説明

改良されたオリゴ糖結合体ワクチン

【発明の詳細な説明】
【0001】1.導入本発明は、オリゴ糖結合体ワクチン類の改良された製造方法に関するものである。本発明の別の面では、莢膜多糖に対する単一特異性の均質な免疫応答を誘発するオリゴ糖ワクチン類が製造される。本発明の特定態様は、小児科患者並びに初老患者および虚弱または疾病により免疫が減少している患者(例えば、エイズ患者も含む)での使用において特に重要な肺炎連鎖球菌の一般的血清型に対する免疫を誘発するワクチン類を提供するものである。
【0002】2.発明の背景2.1.肺炎連鎖球菌により引き起こされる疾病肺炎球菌(肺炎連鎖球菌)は、普通は対または短鎖中で成長するグラム−陽性の莢膜化された球菌である。双球菌形では、隣接限界が取り囲んでおりそして反対の端部が僅かに尖っていて、有機体に小槍形を与えている。
【0003】肺炎球菌は、莢膜を形成する複合多糖類に基づいて血清型に分割することができる。84血清型は型−特異性抗血清であるノイフェルド膨化反応に対する露呈により同定されている。全てのものが人間に対して病原性であるが、型1、3、4、7、8、および12が最も頻繁に臨床的診療において遭遇する。型6、14、19、および23はしばしば子供で肺炎および中耳炎を引き起こすが、大人ではそれほど一般的ではない(オーストリアン(Austrian)、1983、「ハリソンズ・プリンシプルス・オブ・インターナル・メディスン(Harrison's Principlesof Internal Medicine)」中、ピータースドルフ(Petersdorf)他、編集、10版、マックグロー・ヒル・ブック・カンパニー、ニューヨーク、918−922頁)。特に、肺炎球菌は子供の肺炎、敗血症、および髄膜炎に対して応答する3種の主要病原体のうちの1種である(マクミラン(McMillan)、1982、「コア・テキストブック・オブ・ペディアトリックス(Core Textbook of Pediatrics)」中、カヤ(Kaye)他、編集、2版、J.B.リッピンコット・カンパニー、フィラデルフィア、498頁)。
【0004】2.2.肺炎球菌ワクチン類進行中の肺炎球菌感染の平均的危険性より高い個体には、例えば心臓疾病の如き慢性の全身的病気、慢性の肺臓気管疾病、肝臓疾病、腎不全、および悪性腫瘍が包含される。これらの個体は肺炎球菌感染に対してワクチン処理することが推奨される。この目的用に、肺炎球菌型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、および33F(これらは米国および世界の残りの国々における重大な肺炎球菌疾病の90%に応答する血清型または群を含んでいる)の莢膜多糖類からなる23種類のワクチン類が入手可能である(ニューモヴァックスRメルク、シャープ・アンド・ドーメ、およびイミューンR、レデルレ・ラボラトリース)。6才以下の子供では種々の莢膜抗原に対する免疫学的応答は免疫系の熟成特性の結果として種々の時点で生じしかも予防は成人で観察されるものより短い期間となるため、子供におけるこのワクチンの効果は疑わしい(ハリソン他、上記引用文献)。比較的小さい方の肺炎球菌血清型は小児科の大多数の肺炎球菌感染の原因であると信じられているが(グレイ(Gray)他、1979、ザ・ジャーナル・オブ・インフェクショナル・ディジーズ(J. Infect. Disease)、140:979−983)、これらはワクチンとして使用される精製された莢膜多糖類に対する人間抗体応答の成熟が最も遅い型も含んでいる(アンダーソン(Anderson)およびベッツ(Betts)、1989、ザ・ジャーナル・オブ・ペディアトリック・インフェクショナル・ディジーズ(Pediatric Infec. Dis. J.)、:S50−S53、ボルゴノ(Borgono)他、1978、プロシーディング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォア・エクスペリメンタル・バイオロイジー・アンド・メディスン(Proc. Soc. Exp. Biol. Med.)、157:148−154)。
