(c)は、可動体9が途中位置まで引き込め操作されて、スライダー4のロック部材40がストライカー15の作動部18により係止解除に切り換えられた直前の状態を示している。すなわち、この引き込め過程において、ロック部材40は、図1の左側に示されるごとく先端爪40aが作動部18のカム面18bに当接し、該カム面18bから受ける応力ないしはカム作用によりロック部材40を同図の上側へ押し上げ、それにより係合部25から係止解除される。
・図11(d)は、そのようにして、ロック部材40が係止解除(スライダー4がケース拘束解除位置)に切り換えられることにより、可動体9がばね部材5の付勢力により自動的に最終の引込位置まで摺動された状態を示している。なお、この構造では、(c)〜(d)に至る間、ダンパー6がラック48とギア6bとの噛み合いを介して可動体9の摺動速度を制動する。この結果、可動体9は、途中位置から最終の引込位置まで緩やかな速度で摺動されることになる。
【0028】
(作動4)以上の摺動補助装置は、可動体9が清掃やメンテナンス等を行うため機器類側本体8の空間部8aから外されることもあり、そのように外されて再び本体空間部8aにセットする場合、ロック部材が何かに当たって動いても確実に正常駆動に復帰されるよう工夫されている。なお、可動体9は、通常、引出位置である図2(b)や図10(d)の状態(スライダー3がケース拘束解除位置、スライダー4がケース拘束位置)から、例えば、可動体9を上方へ持ち上げたり傾けると、ロック部材30の先端爪30aがストライカー10の第1作動部13内から外れて空間部8aより取り外すことが可能となる。そして、可動体9は、本体8から取り外したときと同じ状態であれば、取り外したときと逆の操作を行うことにより空間部8aにセットされる。ところが、以上の引出・引込ユニット本体1は、可動体9が本体8から取り外された状態で、ロック部材40に接触したときの負荷などにより、ロック部材40が係合部25から係止解除され、あるいはロック部材30が係合部24から係止解除されることも起きる。図12はそのような事態(不図示のスライダー4がケース拘束解除位置になったとき)を想定し、不図示の可動体9が本体8にセットされると共に正常な駆動に復帰される点を図解したものである。
【0029】
図12(a)は可動体9を本体側空間部8aに挿入するときの状態を模式的に示している。ここで、引出・引込ユニット本体1は、ロック部材40が係止解除されているためスライダー4と共に前側に摺動自在であり、ロック部材30がその摺動により同方向へ自在に摺動される。このため、この構造では、まず、可動体9が本体側空間部8aに挿入される初期過程で、ロック部材40の先端爪40aが高さ違いによってストライカー10のガイド部12の上面に沿って摺動されると共に、ロック部材30の先端爪30aが舌片部13cに当たって押下される。この結果、ロック部材30は同図のごとく係合部24に係止(スライダー3がケース拘束位置)され、かつ、先端爪30aが舌片部13cを倒す方向へ弾性変位しながら乗り越える。そして、この構造では、可動体9が更に引き込められると、図12(b)のごとくロック部材40(の先端爪40a)が第2作動部14を薄肉部14aを介し下向きに撓ませながら乗り越える。すると、ロック部材40は、図12(c)のごとく先端爪40aの上角部に第2作動部14の先端傾斜面14bをクリック音を伴って当接する。引出・引込ユニット本体1(可動体9)は、その状態から図12(c)のごとく前方へ引き出されることで、ロック部材40が相対的に後方へ摺動された状態となり(このときは不図示のばね部材5が付勢力を蓄積する)、最終的に図12(d)のごとく係合部25と係止される。この結果、図1と図10(b)並びに図11(b)と同じくし正常駆動に復帰される。以上のようにして、この構造では、可動体9を機器類側の本体8から取り外し、しかもロック部材が外部から負荷を受けて外したときの態様と異なっても、常に正常駆動に復帰できるため信頼性を向上できる。
【0030】
なお、本発明は、上記形態に何ら制約されるものではなく、請求項1で特定された要件以外はこれを参照して適宜に変更可能である。また、本発明装置は、用途的な制約は特になく、例えば、可動体が蓋体であれば、引込位置が本体の所定箇所に配置される閉位置と同じ意味となり、引出位置が本体の所定箇所から離れる開位置と同じ意味となる。また、ダンパー6は、一方向の回転時だけ制動する構成として、本体6aがダンパー収容用窪み部27に対し形状設定により回転方向を規制するようにして簡略化を図ったが、このタイプ以外であっても差し支えない。また、ばね部材5は、定圧ばね等の他の付勢構造でもよい。勿論、「一対のストライカー」は、作動部材などと表現しても差し支えなく、また、構造としては例えば単一の細長い部材に対しストライカー10の第1作動部13(と必要に応じて第2作動部14)及びストライカー15の作動部18をそれぞれ形成した態様も含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明形態の作動特徴(付勢力蓄積状態)を模式的に示す図である。
【図2】本発明形態の作動特徴(付勢力解放状態)を模式的に示す図である。
【図3】図1の摺動補助装置の主部材同士の関係を示す構成図である。
【図4】上記摺動補助装置を構成しているケースの本体を示す図である。
【図5】上記ケースのカバーを示す図である。
【図6】上記摺動補助装置を構成している一方のスライダーを示す図である。
【図7】上記摺動補助装置を構成している他方のスライダーを示す図である。
【図8】上記ケースからスライダーの拘束を解放する際の原理を示す模式図である。
【図9】上記スライダーをケースに拘束するときの原理を示す模式図である。
【図10】上記摺動補助装置の作動(引出操作)を示す模式図である。
【図11】図10と同様に摺動補助装置の作動(引き込み操作)を示す図である。
【図12】可動体を本体に組み付ける際の正常駆動への復帰を示す模式図である。
【図13】本発明形態の可動体と機器類側本体の関係を示す参考図である。
