説明

撮像装置

【課題】電子ビーム非射突領域に蓄積した不所望な電荷による光電変換ターゲットの破損を低減し、且つ、高解像度画像を撮像する。
【解決手段】光透過性基板3の内面には入射光1に応じた信号電荷を発生し蓄積する光電変換膜23を含む光電変換ターゲット20が形成されている。電子源構体10に形成された電界放出型冷陰極15から放出された電子ビーム70が光電変換ターゲット20に射突して光電変換膜中に発生し蓄積した信号電荷が時系列電気信号として取り出される。光透過性基板と電子源構体との間には電子ビーム遮蔽電極30が配置されており、電子ビーム遮蔽電極と電子源構体との間には複数の電子ビーム通過孔が形成されたメッシュ電極40が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出型冷陰極を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界放出型冷陰極を備えた撮像装置が特許文献1に開示されており、これを図7を用いて説明する。
【0003】
光透過性基板103と、光透過性基板103に対向したシリコン基板などからなる陰極基板104と、光透過性基板103と陰極基板104との間のスペーサ部材105とが封着材料106を介して気密に一体に接合されて、外囲器102が構成されている。外囲器102内は所定の真空度に保持されている。光透過性基板103の内面には、外部からの入射光101に応じて信号電荷を発生し蓄積する光電変換膜123と透光性陽極電極122とからなる光電変換ターゲット120が形成されている。陰極基板104の光電変換ターゲット120に対向する側の面には、電子源構体110が設けられている。電子源構体110は、陰極基板104上に形成された複数のストライプ状のカソード電極111と、カソード電極111上に形成された、先端が尖った針状の多数の電界放出型冷陰極(以下「エミッタ」という)115と、各エミッタ115を囲むように複数のカソード電極111上に形成された絶縁層112と、絶縁層112上に形成された複数のストライプ状のゲート電極113とを備えている。ゲート電極113には、各エミッタ115に対応する位置に開口が形成されている。ストライプ状のカソード電極111の延設方向と、ストライプ状のゲート電極113の延設方向とは互いに直交している。複数のカソード電極111と複数のゲート電極113とが交差する複数の領域のそれぞれが撮像装置の画素に対応する。電子源構体110と光電変換ターゲット120との間には、各エミッタ115に対応する位置に貫通孔が形成されたシールドグリッド電極130が設けられている。
【0004】
このような撮像装置において、外部からの入射光101が光透過性基板103及び透光性陽極電極122を通過して光電変換膜123に到達すると、光電変換膜123に入射光量に応じた電子正孔対が発生し、正孔が電子源構体110側に移動して信号電荷として蓄積される。エミッタ115に対してゲート電極113が所定の正電位となるようにカソード電極111及びゲート電極113に所定の電位を印加すると、エミッタ115の先端から約30度の広がりを持った電子ビームが放出される。シールドグリッド電極130にはゲート電極113よりも高電位が印加されているので、電子ビームは加速され、その一部がシールドグリッド電極130の貫通孔を通過して光電変換ターゲット120に射突する。電子ビームの電子により光電変換膜123の電子源構体110側の電位がカソード電極111の電位にリセットされ、その際、透光性陽極電極122に接続された出力端子(図示せず)を介して電気信号が外囲器102外に出力される。マトリクス状に配置された多数の画素のうち電子ビームを放出する画素を順次切り替えて光電変換ターゲット120を電子ビームで順次走査することにより、入射光量の空間分布に対応した時系列電気信号を出力させることができる。
【特許文献1】特開2000−48743号公報
【特許文献2】特開平8−190856号公報
【特許文献3】特開2001−176378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像装置においては、撮像画像の更なる高解像度化が要求されており、これを実現するためには、光電変換ターゲット120上に電子ビームが形成するスポットの径(以下「スポット径」という)を小さくする必要がある。
【0006】
図7に示した従来の撮像装置では、ゲート電極113に対向して正電位のシールドグリッド電極130が設けられている。これにより、ゲート電極113とシールドグリッド電極130との間で電子ビームが加速され電子ビームの広がりが抑えられ、光電変換ターゲット120上でのスポット径を小さくすることができる。
