説明

播種機

【課題】 本発明は、除去ブラシにより種子繰出ローラにより円滑に播種できるようにして播種精度を向上させると共に、播種量を適正に維持して播種量が極端に少なくなることによる育苗器内の出芽むらを防止することを課題とする。
【解決手段】 搬送経路3に沿って該搬送経路3の上手側から順に育苗器2に床土を詰める床土詰装置6と育苗器2に播種する播種装置7と育苗器2に覆土する覆土装置8を設け、播種装置7には、播種する種子を貯留する種子タンク68と、該種子タンク68内の種子を間欠的に所定量ずつ繰り出して育苗器2へ落下させて播種位置で供給する外周に所定のピッチで複数の繰出溝を備える種子繰出ローラ69と、該種子繰出ローラ69の外周面に接触して該種子繰出ローラ69の繰出溝から不適な種子を除去する除去ブラシ70と、該除去ブラシ70で除去された種子を別途育苗器2へ供給する種子供給体120を備えた播種機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、播種機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
育苗器に播種する播種機であって、前記育苗器を一方向に搬送する搬送経路を備え、該搬送経路に沿って該搬送経路の上手側から順に育苗器に床土を詰める床土詰装置と育苗器に播種する播種装置と育苗器に覆土する覆土装置を設け、播種装置には、播種する種子を貯留する種子タンクと、該種子タンク内の種子を間欠的に所定量ずつ繰り出して育苗器へ落下させて播種位置で供給する外周に所定のピッチで複数の繰出溝を備える種子繰出ローラと、該種子繰出ローラの外周面に接触して該種子繰出ローラの繰出溝から溢れる種子を除去する除去ブラシを備えた播種機が知られている(特許文献1参照。)。前記除去ブラシにより、例えば種籾等の芒、枝梗が付いた種子や芽の伸び過ぎた種子等、播種に不適な種子を播種しないように種子繰出ローラから除去し、種子繰出ローラにより円滑に播種できるようにして播種精度を向上させている。この除去される種子を除去ブラシの回転駆動により該除去ブラシの直下に設けた種子回収箱に回収する技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−192012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
播種前の催芽行程等の条件の影響により播種する種子に上記不適な種子が多い場合、除去ブラシにより不適な種子を除去すると、種子繰出ローラの繰出溝に供給される種子の粒数が所望より少なくなり、種子の繰出量が低下して育苗器の播種密度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、除去ブラシにより種子繰出ローラにより円滑に播種できるようにして播種精度を向上させると共に、播種量を適正に維持して播種量が極端に少なくなることによる育苗器内の出芽むらを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、育苗器(2)に播種する播種機であって、前記育苗器(2)を一方向に搬送する搬送経路(3)を備え、該搬送経路(3)に沿って該搬送経路(3)の上手側から順に育苗器(2)に床土を詰める床土詰装置(6)と育苗器(2)に播種する播種装置(7)と育苗器(2)に覆土する覆土装置(8)を設け、播種装置(7)には、播種する種子を貯留する種子タンク(68)と、該種子タンク(68)内の種子を間欠的に所定量ずつ繰り出して育苗器(2)へ落下させて播種位置で供給する外周に所定のピッチで複数の繰出溝を備える種子繰出ローラ(69)と、該種子繰出ローラ(69)の外周面に接触して該種子繰出ローラ(69)の繰出溝から不適な種子を除去する除去ブラシ(70)と、該除去ブラシ(70)で除去された種子を別途育苗器(2)へ供給する種子供給体(120)を備えた播種機とした。
