説明

擬似肉食品およびその製造方法

【課題】本発明は、噛んだ時に天然肉の食感を得ることができる、見た目にも天然肉に近い擬似肉食品を提供することを目的とする。
【解決手段】エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.17〜0.76質量部の澱粉とを含む第1組織化植物性たん白を水和させ解繊させて得られた、水和・解繊された第1組織化植物性たん白と、エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.03〜0.15質量部の澱粉とを含む第2組織化植物性たん白を水和させ解繊させて得られた、水和・解繊された第2組織化植物性たん白と、結着剤とを含む原料混合物を成形して成形物とし、この成形物を加熱凝固することにより、上記目的を達成する擬似肉食品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肉代替物として使用できる擬似肉食品およびその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
擬似肉食品素材は、かつては動物性たん白の安価な代替物として開発されたものであるが、今日においては低カロリー食材として、或いは動物性たん白の摂取が制限されている疾患の患者のための畜肉代替素材として改めて注目されている。擬似肉食品に関する従来技術としては例えば次のようなものがある。
【0003】
特許文献1には、粒径が10〜30mmである塊状の組織状植物性蛋白質と、最大粒径が10mm未満でしかも粒径1〜5mmのものが70重量%以上を占める組織状植物性蛋白質10〜40重量%と、繊維長が5〜30mmの繊維状植物性蛋白質5〜40重量%と、結合剤とを混合し、成形後加熱固化することを特徴とする植物性蛋白食品の製造方法が記載されている。特許文献1には、粒径が10〜30mmである塊状の組織状植物性蛋白質を配合することにより、咀しゃくした際に天然肉類似のテクスチャーを付与することができる旨記載されており、塊状の組織状植物性蛋白質が粒径10mm未満の場合には天然肉類似のテクスチャーを得ることが難しいことも記載されている。
【0004】
特許文献2にもまた、ステーキ肉等の一枚肉の組織および食感に類似した肉様食品を提供することを目的とする技術として、冷却すれば繊維状となる繊維状蛋白の前駆体若しくは繊維状蛋白素材の熱可塑化物のいずれかを塊状に成形して得た肉塊様蛋白素材を、繊維状蛋白素材及び結着料と混合成形することを特徴とする肉様食品の製造方法が開示されている。上記の肉塊状素材は、熱交換器等で加圧加熱して出口から導出された約1cm平方以上の断面を有する大きさの塊状のものである。肉様食品は、上記の肉塊状素材の部分と結着料の中に繊維状蛋白が分散した部分とにより形成される。特許文献2には「塊」の大きさが小さ過ぎると、一枚肉としての噛み応えが全体として弱くなることも記載されており、下記の特許文献3のように、肉塊状素材を解繊して用いることは記載されていない。
【0005】
特許文献3には、O/W型エマルジョンと、植物たん白質含有物質を水と混練し加熱状態にてせん断応力を加えて配向せしめ次いで解繊して得た繊維状たん白質と、結着剤とを、前記O/W型エマルジョンが肉様食品全体の5〜50重量%となるように混合した後、該混合物を成型加熱することを特徴とする肉様食品の製造法が開示されている。特許文献3によれば、O/W型エマルジョンと繊維状たん白質とを組み合わせることにより、肉様食品を噛んだときに油が口中に広がって天然肉と同等のジューシー感が得られ、なお且つ、天然肉に酷似した繊維性の食感が得られる。
【0006】
特許文献4には2軸エクストルーダーを用いて加圧加熱処理して得られる、油糧種子蛋白1重量部に対して澱粉0.17〜0.76重量%を含み、湯戻しすると押し出し方向にほぼ同心円状に薄く膜状に裂ける薄膜状構造を有する束膜状食品が記載されている。特許文献4に記載の食品は湯葉の代替物として使用されることが意図されている。特許文献4には擬似肉食品の製造に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭48−3388号公報
【特許文献2】特開昭60−156345号公報
【特許文献3】特公平2−41315号公報
【特許文献4】特公平6−6030号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】New Protein Foods, Volume 1, Terminology, Part A, Edited by Aaron M. Altschul, Academic Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および2に記載されている、塊状の植物性蛋白質と繊維状の植物性蛋白質と結合剤とから製造された擬似肉食品には比較的大きな塊状の植物性蛋白質が含まれる。このような擬似肉食品を本発明者らが再現したところ、厚さが15mm以上のステーキ用肉やカツ用肉、あるいは、一辺の長さが15mm以上であるカレー、シチュー等の煮込み調理用途の肉の形状に加工し調理した場合に、不自然な弾力のある食感になるという問題が判明した。また煮込み時に、塊状の植物性蛋白質の部分に味が浸透しにくいという問題も判明した。更に、塊状の植物性蛋白質が含まれているために、天然肉とは外観上も異なり違和感を与えるという問題もあった。
【0010】
一方、特許文献3の肉様食品は、本発明者らが再現したところ、違和感のある食感であった。これは繊維状たん白質同士が固く結着するためであると考えられる。