【0005】2.3.結合体ワクチン類インフルエンザ菌b莢膜多糖に対する人間子供の免疫応答性は、莢膜抗原を担体蛋白質に結合させて「結合体」ワクチンを製造することにより得られており、Tリンパ球ヘルパー効果は担体蛋白質により誘発されそして免疫の発生に対して応答性があると信じられている(ロビンス(Robbins)他、1984、「バクテリア性ワクチン類(Bacterial Vaccines)」、ゲルマニエル(Germanier)編集、アカデミック・プレス、ニューヨーク、289−316頁)。クルース(Cruse)およびルイス(Lewis)、1989、「結合体ワクチン類(Conjugate Vaccines)」、編集クルース(Cruse)およびルイス(Lewis)、カーガー(Karger)、バセル(Basel)、1−10頁も参照のこと。同様な方式は肺炎球菌ワクチン類の製造にも向けられている。
【0006】2.3.1.ワクチン類中の抗原としての元のままの莢膜重合体多くの研究者が、ワクチン中で有用であるかまたはワクチンとして有用である元のままの莢膜重合体を単離しそして精製している。例えば、米国特許番号4,220,717は、インフルエンザ菌bの莢膜重合体からの免疫学的に活性なポリリボシルリビトールホスフェート(PRP)の単離および精製方法を記載している。さらに、米国特許番号4,210,641は、200,000より大きい見掛け分子量を有しておりそして主としてガラクトース、グルコースおよびマンノースからなっており且つ少量のオサミン類を含有しているインフルエンザ菌の多糖抽出物に関するものである。
【0007】数人の研究者は、より良好な免疫学的応答を得るために調合物中でこれらのおよび他の元のままの莢膜重合体を使用している。例えば、米国特許番号4,196,192は精製された元のままのPRPを含有しているワクチンおよび完全細胞パラ百日咳菌ワクチン調合物を記載している。免疫原性増加用のこの方式は、若い哺乳動物において高められた水準の抗−PRPおよび抗−百日咳抗体を生じた。
【0008】2.3.2.ハプテン類に対する抗血清を製造するための担体蛋白質の使用担体蛋白質は結合された莢膜重合体の免疫原性をさらに増加させることができ、それらはハプテン類を免疫性にさせることもできる。ハプテン類とは、抗体またはリンパ球受容体に対して特異的に結合できるがそれら自身では免疫応答を誘発しない分子であると定義されている(すなわちそれらは免疫原性ではない)。免疫応答を引き起こすためには、ハプテン類と称されている小/低分子量または劣った免疫原性の分子は普通は不均質蛋白質であるそれより大きい分子または担体と最初に結合されなければならない。動物中へのハプテン−担体複合体の注射が抗体のBリンパ球による製造が得られ、それらの一部は遊離している未結合ハプテン分子に対して特異的に結合することができるであろう。
【0009】最も初期に研究されたハプテン類は、例えばアニリンおよびo−アミノ安息香酸の如きアゾ染料化合物であった。ランドスタイナー(Landsteiner)およびランプル(Lampl)(1019、ツルナル・フュル・イミュノロギー・フォルシュング(Z. Immun. Forsch)、:293)は、これらの化合物をジアゾ化により血清蛋白質に結合させた。これらの人工的に製造されたアゾ−蛋白質を注射した時には、兎は結合された化学的部分に対して特異性であった抗体の沈澱を生じた。
【0010】ハプテン性化合物の他の例は、牛血清アルブミンまたは牛ガンマグロブリン(BGG)に対してジニトロフェニル(DNP)として結合する時に免疫原性になるジニトロフェノールおよびリゼルグ酸ジエチルアミドである。ホルムアルデヒドはハプテンとして行動することが示されているが、製品からのホルムアルデヒド蒸気に呈された人間または研究室内の人間は生体内でのそれらの内因性高分子のホルミル化後に該化合物に対して「感化」され始める。
【0011】ハプテン性行動は小さい有機分子に限定されるものではなく、そしてインシュリンの寸法までのポリペプチドホルモン類はたとえ免疫原性であってもしばしば劣悪な免疫原性である。従って、これらのホルモン類に対する高い抗体力価を得るためには、それらを担体分子と結合させる(またはこれらのポリペプチド類の多くを一緒に架橋結合させることにより比較的大きい分子を生成する)ことが必要である。