【0007】
従って、この播種機によると、搬送経路(3)に沿って育苗器(2)を搬送させることにより、育苗器(2)に床土を詰め、播種し、覆土する。播種装置(7)では、種子タンク(68)内から種子繰出ローラ(69)の繰出溝に適量の種子が供給され、除去ブラシ(70)により種子繰出ローラ(69)の繰出溝から不適な種子を除去して種子繰出ローラ(69)が播種するが、除去ブラシ(70)で除去された種子は種子供給体(120)により別途育苗器(2)へ供給されて播種される。
【発明の効果】
【0008】
よって、不適な種子が多い場合でも、除去ブラシ(70)により不適な種子を除去するので、種子繰出ローラ(69)により円滑に播種できるため播種精度が向上すると共に、除去ブラシ(70)で除去された種子は種子供給体(120)により別途育苗器(2)へ供給されて播種されるので、播種量を適正に維持して育苗器(2)内の播種密度を高めることができ、育苗器内の出芽むらを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】播種機を示す平面図
【図2】播種機を示す側面図
【図3】育苗器供給装置の要部を示す平面図
【図4】育苗器供給装置の要部を示す側面図
【図5】下受板、上受板及び落とし板を示す斜視図
【図6】播種機を示す側面図
【図7】播種装置を示す断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1及び図2に示すように、播種機(1)は、例えば水稲苗用の矩形の育苗箱等の育苗器(2)を一方向に搬送する搬送経路(3)を備え、該搬送経路(3)上に支持され該搬送経路(3)に沿って該搬送経路(3)の上手側から順に、上下に複数枚に積み重ねられた育苗器(2)を下側から順に繰り出して搬送経路(3)上に供給する育苗器供給装置(4)と、育苗器(2)に床土を詰める床土詰装置(6)と、床土を詰めた育苗器(2)に灌水する灌水装置(29)と、育苗器(2)に播種する播種装置(7)と、育苗器(2)に覆土する覆土装置(8)を設けている。尚、育苗器供給装置(4)及び床土詰装置(6)及び播種装置(7)及び覆土装置(8)の各々の装置は、他の装置と独立して単独で設置できるように前後左右計4本の脚部(9,10)で支持されている。尚、覆土装置(8)の前側の左右の脚部(10)には上下に回動するアーム(11)を介して該脚部(10)の下端より下方に突出させることができる車輪(12)を各々取り付けており、該車輪(12)を下方に突出させ播種機(1)を持ち上げて他の脚部(9)を地面から浮かせることにより、播種機(1)を容易に移動させることができる。
【0011】
搬送経路(3)は、左右の搬送ガイド(15)で構成され、この左右の搬送ガイド(15)の間で長手方向を前後に向けた育苗器(2)を搬送する構成となっている。搬送経路(3)には、駆動するコンベアとして、ベルト式の育苗器搬送コンベアである育苗器供給部搬送コンベア(16)及び床土詰部搬送コンベア(17)と、ローラ式の育苗器搬送コンベアである播種部搬送コンベア(18)及び覆土部搬送コンベア(28)とを備えている。そして、非駆動でフリーで回転するローラ式のコンベアとして、育苗器供給部搬送コンベア(16)と床土詰部搬送コンベア(17)の間に床土詰前コンベア(62)を設け、床土詰部搬送コンベア(17)と播種部搬送コンベア(18)の間に灌水部コンベア(63)を設け、播種部搬送コンベア(18)と覆土部搬送コンベア(28)の間に覆土前コンベア(64)を設け、覆土部搬送コンベア(28)の後側に育苗器取出コンベア(75)を設けている。
【0012】