【0007】
ところが、シールドグリッド電極130で電子ビームの一部が捕捉されることにより、光電変換ターゲット120上に電子ビームによって射突されない領域(以下「電子ビーム非射突領域」という)が形成される。この電子ビーム非射突領域では、入射光101によって発生した電荷が読み出されることなく蓄積され、やがて蓄積電荷による電位が光電変換膜123の耐圧限界を超えると、光電変換膜123と透光性陽極電極122との間で放電が生じ、光電変換膜123及び透光性陽極電極122を含む光電変換ターゲット120が破損するという問題が生じる。
【0008】
本発明は従来の撮像装置が有する上記の問題を解決し、電子ビーム非射突領域に蓄積した不所望な電荷による光電変換ターゲットの破損が低減され、且つ、高解像度画像を撮像することが可能である撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像装置は、その内部が真空に保持され、光透過性基板を有する外囲器と、複数の電界放出型冷陰極を有し、前記光透過性基板に対向して前記外囲器内に配置された電子源構体と、前記光透過性基板の前記電子源構体に対向する側の面に形成され、前記光透過性基板を透過した光に応じた信号電荷を発生し蓄積する光電変換膜を含む光電変換ターゲットと、前記光透過性基板と前記電子源構体との間に配置された電子ビーム遮蔽電極とを備える。
【0010】
前記電界放出型冷陰極から放出された電子ビームを前記光電変換ターゲットに射突させて前記光電変換膜中に発生し蓄積した信号電荷が時系列電気信号として取り出される。
【0011】
そして、本発明の撮像装置は、前記電子ビーム遮蔽電極と前記電子源構体との間に、複数の電子ビーム通過孔が形成されたメッシュ電極を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子ビーム非射突領域内の光電変換膜に蓄積した不所望な電荷は、複数の電子ビーム通過孔が形成されたメッシュ電極を用いて除去することができる。従って、電子ビーム非射突領域に蓄積した不所望な電荷による光電変換ターゲットの破損を防止することが出来る。即ち、電子ビーム非射突領域が存在することによる問題は解消される。
【0013】
よって、電子ビーム非射突領域の発生の有無やその大小を考慮することなく、電子ビーム遮蔽電極で電子ビームの広がり角を小さくし且つ電子ビームの一部をトリミングすることが可能になる。従って、光電変換ターゲット上でのスポット径を小さくすることができるので、高解像度画像を撮像することができる。
【0014】
よって、本発明によれば、高解像度画像の撮像と光電変換ターゲットの破損防止とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の上記の撮像装置において、前記電子源構体の画素と前記電子ビーム遮蔽電極に形成された貫通孔とが一対一に対応していることが好ましい。これにより、電子ビーム遮蔽電極は1画素に対応する電子ビーム束をトリミングするので、必要な電子ビームまでもがトリミングされてしまうのを防止できる。この結果、電子ビームの利用効率が向上し、高解像度画像を高効率で撮像することができる。
【0016】
この場合において、電子源構体上の1画素のサイズが電子ビーム遮蔽電極に形成された1つの貫通孔のサイズ(開口径)より大きいことが好ましい。これにより、解像度向上のために真に有益なトリミングを実現できる。
【0017】
前記電界放出型冷陰極から放出された前記電子ビームが前記電子ビーム遮蔽電極により遮蔽されることにより前記電子ビームが射突しない前記光電変換ターゲット上の領域に、電子ビームを射突させる電子ビーム射突手段を更に備えることが好ましい。これにより、簡単な構成で電子ビーム非射突領域に蓄積した不所望な電荷による光電変換ターゲットの破損を防止することが出来る。
【0018】
前記電子ビーム射突手段が、前記メッシュ電極に設けられた複数の電子放出源を含むことが好ましい。
【0019】
あるいは、前記メッシュ電極の数が2つ以上であり、前記2つ以上のメッシュ電極のうちの少なくとも1つが前記光電変換ターゲットに対して傾斜しており、前記電子ビーム射突手段が、前記光電変換ターゲットに対して傾斜した前記メッシュ電極を含むことが好ましい。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置の概略構成を示した断面図である。実施の形態1に係る撮像装置を一実施例とともに説明する。
【0022】
