説明

撹拌装置

【課題】 種々の形状を有する容器内の撹拌を良好に行うことができる撹拌装置を提供する。
【解決手段】 蓋体20と、磁石5を内蔵した撹拌子2が一端側に取り付けられた吊材11と、蓋体20から撹拌子2を吊り下げ可能なように吊材11を蓋体20に固定する固定手段とを備え、蓋体20は、複数の突起21cを下面に備える撹拌装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を撹拌する撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内の液状の試料を撹拌する撹拌子としては、試料が入った容器の底面に沈められ、容器の下方に設置されたマグネチックスターラーから回転する磁力を受けて回転することにより、試料を撹拌するものが一般的に知られているが、これでは、撹拌子と容器底面との摩擦により、容器底面にある細胞等の試料を破壊してしまうおそれがあるので、これを防止するためには、撹拌子が容器底面に接触しない構成であることが望ましい。
【0003】
このような構成を有するものとして、特許文献1に記載された使い捨て容器100がある。この使い捨て容器100は、図5に示すように、蓋体125と、開口部が蓋体125の外周面により密閉されている容器105と、蓋体125の下面に固着された吊材150の先端に取り付けられ、内部に磁石139を含む撹拌子140とを備えた容器であり、マグネチックスターラー310から回転する磁力を受けて、旋回点152を回転中心として撹拌子140が回転することにより液体300を撹拌するものである。
【特許文献1】特表2004−534544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような撹拌用の装置では、試験目的等に応じて、種々の深さや開口径を有する容器内の試料を撹拌することが求められる。
【0005】
しかし、上記使い捨て容器100は、試料等を撹拌するための吊材150が蓋体125に固着しており、また、蓋体125が容器105に密着するように構成されているので、種々の深さや開口径を有する容器105を撹拌する場合には、個々の容器105の形状に対応した撹拌装置が必要となり、効率的ではなかった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、種々の形状を有する容器内の撹拌を良好に行うことができる撹拌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、蓋体と、磁石を内蔵した撹拌子が一端側に取り付けられた吊材と、前記蓋体から前記撹拌子を吊り下げ可能なように前記吊材を前記蓋体に固定する固定手段とを備え、前記蓋体は、複数の突起を下面に備える撹拌装置により達成される。
【0008】
また、前記突起は、前記蓋体の中心から放射状に間隔をあけて設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記蓋体は、中心から放射状に延びる複数の翼部を備えており、前記突起は、前記翼部に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記蓋体は、中心に挿入孔が形成されており、前記固定手段は、前記吊材を前記挿入孔に挿通された状態で固定することが好ましい。
【0011】
また、前記固定手段は、前記蓋体の上部に設けられた平板状の突部と、該突部に形成されたV字状の切欠部とを備えることが好ましい。
【0012】
或いは、前記固定手段は、前記蓋体の上部に設けられた平板状の突部と、該突部を前記吊材と共に狭持する狭持手段とを備えることが好ましい。
【0013】
また、各前記撹拌装置において、前記撹拌子は、縦方向の両端に異なる極性を有する縦長状の部材であり、一端側が前記吊材に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記撹拌子は、表面から放射状に延びる複数の羽根を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撹拌装置によれば、種々の形状を有する容器内の撹拌を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る撹拌装置1の側面断面図、図2は、上面図である。
【0017】
図1に示すように、この撹拌装置1は、蓋体20と、蓋体20の中心付近から吊り下げられた吊材11と、吊材11の一端に取り付けられた撹拌子2とを備えている。この撹拌装置1は、例えば、ビーカーやフラスコ等の容器60の上部に設置される。容器60は、内部に液状の試料bが収容され、マグネチックスターラー70の上面に載置される。
【0018】
蓋体20は、例えば、PET樹脂やフッ素樹脂等のプラスチックで成形された部材であり、図2に示すように、中心部の円板26と、円板26から放射状に延びる複数の翼部25を備えている。円板26は、中心に吊材11を通すための挿入孔23が形成されている。また、円板26の上面には、吊材11を固定するための平板状の突部27が設けられており、下面には、小径容器用リブ21aが挿入孔23の同心円に沿って、円弧状に複数設けられている。小径容器用リブ21aは、例えばフラスコ等の開口径が小さい容器に用いるものである。翼部25は、それぞれ円板26の表面に沿って延びるように形成されており、下面には、円弧状の大径容器用リブ21bが挿入孔23の複数の同心円に沿って、同心円毎に複数設けられている。大径容器用リブ21bは、蓋体20の中心から径方向に間隔をあけて設けられており、開口径が大きい容器60に用いるものである。
【0019】
