説明

擬似立体画像による眼力トレーニングシート及びその使用方法

【課題】 視線と輻輳角及び焦点調節を繰返し行なうための眼力トレーニングシートを提供する。
【解決手段】水平方向に配置された互いに類似する1対の右画像と左画像を、観察者が右目で右画像を左目で左画像を注視する際に、2個の目では、眼球周辺に備える上下直筋と外内直筋と上下斜筋を意識して動かして見る方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体とチン小帯と水晶体とを意識して動かして焦点を定め、脳が備える立体を認識する機能により右画像と左画像とが重なって行き、視覚上で奥行き感のある擬似立体像が認識される平行法を、または左目で右画像を右目で左画像を注視する際には、飛び出し感のある擬似立体像が認識される交差法を実現するように、右画像と左画像が固定的に表示されるシートであって、このシートの面に右画像と左画像を複数行にそれぞれ表示すとともに、互いに隣接する行では、右画像と左画像とが次第に離隔または接近して行く傾向にして配置し、これを繰返し注視するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似立体画像による眼力トレーニングシート及びその使用方法、即ち印刷物を使用した眼力訓練方法とその印刷物に関するものであり、特に、日常的に目にする新聞や雑誌を使用して、コンピュータ画面を見る世代及び高齢者に利用される擬似立体画像による眼力トレーニングシート及びその使用方法に関ものである。
【背景技術】
【0002】
近来、急速な発展を成し遂げている電子文明は、各種の電子表示装置を見る世代を増大させている。その結果多くの仮性近視を生み出し目の健康、眼力への留意が注目を浴びている。又寿命が延びて高齢化に伴い何時までも健康な眼力を維持することが望まれている。
【0003】
従来の眼力トレーニングシートでは図15に示す15点紙40を使用する。
15点紙40は例えばA4用紙に上方に左から右に等距離に数字1〜5を、中央に左から右に等距離に数字6〜10を、下方に左から右に等距離に数字11〜15を表示する。
訓練者は15点紙40を両手で持ち、顔を正面中央の数字8に向けたまま、まず数字1から始めて15まで眼球を動かすことで順番に視認する。次に数字1と2を同時に視認することから始めて順次13と14まで眼球を動かすことで順番に視認する。
また次に数字1と2と3を同時に視認することから始めて順次13と14と15まで眼球を動かすことで順番に視認する。
更にまた数字1と2と3と4を同時に視認することから始めて順次13と14と15まで眼球を動かすことで順番に視認する。同時視認する数字を増加したり、読み順を逆に15から始めたりして毎日10分以上続ける。
更に訓練者は15点紙40を顔に近づけて同様に数字を読み、次に15点紙40を顔から遠ざけて同様に数字を読みこれらを繰り返す。かくして眼の毛様体と眼球移動筋等が鍛えられる。
【0004】
非特許文献1 三笠書房 あなたの視力は必ず回復する
中川和宏著 1997年5月10日
では紙面にちりばめた各種図形・文字を目で追って眼力を鍛えている。
非特許文献2 株:ワニマガジン社 視力・脳力を鍛えるハイパー・マジカル3D
河村明弘 監修 2003年10月25日
では1枚のハイパー・マジカル3Dを左右の目で見つめて擬似立体画像を脳で認識させている。
非特許文献3 株:中経出版 5分で目が良くなる3Dの不思議な世界
中川和宏著 2003年12月18日
では1枚の立体用画像を、又接している2枚の左右画像を左右の目で見つめて、擬似立体画像を脳で認識させている。
非特許文献 4 株:学習研究社 脳活性3Dトレーニング・ドリル
栗田昌裕著 2005年6月25日
では接している2枚の左右風景画像を左右の目で見つめて、擬似立体画像を脳で認識させている。
非特許文献 5株:日本文芸社 視力回復 アイバランスメガネ
にちぶんMOOK 平成14年8月10日
では1枚の3Dステレオグラフィックを左右の目で見つめて擬似立体画像を脳で認識させている。
【0005】
従来例の代表的発明が、本願発明者の一人が行なった、特許文献1の電子画面に表示される左右の映像を、時間列で交互に左右の目に見せて立体画像を脳で認識させている。時間列で交互に左右の目に見せるために電子シャッター付きの電子メガネを使用する「立体映像を利用する視力回復装置及び立体映像の表示方法」である。
【特許文献】 特開2002−336317(特願2001−179352)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の15点紙40では、眼からの情報を処理する脳の機能、特に立体認識機能を実行させるものではなく、意識と注視と眼球運動及び焦点調節運動を活発化するものには到たらなかった。
非特許文献1−5に示される印刷物やシートでは、視線と輻輳角及び焦点調節を繰返し行なうものではないので、充分な眼筋トレーニングにはならなかった。
特許文献1では観察用の電子シャッター眼鏡を購入しなければならなかった。またテレビ画面を見るので、家庭や事務所では家族や他人の承諾を得てテレビを使用する煩わしさがあった。また非特許文献1−5では、これらの本屋絵本をいつも手元に置く必要があり、置き忘れると眼のトレーニングを止めてしまう欠点があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するために案出されたものであり、毎朝見る手元の新聞や、事務所の休憩室にある雑誌をめくる毎に気楽に何時でもできる、擬似立体画像による眼力トレーニングシート及びその使用方法を提供することが目的である。