本実施の形態1に係る撮像装置は、光透過性基板3と、光透過性基板3に対向した陰極基板4と、光透過性基板3と陰極基板4との間のスペーサ部材5とからなる外囲器2を備える。光透過性基板3とスペーサ部材5との間、及び陰極基板4とスペーサ部材2との間はそれぞれ封着材料(図示せず)を介して気密に一体に接合されており、外囲器2内の空間は高真空(一実施例では約10-7Torr)に保持されている。光透過性基板3の内面には、外部からの入射光1に応じて信号電荷を発生し蓄積する光電変換膜23及び透光性陽極電極22を含む光電変換ターゲット20が形成されている。陰極基板4の光電変換ターゲット20に対向する側の面には、電子源構体10が設けられている。電子源構体10が搭載された陰極基板4と光電変換ターゲット20との間隔はスペーサ部材5により所定の距離(一実施例では3.2mm)に設定されている。電子源構体10と光電変換ターゲット20との間には、複数の電子ビーム通過孔(以下「開孔」という)が形成されたメッシュ電極40が設けられている。メッシュ電極40の光電変換ターゲット20側の面の、各開孔の周縁又はその近傍には複数の補助電子源41が設けられている。更に、メッシュ電極40と光電変換ターゲット20との間であって、光電変換ターゲット20に近い位置に、複数の貫通孔が形成された電子ビーム遮蔽電極30が設けられている。メッシュ電極40及び電子ビーム遮蔽電極30は、光透過性基板3及び陰極基板4に対して平行に、スペーサ部材5に支持されている。
【0023】
電子源構体10は、シリコン基板11上にマトリクス状に形成された電子放出源となる多数の電界放出型冷陰極(エミッタ)15と、各エミッタ15を囲むようにシリコン基板11上に形成された絶縁層12と、絶縁層12上に形成されたゲート電極13とを備える。このような電子源構体10は例えば特許文献2に記載の材料及び方法を用いて形成することができる。
【0024】
多数のエミッタ15が形成された領域は格子状に分割され、分割された各エリアが1画素に対応する。1画素に対応するエリア(以下「画素エリア」という)のそれぞれは、エミッタ15と、エミッタ15を取り囲むゲート電極13の開口とからなる数十個から数百個の対を含む。各エミッタ15はシリコンからなり、円錐形状又は四角錐などの多角錐形状のコーン型を有している。ゲート電極13の略円形の開口の周縁が、エミッタ15の先端から一定距離離れて、エミッタ15の先端を取り囲んでいる。エミッタ15とゲート電極13とはシリコン酸化膜からなる絶縁層12で電気的に分離されている。同一画素エリア内の複数のエミッタ15同士、及び同一画素エリア内のゲート電極13同士はそれぞれ互いに電気的に導通している。更に、格子点状に配置された複数の画素エリアのうち、同一列(縦方向ライン)上の複数の画素エリアに含まれるエミッタ15は互いに電気的に導通しており、同一行(横方向ライン)上の複数の画素エリアに含まれるゲート電極13は互いに電気的に導通している。
【0025】
複数の縦方向ラインに沿った複数のエミッタ電極ライン及び複数の横方向ラインに沿った複数のゲート電極ラインは、スペーサ部材5を貫通して、又はスペーサ部材5と陰極基板4との間の封着材料を貫通して、外囲器2外に導出され、電子源駆動回路53に接続されている。
【0026】
一実施例では、電子源構体10の多数のエミッタ15が形成された領域は、縦横比4:3、対角軸方向長さ16.9mm、縦480×横640の約31万画素を有している。画素エリアは一辺約21.2μmの正方形で、この画素エリア内に約400個のエミッタ15が形成されている。電子源構体10の外形寸法は、一辺約15mmの正方形、厚み0.7mmである。
【0027】
電子源構体10と電子ビーム遮蔽電極30とは、電子源構体10の画素と電子ビーム遮蔽電極30に形成された貫通孔とが一対一に対応するように配置されている。即ち、電子源構体10の各画素(画素エリア)の中心を通り、陰極基板4の法線と平行な直線上に、この画素に対する電子ビーム遮蔽電極30の貫通孔の中心が位置している。
【0028】
複数のエミッタ電極ラインのうちの1つに負電位(一実施例では−25V)を印加し、複数のゲート電極ラインのうちの1つの正電位(一実施例では+35V)を印加する。負電位が印加されたエミッタ電極ラインと正電位が印加されたゲート電極ラインとの交点に位置する画素エリアに含まれるエミッタ15から電子ビームが放出される。負電位を印加するエミッタ電極ライン及び正電位を印加するゲート電極ラインを時間的に順次切り替えることで、電子ビームを放出する画素エリアをいわゆる点順次走査にて順次切り替える。
【0029】