育苗器供給装置(4)は、上下に複数枚に積み重ねられた育苗器群を下側から受ける下受板(34)と、前記育苗器群の下から2枚目の育苗器(2)を下側から受ける上受板(35)と、育苗器群の最下位の育苗器(2)を強制的に下方へ落とす落とし板(36)とを備え、人手等により上受板(35)上に供給された育苗器群を先ず下受板(34)上に引き継ぎ、上受板(35)で育苗器群の下から2枚目の育苗器(2)から上側の育苗器(2)を支持した状態で下受板(34)による育苗器群の最下位の育苗器(2)の支持を解除し、その状態で落とし板(36)が最下位の育苗器(2)を上側から下方に押して育苗器群から分離して落下させて繰り出して育苗器供給部搬送コンベア(16)上に供給し、以下この作動工程を繰り返すことにより育苗器群の下側の育苗器(2)から順に育苗器供給部搬送コンベア(16)上に供給する構成となっている。尚、下受板(34)、上受板(35)及び落とし板(36)は、育苗器群に作用する各々の部分が前後方向で重複しないように各々育苗器群の前後左右4箇所に設けられ、育苗器群の左右外側から作用し、育苗器供給部搬送コンベア(16)の作動に連動し、育苗器供給部搬送コンベア(16)上において先に供給した育苗器(2)と次に供給する育苗器(2)との間に隙間が生じないように作動する。伝動構成について説明すると、育苗器供給モータ(94)に設けた出力スプロケット(95)から搬送伝動チェーン(96)及び駆動スプロケット(38)へ伝動し、該駆動スプロケット(38)と一体回転する搬送上手側のローラ(37)を介して育苗器供給部搬送コンベア(16)を駆動する。そして、駆動スプロケット(38)からチェーン(39)及び従動スプロケット(40)を介して第一のカウンタ軸(41)へ伝動し、該第一のカウンタ軸(41)と一体回転する駆動スプロケット(42)からチェーン(43)、従動スプロケット(44)及び一方向クラッチを介して第二のカウンタ軸(45)へ伝動し、該第二のカウンタ軸(45)の左右両端部に設けた駆動ベベルギヤ(46)から従動ベベルギヤ(47)を介して左右各々の落とし用軸(48)を互いに反対側に駆動回転させる。この落とし用軸(48)と落とし板(36)とが一体回転し、落とし板(36)が左右内側で下側に移行する方向に回転する。また、落とし用軸(48)の他端部からアーム(49,51)及びリンク(50)等を介して落とし用軸(48)の上方に位置する各々の受板用軸(52)を所定角度範囲内で揺動させ、該受板用軸(52)と一体回転する下受板(34)及び上受板(35)を揺動させ、下受板(34)と上受板(35)とを育苗器群に交互に作用させて、育苗器群を順次下降させる。また、第二のカウンタ軸(45)を手動で回転させるための手動供給操作具となる手動供給レバー(53)を設けており、該手動供給レバー(53)により作業者が任意に育苗器供給部搬送コンベア(16)上に育苗器(2)を落下させて供給することができる。
【0013】
床土詰装置(6)は、床土となる培土を貯留する床土タンク(54)と、該床土タンク(54)内の床土を所定量ずつ繰り出して育苗器(2)へ落下させて供給する床土繰出具となる床土繰出ベルト(55)と、育苗器(2)上で溢れる床土を均す均平具となる均平ブラシ(19)と、育苗器(2)内に突入して床土を鎮圧する床土鎮圧具となる床土鎮圧ローラ(57)と、床土繰出ベルト(55)上の隙間を調節して床土の繰出量を変更調節する床土量調節具となる床土量調節レバーを備え、床土繰出ベルト(55)が床土を供給する搬送経路(3)上の床土詰位置の搬送下手側に均平ブラシ(19)が位置し、均平ブラシ(19)の搬送下手側に床土鎮圧ローラ(57)が位置する。床土詰装置(6)の伝動構成について説明すると、床土繰出モータ(20)により床土繰出ベルト(55)が駆動し、該床土繰出ベルト(55)から歯車伝動機構を介して均平ブラシ(19)が駆動する。また、床土詰搬送モータ(21)に設けた出力スプロケット(97)から搬送伝動チェーン(59)を介して駆動スプロケット(60)へ伝動し、該駆動スプロケット(60)と一体回転する搬送下手側のローラ(61)により床土詰部搬送コンベア(17)を駆動する。尚、均平ブラシ(19)と床土繰出ベルト(55)とが互いに逆方向に回転するようになっている。尚、床土繰出モータ(20)又は床土詰搬送モータ(21)の一方の駆動で、床土繰出ベルト(55)と均平ブラシ(19)と床土詰部搬送コンベア(17)へ伝動する構成としてもよい。
