説明

播種性カンジダ症および他の感染性因子に対してワクチン接種するための薬学的組成物および方法

本発明は、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリー、またはその免疫原性断片を、製薬的に許容される媒体中のアジュバントと共に含むワクチンを提供する。本発明は、血行性播種または粘膜皮膚カンジダ症を処置または予防する方法も提供する。方法は、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリー、またはその免疫原性断片を、製薬的に許容される媒体中のアジュバントと共に含むワクチンの免疫原性量を投与するステップを含む。カンジダの宿主細胞または組織への結合または侵入を抑制するために、単離Alsタンパク質ファミリー、またはその免疫原性断片の有効量を投与するステップを含む、播種性カンジダ症を処置または予防する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本方法は、カンジダ・アルビカンス表面アドヘシンタンパク質に、C.アルビカンス表面アドヘシンタンパク質によるワクチン接種への免疫応答から生じる抗体に、そしてカンジダ症およびC.アルビカンス表面接着タンパク質による他の細菌感染の予防および/または処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、カンジダ種によって引き起こされた院内感染の発生率に劇的な上昇がある。血行性播種性カンジダ感染の発生率は、1980年から1989年までに11倍に上昇した。この増加しつつある発生率は1990年代まで続いた。カンジダ種による感染は今や、院内敗血症の4番目に多い原因であり、大腸菌のそれと等しく、クレブシエラ種によって引き起こされた発生率を超えている。さらにカンジダ種は、広範囲の火傷を有する患者での深在性真菌感染の最も多い原因である。骨髄移植を受けた個体の最大11%および同所性肝移植を受けた個体の13%が侵襲性カンジダ感染症を発症するであろう。
【0003】
この属の主な病原菌であるカンジダ・アルビカンスは、2つの形態:分芽胞子期(出芽酵母)および糸状期(菌糸および仮性菌糸)の間で切り換えが可能である。線維化を制御する遺伝子が欠損しているカンジダミュータントは、動物モデルで低下した毒性を有することが報告されている。この低下した毒性は、分芽胞子から微細線維へ変化する能力がC.アルビカンスの主な毒性因子であることを示唆している。現在までに、C.アルビカンスにおいてこれらの線維化経路の不可欠なエフェクタは同定されていない。非特許文献1を参照。
【0004】
スタフィロコッカス・アウレウス感染も一般的であり、抗体に対する薬物耐性をますます引き起こす。たとえばS.アウレウスは、米国および世界中で皮膚および皮膚構造感染、心内膜炎および菌血症の一般的な原因である。以前は、市中感染(community acquired)S.アウレウス(CA−S.アウレウス)感染は、ペニシリナーゼ耐性ベータラクタム、たとえばセファゾリン、オキサシリン、メチシリン、ペニシリンおよびアモキシリンに対してほぼ一律に感受性であった。しかしながら過去10年間以上、ベータラクタム耐性S.アウレウス(MRSA)感染、特に市中感染MRSA(CA−MRSA)の流行が、世界中の多くの場所で見られている。多くの場所で、MRSAはCA感染を引き起こす有力なS.アウレウスとなっている。米国の3つの州における最新の予想される人口に基づく調査は、CA−MRSA感染の発生率が人口100,000人当たり500症例であることを推定し、これは米国のみで毎年約150万症例に換算される。薬物耐性S.アウレウス感染の増加する頻度は、これらの感染を防止および処置する新たな方法への要求を強調している。
【0005】
毒性に寄与する生物の制御経路におけるエフェクタの同定は、既存の抗真菌剤より優れている方法およびまたは組成物を用いた治療的介入の機会を提供する。毒性に関与する制御経路に影響する細胞表面タンパク質の同定は、タンパク質のキャラクタリゼーションがカンジダ感染と戦うときに既存の抗菌剤よりも優れた免疫治療技法を可能にするため、特に有望である。
【0006】
カンジダ・アルビカンスの毒性は、複数の推定上の毒性因子によって制御され、そのうち宿主構成要素への付着および酵母から菌糸へ変換する能力が病原性を判定するのに特に重要である。カンジダにとって殺菌性である強力な抗菌剤があるが、アンホテリシンBなどの強力な抗真菌剤による処置を用いても、カンジダ血症に起因する死亡率は約38%である。またアンホテリシンBなどの既存の薬剤は、望ましくない毒性を示しがちである。アンホテリシンBより毒性が低い追加の抗菌剤が開発されうるが、より強力である薬剤は開発されそうにない。したがって播種性カンジダ症を処置または予防する受動または能動免疫療法のどちらかが、標準抗真菌治療の有望な代替策である。
【非特許文献1】Caesar−TonThat, T.C.and J.E.Cutler,“A monoclonal antibody to Candida albicans enhances mouse neutrophil candidacidal activity,”Infect.Immun.65:5354−5357,1997
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
それゆえカンジダ、S.アウレウスおよび他の免疫原性関連病原体に対する宿主免疫防御および受動免疫防御を提供する有効な免疫原への要求が存在する。本発明はこの要求を満足して、関連する利点も提供する。
【0008】
本発明は、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリー、またはその免疫原性断片を、製薬的に許容される媒体中にアジュバントと共に含むワクチンを提供する。本発明は、播種性カンジダ症を処置または予防する方法も提供する。方法は、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリー、またはその免疫原性断片を、製薬的に許容される媒体中にアジュバントと共に含むワクチンの免疫原性量を投与するステップを含む。カンジダの宿主細胞または組織への結合または侵入を抑制するために、単離Alsタンパク質ファミリー、またはその免疫原性断片の有効量を投与するステップを含む、播種性カンジダ症を処置または予防する方法も提供される。Alsタンパク質ファミリーメンバーは、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・グラブラータおよびカンジダ・パラプシローシスから成る群より選択されるカンジダ菌株に由来することが可能であり、Alsタンパク質ファミリーメンバーはAls1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pまたはAls9pを含む。スタフィロコッカス・アウレウスを処置または予防する方法も提供される。方法は、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリー、またはその免疫原性断片を、製薬的に許容される媒体中に含むワクチンの免疫原性量を投与するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
カンジダ・アルビカンスおよびスタフィロコッカス・アウレウスはヒトにおける一般的な病原体である。たとえばC.アルビカンスは、通常は無害な共生動物であるが、この生物は膣および/または口腔咽頭カンジダ症などの表層粘膜皮膚感染から播種性カンジダ症への深部器官関与までの範囲にわたる各種の状態を引き起こしうる。疾患を引き起こす前に、該真菌は胃腸管、そしてある場合には皮膚および粘膜にコロニー形成する。宿主粘膜表面への付着は、この初期ステップの主要な前提条件である。コロニー形成の後、C.アルビカンスは感染した血管内手段を介して、あるいはは化学療法またはストレス潰瘍形成により損なわれた胃腸粘膜を通じた遊出によって血流に入る。生物は次に血流を介して播種して、血管内皮に結合および浸透して血管樹から放出されて、肝臓、脾臓、および腎臓などの深部器官に侵入する。
【0010】
本明細書に記載された各種の例示的なAlsタンパク質ファミリーメンバーの同定および機能的特徴は、タンパク質のこのファミリーがカンジダ症の処置で効果的に利用されることを可能にする。多様な基質への特異的結合活性および他の選択的細胞接着機能は、宿主細胞の結合、接着または侵入を抑制することによって初期感染を低減または予防するために、能動または受動免疫のためのワクチンの産生において、ペプチド、細胞接着の模倣インヒビタの類似物質の産生において活用されうる。その上、差次的結合および侵入プロフィールは、Alsタンパク質ファミリーメンバー活性の広範囲または標的化抑制の設計および使用を可能にする。加えて結合および/または侵入活性を与える機能性断片は、望ましくない外来タンパク質配列の排除を可能にし、それゆえAlsファミリータンパク質メンバーワクチンまたは治療用インヒビタの有効性を向上させる。
【0011】
内皮細胞への付着によるC.アルビカンスの病原体の性質は、参照によりその全体が本明細書に特に組み入れられているUSP 5,578,309で議論される。アドヘシンなどの遺伝子産物のキャラクタリゼーションを含む、ALS1遺伝子およびその特徴の記述については、Fu,Y.,G.Rieg,W.A.Forizi,P.H.Belanger,J.E.J.Edwards,and S.G.Filler.1998を参照。
サッカロミセス・セレビシエにおけるカンジダ・アルビカンス遺伝子ALS1の発現は、内皮および上皮細胞への付着を誘起する。Infect.Immun.66:1783−1786;Hoyer,L.L.1997.Fu Y,Ibrahim AS,Sheppard DC,Chen Y−C,French SW,Cutler JE,Filler SG,Edwards,JE,Jr.2002.Candida albicans Als Ip:an adhesin that is a downstream effector of the EFGl filamentation pathway.Molecular Microbiology 44:61−72.Sheppard DC,Yeaman MR,Welch WH,Phan QT,Fu Y,Ibrahim AS,Filler SG,Zhang M,Waring AJ,Edwards,Jr.,JE 2004.Functional and Structural Diversity in the Als Protein Family of Candida albicans.Journal Biological Chemistry.279:30480−30489.The ALS gene family of Candida albicans.International Society for Human and Animal Mycology Salsimorge,Italy:(Abstract);Hoyer,L.L.,S.Scherer,A.R.Shatzman,and G.P.Livi.1995.Candida albicans ALSI domains related to a Saccharonzyces cerevisiae sexual agglutinin separated by a repeating motif.Mol.Microbiol.15:39−54。
【0012】
この点で、ヒト真菌病原体カンジダ・アルビカンスはコロニー形成して、広範囲の宿主組織に侵入する。宿主構成要素への付着は、このプロセスにおいて重要な役割を果たす。C.アルビカンスAlsタンパク質ファミリーの2つのメンバー(Als1pおよびAls5p)は、付着を媒介して、Alsタンパク質ファミリーメンバーの結合、接着および細胞侵入活性を例示することが見出されている。本明細書に記載するように、ALS遺伝子ファミリーのメンバーはその個々の特徴をキャラクタリゼーションするために、クローニングされて、S.セレビシエ内で発現された。別個のAlsタンパク質は、多様な宿主基質に対して別個の付着プロフィールを与えた。キメラAls5p−Als6p構築物を使用すると、基質特異性付着を媒介する領域は、Alsタンパク質内のN末端ドメインに局在化された。特にAlsタンパク質のサブセットも、このファミリーの以前には未知の機能であった内皮細胞侵入を媒介した。これらの結果と一致して、相同性モデリングは、Alsメンバーが、免疫グロブリンスーパーファミリーの接着およびインベイシンに相同性である、拡張領域によって挿入された逆平行βシートモチーフを含有することを明らかにした。この発見は、Als1pのN末端ドメインの円偏光二色性およびフーリエ変換赤外分光分析を使用して確認された。アミノ酸超可変の特異性領域は、Alsタンパク質のN末端ドメイン間に見出され、エネルギーベースモデルは、Alsファミリーメンバーの多様な機能をおそらく支配するN末端ドメインの類似性および相違を予測した。ひとまとめにして、これらの結果は、Alsファミリー内の構造的および機能的多様性がC.アルビカンスに、感染中に広範囲の宿主構成要素を認識して、それと相互作用できる数々の細胞壁タンパク質を供給することを示している。
【0013】
本発明は、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリーメンバー、またはその免疫原性断片、およびアジュバントを製薬的に許容される媒体中に有するワクチンを提供する。ワクチンは、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・パラプシローシスなどのカンジダ種に由来するAlsタンパク質ファミリーメンバーでありうる。Alsタンパク質ファミリーメンバーはたとえば、Als1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9p、またはその免疫原性断片でありうる。カンジダ種内の他の全てのAlsタンパク質ファミリーメンバーは同様に、本発明のワクチンとして利用されうる。
【0014】
本発明は、C.アルビカンス凝集素様配列タンパク質ファミリーメンバーの遺伝子産物を、播種性カンジダ症を処置、予防、または軽減するためのワクチンとして利用する。ワクチンは、C.アルビカンスの各種の菌株に対してはもちろんのこと、各種のカンジダ種に対しても有効である。Alsタンパク質ファミリーメンバーはたとえば、Als1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9pでありうる。本発明は、生物の発病を遅延させるためのワクチンとして使用するために、C.アルビカンスの内皮および/または上皮細胞への付着および侵入 Alsタンパク質ファミリーメンバー発現表面タンパク質の感受性におけるALS遺伝子産物の役割を利用する。
【0015】
本発明に従って、ALSファミリーメンバー遺伝子は、C.アルビカンスに対する免疫療法方法の標的として選択される表面アドヘシンをコードする。ALS1遺伝子の発現産物Als1pタンパク質が表面タンパク質に特有である構造的特徴を有し、実際にC.アルビカンスの細胞表面で発現されることの証明は、宿主組織へのアドヘシンとして作用するタンパク質にとっての1つの基準である。Alsタンパク質ファミリーメンバーは、N末端におけるシグナルペプチド、C末端におけるグリコシルホスファチジルイノシン(GPI)アンカー配列、およびトレオニンおよびセリンが豊富な反復を含む中央領域を有するとして構造的に特徴付けられうる。またAlsタンパク質ファミリーメンバーは、細胞表面で発現されるタンパク質に特有のN−、およびO−グリコシル化部位を有する。たとえばALs1pのN末端に向けられたモノクローナル抗体を使用する間接免疫蛍光法は、ALs1pが分芽胞子の対数期の間に発現されることを明らかにした。ALs1pのこの発現は菌糸形成中に上昇され、拡散した表面染色によって示されるように、菌糸要素が分芽胞子から拡張する接合部に局在化される。さらにこのモノクローナル抗体は、内皮細胞に対するC.アルビカンス過剰発現ミュータントの付着向上を遮断し、それによってALs1pを使用する免疫療法利用の原理を確立する。他のAlsファミリーメンバーの細胞接着および侵入に関連するような機能的特徴は、実施例VIでさらに後述する。
【0016】
それゆえ一態様により、本発明は、製薬組成物中に調合されてアジュバントと共に、またはアジュバントなしでワクチンとして投与されるときに有用な特性を有する、たとえばAls1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9pと呼ばれるAlsファミリーメンバー表面接着タンパク質、あるいはその機能性断片、コンジュゲートまたは類似物質を提供する。Alsタンパク質ファミリーメンバー、Alsタンパク質ファミリーメンバーの2つ以上あるいはその機能性断片、類似体、コンジュゲートまたは誘導体の組合せは、たとえばカンジダ・アルビカンスから入手されうる。同様のアドヘシンまたはインベイシン分子あるいはその類似物質または誘導体はカンジダ起源でありえて、たとえばカンジダ属に属する種、たとえばカンジダ・パラプシローシス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・グラブラータおよびカンジダ・トロピカリスから入手されうる。本発明による表面アドヘシンまたはインベイシンは単離または精製形で得られ、それゆえ本発明の一実施形態により、実質的に純粋なAlsタンパク質ファミリーメンバーカンジダ表面アドヘシンタンパク質、あるいはその機能性断片、免疫原性断片、類似物質、コンジュゲートまたは誘導体は、患者にて免疫応答を引き起こしてカンジダに対する免疫応答を誘発するために、および/または内皮細胞に対する生物の接着を遮断するためにワクチンとして調合される。無傷のAlsタンパク質ファミリーメンバーと同様の結合、接着または侵入活性を示すAlsタンパク質ファミリーメンバーの断片は、本明細書では機能性断片と呼ばれる。カンジダ種に対する抗体または細胞免疫応答を誘発できるAlsタンパク質ファミリーメンバーの断片は、本明細書では免疫原性断片と呼ばれる。例示的な機能性断片としては、実施例VIでさらに後述するAlsタンパク質ファミリーメンバーのN末端ポリペプチド領域が挙げられる。例示的な免疫原性断片としては、N末端Alsポリペプチド断片、C末端Alsポリペプチド領域はもちろんのこと、抗体免疫応答、細胞免疫応答、抗体および細胞免疫応答の両方を産生するのに十分である他のいずれかのAls断片も挙げられる。そのような免疫原性断片は、約4アミノ酸ほどの小ささで、無傷のポリペプチドほどの大きさであるのはもちろんのこと、その間のすべてのポリペプチド長を含みうる。
【0017】
本発明による表面接着タンパク質の類似物質または誘導体は同定でき、ALSファミリーメンバー遺伝子および/または遺伝子産物について本明細書に記載した基準によってさらに特徴付けられうる。たとえば類似物質または誘導体のヌルミュータントは、対照と比較して内皮細胞への顕著に低下した接着を共有する。同様に適切なモデルでの類似物質または誘導体の過剰発現は、対照と比較して内皮細胞への付着上昇を示し、上述した基準に従って細胞表面アドヘシンとして確認される。また類似物質または誘導体への抗血清は、抗Alsタンパク質ファミリーメンバーと交差反応でき、本明細書で開示するような播種性カンジダ症のマウスモデルで投与したときに生存時間の延長を示しうる。
【0018】
本発明は、播種性カンジダ症を処置または予防する方法も提供する。本発明は、製薬的に許容される媒体中の、細胞接着または侵入活性を有する単離Alsタンパク質ファミリーメンバー、あるいはその免疫原性断片の有効量を投与するステップを含む。ワクチンはアジュバントと共に、またはアジュバントなしで投与されうる。Alsタンパク質ファミリーメンバーは、異なるカンジダ菌株からはもちろんのこと、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・グラブラータおよびカンジダ・パラプシローシスなどの異なるカンジダ種からも由来しうる。播種性カンジダ症を処置または予防する方法で使用されるAlsタンパク質ファミリーメンバーとしては、Als1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9pが挙げられる。
【0019】
異なるカンジダ菌株、異なるカンジダ種、他の細菌および感染性因子に対する本発明のワクチンの有効性ならびにその広範囲の免疫活性は、さらに後述され、実施例で例示される。たとえば実施例Vは、抗ALS抗体が粘膜および血行性播種性カンジダ感染に対して有効であることを示す。実施例VIIは、rAls1p−Nを用いたワクチン接種が細胞媒介免疫を強化することによってマウス播種性カンジダ症の間の生存を改善することを示す。実施例VIIIは、本発明のワクチンが真菌負荷を低下させ、免疫適格および免疫不全マウスの両方で生存を改善することを示す。実施例IXは、S.アウレウス感染に対する本発明のALSワクチンの有効性を示す。実施例Xは、本発明のワクチンが、異なる動物モデルにおける有効性と同様に、C.アルビカンスの異なる菌株に対して、そしてC.グラブラータ、C.クルセイ、C.パラプシローシスおよびC.トロピカリスなどの異なる種に対して有効であることを示す。実施例XIは、異なる動物モデルにおける本発明の異なるワクチンの有効性を例示するのはもちろんのこと、2つの代表的なALSワクチンの誘発された、異なる応答および効力の比較も提供する。
【0020】
さらに供給された本発明は、宿主細胞または組織へのカンジダの結合または侵入を抑制するために、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリーメンバー、またはその機能性断片の有効量を投与するステップを含む、播種性カンジダ症を処置または予防する方法である。Alsタンパク質ファミリーメンバーは、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・パラプシローシスに由来しうる。播種性カンジダ症を処置または予防する方法で使用されるAlsタンパク質ファミリーメンバーとしては、Als1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9pが挙げられる。細胞接着活性としては、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、上皮細胞または内皮細胞への結合および/または細胞侵入の促進を含む。
【0021】
加えて本発明は、本明細書に記載するAlsタンパク質ファミリーメンバーを使用してスタフィロコッカス・アウレウス感染を処置または予防する方法も提供する。特に、スタフィロコッカス・アウレウス感染を処置または予防する方法は、製薬的に許容される媒体中の、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリーメンバー、またはその免疫原性断片を含むワクチンの免疫原性量を投与するステップを含む。
【0022】
Als1pおよびAls3pは、S.アウレウス細胞表面タンパク質への著しい相同性のために特に有効である。たとえばAls1pおよびAls3pの配列および構造相同性は実施例IXでさらに後述される。本明細書で提供される教示および指針から、当業者は本発明のワクチンおよび方法が、カンジダおよびスタフィロコッカス感染の処置に等しく利用されうることを理解するであろう。同様に本明細書に記載される教示および指針から、当業者は、本発明のワクチンおよび方法が、真菌、細菌などを含む、本明細書に記載されるAlsタンパク質ファミリーメンバーと同様の免疫原性、配列および/または構造相同性を備えた細胞表面ポリペプチドを有する他の病原体にも利用されうることも理解するであろう。
【0023】
