説明

攪拌混合管及び攪拌混合装置

【課題】 作業性及び攪拌混合性を良好に維持しつつ、メンテナンスが容易な攪拌混合管を提供する。
【解決手段】 可撓性のフレキシブル管8aを備え、フレキシブル管8aの内部には、複数のねじり羽根エレメント12aを連結してなるスタティックミキサ12が複数配置されており、フレキシブル管8aの長手方向に隣接するスタティックミキサ12間に、管状のスペーサ14を介在させたことを特徴とする攪拌混合管8である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の液剤を攪拌混合する攪拌混合管及び攪拌混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シール材の充填や、塗料の噴霧、接着剤の供給等を行うために、主剤や硬化剤など複数種類の液剤を攪拌混合して、スプレーガンから噴射することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、主剤、硬化剤、促進剤など複数の液剤を混合して使用する複数液タイプの塗料を混合器で混合して、スプレーガンにより噴霧する複数液混合塗装装置が開示されている。図4に示すように、混合器50は、主剤及び硬化剤がバルブ51,51を介して受け入れられる攪拌ボトル52と、攪拌ボトル52の下部に設けられたスタティックミキサ53とを備えており、スタティックミキサ53の下端は、塗料管路及びフレキシブルな延長管路を介してスプレーガンに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−212604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の複数液混合塗装装置は、スタティックミキサ53の下流側に位置する塗料管路及びフレキシブル延長管路が大きな空洞部となるため、混合された液剤の滞留時間が長くなることで、管路の内壁面にいわゆるコレステロールが堆積し易くなるという問題があった。また、作業終了後に洗浄液を通過させる場合にも、十分な流速が得られないために洗浄効率が悪く、頻繁に分解してブラシ等で清掃する必要があり、手間がかかるという問題があった。一方、フレキシブル延長管路にもスタティックミキサを配置すると、管路の柔軟性が失われて作業性が悪化するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、作業性及び攪拌混合性を良好に維持しつつ、メンテナンスが容易な攪拌混合管及び攪拌混合装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、可撓性のフレキシブル管を備え、前記フレキシブル管の内部には、複数のねじり羽根エレメントを連結してなるスタティックミキサが複数配置されており、前記フレキシブル管の長手方向に隣接する前記スタティックミキサ間に、管状のスペーサを介在させたことを特徴とする攪拌混合管により達成される。
【0007】
この攪拌混合管において、前記スペーサは、複数の金属パイプを備えることが好ましい。この構成において、2つの前記金属パイプ間に樹脂パイプを備えることが可能である。
【0008】
また、本発明の前記目的は、複数の液剤を個別に送出する送出手段と、送出された複数の液剤を合流する合流部と、前記合流部に一端側が接続された攪拌混合管と、前記攪拌混合管の他端側に接続された作業ガンとを備える攪拌混合装置であって、前記攪拌混合管は、可撓性のフレキシブル管を備え、前記フレキシブル管の内部には、複数のねじり羽根エレメントを連結してなるスタティックミキサが複数配置されており、前記フレキシブル管の長手方向に隣接する前記スタティックミキサ間に、管状のスペーサを介在させて構成されている攪拌混合装置により達成される。
【0009】
この攪拌混合装置において、前記混合器と前記攪拌混合管とは、ユニバーサルジョイントを介して接続されていることが好ましく、前記ユニバーサルジョイント内にスタティックミキサを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の攪拌混合管及び攪拌混合装置によれば、作業性及び攪拌混合性を良好に維持しつつ、メンテナンスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る攪拌混合装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す攪拌混合装置の攪拌混合管を一部切り欠いて示す側面図である。