【0011】
そこで本発明は、噛んだ時に天然肉に近い食感を得ることができる、見た目にも天然肉に近い擬似肉食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.17〜0.76質量部の澱粉とを含む第1組織化植物性たん白を水和させ解繊させて得られた、水和・解繊された第1組織化植物性たん白と、
エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.03〜0.15質量部の澱粉とを含む第2組織化植物性たん白を水和させ解繊させて得られた、水和・解繊された第2組織化植物性たん白と、
結着剤と
を含む原料混合物を加熱凝固することを特徴とする、擬似肉食品の製造方法。
【0013】
(2)水和・解繊された第1組織化植物性たん白と水和・解繊された第2組織化植物性たん白との乾燥物換算合計量に対して、水和・解繊された第1組織化植物性たん白が乾燥物換算で20〜90質量%である、(1)の方法。
(3)水和・解繊された第1組織化植物性たん白が太さ0.1〜6mmのものを含み、且つ水和・解繊された第2組織化植物性たん白が太さ0.1〜12mmのものを含む、(1)または(2)の方法。
【0014】
(4)水和・解繊された第1組織化植物性たん白が長さ5mm以上のものを含み、且つ、水和・解繊された第2組織化植物性たん白が長さ5mm以上のものを含む、(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5)第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白に含まれる植物性たん白が大豆たん白を主成分とする、(1)〜(4)のいずれかの方法。
【0015】
(6)結着剤が植物性たん白、動物性たん白、及び多糖類からなる群から選ばれる1種以上である、(1)〜(5)のいずれかの方法。
(7)結着剤の少なくとも一部が、水和した場合に熱可逆性ゲルを形成する結着剤であり、原料混合物が当該結着剤を、水和した熱可逆性ゲルの形態で含む、(1)〜(6)のいずれかの方法。
【0016】
(8)原料混合物が、たん白質接着酵素を更に含む、(1)〜(7)のいずれかの方法。
(9)(1)〜(8)のいずれかの方法により製造された擬似肉食品。
(10)植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.17〜0.76質量部の澱粉とを含む組織化された第1組織化植物性たん白を水和させ解繊させた、水和・解繊された第1組織化植物性たん白と、 植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.03〜0.15質量部の澱粉とを含む組織化された第2組織化植物性たん白を水和させ解繊させた、水和・解繊された第2組織化植物性たん白と、
結着剤と
を混合された状態で含み、かつ凝固により一体化されていることを特徴とする、擬似肉食品。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法により製造される擬似肉食品は、ステーキ用肉、カツ用肉、煮込み調理用肉等の比較的大きな形状に加工した場合にも天然肉に近い食感を得ることができる、見た目にも天然肉と酷似した擬似肉食品である。また、擬似肉食品は、液状食品等と共に調理した場合に、液状食品等の味が均一にしみ込んで風味のよいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は実施例1−1の擬似肉食品の外観の写真である。図1Aはブロック肉状の塊の状態を示し、図1Bはステーキ肉状のスライス片を示し、図1Cは該スライス片を焼いた状態を示す。
【図2】図2A及びBは共に、実施例5のローストビーフ状食品の外観の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.組織化植物性たん白
本発明において「水和・解繊された第1組織化植物性たん白」とは、エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.17〜0.76質量部の澱粉とを含む第1組織化植物性たん白を水和させ解繊させることにより調製される繊維状物を指す。
【0020】
本発明において「水和・解繊された第2組織化植物性たん白」とは、エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.03〜0.15質量部の澱粉とを含む第2組織化植物性たん白を水和させ解繊させることにより調製される繊維状物を指す。
【0021】
第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白を構成する主成分である植物性たん白原料としては、大豆たん白、菜種たん白、落花生たん白等の油糧種子たん白、小麦たん白が挙げられ、大豆たん白が特に好ましい。大豆たん白としては大豆粉末、脱脂大豆粉末(またはフレーク)を用いてもよいし、粉末状大豆たん白(分離大豆たん白)を用いてもよい。小麦たん白としては小麦粉、小麦グルテンを用いてもよい。更に、これらの原料に加工処理を施してたん白質含有率を高めたものを植物性たん白原料として用いることもできる。澱粉の含有量の基準として用いられる植物性たん白の質量は、脱脂大豆粉末(またはフレーク)、粉末状大豆たん白等の、化学物質としてのたん白質以外の成分をも含有している可能性のある植物性たん白原料の合計質量(乾燥物換算)を指す。本発明で用いられる植物性たん白原料は、典型的には、たん白質を50〜80質量%程度含有する。