本発明の他の目的は、擬似立体画像に商品図柄を使用することで、商品・サービスの広告や消費者への企業アピールを平行して行なうことができる擬似立体画像による眼力トレーニングシート及びその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、水平方向に配置された互いに類似する1対の右画像と左画像を、観察者が右目で右画像を左目で左画像を注視する際に、前記観察者が持つ水平方向の2個の目では、眼球周辺に備える2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を意識して動かして見る方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体62とチン小帯65と水晶体61とを意識して動かして焦点を定め、しばらくこの状態を保っていると脳が備える立体を認識する機能(視覚機能)により前記右画像と前記左画像とが重なって行き、これら前記右画像と前記左画像の中間に視覚上で奥行き(沈んだ)感のある擬似立体像が認識される平行法(パラレル)を、または左目で前記右画像を右目で前記左画像を注視する際には、前記2個の目では、眼球周辺に備える2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を意識して動かして見る方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体62とチン小帯65と水晶体61とを意識して動かして焦点を定め、前記立体を認識する機能(視覚機能)により視覚上で飛び出し(浮かんだ)感のある擬似立体像が認識される交差法(クロス)を実現するように前記右画像と前記左画像が固定的に表示されるシートであって、前記シートの面に前記右画像と前記左画像を複数行にそれぞれ表示すとともに、互いに隣接する行では、前記右画像と前記左画像とが次第に離隔または接近して行く傾向にして配置した眼力トレーニングシートを繰返し注視することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
大人も子供も高齢者も、年齢・性別を問わず毎朝新聞を、また通勤電車の中で本に目を通す・見るついでに3分間本願の印刷物を見つめることで、眼力の鍛錬となり、手間や時間や特別な費用をかけることなく目の健康が増進・維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を説明する前に、視力と脳の解釈構造及び左右目による遠近図法や立体視の基本的な原理についてそれぞれ説明する。
まず、人間の脳について、大脳生理学・解剖学上公知の構造・機能について図9、図10で説明する。
近年脳医学や生体脳スキャナーや脳波の研究・開明や生化学の進歩により、人間の脳構造と脳の各種機能と機能部位(大脳での分布位置)が明らかにされつつある。
図解雑学「脳のしくみ」岩田誠監修によると、人間の脳10ではほぼ左右対称の左脳11と右脳12とからなる大脳とその後ろ下方の小脳13とから構成される。脳全体を大脳皮質14が被っているが左右の側頭連合野15の(耳)下方に小面積の聴覚野16がそれぞれあり、後方の後頭連合18の下方(小脳13の上方)で左右に小面積の視覚野19がそれぞれある。
【0011】
球体の大脳皮質は側面から見て、空間領域分布では前頭葉20、頂上の頭頂葉21、後頭葉22、側頭葉23から構成される。
耳の情報を受けるのが聴覚野16で、それは左右耳のやや上方、側頭葉23の中央下方部にあり、一方眼の情報を受ける左右視覚野19は左右後頭葉22の最後部下端にある。
更に大脳は機能上では、5感からの情報を処理し、判断する5つの連合野からなり、これらは前頭連合野24、頂上の頭頂連合野25、後頭連合野18、側頭連合野15、前頭連合野24と頭頂連合野25に挟まれた運動連合野26である。各連合野は左右の脳に対象的に分布し、各連合野は脳発達・成長とともにその機能性を高めて行く。
【0012】
視覚野19が、目からの色、形、奥行き、動き情報を受けて、後頭連合野18ではこれらの情報を分析・統合して対象物を判断し認識する。
また脳には交叉支配というものがあり、右目を始め体の右の情報・運動は左脳に支配され、左目を始め体の左の情報・運動は右脳に支配される。
脳の左半球の働きは、話す、書く、判断など論理的思考、計算機能が主である。一方右半球は左右の視野に対して満遍なく対応する機能があり、空間内の総合認識や操作機能を優位に備えている。更に右半球は、絵画の全体的構成、未知のメロディーの認知、視覚に入る外界の全体的情報の解読に優位に機能する。
【0013】
次に、左右目による遠近図法や立体視の基本的な原理では、人間において、左右の眼に同一の物体であっても両眼の並んだ水平方向に位置がずれた視差を有して結像している。図11に示すように人間が太陽や遠くの山や川等の無限遠を見ている時には、眼球が動いて左右の眼に入る光軸(左右の視線)が平行になり、左の眼に見えるものは右に移動し、右の眼に見える同一のものは左に移動した状態で見える。図12において光軸が平行な状態では、眼に近い位置の物体の視差S1は遠い物体の視差S2、S3より大きくなっている。遠くになればなるほど視差は次第に小さくなるS1>S2>S3。
【0014】
また目先から約100メートル先までの物体を見ると、図13において左右の眼球がその方向を向くように動き、左右の眼は、見ている物体に対して輻輳角Tを形成する。眼に近い位置の物体の輻輳角T1は遠い物体の輻輳角T2より大きくなっているT1>T2。
左右の眼から入った画像は左右が交叉して図9、10の右左の視覚野19が、目からの色、形、奥行き、動き情報を受け、後頭連合野18ではこれらの情報を分析・統合して対象物を判断し立体画像を認識する。
【0015】
人間の脳はこれら図13の輻輳角Tと図12の視差Sにより当該物体の立体像を認識し且つ遠近を判断している。この輻輳角T1、T2は本来人間の脳が、両眼球の視線と焦点調節(水晶体の調節)と左・右視差に基づいて認識する。
さて、図14において、人間の眼の手前から次第に離れるように、物体B1、B2、次に文字が描かれた印刷物P、物体B3、B4が順に並べたものを見る場合を考察する。
【0016】
目が透明下地の印刷物Pの文字に焦点を合わせると、その物体(印刷物)P上で左右の眼の光軸が交差するが、印刷物Pの手前にある物体B1、B2では左右の視差について、左の眼に見えるものは右に移動し、右の眼に見える同一のものは左に移動した状態で見える。
図14ではその後、左目をカバーCで覆い右目でこれらを見る場合の状態を示し、透明板Pの手前にある物体B1、B2では、図12の目の光軸が互いに平行の場合と同様に、右の眼に見える同一の物体B1、B2は夫々左に移動した状態で見え、且つ眼に近い位置の物体B1の変移量L1は遠い物体B2の変移量L2より大きくなっている。遠くになればなるほど変移量(視差の一要素)は次第に小さくなる(L1>L2、これを正比例と定義、後述する交差法に該当)。
【0017】
図14でその後、右目をカバーCで覆い(図示せず)左目でこれらを見ると、透明板Pの手前にある物体B1、B2では、左の眼に見える同一の物体B1、B2は夫々右に移動した状態で見え、且つ眼に近い位置の物体B1の変移量は遠い物体B2の変移量より大きくなることが図示しないが容易に推測できる。