【図14】従来の問題を説明するための参考図である。
【符号の説明】
【0032】
1…引出・引込ユニット本体
2…ケース(20は本体、23は案内リブ、24,25は係合部、27は窪み部)
3…スライダー(31は長片部、32は保持部、37は迂回部としての滑車)
4…スライダー(41は長片部、43は保持部)
5…ばね部材(付勢手段)
6…ダンパー(6aは本体、6bはギア)
8…機器類側の本体(8aは空間部、8bは案内レール)
9…可動体
10…ストライカー(12はガイド部、13は第1作動部、14は第2作動部)
15…ストライカー(17はガイド部、18は作動部)
22…段差(開口又は長溝)
30…ロック部材(30aは先端爪、30bは本体、30cはスリット)
40…ロック部材(40aは先端爪、40bは本体、40cはスリット)
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出しや蓋体等のような可動体を本体に対し引込位置と引出位置とに摺動切り換える操作を助ける摺動補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可動体を本体に対し引込位置と引出位置とに摺動切り換える構造では、特許文献1に例示されるように、全ての切換操作を手動により行うと疲れたり高級感に欠けるため、可動体を引出位置又は引込位置の何れかの方向へ付勢しておき、該付勢された方向へ自動的に摺動されるよう処理される。
【0003】
図14は特許文献1の引出し用装置を示し、(a)は図示しない可動体の引込位置、(b)は引出位置での状態図である。符号50は本体の側壁、符号55は可動体側の駆動ピン、符号60は本体側壁と可動体との間に配置された傾斜部分、符号65はばね部材である。本体側壁50には案内トラック51が設けられている。該案内トラック51は、前後方向へ水平に延びる真っ直ぐな部分51aと、前方(図の右側)の弓形部分51bとで構成されている。傾斜部分60は、上解放したスロット61及びスロット61の前側から延びている斜めの側壁62を有し、ボルト63,63を案内トラック51に嵌合している。ばね部材65は、本体側に一端を係止し、他端を傾斜部分60に係止した状態で、可動体が引込位置から引出位置方向へ摺動される過程で付勢力を蓄積する。そして、この構造では、可動体が本体側に対し駆動ピン55をスロット61に嵌合した状態で組み込まれる。可動体が引込位置から引出位置へ摺動されるときは、傾斜部分60が案内トラック51の真っ直ぐな部分51aに沿って動かされた後、弓形部分51bで前方へ傾斜され、かつ駆動ピン55がスロット61から斜めの側壁62に動く。これにより、可動体は、ばね部材65の付勢力に抗して引出位置に係止つまりロックされると共に、後方へ押されることで駆動ピン55を斜めの壁部62からスロット61に戻した後、ばね部材65に蓄積された付勢力で引き込まれる。
【0004】
【特許文献1】特公平5−023763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来構造では、例えば、可動体が引出位置から引込位置へはほぼ全て自動で摺動されるが、その分だけ引込位置から引出位置へは強い引き操作力が必要となり使い勝手が悪くなる。また、可動体をばね部材65の付勢力に抗して係止するロック機構として、駆動ピン55を傾斜部材60の前傾斜によりスロット61から抜け出るようにし、斜めの側壁62に係合するため、係合力が弱く、振動等によってロック解除される虞がある。しかも、従来構造では、可動体が本体から一旦取り外されると、傾斜部分60が駆動ピン55から解放されて同(a)に示されるようにスロット61を上向きにした状態でばね部材65の付勢力で本体内に引き込まれるため、可動体を本体に再び組み付けることが難しく、可動体を本体側へ強制的に押し込むと駆動ピン55などが損傷し易くなる。また、従来構造では、可動体を引込位置方向へ摺動する場合と、引出位置方向へ摺動する場合との両方の操作を補助する機能を有しておらず作動特性が制約されている。
【0006】
本発明の目的は、以上のような課題を解消して、例えば、比較的簡易な構成により適用される装置の使い勝手や高級感を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、本体に対し可動体を引出位置から引込位置へ引き込む操作及び引込位置から引出位置へ引き出す操作を助ける摺動補助装置において、前記本体及び前記可動体の一方に設けられて、ケース内に配置されて前記可動体と同方向へ摺動可能な一対のスライダーと、前記各スライダーにそれぞれ移動変位可能に保持されて先端をケース外に突出しているロック部材と、前記ケースに設けられて前記各スライダーのロック部材と係脱する係合部と、前記両スライダーの間に設けられてスライダーの一方が他方から離間する方向へ摺動されると付勢力を蓄積可能となる付勢手段とを有した引出・引込ユニット本体と、 前記本体及び前記可動体の他方に設けられて、前記スライダーのロック部材を前記係合部に係止することで当該スライダーを前記ケースに拘束するケース拘束位置と、前記係止を解除して当該スライダーを前記ケースに対し摺動可能にするケース拘束解除位置とに切り換える一対のストライカーとからなることを特徴としている。
【0008】
(要部説明)以上の本発明装置では、特に、可動体を引込位置から途中位置まで引き出したとき、及び可動体を引出位置から途中位置まで引き込んだときに、前記対応するスライダー(つまり、このスライダーはケース拘束解除位置、もう一方のスライダーがケース拘束位置にある)がストライカーを介してケース拘束解除位置からケース拘束位置へ切り換えられる(付勢手段はこの過程で付勢力を蓄積する)ことで、それまでに付勢手段に蓄積された付勢力を保持すると共に、前記対応すスライダーがケース拘束位置からケース拘束解除位置へ切り換えられることにより可動体を前記付勢手段に蓄積された付勢力により途中位置から引出位置や引込位置へ摺動するようにしたものである。換言すると、本発明の要部構造は、本体及び可動体の一方に引出・引込ユニット本体を設け、他方にロック部材を可動体の摺動方向と略直交する方向へ動かして係合部に係脱するストライカーを設ける点、両スライダーがケース拘束位置とケース拘束解除位置とにあるとき付勢手段の付勢力を解放したり付勢力を蓄積可能となり、両スライダーが共にケース拘束位置にあるとき付勢手段に蓄積された付勢力を保持(維持)する点にある。