【0012】担体分子の含有は、担体が単なる輸送役割以上に作用するという点で、特に興味がある。オヴァリー(Ovary)およびベナセラフ(Benaceraff)(1963、プロシーディング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォア・エクスペリメンタル・バイオロイジー・アンド・メディスン(Proc. Soc. Exp. Biol. Med.)、114:723)は、兎にDNP−BCGを注射することによりこれを示した。動物中への多くの免疫原性物質の注射は露呈の免疫学的「記憶」を生じるであろう。従って、その後に二回目の注射をする時には、はるかに激しい免疫応答がある。実際にオヴァリーおよびベナセラフがDNP−BCGを再び注射した時には、DNPおよびBCGの両者に対して向けられた抗体の顕著に高められた水準をもたらす強い第二応答があった。その代わりに二回目の注射をDNP−卵アルブミンを用いて行った時には、それよりはるかに弱い抗−DNP抗体応答が見られた。応答における差異は担体効果と称されているものによるものであり、そしてそれにはヘルパーTリンパ球が含まれているようである。
【0013】予備的証明は、全ての蛋白質が一定ハプテンに関して同等に有効な担体蛋白質とは限らないことを示している。ロビンス(Robbins)他(インフェクショナル・イミュノロジー(Infect. Immun.)、40:245−256)は、同一の多糖ハプテンが異なる蛋白質担体と結合されておりそしてハプテンに対する抗体応答が定量化されている実験的な蛋白質−多糖結合体ワクチン類に関するデータを表示している。担体に関する主要な役割を示している抗−ハプテン抗体の発生量において相当な差異が見られた。
【0014】特に肺炎球菌ワクチン類に関すると、リン(Lin)およびリー(Lee)(1982、イミュノロジー(Immunology)、46:333)が型6Aおよび19F多糖類並びに蛋白質と結合された19Fに露呈された成人および若いハツカネズミでの免疫応答を研究した。19F多糖−蛋白質結合体を接種したハツカネズミでは19F多糖だけを接種した対照群中より相当高いIgMおよびIgG2抗体力価が誘発された。
【0015】2.3.3.結合体を含有しているワクチン他の研究者は、いわゆる「担体効果」による抗体生成を増加させる研究において担体蛋白質に対する莢膜重合体の結合を研究した。例えば、シュニールソン(Schneerson)他、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン(Journalof Experimental Medicine)、152:361−376(1980)はインフルエンザ菌bにより引き起こされる侵入性疾病に対する免疫を与えると開示されているインフルエンザ菌b重合体−蛋白質結合体を記載している。該参考文献は子供における莢膜重合体の年令−関連性免疫学的行動を記載しており、そして元のままの莢膜重合体と血清アルブミン類であるリムルス・ポリフェムス・ヘモシアニンおよびジフテリア毒素などの種々の蛋白質との結合によりこの年令−依存性を克服しようとしている。結合方法は、例えばアジピン酸ジヒドラジドの如き結合剤の使用を含んでいる。
【0016】ゲイヤー(Geyer)他、メディカル・マイクロバイオロジカル・イミュノロジー(Med. microbiol. Immunol.)、165:171−288(1979)は、還元性アミノ化によるニトロフェニル−エチルアミン結合剤に対するある種の肺炎棹菌莢膜多糖フラグメントの結合体を製造しており、そして次に誘導化された砂糖をアゾカップリングを使用して蛋白質に結合させた。
【0017】1974年5月9日に出願されたマックインタイヤー(McIntire)による米国特許番号4,057,685は、ハロアシルハライドとの反応により蛋白質抗原と共有結合されている毒性が減じられた大腸菌脂肪多糖に関するものである。
