説明

支持棒付保護道具

【課題】 ブラシを物理的損傷から保護する。
【解決手段】 柄とこの柄に屈曲して一体的に設けられた毛束取付部と、この取付部に植設された複数の毛束とを備えるブラシの支持棒付保護道具であって、
一端に開口を持つ中空形状で、前記ブラシの柄が着脱可能に挿入される支持棒と、この支持棒の開口側に接続し屈曲して設けられ、前記ブラシの毛束取付部を把持して覆うカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、背面部と、背面部の周縁から垂直もしくは垂直に近似した角度で延出する立ち上り部とから形成される支持棒付保護道具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用のブラシを物理的損傷から保護するための道具に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物や夾雑物などによる汚染のない安全な食品を提供することは食品産業における重要な課題である。製造ラインは常に衛生的に維持および管理される必要がある。製造ラインは稼動を停止した際にブラシを用いて洗浄される。洗浄用のブラシは、汚染を防ぐために毛が抜けにくく微生物が繁殖しにくいものが望まれる。
【0003】
現在、洗浄用のブラシとして種々の製品が開発され販売されている。その多くは樹脂製の基体に毛束が植設されているものである。例えば、バイカン社(Vikan社)からのバイカンブラシ(非特許文献1)は、従来の製品に比べて毛が抜けにくく、ほこりやバクテリアを吸収せず、また熱湯、洗剤、消毒剤、酸およびアルカリに強いという特徴から食品業界において好んで使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】バイカン社商品カタログ、「Vikan hygiene system」、VHSCAT−JPDK−0605、6頁〜15頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄用のブラシの基体は、特に洗浄対象との摩擦や衝突によって損傷して磨耗することが多い。そのような磨耗はブラシに由来する夾雑物を生じる原因となる。
【0006】
本発明はこのような従来のブラシが有している問題を解決しようとするものであり、ブラシを物理的損傷による磨耗から保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、
柄とこの柄に屈曲して一体的に設けられた毛束取付部と、この取付部に植設された毛束とを備えるブラシの支持棒付保護道具であって、
一端に開口を持つ中空形状で、前記ブラシの柄が着脱可能に挿入される支持棒と、この支持棒の開口側に屈曲して設けられ、前記ブラシの毛束取付部を把持して覆うカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、背面部と、前記背面部の周縁から垂直もしくは垂直に近似した角度で延出する立ち上り部とから形成される支持棒付保護道具
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によってブラシの基体が物理的に損傷し磨耗することを防止できる。それにより食品製造工程におけるブラシに由来する夾雑物の発生を抑制でき、より安全な食品を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1態様である支持棒付保護道具を示す透視図。
【図2】図1に示した支持棒付保護道具をブラシと共に示す外観図。
【図3】ブラシを装着した状態の図1に示した支持棒付保護道具を示す斜視図。
【図4】図3に示した支持棒付保護道具のカバー部材周辺を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
本発明の1態様は、
柄とこの柄に屈曲して一体的に設けられた毛束取付部と、この取付部またはその一部に植設された毛束とを備えるブラシの支持棒付保護道具であって、
一端に開口を持つ中空形状で、前記ブラシの柄が着脱可能に挿入される支持棒と、この支持棒の開口側に接続して屈曲して設けられ、前記ブラシの毛束取付部を把持して覆うカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、背面部と、前記背面部の周縁から垂直もしくは垂直に近似した角度で延出する立ち上り部とから形成される支持棒付保護道具
である。
【0012】
図1を参照されたい。支持棒付保護道具1は支持棒2とカバー部材3とを備える。支持棒2はその一端に開口部4を持った中空形状の棒である。この支持棒2の開口部4側に支持棒2と連続してカバー部材3が設けられる。カバー部材3は、反るように屈曲した背面部5と、この背面部5の周縁から延出する立ち上り部6を有する。支持棒2の開口部4とは反対の端には、キャップ部材7が設けられ、支持棒2の表面には1または複数の凸部により形成される滑り止め8が設けられる。使用者は、支持棒付保護道具1に後述するようなブラシを装着して使用することになるが、キャップ部材7と滑り止め8は、使用者がブラシを装着して支持棒付保護道具1を使用する際に、作業がし易いように支持棒2を握った手が滑らないように機能する。