左の眼に見える同一の物体B1の変移量と、右の眼に見える同一の物体B1の変移量との和が視差となるが以後の説明では以下この変移量も視差として説明する。
さて、図14においてこの交差点(印刷物P)より以遠では、右の眼に見える同一物体B3、B4は夫々逆に右に移動した状態で見える。更に、この交差点より以遠では、逆に右眼(透明板P)に近い位置の物体B3の変移量L3は、遠い物体B4の変移量L4より小さくなっている。眼(交差点・印刷物P)より遠くになればなるほど視差は次第に大きくなる(L3<L4反比例となる、後述する交差法に該当)。
【0018】
図示しないが、同様に左の眼に見える同一物体B3、B4は夫々左に移動して見え、変移量についても反比例となることが容易に推測できる。
即ち、交差点(透明板の印刷物P)を境にして、手前と以遠とでは、変移方向と変移量が逆転するのである。
これは新聞紙を正面にして手前にある自分の指を見つめて、指を目に近づけて指に目の焦点を合わせていくと、動かない新聞紙は焦点がぼけてくるが左右に大きく視野一杯に広がって見えてくることで、理解できる。
【0019】
更に図16において、視差について詳しく説明する。3次元空間にある物体即ち視標10aを人間が見る場合、左目53Lと右目53Rの網膜に写った像の違いを脳内の視覚野19と、後頭連合野18で処理して奥行きを知覚すると考えられている。動物たる人類の左右の目53L・53Rは約4−5cm離れているため、その視差(両眼視差)は近距離において奥行きを知覚するもっとも重要な要因となっている。
今理解を容易にするため視標10aを立方体とし、側面に円が描かれている、左目53Lには立方体10aの左側面51が広く見え、右側面52が狭まって(細長い楕円状)見える。これを左目視差効果度と定義する。
一方右目53Rには立方体10aの右側面52が広く(円状に)見え、左側面51が狭まって(長方形に)見える。これを右目視差効果度と定義する。
【0020】
自然界に於ける人間の目では、左右の目53L・53Rが約4−5cm離れている理由で、右目視差効果度と左目視差効果度とこれらの映像相関計数は万人に共通で一定の規則性に従っている。
これらの映像相関計数=右目視差効果度と左目視差効果度の差と和で定義する。
一方コンピュータ映像では、映像制作過程で、右目視差効果度と左目視差効果度とこれらの映像相関計数とを自由に変化・設定が可能である。しかし、自然界に於けるで一定の規則性に従った右目視差効果度と左目視差効果度呼び映像相関計数に対して、コンピュータで制作した立体映像データが余りにかけ離れたものになると、観賞時に観察者の脳は混乱してしまい映像目眩や吐き気をもようすことがある。
【0021】
次に図17において、無限遠点W(人間の生活空間では10m後方で充分)から距離L1に立方体10aがある場合と、距離L2に立方体10aがある場合と、距離L3に立方体10aがある場合とを考察する。距離L2は丁度新聞紙等の位置とする。
立方体10aを見る場合には、観察者に近い距離L3の立方体10aは大きく(表示面積大)、観察者から中間位置距離L2にある立方体10aは中程度に(表示面積中)、観察者から遠い距離L1の立方体10aは小さく(表示面積小)それぞれ表示する。これを透視図法による遠近面積率と定義する。遠近面積率は左右の目に共通である。
【0022】
次に、この発明の基本となる擬似立体映像について説明する。
歴史的にはカメラの出現以後にステレオカメラが知られている。人間の左右の目に対応して水平に約4−5cm接近した2個のレンズで同時に2枚の人物や生活空間の風景写真を撮る。又第2次大戦中から今日まで立体航空写真が利用されており、ここでも左右の目に対応した水平に約4−5cm接近した2個のレンズで同時に2枚の航空写真を、上空から見た地上の映像を写真に撮る。
撮影フイルムを現像した写真を左右に並べて、左右の目で同時に見ることで立体映像を人間が認識する。ステレオ写真では古くは生存中のガンジーの写真や、立体航空写真では東京の航空写真が知られている。
写真を左右に並べて、左目用写真を左目で、右目用写真を右目で見る専用装置があり、この装置では左右の目の間に白い壁を設けて左右の視界が互いに混入しないようにし、独立の左右画像を脳で結合させて、擬似立体画像を脳が認識するようにしている。後述する平行法に該当する。航空写真の観察専門家は、この平行法により裸眼で左右分離壁を設けなくても左右2枚の写真から、凹凸のある地域の立体画像を容易に認識できる。
【0023】
次に医学上知られている目の生理学上の構成について以下に説明する。
図18において、眼球60は外から見える角膜と虹彩と水晶体61と内部の硝子体と毛様体62と網膜と黄斑と視神経とから構成される。眼球60は外部を見るためにキョロキョロ動けるように、図19に示す6本の眼筋63に外表が結合されている。眼筋63は2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋である。
眼球60は角膜と連続した柔らかい袋体64に包まれており、6本の眼筋63が袋体64を特定な位置から引くことで、眼球60が動く。
【0024】
水晶体61は柔らかい厚みのある円盤形であり、図20に示すようにその周縁部を囲むように毛様体62が位置し、毛様体62は略円環状であり、その外周部が角膜と袋体64とが連続する位置と結合している。毛様体62の内周部に水晶体61があり、毛様体62の内周部と水晶体61の外周部とは糸状の無数のチン小帯65で接続されている。
毛様体62が弛緩すると、チン小帯65が緊張して水晶体61が引っ張られて圧縮されて扁平となり、眼が遠くを見る状態になる。
一方毛様体62が収縮すると、図21に示すようにチン小帯65が緩み水晶体61が膨らむようになり厚くなり、眼が近くを見る状態になる。
【0025】
人間が意識して遠・近を見る場合には、毛様体62とチン小帯65と水晶体61とが動き焦点調整を行い、周囲を見る場合は、6本の眼筋63及び毛様体62とチン小帯65と水晶体61とが同時に動くことになる。
さて、長時間のテレビ観賞や電子表示装置上での仕事や子供の長時間に渡るテレビゲーム、通常の長時間の文書仕事では、眼の視界方向が一定、見ている対象画像への焦点距離が一定となっている。従って眼の6本の眼筋63及び毛様体62とチン小帯65と水晶体61が運動不足になり、さまざまな健康障害を起こす原因となる。
【0026】
外部から間接的に触れられる人間の筋肉では、手で揉んだり、屈伸運動をしたり、背伸びしたりして疲労回復が可能である。