【図3】図2に示す攪拌混合管の一部を分解して示す側面図である。
【図4】従来の複数液混合塗装装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る攪拌混合装置の概略構成図である。本実施形態の攪拌混合装置は、複層ガラス(IGS)の二次シール用として好適に使用することができ、作業者が作業ガンを把持して手元操作により注型作業を行うことができる。
【0013】
図1に示すように、攪拌混合装置1は、複数の液剤(本実施形態では2種類の液剤)を個別に送出する送出部2,4と、各送出部2,4から送出された複数の液剤を合流する合流部6と、合流部6に一端側が接続された攪拌混合管8と、攪拌混合管8の他端側に接続された作業ガン10とを備えている。
【0014】
送出部2,4は、液状の主剤及び硬化剤をそれぞれ貯留するカートリッジ2a,4aが装着される装着部2b,4bと、カートリッジ2a,4aの主剤及び硬化剤を押圧吐出するシリンジポンプ等の液剤ポンプ2c,4cとを備えており、作業ガン10の操作により液剤ポンプ2c,4cが作動して、主剤及び硬化剤をそれぞれ予め設定された吐出量で吐出する。本実施形態では、送出部2,4が送出する液剤を2種類としているが、3種以上を混合することで反応硬化する液剤を個別に送出可能に構成してもよい。また、液剤の供給は、カートリッジ式とする代わりに、攪拌混合装置1の外部に設けられた液剤供給源から行う構成であってもよい。
【0015】
合流部6は、導入部6a,6bがカートリッジ2a,4aにそれぞれ接続されるミキシングマニホールドから構成されており、合流した液剤が排出部6cより排出される。
【0016】
攪拌混合管8は、ゴムホースや蛇腹管等からなる可撓性のフレキシブル管8aと、フレキシブル管8aにジョイント8bを介して螺合されたステンレス等からなる直管8cとを備えている。攪拌混合管8の一端側(フレキシブル管8a側)は、ユニバーサルジョイント8dを介して合流部6の排出部6cに着脱可能に接続される一方、他端側(直管8c側)が作業ガン10に螺合等により接続される。
【0017】
作業ガン10は、把持部10aを有するガン本体10bに揺動自在に取り付けられた操作レバー10cを備えており、操作レバー10cを握ることにより液剤ポンプ2b,4bが作動して、ノズル10dの先端からポリウレタン樹脂等の混合液剤が供給されるように構成されている。混合液剤が塗料の場合には、圧縮空気の噴出により混合液剤を噴霧するように作業ガン10を構成してもよい。
【0018】
図2は、攪拌混合管8を一部切り欠いて示す側面図であり、フレキシブル管8aと直管8cとを分離した状態で示している。フレキシブル管8a及び直管8cの内部には、複数のスタティックミキサ12が配置されている。図2に一部を拡大して示すように、各スタティックミキサ12は、攪拌混合管8を通過する混合流体の流れを分割して旋回させるように、攪拌混合管8の流れ方向に沿った螺旋形状(すなわち、中心軸周りのねじれ形状)を有するねじり羽根エレメント12aを、複数連結して構成されている。ねじり羽根エレメント12aの連結数は、多すぎると攪拌混合管8の曲げが制約されて作業性が低下する一方、少なすぎると攪拌混合性が低下し易いことから、2〜12個が好ましく、2〜8個がより好ましい。
【0019】
各ねじり羽根エレメント12aの両端縁は、互いに略平行(すなわち、ねじれ角度が約180°)であることが好ましいが、ねじれ角度は特に限定されるものではない。また、隣接するねじり羽根エレメント12aが接するねじり羽根の端縁同士は、攪拌を促すために平行でないことが好ましく、互いに直交することがより好ましい。
【0020】
ねじり羽根エレメント12aは、図3に分解図で示すように、端面視における直径D1が、フレキシブル管8aの内径D2よりも若干(例えば、0.1mm程度)小さいことが好ましく、通常は直径D1の1.5倍程度の長さL1を有する。ねじり羽根エレメント12aの材質は、強度面からステンレス等の金属製であることが好ましいが、ポリプロピレン等の樹脂製であってもよい。
【0021】
また、図2に示すように、フレキシブル管8aに配置された各スタティックミキサ12の間には、フレキシブル管8aの柔軟性を確保するために、ステンレス等の直管状の金属パイプからなるスペーサ14が配置されている。各スペーサ14は、いずれも同じ外径及び内径を有しており、外径がねじり羽根エレメント12aの直径に略一致している。スペーサ14の長さや個数は特に制限されないが、良好な作業性を得るためには、例えば、外径と同程度の長さを有するスペーサ14を、各スタティックミキサ12間に2個以上配置することが好ましく、2〜5個程度がより好ましい。