【0009】
なお、本明細書において、「ケース拘束位置」は、図面を参照すると、対応するスライダー3又は4がケース2に対し一体的に連結されて、単独での摺動が不能になる意味である(これはスライダー3又は4が可動体9と一体的に連結ないしは作動連結されたロック位置として捉えることも可能である)。これに対し、「ケース拘束解除位置」は、図面を参照すると、対応するスライダー3又は4がケース2に対し非連結となり、単独で摺動可能になる意味である(これはスライダー3又は4が可動体9と非連結ないしは作動連結を解放したロック解除位置として捉えることも可能である)。また、本発明の各ロック部材と各ストライカー(なお、形態例の場合は異なるもので構成した)はそれぞれ同じ形状のもので構成でき、主部材の兼用化により製造費等を低減可能にする。
【0010】
以上の本発明において、前記各スライダーは一端側に設けられた保持部に前記ロック部材をスライダーの摺動方向と略直交する向きに保持していると共に、前記ケースは前記各ロック部材の先端側をケース側面に設けた長溝からケース外へそれぞれ突出していること(請求項2)、前記ストライカーは、前記ロック部材の先端側と当接して該ロック部材を前記対応する係合部に係脱可能にする第1作動部と、前記ロック部材と異なるロック部材が前記係合部に係止されていない係止解除状態で前記引込方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を許容し、該ロック部材が一旦通過した後に前記引出方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を規制する第2作動部とを有していること(請求項3)、前記付勢手段は、一端が前記一方のスライダーに係止され、途中の部分が前記一方のスライダーに設けられた迂回部を介して折り返され、他端が前記他方のスライダーに係止されているコイル形のばね部材であること(請求項4)、前記各スライダーは、摺動方向に沿って延びかつ互いに対向可能な位置にラックを形成していると共に、前記スライダーのラックに噛み合うギアを有したダンパー手段により制動可能となっていること(請求項5)が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の摺動補助装置は次のような利点を有している。
・請求項1の発明では、引出・引込ユニット本体及びストライカーにより、可動体を引込位置から引出位置へ切り換える過程、及び可動体を引出位置から引込位置へ切り換える過程、つまり各途中位置から付勢手段の付勢力により自動的に最終の引出位置と最終の引込位置へそれぞれ摺動でき、その点から使い勝手を向上できる。具体的には、単一のユニット構成により引き込みと引き出しの両補助機能を達成できるため、組込性及びメンテナンス性に優れ、設置スペース上の制約を受け難い点などで有利となる。
・請求項2の発明では、各スライダーが保持部にロック部材を保持した状態で、各ロック部材の先端側をケースの長溝から同方向へ突出するため、例えば、各ロック部材をケースの異なる側面から突出する構成に比べてコンパクト化が図られ、設置時の自由度が得られる。
・請求項3の発明では、図12の例から分かるように、可動体が本体側より外され、しかもロック部材が外したときと異なる位置にずれたときにも、本体側へのセットと共に正常駆動に復帰可能にする。
・請求項4の発明では、付勢手段として定圧ばねより安価なコイル形のばね部材であっても、迂回部を介することによりばね動作時のフリクッションを解消できると共に効率的なレイアウトを実現できる。
・請求項5の発明では、可動体が付勢手段の付勢力により急速に摺動されないようにダンパーにより制動される構成として、簡易性に優れ、制動力をギアを介して安定に付与でき、形態例のように制動力をスライダーの摺動過程の一部だけに作用させることも実現し易くする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の最良な形態を図面を参照しながら説明する。図1と図2は本発明形態の装置作動を模式的に示し、図1は付勢力を蓄積した状態、図2(a),(b)は付勢力を解放した状態である。図3は前記装置を構成している主部材同士の関係を示す構成図である。図4(a),(b)は装置のケース本体をダンパーと共に示す上面図と側面図、図5は前記ケース本体に取り付けられるカバーを示す上面図である。図6は前記装置を構成している一方のスライダーであり、(a)はロック部材と共に示す上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。図7は他方のスライダーであり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はロック部材と共に示す下面図である。図8及び図9はスライダーをケースに拘束したり解放する原理図である。図10及び図11は装置を使用したときの基本作動を示す図、図12は外した可動体を本体に組み付けるときの原理図である。なお、図面中、特に図1と図2及び図8〜図13は作動を分かり易くするため一部を省略している。以下の説明では、摺動補助装置の用途例を概説した後、装置構造、作動の順に詳述する。
【0013】