【0014】
播種装置(7)は、播種する種子(種籾)を貯留する種子タンク(68)と、該種子タンク(68)内の種子を間欠的に所定量ずつ繰り出して育苗器(2)へ落下させて播種位置で供給する外周に所定のピッチで複数の繰出溝を備える種子繰出具となる種子繰出ローラ(69)と、該種子繰出ローラ(69)の外周面に接触して該種子繰出ローラ(69)の繰出溝から不適な種子を除去する除去ブラシ(70)と、該除去ブラシ(70)の外周に側面視で重複して接触し該除去ブラシ(70)の回転方向とは逆方向に回転して除去ブラシ(70)で除去された種子を播種位置よりも搬送経路(3)の搬送上手側の散布位置(S)で別途育苗器(2)へ散布して供給する種子供給ブラシである種子供給体(120)と、種子繰出ローラ(69)に臨む種子タンク(68)の出口の隙間を調節して種子繰出ローラ(69)への種子の供給状態を変更調節する種子供給調節具となる種子供給調節ハンドル(72)を備える。よって、該種子供給調節ハンドル(72)で調節される種子タンク(68)の出口から種子繰出ローラ(69)の繰出溝に種子が供給され、種子繰出ローラ(69)の回転により該繰出溝が上方へ移動することにより該繰出溝で所定量の種子を移送し、芒、枝梗が付いた種子や芽の伸び過ぎた種子等の播種に不適な種子を繰出溝から除去し、該繰出溝は種子繰出ローラ(69)の回転により下方へ移動してその下死点位置(播種位置(H))で育苗器(2)に種子を落下供給する構成となっている。尚、種子繰出ローラ(69)の外周における除去ブラシ(70)から播種位置(H)の間には、繰出溝から種子が落下しないように案内する案内板を設けている。
【0015】
播種装置(7)の伝動構成について説明すると、播種モータ(65)に設けた出力スプロケット(66)から繰出伝動チェーン(67)を介して種子繰出ローラ(69)へ伝動され、前記出力スプロケット(66)から第一除去チェーン(73)及び第二除去チェーン(74)を介して除去ブラシ(70)へ伝動され、前記出力スプロケット(66)から搬送伝動チェーン(71)を介して播種部搬送コンベア(18)の搬送下手側のローラ(75)へ伝動し、該搬送下手側のローラ(75)からチェーン(77)を介して搬送上手側のローラ(76)へ伝動する。そして、除去ブラシ(70)と一体回転する駆動ギヤと種子供給体(120)と一体回転する従動ギヤが噛み合うことにより、種子供給体(120)が除去ブラシ(70)の回転方向とは逆方向に駆動回転する。尚、搬送上手側のローラ(76)と搬送下手側のローラ(75)の間に、種子繰出ローラ(69)が種子を繰り出して供給する播種位置 がある。尚、除去ブラシ(70)及び播種部搬送コンベア(18)と種子繰出ローラ(69)とが互いに逆方向に回転するべく、第一除去チェーン(73)と搬送伝動チェーン(71)を側面視で交差するように巻き掛けている。尚、種子繰出ローラ(69)の外周部において除去ブラシ(70)の位置と播種位置との間には、繰出溝から種子が脱落しないように該繰出溝を覆うガイド体を設けている。
【0016】