眼の6本の眼筋63及び毛様体62とチン小帯65と水晶体61は元々小さく頭部内部の細かい筋肉であるので、任意に手で揉んだり、屈伸運動をしたり、背伸びしたり出来ない筋である。このような状況のために、非特許文献1−5の書物と、特許文献1の装置が活用されている。
【0027】
次に立体視の平行法(パラレル法)と交差法(クロス法)について、非特許文献1−5を参照して説明する。
図7において、平行法(パラレル法)では、左目で左目用の画像を、右目で右目用の画像をそれぞれ同時に見る、暫らく見つめていると脳の働きにより、左右の画像が重なって3枚の画像が見えてくる。このとき真中の画像が脳で左右の合成された擬似立体画像である。擬似立体図では真中の画像の部分が奥に凹んで(沈んで)見えてくる。
【0028】
図8において、交差法(クロス法)では左目で右目用の画像を、右目で左目用の画像をそれぞれ同時に見る、暫らく見つめていると脳の働きにより、左右の画像が重なって3枚の画像が見えてくる。このとき真中の画像が脳で左右の合成された擬似立体画像である。立体図では真中の画像の部分が手前に飛び出して(浮かんで)見えてくる。
交差法(クロス法)では左右の目線が左右の画像の前で交差し、図1の濃い線画に示すように左右の目は寄り目になっている。この時に図19−21に示す眼の6本の眼筋63及び毛様体62とチン小帯65と水晶体61とが動いている。
本願は、上記平行法(パラレル法)と交差法(クロス法)を利用する擬似立体画像による眼力トレーニングシート及びその使用方法、即ち印刷物を使用した眼力訓練方法とその印刷物であり、以下具体的に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1において紙やビニール、厚紙などのシート1の表面を仮想の分割線2で左右に分割し、左シート3と右シート4とを作成し、更にシート1を水平方向の仮想直線で上下方向に左右の空白欄左3A、3B、3C、3Dと空白欄右4A、4B、4C、4Dとに8分割する。
これら空白欄左3A、3B、3C、3Dと空白欄右4A、4B、4C、4Dに上から下方向に、左画像5A、5B、5C、5Dと右画像6A、6B、6C、6Dとを互いに分離してそれぞれ表示する。
表示方法は、筆やペンで描いた絵、印刷、写真、図面のコピーなど右画像と左画像が表示できるのもなら自由に選択できる。左画像5Aと、5B、5C、5D及び右画像6A、6B、6C、6Dはほぼ同一の形状の図形であり、図1では簡単な1対の立方体の斜視図である。
【0030】
空白欄左3Aと空白欄右4Aとが同一行で、また空白欄左3Bと空白欄右4B、更に空白欄左3Cと空白欄右4C、なお更に空白欄左3Dと空白欄右4Dとがそれぞれ水平方向に同一行の位置関係である。従って、左画像5Aと右画像6Aが、左画像5B、右画像6Bが、左画像5Cと右画像6Cが、右画像5Dと右画像6Dとがそれぞれ水平方向に同一行の位置関係になる。
上欄の空白欄左3Aと空白欄右4Aにそれぞれ表示された左画像5Aと右画像6Aとの距離は最も接近したL1であり、次欄の空白欄左3Bと空白欄右4Bにそれぞれ表示された左画像5Bと右画像6Bとの距離はやや離れたL2であり、3蕃目欄の空白欄左3Cと空白欄右4Cにそれぞれ表示された左画像5Cと右画像6Cとの距離は離れたL3であり、下欄の空白欄左3BD空白欄右4Dにそれぞれ表示された左画像5Dと右画像6Dとの距離は最も離れたL4である。
【0031】
即ちL4>L3>L2>L1の関係であり、次第に下の行に行くに従って、各対になる左画像5Aと、5B、5C、5Dと右画像6A、6B、6C、6Dは互いに離隔して行く傾向に表示されている。
この配置関係は、逆に最下の行では左画像5Dと右画像6Dが最も接近し、下から上の行に行くに従って、各対になる左画像5Cと、5B、5Aと右画像6C、6B、6Aとが互いに次第に離隔して行く傾向に表示してもよい。
【0032】
図2では、一方の立方体の正面に数字を記入した斜視図である。
上欄の空白欄左3Aの左画像5Aには白丸が、対する空白欄右4Aの右画像6Aには数字1が表示されている。
次欄の空白欄左3Bの左画像5Bには白丸が、対する空白欄右4Bの右画像6Bには数字2が表示されている。
第3欄の空白欄左3Cの左画像5Cには白丸が、対する空白欄右4Cの右画像6Cには数字3が表示されている。
下欄の空白欄左3Dの左画像5Dには白丸が、対する空白欄右4Dの右画像6Dには数字4が表示されている。
【0033】
図3では、双方の立方体の正面に数字を記入した斜視図である。
上欄の空白欄左3Aの左画像5Aには数字1が、対する空白欄右4Aの右画像6Aにも数字1が表示されている。
次欄の空白欄左3Bの左画像5Bには数字2が、対する空白欄右4Bの右画像6Bにも数字2が表示されている。
第3欄の空白欄左3Cの左画像5Cには数字3が、対する空白欄右4Cの右画像6Cにも数字3が表示されている。
下欄の空白欄左3Dの左画像5Dには数字4が、対する空白欄右4Dの右画像6Dにも数字4が表示されている。
【0034】
図4では、ほぼ相似形状の一対の円筒缶の斜視図である。
最上の行ではほぼ同一の形状の左画像5Aと右画像6Aが最も小さく、下の行に行くに従って、各対になる左画像5B、5C、5Dと右画像6B、6C、6Dは、距離が次第に大きくなると共に、画像が次第に拡大されて行く傾向に表示されている。
この大きさが変化する関係は、逆に最下の行では左画像5Dと右画像6Dが最も小さく、次第に下から上の行に行くに従って、左画像5Cと、5B、5Aと右画像6C、6B、6Aとの距離が次第に大きくなると共に、画像が拡大して行く傾向に表示してもよい。
【0035】
図5では、非特許文献1−3に示すような一対の風景写真である。
ここでも図1のように次第に下の行に行くに従って、各対になる左画像5Aと、5B、5C、5Dと右画像6A、6B、6C、6Dは互いに次第に離隔して行く傾向に表示されている。即ちL4>L3>L2>L1の関係である。
この配置関係でも、逆に最下の行では左画像5Dと右画像6Dが最も接近し、次第に下から上の行に行くに従って、各対になる左画像5Cと、5B、5Aと右画像6C、6B、6Aとが互いに次第に離隔して行く傾向に表示してもよい。
風景写真の場合は、左画像5Aと、5B、5C、5Dには立体写真による左目用写真を、右画像6A、6B、6C、6Dには右目用写真を表示することが望ましい。
【実施例2】
【0036】