【0022】
第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白を構成する澱粉は、組織化植物性たん白の製造に通常用いられる澱粉を使用することができる。具体的には、米、小麦、トウモロコシ等の穀類の粉、これらから得られる澱粉、馬鈴薯、サツマイモ、キャッサバ等の芋類の粉、これらから得られる澱粉、その他の種々の加工澱粉を用いることができる。特に好ましい澱粉はトウモロコシから得られる澱粉(コーンスターチ)である。本発明において、澱粉の質量は、澱粉が穀類、芋類の粉等の、化学物質としての澱粉以外の成分をも含有している可能性のある澱粉原料の合計質量(乾燥物換算)を指す。
【0023】
本発明において「第1組織化植物性たん白」及び「第2組織化植物性たん白」は、『植物性たん白の日本農林規格』(JAS)で定義された「粒状植物性たん白質」、又は「粒状植物性たん白質」と同等の肉様組織を有する植物性たん白質である。『植物性たん白の日本農林規格』によれば粒状植物性たん白は「植物性たん白のうち、粒状又はフレーク状に成形したものであつて、かつ、肉様の組織を有するものをいう」と定義されている。当該規格第5条によれば、粒状植物性たん白の植物たん白質含有率は52%以上である(当該規格第7条に規定された測定方法による)。当該規格に規定された「粒状植物性たん白質」には該当しないものの「粒状植物性たん白質」と同等の肉様組織を有する植物性たん白質としては、クエン酸(主に食感改良剤となる)等の更なる成分を含有する点を除いては当該規格に規定された「粒状植物性たん白質」の要件を満たすものが挙げられる。
【0024】
粒状植物性たん白等の組織化植物性たん白の調製方法は既に広く知られており、例えば非特許文献1第383〜385頁や、特許文献4に記載されている。典型的には、組織化植物性たん白は、植物たん白原料、澱粉等を含有する原料をエクストルーダー処理に供し、加圧加熱条件で処理しダイから押し出して組織化することにより調製される。この調製方法についてさらに具体的に説明する。
【0025】
植物性たん白原料と澱粉とを少なくとも含み、必要に応じて油脂、水、色素、フレーバー等を更に含む混合物をエクストルーダーにより加圧加熱し、ダイの先端から常圧下に吐出して膨化させる。この処理(本発明では「エクストルーダーによる処理」とも称する)により得られる膨化物は、一定の方向性を持った繊維状の内部組織を有する(すなわち「組織化」されている)。典型的には、湯戻し後に、エクストルーダー処理による押し出し方向に沿って繊維状に裂くことができる組織が形成される。エクストルーダーは、原料を加圧加熱し組織化できる装置であれば任意に使用でき、これが可能であればエクストルーダー以外の名称の装置も使用できる。エクストルーダーとしては2軸エクストルーダーも1軸エクストルーダーも使用することができるが、2軸エクストルーダーが特に好ましい。得られた膨化物を適当な大きさにカットし、必要に応じて乾燥させて組織化植物性たん白を得る。
【0026】
第1組織化植物性たん白を製造する場合、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.17〜0.76質量部の澱粉とを含む原料混合物をエクストルーダー処理に供する。第2組織化植物性たん白を製造する場合、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.03〜0.15質量部の澱粉とを含む原料混合物をエクストルーダー処理に供する。
【0027】
エクストルーダー処理に供する原料混合物中の他の原材料の種類及び配合比率、エクストルーダー処理における圧力、温度、ダイ形状等の各条件は目的とする食感に応じて適宜選択することができる。他の原材料としては、植物油脂、食塩、砂糖類、香辛料、動植物の抽出濃縮物及びたん白加水分解物、硫酸カルシウム(組織改良剤)、5’−イノシン酸二ナトリウム、5’−グアニル酸二ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、及び5’−リボヌクレオチド酸二ナトリウム(調味料)、着色料、L−アスコルビン酸(酸化防止剤)、香料等から選ばれるものを適宜使用することができる。第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白は、JASに準じた原料を配合して調製することができる。
【0028】
エクストルーダー処理条件としては、例えば、植物たん白原料、澱粉等を含有する原料を、2軸エクストルーダー(L/D=15,D=46mm)を用い、原料フィード量30Kg/Hr、加水30%、バレル加熱150℃、スクリュー回転数200R.P.M.の条件にて2軸エクストルーダー先端部に付した3×15mmの開口部及び原料流動方向の厚さ10mmを有するスリットダイ及びダイに接続した形成用ガイド(12mm×17mm.厚さ10mm)から押し出しながら延伸して約60mmの長さに切断する条件が挙げられる。
【0029】
エクストルーダー処理により製造される第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白の形状としては、粒状、棒状、フレーク状等が挙げられるが特に限定されない。各形状に成形された組織化植物性たん白はいずれも本発明における「第1組織化植物性たん白」又は「第2組織化植物性たん白」に包含される。エクストルーダー処理により製造される第1組織化植物性たん白または第2組織化植物性たん白は、水分がおおよそ10質量%以下となるように乾燥させ、水和・解繊処理に用いることができる。或いは、エクストルーダー処理により製造される第1組織化植物性たん白または第2組織化植物性たん白は冷凍させ、水和・解繊処理に用いることができる。