【0018】1981年5月27日に出願されたジェニングス(Jennings)他による米国特許番号4,356,170は、還元性アミノ化による多糖−蛋白質結合体の製造に関するものである。
【0019】アンダーソン(Anderson)(1983、インフェクション・アンド・イミュニティ(Infection and Immunity)、39:233−238)は、無毒であるがジフテリア毒素の抗原的に同一な変種であるインフルエンザ菌型b莢膜多糖からのオリゴ多糖類およびCRM197の間の結合体に関するものである。
【0020】スニッペ(Snippe)他(1983、インフェクション・アンド・イミュニティ(Infection and Immunity)、42:842−844)は、莢膜多糖S3の部分的な酸加水分解物から単離された六糖が還元性アミノ化によりステアリルアミンと結合されておりそして次にリポゾーム中に加えられている肺炎連鎖球菌型3に対する半合成ワクチンに関するものである。生成した結合体/リポゾームワクチンはハツカネズミ中での肺炎連鎖球菌型3に対する予防を誘発することが観察された。
【0021】1983年3月14日に出願され1987年5月5日に発行されたツアイ(Tsay)他による米国特許番号4,663,160は、グラム−陰性バクテリアからの無毒化された多糖が同種のグラム−陰性バクテリアからの無毒化された蛋白質と4−12炭素部分により共有結合されているバクテリアに関するものである。
【0022】1984年1月5日に出願され1986年10月28日に発行されたゴルドン(Gordon)による米国特許番号4,619,828は、例えばインフルエンザ菌b、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、および大腸菌の如き病原性バクテリアからの多糖分子と例えばジフテリアおよび破傷風トキソイド類の如きT細胞依存性抗原との間の結合体に関するものである。
【0023】1984年8月10日に出願され1989年2月28日に発行されたアンダーソン(Anderson)およびクレメンツ(Clements)による米国特許番号4,808,700並びに1986年3月28日に出願され1988年8月2日に発行されたアンダーソンによる米国特許番号4,761,283は、還元性アミノ化によるバクテリア性毒素類、トキソイド類、または結合用副単位に対する莢膜重合体フラグメントの共有結合に関するものである。
【0024】1986年7月2日に出願され1987年12月8日に発行されたポロ(Porro)他による米国特許番号4,711,779は、3価の免疫活性を有しているグラム陽性バクテリアおよびグラム陰性バクテリアの莢膜多糖類並びにCRM197、破傷風トキソイドまたは百日咳毒素からの抗原性決定子からなるグリコ蛋白質結合体ワクチンに関するものである。
【0025】2.3.4.結合体ワクチン類の製造方法莢膜多糖ハプテン類が担体蛋白質類と結合されている結合体ワクチン類の製造は、下記の工程を経る。
【0026】(i)莢膜多糖を製造すべきである。
【0027】(ii)多糖のフラグメントを使用する場合には、それを元のままの多糖から分離すべきである。
【0028】(iii)糖を活性化するかまたは結合可能にすべきであり、すなわち蛋白質と共有結合可能な分子を生成すべきである。
【0029】(iv)糖を蛋白質と結合させる。
【0030】これらの4工程を行うための当技術で公知の種々の方法は表Iに挙げられている。
【0031】
【表1】
表I 多糖の 多糖の 多糖の 蛋白質に対する参考文献 製造 分解 活性化 結合 1981年5月27日に出願され アルデヒド発生 シアノホウ素1982年10月25日に発行さ 用に過ヨウ素酸 水素化物を用いれたジェニングスによる を使用した る還元性アミノ米国特許番号4,356,170 化1983年3月14日に出願され アルデヒド発生 1)縮合剤例えば1987年5月5日に発行され 用に過ヨウ素酸 カルボジイミドたツアイによる米国特許 を使用した の存在下で蛋白番号4,663,160 質と結合された 4-12炭素部分 ii)還元剤例え ばシアノホウ素 水素化物の存在 