カンジダまたはスタフィロコッカス感染に対する細胞接着または侵入方法の免疫療法的および/またはAlsポリペプチド抑制は、血管内皮細胞への結合のレベルにおいてはもちろんのこと、線維化制御経路の下流エフェクタを通じて作用しうる。溶解性Alsタンパク質ファミリーメンバーまたは機能性断片を使用する結合の免疫療法的方法または抑制は、この状況で有用である、なぜなら:(i)現在利用できる抗真菌治療を用いても、血行性播種性カンジダ症および他の感染性病原体に関連する罹患率および死亡率が許容されないほど高い;(ii)抗真菌および抗生物質耐性の上昇する発生率が、抗真菌剤および抗菌剤の使用増加に関連している;iii)深刻なカンジダおよびスタフィロコッカス感染の危機に瀕した患者の集合が十分に定義され、かなり大きく、術後患者、移植患者、癌患者および低出生体重児を含む;およびiv)深刻なカンジダ感染を発祥する患者の高いパーセンテージが好中球減少性でなく、それゆえワクチンまたは競合的ポリペプチドまたは化合物インヒビタに応答しうるからである。これらの理由でカンジダおよびスタフィロコッカスは、受動免疫療法、能動免疫療法、あるいは受動または能動免疫療法の組合せにとって魅力的な真菌および細菌標的である。加えてカンジダは、Alsタンパク質ファミリーメンバーポリペプチド、その機能性断片および/または1つ以上のAlsファミリーメンバーに結合して、カンジダの宿主細胞レセプタへの結合を予防する化合物またはその模倣剤を使用する、競合的抑制のためにも魅力的である。
【0024】
本明細書で提供される教示および指針から、当業者は、当分野で公知の免疫療法方法が本発明のAlsタンパク質ファミリーメンバー、その免疫原性断片、類似物質、コンジュゲート、および/または誘導体によって、アジュバントと共に、またはアジュバントなしでワクチンとして投与される製薬的に許容される組成物中で該分子の1つ以上を免疫原として使用するために、利用されうることを理解するであろう。本発明の目的では、「製薬的な」または「製薬的に許容される」という用語は、非毒性であることが既知の技法によって調合され、所望ならばヒトへ安全に投与されうる担体または添加剤と共に使用される組成物を指す。投与は、たとえば静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下注射を含む公知の経路を使用して実施されうる。本発明のそのようなワクチンは、溶液中でワクチンの活性を維持するために当業者に既知である緩衝液、塩または他の溶媒を含みうる。同様に当分野で公知の広範囲のアジュバントのいずれも、感受性の宿主細胞に対するカンジダまたはスタフィロコッカスの結合、侵入および/または感染を減少または遮断することができる治療的に有効な免疫応答を誘発、促進または強化するために本発明のワクチンと共に利用されうる。
【0025】
同様に本明細書で提供する教示および指針により、当業者は、細胞表面分子を投与して、細胞表面分子のその同源レセプタへの結合を遮断するための治療方法が、製薬的に許容される組成物中でAlsタンパク質ファミリーメンバーの1つ以上をインヒビタとして使用するために、本発明のAlsタンパク質ファミリーメンバー、その機能性断片、類似物質、コンジュゲートおよび/または誘導体によって利用されうることを理解するであろう。ワクチン調合物と同様に、抑制調合物も、たとえば静脈内、筋肉内、血管内または皮下注射を含む当分野で公知の方法を使用して同じく投与されうる。Alsファミリーメンバーレセプタを結合して、Alsタンパク質ファミリーメンバー結合も遮断するそのような抑制組成物は、緩衝液、塩または溶液中でワクチンの活性を維持するために当業者に既知である他の溶媒を含みうる。さらに当分野で公知の広範囲の調合物のいずれも、送達または摂取を標的化および/または強化して感受性宿主細胞に対するカンジダまたはスタフィロコッカスの結合、侵入および/または感染を低減または抑制するために、本発明の抑制組成物によって利用されうる。
【0026】
本発明による治療用免疫原またはレセプタ結合インヒビタとして使用される分子に関して、当業者は、Alsタンパク質ファミリーメンバー分子が免疫原ワクチンあるいは細胞接着または侵入インヒビタとして本質的な品質を失うことなく切断または断片化されうることを認識するであろう。たとえばAlsタンパク質ファミリーメンバーは、上述され、実施例でさらに後述される機能的特性を維持しながら、C末端部からの切断によりN末端断片を産生するために切断されうる。同様にC末端断片は、その機能的特性を維持しながら、N末端部からの切断によって産生されうる。本明細書で提供される教示および指針による他の修飾は、他のAlsタンパク質ファミリーメンバー機能性断片、免疫原性断片、その類似物質および誘導体を作製して、未変性タンパク質を用いて本明細書に記載する治療的に有用な特性を達成するために本発明に従って実施できる。
【0027】
本発明のAlsタンパク質ファミリーメンバーおよび方法の治療的有効性の一態様は、生物の宿主構成要素への付着を遮断するために、そして免疫エフェクタ細胞および他の生理学的機構による生物のクリアランスを向上させるために、線維化の制御の妨害を達成する。内皮細胞が脈管構造の大半を被覆するため、抗体、Alsファミリーメンバータンパク質、ポリペプチドまたはペプチドあるいはそのいずれかの組合せを使用して生物の内皮細胞に対する付着、侵入および/または両方を遮断する方法は、本発明の有用な実施形態を含む。上述したように、そのような付着および/または侵入遮断療法としては、能動または受動免疫療法あるいは本明細書で開示するカンジダアドヘシン、インベイシン、または同源レセプタに向けられた抑制結合が挙げられる。それゆえたとえば、いずれの適切な宿主も、所望の抗アドヘシン抗体を産生するために収集されたタンパク質および血清を、適切な精製および/または濃縮の後に注射されうる。注射の前にアドヘシンまたはインベイシンタンパク質あるいはその組合せは、適切なビヒクル、好ましくはポリサッカライドなどの既知の免疫賦活剤あるいはリポソームまたは徐放性組成物などの送達調合物中に調合されうる。それゆえさらなる態様により、本発明は、ワクチンまたはAlsレセプタインヒビタとして使用するための調合物中にカンジダアドヘシンまたはインベイシンタンパク質を製薬的に許容される賦形剤と共に含む製薬組成物を提供する。
【0028】
本発明の方法は、C.アルビカンスの宿主構成要素の内皮または上皮細胞への付着を遮断することによって、あるいはたとえばスタフィロコッカスへの抗体結合によって免疫機構に病原体を除去させることによって、カンジダまたはスタフィロコッカス感染を改善および/または予防する。それゆえ本発明の一態様により、Alタンパク質ファミリーメンバーのアドヘシンまたはインベイシンタンパク質、その機能性または免疫原性断片、誘導体、類似物質、またはコンジュゲートを含む製薬組成物は、注射または輸液用生体適合性担体を含有する製薬組成物中でワクチンまたはAlsレセプタインヒビタとして調合され、患者に投与される。またAlsファミリーメンバータンパク質あるいは単離または組換えAlsファミリーメンバータンパク質に対して産生された抗血清の直接投与も、C.アルビカンスの哺乳類宿主構成要素への付着を遮断するために、またはスタフィロコッカス病原体の除去を実施するために使用されうる。アドヘシンタンパク質に対する抗血清は、既知の技法、Kohler and Milstein,Nature 256:495−499(1975)によって得られ、抗原性を低下させるためにヒト化されうるか、USP 5,693,762を参照、または未再配列のヒト免疫グロブリン遺伝子を残してトランスジェニックマウス内で産生されうる、USP 5,877,397を参照。同様に単離または組換えAlsタンパク質ファミリーメンバーは、たとえば下の実施例に記載する組換え産生を含む当業者に公知の方法を使用しても産生されうる。
【0029】
本発明のなおさらなる使用はたとえば、カンジダまたはスタフィロコッカス感染の予防および/または改善のためのワクチン方法を開発するためにAlsタンパク質ファミリーメンバーのアドヘシンまたはインベイシンタンパク質を使用することである。それゆえ本発明の一態様に従って、標準免疫技法を利用して、C.アルビカンスの付着を遮断するために、またはスタフィロコッカス病原体の除去を実施するために、宿主構成要素からの免疫応答を強化および/または誘発する多成分ワクチン方法が構築されうる。
【0030】
本発明のなおさらなる使用はたとえば、DNAワクチン方法を開発することである。それゆえ本発明の一態様に従って、たとえばAlsタンパク質ファミリーメンバーのアドヘシンまたはインベイシンあるいはその機能性断片をコードするALSファミリーメンバーポリヌクレオチドは、遺伝子産物に対する免疫応答を生じるように設計されたプロトコルに従って投与される。たとえばFeigner USP 5,703,055を参照。
【0031】
本発明のなおさらなる使用はたとえば、併用ワクチン方法を開発することである。それゆえ本発明の一態様に従って、たとえば抗ALSタンパク質ファミリーメンバー抗体は、カンジダまたはスタフィロコッカス感染を処置および/または治療する抗体と共に使用されうる。USP 5,578,309を参照。
【0032】
次の実施例は、播種性カンジダ症の予防措置または処置の基礎としてのALS1アドヘシンの免疫療法的利用を説明する。実施例1は、内皮細胞への付着の媒介を確認するために、ALS1ヌルミュータントおよびALS1の過剰発現を特徴とするC.アルビカンスの菌株の調製について記載する。実施例2は、Als1pの局在化およびefg線維化制御経路について記載する。実施例3は、ALS1アドヘシンタンパク質の精製について記載する。実施例4は、表面アドヘシンタンパク質の遮断を証明するために使用されるALS1表面アドヘシンに対して産生されたウサギポリクローナル抗体の調製について記載する。実施例5は、マウスモデルでの播種性カンジダ症を防御するために本発明による本明細書に記載されるようなALS1表面接着タンパク質に対して産生されたポリクローナル抗体を使用する、生体内での付着の遮断について記載する。実施例VIは、Alsタンパク質ファミリーメンバーの構造的および機能的特徴について記載する。
本発明の各種の実施形態の活性に実質的に影響しない修飾も本明細書で提供する本発明の定義内に含まれることが理解される。したがって次の実施例は、本発明を制限するのではなく、例示するためのものである。
【実施例】
【0033】
実施例I
Als1はC.アルビカンスの内皮細胞への付着を媒介する
URAブラスター技法を使用して、Als1pの発現を欠損するC.アルビカンスのヌルミュータントが構築された。als1/als1ミュータントはC.アルビカンス菌株CAI4にて、Uraブラスター方法(Fonzi and Irwin,Genetics 134,717(1993))の改良を使用して次のように構築された:2つの独立したalsl−hisG−IRA3−hisG−alsl構築物を利用して、遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を破壊した。ハイフィディリティPCR(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)により、プライマーを使用して、4.9kb AsLS1コード配列を産生させた。
【0034】
【数1】

次にPCR断片をpGEM−Tベクター(Promega,Madison,WI)内へクローニングして、それゆえpGEM−T−ALS1を得た。hisG−URA3−hisG構築物は、KpnlおよびHind3を用いた消化によってpMG−7から放出され、pGEM−T−ALS1のKpnlおよびHind3消化によって放出されたALS1の部分と交換するのに使用された。最終的なals1−hisG−URA3−hisG−als1構築物は、Xholを用いた消化によりプラスミドから放出され、菌株CAI−4の形質転換によるALS1の第1の対立遺伝子を破壊するために使用された。
【0035】
第2のals1−hisG−URA3−hisG−als1構築物は、2つのステップで産生された。第1に、pMB7のBg12−Hind3 hisG−URA3−hisG断片をpUC19のBamH1−Hind3部位内にクローニングして、それによりpYC2を産生させた。PYC2を次に、T4 DNAポリメラーゼを使用して部分的にdATPおよびdGTPによって充填されたHind3によって消化して、次にSma1によって消化して、新しいhisGURA3−hisG断片を産生した。第2に、ALS1相補性フランキング領域を産生するために、pGEM−T−ALS1をXbalによって消化して、次にdCTPおよびdTTPによって部分的に充填した。この断片をHpa1によって消化してALS1の中央部を除去し、次にpYC3を産生するhisG−URA3−hisG断片に結合させた。このプラスミドを次にXholによって消化して、ALS1の第2の対立遺伝子を破壊するために使用される構築物を放出させた。産生された変異が増殖速度に影響を持たないことを確認するために、実験の間に増殖曲線を作った。すべての組込みは、XbalおよびHindIIIによるpYF5の消化によって産生された0.9kb ALS1特異性プローブを使用してサザンブロット分析によって確認した。
【0036】
ヌルミュータントは、試験管内でのヒト臍帯静脈内皮細胞へのその付着能力について、C.アルビカンスCAI−12(URA+関連菌株)と比較した。付着調査のために、YPD(2%グルコース、2%ペプトン、および1%酵母抽出物)一晩培養物からの酵母細胞を、グルタミンを含むRPMI中で25℃にて1時間培養して、Als1p発現を誘発した。ハンクス液(Hanks balanced salt solution(HBSS)(Irvine Scientific,Irvine,CA))中の3x10個の生物を内皮細胞の各ウェルに添加して、その後プレートを37℃にて30分間インキュベートした。接種材料サイズは、YPD寒天での定量的培養によって確認した。インキュベーション期間の終わりに、非付着性生物を吸引して、内皮細胞単層を標準化された方式でHBSSによって2回すすいだ。ウェルをYPD寒天と重ねて、コロニーカウントによって付着生物の数を決定した。Wilcoxon rank sum検定によって統計的処理を得て、Bonferroni補正によって複数の比較について補正した。P<0.001。
【0037】
図1を参照すると、ALS1/ALS1およびals1/als1菌株の比較は、ALS1ヌルミュータントが内皮細胞に対してC.アルビカンスCAI−12よりも35%低い付着性であることを示した。バックグラウンド付着を低減するために、非ALS1発現条件下で培養した野生型菌株を、Als1pを自発的に発現するミュータントと比較した。このミュータントは、構成的ADH1プロモータの制御下で野生型C.アルビカンスへALS1の第3のコピーを組込むことによって構築された。C.アルビカンスにおけるALS1の構成的発現を実現するために、平滑末端PCR産生URA3遺伝子をpOCUS−2ベクター(Novagen,Madison,WI)の平滑エッジBg12部位内へ結合させて、pOU−2を得る。C.アルビカンスアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH1)プロモータおよびターミネータ(A.Brown,Aberdeen,UKより寄贈されたpLH−ADHptから単離)を含有する2.4kb Notl−Stul断片を、Not1およびStulによる消化の後にpOU−2内へクローニングした。pOAU−3という名称の新しいプラスミドは、ADH1プロモータとターミネータとの間にBg12部位を1個のみ有していた。BamH1制限酵素部位に隣接されたALS1コード配列は、テンプレートとしてのpYF−5および次のプライマーを使用して、ハイフィディリティPCRによって産生された:
【0038】
【数2】

このPCR断片はBamH1によって消化され、pAU−1を産生するために次にpOAU−3の適合性Bg12部位内へクローニングされた。最後に、C.アルビカンスCAI−4を形質転換する前に、pAU−1はXba1によって線形化された。部位特異的組込みは、サザンブロット分析によって確認された。図1Bを参照すると、このPADH1−ALS1菌株でのALS1の過剰発現は、野生型C.アルビカンスと比較して内皮細胞への付着の76%の上昇が生じた。野生型の内皮細胞付着を過剰発現ミュータントのそれと比較して、酵母細胞をYPD中で25℃(Als1pの非誘発条件)にて一晩培養した。野生型のバックグラウンド付着を低下させるためにAls1p発現は誘発されず、それゆえPADH1−ALS1ハイブリッド遺伝子を通じた付着におけるAls1pの役割を拡大させる。付着アッセイは上述のように実施された。Wilcoxon rank sum検定によって統計的処理を得て、Bonferroni補正によって複数の比較について補正した。P<0.001。
【0039】
モノクローナル抗Als1pマウスIgG抗体は、Clontech YEXpress(商標)Yeast Expression System(Palo Alto,CA)を使用して発現させたAls1p(アミノ酸17番〜432番)の精製および切断N末端に対して産生された。これらのモノクローナル抗Als1p抗体の付着遮断能力は、希釈度1:50でC.アルビカンス細胞を抗Als1抗体またはマウスIgG(Sigma,St.Louis,MO)のどちらかでインキュベートすることによって評価した。その後、酵母細胞を付着アッセイで上述のように使用した。Wilcoxon rank sum検定によって統計的処理を得て、Bonferroni補正によって複数の比較について補正した。P<0.001。結果は、PADH1−ALS1菌株の付着が26.8%±3.5%から14.7%±5.3%へ低下したことを明らかにした。それゆえALS1欠損および過剰発現の効果は、Als1pがC.アルビカンスの内皮細胞への付着を媒介することを証明する。
【0040】
実施例II
Als1pの局在化
アドヘシンがAls1pとして機能するためには、それが細胞表面に位置しなければならない。Als1pの細胞表面局在化は、抗Als1pモノクローナル抗体を用いた間接免疫蛍光法を使用して検証された。指数増殖の間に分芽胞子の表面に拡散染色が検出された。この染色は定常期に分芽胞子上で検出された。図2Aを参照すると、分芽胞子に線維化を誘発させたときに、新生微細線維の基礎に独占的に局在化した強い染色が観察された。als1/als1ミュータントでは免疫蛍光が観察されず、Als1pのこの抗体の特異性が確認された。図2Bを参照。これらの結果は、Als1pが細胞タンパク質であることを証明する。
【0041】
Als1pへの分芽胞子−微細線維接合部への特異性局在化は、線維化プロセスにAls1pを関係させている。機構を決定するために、C.アルビカンスALS1ミュータントの線維化表現型が分析された。図3Aを参照すると、als1/als1ミュータントはLeeの固体培地での4日間のインキュベーション後に微細線維を形成できず、これに対してALS1/ALS1およびALS1/als1菌株はもちろんのこと、ALS1補足ミュータントはこの時点で豊富な微細線維を産生した。als1/als1ミュータントは、より長いインキュベーション期間の後に微細線維を形成できた。さらにALS1の過剰発現は線維化を増強した:PADH1−ALS1菌株は3日間のインキュベーションの後に豊富な微細線維を形成したが、これに対して野生型菌株はこの時点で不十分な微細線維を産生した。図3Bを参照。線維化におけるAls1pの役割をさらに確認するために、ALS1のコード配列が反対方向に挿入されることを除いて、ALS1過剰発現ミュータントと類似したミュータントを使用して負の対照が供給された。得られた菌株の線維化表現型は、野生型菌株のそれと類似していることが示された。上述の菌株すべてが液体培地で同程度に線維化したため、Als1pの微細線維誘発特性は固体培地で増殖された細胞に特異的である。データは、Als1pが線維化を促進して、線維化制御経路の調節にALS1発現を関係させることを証明している。efgl/efgl、cphl/cphl、efgl/efg、cphl/cphl、tupl/tupl、およびcla4/cla4ミュータントを含む、これらの経路のそれぞれにおける欠陥のあるミュータントでのALS1発現のノザンブロット分析を実施した。図4Aを参照すると、EFG1の両方の対立遺伝子が破壊されたミュータントはALS1を発現できなかった。野生型EFG1のコピーのefg1/efg1ミュータントへの導入は、低下したレベルであるがALS1発現を回復させた。図4Bを参照。また図4Aに見られるように、他の線維化制御変異以外のいずれも、ALS1発現を著しく改変しなかった(図4A)。それゆえEfg1pはALS1発現に必要である。
【0042】
Efg1pがALS1の発現を刺激して、これが次に線維化を誘発する場合、efg1/efg1菌株の発現は線維化を回復すべきである。ADH1プロモータの制御下でのALS1機能性対立遺伝子は、efg1/efg1菌株内に組込まれた。ALS1遺伝子産物がefg1ヌルミュータントの線維化欠陥を補完しうる可能性を調査するために、Uraefg1ヌルミュータントは線形化pAU−1によって形質転換された。Uraクローンが選択され、ALS1の第3のコピーの組込みはプライマーを使用してPCRによって確認された:
【0043】
【数3】

得られた菌株はALS1を自発的に発現し、Leeの寒天上で線維化する能力を回復した。図4BおよびCを参照。したがってEfg1pはALS1発現の活性化を通じて線維化を誘発する。
【0044】
線維化はC.アルビカンスにおいて決定的な毒性因子であるため、線維化を制御する経路の描写は病原性に関して重要な示唆を有する。ALS1の前に、これらの制御経路の下流エフェクタをコードする遺伝子は同定されていなかった。細胞表面タンパク質をコードする2つの他の遺伝子HWP1およびINTIの破壊は、線維化欠陥のあるミュータントを生じる。HWP1発現もEfg1pによって制御されるが、efg1/efg1ミュータントにおける自律発現は線維化を回復させることができない。したがってHwp1p単独では、EFG1下流の線維化のエフェクタとして機能しない。またINT1発現を制御する制御要素も未知である。それゆえAls1pは線維化の下流エフェクタとして機能する、同定された最初の細胞表面タンパク質であり、それによりC.アルビカンスの毒性におけるこのタンパク質の中心的な役割が示唆される。
【0045】
Als1pのC.アルビカンス毒性への寄与は、血行性播種性カンジダ症のモデルで試験された、A.S.Ibrahim et al,Infect.Immun.63,1993(1995)。図5Aを参照すると、als1/als1ヌルミュータントに感染したマウスは、ALS1/ALS1菌株、ALS1/als1ミュータント、またはALS1補足ミュータントによって感染したマウスよりも著しく長く生存した。感染28時間後、als1/als1ミュータントに感染したマウスの腎臓は、著しく少ない生物を含有していた(5.70±0.46 log10 CFU/g)(両方の比較についてP<0.0006)。菌株のどちらかに感染したマウスの脾臓、肺または肝臓から回収した生物のコロニーカウントにおいて、試験した時点のいずれにおいても相違は検出されなかった。これらの結果は、Als1pが感染の最初の28時間の間に腎臓におけるC.アルビカンスの増殖および存続にとって重要であることを示す。図5Bを参照すると、感染28時間後のマウスの腎臓の検査は、als1/als1ミュータントが野生型またはALS1補足菌株のいずれよりも、著しく短い微細線維を産生し、弱い炎症応答を誘発することを明らかにした。しかしながら感染40時間までに、微細線維の長さおよびそれらを包囲する白血球の数は3つすべての菌株で同様であった。
【0046】
組織病理で見られるals1/als1ミュータントの線維化欠陥は、固体培地上での試験管内線維化アッセイを比較した。このミュータントは生体内および試験管内の両方で早期の時点での欠陥線維化を示した。この欠陥は最終的に、長期の感染/インキュベーションによって解決した。これらの結果は、ALS1に無関係である線維化制御経路が後の時点で作用するようになることを示唆している。感染40時間までのこの代わりの線維化経路の活性化は、als1/als1ミュータントに感染したマウスが続いて次の2〜3日間に死亡する理由であるように思われる。