【0030】
第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白に含水させて水和させ、必要に応じて過剰な水分を脱水する。水和物を適当な手段で解繊、つまり繊維状物にほぐす。水和は、乾燥した第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白を水や温水に浸すことにより行うことができる。解繊のための手段としては、フードカッター(例えば食品原料等を回転刃で剪断したり切ったりするための汎用されているもので、日本調理機(株)社製等を用いることができる)の刃を逆回転させ、鈍刃で解繊する方法が挙げられる。
【0031】
水和・解繊された第1組織化植物性たん白は、太さが0.1〜6mm、好ましくは1〜5mmのものを含むことが好ましい。これらを水和・解繊された第1組織化植物性たん白として40質量%以上、より好ましくは50質量%以上含むことが好ましい。また、水和・解繊された第1組織化植物性たん白は、長さが5mm以上、好ましくは10mm以上のものを含むことが好ましい。これらを水和・解繊された第1組織化植物性たん白として40質量%以上、より好ましくは50質量%以上含むことが好ましい。これらの大きさの範囲にある第1組織化植物性たん白を含むことで、より好ましい擬似肉食品の繊維感と弾力性と歯応えのある天然肉に近い食感を達成することができる。水和・解繊された第1組織化植物性たん白の長さの上限は特に制約されず、通常100mm程度までのものを使用すればよい。水和・解繊された第1組織化植物性たん白中の水分は好ましくは55〜75質量%である。
【0032】
水和・解繊された第2組織化植物性たん白は、太さが0.1〜12mm、好ましくは2〜10mmのものを含むことが好ましい。これらを水和・解繊された第1組織化植物性たん白として40質量%以上、より好ましくは50質量%以上含むことが好ましい。また、水和・解繊された第2組織化植物性たん白は、長さが5mm以上、好ましくは10mm以上のものを含むことが好ましい。これらを水和・解繊された第2組織化植物性たん白として40質量%以上、より好ましくは50質量%以上含むことが好ましい。これらの大きさの範囲にある第2組織化植物性たん白を含むことで、より好ましい擬似肉食品の繊維感と弾力性と歯応えのある天然肉に近い食感を達成することができる。水和・解繊された第2組織化植物性たん白の長さの上限は特に制約されず、通常25mm程度までのものを使用すればよい。水和・解繊された第2組織化植物性たん白中の水分は好ましく55〜75質量%である。
【0033】
以上の第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白は、何れか又は両者を、着色して用いることができる。両者の色目を変えることによって、見た目にも天然肉に近い擬似肉食品を提供することができる。例えば、牛肉を模する場合には、何れかを赤系色とし、他方を白系色とすればよい。他の天然肉を模する場合も、同様の考え方で調製すればよい。
【0034】
2.結着剤
結着剤は、成形加熱工程において第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白を結合することができるものであれば特に限定されない。結着剤としては例えば植物性たん白、動物性たん白、及び多糖類からなる群から選ばれる1種以上を使用することができる。
【0035】
結着剤として用いる植物性たん白としては大豆たん白、小麦たん白等が挙げられ、動物性たん白としては卵白、コラーゲン、乳たん白等が挙げられ、多糖類としてはデンプン、グアーガム等のガム質、カラギーナン、グルコマンナン等のゲル化剤が挙げられる。
【0036】
結着剤は水及び/又は油脂とともに混練したペーストの形態で原料混合物に添加することができる。ペーストを形成する場合、水、油脂は結着剤1質量部に対してそれぞれ0.5〜4質量部添加することができる。
【0037】
更に、結着剤は水及び油脂とともに乳化したエマルジョン(好ましくはO/Wエマルジョン)の形態で原料混合物に添加することが好ましい。この実施形態では、エマルジョンが擬似肉組成物中で脂身様組織を形成するため、より肉に近い外見と食感(脂身のジューシー感)が付与される。エマルジョンを形成する場合、水、油脂は結着剤1質量部に対してそれぞれ0.5〜3質量部添加することができる。
【0038】
油脂としては、大豆油、綿実油、トウモロコシ油、ごま油等の植物性食用油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、バター等の動物性食用油脂のいずれも使用することができる。
【0039】
油脂の全部又は一部は、油脂代替原料により置換することができる。油脂代替原料としては、イヌリンを水に加熱溶解して得られるイヌリンクリームが挙げられる。イヌリンクリーム中のイヌリンの含量は特に限定されず、例えば30〜50質量%とすることができる。油脂代替原料は、油脂と同様の量にて同様の態様で使用することができる。上記のイヌリンを含む態様により、低油脂、低カロリーの擬似肉食品を製造することができる。
【0040】