除去ブラシ(70)と一体回転する駆動ギヤと種子供給体(120)と一体回転する従動ギヤは、同じ歯数に構成され、除去ブラシ(70)と種子供給体(120)が回転数で回転するようになっている。種子供給体の直径は、除去ブラシ(70)の直径より若干大きく構成されている。従って、種子供給体(120)の回転における周速は除去ブラシ(70)の回転における周速よりも若干速くなり、除去ブラシ(70)で除去された種子を種子供給体(120)により確実に散布できるようにしている。尚、種子供給体(120)と除去ブラシ(70)を同じ径とし、種子供給体(120)の回転における周速は除去ブラシ(70)の回転における周速よりも若干速くなるよう、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの歯数を設定してもよい。また、種子供給体(120)を楕円形等の非円形にしたり種子供給体(120)の回転軸心を偏心させたりして、回転することにより種子供給体(120)の除去ブラシ(70)への接触部の径が変化するように構成し、該接触部における種子供給体(120)の周速が変化するようにし、育苗器(2)への散布位置(S)を変化させながら散布し、除去ブラシ(70)に付着する種子の散布作用を高めることもできる。また、除去ブラシ(70)のブラシの密度よりも種子供給体(120)のブラシの密度を高くし、除去ブラシ(70)に付着する種子の散布作用を高めることもできる。
【0017】
覆土装置(8)は、覆土となる培土を貯留する覆土タンク(84)と、該覆土タンク(84)内の覆土を所定量ずつ繰り出して育苗器(2)へ落下させて覆土位置で供給する覆土繰出具となる覆土繰出ベルト(85)と、育苗器(2)上で溢れる覆土を均す均平具となる均平板(86)と、覆土繰出ベルト(85)上の隙間を調節して覆土の繰出量を変更調節する覆土量調節具となる覆土量調節レバーとを備え、覆土繰出ベルト(85)が覆土を供給する搬送経路(3)上の覆土位置の搬送下手側に均平板(86)が位置する。覆土装置(8)の伝動構成について説明すると、覆土モータ(78)により覆土繰出ベルト(85)が駆動し、覆土モータ(78)に設けた出力スプロケット(79)から搬送伝動チェーン(80)を介して覆土部搬送コンベア(28)の搬送下手側のローラ(81)へ伝動し、該搬送下手側のローラ(81)からチェーン(98)を介して搬送上手側のローラ(82)へ伝動する。尚、搬送上手側のローラ(82)と搬送下手側のローラ(81)の間に、覆土位置がある。尚、覆土繰出ベルト(85)と覆土部搬送コンベア(28)とが互いに逆方向に回転するべく、搬送伝動チェーン(80)を側面視で交差するように巻き掛けている。
【0018】
覆土装置(8)の前側の脚部(10)には、育苗器搬送コンベアを手動で回転させるための操作具となる手動搬送ハンドル(92)をフック(93)を介して保持している。この手動搬送ハンドル(92)により、播種装置(7)で播種をしている途中で故障で播種機(1)が停止したときや播種作業を終了するために播種機(1)を停止させたとき、手動で育苗器(2)を搬送して該育苗器(2)を播種機(1)から容易に取り出すことができる。
【0019】
灌水装置(29)は、灌水部コンベア(63)の上側に設けられ、灌水部コンベア(63)の左右の搬送ガイド(15)から各々立ち上がる左右の支持フレーム(100)を設け、左右に配列される複数のノズルを備える左右に延びる灌水パイプ(99)を、左右の支持フレーム(100)で両持ち支持している。該灌水パイプ(99)すなわち灌水位置は、灌水部コンベア(63)の搬送上手寄りの位置に配置されている。
【0020】
床土詰前コンベア(62)及び灌水部コンベア(63)及び覆土前コンベア(64)及び育苗器取出コンベア(75)の各々のコンベアは、左右の搬送ガイド(15)の前後端部で搬送上手側及び搬送下手側の装置に嵌る嵌合部材(101)により、播種機(1)本体に対して独立して個別に着脱可能に設けられている。従って、図6に示すように、これらのコンベアを短いものに組み替えることにより、各装置間の距離を変更でき、ひいては灌水装置の灌水位置から次工程の播種装置(7)の播種位置及び覆土装置(8)の覆土位置までの間隔を変更できる。また、床土詰前コンベア(62)及び灌水部コンベア(63)及び覆土前コンベア(64)及び育苗器取出コンベア(75)の各々のコンベアは、育苗器(2)の長手方向の長さ(60cm)より長く設定されている。