【0047】
ひとまとめにして、これらのデータは、C.アルビカンスALS1が内皮細胞への付着および線維化の両方を媒介する細胞表面タンパク質をコード化することを証明する。Als1pはC.アルビカンスにおけるいずれの既知の線維化制御経路の唯一同定された下流エフェクタである。加えてAls1pは、血行性カンジダ感染の毒性に寄与する。Als1pの細胞表面局在化および二重機能性は、それを薬物および免疫ベース治療の魅力的な標的としている。
【0048】
実施例III
ALS1アドヘシンタンパク質の精製
E.coliによって合成されたALS1タンパク質は免疫原として十分である。しかしながらE.coliによって合成された真核タンパク質は、不正な折畳みまたはグリコシル化の不足のために機能的でない。したがってALS1タンパク質がC.アルビカンスの内皮細胞への付着を遮断できるかどうかを判定するために、タンパク質は好ましくは遺伝子組換えC.アルビカンスから精製される。
【0049】
PCRを使用してヌクレオチド52〜1296からALS1の断片を増幅した。この1246bp断片は、シグナルペプチドの終わりからタンデム反復の始まりまでの予測されたALS1タンパク質のN末端を含む。ALS1のこの領域は、それがS.セレビシエAga1遺伝子産物の結合領域へのその相同性に基づいて、アドヘシンの結合部位をコードしやすいので増幅された。加えて、予測されたALS1タンパク質のこの部分はグリコシル化をほとんど有さず、そのサイズはE.coliでの十分な発現にとって適切である。
【0050】
ALS1の断片はpINS5を産生するためにpQE32内へ結合された。このプラスミドでは、タンパク質はlacプロモータの制御下で発現され、それは親和性精製できるようにそのN末端に融合された6ヒット・タグを有する。我々はE.coliをpINS5によって形質転換して、それを誘発条件(IPTGの存在下)で増殖させて、次に細胞を溶解させた。細胞溶解液をNi2+アガロースカラムに通過させてALS1−6His融合タンパク質を親和性精製した。この手順は、ALS1−6Hisの実質的な量を生じた。融合タンパク質はSDS−PAGEによってさらに精製された。タンパク質を含有するバンドを、それに対してポリクローナルウサギ抗血清を産生できるように、ゲルから切除した。当業者によって、本発明の精神から逸脱することなく、各種の既知のプロセスによって本発明による表面アドヘシンタンパク質が調製および精製されうることが認識されるであろう。Als1pの配列を図7に挙げる。
【0051】
実施例IV
ALS1タンパク質に対するポリクローナル抗血清の産生
ALS1タンパク質に対する抗体がカンジダ・アルビカンスの内皮および上皮細胞、ならびに選択した宿主構成要素への試験管内での付着を遮断するかどうかを判定するために、ALS1タンパク質によって形質転換されたS.セレビシエをウサギに接種した。使用した免疫化プロトコルは、カンジダの多様な種の間の抗原関係を同定した抗血清の産生のためにHasencleverおよびMitchellによって使用された用量およびスケジュールであった。Hasenclever,H.F.and W.O.Mitchell.1960.Antigenic relationships of Torulopsis glabrata and seven species of the genus Candida.J.Bacteriol.79:677−681。対照抗血清も、空のプラスミドによって形質転換されたS.セレビシエに対して産生された。すべての酵母細胞をガラクトース中で増殖させて、ALS遺伝子の発現を誘発した。付着実験で試験する前に、血清を56℃にて不活性化して、すべての相補性活性を除去した。
【0052】
免疫化ウサギからの血清は、空のプラスミドによって形質転換されたS.セレビシエの全細胞によって吸収させて、ALS1タンパク質以外の酵母の成分と反応性である抗体を除去した。抗血清の力価は、ALS1遺伝子を発現するS.セレビシエを使用した免疫蛍光法によって決定した。FITC標識抗ウサギ抗体は、市販供給源(Southern Biotechnology,Inc)より購入した。親和性精製2次抗体は、多くの市販の血清が酵母グルカンおよびマンナンと反応性の抗体を含有するために不可欠であった。2次抗体は、カンジダ・アルビカンスはもちろんのこと、プラスミドによって形質転換されたS.セレビシエによっても予備試験され、いずれの抗S.セレビシエおよび抗カンジダ抗体を除去するために必要に応じて吸収させた。負の対照は1)免疫前血清、2)空のプラスミドによって形質転換されたS.セレビシエ、および3)ALS遺伝子によって形質転換されたが、ALS遺伝子の発現を抑制する条件(グルコース)下で増殖させたS.セレビシエであった。
【0053】
上の実験に加えて、ウェスタンブロッティングを使用して、抗血清がそれに対して産生されたALSタンパク質に特異的に結合するというさらなる確認を与えた。ALS1によって形質転換されたS.セレビシエは、誘発条件下で増殖させて、その原形質膜を標準方法によって単離した。Panaretou R and P. Piper.1996.Isolation of yeast plasma membranes.p.117−121.In I.H.Evans,(ed.),Yeast Protocols.Methods in Cell and Molecular Biology.Humana Press,Totowa,New Jersey。原形質膜は、空のプラスミドによって形質転換され、同一条件下で培養したS.セレビシエからも調製した。膜タンパク質はSDS−PAGEによって分離して、電気ブロッティングによってPVDF膜に移した。Harlow,E.and D.Lane.1988.Antibodies:a laboratory manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press。脱脂乳によって遮断した後に、ブロットをALS抗血清によってインキュベートした。予備吸収させた抗血清は、空のプラスミドを含有するS.セレビシエから抽出したタンパク質と反応しなかった。この抗血清は、S.セレビシエpYF5(カンジダ・アルビカンスALS1)の内皮細胞への付着を遮断した。
【0054】
実施例V
特定のALSタンパク質に対するポリクローナル抗体は、マウスを粘膜および血行性播種性カンジダ感染から予防的に防御する
上の条件下でALS遺伝子によって形質転換されたS.セレビシエのクローンの付着を遮断する抗血清を同定して、これらの抗血清はマウスをカンジダ・アルビカンスによる静脈内攻撃から防御することが証明された。
【0055】
ALSタンパク質に対する抗血清は最初に、血行性播種性カンジダ症のマウスモデルで試験された。親和性精製抗ALS抗体は、酵母細胞の各種基質への接着を防止するのに有効である(実施例3を参照)。親和性精製は、抗体用量が正確に決定できるのでこの系において有用である。その上、未分画の抗血清は疑う余地なく、S.セレビシエキャリア細胞上の抗原に対する抗体を大量に含有するであろう。これらの抗サッカロミセス抗体の多くは、C.アルビカンスに結合して、結果の解釈を不可能にしがちである。加えて、ALSタンパク質を発現するS.セレビシエから抗体を溶離させるのに使用した手順が、アジュバント様活性を有しうる少量の酵母マンナンまたはグルカンも溶離させうることは、完全に可能である。免疫親和性精製抗体は、使用前にさらに精製される。それらはマウス脾細胞によっても予備吸収されうる。
【0056】
抗体用量は、大半の能動免疫化プロトコルで予測されうる血清抗体のレベルを一括する範囲を扱うために、そしてカンジダ症のマウスモデルでの受動免疫化に通例使用される抗体用量の範囲を扱うために投与されうる。Dromer,F.,J.Charreire,A.Contrepois,C.Carbon,and P.Yeni.1987,Protection,of mice against experimental cryptococcosis by anti−Cryptococcus neofornwns monoclonal antibody,Infect.Immun.55:749−752;Han,Y.and J.E.Cutler.1995,Antibody response that protects against disseminated candidiasis,Infect.Immun.63:2714−2719;Mukherjee,J.,M.D.Scharff,and A.Casadevall.1992,Protective murine monoclonal antibodies to Ciyptococcus neofornwns,Infect.Immun.60:4534−4541;Sanford,J.E.,D.M.Lupan,A.M.Schlageter,and T.R.Kozel.1990,Passive immunication against Cryptococcus neoformans with an isotype−switch family ofrnonoclonal antibodies reactive with cryptococcal polysaccharide,Infect.Immun.58:1919−1923を参照。BALB/cマウス(メス、7週齢、NCI)に腹腔内(i.p.)注射によって、マウス脾細胞に吸収された抗ALSを投与した。対照マウスには、マウス脾細胞によって吸収された出血前血清、無傷の抗ALS血清、またはDPBSをそれぞれ与えた。事前吸収のために、抗ALSまたは出血前血清2mlをマウス(BALB/c、7週齢メス、NCI)脾細胞100μl(約9x10個細胞/ml)と室温にて20分間混合した。混合物を温滅菌DPBSを用いて遠心分離(@300xg)によって3分間洗浄した。この手順を3回反復した。i.p.注射の体積はマウス当たり0.4mlであった。4時間後、マウスをC.アルビカンス(菌株CA−I;マウス当たり5x10個の親水性酵母細胞を用いてi.v.注射によってチャレンジした。次にその生存時間を測定した。図6を参照。
【0057】
以前の研究は、腹腔内経路を介して投与された抗体が迅速(数分以内に)およびほぼ完全に血清に移動されることを示している(Kozel and Casadevall、未発表の観察)。抗体調製物を投与する効果に対する対照として、マウスの平行群を、ALS遺伝子によって形質転換されたS.セルビシエによって吸収されている免疫前血清から単離した抗体によって処置した。腎臓1グラム当たりの酵母の生存時間および数を測定した。再び図6を参照すると、ALS1の10個の分芽胞子によって静脈内感染させたマウスは、カンジダ・アルビカンスCAI−12またはALS1の1つの対立遺伝子が欠損されたカンジダ・アルビカンスによって感染させたマウスと比較したときに、より長い中央生存時間を有していた(P=0.003)。
【0058】
これらの結果は、ALS1タンパク質をワクチンとして使用する免疫療法方法が播種性カンジダ症に対して防御的予防効果を有することを示している。
【0059】
実施例VI
カンジダ・アルビカンスのAlsタンパク質ファミリーにおける機能および構造多様性
非付着性S.セレビシエの異種相補によるC.アルビカンスALS1遺伝子の単離およびcharacterizedは以前に記載されている(Fu et al.,Infect.Immun.66:1783−1786(1998))。ALS1は、内皮および上皮細胞への付着を媒介する細胞表面タンパク質をコードする。C.アルビカンスにおけるこの遺伝子の両方のコピーの破壊は、内皮細胞への付着の35%の低下に関連しており、ALS1の過剰発現は付着を125%に上昇させる(Fu et al.,Mol.Microbiol.44:61−72(2002))。
【0060】
ALS1は、Hoyer et al.によって最初に記載された少なくとも8つのメンバーより成る大規模なC.アルビカンス遺伝子ファミリーのメンバーである(Hoyer et al.,Trends Microbiol.9:176−180(2001),Zhao et al.,Microbiology 149:2947−2960(2003))。これらの遺伝子は、3つのドメインによって特徴付けられる細胞表面タンパク質をコードする。N末端領域は、推定上のシグナルペプチドを含有し、Alsタンパク質間で相対的に保存されている。この領域は、不十分にグリコシル化されることが予測される(Zhao et al.,Microbiology 149:2947−2960(2003),Hoyer et al.,Genetics 157:1555−1567(2001))。これらのタンパク質の中央部は、可変数のタンデム反復(長さが〜36アミノ酸)より成り、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー配列を含有するセリン−トレオニンリッチC末端領域が続いている(同上)。この遺伝子ファミリーによってコードされるタンパク質は感染中に発現されることが既知であるが(Hoyer et al.,Infect.Immun.67:4251−4255(1999),Zhang et al.,Genome Res.13:2005−2017(2003))、異なるAlsタンパク質の機能は詳細には調査されていない。
【0061】
非付着性S.セレビシエにおけるAlsタンパク質の異種発現は、Alsタンパク質の機能を評価するために、そしてC.アルビカンスによって発現された複数の他のアドヘシンによって媒介された高いバックグラウンド付着を回避するために実施された。この異種発現系は、アドヘシンALSl、ALS5、およびEAPlの単離およびキャラクタリゼーションを含むC.アルビカンス遺伝子の研究のために広範囲に使用されている(Li et al.,Eukaryot Cell 2:1266−1273(2003),Fu et al,Infect.Immun.66:1783−1786(1998),Gaur et al.,Infect.Immun.65:5289−5294(1997))。下でさらに記載するように、このモデル系を使用して、Alsタンパク質は多様な接着および侵入機能を有することが証明されている。これらの結果と一致して、相同性モデリングはAlsタンパク質が構造において、タンパク質の免疫グロブリンスーパーファミリーのアドヘシンおよびインベイシンに密接に関連していることを示した。CDおよびフーリエ変換赤外(FTIR)I分光法を使用する構造解析は、Als1pのN末端ドメインが逆平行βシート、ターン、α−らせん、および免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバーの構造と一致する非構造化ドメインより成ることを確認した。最後に匹敵するエネルギーベースのモデルが、別個の付着および侵入生物学的機能を支配しうる、異なるAlsタンパク質の間でのN末端ドメインの主要な物理化学特性の相違を示唆している。
【0062】
ALSファミリーメンバーをクローニングして、それらをS.セレビシエ内で発現させるために、ALS1、−3、−5、−6、−7、および−9は下に記載するようにうまく増幅および発現された。簡潔にはクローニングおよび他の培養ステップでは、S.セレビシエ菌株S150−2B(leu2 his3 trpl ura3)を以前に記載されているように異種発現に使用した(Fu et al.,Infect.Immun.66:2078−2084(1998))。C.アルビカンス菌株SC5314はゲノムクローニングに使用した。すべての菌株は、必要に応じて1.5% bacto−agar(Difco)によって固化させた最小限定培地(100μg/ml L−ロイシン、L−トリプトファン、L−ヒスチジン、およびアデニンサルフェートを添加した、1x酵母窒素ベースブロス(Difco)、2%グルコース、および0.5%アンモニウムサルフェート)で培養した。ura菌株の培養は、80μg/mlウリジン(Sigma)の添加によって補助した。ALS5、pYF5を含有する、ALSl、およびpALSnを含有する、ALS9を含有するプラスミドpGK103は、以前に記載されている(Fu et al.,Infect.Immune.66:1783−1786(1998),Gaur et al.,Infect.Immune.65:5289−5297(1997),Lucinod et al.,Proceedings of the 102nd Annual Meeting of the American Society for Microbiology,pp.204,American Society for Microbiology,Salt Lake City,Ut.(2002))。A.Brown(Aberdeen,UK)より入手したプラスミドpADH1は、S.セレビシエにおいて機能性である、C.アルビカンスアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH1)プロモータおよびターミネータを含有する(Bailey et al.,J.Bacteriol.178:5353−5360(1996))。このプラスミドは、S.セレビシエにおけるALS遺伝子の構成的発現に使用された。
【0063】
ヒト口腔上皮および血管内皮細胞を入手して、次のように培養した。咽頭癌から単離したFaDu口腔上皮細胞系をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入して、その推奨プロトコルに従って維持した。内皮細胞を臍帯静脈から単離して、Jaffe et al.の方法の我々の以前に記載した改良によって維持した(Fu et al.,Mol.Microbiol.44:61−72(2002),Jaffe et al.,J.Clin.Invest.52:2745−2756(1973))。すべての細胞培養物は、5% CO2を含有する加湿環境にて37℃で維持した。
【0064】
ALS遺伝子のクローニングでは、ALSファミリーのメンバーのゲノム配列を、Stanfordデータベース(ワールドワイドウェブでURL:sequence.stanford.edu/group/candida/searcli.htmlにて入手可能)のBLAST検索によって同定した。PCRプライマーは、5’BglIIおよび3’XhoI制限酵素部位を包含する読み取り枠それぞれを特異的に増幅するために産生され、下で表Iに示される(配列番号:14−19(それぞれALS 1、3、5、6、7および9センスプライマー);配列番号:20−25((それぞれALS 1、3、5、6、7および9アンチセンスプライマー))。各遺伝子は、Expand(登録商標)High Fidelity PCR system(Roche Applied Science)を使用してPCRによってクローニングされた。ALS3、ALS6、およびALS7はC.アルビカンスSC5314ゲノムDNAから増幅されたのに対して、ALS1、ALS5、およびALS9は、C.アルビカンスゲノムライブラリから以前に検索されたプラスミドから増幅された(Fu et al.,Infect.Immune.66:1783−1786(1998),Gaur et al.,Infect.Immune.65:5289−5297(1997),Lucinod et al.,Proceedings of the 102nd Annual Meeting of the American Society for Microbiology,pp.204,American Society for Microbiology,Salt Lake City,Ut.(2002))。PCR産物は配列決定のためにpGEM−T−Easy(Promega)内へ結合された。次に、興味のあるALS遺伝子がADH1プロモータの制御下にあるように、配列検証ALS読み取り枠をBglII−XhoI同時消化によってpGEM−T−Easyから流離させる。S.セレビシエ菌株S150−2Bはリチウムアセテート法を使用して、ALS過剰発現構築物それぞれによってはもちろんのこと、空のpADH1構築物によっても形質転換する。S.セレビシエでの各ALS遺伝子の発現は、表現型分析を実施する前にノザンブロット分析によって検証した。
【0065】
表I
S.セレビシエでの異種発現のためのALS遺伝子のコード領域を増幅するために使用されたPCRプライマー
【0066】
【表1】

ALS mRNA発現は、各構築物についてのノザンブロット分析によって検出された。3セットのプライマーの使用にもかかわらず、C.アルビカンスSC5314のゲノムDNAからのALS2およびALS4の増幅は成功しなかった。ALS遺伝子のタンデム反復での配列決定およびアセンブリングの困難を考慮すると、この結果が公開ゲノムデータベースで現在入手できる配列アセンブリのエラーを反映することが可能である。
【0067】
フローサイトメトリーは、Alsタンパク質それぞれがそのそれぞれのS.セレビシエ宿主の表面で発現されることを確認した。簡潔には、Als構築物それぞれの細胞表面発現の確認は、2つの異なるポリクローナル抗Als抗血清を利用する間接免疫蛍光法を使用して決定した。抗血清Aは、Als1pの417アミノ酸N末端断片を用いたウサギの免疫化によって産生された、抗Als1p抗体より構成されていた。抗血清Bは、C.アルビカンス細胞壁成分を認識するが、S.セレビシエと交差反応しないウサギ抗C.アルビカンスマンナン因子5であった(Iatron Laboratories)。
【0068】
各菌株で、10個の分芽胞子が一晩の培養から単離され、ヤギ血清100μlで遮断され、次に1:25希釈物のポリクローナル抗血清AまたはBのどちらかで、続いて1:100のフルオレセインイソチオシアナート標識ヤギ抗ウサギIgGによって染色した。
488nmで放出されるアルゴンレーザを装備したFACSCaliber(Becton Dickinson)装置をフローサイトメトリー分析に使用した。蛍光発光は515/40−nmバンドパスフィルタによって検出された。10,000回のイベントで蛍光データを収集して、ベースライン(すなわち空のプラスミドによって形質変換されたS.セレビシエ)より上の蛍光を持つ細胞の分布は、CELLQUESTソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して各菌株について分析した。
【0069】
表IIに示すように、2つの別個の抗血清は、Alsp発現菌株のすべてが、空のプラスミドによって形質変換されたS.セレビシエと比較したときに、蛍光の少なくとも4倍の上昇を示すことを証明した。Alsファミリーのメンバー間での予測された構造的多様性と一致して、抗血清は個々のAls発現菌株の認識で相違を示した。
【0070】
表II
フローサイトメトリー分析によるS.セレビシエの表面でのAlsタンパク質の検出
各菌株の分芽胞子は、ポリクローナル抗Als1p抗血清(A)またはポリクローナル抗C.アルビカンス細胞壁抗血清(B)のどちらかによって間接免疫蛍光法を使用して染色され、次にフローサイトメトリーを使用して分析された。結果は、カッコ内の−倍の上昇と共に、バックグラウンド(空のプラスミドによって形質変換されたS.セレビシエ)より上の陽性細胞のパーセンテージとして表現されている。
【0071】
【表2】

各種のAlsタンパク質を発現したS.セレビシエクローンは、各種の宿主基質に付着するその能力について調査された。下に記載するように、結果はAlsタンパク質が基質特異性付着の異なるプロフィールを提示することを示す。
【0072】