図6では図3の下方に追加して、非特許文献2のページ7−47や非特許文献5のページ20−21にある擬似立体用の画像(ハイパーマジカル3D)7を下方に平行に並べて表示する。この擬似立体用の画像(ハイパーマジカル3D)7は1枚の画像であるがその上方には略4cm(人間の両目の平均的な間隔)離れた黒丸のマークが表示されている。
交差法(クロス)や平行法(パラレル法)を意識的に実行すると、2個の黒丸のマークが接近して行き、真中で重なって中間にもマークが出現し3個のマークとなる。脳が備える立体を認識する機能(視覚機能)により、この1枚の画像から浮き(飛び)出した、または沈んだ(奥行きのある)擬似立体画像が現れてくる。
図6の上方にある図3のような対の図形を見た後では、この視覚機能が慣らされてこの1枚の擬似立体用画像を見ると擬似立体が容易に認識される。その結果平面画像で見えなかったいわゆる隠れた文字ABC…や123…などが浮かんで、或いは沈んで次第に見えてくる。この様子を宝くじ探しや、懸賞品探しに利用できる。図6では例えば「月」の絵が現れることを示している。
【0037】
図5において、説明した視差のある画像や図形を、各対になる左画像5Aと、5B、5C、5Dと右画像6A、6B、6C、6Dととして表示すると擬似立体がより実立体になって見えてくる。
従って、図1−4及び図6の立方体や円筒を視差のある画像や図形とすると、明確な擬似立体が容易に認識される。
各実施例の動作を説明する。
さて、図7の平行法(パラレル法:左目で左目用の画像を、右目で右目用の画像をそれぞれ同時に見る)で、図1を観察する場合をその右側に対応して示した眼の動きとともに説明する
まず最上欄では左目で左画像5Aを右目で右画像6Aを意識して暫らく見つめると、図10の運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。プログラムは隣接後方の運動野に伝達され、そこから両目を動かす指令が脊髄上部の頚髄に届き、図19の眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を動かし、左目を左画像5Aに、右目を右画像6Aに視線を合せる。この平行法(パラレル法)では観察者は一般に訓練と練習が必要で、初心者では航空写真観察者のように左右の目の間と左右画像との間に垂直に白紙の壁を立てると次第に慣れてくる。
【0038】
更にこのシート1が新聞や雑誌であれば焦点が目前40cm−50cmであるので、図21に示すように特に図10の運動連合野26が意識しなくても自動的に毛様体62が収縮し、チン小帯65が緩み水晶体61が膨らんで厚くなり、眼が近くのこれら画像を見る状態になる。この時左右の眼球は図1の1行目右に点線で示す瞳のように、やや内向きではあるがほぼ平行な視線となっている。
その後脳の働きにより、図1の左右の画像が重なって3枚の画像が見えてくる。このとき真中の画像が脳で左右の合成された擬似立体画像である。立体図では真中の画像の部分が奥に凹んで(沈んで)見えてくる。
【0039】
次に図1の2番目の欄、空白欄左3Bと空白欄右4Bに両視線を移動させる。左目で左画像5Bを右目で右画像6Bを意識して見つめようとすると、同様に図10の運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この行では、左画像5Bと右画像6Bとは上の行に較べて離れているので、前述同様な脳機能により、図19の眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を少し動かし、左目を左画像5Bに、右目を右画像6Bに視線を合せる。
この時左右の眼球は図1の2行目右に示すように、内向からほぼ平行な視線となる(交差法の実線図と重なっている)。更に眼球の向きが変わることで、僅かながら見つめるシート1との距離が変化するので、その変化量に応じて図20、図21の毛様体62とチン小帯65とが動き水晶体61が変形し、眼がこれら画像を見る状態になる。その後脳の働きにより、左右の画像が重なって3枚目の擬似立体画像が見えてくる。
【0040】
次に3番目の欄、空白欄左3Cと空白欄右4Cに両視線を移動させる。次の左目で左画像5Cを右目で右画像6Cを意識して見つめようとすると、図10の運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この行では、左画像5Cと右画像6Cとは隣上の行に較べて離れているので、前述同様な脳機能により、眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を又少し動かし、左目を左画像5Cに、右目を右画像6Cに視線を合せる。
この時左右の眼球は図1の3行目右に示すように、僅かに外向の視線、点線で示す瞳のようにとなる。こうして眼球の向きが変わることで、僅かながら見つめるシート1との距離が変化して、その変化量に応じて毛様体62とチン小帯65とが動き水晶体61が変形し、眼がこれら画像を見る状態になる。その後脳の働きにより、左右の画像が重なって3枚目の擬似立体画像が見えてくる。
【0041】
次に最下欄、空白欄左3D空白欄右4Dに両視線を移動させる。次の左目で左画像5Dを右目で右画像6Dを意識して見つめようとすると、運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この行では、左画像5Dと右画像6Dとは第3番目の行に較べて離れているので、前述同様な脳機能により、眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を又更に少し動かし、左目を左画像5Dに、右目を右画像6Dに視線を合せる。
この時左右の眼球は図1の4行目右に示すように、普通の人駕できる最大の外向の視線、点線で示す瞳のようにとなる。ここまで両眼が反対で外向きの視線になると普通の観察者では無理であるが、眼球回りにある6筋肉の運動には効果がある。こうしてなお眼球の向きが変わることで、なお僅かながら見つめるシート1との距離が変化して、その変化量に応じてなお毛様体62チン小帯65が動き水晶体61も変形し、眼がこれら画像を見えるように努力する状態になる。
【0042】
次にこの視線から、逆に最下欄から一足飛び最上欄、空白欄左3A空白欄右4Aに両視線を移動させると、左目で左画像5Aを右目で右画像6Aを意識して見つめようとすると、運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この第1行では、左画像5Aと右画像6Aとは接近しているので、前述同様な脳機能により、眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋が最大スパンの移動位置から戻る方向に動き、左目を左画像5Aに、右目を右画像6Aに視線を合せる。この時左右の眼球は図1の1行目右に点線で示す瞳のように、やや内向きではあるがほぼ平行な視線に戻る。観察者にとってはこの状態の視線保持が容易である。