(用途例)本発明の摺動補助装置は、引出・引込ユニット本体1と、ストライカー10,15とを組として構成され、機器類側の本体に対しトレーやリッド等の可動体を引込位置と引出位置とに摺動切り換える操作を補助するものである。図13は具体的な本体及び可動体の一例を示している。符号8は機器類側の本体である。該本体8は、前面開口した空間部8aを形成している複写機やシステムキッチン等の対応部を想定している。符号9は空間部8aに対応した可動体である。該可動体9は、前壁に指等を掛けるスリット9a等を有した引出部材であり、空間部8aの内側面に取り付けられた案内レール8bに沿って前後に摺動される。そして、この形態では、可動体9の底面にあって後両側に引出・引込ユニット本体1がそれぞれ付設されていると共に、各引出・引込ユニット本体1と対応して案内レール9側にストライカー10,15が付設されている。但し、原理的には、引出・引込ユニット1を本体8に付設し、ストライカー10,15を可動体9に付設することも可能である。使用組数は、2セット(引出・引込ユニット本体1を2個と、ストライカー10,15を各2個)用いた例であるが、例えば、可動体9が軽かったり小さくなれば1セットでも差し支えない。なお、本体8と可動体9との間には、案内レール8bに限られず、案内用の他のレール構造が採用されることもある。
【0014】
(構造)引出・引込ユニット本体1は、ケース2内に配置されて可動体9と同方向へそれぞれ摺動可能な2つのスライダー3,4と、両スライダー3,4の間に介在されてスライダー同士が相対的に離間することにより付勢力を蓄積可能となるばね部材5と、可動体9の摺動速度をスライダー3,4を介して制動するダンパー6と、各スライダー3,4に組み込まれて可動体9の摺動方向と略直交する方向へ移動変位可能なロック部材30,40とで構成されている。細部は以下の通りである。
【0015】
ケース2は、図3〜図5のごとく本体20及びカバー28からなり、可動体9の摺動方向に長くかつ偏平な矩形容器状となっている。ここで、本体20は、枠状の縦壁21で内側を区画し、又、長手方向に対向している縦壁のうち、片側が前後略中間より後端までが切り欠かれて段差22となっている。該段差22は、ケース2として見たときにケース側面に開口した長溝となる。縦壁21で区画されている内底面には、幅方向の略中間に位置して後側(図4の左側)から前後略中間まで延びている案内リブ23と、両側付近に位置して後側から前側(図4の右側)の少し手前まで延びている支持リブ26a,26bと、前後略中間で支持リブ26a,26bの間に位置して凹状となったダンパー配置用窪み部27とが設けられている。案内リブ23には係合部24,25が前後部分に設けられている。各係合部24,25は、案内リブ23のうち段差22と対向した側を凹状にした形状である。係合部24にはロック部材30が係脱し、係合部25にはロック部材40が係脱する。窪み部27は、ダンパー収容部を形成し、内周面が段部となっていて、後述するダンパー6(の本体6a)を一方向にだけ回転可能にする。窪み部27の形状は、例えば、図示のものを略90度回転させた様な形状に設計されることもある。以上の本体20は、スライダー3,4やばね部材5を内部に配置した後、カバー28で閉じられる。この場合、カバー28は、縦壁21に対応した縦壁29と、段差22に対応した段差29aを有し、本体20に適宜な係合手段などにより一体化される。以上のケース2は、例えば、本体20及びカバー28を薄肉ヒンジ部を介して一体成形されることもある。
【0016】
ここで、ダンパー6は、外周に複数の歯(突起でもよい)を形成しかつ内部に作動油を充填している本体6aと、本体6aに軸等を介して回動自在に支持されて前記作動油の抵抗を受けているギア6bとを少なくとも有し、例えば、時計回りに回動するときは空転(本体6aが窪み部27内で空転)し、逆時計回りに回動するときには本体6aが窪み部27の内周形状にて回転不能となりギア6bを介し相手側部材(スライダー)を制動する。換言すると、この構造は、本体6aが回転するときは制動作用を付与できず、回転不能になった状態でギア6bを介して制動可能状態となる。そして、以上のダンパー6は、後述する各スライダー3,4との関係において、ギア6bが各スライダー3,4のラック38,48同士の間に配置されるよう付設されると共に、通常は両ラック38,48のうち、片側のラックと噛み合っている。
【0017】
各スライダー3,4は、ケース本体20内に並行に配置されて、両者が相対的に接近したり離間したりする関係(図1中の上下方向に移動可能)となっている。ここで、スライダー3は、長片部31の一端側に設けられて幅方向に貫通した孔32aを区画している保持部32と、他端側に設けられた円板部33と、長片部31の上面長手方向に設けられた溝状のばね配置部34及び摺動用リブ36a,36bと、ばね配置部34内に設けられた掛け止め用軸35と、円板部33に軸33a等を介して回転自在に取り付けられたばね案内用の滑車37と、長片部31の下面長手方向に段差を形成し、該段差に沿って設けられたラック38と、長片部31の下面長手方向に設けられた摺動用リブ36cなどを有している。そして、スライダー3は、保持部32に対しロック部材30を孔32aに差し込んで移動可能に支持した状態で、ケース本体20の内部にあって、案内リブ23と縦壁21のうち段差22側の縦壁部分との間に配置されて、保持部32が図1や図2(a)のごとく段差22の前側端面に当接した前位置と、図2(b)のごとく段差22の後側端面にスライダー4の保持部43を介して当接した後位置との距離だけ自在に摺動される。また、前記ロック部材30は、保持部32の外に配置される先端爪30aと、孔32aに差し込まれる本体部30bとからなる。本体部30bは、複数のスリット30cを介して弾性が幅方向に付与されており、孔32aに対し移動変位可能に差し込まれる。そして、以上のスライダー3は、図1や図2(a)のごとくロック部材30が孔32aに深く入り込んで本体部30bの後端を案内リブ23の係合部24に係止したケース拘束位置と、図2(b)のごとくロック部材30が孔32aから突出する量を増大して係合部24から外れたケース拘束解除位置とに切り換えられる。
【0018】