真菌付着アッセイは、形質転換されたS.セレビシエ菌株の付着特性を決定するために実施された。簡潔には、前に記載した付着アッセイ(8)の改良を次のように利用した。付着プレートは、ゼラチン(Sigma)、ラミニン(Sigma)、またはフィブロネクチン(Becton Dickinson)の0.01mg/ml溶液1mlを6ウェル組織培養プレート(Costar)の各ウェルに添加して、37℃にて一晩インキュベートすることによってコーティングした。内皮細胞では第2継代細胞が0.2%ゼラチンマトリクスによってコーティングされた6ウェル組織培養プレートでコンフルエントまで培養され、上皮細胞ではFaDU細胞が0.1%フィブロネクチンマトリクスによってコーティングされた6ウェル組織培養プレートでコンフルエントまで培養された(3日)。付着試験の前に、ウェルを温ハンクス液(HBSS)1mlによって2回洗浄した。試験されるS.セレビシエ菌株は、30℃にて最小限定培地中で一晩培養され、次に遠心分離によって収集されて、HBSS(Irvine Scientific)で洗浄され、血球計を使用して数えられた。300個の生物を興味のある基質によってコーティングされた6ウェル組織培養プレートの各ウェルに添加して、CO2中で37℃にて30分間インキュベートした。非付着性生物をHBSS 10mlによって標準化方式で2回洗浄することによって除去した。ウェルをYPD寒天(1%酵母抽出物(Difco)、2%バクトペプトン(Difco)、2% D−グルコース、1.5%寒天)と重ねて、定量培養によって接種材料を確認した。プレートを30℃で48時間インキュベートして、コロニーをカウントした。付着は初期接種材料のパーセンテージとして表された。付着の相違は分散検定の一因子分析を使用して比較され、p<0.01が有意とみなされた。
【0073】
S.セレビシエ形質転換体の異なる基質に対する付着プロフィールに顕著な相違があった(図8)。Als1p−、Als3p−、およびAls5p−発現菌株は試験したすべての基質を結合したのに対して、Als6p−発現S.セレビシエはゼラチンのみに付着して、Als9p−発現S.セレビシエはバックグラウンドレベルを超えてラミニンのみに付着した。さらに各種の基質への付着には定量的な相違があった。たとえばAls3pと比較したときに、Als1pはゼラチンに対してより高い付着性を与えるが、上皮細胞にはより低い付着性を与える(p<0.01、一因子分散分析)。Als7pを発現するS.セレビシエのみが試験したいずれの基質にも付着しなかった。Alsタンパク質発現のレベルでの小規模な相違は表IIに示す免疫蛍光研究によって除外できないのに対して、そのような相違は本研究で見出された基質特異性結合パターンの原因であるとは思えない。細胞表面に発現されたAlsタンパク質量のそのような全体的増加または減少は、すべての基質に亘る付着での相応の増加または減少を生じることが予測され、観察された基質特異性の相違を引き起こさないだろう。
【0074】
後述するように、Alsタンパク質の基質結合特異性は、Alsタンパク質のN末端配列に存する。簡潔にはS.セレビシエにおけるAls5p発現は、ゼラチンおよび内皮細胞を含む複数の基質への付着を与えたが、Als6p発現はゼラチンのみへの付着を生じた。機能のこの顕著な相違にもかかわらず、Als5pおよびAls6pはアミノ酸レベルで80%を超えて同一である。これらのタンパク質のタンデム反復およびC末端は本質的に同一であり、配列相違の大部分はこれらの2つのN末端に濃縮される。これらのデータは、N末端配列可変性が基質特異性を与えることを示す。
【0075】
上の結果は、キメラALS5/ALS6構築物の付着表現型を決定する研究の結果によって裏付けられた。簡潔には、キメラAls5/Als6タンパク質は、各タンパク質のN末端を交換することによって構築された。キメラALS5/6遺伝子を次のように構築した。遺伝子の5’2117bpを含むALS5のBglII−HpaI断片を単離した。次にpGEM−T−ALS6をBglIIおよびHpaIによって消化して対応するALS6の5’2126bpを放出させて、pGEM−T−EasyおよびALS6の3’配列より成る断片を単離し、5’ALS5断片に結合させて、プラスミドpGEM−T−5N6Cを産生させた。対応するALS6の5’断片およびALS5の3’断片を使用する同じ手法を使用して、プラスミドpGEM−T−6N5Cを産生させた。配列確認の後、各キメラALS遺伝子はBglII−XhoI消化によって放出され、上のようにpADH1内にサブクローニングされた。次にS.セレビシエS150−2Bをこれらの構築物によって形質転換させて、その付着特性のキャラクタリゼーション前にノザンブロット分析によって発現を検証した。
【0076】
Als5pのN末端のAls6pのC末端へのキメラ融合を発現するS.セレビシエは、ゼラチンおよび内皮細胞の両方にAls5pに似た方式で付着した(図9)。同様に、Als6N末端のAls5pのC末端へのキメラ融合を発現する菌株は、Als6pを発現するS.セレビシエと同様にゼラチンのみに付着した(図9)。さらにAls5pおよびキメラAls5N6Cタンパク質を発現する菌株はフィブロネクチンコーティングビーズを凝集させるが、Als6pおよびキメラAls6N5Cタンパク質を発現する菌株はこれらのビーズに対する親和性をほとんど〜全く持たない。ひとまとめにして、これらのデータは、これらの形質転換S.セレビシエ菌株の付着プロフィールがAlsタンパク質のN末端部分によって支配されていることを示す。
【0077】
Alsタンパク質ファミリーメンバー間で示された基質特異性の相違に加えて、他の生物機能の相違も観察された。たとえばAlsタンパク質のサブセットは、S.セレビシエによる内皮細胞侵入を媒介することが示された。C.アルビカンスは、その独自のエンドサイトーシスを誘発することによって内皮細胞に侵入する(Filler et al.,Infect.Immun.63976−983(1995),Belanger et al,Cell Microbiol.,in press(2002))。このエンドサイトーシスは、生物が内皮細胞に付着した後に起こる;しかしながらこのプロセスに必要なC.アルビカンスリガンドは未知である。さらに付着とエンドサイトーシスの両方に別個のカンジダリガンドが必要かどうかは明らかでない。非接着性であることに加えて、S.セレビシエは内皮細胞による著しいエンドサイトーシスを受けない。したがってAlsタンパク質がインベイシンとしてはもちろんのことアドヘシンとしても作用するかどうかを試験するために、Alsタンパク質を発現するS.セレビシエ菌株が内皮細胞へ侵入する能力が判定された。
【0078】
Alsタンパク質が内皮細胞侵入を媒介する能力は、前に記載された差次的蛍光アッセイの改良を使用して決定された(Phan et al.,Infect.Immun.68:3485−3490(2000))。簡潔には、内皮細胞はフィブロネクチンでコーティングされた12mm直径ガラスカバースリップ上でコンフルエントまで培養され、24ウェル組織培養プレート(Corning)に配置した。次に細胞をRPMI1640培地(Irvine Scientific)内で各S.セレビシエ菌株の10個の分芽胞子によって感染させた。正の対照として、細胞を同数のC.アルビカンス分芽胞子で感染させた。90分間のインキュベーションの後、細胞を標準化方式でHBSS 0.5mlによって2回すすぎ、3%パラホルムアルデヒドで固定した。内皮細胞表面に付着したままの生物を、赤色の蛍光を発するAlexa 568(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)に結合されていたウサギ抗C.アルビカンス抗血清(Biodesign)によって1時間染色した。この抗血清はS.セレビシエと2倍の高さの希釈度で交差反応する。内皮細胞は次にリン酸緩衝生理食塩水中の0.2% Triton X−100中で10分間透過処理して、その後に細胞結合生物(内部移行および付着生物)を再度、緑色蛍光を発するAlexa 488に結合された抗C.アルビカンス抗血清で染色した。次にカバースリップを落射蛍光下で観察した。内皮細胞によって内部移行された生物の数は、細胞結合生物(緑色蛍光を発する)の数から付着生物(赤色蛍光を発する)の数を引くことによって決定した。少なくとも各カバースリップ上で100個の生物がカウントされ、すべての実験は少なくとも3回の別々の機会に3通り実施された。
【0079】
あるAlsタンパク質の結合特徴を特徴付けるために、フィブロネクチンビーズ付着アッセイも実施された。この点で、S.セレビシエの表面で発現されたときにフィブロネクチンコーティングビーズの凝集を誘発するタンパク質の能力のために、Als5pが最初に同定された(Gaur et al.,Infect.Immune.65:5289−5297(1997))。したがってフィブロネクチンに対するALS5、ALS6、5N6C、および6N5Cによって形質転換されたS.セレビシエ菌株は、この方法を使用してビーズ付着について試験された(Gaur et al.,Infect.Immune.65:5289−5297(1997),Gaur et al.,Infect.Immun.67:6040−6047(1999))。簡潔には、トシル化磁気ビーズ(Dynal Biotech)は、製造者の説明書に従ってフィブロネクチンでコーティングされた。次にコーティングビーズ10μl(10個のビーズ)を1x10個の形質転換S.セレビシエと1xTris−EDTA(TE)緩衝液、pH7.0 1ml中で混合して、45分間静かに混合しながらインキュベートした。チューブをマグネットに置いて、ビーズおよび付着性S.セレビシエを非付着性生物と分離した。非付着性生物を含有する上清は吸引によって除去され、残りのビーズはTE緩衝液1ml中に再懸濁させることによって3回洗浄され、磁気分離および上清の吸引が続けられた。最後に洗浄されたビーズおよび付着性生物はTE緩衝液100μlに再懸濁され、同時凝集について顕微鏡で検査された。
【0080】
結果は、Als1p、Als3p、およびAls5pを発現するS.セレビシエが細胞結合生物のパーセンテージの著しい上昇を提示し、内皮細胞に付着するその能力を反映していることを示している。加えてAls3p、そしてより低い程度でAls1pおよびAls5pを発現する生物は、著しい内皮細胞侵入を示した(図10)。
【0081】
上述の機能的研究に加えて、Alsタンパク質は免疫グロブリンスーパーファミリーのアドヘシンおよびインベイシンに相同性であることも見出された。Alsタンパク質の分子モデリングの最初のステップとして、知識ベースの検索アルゴリズムを使用して、Alsファミリーメンバーと著しい構造的類似性を共有する分子が同定された。簡潔には、Alsタンパク質の全体の物理化学的特徴を比較するために、相同性およびエネルギーベースモデリングが実施された。最初に、知識ベース法(SWISS−MODEL)(Guex et al.,Electrophoresis 18:2714−2723(1997),Schwede et al.,Nucleic Acids Res.31:3381−3385(2003))が使用されて、相同性高次構造を持つタンパク質についてSwiss and Brookhavenタンパク質データベースで構造の組合せ拡張構造アラインメントを解析および比較された(Shindyalov et al.,Protein Eng.11:739−747(1998))。この手法は、ExNRL−3Dデータベースで一次配列類似性を検索するために、BLASTP2アルゴリズム(Altschul et al.,Mol.Biol.215:403−410(1990))を含んでいた。同時に最大の配列同一性を持つ候補テンプレートを選択するために、動的配列アラインメントアルゴリズムSIM(Huang et al.,Adv.Appl.Math.12:337−367(1991))が使用された。次に一次および精密適合分析を実施するためにProModIIが使用された。得られたタンパク質はAlsタンパク質主鎖軌道の相同性モデリングのテンプレートとして使用された。
【0082】
Alsタンパク質のN末端ドメインの頑強なモデル(たとえばアミノ酸1−480;先行する最初のタンデム反復)は、相補性手法によって産生された。Alsタンパク質のN末端ドメインは、Silicon Graphics workstations(SGI,Inc.)上で動作するSYBYL 6.9.1ソフトウェア(Tripos Associates)を使用して、配列相同性(Composer(Topham et al.Biochem.Soc.Symp.57:1−9(1990))およびスレッディング法(Matchmaker(Godzik et al.,J.Mol.Biol.227:227−238(1992))およびGene−Fold(Jaroszewski et al.,Protein Sci.7:1431−1440(1998),Godzik et al.,Protein Eng.8:409−416(1995),Godzik et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:12098−12102(1992),Godzik et al.,J.Comput.Aided Mol.Des.7:397−438(1993))によって、推定上の溶液高次構造に変換された。標的Alsドメインの得られた配座異性体およびアミノ酸側鎖は分子動力学によって精密化され、歪エネルギーはAMBER95力場法(Duan et al.,J.Comput.Chem.24:1999−2012(2003))およびPowellミニマイザ(Powell et al.,Math.Program 12:241−254(1977))を使用して最小化された。
【0083】
これらの手法は、ペプチド主鎖原子の位置が固定されている側鎖相互作用を最適化する。好ましい高次構造は、水性溶媒中での拡張分子動力学から決定された。次にすべてのペプチド結合のれじれ角は、最小の束縛で180±15°に調整された。ある場合では、束縛なしで、または標準Ramachandranφおよびψ角に0.4−kJペナルティを印加することによりα−らせん領域が束縛されてのどちらかで、分子動力学が実行された。最終的な全体のエネルギー最小化は、すべての束縛および凝集の除去後に各モデルについて実施された。得られたAls N末端ドメインモデルは、3つの基準に基づいて優先順位を付けられた:(i)最も好ましい歪エネルギー(分子力学);(ii)経験的位置エネルギー関数;および(iii)潜在的なジスルフィド架橋の空間的配置の保存(Godzik et al.,J.Mol.Biol.227:227−238(1992),Bowie et al.,Science 253:164−170(1991),Eisenberg et al.,Methods Enzymol.277:396−404(1997),Fischer et al.,FASEB J.10:126−136(1996),Luthy et al.,Nature 356:83−85(1992))。Alsモデルは、標準手段(e−values(Welch et al.,Biochemistry 35:7165−7173(1996),Welch et al.,Biochemistry 33:6074−6085(1994))を使用して、相同性テンプレートと関連付けながら有効性を評価された。最後にAlsモデルの物理化学的特性は、物理的特性がAlsN末端ドメインの水接触可能表面へ投影されるように、SYBYL and HINT platforms(Kellog et al,J.Comput.Aided Mol.Des.5:545−552(1991))で実施されたようにMOLCAD(Heiden et al.,J.Comput.Chem.14:246−250(1993))によって描出された。
【0084】
これらのモデルは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーと一致して、すべてのAlsタンパク質のN末端ドメインが複数の逆平行βシートドメインを含有することを示す。これらの結果を表IIIにまとめる。これらのタンパク質は通例、それからループ/コイル構造を突出させる、複雑な7本鎖逆平行βシートドメインより成る。βシートドメインは領域を挿入することによって相互に隔離されている。この構造はビーズ・オン・ア・ストリング(beads−on−a−string)モチーフと呼ばれることが多い。Alsタンパク質の実質的にすべてが既知のアドヘシンまたはインベイシンホモログにモデル化されることが特に注目される(表III)。類似性の異なるパターンが分析したAlsタンパク質間で観察された。たとえばAls7pを除いて、調査したすべてのAlsタンパク質がスタフィロコッカス・アウレウスのコラーゲン結合タンパク質と著しい相同性を共有していた。しかしながら特異的な一次、二次、および三次ホモログは、大半のファミリーメンバーで変化した(表III)。たとえばAls2pおよびAls9pは、同一の一次、二次、および三次ホモログを共有していた。
【0085】
表III Alsタンパク質間のホモログの比較
各Alsタンパク質のホモログは、記載された知識ベースのアルゴリズムによって同定され、1〜3の構造的相関の降順に並べられた。NS、相同性モデリングで同定された有意モデルなし(相関係数((r)≦70%。PBD、国立バイオテクノロジー情報センターフォーマットによるタンパク質データバンクコード。
【表3】

【0086】
Alsタンパク質は、予測されたループ/コイル構造にマップするN末端超可変領域を含有することも判定された。この点で、個々のAlsタンパク質によって媒介された基質特異性付着の観察された相違にもかかわらず、N末端ドメインの配列の大きな領域がこのファミリーで保存されている。しかしながら超可変領域(HVR)1〜7と呼ばれるAlsタンパク質間の著しく異なる7つの領域が見出された。これらの領域(8以上のアミノ酸より成る)は、Alsタンパク質での見かけのコンセンサス同一性を含有せず、50%未満のコンセンサスを含有する。対照的に、介在する保存領域(CR)1〜7は、Alsタンパク質での30%を超えるコンセンサス同一性および50%を超えるコンセンサス保存を示した。既知の機能のAlsタンパク質のN末端ドメイン(残基1−420)を含むこれらのアミノ酸配列の同一性プロットおよび概略アラインメントを表11AおよびBに示す。特に同一性モデリングは、異なるAlsタンパク質のHVRは、配列が識別可能であると同時に、CRのβシート成分から突出する同様のループ/コイル構造に従うことが予測されることが明らかにされた。それゆえこれらの保存HVRの存在は、それらが宿主構成要素と相互作用するために利用できることを示している。
【0087】
上述の相同性モデリングおよび関連する決定に加えて、経験的決定はAls1pのN末端ドメインの予測された構造をさらに確認する。我々の相同性モデリングによって作られた仮説を試験するために、CDの相補性手法およびFTIR分光法を使用して、Als1pのN末端ドメインの構造的特徴が決定された。Als1pのアミノ酸17−432を含むこのタンパク質はS.セレビシエ中で産生され、Fu,et al.,Molecular Microbiology,44:61−72(2002)によって以前に記載されている。
【0088】
簡潔には、熱電温度コントローラを装着したAVIV 62DS分光偏光計(Aviv Biomedical Inc.)を使用して、円偏光二色性スペクトルを記録した。Als1pの水溶液(リン酸緩衝生理食塩水中10μM)は、0.1mm光路取り外し式石英セルを使用して、260〜185nmにて10nm/分の速度および0.2nmのサンプル間隔でスキャンされた。ペプチドを含まない緩衝液からのスペクトルは、光散乱アーティファクトを最小化するためにサンプル溶液から引かれ、最終スペクトルは25℃で記録された8回のスキャンの平均であった。装置は(+)−10カンファースルホン酸(1mm路長セルにて1mg/ml)を用いて定期的に校正され(Johnson et al.,Proteins 7:205−214(1990))、楕円率は平均残基楕円率(1)MRE(度−cm2 dmol−1)として表された。タンパク質濃度は、発現されたAls1pドメインの芳香族アミノ酸組成に基づいて280nmの吸収によって決定された(Pace et al,Protein Sci 4:2411−2423(1995))。CDスペクトルは、インターネットベースのDichroweb(Lobley et al.,Bioinformatics 18:211−212(2002))インタフェース(cryst.bbk.ac.uk/cdweb/html/home.html)によってSelcon(Sreerama et al,Protein Sci.8:370−380(1999))を使用して、らせん、βシート、ターン、および無秩序構造に逆重畳された。
【0089】
Als1pセルフフィルムの赤外スペクトルは、重水素化トリグリシンサルフェート検出器を装着したBruker Vector 22 FTIR分光計(Bruker Optics)で25℃にて、ゲイン4、256回のスキャンの平均で、2cm−1の分解能にて記録した。リン酸緩衝生理食塩水50μl中のタンパク質50マイクログラムを50x20x2mmゲルマニウム減衰全反射サンプル結晶(Pike Technologies)の表面に塗布して、乾燥させた。赤外スペクトルを記録する前に、乾燥タンパク質セルフフィルムを次にD2Oで1時間水和させた。赤外スペクトルのアミドIバンドは、曲線当てはめソフトウェア(GRAMS/32,Version 5;Galactic)による成分ピークの面積計算により、二次高次構造について解析された。各種の高次構造の周波数制限は次の通りである:αらせん(1662〜1645cm−1)、βシート(1637〜1613および1710−1682cm−1)、βターンループ(1682〜1662cm−1)、および無秩序構造(1645〜1637cm−1)(50−52)。
【0090】
Als1pのN末端ドメインの円偏光二色性結果は図12Aに示され、217nmの二色性極小および200nm付近の強い正の二色性極大を明らかにする。これらの特徴は、支配的な逆平行βシート成分を有するタンパク質に特有である。CDスペクトルの逆重畳は、タンパク質が50.1% βシートの高次構造を取ったのに対し、他の構造クラス分布が無秩序構造(26.9%)、ターン構造(19.3%)、およびαらせん(3.7%)を含むことを示した。
【0091】
図12Bに示すように、水和Als1pのセルフフィルムのFTIR測定は、サンプルが支配的な逆平行βシート高次構造を有することを強力に裏付けた。これらのスペクトルは、1634および1628cm−1を中心とするピークを持つ強い低周波数アミドIバンドおよび1685cm−1を中心とする弱い高周波数バンドを明らかにした。
【0092】
タンパク質アミドI赤外スペクトルの高および低周波数成分へのこの周波数分割は、分子内逆平行βシート間の遷移双極子カップリングの効果に特有であることが示されている(Halverson et al.,J.Am.Chem.Soc.113:6701−6703(1991))。スペクトルの曲線当てはめは、タンパク質構築物が〜57.2%逆平行βシートであることを示した。IRスペクトルの曲線当てはめからの他の二次構造高次構造は、無秩序構造(20.5%)、ターン成分(13.3%)、およびαらせん(9.0%)を含む。
【0093】
まとめると、FTIRおよびCDデータはさらに、Als1pのN末端が、より構造化されていない領域が挿入された、マイナーαらせんおよびターン成分を含有する逆平行βシート構造の支配的なドメインを含有することをさらに裏付けている。
【0094】
三次元モデルは、Als N末端ドメイン間の物理化学的差異をさらに示す。この点で、分子モデルは、宿主細胞と複数の基質との間のその相互作用に影響を及ぼしやすいAlsタンパク質のN末端ドメインの予測された物理化学的属性の相違を示した。図13に示すように、Alsタンパク質は、疎水性、電荷、および水素結合電位の表面分布に基づいて、3つの別個の群に分けられる。Als1p、Als3p、およびAls5pはそれぞれ、これらの特性の同様のパターンを共有し、それゆえAls群Aと見なされる。これに対して、Als6pおよびAls7p N末端ドメイン(Als群B)の予測された物理化学的特性は、Als群Aの特性との顕著な相違を有する(図13)。Als群Aメンバーのカチオン電位が通例その中性またはアニオン面から分離されるのに対して、正電荷はAls群BメンバーAls6pおよびAls7pの表面全体に幅広く分布する。最後にAls2p、Als4p、およびAls9pのN末端は、Als群AまたはBタンパク質とは構造的に異なるAlsタンパク質の第3群(Als群C)を構成するように思われる。Als群Cタンパク質は、疎水性または静電分布の点でAls群Bよりも、Als群Aに似ているように思われる。