観察者が上記1番目の欄から順次4番目の欄を繰返し注視する、または逆に4番目の欄から順次欄1番目の欄を繰返し注視するで、脳機能の運動及び眼球回りにある6筋肉の運動と、毛様体62とチン小帯65の動きと水晶体61の運動が繰返し行なわれる。
【0043】
慣れてくると、観察者は上記1番目の欄から4番目の欄を任意の順番で返し注視してもよい。
この時左右の眼球運動は図1の右側に示すように、眼球がやや内向きほぼ平行な視線から次第に外向きに移り、更に元の方向に変わることで眼球回りにある6筋肉が揉まれ、僅かながら見つめるシート1との距離が変化して、その変化量に応じて毛様体62とチン小帯65が連動して動き水晶体61が変形する。
このように、視線を4欄に渡って順次、又は任意に変更することで、外部からは手揉みが出来ない顔内部にある眼球回りの眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の軽い運動を行なわせることができる。
【0044】
図2では、一方の立方体に数字を記入した斜視図である。空白欄左3Aの左画像5Aの白丸と空白欄右4Aの右画像6Aの数字1とが脳の働きにより、重なって数字1を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。この場合は一方の数字が両方の目に見えてくるので、脳機能の訓練に最適であり、観察者も運動連合野26と視覚野19を自覚できる。慣れた観察者では容易である。
2番目欄では空白欄左3Bの左画像5Bの白丸と空白欄右4Bの右画像6B数字2とが脳の働きにより、重なって数字2を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。慣れた観察者でも努力が要る。
【0045】
3番目欄では空白欄左3Cの左画像5Cの白丸と空白欄右4Cの右画像6C数字3とが脳の働きにより、重なって数字3を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。慣れた観察者でもやや困難で時々擬似立体画像は分離して見える。しかし眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の軽い運動は実行される。
最下欄の空白欄左3Dの左画像5Dの白丸と空白欄右4Dの右画像6D数字4とが脳の働きにより、重なって数字4を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。慣れた殆どの観察者でも容易ではなく、大半の人には幾ら努力しても左右に2個づつ4個の画像に見える。それでも眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の運動は試されている。
【0046】
図3では、双方の立方体に数字を記入した斜視図である。左画像5Aの数字1と右画像6Aの数字1とが脳の働きにより、重なって数字1を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。慣れた観察者では容易である。
2番目欄では左画像5Bの数字2と右画像6B数字2とが脳の働きにより、重なって数字2を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。慣れた観察者でも努力が要る。
3番目欄では左画像5Cの数字3と右画像6C数字3とが脳の働きにより、重なって数字3を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。慣れた観察者でもやや困難で時々擬似立体画像は分離して見える。しかし眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の軽い運動は実行される。
最下欄の左画像5Dの数字4と右画像6D数字4とが脳の働きにより、重なって数字4を伴った3枚目の擬似立体画像が見えてくる。慣れた殆どの観察者でも容易ではなく、大半の人には幾ら努力しても左右に2個づつ4個の画像に見える。それでも眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の運動は試されている。
る。それでも眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の運動は試されている。
【0047】
図4では、最小形円筒の斜視図である。左画像5Aの円筒と右画像6Aの円筒とが脳の働きにより、重なって3枚目の擬似立体画像(右側に図示)の円筒が見えてくる。慣れた観察者では容易である。
2番目欄ではやや大きい円筒の斜視図である。左画像5Aの円筒と右画像6Aの円筒とが脳の働きにより、重なって3枚目の擬似立体画像(右側に図示)のやや大きい円筒が見えてくる。慣れた観察者でも努力が要る。
3番目欄では大きい円筒の斜視図である。左画像5Aの円筒と右画像6Aの円筒とが脳の働きにより、重なって3枚目の擬似立体画像(右側に図示)の大きい円筒が見えてくる。慣れた観察者でもやや困難で時々擬似立体画像は分離して見える。しかし眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の軽い運動は実行される。
4番目欄では最も大きい円筒の斜視図である。左画像5Aの円筒と右画像6Aの円筒とが脳の働きにより、重なって3枚目の擬似立体画像(右側に図示)の大きい円筒が見えてくる。慣れた観察者でも困難で擬似立体画像は分離して見える。しかし眼筋と毛様体62とチン小帯65と水晶体61の軽い運動は実行される。擬似立体画像(右側に図示)の円筒が次第に大きく(小さく)なり脳活動とともに眼球の運動と焦点調整が実行される。
【0048】
図5では、ステレオカメラによる左右視差のある風景写真である。4番目欄では最接近しているので、用意に立体視が可能である。2番目欄、3番目欄、4番目欄と左右写真が離れて行くので、次第に立体視が困難になるが、風景を楽しみながら、脳活動とともに眼球の運動と焦点調整が実行される。
図6では脳活動とともに眼球の運動と焦点調整が慣れた後に、擬似立体用の画像(ハイパーマジカル3D)7を見ると、脳の受け入れ準備がなされているので、意外と用意に立体画像を認識できる。