従って、育苗器供給装置(4)と床土詰装置(6)と播種装置(7)と覆土装置(8)の何れの装置で育苗器(2)への作業の不具合があっても、その直後で不具合のあった育苗器(2)を即座に取り出すことができ、無駄な作業を防止でき、床土や種子や覆土の無駄を防ぐことができる。しかも、灌水部コンベア(63)の灌水位置より後側部分自体が育苗器(2)の長手方向の長さ(60cm)より長く設定されているので、灌水作業で不具合があった育苗器(2)を即座に取り出すことができ、種子や覆土の無駄を防ぐことができる。
【0021】
また、灌水部コンベア(63)を播種装置(7)と覆土装置(8)の間に組み付けることにより、播種装置(7)と覆土装置(8)の間に灌水装置(29)を配置することができる。あるいは、灌水部コンベア(63)を覆土装置(8)の後側に組み付けることにより、覆土後に灌水する構成とすることもできる。これらの場合も、灌水部コンベア(63)を組み替えて該灌水部コンベア(63)の長さを変更できる構成とすればよい。
【0022】
以上により、この播種機(1)は、育苗器(2)に播種する播種機であって、前記育苗器(2)を一方向に搬送する搬送経路(3)を備え、該搬送経路(3)に沿って該搬送経路(3)の上手側から順に育苗器(2)に床土を詰める床土詰装置(6)と育苗器(2)に播種する播種装置(7)と育苗器(2)に覆土する覆土装置(8)を設け、播種装置(7)には、播種する種子を貯留する種子タンク(68)と、該種子タンク(68)内の種子を間欠的に所定量ずつ繰り出して育苗器(2)へ落下させて播種位置で供給する外周に所定のピッチで複数の繰出溝を備える種子繰出ローラ(69)と、該種子繰出ローラ(69)の外周面に接触して該種子繰出ローラ(69)の繰出溝から不適な種子を除去する除去ブラシ(70)と、該除去ブラシ(70)で除去された種子を別途育苗器(2)へ供給する種子供給体(120)を備えている。
【0023】
従って、搬送経路(3)に沿って育苗器(2)を搬送させることにより、育苗器(2)に床土を詰め、播種し、覆土する。播種装置(7)では、種子タンク(68)内から種子繰出ローラ(69)の繰出溝に適量の種子が供給され、除去ブラシ(70)により種子繰出ローラ(69)の繰出溝から不適な種子を除去して種子繰出ローラ(69)が播種するが、除去ブラシ(70)で除去された種子は種子供給体(120)により別途育苗器(2)へ供給されて播種される。
【0024】
よって、不適な種子が多い場合でも、除去ブラシ(70)により不適な種子を除去するので、種子繰出ローラ(69)により円滑に播種できるため播種精度が向上すると共に、除去ブラシ(70)で除去された種子は種子供給体(120)により別途育苗器(2)へ供給されて播種されるので、播種量を適正に維持して育苗器(2)内の播種密度を高めることができ、育苗器内の出芽むらを防止できる。また、種子供給体(120)により種子を散布するので、除去ブラシ(70)に種子が付着するのを防止できる。
【0025】
尚、種子タンク(68)の上端の開口より覆土タンク(84)の上端の開口を低位に設け、覆土タンク(84)の上端の開口より床土タンク(54)の上端の開口を低位に設けている。これにより、使用量が多いため作業者が頻繁に床土タンク(54)へスコップで床土を供給しなければならないが、この床土供給作業を低位で容易に行え、次いで供給頻度が高い覆土タンク(84)への覆土供給作業を容易に行える。しかも、種子タンク(68)の上端の開口が高位となるので、床土供給作業又は覆土供給作業を行うとき、誤って種子タンク(68)へ床土又は覆土を供給するようなことを防止でき、土が供給されることで播種装置(7)が故障するようなことを防止できる。
【0026】