これに対し、スライダー4は、長片部41の一端側に薄板状屈曲部42を介し設けられて幅方向に貫通した孔43aを区画している保持部43と、長片部41の上面長手方向に設けられた溝状のばね配置部44及び摺動用リブ46a,46bと、ばね配置部44内に設けられた掛け止め用軸45と、長片部41の下面長手方向に段差を形成し、該段差に沿って設けられたラック48と、長片部41の下面長手方向に設けられた摺動用リブ46cと、屈曲部42の下面側に設けられて孔43aの対応内面と連続しているガイド溝42aなどを有している。そして、スライダー4は、保持部43に対しロック部材40を孔43aに差し込んで移動可能に支持した状態で、ケース本体20の内部にあって、案内リブ23と縦壁21の対応する縦壁部分との間に配置されて、保持部43が図1や図2(b)のごとく段差22の後側端面に当接した後位置と、図2(a)のごとく段差22の前側端面にスライダー3の保持部32を介して当接した前位置との距離だけ自在に摺動される。また、前記ロック部材40は、保持部43の外に配置される先端爪40aと、孔43aに差し込まれる本体部40bとからなる。本体部40bは、複数のスリット40cを介して弾性が幅方向に付与されており、孔43aに対し移動変位可能に差し込まれる。そして、以上のスライダー4は、図1と図2(b)のごとくロック部材40が孔43aに深く入り込んで本体部40bの後端を案内リブ23の係合部25に係止したケース拘束位置と、図2(a)のごとくロック部材40が孔43aから突出する量を増大して係合部25から外れたケース拘束解除位置とに切り換えられる。
【0019】
ばね部材5は、コイル形のばね材が用いられており、一端がスライダー3側の軸35に係止され、途中部分がばね配置部34から滑車37を介してばね配置部44に配置され、他端がスライダー4側の軸45に係止されている。そして、ばね部材5は、図1のごとく両スライダー3,4が相対的に離間するよう摺動されると付勢力を蓄えて、両スライダー3,4がケース拘束位置でその付勢力を保持し、図2のごとくスライダー3,4が接近するよう摺動されると付勢力を解放する。付勢力を解放するときは、スライダー3,4の一方がケース拘束位置、他方がケース拘束解除位置に切り換えられる。以上のようなばね部材5は、全長が長くなっているため安定したばね荷重を得ることができ、両スライダー3,4の間に滑車37を介することによりばね動作時のフリクッションを解消できると共に効率的なレイアウトを実現できる。しかも、スプールに巻回されているばね板をハウジングから引き出すコンストンばねないしは定圧ばねよりも簡易でコスト的にも有利となる。
【0020】
ストライカー10は、スライダー3側のロック部材30をケース拘束位置とケース拘束解除位置とに切り換えると共に、図2(b)や図10(d)のごとくスライダー3のケース拘束解除位置で可動体9を引き出したときに本体8から不用意に抜け出ないよう規制する部材である。形状的には、図1や図13に示されるごとく、本体8側への取付部11と、取付部11の一側面に沿ってかつ一段高くなっているガイド部12と、ガイド部12の前側面に設けられた第1作動部13と、ガイド部12の後端方向に延設されて上下方向に揺動可能な第2作動部14とを有している。第1作動部13は、ロック部材30の先端爪30aを受け入れ可能な大きさで、かつ、前後に対向したカム面13a,13bを有している。カム面13aは後側に位置している。カム面13bは、ガイド部12から突設された弾性変形可能な舌片部13cの内面にて形成されている。第2作動部14は、ガイド部12に対し薄肉部14aを介して延設され、かつ、先端側がガイド部12より少し高くなっている。該先端には、先に行く程、大きく欠肉されたテーパ状の傾斜部14bが設けられている。なお、図8〜図11はストライカー10を下側より見た状態で示し、図12はストライカー10を上側より見た状態で示している。
【0021】
これに対し、ストライカー15は、スライダー4側のロック部材40をケース拘束位置とケース拘束解除位置とに切り換えると共に、図2(a)や図11(d)のごとくスライダー4のケース拘束解除位置で可動体9を本体8の空間部8aに過剰に引き込まれないよう規制する部材である。形状的には、図1や図13に示されるごとく本体8側への取付部16と、取付部16の一側面に沿ってかつ一段高くなっているガイド部17と、ガイド部17の外側面に設けられた作動部18とを有している。作動部18は、ロック部材40の先端爪40aを受け入れ可能な大きさで、かつ、前後に対向したカム面18a,18bを有している。カム面18aは前側に位置している。カム面18bは、弾性変形可能な舌片部18cの内面にて形成され、ガイド部17の外側面に突出している。なお、本発明装置は、ストライカー10,15を同じ形状、つまり上述したスイライカー10の形状かストライカー15の形状にしても正常に作動するが、この形態のごとく専用品とすることで後述する作動4を実現できる。
【0022】
(作動1)以上の摺動補助装置の基本作動として、図1と図2はばね部材5が付勢力を蓄積した状態、摺動用として解放した状態を示している。ここで、図1の両スライダー3,4は、各ロック部材30,40を対応した係合部24,25に係止したケース拘束位置にあり、両者の間が最大まで離間されている。この状態では、ばね部材5が両スライダー3,4の離間距離に比例した付勢力を蓄積している。図2はその蓄積された付勢力が解放された2つの状態を示している。つまり、図2(a)は、引出・引込ユニット本体1(可動体9)が図1の左側へ移動されてスライダー4側のロック部材40をストライカー15の作動により係合部25から係止解除し、かつ、ばね部材5の付勢力よって左側へ自動的に移動された状態である。図2(b)は、引出・引込ユニット本体1(可動体9)が図1の右側へ移動されてスライダー3側のロック部材30をストライカー10の作動により係合部24から係止解除し、かつ、ばね部材5の付勢力よって右側へ自動的に移動された状態である。この構造では、このようにして引出・引込ユニット本体1(可動体9)がばね部材5の付勢力で自動的に移動される。移動過程では、引出・引込ユニット本体1(可動体9)がダンパー6により制動されて緩やかに動かされる。
【0023】