結着剤の少なくとも一部分として、水和した場合に熱可逆性ゲルを形成する結着剤を使用することができる。その場合、当該結着剤を予め水和して熱可逆性ゲルを形成し、形成された熱可逆性ゲルを他の原料と混合した原料混合物を成形加熱工程に供する。熱可逆性ゲルとは、加熱すると溶解し、冷却すると凝固する性質のゲルを指す。この実施形態では、熱可逆性ゲルが擬似肉組成物中で脂身様組織を形成するため、より肉に近い外見と食感(脂身のジューシー感)が付与される。水和した場合に熱可逆性ゲルを形成する結着剤としてはカラギーナン、グルコマンナン、寒天等が挙げられる。ゲルを形成するためには、例えばこれらの結着剤に水を質量で40〜100倍量加え、必要に応じて適宜加熱し、攪拌し、冷却すればよい。
【0041】
3.その他の原料
原料混合物には更に、トランスグルタミナーゼ等のたん白質接着酵素を配合することができる。たん白質接着酵素を配合することにより、第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白の繊維と繊維、並びにこれらの繊維と結着剤との結着が強化され、天然肉様の組織が得られ、天然肉様の歯応えのある食感が強化される。
【0042】
原料混合物は更に、水、油脂、フレーバー、調味料(動物エキスを含む)、デンプン、色素等を含んでもよい。特に、ビーフ、ポーク、チキン等の畜肉の味を付与するためのフレーバー、動物エキス等が添加されることが好ましい。油脂としては、結着剤について上記したものと同様のものが使用できる。
【0043】
4.原料混合物の配合
水和・解繊された第1組織化植物性たん白と、水和・解繊された第2組織化植物性たん白との配合比は特に限定されず、目的とする擬似肉の性状に応じて適宜決定することができる。例えば水和・解繊された第1組織化植物性たん白と、水和・解繊された第2組織化植物性たん白との乾燥物換算合計量に対して、水和・解繊された第1組織化植物性たん白は乾燥物換算で10〜90質量%、より好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは40〜80質量%であり、水和・解繊された第2組織化植物性たん白はその残部、すなわち乾燥物換算で90〜10質量%、より好ましくは80〜10質量%、特に好ましくは60〜20質量%である。二種類の組織化植物性たん白を併用することにより、噛んだ時に天然肉に近い食感を得ることができる、見た目にも天然肉に近い擬似肉食品が提供される。特に、ステーキ用肉、カツ用肉、煮込み調理用肉等の比較的大きな形状に加工した場合にも天然肉に近い食感を得ることができるという、従来にない特有な効果が奏される。水和・解繊された第1組織化植物性たん白が10質量%以上である場合には特に、擬似肉食品が、天然肉様の繊維感と、弾力性と不均一な特に好ましい食感のものとなる(ゴム様の不自然な弾力性のある食感にならない)。水和・解繊された第1組織化植物性たん白が90質量%以下である場合には特に、擬似肉食品が、歯切れがよく、不均一で自然な好ましい食感のものとなる(紙様の不自然な噛み切れない硬さのある食感にならない)。
【0044】
ステーキ用肉、カツ用肉、煮込み調理用肉等の比較的大きな形状に加工する擬似肉食品を製造する場合には、第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白の乾燥物換算合計量に対して、前者は乾燥物換算で40〜80質量%であり、後者は60〜20質量%であることが好ましい。
【0045】
原料混合物は、水和・解繊された第1組織化植物性たん白と水和・解繊された第2組織化植物性たん白との混合物(植物性たん白混合物)を、湿質量基準で50〜80質量%含有することが好ましい。
【0046】
原料混合物は結着剤を該結着剤の乾燥物換算で3〜15質量%含有することが好ましい。原料混合物は、水、油脂等と組み合わされたペースト、エマルジョン、ゲル等の形態の結着剤を湿質量基準で合計20〜50質量%含有することができる。結着剤がペーストの形態で添加される場合には、原料混合物は湿質量基準で当該ペーストを20〜50質量%含有することが好ましい。結着剤が水和した熱可逆性ゲルの形態で添加される場合には、原料混合物は当該ゲルを湿質量基準で3〜15質量%含有することが好ましい。結着剤がエマルジョンの形態で添加される場合には、原料混合物は当該エマルジョンを湿質量基準で5〜20質量%含有することが好ましい。原料混合物は、ペースト形態の結着剤と、熱可逆性ゲル形態の結着剤及び/又はエマルジョン形態の結着剤とを含むことが更に好ましい。
【0047】
たん白質接着酵素を添加する場合には、原料混合物は、水和・解繊された第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白の繊維と繊維、並びにこれらの繊維と結着剤との結着を促進する有効量だけ当該酵素を含んでいればよい。例えば、原料混合物はたん白質接着酵素を該酵素の乾燥物換算で0.01〜0.5質量%含有すればよい。
【0048】
水、油脂、フレーバー、調味料(動物エキスを含む)、デンプン、色素等の他の成分は原料混合物中に適宜の量配合される。
【0049】
原料混合物の調製方法は特に限定されず、通常のミキサー、ニーダー等を用いて各原料を混合すればよい。
【0050】
5.成形工程および加熱凝固工程
原料混合物は所望の形状(例えば一枚肉の形状、ブロック肉の形状、ダイスカットされた形状等)に成形される。成形は適当な型を用いて行うことができる。
【0051】
成形された原料混合物を60〜135℃、好ましくは70〜120℃の温度で加熱することにより、成形物が凝固し、擬似肉食品が得られる。原料混合物の成形物は、成形のための型内又はレトルトパウチ、ケーシング等の容器内に密封した状態で加熱され、凝固されることが好ましい。成形は型成形に限らず、要は得られる擬似肉食品が所望の形状になればよく、原料混合物を湯中に投入する等の方法を採用してもよい。