下でシッフ塩基 反応により4-12 炭素部分を有す る蛋白質と結合 された多糖1984年1月5日に出願され 熱処理により *臭化ジシアン *蛋白質のアジ1986年10月28日に発行さ 200,000-2,000, ピン酸ヒドラジれたゴルドンによる米国 000の間の分子 ン誘導体中で存特許番号4,619,828 寸法に調節され 在するように、 た多糖類 4-8炭素原子の スペーサー架橋 を介して結合さ れた1984年8月10日に出願され 少なくとも1個の還元性 シアノホウ素1989年2月28日に発行さ 末端を有する抗原性フラ 水素化物の存在れたアンダーソンおよび グメントを製造するため 下での還元性アクレメンツによる米国特許 に種々の方法、例えば ミノ化による番号4,356,170 過ヨウ素酸による分解、 結合(約2-3週 グリコシダーゼによる 間) 加水分解、または酸加 水分解、が使用された"CRM197に対する肺炎 デンマーク 還元性フラグメントを製造 燐酸塩緩衝液連鎖球菌の莢膜重合体 型6A、 するための0.1N HCL中の 中でシアノホフラグメントの結合" エリリリ 100℃における酸加水分解 ウ素水素化物という題の上記の ーカンパ を用いて18日6.5.章 ニー 間にわたり 37℃において CRM197に結合1986年7月2日に出願され 100℃におけ 第一級アミノ 有機溶媒、例1987年12月8日に発行さ る6-40時間の 基を末端還元 えばジメチルれたポロによる米国特許 酸加水分解。 性基(例えば スルホキシド番号
4,711,779 適している シアノホウ素 の存在下で ハプテン類は ナトリウムを トキソイドに 1000-2000ダル 用いて)加え 結合 トンの分子量 その後に(例 を有する。 えばアジピン 酸の存在下で) エステルに転 化させること により活性化肺炎連鎖球菌型6A用 100℃におけ アンモニア性 ジメチルスル る39時間の 緩衝液中で ホキシドの存 酸加水分解 (第一級アミノ 在下で室温で 基を加えるた 15時間にわた めに)シアノ りCRM197に ホウ素ナトリ 結合 ウムの存在下で 2週間活性化 アジピン酸のスク シンイミジルエス テルを含有してい るジメチルスルホ キシドの水溶液中 で対応する一官能 性エステルに転化3.発明の要旨本発明は、新規な方法を用いるバクテリア性莢膜多糖類から誘導されたオリゴ糖類の共有結合に関するものである。
【0032】この方法によると、最近用いられている方法より相当速い製造速度でグリコ結合体を効率的に合成することができる。本発明のグリコ結合体はワクチン調合物中で使用することができ、そして免疫原性であることが示されている。
【0033】特定態様では、本発明は肺炎連鎖球菌莢膜多糖類から誘導されたオリゴ糖類を取り込んでいるグリコ結合体の製造に関するものである。本発明の方法は主要疾病の大部分に肺炎連鎖球菌感染が伴われているような小児科集団に特に適しているワクチン調合物中で使用できる肺炎連鎖球菌グリコ結合体を高収率で効率的に製造することができる。免疫原性結合体は莢膜重合体だけのものより年令依存性が少ないことが見いだされており、そして非常に若い温血哺乳動物のそれぞれ莢膜化されたバクテリアによる全身的感染に対する活性免疫化用に有用である。
【0034】本発明の他の面では、本発明のグリコ結合体は驚くべきことに単一特異性の均質な免疫応答を誘発することが見いだされ、それにより自己免疫反応および関連する後−ワクチン化症候群の発生が有利に避けられる。
【0035】重要なことに、本発明の免疫原性結合体は蛋白質に対する炭水化物の結合においてこれまでに使用されていた例えばアジピン酸ジヒドラジドまたはp−ニトロ−フェニルエチルアミンの如き有能な毒性結合剤を含有していない。
【0036】3.1.略語および定義CRM197 ジフテリア毒素と抗原的に架橋反応性である無毒の蛋白質DMSO ジメチルスルホキシドDP 重合度MIC 最小抑制濃度SD 置換度SIDEA アジピン酸のスクシンイミジルジエステルSIDES 琥珀酸のスクシンイミジルジエステル4.図面の簡単な説明図1.オリゴ糖−蛋白質結合体の合成用の一般的工程A.高分子量多糖類を酸加水分解して2.5×103の平均分子量のオリゴ糖類を生成する。