【0095】
接着特性を備えた複数のタンパク質がC.アルビカンスにおいて同定されている。Hwp1pは、哺乳類トランスグルタミナーゼへの基質として作用することによって、頬側上皮細胞への付着を媒介することが示されている(5)。EAP1は、S.セレビシエでの異種発現によって最近同定され、試験管内でのポリスチレンおよび腎臓上皮細胞への付着を媒介する(7)。Alsタンパク質ファミリーの8つのメンバーのうち、Als1pおよびAls5pのみが機能的見込みから研究されている。Als1pの異種発現は、遺伝子破壊研究によってC.アルビカンスにて確認された発見である、ヒト血管内皮細胞および上皮細胞への結合を媒介することが示されている(Fu et al.,Mol.Microbiol.44:61−72(2002),Fu et al.,Infect.Immune.66:1783−1786(1998))。S.セレビシエでのALS5異種発現は、コラーゲン、フィブロネクチン、ウシ血清アルブミン、およびラミニンへの付着を与える(Gaur et al.,Infect.Immune.65:5289−5297(1997),Gaur et al.,Infect.Immun.67:6040−6047(1999),Gaur et al.,Cell Commun.Adhes.9:45−57(2002))。C.アルビカンスアドヘシンの基質特異性の大規模な比較は実施されていない。この研究で我々は、Alsタンパク質ファミリーメンバーの構造的に多様な群の接着特性を比較した。我々のデータは、Alsタンパク質が、各種のヒト基質への付着に関する重複する一連の特異性を備えた表面タンパク質の多様なファミリーを含むことを示している(図8)。さらに本ドメイン交換実験による結果は、Alsタンパク質のN末端ドメインがその基質付着プロフィールの特異性を与えることを示す。
【0096】
付着を媒介することに加えて、我々のデータはAlsタンパク質がインベイシンとしても機能しうることを示唆する。興味深いことに、Als1pおよびAls3p発現S.セレビシエの両方が同様の内皮細胞付着を示すのに対して、Als3p発現S.セレビシエはより高い率で内部移行を受けた。これらの結果は、エンドサイトーシスが単に付着の拡大ではなく、むしろリガンド−レセプタ相互作用に影響されうる別個のプロセスであることを示す。付着の場合と同様に、Alsタンパク質におけるN末端配列の相違がこれらの別個の機能を媒介すると思われる。
【0097】
三次元空間に分布されるようなタンパク質ドメインの物理化学特性は、レセプタ−リガンド相互作用を支配する決定的な構造上の特徴である(Eisenberg et al,J.Mol.Biol.179:125−142(1984),Waring et al.,Protein Peptidew Lett.3:177−184(1996),Hancock et al.,Lancet 349:418−422(1997))。Alsタンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリーの他のアドヘシンおよびインベイシンに特有の高次構造上の特徴を共有している。しかしながら、個々のAlsタンパク質はその一次ホモログで異なり、これはAlsファミリーのメンバーが異なる基質結合プロフィールを呈することを示す実験データと一致する発見であった。ひとまとめにして、Als相同性のこれらのパターンは、Alsタンパク質メンバーが構造および予測された折畳みにおいて全体的な類似性を共有するのに対して、別個のAlsタンパク質間にはその機能の相違の原因である構造上の相違が存在することを示す。
【0098】
Alsファミリーメンバーの構造決定に関して上述した結果は、Als1pのN末端領域が主にループ/コイル構造を含有する逆平行βシートドメインと、より少ない量の比較的構造化されていない領域と共に構成されることを示す、相同性モデリングを裏付けている。これらの特徴は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーの標示モチーフである。これらの結果は、Als5pの円偏光二色性研究との著しい予測的相関を示し(Hoyer et al.,Yeast 18:49−60(2001))、Als5pのN末端ドメインが逆平行βシートおよびループ/コイル領域の相対的な優勢を特徴とすることを示している。それゆえAlsタンパク質ファミリーのすべてのメンバーがこの全体的な構造を示すことが大いに考えられる。特に上の構造上の結果は、HVRの多くが別個のAlsタンパク質のN末端におけるβシート領域から突出する柔軟性ループ/コイル構造に対応することを示す相同性モデルとも一致する。ひとまとめにして、これらの結果は、これらの構造がAlsタンパク質による基質特異性結合に不可欠であることを示す(図14)。上の結果と一致して、マンノース結合レクチン、α−凝集素、および免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバーの類似領域は、基質結合特異性を与えるように思われる(Zhao et al.,Hybrid Hybridomics 21:25−36(2002),Wojciechowicz et al.,Mol.Cell.Biol.l3:2554−2563(1993))。その上、これらの可変ループ領域の変異は、これらの相同性タンパク質の基質結合を著しく改変する(Renz et al.,J.Cell Biol.125−1395−1406(1994),Viney et al.,J.Immunol.157:2488−2497(1996))。
【0099】
三次元モデリングの結果はさらに、個々のAlsタンパク質のN末端ドメインがその接着プロフィールに関連する独特の分子署名を所有することを示している。これらの署名は、表面積、疎水性、および静電荷などのパラメータを含み、Alsタンパク質間の構造的関係を区別する配置を生じる。たとえば複数の基質に結合するAlsタンパク質、たとえばAls群Aメンバー(Als1p、Als3p、およびAls5p)は、立体的かさ高さ、疎水性分布、および静電電位の点で同様の予測されたN末端プロフィールを含む。なおこの群内でも、群内での機能的相違を支配しうる特異的な物理化学的差異が存在する(図13)。これに対して、低下した接着能力を持つAlsタンパク質は、疎水性および静電電位を含む複数の物理化学特性でAls群Aタンパク質とは異なることが予測される表面特徴を有する。これらの構造的特徴の相違の凝集効果が別個のAlsタンパク質の特異的機能特性を与えることが大いに考えられる。
【0100】
広範囲の遺伝子的可変性がALS遺伝子ファミリー内で示されている。C.アルビカンスの異なる分離菌の特異性ALS遺伝子の配列変化が観察されており(Zhang et al.,Genome Res.13:2005−2017(2003),Hoyer et al.,Yeast 18:49−60(2001))、ALSファミリーのすべてのメンバーがすべての分離菌中に存在するわけではない。1つの分離菌中の2つの異なる対立遺伝子間では、著しい配列の相違すら見出されている(Zhao et al.,Microbiology 149:2947−2960(2003),Zhang et al.,Genome Res.13:2005−2017(2003))。この程度の遺伝子可変性は、これらのタンパク質が比較的高い頻度で再配置または変異を受けうることを示唆する。そのような機構は、生物に本研究で証明された高度の構造および機能多様性を生成する能力を与える。この仮説の間接的な裏付けは、ALS7の対立遺伝子変化の近年の研究によって与えられ、この遺伝子がどちらも超変異性であることと、これらの変異が選択圧を受けることとの両方が示唆される(Zhang et al.,Genome Res.13:2005−2017(2003))。
【0101】
ひとまとめにして、上の結果は、構造レベルおよび機能レベルの両方での抗体とAlsタンパク質との類似性を示している。たとえば相同性モデリングは、これらのファミリーの構造的配置の類似性を、そうでなければ安定な枠組み内に局在化されたドメイン(たとえばAlsタンパク質のHVRおよび免疫グロブリンのFab領域)へ標的化された超過変性と共に強調している。さらに抗体と同様に、ALS遺伝子ファミリーの遺伝子可変性は、カンジダに付着および侵入における一連の特異性と共に多様な一連のタンパク質を提示する機会を与えうる。そのような関連タンパク質の群の可用性は、生物が感染の間に異なる解剖学的および生理学的ニッチにコロニー形成および侵入する能力を改善すると考えられる。
【0102】
この出願を通じて、各種の刊行物はカッコ内に参照されている。これらの刊行物の開示はその全体が、本発明が関係する技術水準をより十分に記載するために参照により本出願に組み入れられている。
【0103】
本発明は開示された実施形態を参照して記載されているが、当業者は上で詳説された特定の実施例および研究が本発明の単なる例示であることをただちに認識するであろう。本発明の精神から逸脱することなく各種の修正形態が実施されうることが理解されるべきである。したがって本発明は以下の請求項によってのみ限定される。
【0104】
実施例VII
rAlslp−Nによるワクチン接種は、体液性でなく細胞媒介免疫を向上させることによって、マウス播種性カンジダ症の間の生存を改善する
この実施例は、BALB/cマウスのAls1pの組換えN末端(rAls1p−N)による免疫化が、C.アルビカンスの致死的接種材料を用いた次のチャレンジの間の生存を改善したことを示す。rAls1p−Nの防御的20μg用量は、Th1脾細胞のカンジダ刺激を著しく向上させ、生体内遅延型感受性を向上させた。これに対して、抗体力価は防御と相関しなかった。最後に、ワクチンはT細胞欠損マウスにおいては防御的でなかったが、B細胞欠損マウスにおいては防御的であった。これらのデータは、rAls1p−Nワクチンの作用機構が、C.アルビカンスに対する体液性ではなく、細胞媒介性の免疫の刺激であることを示す。
【0105】
研究で使用したC.アルビカンスは、動物モデルにおいて高度に毒性である十分に特徴付けされた臨床単離菌であるSC5314で(Spellberg et al.,Infect Irnmun.71:5756−5764(2003))、W.Fonzi(Georgetown Univeristy)によって提供された。生物は感染前に、酵母ペプトンデキストロースブロス(Difco)中で3回連続継代された。
【0106】
研究で使用したマウス系統は、国立癌研究所(Bethesda,MD)より入手したメスBALB/cマウスであった。ワクチン有効性に対する年齢の影響を調査するために、若年マウス(8〜10週)および退役繁殖(≧6ヶ月)を利用した。igh座位のホモ接合体欠損があるメスB細胞欠損マウス(C.129B6−IgH−Jhdtm1Dhu)、T細胞欠損ヌードマウス(C.Cg/AnBomTac−FoxnlnuN20)、および類似遺伝子性野生型BALB/c同腹子をTaconic Farms(Germantown,NY)より入手した。マウスはフィルタ付きケージ内に、制約なしの照射食品およびオートクレーブ処理水と共に収容した。生存実験では、マウスは各種の用量の抗原(下を参照)によって免疫化され、次に尾静脈からC.アルビカンスSC5314分芽胞子の適切な接種材料、またはPBS(Irvine Scientific,Irvine,CA)対照によって感染させた。複製生存研究の結果は、個々のデータセットが統計的異質性を示さない場合に組合された(下を参照)。マウスを含むすべての手順は、動物の飼育および保管のための国立衛生研究所ガイドラインに従って、研究機関の動物管理使用委員会によって承認された。
【0107】
後述のrAls1p−N免疫化手順は次のように実施された。簡潔には、rAls1p−N(Als1pのアミノ酸17〜432)はS.セレビシエ内で産生され、ゲル濾過およびNi−NTAマトリクス親和性精製によって精製した(Fu et al.,Molec.Microbiol.44:61−72(2002))。タンパク質の量は改良Lowryアッセイによって定量された。高度の純度(≒90%)はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によってはもちろんのこと、上述のように円偏光二色性およびFTIRによっても確認された。マウスは、完全フロイントアジュバント(CFA、Sigma−Aldrich)と混合されたrAls1p−Nの腹腔内(ip)注射によって第0日に免疫化され、不完全フロイントアジュバント(IFA、Sigma−Aldrich)を含む抗原の別の用量によって第21日にブーストされ、ブーストの2週間後に感染した。
【0108】
得られた抗原力価は、96ウェルプレート内でELISAによって決定された。簡潔には、ウェルは、ウェルごとにPBS中の5μg/mlrAls1p−N 100μlによってコーティングされた。マウス血清は室温にて1時間インキュベートされ、3%ウシ血清アルブミンを含有するtris緩衝生理的食塩水(TBS)(0.01M TrisHCl、pH7.4、0.15M NaCl)を用いた遮断ステップが続いた。ウェルは、0.05% Tween 20を含有するTBSによって3回洗浄され、TBSによるさらに3回の洗浄が続いた。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Sigma)によってコンジュゲートされたヤギ抗マウス二次抗体は最終希釈度1:5000で添加され、プレートはさらに室温にて1時間インキュベートされた。ウェルはTBSによって洗浄され、0.1Mクエン酸緩衝剤(pH5.0)、50mg/ml o−フェニレンジアミン(Sigma)、および30% H 10μlを含有する基質によってインキュベートされた。色を30分間展開させて、その後、10% HSOを添加することによって反応が停止され、光学密度(OD)がマイクロタイタープレートリーダーで490nmにて決定された。負の対照ウェルは希釈剤のみ与えられ、最終OD読取値を得るためにバックグラウンド吸収が試験ウェルから引かれた。ELISA力価は、正のOD読取値(すなわち>負の対照サンプルの平均OD+2標準偏差)を与えた最後の血清希釈度の逆数として解釈された。
【0109】
後述する他の方法は、次のように実施された。簡潔には、C.アルビカンス誘発サイトカインプロフィールは、細胞媒介免疫および生体内サイトカインプロフィールに対するrAls1p−Nの効果を判定するために実施された。マウスは上述のように免疫化された。最終ブーストの2週間後、脾細胞は収集され、上述のように4x10細胞/mlの密度にて完全培地中で培養された(Spellberg et al.,Infect.Irnmun.71:5756−5764(2003))。サイトカイン産生を刺激するために、脾細胞は加熱死C.アルビカンスSC5314芽管と共に同時培養された。我々は、脾細胞を刺激して感染中の生体内状況を模倣するために、rAls1p−Nの代わりに加熱死C.アルビカンスを使用した。C.アルビカンス細胞は、Als1pの発現を誘発するために、グルタミンを含むRPMI−1640(Gibco BRL)中で90分間予備出芽させた(Fu et al.,Molec.Microbiol.44:61−72(2002))。得られたC.アルビカンス芽管を60℃での90分間のインキュベーションによって加熱死させた(Ibrahim et al.,Infect.Immun.63:4368−74(1995))。加熱死した真菌は、脾細胞培養物に2x10仮性菌糸/mlの密度(白血球1個につき真菌5個の比)で添加された。48時間後、脾細胞は、Th1(CD4+IFN−□+IL−4−)、Th2(CD4+IFN−□−IL−4+)、またはCD4+IL−10+頻度について、以前に記載されているように細胞内サイトカイン検出およびフローサイトメトリーによってプロファイリングされた(Spellberg et al.,Infect.Immun.71:5756−5764(2003))。CaliBRITEビーズ(Becton Dickinson,San Jose,CA)によって校正されたBecton−Dickinson FACScan装置で、FACSCompソフトウェアを製造者の推奨に従って使用して、3色フローサイトメトリーが実施された。データ収集の間に、CD4+リンパ球は前方および側方散乱の連結、ならびにFITC抗CD4抗体蛍光特性によってゲートされた。各サンプルのデータは、10,000 CD4+リンパ球が分析されるまで収集された。結果は、Th1またはTh2細胞であったゲートされたすべてのリンパ球のパーセンテージの中央値+第1四分位値および第3四分位値として表される。
【0110】
足蹠浮腫は、Oomuraらの方法によって決定された(41)。簡潔には、マウスは適切な用量のrAls1p−NまたはCFA単独によって上述のように免疫化された。ブーストの2週間後、免疫化マウスのベースライン足蹠サイズは電子デジタルカリパスを使用して測定された。PBS 25μl中のrAls1p−N 50μgが右足蹠に注射され、PBSは単独で免疫化マウスの左足蹠に注射された。24時間後、足蹠は再度測定された。抗原特異性足蹠浮腫は、(24時間後の右足蹠厚さ−ベースラインの右足蹠厚さ)−(24時間後の左足蹠厚さ−ベースラインの左足蹠厚さ)として計算された。
【0111】
マウスの生存時間の相違を決定するために、非パラメトリックLog Rank検定が利用された。抗体の力価、Th1またはTh2リンパ球の頻度、および足蹠浮腫は必要に応じて、非パラメトリック複数比較ではSteel検定(Rhyne et al.,Biometrics 23:539−49(1967)によって、対応のない比較ではMann Whitney U検定によって比較された。相関はSpearman Rank sum検定によって計算された。反復生存研究に異質性が存在するかどうかを判定するために、Kolmogorov−Smirnov検定が利用された。P値<0.05は有意と見なされた。
【0112】
rAls1p−N免疫原の最も有効な用量を決定するために、10倍の用量範囲が評価された(マウス当たり20pg〜200μg)。メス退役繁殖BALB/cマウスは、rAls1p−N+アジュバント(CFA/IFA)またはアジュバント単独によって免疫化された。抗rAls1p−N抗体力価を決定するために、免疫化されたマウスはブーストの2週間後に採血された(下を参照)。マウスは次にC.アルビカンスの致死的接種材料(2x10出芽胞子)によって感染された。個々の実験が統計的異質性を示さなかったので、反復実験からの生存データは組合された(Kolmogorov−Smirnov検定によってp>0.05)。rAls1p−Nの20μg用量は感染マウスの25%の長期生存と、アジュバント単独と比較して全体的な生存の有意な延長をもたらした(Log Rank検定によってp=0.044、図1)。10倍高い(図15)または低い(データを示さず)用量のどちらも、アジュバント単独と比較して生存を有意に延長しなかった。これらの結果は、rAls1p−Nワクチンの中間用量がマウス播種性カンジダ症に対する防御を誘発したことを示す。
【0113】
上の発見は、rAls1p−Nワクチンの防御的用量を確立した。次にワクチンの有効性が、10個の分芽胞子によって感染したマウスのより迅速な致死モデルで評価された(未ワクチン接種マウスにおいて10個対2x10個の接種材料でそれぞれ生存中央値3対11日)。個々の実験の結果が統計的異質性を示さなかったので、再度、反復研究からのデータは組合された(Kolmogorov−Smirnov検定によってp>0.05)。20μg用量+CFAとして10個のC.アルビカンス分芽胞子によって感染したBalb/cマウスに投与されたとき、rAls1p−Nワクチンは生存中央値を倍以上に延長して、未ワクチン接種対照に対する全体的な生存の有意な延長をもたらした(Log Rank検定によってp=0.001、図16A)マウスの年齢がrAls1p−Nワクチンに対するその応答に影響したかどうかを判定するために、我々はそれは若年マウスで試験した。若年マウスが同じ高さの接種材料によってワクチン接種および感染されたときに、同様の生存上の利益が見出された(Log Rank検定によってp=0.02、図16B)。
【0114】
rAls1p−Nの200μg用量は20μg用量と比較して劣った防御をもたらしたが、抗原200μg用量のみが血清抗Als1p抗体力価の有意な上昇を誘発した(200μg用量対他のすべての群でp<0.005、図17)。抗Als1p抗体力価の有意な上昇は中間の防御抗原用量では検出されなかった(20μg対アジュバントでp=0.1)。個々のマウスの血清抗Als1p抗体力価が各マウスの生存時間に対してプロットされたときに、抗体力価と生存との間の相関は見出されなかった(R=0.03、Spearman rank sum検定によってp>0.05)。実際に、抗原の最高用量(200μg)によって免疫化されたマウスは1:100,000を超える抗rAls1p−N抗体力価を有するが、生存期間は、力価が検出限界より低かった(〜1:100)、より低い用量の抗原で免疫化されたマウスと変わらなかった。これらの結果は、rAls1p−Nワクチンによって誘発された防御が抗体力価と相関するように思えないことを示す。
【0115】
体液性免疫はrAls1p−N誘発防御と相関しなかったので、我々はrAls1p−Nの防御または非防御用量によって誘発された細胞媒介免疫応答について調査した。マウスは上記のように、rAls1p−N 0.2、20、または200μg、あるいはアジュバント単独によって免疫化された。ブーストの2週間後、脾細胞は収集され、Als1pを発現することが既知である加熱死させた予備出芽C.アルビカンスの存在下で培養された(Fu et al.,Molec.Microbiol.44:61−72(2002))。培養48時間後、フローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン検出のために脾細胞が収集された。抗原の防御20μg用量によって免疫化されたマウスからのリンパ球のみが、アジュバント単独を与えられたマウスと比較してTh1細胞の有意に増加した頻度を発生させた(p=0.03、図18)。Th2頻度(図18)または頻度IL−10Tリンパ球(データを示さず)の有意な相違は、アジュバントまたは抗原の用量のいずれかで免疫化されたマウス間で検出されなかった。
【0116】
1型免疫が生体内でrAls1p−Nによって刺激されたことを確認するために、遅延型過敏症が足蹠浮腫によって試験された。rAls1p−Nの防御20μg用量によってワクチン接種されたマウスのみが対照と比較して有意に上昇した遅延型過敏症反応を発生したが、この応答も非防御0.2および200μg用量によって誘発された応答よりも有意に高度であった(図19、非パラメトリックSteel検定によって、すべての比較対20μgでp<0.05)ひとまとめにして、これらの結果は、rAls1p−N抗原の防御用量が有意なTh1分極および遅延型過敏症反応を誘発したことを示す。
【0117】
ワクチン媒介防御における抗体およびT細胞の役割を定義するために、B細胞欠損、T細胞欠損ヌード、または類似遺伝子性BALB/c野生型対照マウスは、rAls1p−N20μg+アジュバントまたはアジュバント単独によって免疫化され、C.アルビカンスの致死的接種材料(8x10個の分芽胞子)に感染させた。アジュバント単独を与えた野生型対照マウスよりも、B細胞欠損マウスは感染に対して耐性である傾向があり、これに対してT細胞欠損マウスはより感受性であった(B細胞欠損およびT細胞欠損マウス対野生型アジュバント処置ではそれぞれp=0.065および0.01、図20)。最後に、rAls1p−NワクチンはB細胞欠損マウスでその有効性を維持したが(rAls1p−Nワクチン化対アジュバント単独ではp=0.04、図6)、T細胞欠損マウスでは無効であった(rAls1p−Nワクチン化対アジュバント単独ではp=0.4、図20)。これらの結果は、Als1pワクチンがB細胞欠損マウスで有効であるが、T細胞欠損ヌードマウスでは有効でないことを示す。