【0052】
6.擬似肉食品
本発明の擬似肉食品はどのような形状に加工しても良い。本発明の擬似肉食品は、厚さが約15mm以上のステーキ用肉やカツ用肉、あるいは、一辺の長さが約15mm以上であるカレー、シチュー等の煮込み用途の肉の形状、唐揚げ、チキンナゲット、焼き鳥、ビーフジャーキー、ハム、ソーセージ、フランクフルト、サラミソーセージ、ハンバーグ、ミートボール等の用途や形状に加工し調理した場合にも、天然肉に近い食感を与えることができる。擬似肉食品をミンチ状等に崩したものを固めて、前記各種の肉加工品を調製することもできる。
【0053】
本発明の擬似肉食品を、醤油、みりん、砂糖、カラメル色素等を含有する褐色着色液に浸漬し、次いで焼くことにより、表面が褐色のローストビーフの外見を有する食品を得ることができる。
【実施例】
【0054】
実施例1−1
(エクストルーダー処理による、乾燥植物性たん白の製造) 大豆たん白と澱粉とを含有する組織化された植物性たん白をエクストルーダー処理により製造した。次表に示すA1及びA2の2種類の配合の原料混合物を用意した。
【0055】
【表1】

【0056】
原料混合物A1又はA2を、2軸エクストルーダー(L/D=15,D=46mm)を用い、原料フィード量30Kg/Hr、加水30%、バレル加熱150℃、スクリュー回転数200R.P.M.の条件にて2軸エクストルーダー先端部に付した3×15mmの開口部及び原料流動方向の厚さ10mmを有するスリットダイ及びダイに接続した形成用ガイド(12mm×17mm.厚さ10mm)から押し出しながら延伸して約60mmの長さに切断し乾燥した。断面は約12mm×(20〜25)mmに膨化した多孔状構造を呈したものであった。
【0057】
原料混合物A1及びA2から上記手順で製造された組織化植物性たん白が、それぞれ「第1組織化植物性たん白」及び「第2組織化植物性たん白」に該当する。
【0058】
(水和・解繊された第1組織化植物性たん白)
第1組織化植物性たん白(原料混合物A1から製造されたもの)を、沸騰水中で50分間湯戻しし、遠心脱水機で脱水した。
湯戻し前の乾燥質量1に対して、湯戻し脱水後の質量は2.6になった。湯戻し脱水後の第1組織化植物性たん白は、2軸エクストルーダー処理における押し出し方向に沿って繊維状に裂くことができる。この脱水物を、フードカッター(日本調理機(株)社製、FD‐21)の刃を逆回転させ、鈍刃で解砕し、太さが0.1〜6mm程度のものを60質量%以上含み、長さが10mm程度以上のものを60質量%含むように繊維状に解繊した。
【0059】
(水和・解繊された第2組織化植物性たん白)
第2組織化植物性たん白(原料混合物A2から製造されたもの)を、沸騰水中で20分間湯戻しし、遠心脱水機で脱水した。
【0060】
湯戻し前の乾燥質量1に対して、湯戻し脱水後の質量は2.6になった。湯戻し脱水後の第2組織化植物性たん白は、2軸エクストルーダー処理における押し出し方向に沿って繊維状に裂くことができる。この脱水物を、フードカッター(日本調理機(株)社製、FD‐21)の刃を逆回転させ、鈍刃で解砕し、太さが2〜10mm程度のものを50質量%以上含み、長さが5〜25mm程度のものを50質量%含むように繊維状に解繊した。
【0061】
(結着剤)
イヌリン(油脂代替原料:原料名フジFF/フジ日本精糖製)80質量部と水120質量部を混合し、加熱して溶解させ、冷却して40質量%イヌリンクリーム(油脂代替原料)200質量部を作成した。
【0062】
粉末状大豆タンパク(原料名:フジプロF/フジプロテインテクノロジー製)100質量部に水300質量部、前記のイヌリンクリーム200質量部、植物油脂14質量部、カラメル5質量部、調味料44.7質量部、フレーバー2.1質量部を加えて、縦型ミキサーで2分間攪拌してペースト状にした。
【0063】
(擬似肉食品の調製)
前記の水和・解繊された第1組織化植物性たん白を42.0質量部と、水和・解繊された第2組織化植物性たん白を18.0質量部を混合した(得られた混合物を以下「植物性たん白混合物」という)。
【0064】
このとき、水和・解繊された第1組織化植物性たん白と水和・解繊された第2組織化植物性たん白との乾燥物換算合計量に対して、前者70.0質量%、後者30.0質量%である(ともに乾燥物換算)。植物性たん白混合物に前記結着剤の粉末状大豆タンパクのペースト40.0質量部を加えて、縦型ミキサーで6分間混合し、混合物をスタンディングレトルトパウチに充填し、真空シールした。パウチを沸騰水中で60分間加熱して原料を凝固させた後、氷水で十分に冷却して擬似肉食品を調製した。
【0065】
実施例1−2〜1−9,比較例1〜2
水和・解繊された第1組織化植物性たん白と水和・解繊された第2組織化植物性たん白との乾燥物換算合計量に対するそれぞれの使用割合(乾燥物換算質量%)を、次表のとおり変える以外は実施例1−1と同様にして、擬似肉食品を調製した。
【0066】
スタンディングレトルトパウチから出した各擬似肉食品は、約1500gのブロック肉状のもので、これを厚さ15mm、表面積70cm程度のステーキ肉状に切って、フライパンで焼いて、各擬似肉食品の食感を評価した。食感の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0067】
実施例1−1の擬似肉食品の外観の写真を図1に示す。図1Aはブロック肉状の塊の状態を示し、図1Bはステーキ肉状のスライス片を示し、図1Cは該スライス片を焼いた状態を示す。