(作動2)図8と図9は摺動補助装置の基本作動として、上述したロック部材が係止と係止解除とに切り換えられるときの動きを示している。
・図8はロック部材30が係止解除されるとき、つまりケース2(引出・引込ユニット本体1や可動体9と同じ)から不図示のスライダー30を解放するときの動きを示している。図8(a)はケース2が図1の右へ移動されて、ロック部材30(の先端爪30a)が第1作動部13のカム面13bに当接した状態である。図8(b)は引出・引込ユニット本体1(可動体9)が更に右側へ移動されることで、その移動力がロック部材30を押し上げる力に変換、つまりロック部材30がカム面13bから受ける先端爪30aの応力により押し上げられて係合部24から係止解除された状態である。図8(c)はロック部材30が係合部24から係止解除されることで、スライダー3がケース拘束解除位置となる結果、ケース2(可動体9)がそれまでに蓄えられたばね部材5の付勢力によりストライカー10に対し前方へ移動された状態である。
・これに対し、図9はロック部材30が再び係止されるとき、つまりケース2(引出・引込ユニット本体1や可動体9と同じ)に不図示のスライダー30を拘束するときの動きを示している。図9(a)はケース2が図8(c)の状態から左側へ移動された直前の状態である。図9(b)はケース2(可動体9)が前記したばね部材5の付勢力を蓄積しながら更に左側へ移動されることで、その移動力がロック部材30を押し下げる力に変換、つまりロック部材30がカム面13aから受ける応力により押し下げられようとしている状態である。図8(c)はケース2(可動体9)が更に左側へ移動されることで、ロック部材30が押し下げられて係合部24に係止され(不図示のスライダー3がケース拘束位置となる)、それまでに蓄積されたばね部材5の付勢力を保持している状態である。なお、以上の例はロック部材30側であるが、ロック部材40も同様な動きで図1と図2(a)とに切り換えられる。
【0024】
(作動3)図10と図11は摺動補助装置の用途例として可動体9を機器類側の本体8の空間部8aから引き出したり、引き込むときの作動を示している。なお、図10と図11は符号を主部材だけに付したが、細部は対応する図1〜図7を参照されたい。
・図10(a)は、可動体9が図11(d)や図2(a)のごとく本体側空間部8aに収まっている引込位置から手動で引き出している引出途中の状態である。この過程では、引出・引込ユニット本体1のスライダー3,4のうち、一方スライダー3のロック部材30が係止状態、スライダー4のロック部材40が図2(a)の係止解除状態から先端爪40aを作動部18のカム面18aに当接しながら係合部25に係止される。つまり、可動体9は、ダンパー6を空転しながら引き出されると共に、スライダー3がケース拘束位置にあるため、ばね部材5が可動体9の摺動に伴って付勢力を次第に増大し蓄積する。そして、蓄積した付勢力は、ロック部材40が係止状態に切り換えられたときに図1と同様に保持される。
・図10(b)は、そのようにして蓄積した付勢力を保持した(つまりばね部材5の中立)状態で、可動体9が更に引き出されている状態を示している。
【0025】
・図10(c)は、可動体9が更に引き出されて、スライダー3のロック部材30がストライカー10により係止解除に切り換えられた直後の状態を示している。この過程は、図8と同様であり、ロック部材30が先端爪30aをストライカー10の第1作動部13のカム面13bに当接し、該カム面13bから受ける反力ないしはカム作用により先端爪30aを介し押し上げられ、その結果、係合部24から係止解除される。
・図10(d)は、そのようにしてロック部材30が係止解除、つまりスライダー3がケース拘束解除位置に切り換えられることにより、図2(b)と同様に可動体9がばね部材5の付勢力により自動的に最終の引出位置まで摺動された状態である。この構造では、(c)〜(d)に至る間、ダンパー6がスライダー4のラック48とギア6bとの噛み合いを介して可動体9の摺動速度を制動する。この結果、可動体9は、途中位置から最終の引出位置まだ緩やかな速度で摺動されることになる。
【0026】
・図11(a)は、可動体9を図10(d)の引出位置から途中位置まで引き込め操作したときの状態を示している。この引き込め過程では、ロック部材40が係止位置(スライダー4がケース拘束位置)であり、ロック部材30が係止解除位置(スライダー3がケース拘束解除位置)となっているため、ばね部材5が可動体9の摺動に伴って付勢力を次第に増大するよう蓄積する。そして、ロック部材30が図9(b),(c)と同様に係合部24と対向したときに、第1作動部13のカム面13aから受ける先端爪30aの応力により押し下げられて係合部24に係止され(スライダー3がケース拘束位置となる)、蓄積されたばね部材5の付勢力を保持する。
・図11(b)は、そのようにして蓄積した付勢力を保持した(つまりばね部材5の中立)状態で、可動体9が更に引き込められている状態を示している。
【0027】
・図11(c)は、可動体9が途中位置まで引き込め操作されて、スライダー4のロック部材40がストライカー15の作動部18により係止解除に切り換えられた直前の状態を示している。すなわち、この引き込め過程において、ロック部材40は、図1の左側に示されるごとく先端爪40aが作動部18のカム面18bに当接し、該カム面18bから受ける応力ないしはカム作用によりロック部材40を同図の上側へ押し上げ、それにより係合部25から係止解除される。
・図11(d)は、そのようにして、ロック部材40が係止解除(スライダー4がケース拘束解除位置)に切り換えられることにより、可動体9がばね部材5の付勢力により自動的に最終の引込位置まで摺動された状態を示している。なお、この構造では、(c)〜(d)に至る間、ダンパー6がラック48とギア6bとの噛み合いを介して可動体9の摺動速度を制動する。この結果、可動体9は、途中位置から最終の引込位置まで緩やかな速度で摺動されることになる。
【0028】