【0013】
図2に示すように支持棒付保護道具1は、装着しようとするブラシ11の形状に対応する形状を有する。ブラシ11は、柄12と、この柄12に屈曲して一体的に設けられた毛束取付部13と、この取付部13の一部に植設された毛束14とを具備する。毛束取付部13は柄12から反るように屈曲する。支持棒付保護道具1により保護されるのは、特に、ブラシ11の柄12と取付部13からなるブラシの基体の部分である。
【0014】
支持棒付保護道具1へのブラシの装着は次のように行えばよい。支持棒付保護道具1の開口部4を通して支持棒2の内部に柄12を挿入し、カバー部材3の屈曲の方向に取付部13の屈曲の方向を合わせ、カバー部材3の立ち上り部6と背面部5とからなる窪みに取付部13を嵌め込む(図3)。カバー部材3は、背面部5と立ち上り部6により取付部13を把持し、且つ覆う。
【0015】
取付部13の屈曲の度合いとカバー部材3の屈曲の度合いは、使用時に装着されたブラシ11が支持棒付保護道具1から脱落しないように互いに同じような屈曲具合となるように調整されている(図4を参照されたい)。この屈曲はバネのように機能し、ブラシ11の柄12を中空形状の支持棒2およびカバー部材3に押さえ付ける役割をする。また、立ち上り部6は、ブラシ11の取付部13の形状に沿って背面部5から延出すればよく、好ましくは、背面部5から垂直または垂直に近似した角度で延出する。立ち上り部6は、取付部13の毛束14が植設されている部分以外を覆うように延出していてもよく、例えば、取付部13における毛束の植設面の一部を覆うように延出していてもよい。立ち上がり部6はバネのように機能し、ブラシ11の毛束取取付部13をカバー部材3の背面部5に押さえ付ける役割をする。
【0016】
支持棒付保護道具1は、摩擦や衝突に強い材質で形成されればよい。そのような材質の例は、合金を含む金属であってよく、錆びの出にくい金属であることが好ましい。好ましい例は、ステンレスやアルミニウムなどである。また、例えば、鉄などの錆びやすい金属であっても、メッキ処理を施すことにより好ましく使用することが可能である。
【0017】
支持棒付保護道具1は、所望の金属からなる板を切断、屈曲、叩き延ばし、引き伸ばし、型押し、鋳造および/または溶接などのそれ自身公知の手段を利用して製造される。例えば、支持棒2と、カバー部材3を別々に形成した後にこれらを溶接によって接合することにより形成してよく、1枚の板状の金属を切断、屈曲および溶接することにより形成してもよい。支持棒付保護道具1を展開した形に板状の金属を切断した後に、支持棒2とカバー部材3を形成してもよい。
【0018】
キャップ部材7は、支持棒2とカバー部材3が形成された後に支持棒2の一端に付与されてもよい。その場合、キャップ部材7は、ゴムおよび樹脂などの弾性材料により形成されてよい。或いは支持棒2から続く同一の材料によって一体的にキャップ部材7が形成されてもよい。滑り止め8は、型押し、削り、叩き出しなどの操作によって支持棒2の使用時に握りとなることが予測される部分に形成されてよい。キャップ部材7および/または滑り止め8の付与は任意であってよい。
【0019】
支持棒付保護道具1に装着されたブラシ11は、使用時に使用対象との摩擦および/または衝突した場合であっても、支持棒付保護道具1により保護されているので物理的な損傷を受けることがない。従って、ブラシに由来する夾雑物が発生することが防止される。
【0020】

以下に、支持棒付保護道具の1例を挙げる。
【0021】
支持棒付保護道具を装着しようとするブラシ、例えば、バイカンブラシ(カタログNo.4287)を製造型として用意した。前記バイカンブラシは柄の長手方向の一箇所に屈曲部を持つ。この屈曲部を取り除くために、屈曲部よりも毛束取付部側に位置する部分で柄を切断した。
【0022】
支持棒付保護道具はステンレス板を切断し、必要な部分を溶接することにより形成した。具体的には次の通りである。
【0023】
まず、支持棒付保護道具を装着したブラシを用いて対象を洗浄するために十分な長さを有し、且つブラシの柄を挿入できて洗浄時に握るために適切な太さを有する支持棒部分を形成した。このような支持棒部分を形成するために必要な大きさにステンレス板を切断した。
【0024】