【0118】
このタンパク質のN末端による免疫化が、次の血行性播種性カンジダ症の間に若年および成熟BALB/cマウスの両方の生存を改善したことを示す結果は、上述の通りである。特にrAls1p−Nの中間量(20μg)は、より低い用量およびより高い容量(200μg)の両方と比較して優れた防御を与えた。それにもかかわらずrAls1p−Nの非防御200μg用量は、防御20μg用量と同様に抗体の100倍高い力価を誘発するため、免疫原性であった。
【0119】
rAls1p−Nの最高用量にてより低い防御の逆U字形用量−応答有効性曲線は、体液性免疫と抗原の所与の用量による細胞媒介免疫との間の反比例関係を最初に記載したParishらの古典的研究を連想させる。Parishの根本的なデータに照らして、逆U字形用量−応答有効性曲線は:1)ワクチン有効性が細胞媒介免疫に依存する場合に、2)rAls1p−Nの中間用量が高い抗体刺激用量と比較して優れた細胞媒介免疫を刺激した場合に説明されうる。我々はしたがって、rAls1p−Nワクチンによって見られる逆U字形用量−応答有効性曲線が、抗原の防御的中間用量による細胞媒介免疫の優れた誘発によるものであると仮定した。
【0120】
この仮定を試験するために、抗原の高、中、および低用量がTh1細胞を刺激する能力および遅延型過敏症が判定された。脾細胞からのサイトカイン産生を刺激するために、我々は特に、感染中の生体内状況を模倣するためにrAls1p−Nの代わりに加熱死C.アルビカンスへの暴露によって細胞を活性化した。防御20μg用量のみが、C.アルビカンス刺激脾臓Th1リンパ球の頻度を有意に向上させた。生体外C.アルビカンス刺激脾細胞で見られたTh1細胞の頻度は、マウスの播種性カンジダ症の間に生体内で検出された頻度と同様であり(59)、この手法の妥当性を強調した。
【0121】
検出された生体外Th1細胞が生体内で機能的に有意であるかどうかを判定するために、我々は異なる用量のrAls1p−N免疫化によって誘発された遅延型過敏症を比較した。Th1細胞の頻度と一致して、rAls1p−Nの防御20μg用量のみが、有意な生体内遅延型過敏症反応を刺激した。これらの結果は、ワクチン誘発防御が1型細胞媒介免疫の誘発によるものであったという仮説と一致している。驚くべきことに、rAls1p−Nの200μg用量によって顕著に上昇された抗体力価の誘発にもかかわらず、我々はこの用量でワクチン接種されたマウスで脾臓Th2リンパ球の増加を見出さなかった。1つの考えられる説明は、Th2細胞が脾臓ではなく末梢リンパ節で活性化されたことである。あるいは他のT細胞集合(たとえばNKT細胞)が、rAls1p−Nの200μg用量に応答して見られる高い抗体力価の誘発の原因かもしれなかった。
【0122】
抗体力価と防御との間の相関の欠如は、ワクチン誘発防御の媒介における抗体の役割を完全に除外しなかった。たとえばELISA力価は、各種の特異性および親和性を持つ抗体の計数の結果である。したがって、ワクチン媒介防御に関与した抗体の小規模なサブセットが産生される可能性は抗体力価を測定することによって排除できなかった。細胞媒介免疫および非体液性免疫のrAls1p−Nワクチン媒介防御における役割を確認するために、我々はB細胞およびT細胞欠損マウスでのワクチンの有効性を試験した。B細胞欠損マウスは野生型対照よりも播種性カンジダ症に対して耐性である傾向があり、ワクチンの有効性はB細胞欠損マウスでは抑制されなかった。これに対してT細胞欠損マウスは、野生型対照よりも播種性カンジダ症に感受性であり、ワクチンの有効性はT細胞欠損マウスで消失していた。したがって我々の発見は、rAls1p−Nワクチンの有効性が、主に体液性免疫でなく、T細胞媒介免疫の誘発に依存することを確認する。同様にB細胞欠損マウスは類似遺伝子性野生型同腹子よりも播種性カンジダ症に感受性でないため、このモデルにおいて抗体は播種性カンジダ症に対して支配的なエフェクタではない。
【0123】
要するに、我々は、新規なrAls1p−Nワクチンが、体液性免疫よりむしろ細胞媒介免疫を誘発することによって実験的な播種性カンジダ症に対する防御を媒介することを報告する。したがってrAls1p−Nワクチンの中程度の防御効果の向上は、最適化されたアジュバントおよび/またはサイトカインを使用する細胞媒介免疫の追加の初回刺激、あるいは代わりの免疫経路によって達成されうる。実際に、我々の進行中の研究において、我々はすでに、rAls1p−Nを腹腔内と比較して皮下的に投与することによる有効性の顕著な向上を見出している。
【0124】
実施例VIII
抗カンジダ・アルビカンスrAls1p−Nワクチンは、真菌負荷を低下させ、免疫適格および免疫不全マウスの両方で生存を改善する
本実施例は、免疫適格および免疫不全マウスの両方で皮下(SQ)経路によって投与したときに、実施例VIIに記載したrAls1p−Nワクチンの有効性の向上について記載する。最初に免疫適格マウスにおけるrAls1p−Nワクチンの有効性。
全長タンパク質のアミノ酸19〜433を含むrAls1p−NがS.セレビシエにおいて産生され、上述のように精製された。対照調製物は、空のプラスミドによって形質転換されたS.セレビシエから同様に精製された。BALB/c退役繁殖マウス(25〜30g)は第0日にrAls1p−N(20μg)またはフロイント完全アジュバント(CFA)と混合した対照調製物のSQ注射によって免疫化され、第21日に不完全フロイントアジュバント(IFA)中のブースター用量が続けられた。ブーストの2週間後、ワクチンの免疫原性は、足蹠浮腫反応の強度を遅延型過敏症(DTH)のマーカーとして前に記載したように評価することによって確認された。ワクチン化マウスは、rAls1p−N特異性DTHの顕著な上昇を有していた(図21)。
【0125】
rAls1p−Nワクチンの有効性は、感染BALB/cマウスでの生存に対するrAls1p−Nワクチン接種の影響を判定することによって評価された(図22A)。ワクチン接種または対照マウスは、尾静脈を介してC.アルビカンスの迅速な致死的接種材料(2.5〜5x10個の分芽胞子)によって感染した。我々は以前に、そのような接種材料に感染したマウスが圧倒的な敗血症性ショックで死亡することを示した(Spellberg et al.,J.Infect.Dis.In press(2005))。ワクチン接種は死までの時間を顕著に延長し(Log Rank検定によって両方の接種材料でp<0.05)、30日生存を改善した(50〜57%対0%、FisherのExact検定によって両方の接種材料でp<0.05)。
【0126】
血行性播種性カンジダ症の間のワクチン接種の組織真菌負荷に対する影響が次に決定された。ブーストの14日後、ワクチン接種および対照BALB/cマウスは尾静脈を介してC.アルビカンスSC5314の5x10個の分芽細胞によって感染した。感染の6日後、対照群での最初の死の開始前に、腎臓が収集、ホモジナイズ、およびSabouraudデキストロース寒天(Difco)中で定量的に培養された(18)。rAlslp−NによるSQワクチン化は、対照と比較して中央値1.5log CFU/gの腎臓真菌負荷低下をもたらした(Wilcoxon Rank Sum検定によってp=0.01、図22B)。
【0127】
rAlslp−Nの有効性も免疫不全マウスで評価された。免疫適格性マウスでの有効性が証明され、好中球減少マウスで免疫を誘発させて、好中球減少マウスを播種性カンジダ症から防御するrAlslp−Nワクチンの可能性も評価された。ワクチン接種BALB/cマウスは、シクロホスファミドの投与によって好中球減少性とされた(第−2日に200mg/kg ip、および感染に対して第+9日に100mg/kg ip、記載したように約12日間の好中球減少症を生じた(Sheppard et al.,Antimicrob.Agents.Chemother.48:1908−11(2004))。足蹠浮腫反応はシクロホスファミドの最初の用量の2日後に実施された。ワクチン処理された好中球減少マウスは、免疫適格マウスと同じ大きさのDTH反応を発生した(図23A対1、並行して実施された実験)。C.アルビカンスの2.5x10個の分芽胞子によって尾静脈を介して感染した好中球減少マウスでは、ワクチン接種は死までの時間(Log Rank検定によってp=0.007対対照)、中央値生存時間(21>対12日、Wilcoxon Rank Sum検定によってp=0.008)、および全体の生存(88%対38%、FisherのExact検定によってp=0.005)での有意な改善も生じた(図23B)。
【0128】
粘膜感染でのrAlslp−Nワクチン接種の有効性を判定するために、ワクチンはマウス口腔咽頭カンジダ症(OPC)モデルで試験された(Kamai et al.,Infect.Immun.70:5256−8(2002)およびKamai et al.,Antimicrob.Agents Chemother.45:3195−97(2001))。ワクチン接種マウスは、コルチゾンアセテートによって処置して(感染に対して第−1、1、および3日に225mg/kg SQ)、記載したように舌下感染させた。舌は感染後第5日に切除された。ホモジナイズされた舌のコロニー形成単位が侵入感染と表面付着コロニー形成とで区別できないので、我々は組織病理学によって侵入の程度を評価した。盲検観察者(blinded observer、BJS)は、舌の長さ全体に沿ってスキャンして、40x高倍率視野(0=病巣なし、1=軽度の粘膜炎症、2=上皮に限定された有意な炎症、3=上皮層全体を通じて広がる炎症、4=上皮下組織内へ広がる炎症)により真菌病巣の重症度を定量することによって各切片を評価した。サンプリングの偏りを回避するために、少なくとも5個の介入組織切片によって隔てられた各舌の2個の切片が評価された。すべての対照マウスは、多くの位置でその舌の顕著な真菌侵入を発生したが、2匹のワクチン接種マウスのみが何らかの舌病巣を発生した。全体で対照マウスの舌当たりの病巣の中央値数(第3、第1四分位値)は、ワクチン接種マウスの1(2.5、0)と比較して、6.5(8、5.75)であった(Wilcoxon Rank Sum検定によってp=0.03)。感染の重症度の半定量的評価は、対照と比較したワクチン接種マウスでの有意な低下を示した(図24、Wilcoxon Rank Sum検定によってp=0.03)。
【0129】
粘膜感染でのrAls1p−NまたはrAls3p−Nワクチン接種の有効性を判定するために、膣コロニー形成のマウスのモデルにおけるこれらの2つのワクチン(Clemons et al.,Infect.Immun.72:4878−80(2004);Fidel.Int Rev Immunol.21:515−48(2002)およびWozniak et al.,Infect Immun.70:5790−9(2002))ワクチン接種マウスは感染に対して第−3日にエストロゲン(30μg、SQで投与)によって処置され、次に膣へC.アルビカンスの分芽胞子10個を含有するリン酸緩衝生理食塩水10μlによってチャレンジされた。膣は接種後第3日に切除され、ホモジナイズされて、連続希釈液をYPDプレート上にプレーティングした。コロニー形成単位(CFU)は30〜35℃でのプレートのインキュベーションの24〜48時間後に数えられた。rAls1p−Nでワクチン接種されたマウスから収集した膣ではなく、rAls3p−Nでワクチン接種されたマウスから収集した膣は、対照マウス(すなわちCFA単独でワクチン接種されたマウス)から収集した膣よりも低いCFUを有していた(図25、Wilcoxon Rank Sum検定によってp=0.01)。
【0130】
カンジダ血症の上昇する発生率およびその継続している高い死亡率に照らして、カンジダ種に対するワクチンの開発は非常に重要である。上に記載した結果は、rAls1p−NによるSQワクチン接種が生存での顕著な改善および真菌負荷での有意な低下を、免疫適格および免疫不全マウスの両方において、そうでなければ迅速な致死性の血行性播種性カンジダ症の間に生じたことを示している。興味深いのは個々のワクチン接種マウスからの腎臓真菌負荷であり、マウスの約半分が5log CFU/gで腎臓真菌負荷を有したことを示している。我々は以前に、致死性感染を示す腎臓真菌負荷の閾値が5log CFU/gであることを見出している;このレベルより上の腎臓真菌負荷を持つマウスは通例感染から死亡するのに対して、この負荷よりも低い腎臓真菌負荷を持つマウスは感染を生き延びる(Spellberg et al.,J.Infect.Dis.In press(2005)および(Spellberg et al.,Infect.Immun.71:5756−5764(2003))。したがってワクチン接種群での破綻的死は、ワクチン接種にもかかわらず高い真菌負荷を反映すると思われる。組織真菌負荷のマウス間での変動は、宿主病原体相互作用および/または可変性のワクチン応答性の複雑さを反映しうる。
【0131】
要約すれば、rAls1p−Nワクチンは、ますます一般的であり、高致死性播種性カンジダ症の処置、重症度の低下および/または予防に使用されうる。ワクチンは免疫適格マウスで有効であり、有効性は好中球減少およびコルチコステロイド処置宿主においてさえ維持される。最後にワクチンは、膣および口腔咽頭カンジダ症を含む粘膜性カンジダ症を防御しうる。
【0132】
実施例IX
S.アウレウス感染に対するALSワクチンの有効性
本実施例は、C.アルビカンスからのAlsタンパク質がS.アウレウスに感染した動物モデルの生存を改善することを示す。
【0133】
C.アルビカンスのAlsアドヘシンは、S.アウレウスのアドヘシンに対して著しく相同性であることが同定された。この特徴はAlsアドヘシンを使用してS.アウレウスに対する有効なワクチンを設計および施用するために使用された。簡潔には、C.アルビカンスALSファミリーは、少なくとも9つの遺伝子より成る(Hoyer et al.,Genetics 157:1555−67(2001);Hoyer LL.,Trends Microbiol.9:176−80(2001))。前に記載されているように、Alsタンパク質は、生物学的に関連する基質に対してアドヘシンとして機能する(Fu et al.,Molec.Microbiol.44:61−72(2002);Gaur and Klotz,Infect.Immun.65:5289−94(1997);Zhao et al.,Microbiology 150:2415−28(2004);Oh et al.,Microbiologyl5l:673−81(2005);Zhao et al.Microbiology 151:1619−30(2005));Hoyer et al.,Mol.Microbiol.15:39−54(1995))。特にAls1pおよびAls3pのN末端は、コラーゲン結合タンパク質およびクランピング因子を含む、病原性S.アウレウスによって発現された表面タンパク質に著しく相同性である(表IV;Sheppard et al.J Biol.Chem.279:30480−89(2004))。
【0134】
【表4】

上の表IVに与えた相同性の計算は、配列アラインメントおよび三次元表面構造の両方の特徴を考慮する。Als1pの相同性は、S.アウレウスのコラーゲン結合タンパク質またはクランピング因子と比較して95%または90%を超えると計算された(r≧90%;Sheppard et al.,同上)。同様に、Als3pの相同性は、S.アウレウスのコラーゲン結合タンパク質またはクランピング因子と比較して95%または80%を超えると計算された(r≧90%)。
【0135】
上の発見を裏付けるために、相同性およびスレッディング方法を利用して、Als1pおよびS.アウレウスクランピング因子A(ClfA−PDBコード:cln67A)の間に構造−機能一致をモデル化した。これらの方法は、一次構造、3D高次構造での特異的相同性を評価し、類似機能モチーフを探すためにパターン解析が実施された。たとえばBLASTP、PROSITEおよびJALVIEW法は、ALS対ClfA一次構造の類似性および相違を解析するために利用された(Yount et al.Antimicrob.Agents Chemother.48:4395−4404(2004)およびYount and Yeaman.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:7363−7368(2004))。次に3D PSSMを含むインターネットベースのアプリケーションを使用して、さらなる解析のために潜在的なALSホモログが優先順位付けされた(Sheppard,et al.J.Biol.Chem.279:30480−30489(2004))。得られたデータと共に、PHYREアプリケーション(Kelley,L.,R.Bennett−Lovsey,A.Herbert,and K.Fleming;ウェブサイトは次の通りである:http://www.sbg.bio.ic.ac.uk/〜phyre/)を使用して、トポロジーマッピングが実施され、推定上の共有機能モチーフを同定する目的で、選択されたALSタンパク質に対して最大の構造的および機能的相同性を備えたタンパク質によって共有される三次元モチーフが同定された。上の方法はパブリックドメインで幅広く利用可能であり、多種多様のプロテオミクスおよび構造生物学用途で使用されている。上の相同性およびスレッディング法の結果に基づいて、Als1pとClfAとの間の機能性部位相同性のコンセンサスが生成され、ClfAに構築されたAls1pモデルの特異的残基にマップされた。これらのモデル化解析から生じた複数の特定の発見が下で述べられる。
【0136】
第一に、Als1pとClfAのN末端領域間で、特にアミノ酸30〜300(すなわち両方のタンパク質のN末端)によって含まれる領域において、二次構造およびアミノ酸保存の著しい相同性が同定された。
【0137】
第二に、確立されたClfAアドヘシン決定基に基づく相同性機能性部位のコンセンサスマッピングは、Als1pの特異的トポロジーモチーフに集中した。このトポリジーモチーフは図26に、2つのβシートドメインの隣接面の屈曲によって形成された間隙として示されている。
【0138】
第三に、一次構造相同性と一致して、Als1p内の予測された機能性間隙モチーフは、アミノ酸残基30〜300を含むN末端領域内の超可変領域から生じる特異的残基にマップする。
【0139】
これらの結果は、一致した生物機能の構造的基礎はもちろんのこと、Als1pおよびClfaに対する免疫応答を与えた。これらの結果もさらに、我々のAls1p構造活性の全体モデルを裏付け、突然変異解析およびエピトープマッピングへの標的化手法をさらに促進する。最後にこれらの結果は、Als1pおよびClfAが、多様な微生物病原体に存在する類似構造および機能のアドヘシンであることを示す。
【0140】
C.アルビカンスによって引き起こされた感染を低減しうる、S.アウレウスに対するモノクローナル抗体も同定された。上の構造的発見と同様に、この特徴もAlsアドヘシンを使用してS.アウレウスに対する有効なワクチンを設計および施用するために使用された。
【0141】
簡潔には、S.アウレウスの表面アドヘシンを認識することが既知であるヒト化抗スタフィロコッカスモノクローナル抗体(Aurexis(登録商標))は現在、臨床試験中である。このモノクローナル抗体もAlsファミリーメンバーと交差反応する。スタフィロコッカス血流感染の処置のためのAurexis(登録商標)の第二相臨床試験の好ましい結果が報告されている(Inhibitex Inc.,2005;2005年9月19日にhttp://phx.corporate−ir.net/phoenix.zhtml?c=l76944&p=irol−newsArticle&ID=707322&highlight=にてアクセスされた)。簡潔には本報告において、血中に既知のS.アウレウスを持つ患者にAurexis(登録商標)抗体が活動性感染のための処置として投与された(すなわちこれは活性ワクチン方法または予防研究ではない)。プラセボを与えられた患者9名は、カンジダによって引き起こされた破綻的な血流感染を経験したのに対して、Aurexis(登録商標)群では患者3名のみがカンジダ血流感染を経験した。S.アウレウスに対する抗体によって処置された患者でのカンジダ血液感染の低下を認識することは、上の相同性および構造上の発見と組合されて、免疫原性エピトープがカンジダとS.アウレウスとの間で共有されることと、これらの免疫原性エピトープが、他の種の処置のために1つの種に対して産生された免疫応答、抗体またはエフェクタ機構を使用して治療的利益へ標的化されうることとを示している。したがって上のデータは共に、カンジダ種と交差反応するS.アウレウスの表面アドヘシンに対する免疫応答を与える。
【0142】
上の方法に従って、S.アウレウスに感染したマウスの生存を改善するための例示的なAlsアドヘシンワクチンが設計され、示されている。ワクチン化するために使用された例示的なAlsアドヘシンは、rAls1p−NまたはrAls3p−Nであり、上述のように産生および使用された。簡潔には、カンジダに対するこれらのAlsワクチン、rAls1p−NおよびrAls3p−NがS.アウレウスに対する種間防御を媒介しうるかどうかを判定するために、メスBalb/cマウスが前に記載された投与計画によってワクチン接種された(第0日に完全フロイントアジュバント+rAls1p−NまたはrAls3p−N 20μg、続いて3週間後に不完全フロイントアジュバントのブースター用量、どちらも皮下的に投与された)。ワクチン接種の2週間後、マウスは尾静脈を介して、メチシリン耐性であり、動物モデルで毒性であることが既知であるS.アウレウス菌株67−0の致死用量で感染させた。マウス生存を示す結果を表26に示す。示したように、rAls1p−NおよびrAls3p−Nワクチンの両方がこれらの感染マウスでの長期生存を改善した(図27)。加えて、Ab力価とrAls1p−NおよびrAls3p−Nのどちらかによってワクチン接種されたマウスの生存との間に相関がないため、防御の機構は、Th2よりもむしろTh1の向上であると思われる(図28)。
【0143】
実施例X
抗カンジダrAls1p−Nワクチンが、播種性カンジダに対する広範囲に亘る防御を媒介する
本実施例は、rAls1p−Nワクチンが非近交系マウスを播種性カンジダ症から防御し、Balb/cマウスをC.アルビカンスおよび非アルビカンスカンジダの他の毒性菌株から防御することを示す。
【0144】
現在の研究は、C.アルビカンスの他の菌株に対する、そしてカンジダの非アルビカンス種に対する、フロイントアジュバント以外の第二のアジュバントと組合された、非近交系マウスでのその有効性を特に評価することによる、rAls1p−Nによって誘発された防御の幅を例示するために実施された。
【0145】
rAls1p−Nによるワクチン接種は、非近交系マウスを播種性カンジダ症から防御した。簡潔には、非近交系CD1マウスはNational Cancer Institute(Bethesda,MD)から入手した。マウスを含むすべての手順は、動物の飼育および保管のための国立衛生研究所ガイドラインに従って、研究機関の動物管理使用委員会によって承認された。マウスは以前に上で、そしてたとえばIbrahim et al.,Infect.Immun.73:999−1005(2005);Spellberg et al.,Infect.Immun.73:6191−93(2005)に記載されたようにrAls1p−N+フロイントアジュバントによってワクチン接種された。rAls1p−N(Als1pのアミノ酸17〜432)はS.セレビシエにおいて産生され、ゲル濾過およびNi−NTAマトリクス親和性精製によって精製された。高度の純度(≒90%)はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によってはもちろんのこと、上述のように円偏光二色性およびFTIRによっても、上で、そしてたとえばSheppard et al.,J Biol Chem 279:30480−89(2004)に記載されたように確認された。マウスは、第0日にフロイント完全アジュバント(CFA;Sigma−Aldrich, St.Louis,MO)と混合されたrAls1p−N(20μg)のSQ注射によって免疫化され、第21日に不完全フロイントアジュバント(IFA;Sigma−Aldrich)中のブースター用量が続けられた。対照マウスはCFA/IFA単独で免疫化された。ブーストの14日後、免疫化マウスは、我々が以前にIbrahim et al,(2005)同上;およびSpellberg et al.(2005),同上に記載したように、C.アルビカンスSC5314によって尾静脈を介して感染させた。Balb/cマウスでの我々の以前の結果と同様に、rAls1p−Nワクチンは感染CD1マウスの生存を顕著に改善した(図29A)。