【0068】
実施例2:結着剤として粉末状大豆タンパク及び熱可逆性ゲルを用いる場合
(結着剤)
実施例1−1と同様の粉末状大豆タンパクのペーストを調製した。
別に、カラギーナン(原料名:カラギニンCSK−1/三栄源エフ・エフ・アイ製)1.2質量部とグルコマンナン(原料名:レオレックスRS/清水化学製)0.8質量部に水98.0質量部を加えて縦型ミキサーで2分間攪拌し、熱可逆性のゲルを得た。
【0069】
(擬似肉食品の調製)
実施例1−1と同様にして得た植物性たん白混合物60.0質量部(水和・解繊された第1組織化植物性たん白:水和・解繊された第2組織化植物性たん白=70:30(乾燥物換算質量比))に前記の粉末状大豆タンパクのペースト34.0質量部と、前記のゲル6.0質量部を加えて、以降実施例1−1と同様にして擬似肉食品を調製した。
【0070】
(評価)
20×20×20mmのサイズにダイスカットしたものを具材として用いてレトルトカレーを調理した。レトルトカレーを食すると、具材は繊維のほぐれ感と弾力性が良好で、牛肉様の好ましい食感であった。また、具材にはカレーの味が均一にしみ込んで風味がよかった。
【0071】
実施例3:結着剤及び油脂をエマルジョンにして用いる場合
(エマルジョンの調製)
粉末状大豆タンパク(原料名:フジプロF/フジプロテインテクノロジー製)110質量部にグアーガム10質量部、水100質量部及び植物油脂200質量部を加えて縦型ミキサーで5分間攪拌してO/Wエマルジョンを得た。
【0072】
(擬似肉食品の調製)
実施例1−1と同様にして得た植物性たん白混合物60.0質量部(水和・解繊された第1組織化植物性たん白:水和・解繊された第2組織化植物性たん白=70:30(乾燥物換算質量比))に実施例1の粉末状大豆タンパクのペースト30.0質量部と、前記のO/Wエマルジョン10.0質量部を加えて、以降実施例1−1と同様にして擬似肉食品を調製した。
【0073】
(評価)
調製した擬似肉食品を厚さ15mm、表面積70cm程度のステーキ肉状に切って、フライパンで焼いて食すると、繊維感と弾力性があり、ジューシー感が良好で、牛肉様の好ましい食感であった。
【0074】
実施例4:トランスグルタミナーゼ添加
実施例1−1と同様にして得た植物性たん白混合物60.0質量部(水和・解繊された第1組織化植物性たん白:水和・解繊された第2組織化植物性たん白=70:30(乾燥物換算質量比))に実施例1の粉末状大豆タンパクのペースト39.8質量部と、トランスグルタミナーゼ(原料名:アクティバTG−AK/味の素製)0.2質量部を加えて、縦型ミキサーで6分間混合し、混合物をスタンディングレトルトパウチに充填し、真空シールした。パウチを60℃の温水中で30分間加熱して酵素反応させ、更に沸騰水中で30分間加熱して原料を凝固させた後、氷水で十分に冷却して擬似肉食品を調製した。
【0075】
(評価)
調製した擬似肉食品を厚さ15mm、表面積70cm程度のステーキ肉状に切って、フライパンで焼いて食すると、繊維感があり歯ごたえが良好で、噛み応えがある、牛肉様の好ましい食感であった。
【0076】
実施例5:ローストビーフタイプ(内部が赤く、外側が褐色)
(結着剤)
粉末状大豆タンパク(原料名:フジプロF/フジプロテインテクノロジー製)50質量部に水190質量部、紅麹色素(原料名:サンレッドMA)18.0質量部、フレーバー2.0質量部を加えて、縦型ミキサーで2分間攪拌してペースト状にした。
【0077】
(擬似肉食品の調製)
実施例1−1と同様にして得た植物性たん白混合物60.0質量部(水和・解繊された第1組織化植物性たん白:水和・解繊された第2組織化植物性たん白=80:20(乾燥物換算質量比))に、前記の粉末状大豆タンパクのペースト36.0質量部と、調味料4.0質量部を加えて、縦型ミキサーで6分間混合し、混合物をスタンディングレトルトパウチに充填し、真空シールした。パウチを沸騰水中で60分間加熱して原料を凝固させた後、氷水で十分に冷却して赤色の擬似肉食品を調製した。
【0078】
醤油50.0質量部、みりん10.0質量部、砂糖0.5質量部、カラメル色素0.5質量部を混合した褐色着色液に、前記擬似肉食品を30分間浸漬し、フライパンで焼いて、表面を褐色にしてローストビーフの外見を有する食品を得た。
【0079】
(評価)
調製したローストビーフの外見を有する食品を厚さ3mm程度の薄切り肉状に切って食すると、ローストビーフ様の好ましい食感と風味であった。
調製したローストビーフ状食品の外観の写真を図2A及びBに示す。
【0080】
比較例3:解繊していない植物性たん白を用いる場合(第1・第2の組織化植物性たん白を用いて、特許文献1に記載された発明を再現したもの)
(水和された組織化植物性たん白)
実施例1−1と同様にして、原料混合物A1を2軸エクストルーダーのダイから押し出して切断したもののうち長さが短いものを、湯戻し、脱水し、円柱状の第1組織化植物性たん白C1(解繊されていないもの)を得た。脱水後の第1組織化植物性たん白C1は太さ15〜20mm程度、長さ10〜30mm程度であった。
【0081】
更に、実施例1−1と同様にして、原料混合物A2を2軸エクストルーダーのダイから押し出して切断したもののうち長さが短いものを、湯戻し、脱水し、円柱状の第2組織化植物性たん白C2(解繊されていないもの)を得た。脱水後の第2組織化植物性たん白C2は太さ15〜20mm程度、長さ10〜30mm程度であった。
【0082】