光透過性基板3及び陰極基板4としては、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどのガラス材やセラミック材などの絶縁材料であって、外囲器2内の真空気密性を保持できる材料が用いられる。一実施例では、汎用性の高いソーダガラスを用いることができる。
【0030】
光透過性基板3上の透光性陽極電極22及び光電変換膜23は、スパッタリングや真空蒸着法などによって形成することができる。一実施例では、光透過性基板3上に約10nm厚さのSnを含むIn23膜をスパッタリング法により形成して透光性陽極電極22とすることができる。この上に、厚さ約15nmのCeO2からなる正孔注入阻止層と、厚さ約5μmの非結晶Seからなる光導電膜とを真空蒸着法により形成し、更に、厚さ約100nmのSb23多孔質膜からなる電子ビームランディング層を低Arガス雰囲気で蒸着法により形成して、光電変換膜23とすることができる。透光性陽極電極22は、光透過性基板3を気密に貫通する棒状の電極リードピン26を介して外囲器2外の信号読取電源51に接続されて、所定の電位が印加される。
【0031】
本実施の形態1の撮像装置は、主に可視光に感度を有する撮像装置であるが、光電変換ターゲット20が形成される光透過性基板3を、たとえばBe、BN、Al、SiO2、Al23、又は有機高分子材料等のX線を透過しやすい材料に置き換えることにより、X線に感度を有する撮像装置を形成することもできる。
【0032】
メッシュ電極40及び電子ビーム遮蔽電極30として、一実施例ではアルミニウムの板材をホトリソ法にて開孔加工したものを用いることができる。この他、電鋳法で開孔を形成したニッケル板を用いることもできる。
【0033】
メッシュ電極40の各開孔の周縁又はその近傍には補助電子源41が設けられている。補助電子源41としては例えば電界放出型電子源を用いることができ、一実施例では、例えば特許文献3に開示されたような周知の材質及び製造方法によって形成されたCNT(カーボンナノチューブ)電子源を用いることができる。電子源の電子放出を行う微粒子としては、CNTの他に、カーボンファイバー、ダイアモンドライクカーボン、グラファイト、フラーレン等の炭素材料、或いはボロンナイトライド、シリコン、金、白金を用いることもできる。
【0034】
メッシュ電極40及び電子ビーム遮蔽電極30は、スペーサ部材5を気密に貫通する棒状の電極リードピン46,36を介して外囲器2外の電圧切替回路52に接続されて、所定の電位が印加される。
【0035】
本実施の形態1の撮像装置の撮像動作を図2を用いて説明する。電子源駆動回路53によって所定の駆動電圧が印加された画素エリア18内の各エミッタ15から広がり(一実施例では広がり角は半角で約25°)をもって電子ビーム70が光電変換ターゲット20に向かって放出される。電子ビーム70が光電変換ターゲット20に到達する過程で、電子ビーム70は、ゲート電極13、メッシュ電極40、電子ビーム遮蔽電極30、透光性陽極電極22の各電位によって形成される電圧勾配(図2中に、等電位線を点線60で図示)によって収束作用を受ける。実際の電子ビーム70の軌道はこの電圧勾配により曲げられるが、図2ではこれを簡略化して直線で描いている(後述する図3、図5も同様である)。画素エリア18内の複数のエミッタ15からそれぞれ放出された電子ビーム70の束のうち、周囲に位置する電子ビームは、この画素エリア18に対応する電子ビーム遮蔽電極30の貫通孔を通過できずに電子ビーム遮蔽電極30に衝突しトリミングされる。電子ビーム遮蔽電極30でトリミングされずにその貫通孔を通過した電子ビーム70は光電変換ターゲット20に射突して、画素エリア18に対応する位置に電子ビームスポットを形成する。電子ビームスポットが形成された領域内において、入射した光量に対応して光電変換膜23内に蓄積された電荷は電極リードピン26を介して外囲器2外の信号読取電源51に読み取り信号として出力される。マトリクス状に配置された多数の画素エリアのうち電子ビームを放出する画素エリアを順次切り替えて光電変換ターゲット20を電子ビームで順次走査することにより、入射光量の空間分布に対応した時系列電気信号を出力させることができる。光電変換ターゲット20上でのスポット径が所望する画素サイズになるように縮小化されるので、解像度及び鮮鋭度に優れた画像を得ることが出来る。上記において、画素エリア18のエミッタから放出された電子ビーム70の一部はメッシュ電極40によっても捕捉されるが、メッシュ電極40の主目的は、必要な電界を形成すること、及び補助電子源41を支持することにあり、電子ビーム70を捕捉することではないから、図2では電子ビーム70はメッシュ電極40によって捕捉されずにこれを素通りするように描いている。後述する図3、図5、図6も同様である。