【0146】
フロイントアジュバントはヒトでの使用にはあまりに毒性が強いと見なされているので、我々は、ヒトでの使用に現在、米国食品医薬品局(FDA)によって唯一承認されているワクチンアジュバントであるミョウバン(2% Alハイドロゲル、Brenntag Biosector,Frederikssund,Denmark)中のrAls1p−Nの用量応答を実施した。ミョウバンによるワクチン接種は、フロイントアジュバントと同一のスケジュールで実施し、第1日に免疫化、第21日にブースト、2週間後に感染であった。我々は、ミョウバンと組合せたrAls1p−Nの高用量が播種性カンジダ症のマウスの生存に有意な改善を生じることを見出した(図29B)。ミョウバンと組合わせたときにrAls1p−Nの高用量での改善された生存との傾向との、用量応答関係があるようにも思われる。
【0147】
rAls1p−Nワクチンは、C.アルビカンスの複数の菌株に感染したBalb/cマウスの生存も改善することが示された。特に有用なワクチンは、標的病原体の複数の菌株を認識する免疫系を初回刺激できる免疫原を利用する。DNA配列解析によって、我々は、血流(5菌株)、尿(5菌株)および口腔咽頭(10菌株)感染からの臨床C.アルビカンス単離菌の多様な群の中で、Als1pのN末端領域の予測されたアミノ酸配列が99.9%保存されたことを見出した(データを示さず)。これらの結果は、rAls1p−Nワクチンが多岐に亘るC.アルビカンス菌株に対して有効でありうることを示した。C.アルビカンスの他の菌株に対するrAls1p−Nワクチンの防御の幅を確認するために、マウスはrAls1p−N+フロイントアジュバントによって上のようにワクチン接種され、C.アルビカンスの複数の臨床単離菌の1つによって感染させた(Ibrahim et al.,Infect Immun 63:1993−98(1995))。図30に示すように、rAls1p−Nワクチンはこれらの菌株のそれぞれによって感染させたマウスの生存を有意に改善した。
【0148】
rAls1p−Nワクチンは、カンジダの複数の非アルビカンス種によって感染させたマウスで組織真菌負荷を低下させることも示された。簡潔には、ALS遺伝子ファミリーは、C.ドゥブリニエンシスおよびC.トロピカリスを含む他のカンジダ種に存在する。(Hoyer et al.,Genetics 157:1555−67(2001))。同様に、Alsファミリーメンバーに類似したアドヘシンはC.グラブラータに記載されている(Cormack et al.,Science 285:578−82(1999); Frieman et al.,Mol Microbiol 46:479−92(2002))。非アルビカンス種に対するrAls1p−Nの有効性を確認するために、Balb/cマウスはrAls1p−N+フロイントアジュバントによって上のようにワクチン接種され、尾静脈を介してC.グラブラータ31028(Harbor−UCLA Medical Centerの微生物研究所からの臨床血流単離菌)、C.クルセイ91−1159(Michael Rinaldi,San Antonio,Texasにより寄贈)、C.パラプシローシス(Harbor−UCLA Medical Centerからの臨床血流単離菌)、またはC.トロピカリス(Harbor−UCLA Medical Centerからの臨床血流単離菌)によって感染させた。図31に示すように、rAls1p−Nワクチンはこれらの菌株のそれぞれによって感染されたマウスの腎臓真菌負荷を低下させた。
【0149】
要約すれば、rAls1p−Nワクチンは、ますます一般的であり、高致死性播種性カンジダ症を予防する、および/またはその重症度を低下させることができる。ワクチンは、アジュバントとしてのミョウバンと混合したときに、同系および非近交系マウスの両方で、C.アルビカンスの複数の菌株に対して、そしてカンジダの複数の非アルビカンス種に対して有効である。これらの結果はさらに、本発明のALSワクチンが多岐に亘るカンジダおよび他の感染に対して有効であることを裏付けている。
【0150】
実施例XI
抗カンジダrAls3p−Nワクチンは、播種性カンジダ症に対してrAls1p−Nと同等に有効であり、そして粘膜カンジダ症に対してより有効である。
【0151】
本実施例は、血行性播種性、口腔咽頭、および膣カンジダ症のマウスモデルにおけるrAls1p−Nに対するrAls3p−Nの有効性を比較する。
ALSファミリーメンバーの中で、ALS1およびALS3遺伝子は、最も多岐に亘る基質親和性を備えたアドヘシンをコードする。相互に比較したとき、Als1pは内皮細胞およびゼラチンに対してより大きい付着力を媒介したが、内皮細胞に対しては劣った付着力を媒介した(Sheppard et al.,J Biol Chem 279:30480−89(2004))。付着品質におけるこれらの相違は、rAls3p−NがrAls1p−Nと比較してワクチン免疫原として異なる有効性を有しうることを示唆した。
【0152】
ワクチンおよびワクチン接種は、上述のように実施された。簡潔には、上で、そしてIbrahim et al.,(2005),同上;Spellberg et al.,(2005),同上)に記載されているように、rAls1p−NおよびrAls3p−N(Als1pまたはAls3pのアミノ酸17〜432)は、S.セレビシエ内で産生され、ゲル濾過およびNi−NTAマトリクス親和性精製によって精製された。タンパク質の量は改良Lowryアッセイによって定量された。高度の純度(≒90%)はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によってはもちろんのこと、上述のように円偏光二色性およびFTIRによっても、上でIbrahim et al.,(2005),同上;Spellberg et al.,(2005),同上)に記載されているように確認された。マウスは、完全フロイントアジュバント(CFA、Sigma−Aldrich,St. Louis,MO)と混合されたrAls1p−NまたはrAls3p−N20μgの皮下(SQ)注射によって第0日に免疫化され、不完全フロイントアジュバント(IFA、Sigma−Aldrich)を含む抗原の別の用量によって第21日にブーストされ、ブーストの2週間後に感染した。
【0153】
統計的分析は下のように実施された。マウスの生存時間の相違を決定するために、非パラメトリックLog Rank検定が利用された。抗体の力価および足蹠浮腫は必要に応じて、非パラメトリック複数比較ではSteel検定(Rhyne et al.,Biometrics 23:539−49(1967)によって、対応のない比較ではMann Whitney U検定によって比較された。相関はSpearman Rank検定によって計算された。反復生存研究に異質性が存在するかどうかを判定するために、Kolmogorov−Smirnov検定が利用された。P値<0.05は有意と見なされた。
【0154】
rAls3p−Nによるワクチン接種は、rAls1p−Nとの比較でより多岐に亘る抗体応答を刺激することが示された。この点で、図32に示した結果は、CFA+rAls1p−NまたはrAls3p−Nによってワクチン接種されたマウスが、CFA単独を与えられたマウスよりも有意に高い抗体力価を発生したことを示す。注目すべきことに、rAls3p−Nでワクチン接種されたマウスは、rAls1p−Nでワクチン接種されたマウスと同等の力価で抗rAls1p−N抗体を産生した(図32、上)。これに対して、rAls1p−Nでワクチン接種されたマウスは、rAls3p−Nでワクチン接種されたマウスよりも、rAls3p−Nに対して低い力価を産生した(図32、下)。しかしながらrAls1p−NおよびrAls3p−Nの両方が、図33に示したように生体内で同様の遅延型過敏症応答を生じた。
【0155】
rAls1p−NおよびrAls3p−Nワクチンは、播種性カンジダ症に対して同様の有効性を媒介することも示されている。簡潔には、rAls3p−Nワクチンが血行性播種性カンジダ症に対してrAls1p−Nほど有効であったことを裏付けるために、マウスはCFA、CFA+rAlslp−N、またCFA+rAls3p−Nによってワクチン接種され、次に尾静脈を介してC.アルビカンスに感染された。図34に示す結果は、rAls1p−NおよびrAls3p−Nワクチンの両方が生存にて有意な改善を生じたことを示している。
【0156】
抗Alsp抗体力価および遅延型過敏症反応と、次にC.アルビカンスに感染されたワクチン接種マウスの生存との相関も決定された。簡潔には、抗体力価は、我々が以前に、そしてIbrahim et al.,(2005),同上;Spellberg et al.,(2005),同上に記載したように、96ウェルプレートでのELISAによって決定された。ウェルは、ウェルごとにPBS中の5μg/mlrAls1p−NまたはrAls3p−N 100μlによってコーティングされた。マウス血清は室温にて1時間インキュベートされ、3%ウシ血清アルブミンを含有するtris緩衝生理的食塩水(TBS)(0.01M TrisHCl、pH7.4、0.15M NaCl)を用いた遮断ステップが続いた。ウェルは、0.05% Tween 20を含有するTBSによって3回洗浄され、Tweenを含まないTBSによるさらに3回の洗浄が続いた。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Sigma−Aldrich)によってコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG二次抗体は最終希釈度1:5000で添加され、プレートはさらに室温にて1時間インキュベートされた。ウェルはTBSによって洗浄され、0.1Mクエン酸緩衝剤(pH5.0)、50mg/ml o−フェニレンジアミン(Sigma)、および30% H 10μlを含有する基質によってインキュベートされた。色を30分間展開させて、その後、10% HSOを添加することによって反応が停止され、光学密度(OD)がマイクロタイタープレートリーダーで490nmにて決定された。負の対照ウェルは無関係の抗体を与えられ、最終OD読取値を得るためにバックグラウンド吸収が試験ウェルから引かれた。ELISA力価は、正のOD読取値(すなわち>負の対照サンプルの平均OD+(標準偏差2))を与えた最後の血清希釈度の逆数として解釈された。
【0157】
遅延型過敏症反応は、足蹠浮腫を測定することによって評価された。簡潔には、マウスはrAlslp−N、rAls3p−N、またはCFA単独によって免疫化された。ブーストの2週間後、免疫化マウスのベースライン足蹠サイズは電子デジタルカリパスを使用して測定された。PBS 25μl中のrAls1p−NまたはrAls3p−N 50μgが右足蹠に注射され、PBSは単独で免疫化マウスの左足蹠に注射された。24時間後、足蹠は再度測定された。抗原特異性足蹠浮腫は、(24時間後の右足蹠厚さ−ベースラインの右足蹠厚さ)−(24時間後の左足蹠厚さ−ベースラインの左足蹠厚さ)として計算された。
【0158】
ワクチン接種マウスは、力価決定のために採血され、感染の2日前に足蹠浮腫試験を受けさせられた。それにもかかわらず感染を生き延びなかったワクチン接種マウスは、図35に示すように多岐に亘る抗体力価を有した。多くのそのようなマウスは、≧1:50,000(≧4.5log10)の抗rAls1p−Nおよび抗rAls3p−N抗体力価を有する。結果として、抗体力価は生存と有意に関連しなかった。これに対して、足蹠浮腫反応の強度は生存と関連しなかった(図35、Spearman Rank相関検定によりp=0.6&p=0.009)。
【0159】
rAls3p−Nワクチンは、粘膜カンジダ症の2つのモデルにおいてrAls1p−Nより高い有効性も示した。Als3pはAls1pと比較して上皮細胞への優れた接着を媒介するので、この観察はrAls3p−Nが感染の粘膜モデルで独自の有効性を呈しうることを示す。rAls3p−Nと比較されたrAls1p−Nの有効性は、感染のステロイド処置口腔咽頭モデルおよびカンジダ膣縁のモデルで評価された。
【0160】
簡潔には、上のマウス口腔咽頭カンジダ症(OPC)モデルでのワクチン研究は、前に記載したように、そしてSpellberg et al.,(2005),同上;Kamai et al.,Antimicrob Agents Chemother 45:3195−57(2001)、およびKamai et al.,Infect Immun 70:5256−58(2002)に記載されているように実施された。ワクチン接種マウスは、コルチゾンアセテートによる処置(感染に対して第−1、1、および3日に225mg/kg SQ)によって免疫不全化された。感染の日に、マウスは1kg当たりキシラジン8mgおよびケタミン110mgによる腹腔内注射によって麻酔された。カルシウムアルギナート尿道スワブは、それらを30℃のHBSS中1ml当たり10個の生物の懸濁物にそれらを入れることによって、C.アルビカンスで飽和された。飽和されたスワブをマウスの口腔内で舌下に75分間置いた。感染の5日後、舌および舌下組織は切除、秤量、ホモジナイズされ、次に定量的に培養されて口腔真菌負荷が決定された。
【0161】
マウス膣カンジダ症に対するワクチンの有効性は、偽発情を誘発するために、ラッカセイ油に溶解させた皮下エラストラジオールバレレート30μg(どちらもSigma−Aldrichより)で処置されたメスBalb/cマウスに感染に対して第−3日にワクチン接種することによって実施された感染の日に、マウスはケタミン100mg/kgのip投与によって鎮静させた。鎮静マウスは、HBSS 10μl中のC.アルビカンスの10個の分芽胞子によって膣内感染された。感染後第3日に、膣および各子宮角の約1センチメートルはアン・ブロック(en block)切除、ホモジナイズ、および定量的に培養された。
【0162】
図36に示すように、口腔咽頭カンジダ症のコルチゾン処置マウスにおいて、rAls1p−Nは、舌真菌負荷低下への強い傾向を媒介した(p=0.054)。利益の全体の規模は<0.3logCFU/グラムであった(図36)。比較して、rAls3p−Nワクチンは、統計的に有意である舌真菌負荷の>0.6logCFU/グラムを媒介した(p=0.005、図36)。同様にカンジダ膣炎の非免疫不全モデルにおいて、図37に示すように、rAls3p−Nワクチンは、CFA単独に比較して膣真菌負荷の0.7logCFU/グラムを媒介した(p=0.02)。比較して、rAls1p−Nは、膣炎モデルにおいて利益を全く媒介せず、rAls3p−NはrAls1p−Nよりも有意に有効であった(p=0.01)。
【0163】
上の結果は、rAls1p−Nにアミノ酸レベルで85%相同性であるrAls3p−Nに基づくワクチンは、播種性カンジダ症に対して同等に有効であるが、粘膜感染に対してrAls1p−Nよりも有効であったことを示す。rAls3p−Nの有効性の上昇は、口腔咽頭カンジダ症のステロイド処置モデルおよびカンジダ膣炎の免疫適格モデルの両方で見られる。上の結果は、非補助的抗真菌療法によるカンジダ敗血症性ショックのマウスモデルにおける≧50%長期生存の達成が有望であり、本発明の全ALSワクチンの治療的利益を裏付けることを示している。
【0164】
抗体力価は、播種性カンジダ症の間のどちらのワクチンの防御効果と相関しないが、生体内での遅延型過敏症の誘発は防御と関連していた。これらのデータは、ワクチン誘起防御の機構は、真菌に対する1型細胞媒介免疫の誘起であったこともさらに裏付ける。rAls1p−NおよびrAls3p−NはどちらもrAls1p−Nに対する抗体の等価の力価を誘発したが、そのrAls3p−NはrAls1p−Nよりも、抗rAls3p−N抗体の有意に高い力価を誘起した。これらのデータは、アミノ酸配列相同性のその高い程度(85%)にもかかわらず、体液免疫系はrAls1p−NとrAls3p−Nとを区別できる。上の結果はさらに、Als1pおよびAls3p上皮細胞付着特徴の相違にもかかわらず、rAls1p−NおよびrAls3p−Nワクチンは、血行性播種性(すなわち血管内)カンジダ症からの防御に同等に有効であった。
【0165】
要するに抗カンジダrAls3p−Nワクチンは、rAls1p−Nワクチンが誘発したのと同等の細胞媒介応答であるが、より広範な抗体ベース応答を誘発した。免疫原は、血行性播種性カンジダ症に対する同等の程度の防御を生じたが、rAls3p−Nは口腔咽頭および膣カンジダ症の療法に対してより高い防御を媒介した。
【0166】
この出願を通じて、各種の刊行物はカッコ内に参照されている。これらの刊行物の開示はその全体が、本発明が関係する技術水準をより十分に記載するために参照により本出願に組み入れられている。
【0167】
本発明は開示された実施形態を参照して記載されているが、当業者は上で詳説された特定の実施例および研究が本発明の単なる例示であることをただちに認識するであろう。本発明の精神から逸脱することなく各種の修正形態が実施されうることが理解されるべきである。したがって本発明は以下の請求項によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1A】ヒト臍帯静脈内皮細胞へのC.アルビカンスのAls1p付着の媒介を示す。値は、それぞれ3通り実施された少なくとも3回の独立した結果の平均±SDを表す。(A)ALS1l/als2 alsl/alslおよびALS1補足ミュータントおよび野生型CAIl2(30)の内皮細胞付着、(B)野生型C.アルビカンスと比較してALS1を過剰発現する、PADHl−ALS1ミュータントの内皮細胞付着。統計処理はWilcoxon rank sum検定によって得られ、Benferroni補正を用いて複数の比較に対して補正した。すべての比較でP<0.001。
【図1B】ヒト臍帯静脈内皮細胞へのC.アルビカンスのAls1p付着の媒介を示す。値は、それぞれ3通り実施された少なくとも3回の独立した結果の平均±SDを表す。(A)ALS1l/als2 alsl/alslおよびALS1補足ミュータントおよび野生型CAIl2(30)の内皮細胞付着、(B)野生型C.アルビカンスと比較してALS1を過剰発現する、PADHl−ALS1ミュータントの内皮細胞付着。統計処理はWilcoxon rank sum検定によって得られ、Benferroni補正を用いて複数の比較に対して補正した。すべての比較でP<0.001。
【図2】C.アルビカンス間接免疫蛍光の微細線維へのAls1pの細胞表面局在化を示す。C.アルビカンスの線維化は、グルタミンを含むRPMI 1640中で酵母細胞を37℃にて1.5時間インキュベートすることによって誘発された。Als1pは、生物を最初に抗Als1pマウスmAbで、続いてFITC標識ヤギ抗マウスIgGによってインキュベートすることにより検出された。C.アルビカンス細胞表面は、Alexa 594(Molecular Probes,Eugene,OR)でコンジュゲートされた抗C.アルビカンスポリクローナルAbによっても染色された。黄色染色の範囲がAls1p局在化を表す。(A)C.アルビカンス野生型。(B)als1/als1ミュータント菌株。(C)野生型ALS1で補足された1als1/als1。(D)PADH1過剰発現ミュータント。
【図3A】固体培地上でのC.アルビカンス線維化に対するAls1pの媒介を示す。C.アルビカンス分芽胞子はLeeの寒天プレートにスポットされて、37℃にて4日間(A)または3日間(B)インキュベートされた。
【図3B】固体培地上でのC.アルビカンス線維化に対するAls1pの媒介を示す。C.アルビカンス分芽胞子はLeeの寒天プレートにスポットされて、37℃にて4日間(A)または3日間(B)インキュベートされた。
【図4A】ALS1発現の対照およびEFG1線維化制御経路によるC.アルビカンス線維化の媒介を示す。(A)(i)異なる線維化制御経路が欠乏したミュータント、(ii)EFG1またはPADH1−ALS1が補足されたefg1/efg1ミュータントにおける、ALS1の発現を示すノザンブロット分析。全RNAは、線維化を誘発するためにRPM1 1640+グルタミン培地で37℃にて90分間培養した細胞から抽出した。ブロットはALS1およびTEF1でプローブした。(B)Leeの寒天プレートで37℃にて4日間培養した、efg1/efg1ミュータントおよびPADH1−ALS1が補足されたefg1/efg1ミュータントの顕微鏡写真。
【図4B】ALS1発現の対照およびEFG1線維化制御経路によるC.アルビカンス線維化の媒介を示す。(A)(i)異なる線維化制御経路が欠乏したミュータント、(ii)EFG1またはPADH1−ALS1が補足されたefg1/efg1ミュータントにおける、ALS1の発現を示すノザンブロット分析。全RNAは、線維化を誘発するためにRPM1 1640+グルタミン培地で37℃にて90分間培養した細胞から抽出した。ブロットはALS1およびTEF1でプローブした。(B)Leeの寒天プレートで37℃にて4日間培養した、efg1/efg1ミュータントおよびPADH1−ALS1が補足されたefg1/efg1ミュータントの顕微鏡写真。
【図4C】ALS1発現の対照およびEFG1線維化制御経路によるC.アルビカンス線維化の媒介を示す。(A)(i)異なる線維化制御経路が欠乏したミュータント、(ii)EFG1またはPADH1−ALS1が補足されたefg1/efg1ミュータントにおける、ALS1の発現を示すノザンブロット分析。全RNAは、線維化を誘発するためにRPM1 1640+グルタミン培地で37℃にて90分間培養した細胞から抽出した。ブロットはALS1およびTEF1でプローブした。(B)Leeの寒天プレートで37℃にて4日間培養した、efg1/efg1ミュータントおよびPADH1−ALS1が補足されたefg1/efg1ミュータントの顕微鏡写真。
【図5A】(A)定常期分芽胞子を注射した(マウス当たりPBS 0.5ml中10個)オスBalb/Cマウス(各酵母菌株についてn=30)による、血行性播種性カンジダ症のマウスモデルにおける毒性の低下を示す。曲線は、3回の反復実験の集積結果である(各菌株についてn=30マウス)。30℃にてYPDで培養したすべての菌株の倍加時間は、1.29〜1.52時間の範囲であり、相互に統計的に差異がなかった。全染色体DNAのサザンブロット分析を使用して、感染生物から回収したC.アルビカンス菌株の遺伝子型の同一性を、マウスの感染に使用したC.アルビカンス菌株のそれと比較した。統計分析はWilcoxon rank sum検定によって得られ、Benferroni補正を用いて複数の比較に対して補正した。als1/als1ミュータント対他の菌株それぞれについてP<0.002。(B)C.アルビカンス野生型、ホモ接合als1ヌルミュータント、またはヘテロ接合ALS1補足ミュータントによって感染された腎臓の組織学的顕微鏡写真。腎臓サンプルは、感染の28時間後(a)または40時間後(b)に回収して、パラホルムアルデヒド中で固定し、銀で染色した(倍率X400)。矢印はC.アルビカンス細胞を示す。