吊材11は、本実施形態ではフッ素樹脂製のたこ糸が用いられており、一端には撹拌子2が取り付けられている。吊材11の材質は、撹拌子2を吊り下げるために十分な強度を有するものであれば特に限定されず、ワイヤーやプラスチック製のコードなどであってもよい。この場合、表面がフッ素樹脂等で被覆されていることが好ましい。また、吊材11は、撹拌子2が回転した際に、回転に対する抵抗が小さいものが好ましく、線材の他、紐状や帯状などであってもよい。吊材11の他端は、挿入孔23へ挿通され、クリップ30により突部27に固定されている。クリップ30は、バネ力を利用して物をはさむ公知のものを使用でき、内面にゴム板33が取り付けられている。
【0020】
撹拌子2は、縦長状の磁石5の表面を、例えばフッ素樹脂やポリエチレン樹脂等の耐薬品性の樹脂で被覆したものであり、表面には縦方向に沿って形成された羽根3が放射状に延びている。また、撹拌子2は、縦方向の両端が、それぞれN極及びS極になっており、一端(本実施形態ではN極)が吊材11に固定されている。
【0021】
マグネチックスターラー70は、筐体75と、筐体75内に設置された電動モーター71と、電動モーター71に取り付けられた回転板73と、回転板73の上面に設置された2つの磁石72a、72bとを備えている。2つの磁石72a、72bは、互いに逆磁性で設置されており、例えば、磁石72aの上側がS極であれば、磁石72bの上側はN極となっている。
【0022】
次に、以上のように構成された撹拌装置1を用いて試料bを撹拌する方法を説明する。
【0023】
まず、吊材11の撹拌子2とは反対側の先端を、蓋体20の下方から挿入孔23に挿入し、蓋体20上部にある突部27に巻き付ける等した後、クリップ30で狭持して固定する。この際、吊材11の長さを調節して、蓋体20より下方にある吊材11を所望の長さに設定する。こうして、吊材11は、容器60の深さに応じて長さが調節され、蓋体20に固定される。吊材11を挿入孔23に挿通するので、長さを容易に調節することができると共に、試料bを一様に撹拌することができる。また、吊材11をクリップ30で狭持するので、蓋体20に容易かつ強固に固定することができる。
【0024】
次に、マグネチックスターラー70の上面に、試料bが収容された容器60を載せ、容器60の開口縁部にリブ21a、21bを係合させることにより、撹拌装置1を容器60上に設置する。この時、小径容器用リブ21aは開口径が小さい容器60との係合に用いることができ、また、大径容器用リブ21bは開口径が大きい容器60との係合に用いることができる。これにより、撹拌装置1を容器60の開口径に拘わらず使用することができる。また、容器60内に吊り下げられた撹拌子2は、先端が容器60の底面に接触しない位置で保持され、試料bに縦向きで浸漬する。このように、容器60の開口径に応じてリブ21a、21bを係合させるので、種々の開口径を有する容器60に撹拌装置1を適用することができる。
【0025】
その後、マグネチックスターラー70のスイッチをオンにして、電動モーター71を駆動させる。電動モーター71の回転により、回転板73及び磁石72a、72bが回転し、容器60の下方に周方向の回転磁気が発生する。これにより、磁石5を内蔵した撹拌子2は、磁石72a、72bによる回転磁気に引き寄せられ、試料b内を回転する。また、撹拌子2は、縦方向の一端、例えばS極が磁石72bと引き合い、容器60の周方向に対して縦向きで回転する。こうして、試料bは、撹拌子2及び、その表面から延びる羽根3により撹拌される。
【0026】
このように、撹拌子2が容器60の周方向に対して縦向きで回転するので、容器60の深さ方向にわたっても試料bを撹拌することができ、周方向の回転速度が低速であっても、試料b全体を容易に撹拌することができる。また、撹拌子2は羽根3を備えているので、試料bに接する面積が大きくなり、試料bを容易に撹拌することができる。更に、吊材11の長さを調節して、撹拌子2が容器60の底面に接触しないようにしたので、例えば、容器60底面に存在する細胞等の試料の破壊を防止することができ、撹拌を良好に行うことができる。また、容器60底面を傷付けることがないので、試料bの汚染を防止することができる。また、撹拌子2と容器60との摩擦音の発生を防止することができる。
【0027】
以上のように、本実施形態の撹拌装置によれば、種々の形状を有する容器内の撹拌を良好に行うことができる。
【0028】
撹拌終了後は、撹拌装置1を容器60から取り外す。こうして、撹拌子2は、試料bから取り出される。撹拌装置1を取り外すのみで、撹拌子2を試料bから取り出すことができるので、試料bに触れる必要がなく、手を試料で汚さずに容易に取り出すことができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、翼部25は水平に形成されていたが、図3に示すように、上方に傾斜させてもよい。この場合、翼部25は、蓋体20の中心部にある円板26から、放射方向へ斜め上向きに延びている。このような構成であると、撹拌子2が磁石72a、72bにより下方へ引き寄せられると、翼部25が傾斜しているので、蓋体20は容器60の中心へ引き寄せられ、吊材11の回転中心が容器60の中心付近に保持される。翼部25を傾斜させたので、吊材11の回転中心を容器60の中心付近に確実に保持することができ、撹拌を良好に行うことができる。この構成においては、翼部25の傾斜により、容器60への撹拌装置1の位置合わせを行うことができるので、大径容器用リブ21bは必ずしも必要ではない。
【0030】
また、本実施形態では、突部27とクリップ30により固定手段を構成していたが、図4に示すように、突部27に吊材11を固定するための切欠部29をV字形に形成して、固定手段を構成してもよい。このような場合、吊材11を蓋体20に固定するときは、蓋体20より上方にある部分を、切欠部29に差し込む。これにより、吊材11を蓋体20に容易に固定することができる。また、切欠部29を複数形成し、吊材11を複数の切欠部29に差し込んだり、差し込み位置を変更したりしてもよい。これにより、磁力が強い場合であっても、吊材11をより容易かつ強固に固定することができる。