床土タンク(54)は変形可能なゴム製の弾性体(113)を介して支持されており、作業者が床土を供給する度にその重みで揺れる構成となっている。これにより、床土タンク(54)内での床土のブリッジ現象を防止でき、特に水田の土壌等、ブリッジ現象を生じ易い土壌を床土として使用するとき、床土の繰り出しを適正に行える。尚、作業者がスコップ等で床土タンク(54)に触れることで、床土タンク(54)を揺らすこともできる。
【0027】
また、左右幅がコンベアの左右幅より小さい(30cm未満の)育苗器(110)に播種作業を行うときは、図1に示すように、コンベアの左右一方側にコンベア搬送方向の適宜間隔で複数の規制ガイド(112)を取り付け、コンベア上の育苗器(110)の左右位置を規制するようにすればよい。このとき、播種装置(7)で繰り出される種子が前記左右一方側の部分で無駄になるので、この種子を受ける受け容器(111)を播種装置(7)下方で前記左右一方側の位置に配置すればよい。
【0028】
尚、前述では、床土詰前コンベア(62)及び灌水部コンベア(63)及び覆土前コンベア(64)及び育苗器取出コンベア(75)の各々のコンベアを組み替えて、該コンベアの長さを変更する方法について説明したが、これらのコンベアを伸縮できる構成として長さを変更する構成としてもよい。このときは、該コンベアの左右の搬送ガイド(15)を前後に複数に分割して重複させることによりコンベアを縮小し、該コンベアのローラの互いの間隔が変更される構成とすればよい。
【0029】
また、前述では、育苗器供給装置(4)と床土詰装置(6)と灌水装置(29)と播種装置(7)と覆土装置(8)を独立して構成したが、育苗器供給装置(4)と床土詰装置(6)を一体で構成し、播種装置(7)と覆土装置(8)を一体で構成し、灌水部コンベア(63)のみ組み替え又は伸縮できる構成としてもよい。
【0030】
尚、播種量を適正に維持する方法として、種子タンク(68)の下端部の種子繰出ローラ(69)と接触する仕切り板(121)を上下に回動する構成とし、播種量を増加させたいときは仕切り板(121)を下側に回動させて種子繰出ローラ(69)との隙間を拡げると共に、種子繰出ローラ(69)を逆転駆動させ、前記隙間から少量の種子が育苗器(2)へ落下して播種されるようにすることができる。これにより、芒、枝梗が付いた種子や芽の伸び過ぎた種子等、播種に不適な種子を、種子繰出ローラ(69)の正回転により該種子繰出ローラ(69)の外周で繰出溝から種子が落下しないように案内する案内板(122)で損傷させるようなことがなく、種子繰出ローラ(69)により良好に播種することができる。尚、仕切り板(121)は、播種量を調整するために前記隙間の間隔を適宜変更できればよく、回動する構成に限らずスライド式等、移動する構成とすればよい。また、仕切り板(121)の先端は、樹脂で構成され、繰り出される種子を傷めないようにしている。また、播種作業終了後、種子タンク(68)内の種子を回収する場合には、仕切り板(121)を大きく移動させて前記隙間から種子を回収することもできる。尚、この方法を採用した場合、種子供給体(120)を設けても設けなくてもよい。また、種子供給体(120)を設けない場合は、除去ブラシにより除去される種子を回収する種子回収箱を除去ブラシの近傍に設けるとよい。
【0031】
また、播種装置(7)に育苗器(2)内の床土に筋状の溝を付ける溝付けローラを設け、該溝付けローラにより溝を付けた床土上面に播種することにより、条播することができる。このとき、床土として目が細かく(粒径が小さく)水分の高い例えば田土を用いることがあるが、このような培土の場合、灌水装置(29)で灌水された床土が溝付けローラに付着しやすく、該溝付けローラに適正に溝を付けることができず、条播できなくなるおそれがある。そこで、灌水装置(29)の灌水の水圧を上げ、灌水パイプ(99)に所定間隔おきに設けた吐出口により床土上面に溝を付けるようにすれば、灌水により若干溝に水が溜まることにより播種される種子が跳ね上がることも少なく、良好に条播することができる。