(作動4)以上の摺動補助装置は、可動体9が清掃やメンテナンス等を行うため機器類側本体8の空間部8aから外されることもあり、そのように外されて再び本体空間部8aにセットする場合、ロック部材が何かに当たって動いても確実に正常駆動に復帰されるよう工夫されている。なお、可動体9は、通常、引出位置である図2(b)や図10(d)の状態(スライダー3がケース拘束解除位置、スライダー4がケース拘束位置)から、例えば、可動体9を上方へ持ち上げたり傾けると、ロック部材30の先端爪30aがストライカー10の第1作動部13内から外れて空間部8aより取り外すことが可能となる。そして、可動体9は、本体8から取り外したときと同じ状態であれば、取り外したときと逆の操作を行うことにより空間部8aにセットされる。ところが、以上の引出・引込ユニット本体1は、可動体9が本体8から取り外された状態で、ロック部材40に接触したときの負荷などにより、ロック部材40が係合部25から係止解除され、あるいはロック部材30が係合部24から係止解除されることも起きる。図12はそのような事態(不図示のスライダー4がケース拘束解除位置になったとき)を想定し、不図示の可動体9が本体8にセットされると共に正常な駆動に復帰される点を図解したものである。
【0029】
図12(a)は可動体9を本体側空間部8aに挿入するときの状態を模式的に示している。ここで、引出・引込ユニット本体1は、ロック部材40が係止解除されているためスライダー4と共に前側に摺動自在であり、ロック部材30がその摺動により同方向へ自在に摺動される。このため、この構造では、まず、可動体9が本体側空間部8aに挿入される初期過程で、ロック部材40の先端爪40aが高さ違いによってストライカー10のガイド部12の上面に沿って摺動されると共に、ロック部材30の先端爪30aが舌片部13cに当たって押下される。この結果、ロック部材30は同図のごとく係合部24に係止(スライダー3がケース拘束位置)され、かつ、先端爪30aが舌片部13cを倒す方向へ弾性変位しながら乗り越える。そして、この構造では、可動体9が更に引き込められると、図12(b)のごとくロック部材40(の先端爪40a)が第2作動部14を薄肉部14aを介し下向きに撓ませながら乗り越える。すると、ロック部材40は、図12(c)のごとく先端爪40aの上角部に第2作動部14の先端傾斜面14bをクリック音を伴って当接する。引出・引込ユニット本体1(可動体9)は、その状態から図12(c)のごとく前方へ引き出されることで、ロック部材40が相対的に後方へ摺動された状態となり(このときは不図示のばね部材5が付勢力を蓄積する)、最終的に図12(d)のごとく係合部25と係止される。この結果、図1と図10(b)並びに図11(b)と同じくし正常駆動に復帰される。以上のようにして、この構造では、可動体9を機器類側の本体8から取り外し、しかもロック部材が外部から負荷を受けて外したときの態様と異なっても、常に正常駆動に復帰できるため信頼性を向上できる。
【0030】
なお、本発明は、上記形態に何ら制約されるものではなく、請求項1で特定された要件以外はこれを参照して適宜に変更可能である。また、本発明装置は、用途的な制約は特になく、例えば、可動体が蓋体であれば、引込位置が本体の所定箇所に配置される閉位置と同じ意味となり、引出位置が本体の所定箇所から離れる開位置と同じ意味となる。また、ダンパー6は、一方向の回転時だけ制動する構成として、本体6aがダンパー収容用窪み部27に対し形状設定により回転方向を規制するようにして簡略化を図ったが、このタイプ以外であっても差し支えない。また、ばね部材5は、定圧ばね等の他の付勢構造でもよい。勿論、「一対のストライカー」は、作動部材などと表現しても差し支えなく、また、構造としては例えば単一の細長い部材に対しストライカー10の第1作動部13(と必要に応じて第2作動部14)及びストライカー15の作動部18をそれぞれ形成した態様も含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明形態の作動特徴(付勢力蓄積状態)を模式的に示す図である。
【図2】本発明形態の作動特徴(付勢力解放状態)を模式的に示す図である。
【図3】図1の摺動補助装置の主部材同士の関係を示す構成図である。
【図4】上記摺動補助装置を構成しているケースの本体を示す図である。
【図5】上記ケースのカバーを示す図である。
【図6】上記摺動補助装置を構成している一方のスライダーを示す図である。
【図7】上記摺動補助装置を構成している他方のスライダーを示す図である。
【図8】上記ケースからスライダーの拘束を解放する際の原理を示す模式図である。
【図9】上記スライダーをケースに拘束するときの原理を示す模式図である。
【図10】上記摺動補助装置の作動(引出操作)を示す模式図である。
【図11】図10と同様に摺動補助装置の作動(引き込み操作)を示す図である。
【図12】可動体を本体に組み付ける際の正常駆動への復帰を示す模式図である。
【図13】本発明形態の可動体と機器類側本体の関係を示す参考図である。
【図14】従来の問題を説明するための参考図である。
【符号の説明】
【0032】
1…引出・引込ユニット本体
2…ケース(20は本体、23は案内リブ、24,25は係合部、27は窪み部)
3…スライダー(31は長片部、32は保持部、37は迂回部としての滑車)
4…スライダー(41は長片部、43は保持部)
5…ばね部材(付勢手段)
6…ダンパー(6aは本体、6bはギア)
8…機器類側の本体(8aは空間部、8bは案内レール)
9…可動体
10…ストライカー(12はガイド部、13は第1作動部、14は第2作動部)
15…ストライカー(17はガイド部、18は作動部)
22…段差(開口又は長溝)
30…ロック部材(30aは先端爪、30bは本体、30cはスリット)
40…ロック部材(40aは先端爪、40bは本体、40cはスリット)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対し可動体を引出位置から引込位置へ引き込む操作及び引込位置から引出位置へ引き出す操作を助ける摺動補助装置において、