【0036】
図7に示した従来の撮像装置では、電子源構体110のエミッタ115とシールドグリッド電極130に形成された貫通孔とが一対一に対応していたので、エミッタ115からそれぞれ放出される電子ビームごとに、その一部がシールドグリッド電極130で捕捉されていた。従って、1画素を複数のエミッタ115で構成した場合であっても、この複数のエミッタ115からそれぞれ放出される電子ビームの一部がそれぞれ同様にシールドグリッド電極130で捕捉されてしまい、電子ビームの利用効率が悪かった。これに対して、本実施の形態1では、電子源構体10の画素と電子ビーム遮蔽電極30に形成された貫通孔とが一対一に対応しているので、1画素ごとに、電子ビーム70の束のうち周囲に位置する不要な電子ビームのみが電子ビーム遮蔽電極30でトリミングされる。即ち、電子ビーム70の束のうち中央に位置する電子ビームはトリミングされずに光電変換ターゲット20に到達する。従って、従来の撮像装置に比べて電子ビームの利用効率が向上するので、高解像度画像を高効率で撮像することができる。
【0037】
一方、電子ビーム70が電子ビーム遮蔽電極30によりトリミングされることにより、電子ビームスポットが形成されない光電変換ターゲット20上の領域(電子ビーム非射突領域)25では、入射した光量に対応した電荷が光電変換膜23内に蓄積される。
【0038】
図7に示した従来の撮像装置では、この電荷が読み出されることなく光電変換膜123内に蓄積し、やがて蓄積電荷による電位が光電変換膜123の耐圧限界を超えると、光電変換膜123と透光性陽極電極122との間で放電が生じ、光電変換膜123及び透光性陽極電極122を含む光電変換ターゲット120が破損するという問題が生じていた。
【0039】
本実施の形態1ではこの光電変換ターゲットの破損を防止することが出来る。これを図3を用いて説明する。
【0040】
通常の撮像動作のためにエミッタ15から電子ビーム70が放出されているときは、図2に示したようにメッシュ電極40及び電子ビーム遮蔽電極30には同電位(一実施例では500V)が印加される。一方、エミッタ15から電子ビーム70が放出されていないとき(例えば正電位が印加されるゲート電極ラインを切り替える際の隙間期間)は、図3に示すように、電圧切替回路52により、メッシュ電極40に電子ビーム遮蔽電極30より低い電位(一実施例では250V)が印加される。この結果、メッシュ電極40と電子ビーム遮蔽電極30との間に電位差が生じ、両者間に電子ビーム遮蔽電極30側を正とする電界(図3中に、等電位線を点線61で図示)が生じる。この電界によって、メッシュ電極40の電子ビーム遮蔽電極30側の面に配置された補助電子源41の先端周辺に強電界が生じ、補助電子源41の先端から電子ビーム71が電界放出される。
【0041】
補助電子源41から放出された電子ビーム71は、メッシュ電極40、電子ビーム遮蔽電極30、透光性陽極電極22の各電位によって形成される電界により光電変換ターゲット20に向かう。電子ビーム71が光電変換ターゲット20に到達する過程で、電子ビーム71の一部は電子ビーム遮蔽電極30によってトリミングされ、残りは電子ビーム遮蔽電極30の貫通孔を通過して光電変換ターゲット20に射突する。光電変換ターゲット20に射突する電子ビーム71の軌道は、図2に示した撮像動作時にエミッタ15から出射して光電変換ターゲット20に射突する電子ビーム70の軌道と異なる。従って、撮像動作時の光電変換ターゲット20上の電子ビーム非射突領域25にも電子ビーム71が射突し、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷を電極リードピン26を介して外囲器2外に出力することができる。出力された電荷は撮像の観点からは無意味であるが、光電変換ターゲット20に蓄積された不所望な電荷を除去できるという観点からは大きな意味を有している。かくして、本実施の形態1によれば、撮像動作時に光電変換ターゲット20の電子ビーム非射突領域25内に蓄積した不所望な電荷を除去することができるので、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷によって光電変換ターゲット20が破損するのを防止することができる。
【0042】