【0037】B.オリゴ糖類を(1)pH=9におけるジアミノエタン[H2N(CH2)2NH2]との反応により活性化し、ホウ素水素化ピリジン(PyBH3)を用いて還元し、次に(2)ジメチルスルホキシド(DMSO)中でスクシンイミジルジエステルおよびアジピン酸(SIDEA)と反応させる。
【0038】C.活性化されたオリゴ糖類をリシン残基を介して担体蛋白質と結合させる。
【0039】図2.結合工程における「特別仕様」スペーサーの使用A.オリゴ糖および炭素数が4のアジピン酸結合剤の間のアミド結合(矢印)を有する、ポロ(Porro)他、(1985)、モレキュラー・イミュノロジー(Mol. Immunol.)、22:907−919により記載されているこれまでの工程により製造されたグリコ結合体。スペーサーの全長は約10.4Aである。
【0040】B.2個の炭素残基(矢印、ジアミノエタンにより製造された)およびアミド結合がオリゴ糖およびSIDESとの反応により製造された炭素数が2の琥珀酸結合剤の間に存在している、本発明に従い製造されたグリコ結合体。スペーサーの全長は約10Aである。
【0041】C.2個の炭素残基(矢印、ジアミノエタンにより製造された)およびアミド結合がオリゴ糖およびSIDEAとの反応により製造された炭素数が4のアジピン酸結合剤の間に存在している、本発明に従い製造されたグリコ結合体。スペーサーの全長は約14.5Aである。
【0042】図3.アジピン酸対琥珀酸誘導体スペーサーを含有している活性化されたオリゴ糖類に対するCRM197の結合の効果。結合反応の生成物のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(銀染色)。
【0043】A.レーン1:分子量基準(92.5K、66.2K、45.0K、31.0K、21.5K)。
【0044】レーン2:CRM197(1μg)対照。
【0045】レーン3:スペーサーとしての琥珀酸を有する結合されたオリゴ糖6A−CRM197(2μg)(50%DMSO中のCRM197の1:1モノエステル/合計アミノ基比)。
【0046】レーン4:スペーサーとしての琥珀酸を有する結合されたオリゴ糖6A−CRM197(2μg)(50%DMSO中のCRM197の1:2モノエステル/合計アミノ基比)。
【0047】レーン5:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖6A−CRM197(2μg)(50%DMSO中のCRM197の1:1モノエステル/合計アミノ基比)。
【0048】レーン6:スペーサーとしての琥珀酸を有する結合されたオリゴ糖14−CRM197(2μg)(50%DMSO中のCRM197の1:4モノエステル/合計アミノ基比)。
【0049】レーン7:スペーサーとしての琥珀酸を有する結合されたオリゴ糖19F−CRM197(2μg)(50%DMSOの不存在下でのCRM197の1:4モノエステル/合計アミノ基比)。
【0050】レーン8:スペーサーとしての琥珀酸を有する結合されたオリゴ糖23F−CRM197(2μg)(50%DMSO中のCRM197の1:2モノエステル/合計アミノ基比)。
【0051】レーン9:CRM197(1μg)対照。
【0052】B.レーン1:CRM197(1μg)対照。
【0053】レーン2:CRM197対照(1μg、レーン1と比較して異なるロット)。
【0054】レーン3:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖23F−CRM197(2μg)(50%DMSO中のCRM197の1:2モノエステル/合計アミノ基比)。
【0055】レーン4:分子量基準(92.5K、66.2K、45.0K、31.0K、21.5K)。
【0056】レーン5:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖23F−CRM197(2μg)(50%DMSO中のCRM197の1:2モノエステル/合計アミノ基比)。