【図5B】(A)定常期分芽胞子を注射した(マウス当たりPBS 0.5ml中10個)オスBalb/Cマウス(各酵母菌株についてn=30)による、血行性播種性カンジダ症のマウスモデルにおける毒性の低下を示す。曲線は、3回の反復実験の集積結果である(各菌株についてn=30マウス)。30℃にてYPDで培養したすべての菌株の倍加時間は、1.29〜1.52時間の範囲であり、相互に統計的に差異がなかった。全染色体DNAのサザンブロット分析を使用して、感染生物から回収したC.アルビカンス菌株の遺伝子型の同一性を、マウスの感染に使用したC.アルビカンス菌株のそれと比較した。統計分析はWilcoxon rank sum検定によって得られ、Benferroni補正を用いて複数の比較に対して補正した。als1/als1ミュータント対他の菌株それぞれについてP<0.002。(B)C.アルビカンス野生型、ホモ接合als1ヌルミュータント、またはヘテロ接合ALS1補足ミュータントによって感染された腎臓の組織学的顕微鏡写真。腎臓サンプルは、感染の28時間後(a)または40時間後(b)に回収して、パラホルムアルデヒド中で固定し、銀で染色した(倍率X400)。矢印はC.アルビカンス細胞を示す。
【図5C】(A)定常期分芽胞子を注射した(マウス当たりPBS 0.5ml中10個)オスBalb/Cマウス(各酵母菌株についてn=30)による、血行性播種性カンジダ症のマウスモデルにおける毒性の低下を示す。曲線は、3回の反復実験の集積結果である(各菌株についてn=30マウス)。30℃にてYPDで培養したすべての菌株の倍加時間は、1.29〜1.52時間の範囲であり、相互に統計的に差異がなかった。全染色体DNAのサザンブロット分析を使用して、感染生物から回収したC.アルビカンス菌株の遺伝子型の同一性を、マウスの感染に使用したC.アルビカンス菌株のそれと比較した。統計分析はWilcoxon rank sum検定によって得られ、Benferroni補正を用いて複数の比較に対して補正した。als1/als1ミュータント対他の菌株それぞれについてP<0.002。(B)C.アルビカンス野生型、ホモ接合als1ヌルミュータント、またはヘテロ接合ALS1補足ミュータントによって感染された腎臓の組織学的顕微鏡写真。腎臓サンプルは、感染の28時間後(a)または40時間後(b)に回収して、パラホルムアルデヒド中で固定し、銀で染色した(倍率X400)。矢印はC.アルビカンス細胞を示す。
【図6】抗Als1pポリ血清を輸液した動物について30日の期間に亘る生存動物の関数としての、播種性カンジダ症に対する抗ALS抗体の予防効果を示す。
【図7】付着表現型によって配列された選択ALSポリペプチドのN末端部のポリペプチド配列アラインメントである。上の3つの列は、内皮細胞を結合するALS1 3および5ポリペプチドからの配列(それぞれ配列番号:1〜3)である。下の3つは、内皮細胞を結合しないALS6、7および9ポリペプチドからの配列(それぞれ配列番号:4〜6)である。最後の列は、ALSポリペプチドファミリーのコンセンサス配列(配列番号:7)を表す。
【図8】Alsタンパク質が、サッカロミセス・セレビシエにて異種発現されるときに、基質特異性付着特性を与えることを示す。各パネルは、C.アルビカンスが付着することが既知である各種の基質への、1つのAlsp発現菌株の付着パーセントを示す(黒色棒)。空のベクターによって形質転換されたS.セレビシエの付着(白色棒)は、負の対照として各パネルに含まれている。Gel、ゼラチン;FN、フィブロネクチン;LN、ラミニン;FaDU、FaDU上皮細胞;EC、内皮細胞。一因子分散分析による空のプラスミド対象と比較したときに、、p<0.01。結果は、3通り実施した少なくとも3回の実験の平均±S.D.である。
【図9】基質特異性付着がAlsタンパク質のN末端ドメインの組成によって決定されることをドメイン交換が証明することを示す。試験されるALS遺伝子または構築物の表示は、ALS5(黒色)またはALS6(白色)からの配列より成る棒として描かれている。各ミュータントの付着特性は、形質転換されたS.セレビシエのフィブロネクチンコートビーズへの付着を示す顕微鏡写真および6ウェルプレートアッセイで測定したようなゼラチン(黒色棒)および内皮細胞(灰色棒)を示すグラフとして表示される。結果は、それぞれ3通り実施した少なくとも3つの実験の平均±S.D.である。
【図10】Alsタンパク質のサブセットがS.セレビシエ内で発現されるときに内皮細胞侵入を媒介することを示す。A,Alsタンパク質を発現する、または空のプラスミドによって形質転換されたS.セレビシエ菌株の内皮細胞付着(対照)。データは、内皮発現結合生物の総数を表し、高倍率視野当たりの細胞として表される。B,高倍率視野当たりの細胞内生物の数として示される、S.セレビシエ菌株を発現するAlspの内皮細胞侵入の程度。一因子分散分析による空のプラスミド対象と比較したときに、、p<0.01。結果は、3通り実施した少なくとも3回の実験の平均±S.D.である。
【図11】既知の機能のAlsタンパク質のN末端アミノ酸配列のアラインメントがCRおよびHVRの交互パターンを表すことを示す。A,既知の機能のAlsタンパク質のN末端領域中でのコンセンサス同一性のパーセンテージ。シグナルペプチド領域(アミノ酸1〜20)が示されていないことに注意する。開いたボックスはHVR 1〜7と呼ばれる領域を示す。B,個々のHVRの組成を示す、Alsタンパク質の概略アラインメント(それぞれ配列番号:1〜6)。配列は、複数の基質への親和性を備えたタンパク質を、同定された基質をほとんどまたは全く結合しないタンパク質と比較するために配置されている。各保存領域におけるアミノ酸の数はカッコ内に示す。
【図12】Alsタンパク質N末端ドメインのCDおよびFTIRスペクトルを示す。A,リン酸緩衝生理食塩水中10μM Als1pの円偏光二色性スペクトル。B,DO蒸気によって水和されたAls1pセルフフィルムのFTIRスペクトル。
【図13】Alsタンパク質ファミリー間のN末端ドメインの予測された物理化学特性の比較を示す。疎水性、静電性、または水素結合特徴が、各ドメインの水接触可能表面に与えられる。疎水性は次のように示される:褐色、最も疎水性;青色、最も親水性。静電性(スペクトル連続体)は次のように示される:赤色、最も正電荷(+10kcal/mol);青色、最も負電荷(−10kcal/mol)。水素結合電位(H結合)は次のように示される:赤色、供与体;青色、受容体。Alsタンパク質は、これらの特性の複合に基づいて3つの群に識別される。たとえばAls群Aタンパク質、Als1p、Als3p、およびAls5pでの同様の疎水性、静電性、および水素結合プロフィールに注意する。これに対して、Als群Bメンバー、Als6pおよびAls7pは、Als群Aとの疎水性および静電性特徴に著しい相違を示す。生化学プロフィールに加えて、3つのドメイン間の予測された構造の相違に注意する。
【図14】Alsファミリータンパク質の構造−機能関係の概念モデル。Alsタンパク質は、3つの一般的な成分より成る:N末端ドメイン、タンデム反復、およびC.アルビカンス細胞壁と相互作用するグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを含有するセリン/トレオニンリッチC末端ドメイン。図示するように、Alsタンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリーを特徴とする拡張スパンが挿入される、複数の保存逆平行βシート領域(CR1−n)を含有する。HVRを含有するループ/コイル構造がβシートドメインから突出している。特異性Alsタンパク質HVRの三次元物理化学特性はおそらく、カンジダに付着および侵入機能を与える宿主基質との相互作用を支配している。例示目的で、わずか3つのN末端βシート/コイルドメインおよびその各CR/HVR成分を示す。この突出は図13に示す構造画像に対して直角に見られていることに注意する。
【図15】rAls1p−Nによる(退役繁殖)マウスの免疫化は、次の播種性カンジダ症の間の生存を改善する。Als1pプラスアジュバントによって免疫化されたマウスの生存。異なる日における2通りの実験にて群当たりマウス16匹;Adj.=アジュバント。p<0.05対アジュバント。
【図16】rAls1p−Nによる免疫化は、退役繁殖および若年マウスの生存を改善する。C.アルビカンスの迅速に死に至る10個の接種で感染させた、退役繁殖(A)および若年(B)マウスの生存。異なる日における2通りの実験にて群当たりマウス16匹;Adj.=アジュバント。p<0.05対アジュバント対照。
【図17】抗rAlsp−N力価は生存に関連しない。アジュバントを用いて、または用いずに抗rAlsp−Nの可変用量で免疫化されたBalb/cマウスにおいて産生された抗rAlsp−Nポリクローナル抗体の力価。Adj.=アジュバント。200μg対その他すべてについて、p<0.005。
【図18】rAlsp−Nの保護用量のみが、C.アルビカンス刺激Th1脾細胞の増加を誘発する。rAlsp−Nワクチンの異なる用量による、Th1(CD4IFN−γ±IL−4)およびTh2(CD4INF−γIL−4)脾細胞の誘発。免疫化マウス(群当たりn=9)からの脾細胞を、加熱死滅させた予備発芽C.アルビカンスによって48時間刺激して、3色フローサイトメトリーによって分析した。p=0.03対アジュバント。
【図19】rAlsp−Nの保護用量のみが、rAlsp−N刺激Th1遅延型過敏症の上昇を誘発する。rAlsp−NまたはCFA単独でワクチン接種したマウス(群当たりn=9〜12)の、足蹠浮腫によって評価される遅延型過敏症。マウスを表示量のrAlsp−Nによって免疫化して、次にrAlsp−N 50μgを足蹠内へ注射した。足蹠浮腫を24時間後に評価した。p<0.05対アジュバント、0.2μg、および200μg。
【図20】rAlsp−Nワクチンは、防御免疫を誘発するためにB細胞ではなく、T細胞を必要とする。B細胞欠損、T細胞欠損(ヌード)、および類遺伝子性野生型Balb/c対照マウス(群当たりn=7または8)を、rAlsp−N+アジュバントまたはアジュバント単独でのワクチン化後に同時に評価された。p<0.04対アジュバント単独、P=0.003対野生型アジュバント処置。
【図21】rAlsp−Nを用いたSQワクチン接種は、免疫適格マウスにてDTH応答を誘発する。足蹠浮腫は、BALB/cマウス(群当たりn=10)の足蹠へのrAlsp−N 50μgの注射24時間後に評価した。中央値を黒色棒として示す。Wilcoxon Rank Sum検定によりp=0.002対対照。
【図22】rAlsp−Nワクチンは、血行性播種性カンジダ症の免疫適格マウスの生存を改善して、組織の真菌負荷を低下させる。A)次に尾静脈を介してC.アルビカンスに感染される、ワクチン接種またはBALB/cマウス(2.5または5x10個接種で群当たりそれぞれn=7または10)マウス。各実験は感染30日後に終了させ、すべての残存マウスは良好に見えた。Log Rank Sum検定により*p<0.05対対照。B)C.アルビカンスの5x10個の分芽胞子によって尾静脈を介して感染させたBALB/cマウス(群当たりn=7)における腎臓真菌負荷。y軸はアッセイの検出下限を反映する。中央値は黒色棒として示す。Wilxocon Rank Sum検定によりp=0.01対対照
【図23】rAlsp−Nワクチンは、好中球減少マウスでDTH反応を誘発して、次の血行性播種性カンジダ症の間のその生存を改善する。A)足蹠浮腫は、BALB/cマウスの足蹠へのrAlsp−N 50μgの注射24時間後に評価した(対照ではn=10、rAlsp−Nではn=7)。Wilxocon Rank Sum検定によりp=0.006対対照。B)C.アルビカンスの2.5x10個の分芽胞子によって感染させた好中球減少マウスの生存(2回の実験から群当たりn=16)。Log Rank Sum検定によりp=0.007対アジュバント対照
【図24】rAlsp−Nワクチンは、口腔咽頭カンジダ症マウスの舌の組織学的真菌病変の重症度を減弱する。群当たりN=4マウス。盲検観察者によって本文に記載するように生成された炎症スコア。Wilxocon Rank Sum検定によりp=0.03。
【図25】rAls1p−Nワクチンではなく、rAls3p−Nが、C.アルビカンスを接種したマウスの膣の真菌コロニー形成を減弱する(Wilxocon Rank Sum検定により、p=0.01対CFAのみワクチン接種されたマウス)群当たりN=11マウス。
【図26】S.アウレウスのクランピング因子A(cln67A)に対するAls1p相同性マップを示す。C.アルビカンスおよびS.アウレウスC1fAからのコンセンサス機能性部位は、Als1p相同性モデルにマップされた。Als1pおよびC1fAのN末端からの多数の残基はコンセンサス間隙モチーフにマップして、それはそこで両方のアドヘシンに関して起こることが予測される基質への結合である。
【図27】rAls1p−NおよびrAls3p−Nワクチンが、スタフィロコッカス症マウスの生存を改善する。(p<0.003対CFAのみでワクチン接種されたマウス、Log Rank検定による)。群当たりN=22マウス。
【図28】抗体力価は個々のワクチン接種マウスでの防御度に相関しないが、それらはワクチン接種マウスからワクチン未接種マウスを区別する。CFAのみ、CFA+rAls1p−NまたはrAls3p−N 20μgそれぞれによって免疫価されたBalb/cマウスにて産生された、抗rAls1p−Nまたは抗rAls3p−Nポリクローナル抗体の力価。全体として抗体力価と生存との間に著しい相関があり(rho=0.474、p=0.0057)、抗体力価がワクチン防御の代用マーカーとして使用されうることを示している。しかしながらCFAのみが投与されたマウスによるデータが除外されるとき、抗体力価とrAls1p−NまたはrAls3p−Nをワクチン接種されたマウスの生存との間には相関がなく(rho 0.041143、p=0.847)、抗体がワクチンの防御の支配的な機構らしくないことを示す。
【図29】rAls1p−Nワクチンが血行性播種性カンジダ症から非近交系CD1マウスを防御することを示す。A)CD1マウス(群当たりn=8)は、rAls1p−N(20μg)+CFA、またはCFAのみと共にSQをワクチン接種され、ブーストの14日後にC.アルビカンスSC5314によって尾静脈を介して感染させた。B)CD1マウス(群当たりn=8)は、各種の用量のアルムを含むrAls1p−Nと共に、またはアルムのみと共にSQをワクチン接種され、ブーストの14日後にC.アルビカンスSC5314によって尾静脈を介して感染させた。Log Rank Sum検定によりp<0.05対アジュバント対照。
【図30】rAls1p−NワクチンがC.アルビカンスの複数の菌株の1つに感染したBalb/cマウスの生存を改善することを示す。rAls1p−NおよびCFA対CFAのみによって免疫化され、C.アルビカンス15563(7x10個の分芽細胞)、16240(4x10個の分芽細胞)、または36082(4x10個の分芽細胞)によって尾静脈を介して感染されたBalb/cマウスの生存(群当たりn=8マウス)。Log Rank Sum検定によりp<0.05対アジュバント対照。
【図31】rAls1p−Nワクチンが、カンジダの複数の非アルビカンス種に感染したBalb/cマウスにおける組織真菌負荷を低下させることを示す。Balb/cマウス(群当たりn=5)はCFAまたはCFA+rAls1p−N(20μg)をワクチン接種され、C.グラブラータ、C.クルセイ、C.パラプシローシス、またはC.トロピカリスによって尾静脈を介して感染された。感染性接種を種名の下のカッコ内に示す。腎臓真菌負荷を接種5日後に決定した。y軸はアッセイの検出下限を反映する。複数の比較での非パラメトリックSteel検定によりp<0.05対アジュバント対照。
【図32】rAls3p−N免疫化マウスがrAls1p−Nに対して交差反応する抗体を産生したことを示す。CFAのみ、CFA+rAls1p−N、またはCFA+rAls3p−Nで免疫化された個々のマウスの力価。CFAおよびCFA+rAls3p−Nでは、群当たりN=7マウス;CFA+rAls1p−Nでは、n=6マウス。Mann Whitney U検定により、p<0.05対CFAのみ;**p<0.002対CFAのみ&p<0.011対CFA+rAls1p−N。棒は中央値を示す。
【図33】rAls1p−NおよびrAls3p−Nの両方が、生体内遅延型過敏症応答に関してマウスを初回刺激したことを示す。マウス(CFAおよびCFA+rAls3p−Nでは、群当たりN=7マウス;CFA+rAls1p−Nでは、n=6)は、CFAのみ、CFA+rAls1p−N、またはCFA+rAls3p−Nでそれぞれワクチン接種された。生体内での遅延型過敏症は足蹠浮腫によって測定した。Mann Whitney U検定により、p<0.05対CFAのみ。棒は中央値を示す。
【図34】rAls1p−NおよびrAls3p−Nワクチンがマウス血行性播種性カンジダ症に対して同様の有効性を媒介したことを示す。C.アルビカンスの5x10個の分芽胞子によって尾静脈を介して感染されたBalb/cマウスの生存(CFAおよびCFA+rAls3p−Nでは2回の実験から群当たりn=15、CFA+rAls1p−Nでは2回の実験からn=14)。実験は感染28日後に終了させ、残存するすべてのマウスは良好に見えた。Log Rank検定によりp<0.0001対CFA対照。
【図35】生体内遅延型過敏症が播種性カンジダ症の間に生存と相関していたことを示す。抗rAls1p−Nまたは抗rAls3p−N抗体力価および足蹠浮腫反応を、C.アルビカンスによる尾静脈を介した感染の2日前に測定した(CFAおよびCFA+rAls3p−Nでは群当たりn=7、CFA+rAls1p−Nではn=6)。Spearman Rank sum検定によって決定された相関。
【図36】rAls3p−Nワクチンがマウス口腔咽頭カンジダ症の間の組織真菌負荷を著しく低下させたことを示す。口腔咽頭カンジダ症のマウスにおける舌真菌負荷(CFAではn=7、rAls1p−NおよびrAls3p−Nワクチン接種群では8)。y軸はアッセイの検出下限を反映する。Mann Whitney U検定により、p=0.005対CFA。
【図37】マウスカンジダ膣炎でrAls3p−NがCFAのみおよびCFA+rAls1p−Nの両方と比較して膣真菌負荷を低下させたことを示す。CFA、CFA+rAls1p−N、またはCFA+rAls3p−Nでワクチン接種されたマウスにおける膣真菌負荷(2回の実験から群当たりn=11)。y軸はアッセイの検出下限を反映する。複数の比較についてのSteel検定によって、p<0.02対CFAおよびCFA+rAls1p−N。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製薬的に許容される媒体中に、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリーメンバー、またはその免疫原性断片を、アジュバントと一緒に含む、ワクチン。
【請求項2】
前記Alsタンパク質ファミリーメンバーが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)およびカンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)から成る群より選択されるカンジダ菌株に由来するAlsタンパク質を含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記Alsタンパク質ファミリーメンバーが、Als1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9pから成る群より選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
前記免疫原断片が、Alsタンパク質ファミリーメンバーのN末端領域断片または他のいずれかの断片を含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
播種性カンジダ症またはスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)感染を処置または予防する方法であって、製薬的に許容される媒体中に、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリーメンバー、またはその免疫原性断片を含むワクチンの免疫原性量を投与するステップを含む、方法。
【請求項6】
前記Alsタンパク質ファミリーメンバーが、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・グラブラータおよびカンジダ・パラプシローシスから成る群より選択されるカンジダ菌株に由来するAlsタンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Alsタンパク質ファミリーメンバーが、Als1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9pから成る群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫原断片がAlsタンパク質ファミリーメンバーのN末端領域断片を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記投与が能動免疫化、受動免疫化またはその組合せを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
播種性カンジダ症またはスタフィロコッカス・アウレウス感染を処置または予防する方法であって、宿主細胞または組織へのカンジダまたはスタフィロコッカス・アウレウスの結合または侵入を抑制するために、細胞接着活性を有する単離Alsタンパク質ファミリーメンバー、またはその機能性断片の有効量を投与するステップを含む、方法。
【請求項11】
前記Alsタンパク質ファミリーメンバーが、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・グラブラータおよびカンジダ・パラプシローシスから成る群より選択されるカンジダ菌株に由来するAlsタンパク質を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Alsタンパク質ファミリーメンバーが、Als1p、Als3p、Als5p、Als6p、Als7pおよびAls9pから成る群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞接着活性が、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、上皮細胞または内皮細胞への結合を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記機能性断片がAlsタンパク質ファミリーメンバーのN末端領域断片を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記宿主細胞が内皮または上皮細胞起源の細胞を含む、請求項10に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公表番号】特表2008−540453(P2008−540453A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510281(P2008−510281)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/017482
【国際公開番号】WO2006/121895
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(502170175)ロサンゼルス バイオメディカル リサーチ インスティテュート アット ハーバー− ユーシーエルエー メディカル センター (11)
【Fターム(参考)】