また、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した不所望な電荷を確実に除去することができるので、光電変換ターゲット20上において電子ビーム非射突領域25が存在したり、その面積が大きかったりすることは問題とはならない。従って、画素に対応する電子ビーム遮蔽電極30に形成される貫通孔の開口径を小さくして、光電変換ターゲット20上での電子ビームスポットの径を小さくすることで、更に高解像度化された撮像装置を容易に実現できる。
【0043】
電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷を外囲器2外へ取り出す動作は、例えば各走査線の帰線期間内やフレーム間の帰線期間内に実施することが望ましい。
【0044】
上記の説明において、実際には全ての補助電子源41から電子ビーム71が電界放出されるが、図3では理解しやすいように、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷を除去するのに有効なビームのみを描いている。
【0045】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る撮像装置の概略構成を示した断面図である。実施の形態2に係る撮像装置を一実施例とともに説明する。図1に示した実施の形態1の撮像装置を構成する部材と同一の部材には同一の符号を付して、それらについての説明を省略する。以下、実施の形態1との相違点を中心に本実施の形態2の撮像装置を説明する。
【0046】
電子源構体10と電子ビーム遮蔽電極30との間に、実施の形態1の撮像装置では1枚のメッシュ電極40が設けられていたが、本実施の形態2の撮像装置では第1メッシュ電極42及び第2メッシュ電極43が設けられている。第1及び第2メッシュ電極42,43には、実施の形態1のメッシュ電極40と異なり補助電子源41は設けられていない。第1メッシュ電極42は、光透過性基板3及び陰極基板4に対して平行に、スペーサ部材5に支持されている。一方、第2メッシュ電極43は、光透過性基板3及び陰極基板4に対して傾斜して、スペーサ部材5に支持されている。第1及び第2メッシュ電極42,43として、実施の形態1のメッシュ電極40と同様に、一実施例ではアルミニウムの板材をホトリソ法にて開孔加工したものを用いることができる。この他、電鋳法で開孔を形成したニッケル板を用いることもできる。第1メッシュ電極42、第2メッシュ電極43、及び電子ビーム遮蔽電極30は、スペーサ部材5を気密に貫通する棒状の電極リードピン47,48,36を介して外囲器2外の電圧切替回路52に接続されて、所定の電位が印加される。
【0047】
本実施の形態2の撮像装置の撮像動作時には図5に示すように第1及び第2メッシュ電極42,43及び電子ビーム遮蔽電極30には同電位(一実施例では500V)が印加される。従って、実施の形態1と同様に、エミッタから広がりをもって放出された電子ビーム70は、光電変換ターゲット20に到達する過程で、ゲート電極13、第1及び第2メッシュ電極42,43、電子ビーム遮蔽電極30、透光性陽極電極22の各電位によって形成される電圧勾配(図5中に、等電位線を点線60で図示)によって収束作用を受ける。また、画素エリア18内の複数のエミッタ15からそれぞれ放出された電子ビーム70の束のうち、周囲に位置する電子ビームは、この画素エリア18に対応する電子ビーム遮蔽電極30の貫通孔を通過できずに電子ビーム遮蔽電極30に衝突しトリミングされる。電子ビーム遮蔽電極30でトリミングされずにその貫通孔を通過した電子ビーム70は光電変換ターゲット20に射突して、画素エリア18に対応する位置に電子ビームスポットを形成する。電子ビームスポットが形成された領域内において、入射した光量に対応して光電変換膜23内に蓄積された電荷を電極リードピン26を介して外囲器2外の信号読取電源51に読み取り信号として出力される。マトリクス状に配置された多数の画素エリアのうち電子ビームを放出する画素エリアを順次切り替えて光電変換ターゲット20を電子ビームで順次走査することにより、入射光量の空間分布に対応した時系列電気信号を出力させることができる。光電変換ターゲット20上でのスポット径が所望する画素サイズになるように縮小化されるので、解像度及び鮮鋭度に優れた画像を得ることが出来る。
【0048】