尚、種子の発芽を促進させるため、播種装置(7)と覆土装置(8)の間にも副灌水装置を設け、育苗器(2)に十分な灌水をすることができる。このとき、播種装置(7)と副潅水装置の間に副覆土装置を設け、播種装置(7)で播種した後に副覆土装置により少量の覆土を行い、少量の覆土がなされた上から副灌水装置で灌水することにより、副灌水装置の灌水で床土上面の溝に条播された種子が跳ね上がるのを防止でき、条播精度を向上させることができる。尚、土の供給量は、床土詰装置(6)が最も多く、次いで覆土装置(8)、副覆土装置の順に少なく設定すればよい。
【0032】
また、条播精度を向上させるために、鉄粉をコーティングした鉄粉コーティング種子を使用し、育苗器(2)の底面に条播位置に合わせて貫通溝を形成すると共に、播種位置(H)の育苗器(2)の搬送経路の下方に磁石を設け、該磁石の磁力が貫通溝を介して播種される鉄粉コーティング種子に作用することにより、貫通溝の上方に集中して条播させることができる。尚、前記貫通溝としては、連続的な溝でも断続的な溝でもよい。また、磁石は、育苗器(2)の底面に接触する平板状又はロール状の形状にすればよい。尚、磁石を配置した部分には、磁石を配置するために育苗器(2)を搬送する搬送ベルト又は搬送ローラを設けない。一般的に、育苗器(2)は磁気を通さないポリプロピレンにより形成されているので、磁力は前記貫通溝を通して貫通溝の上方に発生し易くなる。また、貫通溝により床土が育苗器(2)内から脱落し易くなるので、育苗器(2)内の下層に粒径の大きい培土を床土詰めし、床土の脱落を防止すればよい。このとき、上層は粒径の大きい培土を床土詰めし、水分の保持を安定させる。尚、下層に粒径の大きい化成肥料を詰めれば、床部の脱落を防止すると共に、苗を圃場に移植した後に肥効を得ることができる。また、育苗器(2)内で磁力が良好に得られるように、床土として酸化鉄を混合した培土を使用してもよい。尚、この培土は、PH4.5〜5.5、EC値(肥料濃度)0.1〜1.0mS/cm,水分値10〜25%、育苗器(2)1枚あたりの窒素、リン酸並びにカリウムの各々の成分量0.7〜1.4mgに調整することが好ましい。
【0033】
尚、磁石自体を筋状に磁力が発生するように左右方向に複数配列し、条播するようにしてもよい。所望の磁力が得られれば、育苗器(2)の底面に貫通溝を設けなくても条播することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:播種機、2:育苗器、3:搬送経路、6:床土詰装置、7:播種装置、8:覆土装置、68:種子タンク、69:種子繰出ローラ、70:除去ブラシ、120:種子供給体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗器(2)に播種する播種機であって、前記育苗器(2)を一方向に搬送する搬送経路(3)を備え、該搬送経路(3)に沿って該搬送経路(3)の上手側から順に育苗器(2)に床土を詰める床土詰装置(6)と育苗器(2)に播種する播種装置(7)と育苗器(2)に覆土する覆土装置(8)を設け、播種装置(7)には、播種する種子を貯留する種子タンク(68)と、該種子タンク(68)内の種子を間欠的に所定量ずつ繰り出して育苗器(2)へ落下させて播種位置で供給する外周に所定のピッチで複数の繰出溝を備える種子繰出ローラ(69)と、該種子繰出ローラ(69)の外周面に接触して該種子繰出ローラ(69)の繰出溝から不適な種子を除去する除去ブラシ(70)と、該除去ブラシ(70)で除去された種子を別途育苗器(2)へ供給する種子供給体(120)を備えた播種機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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