前記本体及び前記可動体の一方に設けられて、ケース内に配置されて前記可動体と同方向へ摺動可能な一対のスライダーと、前記各スライダーにそれぞれ移動変位可能に保持されて先端をケース外に突出しているロック部材と、前記ケースに設けられて前記各スライダーのロック部材と係脱する係合部と、前記両スライダーの間に設けられてスライダーの一方が他方から離間する方向へ摺動されると付勢力を蓄積可能となる付勢手段とを有した引出・引込ユニット本体と、
前記本体及び前記可動体の他方に設けられて、前記スライダーのロック部材を前記係合部に係止することで当該スライダーを前記ケースに拘束するケース拘束位置と、前記係止を解除して当該スライダーを前記ケースに対し摺動可能にするケース拘束解除位置とに切り換える一対のストライカーと
からなることを特徴とする摺動補助装置。
【請求項2】
前記各スライダーは一端側に設けられた保持部に前記ロック部材をスライダーの摺動方向と略直交する向きに保持していると共に、前記ケースは前記各ロック部材の先端側をケース側面に設けた長溝からケース外へそれぞれ突出していることを特徴とする請求項1に記載の摺動補助装置。
【請求項3】
前記ストライカーは、前記ロック部材の先端側と当接して該ロック部材を前記対応する係合部に係脱可能にする第1作動部と、前記ロック部材と異なるロック部材が前記係合部に係止されていない係止解除状態で前記引込方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を許容し、該ロック部材が一旦通過した後に前記引出方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を規制する第2作動部とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動補助装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、一端が前記一方のスライダーに係止され、途中の部分が前記一方のスライダーに設けられた迂回部を介して折り返され、他端が前記他方のスライダーに係止されているコイル形のばね部材であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の摺動補助装置。
【請求項5】
前記各スライダーは、摺動方向に沿って延びかつ互いに対向可能な位置にラックを形成していると共に、前記スライダーのラックに噛み合うギアを有したダンパー手段により制動可能となっていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の摺動補助装置。
【請求項1】
本体に対し可動体を引出位置から引込位置へ引き込む操作及び引込位置から引出位置へ引き出す操作を助ける摺動補助装置において、
前記本体及び前記可動体の一方に設けられて、ケース内に配置されて前記可動体と同方向へ摺動可能な一対のスライダーと、前記各スライダーにそれぞれ移動変位可能に保持されて先端をケース外に突出しているロック部材と、前記ケースに設けられて前記各スライダーのロック部材と係脱する係合部と、前記両スライダーの間に設けられてスライダーの一方が他方から離間する方向へ摺動されると付勢力を蓄積可能となる付勢手段とを有した引出・引込ユニット本体と、
前記本体及び前記可動体の他方に設けられて、前記スライダーのロック部材を前記係合部に係止することで当該スライダーを前記ケースに拘束するケース拘束位置と、前記係止を解除して当該スライダーを前記ケースに対し摺動可能にするケース拘束解除位置とに切り換える一対のストライカーと
からなることを特徴とする摺動補助装置。
【請求項2】
前記各スライダーは一端側に設けられた保持部に前記ロック部材をスライダーの摺動方向と略直交する向きに保持していると共に、前記ケースは前記各ロック部材の先端側をケース側面に設けた長溝からケース外へそれぞれ突出していることを特徴とする請求項1に記載の摺動補助装置。
【請求項3】
前記ストライカーは、前記ロック部材の先端側と当接して該ロック部材を前記対応する係合部に係脱可能にする第1作動部と、前記ロック部材と異なるロック部材が前記係合部に係止されていない係止解除状態で前記引込方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を許容し、該ロック部材が一旦通過した後に前記引出方向へ移動されるときは該ロック部材の通過を規制する第2作動部とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動補助装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、一端が前記一方のスライダーに係止され、途中の部分が前記一方のスライダーに設けられた迂回部を介して折り返され、他端が前記他方のスライダーに係止されているコイル形のばね部材であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の摺動補助装置。
【請求項5】
前記各スライダーは、摺動方向に沿って延びかつ互いに対向可能な位置にラックを形成していると共に、前記スライダーのラックに噛み合うギアを有したダンパー手段により制動可能となっていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の摺動補助装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−26330(P2006−26330A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213626(P2004−213626)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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