一方、エミッタ15から電子ビーム70が放出されていないとき(例えば正電位が印加されるゲート電極ラインを切り替える際の隙間期間)は、図6に示すように、電圧切替回路52により、第2メッシュ電極43に第1メッシュ電極42及び電子ビーム遮蔽電極30より低い電位(一実施例では350V)が印加される。この結果、第1メッシュ電極42と第2メッシュ電極43との間、及び第2メッシュ電極43と電子ビーム遮蔽電極30との間に、それぞれ電位差が生じ、第1メッシュ電極24と第2メッシュ電極43との間、及び第2メッシュ電極43と電子ビーム遮蔽電極30との間に電界(図6中に、等電位線を点線62,63で図示)が生じる。ここで、第1メッシュ電極42及び電子ビーム遮蔽電極30は光透過性基板3及び陰極基板4に対して平行であるのに対して、第2メッシュ電極43は光透過性基板3及び陰極基板4に対して傾斜している。従って、第1メッシュ電極42と電子ビーム遮蔽電極30との間に形成された電界は、光透過性基板3及び陰極基板4に平行な面内において不均一になる。この状態でエミッタ15から電子ビーム70を放出させると、電子ビーム70は第1メッシュ電極42と電子ビーム遮蔽電極30との間において偏向され、偏向された電子ビーム70の一部は電子ビーム遮蔽電極30の貫通孔を通過して光電変換ターゲット70に射突する。図6に示した光電変換ターゲット70に射突する電子ビーム70の軌道は、図5に示した撮像動作時の光電変換ターゲット20に射突する電子ビーム70の軌道と異なる。従って、撮像動作時の光電変換ターゲット20上の電子ビーム非射突領域25にも電子ビーム70が射突し、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷を電極リードピン26を介して外囲器2外に出力することができる。かくして、本実施の形態2によれば、撮像動作時に光電変換ターゲット20の電子ビーム非射突領域25内に蓄積した不所望な電荷を除去することができるので、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷によって光電変換ターゲット20が破損するのを防止することができる。
【0049】
上記の説明において、実際には全てのエミッタ15から電子ビーム70が放出されるが、図6では理解しやすいように、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷を除去するのに有効な電子ビームのみを描いている。
【0050】
また、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した不所望な電荷を確実に除去することができるので、光電変換ターゲット20上において電子ビーム非射突領域25が存在したり、その面積が大きかったりすることは問題とはならない。従って、画素に対応する電子ビーム遮蔽電極30に形成される貫通孔の開口径を小さくして、光電変換ターゲット20上での電子ビームスポットの径を小さくすることで、更に高解像度化された撮像装置を容易に実現できる。
【0051】
実施の形態1と異なり、実施の形態2では、不所望電荷除去動作時に光電変換ターゲット20に射突する電子ビーム70はエミッタ15から放出される。従って、不所望電荷除去動作時に第2メッシュ電極43への電位の切り替え動作に同期して、エミッタ15から電子ビーム70が放出されるのに必要な電位が電子源構体10のエミッタ電極ライン及びゲート電極ラインに印加されるように、電子源駆動回路53が設計される。不所望電荷除去動作時には、電子源構体10に含まれるすべてのエミッタ15から電子ビーム70を放出させる必要はなく、電子ビーム非射突領域25に電子ビーム70を射突させることができるのであれば、一部のエミッタ15のみから電子ビーム70を放出させても良い。
【0052】
上記の実施の形態2では不所望電荷除去動作時には、第1メッシュ電極42及び電子ビーム遮蔽電極30には撮像動作時と同じ電位を印加し、第2メッシュ電極43には撮像動作時より低い電位を印加したが、本発明はこれに限定されない。例えば、不所望電荷除去動作時に、第1メッシュ電極42及び電子ビーム遮蔽電極30には撮像動作時と同じ電位を印加しながら、第2メッシュ電極43に撮像動作時より高い電位を印加したり、撮像動作時に比べて低い電位と高い電位とを時間的に切り替えて印加したりしても良い。これらの場合にも第1メッシュ電極42と電子ビーム遮蔽電極30との間に形成される電界を撮像動作時と不所望電荷除去動作時とで異ならせることができるので、光電変換ターゲット20上の電子ビーム非射突領域25に不所望電荷除去動作時に電子ビームを射突させることができ、本実施の形態2の上記の効果を得ることが出来る。
【0053】