【0031】
また、本実施形態では、容器60は、例えばビーカー等の開口部が円形のものであったが、矩形状や三角形状等、種々の開口部を有するものであってもよい。この場合、開口縁部に係合する小径容器用リブ21a又は大径容器用リブ21bの位置や大きさは、適宜設計変更できる。
【0032】
また、蓋体20の構成は、下面に突起が設けられたものであれば、特に限定されない。図6は、本発明の他の実施形態に係る撹拌装置1の下面図である。この撹拌装置1は、蓋体20と、蓋体20の下面に設けられた複数の突起21cと、吊材11と、撹拌子2と、固定手段とを備えている。蓋体20は、円盤状であり、中心部には、挿入孔23が形成されている。吊材11、撹拌子2及び固定手段の構成は、図1ないし図4に示した構成と同様である。このような構成では、容器60の開口径に応じて複数の突起21cを選択して、開口縁部に係合させることにより、撹拌装置1を容器60上に設置する。このように、容器60の開口径に応じて突起21cを係合させるので、種々の開口径を有する容器60に撹拌装置1を適用することができる。
【0033】
また、この場合、突起21cは、蓋体20の中心から放射状に間隔をあけて設けられていることが好ましい。これにより、撹拌装置1を容器60の中央に安定して設置することができる。また、突起21cは、放射状に3方向へ延びる仮想線に沿って、等間隔で設けられていることが好ましく、隣接する仮想線同士のなす角が等しいことが更に好ましい。これにより、例えば、破線で示すような矩形状や三角形状等、種々の形状の開口部を有する容器60に撹拌装置1を容易に適用することができる。また、この突起21cは、容器60の開口縁部に係合するものであれば、その形、数及び配置位置等は特に限定されるものではない。
【0034】
また、蓋体20は、容器60上に設置できるものであれば、その形や大きさは限定されない。例えば、蓋体20は、円錐状であり、容器60内に円錐の頂点が突出するような構成であってもよい。このような構成であると、撹拌子2が磁石72a、72bにより引き寄せられると、蓋体20は、円錐状なので、容器60の中心へ引き寄せられ、吊材11の回転中心が容器60の中心付近に保持される。これにより、撹拌を良好に行うことができる。
【0035】
また、撹拌子2の形状は、試料bを良好に撹拌できれば特に限定されず、羽根3を備えない棒状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る撹拌装置の側面断面図である。
【図2】図1に示す撹拌装置の上面図である。
【図3】他の実施形態に係る撹拌装置の側面断面図である。
【図4】他の実施形態に係る撹拌装置の要部を示す図である。
【図5】従来の撹拌装置の斜視図である。
【図6】他の実施形態に係る撹拌装置の下面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 撹拌装置
2 撹拌子
3 羽根
5 磁石
11 吊材
20 蓋体
21a 小径容器用リブ
21b 大径容器用リブ
21c 突起
23 挿入孔
25 翼部
27 突部
29 切欠部
30 クリップ
60 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体と、
磁石を内蔵した撹拌子が一端側に取り付けられた吊材と、
前記蓋体から前記撹拌子を吊り下げ可能なように前記吊材を前記蓋体に固定する固定手段とを備え、
前記蓋体は、複数の突起を下面に備える撹拌装置。
【請求項2】
前記突起は、前記蓋体の中心から放射状に間隔をあけて設けられている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記蓋体は、中心から放射状に延びる複数の翼部を備えており、
前記突起は、前記翼部に設けられている請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記蓋体は、中心に挿入孔が形成されており、
前記固定手段は、前記吊材を前記挿入孔に挿通された状態で固定する請求項1から3のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記固定手段は、前記蓋体の上部に設けられた平板状の突部と、該突部に形成されたV字状の切欠部とを備える請求項1から4のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記固定手段は、前記蓋体の上部に設けられた平板状の突部と、該突部を前記吊材と共に狭持する狭持手段とを備える請求項1から4のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記撹拌子は、縦方向の両端に異なる極性を有する縦長状の部材であり、一端側が前記吊材に取り付けられている請求項1から6のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記撹拌子は、表面から放射状に延びる複数の羽根を備えている請求項1から7のいずれかに記載の撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−346582(P2006−346582A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176294(P2005−176294)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(397069868)アズワン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】