これとは別に、市販の粒状植物性たん白(原料名:アペックス600/フジプロテインテクノロジー製、『植物性たん白の日本農林規格』で規格された大豆たん白の粒状植物性たん白。大豆たん白原料をエクストルーダーにより組織化し乾燥して製造された製品。白色、粒径1〜5mmの粒状)を沸騰水中で3分間湯戻しし、遠心脱水機で脱水して粒状植物性たん白Dを得た。脱水後の粒状植物性たん白Dは粒径1〜5mm程度であった。
【0083】
(水和された繊維状植物性タンパク質)
水和された繊維状植物性たん白の冷凍品(原料名:フジピュアSP NC/フジプロテインテクノロジー製、『植物性たん白の日本農林規格』で規格された大豆たん白の繊維状植物性たん白、赤色)を室温に放置して解凍し、遠心脱水機で脱水した。脱水前の質量1に対して、脱水後の質量は0.85になった。脱水前の質量1に対して、乾燥質量は0.3である。上記繊維状植物性たん白は、太さが0.7〜1mm程度のものを80質量%以上含み、長さが10mm程度以上のものを80質量%含むものであった。
【0084】
(結着剤)
実施例1−1と同様にして得た。
【0085】
(擬似肉食品の調製)
前記の第1組織化植物性たん白C1:70質量部と、第2組織化植物性たん白C2:30質量部と、粒状植物性たん白D:18.3質量部と、繊維状植物性たん白:15.2質量部を混合し、これに前記の結着剤36.0質量部を加えて、縦型ミキサーで6分間混合し、混合物をスタンディングレトルトパウチに充填し、真空シールした。パウチを沸騰水中で60分間加熱して原料を凝固させた後、氷水で十分に冷却して擬似肉食品を調製した。
【0086】
(評価)
調製された比較例3の擬似肉食品の外観は、赤色の繊維状植物性たん白の中に組織化植物性たん白の白い部分が比較的大きい塊で多く存在し、天然牛肉の霜降り肉とは異なる外観を有していた。
【0087】
比較例3の擬似肉食品を、実施例2と同様にして、20×20×20mmのサイズにダイスカットしたものを具材として用いてレトルトカレーを調理した。レトルトカレーを喫食して食感を評価した。比較例3の擬似肉食品の具材を食すると、塊状のものが感じられ、繊維のほぐれ感が悪く、牛肉様の食感として好ましいものではなかった。また、塊部分にカレーの味が十分にしみ込んでいない様に感じられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.17〜0.76質量部の澱粉とを含む第1組織化植物性たん白を水和させ解繊させて得られた、水和・解繊された第1組織化植物性たん白と、
エクストルーダーによる処理により組織化された、植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.03〜0.15質量部の澱粉とを含む第2組織化植物性たん白を水和させ解繊させて得られた、水和・解繊された第2組織化植物性たん白と、
結着剤と
を含む原料混合物を加熱凝固することを特徴とする、擬似肉食品の製造方法。
【請求項2】
水和・解繊された第1組織化植物性たん白と水和・解繊された第2組織化植物性たん白との乾燥物換算合計量に対して、水和・解繊された第1組織化植物性たん白が乾燥物換算で20〜90質量%である、請求項1の方法。
【請求項3】
水和・解繊された第1組織化植物性たん白が太さ0.1〜6mmのものを含み、且つ水和・解繊された第2組織化植物性たん白が太さ0.1〜12mmのものを含む、請求項1または2の方法。
【請求項4】
水和・解繊された第1組織化植物性たん白が長さ5mm以上のものを含み、且つ、水和・解繊された第2組織化植物性たん白が長さ5mm以上のものを含む、請求項1〜3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
第1組織化植物性たん白及び第2組織化植物性たん白に含まれる植物性たん白が大豆たん白を主成分とする、請求項1〜4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
結着剤が植物性たん白、動物性たん白、及び多糖類からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
結着剤の少なくとも一部が、水和した場合に熱可逆性ゲルを形成する結着剤であり、原料混合物が当該結着剤を、水和した熱可逆性ゲルの形態で含む、請求項1〜6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
原料混合物が、たん白質接着酵素を更に含む、請求項1〜7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項の方法により製造された擬似肉食品。
【請求項10】
植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.17〜0.76質量部の澱粉とを含む組織化された第1組織化植物性たん白を水和させ解繊させた、水和・解繊された第1組織化植物性たん白と、
植物性たん白と該植物性たん白1質量部あたり0.03〜0.15質量部の澱粉とを含む組織化された第2組織化植物性たん白を水和させ解繊させた、水和・解繊された第2組織化植物性たん白と、
結着剤と
を混合された状態で含み、かつ凝固により一体化されていることを特徴とする、擬似肉食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−72264(P2011−72264A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227921(P2009−227921)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)