【0049】
次に図8の交差法(クロス法:左目で右目用の画像を、右目で左目用の画像をそれぞれ同時に見る)を、図1を観察する場合をその右側に対応して示した眼の動きとともに説明する。
まず最上欄では右目で左画像5Aを左目で右画像6Aを意識して暫らく見つめると、図10の運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。プログラムは隣接後方の運動野に伝達され、そこから両目を動かす指令が脊髄上部の頚髄に届き、図19の眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を動かし、左目を左画像5Aに、右目を右画像6Aに視線を合せる。
新聞や雑誌であれば焦点が目前40cm−50cmであるので、図21に示すように特に図10の運動連合野26が意識しなくても自動的に毛様体62が収縮し、チン小帯65が緩み水晶体61が膨らんで厚くなり、眼が近くのこれら画像を見る状態になる。この時左右の眼球は図1の1行目右に実線で示す瞳のように、ほぼ平行な視線となっている。
その後脳の働きにより、図1の左右の画像が重なって3枚の画像が見えてくる。このとき真中の画像が脳で左右の合成された擬似立体画像である。立体図では真中の画像の部分が奥に飛び出して(浮んで)見えてくる。
【0050】
次に図1の2番目の欄、右目で左画像5Bを左目で右画像6Bを意識して見つめようとすると、同様に図10の運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この行では、左画像5Bと右画像6Bとは上の行に較べて離れているので、前述同様な脳機能により、図19の眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を少し動かし、右目を左画像5Bに、左目を右画像6Bに視線を合せる。
この時左右の眼球は図1の2行目右に示すように、まだほぼ平行な視線となる(交差法は実線図)。更に眼球の向きが変わることで、僅かながら見つめるシート1との距離が変化するので、その変化量に応じて図20、図21の毛様体62とチン小帯65とが動き水晶体61が変形し、眼がこれら画像を見る状態になる
【0051】
次に3番目の欄、右目で左画像5Cを左目で右画像6Cを意識して見つめようとすると、図10の運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この行では、左画像5Cと右画像6Cとは隣上の行に較べて離れているので、前述同様な脳機能により、眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を又少し動かし、右目を左画像5Cに、左目を右画像6Cに視線を合せる。
この時左右の眼球は図1の3行目右に示すように、僅かに内向の視線、実線で示す瞳のようにとなる。こうして眼球の向きが変わることで、僅かながら見つめるシート1との距離が変化して、その変化量に応じて毛様体62とチン小帯65とが動き水晶体61が変形し、眼がこれら画像を見る状態になる。
【0052】
次に最下欄、右目で左画像5Dを左目で右画像6Dを意識して見つめようとすると、運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この行では、左画像5Dと右画像6Dとは第3番目の行に較べて離れているので、前述同様な脳機能により、眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を又更に少し動かし、右目を左画像5Dに、左目を右画像6Dに視線を合せる。
この時左右の眼球は図1の4行目右に示すように、普通の人駕できる最大の内向の視線、実線で示す瞳のようにとなる。ここまで両眼が内向きの視線(寄り目)になると普通の観察者では無理であるが、眼球回りにある6筋肉の運動には効果がある。こうしてなお眼球の向きが変わることで、なお僅かながら見つめるシート1との距離が変化して、その変化量に応じてなお毛様体62チン小帯65が動き水晶体61も変形し、眼がこれら画像を見えるように努力する状態になる。
【0053】
ここでもこの視線から、逆に最下欄から一足飛びに最上欄、空白欄左3A空白欄右4Aに両視線を移動させると、右目で左画像5Aを左目で右画像6Aを意識して見つめようとすると、運動連合野26が両眼を動かすプログラムをつくる。この第1行では、左画像5Aと右画像6Aとは接近しているので、前述同様な脳機能により、眼球外側の2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋が最少スパンの移動位置から戻る方向に動き、右目を左画像5Aに、左目を右画像6Aに視線を合せる。この時左右の眼球は図1の1行目右に実線で示す瞳のように、ほぼ平行な視線に戻る。観察者にとってはこの状態の視線保持が容易である。
観察者が上記1番目の欄から順次4番目の欄を繰返し注視する、または逆に4番目の欄から順次欄1番目の欄を繰返し注視するで、脳機能の運動及び眼球回りにある6筋肉の運動と、毛様体62とチン小帯65の動きと水晶体61の運動が繰返し行なわれる。
この発明によれば、毎朝見る手元の新聞や事務所の休憩室にある雑誌により、何時でもそばにある擬似立体画像による眼力トレーニングシート及びその使用方法を提供できる。
以上説明した実施例に限定することなく、分野において通常の知識を有するものであれば本発明の思想と精神を離れることなく本発明を修正または変更できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】 この発明の擬似立体画像による眼力トレーニングシートの印刷状態及びそれらを観察する際に眼球が動いた状態を示す実施例1の図である。
【図2】 図1の左右画像に一方は無字とし他方には数字を表示したものと脳機能により認識された擬似立体画像を示す図である。
【図3】 図1の左右画像に双方ともに同じ数字を表示したものと脳機能により認識された擬似立体画像を示す図である。
【図4】 対となる左右画像が次第に拡大していくものを表示したものと脳機能により認識された擬似立体画像を示す図である。
【図5】 この発明の擬似立体画像による眼力トレーニングシートに対となる左右画像に建物の風景画像を表示した図である。
【図6】 図3の複数行ある左右画像の下方に非特許文献2のハイパー・マジカル3Dのような1枚画による擬似立体画像を配置した実施例2の図である。