【0022】
フレキシブル管8aの内部に配置されたスタティックミキサ12及びスペーサ14は、各要素間に実質的に隙間が生じないように配置されていることが好ましく、これによって、各要素間でのフレキシブル管8aの曲げを可能にしつつ、作業終了後に樹脂溜まりが生じてメンテナンス性が悪化することを防止することができる。また、本実施形態においては、直管8cにおいてもスタティックミキサ12間にスペーサ14を1つ配置しているが、直管8c内のスペーサ14は必須のものではない。
【0023】
本実施形態の攪拌混合装置1は、スタティックミキサ12が、上記のように攪拌混合管8内に配置される他、ユニバーサルジョイント8d内や作業ガン10内にも配置されており、全体として混合液剤の樹脂溜まりの発生を抑制している。
【0024】
以上の構成を備える攪拌混合装置1によれば、攪拌混合管8のフレキシブル管8aに配置されたスタティックミキサ12が複数に分割されており、各スタティックミキサ12間にスペーサ14が介在されているため、スタティックミキサ12として剛性が高い金属製のものを使用しても、スタティックミキサ12とスペーサ14との間で可撓性を確保することができ、作業ガン10による混合液剤の供給作業を容易に行うことができる。また、攪拌混合管8内における液剤の混合攪拌については、複数のスタティックミキサ12により行うことができると共に、混合液剤がスタティックミキサ12からスペーサ14に移送される際にも、流路径が絞られて乱流が生じるため、良好な混合攪拌性が得られる。
【0025】
スペーサ14は、それ自体が可撓性を有する樹脂パイプを使用することも可能であるが、本実施形態のように金属パイプなど高剛性のものを使用することが好ましく、これによってスタティックミキサ12の端部との接触による損傷や挟み込みを防止することができると共に、スペーサ14の外周面と攪拌混合管8の内周面との間に隙間が生じて混合液剤が入り込むのを抑制することができる。また、各スタティックミキサ12間にスペーサ14を複数配置することにより、スタティックミキサ12とスペーサ14との間だけでなく、隣接するスペーサ14間でも可撓性を確保できるため、作業性をより向上させることができる。更に、複数の金属パイプ間に樹脂パイプを介在させてスペーサを構成してもよく、これによって、樹脂パイプが配置された領域全体で可撓性を確保することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 攪拌混合装置
2,4 送出部
6 合流部
8 攪拌混合管
8a フレキシブル管
8c 直管
8d ユニバーサルジョイント
10 作業ガン
12 スタティックミキサ
12a ねじり羽根エレメント
14 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のフレキシブル管を備え、
前記フレキシブル管の内部には、複数のねじり羽根エレメントを連結してなるスタティックミキサが複数配置されており、
前記フレキシブル管の長手方向に隣接する前記スタティックミキサ間に、管状のスペーサを介在させたことを特徴とする攪拌混合管。
【請求項2】
前記スペーサは、複数の金属パイプを備える請求項1に記載の攪拌混合管。
【請求項3】
前記スペーサは、2つの前記金属パイプ間に樹脂パイプを備える請求項2の攪拌混合管。
【請求項4】
複数の液剤を個別に送出する送出手段と、送出された複数の液剤を合流する合流部と、前記合流部に一端側が接続された攪拌混合管と、前記攪拌混合管の他端側に接続された作業ガンとを備える攪拌混合装置であって、
前記攪拌混合管は、可撓性のフレキシブル管を備え、前記フレキシブル管の内部には、複数のねじり羽根エレメントを連結してなるスタティックミキサが複数配置されており、前記フレキシブル管の長手方向に隣接する前記スタティックミキサ間に、管状のスペーサを介在させて構成されている攪拌混合装置。
【請求項5】
前記合流部と前記攪拌混合管とは、ユニバーサルジョイントを介して接続されており、前記ユニバーサルジョイント内にスタティックミキサを備える請求項4に記載の攪拌混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−50862(P2011−50862A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202398(P2009−202398)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】