これを製造型としてのブラシの柄に巻き付けて柄の外周に沿った丸みを持たせて中空の棒の形状にした。これを柄から外して継目を溶接した。この中空の棒の一端から、その長手方向に二分する辺りまでを洗浄時に使用者が握るためのグリップ部分とした。グリップ部分となる部分に滑り止めを形成した。即ち、中空の棒のグリップ部分に対応する部分を、約3cm間隔で並行する複数の溝のある2枚の鉄板で挟んで圧力を加えて滑り止めを形成した。得られた滑り止めは、約3cm間隔で並行する幅および高さが約2mmの複数の凸部からなる。圧力を加えたことによってグリップ部分は、向かい合う2方向から内側に潰れ、滑り止めとして機能する複数の凸部を有する2つの平面部を有する形状となった。このようにして得られた中空の棒を支持棒部分として後の工程に使用する。
【0025】
次にカバー部材部分を形成した。毛束取付部の毛束が植設されている面以外の部分を覆うのに必要な面積と、先に形成した支持棒部分に溶接するために十分な面積とを含む大きさにステンレス板を切断した。これを、先に形成した支持棒部分に装着されたブラシの毛束取付部の背に合わせて配置した。このステンレス板を、毛束取付部の背面から側面に亘る形状と、毛束取付部から柄に亘る屈曲部の形状と、支持棒の外面の形状とに合わせて、これらの形状に沿うようになるまで木槌で叩いて形状を整えた。これによって接合部を有するカバー部材部分を形成した。
【0026】
カバー部材部分と支持棒部分を製造型として用いたブラシから外し、接合部を支持棒部分のグリップ部分とは反対の端の外側側面に溶接した。支持棒のグリップ部分側の端にゴム製のキャップ部材を嵌め込んだ。以上の工程によって図1に示す支持棒付保護道具が形成された。
【0027】
使用時、支持棒付保護道具1に柄の一部が切断された前記ブラシを装着した。装着は次のように行った。図2を参照されたい。柄12を支持棒付保護道具1の開口部4を通して支持棒2の内部に挿入し、取付部13の屈曲の方向をカバー部材3の屈曲の方向に合わせ、カバー部材3の立ち上り部6と背面部5とからなる窪みに取付部13を嵌め込んだ。その結果を図3に示した。
【0028】
カバー部材3は、背面部5と立ち上り部6によって取付部13を把持し、且つ覆っていた。
【0029】
支持棒付保護道具の装着されたブラシを使用してステンレス製の製造ラインを洗浄した。その結果、ブラシが製造ラインを構成するステンレスとの直接的な接触や衝突による物理的損傷を防ぐことができた。それによりブラシは磨耗から保護され、ブラシに由来する夾雑物は生じなかった。
【0030】
上記の例では、切断したブラシに装着するための支持棒付保護道具の例を示したが、これに限定されるものではなく、未切断のブラシのための支持棒保護道具も本発明の範囲に含まれる。また、上述の例における製造方法についての記載は、本発明に従う支持棒付保護道具の1例の製造方法の1例を示すことを目的としている。従って、本発明は、上記の例に示された方法およびそれにより製造された支持棒付保護道具に限定されるものではない。他の何れの手段および/または工程による方法で製造された支持棒付保護道具も本発明の範囲内であり、またそのような製造方法も同様に本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に従う支持棒付保護道具は、摩擦および/または衝突による物理的損傷からブラシの基体を効果的に保護することが可能である。従って、ブラシに由来する夾雑物の混入を避けることが望ましい分野、例えば、食品、健康食品、医薬、化粧品および医療などの分野において有効に利用される。
【符号の説明】
【0032】
1 支持棒付保護道具
2 支持棒
3 カバー部材
4 開口部
5 背面部
6 立ち上り部
7 キャップ部材
8 滑り止め
11 ブラシ
12 柄
13 毛束取付部
14 毛束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄とこの柄に屈曲して一体的に設けられた毛束取付部と、この取付部に植設された毛束とを備えるブラシの支持棒付保護道具であって、
一端に開口を持つ中空形状で、前記ブラシの柄が着脱可能に挿入される支持棒と、この支持棒の開口側に接続し屈曲して設けられ、前記ブラシの毛束取付部を把持して覆うカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、背面部と背面部の周縁から垂直もしくは垂直に近似した角度で延出する立ち上り部とから形成される支持棒付保護道具。
【請求項2】
金属からなる請求項1に記載の支持棒付保護道具。
【請求項3】
前記ブラシが当該支持棒付保護道具から脱落するのが防止されるように前記毛束取付部の屈曲の度合いに合わせて前記カバー部材の屈曲の度合いが調整されている請求項1または2に記載の支持棒付保護道具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218095(P2011−218095A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93380(P2010−93380)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000222783)東洋水産株式会社 (21)
【Fターム(参考)】