【図7】 この発明の擬似立体画像を脳機能により認識させ発生させる平行法を説明するための図である。
【図8】 この発明の擬似立体画像を脳機能により認識させ発生させる交差法を説明するための図である。
【図9】 この発明の擬似立体画像を認識する脳を上から見た図である。
【図10】 この発明の擬似立体画像を認識する脳を側面から見た図である。
【図11】 人間の目が無限縁を見た時の光軸の平衡状態を示す図である。
【図12】 人間の目の光軸が平衡になった時に視差の発生状態を示す図である。
【図13】 人間の目が近くの物体を見た時の光軸の交差状態を示す図である。
【図14】 人間の目の光軸が交差した時に視差の発生状態を示す図である。
【図15】 従来の実物による方向・遠近トレーニング法の数字を示す図である。
【図16】 両眼による左右視差を説明するための図である。
【図17】 透視図法による遠近図形を説明する図である。
【図18】 人間の眼の構造を示す垂直断面図である。
【図19】 人間の目の眼球の周りにある6本の筋肉の配置を示す外観図である。
【図20】 人間の目が遠くに焦点を合せた状態の水晶体と毛様体とチン小帯を説明する正面図と扁平な水晶体の簡略側面図である。
【図21】 人間の目が近くに焦点を合せた状態の水晶体と毛様体とチン小帯を説明する正面図と膨らんだ水晶体の簡略側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・シート、2・・・分割線、3・・・左シート、4・・・右シート、3A、3B、3C、3D・・・空白欄左、4A、4B、4C、4D・・・空白欄右、5A、5B、5C、5D・・・左画像、6A、6B、6C、6D・・・右画像、7・・・擬似立体用の画像、10・・・脳、19・・・視覚野、60・・・眼球、61・・・水晶体、62・・・毛様体、63・・・眼筋、64・・・袋体、L1、L2、L3、L4・・・距離、T1、T2・・・輻輳。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配置された互いに類似する1対の右画像と左画像を、観察者が右目で右画像を左目で左画像を注視する際に、前記観察者が持つ水平方向の2個の目では、眼球周辺に備える2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を意識して動かして見る方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体とチン小帯と水晶体とを意識して動かして焦点を定め、
しばらくこの状態を保っていると脳が備える立体を認識する機能により前記右画像と前記左画像とが重なって行き、これら前記右画像と前記左画像の中間に視覚上で奥行き感のある擬似立体像が認識される平行法を、または左目で前記右画像を右目で前記左画像を注視する際には、前記2個の目では、眼球周辺に備える2本の上下直筋と2本の外内(眼球の左右側にある)直筋と2本の上下斜筋を意識して動かして見る方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体とチン小帯と水晶体とを意識して動かして焦点を定め、前記立体を認識する機能により視覚上で飛び出し感のある擬似立体像が認識される交差法を実現するように前記右画像と前記左画像が固定的に表示されるシートであって、
前記シートの面に前記右画像と前記左画像を複数行にそれぞれ表示し、互いに隣接する行では、前記右画像と前記左画像とが次第に離隔または接近して行く傾向にして配置したことを特徴とする擬似立体画像による眼力トレーニングシート。
【請求項2】
水平方向に配置された互いに類似する1対の右画像と左画像が固定的に表示されるシートに向かって、観察者が右目で右画像を左目で左画像を注視する際に、前記観察者が持つ水平方向の2個の目では、眼球周辺に備える2本の上下直筋と2本の外内直筋と2本の上下斜筋を意識して動かして見る方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体とチン小帯と水晶体とを意識して動かして焦点を定め、しばらくこの状態を保っていると脳が備える立体を認識する機能により前記右画像と前記左画像とが重なって行き、これら前記右画像と前記左画像の中間に視覚上で奥行き感のある擬似立体像が認識される平行法と、または左目で前記右画像を右目で前記左画像を注視する際には、前記2個の目では、眼球周辺に備える2本の上下直筋と2本の外内直筋と2本の上下斜筋を意識して動かして見る方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体とチン小帯と水晶体とを意識して動かして焦点を定め、前記立体を認識する機能により視覚上で飛び出し感のある擬似立体像が認識される交差法とにより眼力トレーニングを行なうシートの使用方法において、
前記シートの面に前記右画像と前記左画像を複数行にそれぞれ表示し、互いに隣接する行では、前記右画像と前記左画像とが次第に離隔または接近して行く傾向にして配置した複数の画像行を形成し、観察者が任意に最初の画像行を注視して前記平行法または前記交差法により前記眼力トレーニングを行ない、次に隣接する他の画像行を注視際には、前記2個の目では、眼球周辺に備える2本の上下直筋と2本の外内直筋と2本の上下斜筋を意識して動かして見る他の方向を設定し、且つ眼球内部に備える毛様体とチン小帯と水晶体とを意識して動かして他の焦点を定めて、前記平行法または前記交差法により前記眼力トレーニングを行ない、
注視する画像行を所定時間毎に変更して、更に他の方向を設定し且つ他の焦点を定めて、前記平行法または前記交差法により繰り返して前記眼力トレーニングを行なうことを特徴とする擬似立体画像による眼力トレーニングシートの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【図15】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−236884(P2007−236884A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102432(P2006−102432)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(500158384)
【出願人】(595115396)