実施の形態2においても、電子ビーム非射突領域25内に蓄積した電荷を外囲器2外へ取り出す動作は、例えば各走査線の帰線期間内やフレーム間の帰線期間内に実施することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の利用分野は特に制限はなく、高信頼性を有し、高解像度画像を撮像できる撮像装置として広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置の概略構成を示した断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置の撮像動作を示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置の不所望電荷除去動作を説明する断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係る撮像装置の概略構成を示した断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2に係る撮像装置の撮像動作を示した断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る撮像装置の不所望電荷除去動作を説明する断面図である。
【図7】図7は、従来の電界放出型冷陰極を備えた撮像装置の概略構成を示した断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 入射光
2 外囲器
3 光透過性基板
4 陰極基板
5 スペーサ部材
10 電子源構体
11 シリコン基板
12 絶縁層
13 ゲート電極
15 電界放出型冷陰極(エミッタ)
18 画素エリア
20 光電変換ターゲット
22 透光性陽極電極
23 光電変換膜
25 電子ビーム非射突領域
26 電極リードピン
30 電子ビーム遮蔽電極
36 電極リードピン
40 メッシュ電極
41 補助電子源
42 第1メッシュ電極
43 第2メッシュ電極
46,47,48 電極リードピン
51 信号読取電源
52 電圧切替回路
53 電子源駆動回路
70,71 電子ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部が真空に保持され、光透過性基板を有する外囲器と、
複数の電界放出型冷陰極を有し、前記光透過性基板に対向して前記外囲器内に配置された電子源構体と、
前記光透過性基板の前記電子源構体に対向する側の面に形成され、前記光透過性基板を透過した光に応じた信号電荷を発生し蓄積する光電変換膜を含む光電変換ターゲットと、
前記光透過性基板と前記電子源構体との間に配置された電子ビーム遮蔽電極と
を備え、
前記電界放出型冷陰極から放出された電子ビームを前記光電変換ターゲットに射突させて前記光電変換膜中に発生し蓄積した信号電荷を時系列電気信号として取り出す撮像装置であって、
前記電子ビーム遮蔽電極と前記電子源構体との間に、複数の電子ビーム通過孔が形成されたメッシュ電極を更に備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記電子源構体の画素と前記電子ビーム遮蔽電極に形成された貫通孔とが一対一に対応している請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記電界放出型冷陰極から放出された前記電子ビームが前記電子ビーム遮蔽電極により遮蔽されることにより前記電子ビームが射突しない前記光電変換ターゲット上の領域に、電子ビームを射突させる電子ビーム射突手段を更に備える請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記電子ビーム射突手段が、前記メッシュ電極に設けられた複数の電子放出源を含む請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記メッシュ電極の数が2つ以上であり、前記2つ以上のメッシュ電極のうちの少なくとも1つが前記光電変換ターゲットに対して傾斜しており、
前記電子ビーム射突手段が、前記光電変換ターゲットに対して傾斜した前記メッシュ電極を含む請求項3に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−235221(P2008−235221A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77320(P2007−77320)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(503217783)MT映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】