【0057】レーン6:CRM197(1μg)対照。
【0058】CRM197対照(1μg、レーン1と比較して異なるロット)。
【0059】レーン7:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖6A−CRM197(2μg)。
【0060】C.レーン1:分子量基準(92.5K、66.2K、45.0K、31.0K、21.5K)。
【0061】レーン2:CRM197(1μg)対照。
【0062】レーン3:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖6A−CRM197(2μg)。
【0063】レーン4:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖14−CRM197(2μg)。
【0064】レーン5:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖19F−CRM197(2μg)。
【0065】レーン6:スペーサーとしてのアジピン酸を有する結合されたオリゴ糖23F−CRM197(2μg)。
【0066】レーン7:分子量標識(92.5K、66.2K、45.0K、31.0K、21.5K)。
【0067】図4.肺炎連鎖球菌オリゴ糖6A−CRM197結合体に対する兎のIgG応答。莢膜多糖類に対して誘発されたIgGアイソタイプの親和性価の抑制−ELISA分析。
【0068】A.型6A莢膜多糖類。
【0069】B.遊離形またはCRM197と結合された型6Aオリゴ糖(DP=10)。
【0070】C.分子スペーサーにより活性化されたかまたはCRM197と結合された型14オリゴ糖(DP=12)。
【0071】5.発明の詳細な記載本発明は、担体蛋白質に対するバクテリア性莢膜多糖類から誘導されたオリゴ糖類の共有結合に関するものであり、本発明の方法は新規方法により新規なグリコ結合体を生成する。
【0072】開示を明白にするために、本発明の詳細な記載を下記の章に分割するが、それらは限定のためではない。
【0073】(i)オリゴ糖類の製造(ii)オリゴ糖類の活性化(iii)蛋白質に対するオリゴ糖類の結合(iv)グリコ結合体の免疫化学特性(v)ワクチン調合物および投与(vi)肺炎球菌オリゴ糖結合体ワクチンの利用5.1.オリゴ糖類の製造高分子量莢膜多糖は商業的に購入できるか(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)(ATCC)(ロックヴィル、メリーライド)、またはポロ(Porro)他、1983、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・スタンダーズ(J. Biol. Stand.)、11:65−71により記載されている方法により得られる。肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌b、髄膜炎菌、大腸菌、チフス菌、ミュータンス連鎖球菌、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、肺炎棹菌、黄色葡萄球菌、および緑膿菌の莢膜中で見いだされるものなどの多糖を使用することができるが、それらに限定されるものではない。
【0074】特定の莢膜重合体の構造特徴に依存する種々の方法により、少なくとも1個の還元性末端を有する抗原性フラグメントを莢膜重合体から製造することができる。過ヨウ素酸塩(または関連試薬)による限定された酸化性分解はアルデヒド末端を残存させるが、そのような方式は非−環式残基上での隣接ジヒドロキシ基を有する重合体に限定されるであろう。グリコシド結合の加水分解は還元性砂糖末端を生じる。そのような加水分解は最適にはグリコシダーゼにより酵素的に実施することができるが、この適用はそれ用のグリコシダーゼが知られている例えば肺炎連鎖球菌8の如き比較的わずかな莢膜重合体に限定されるであろう。グリコシド結合の加水分解用には、酸性加水分解が一般的に使用される。重合体が酸−敏感性の非−グリコシド結合を含有している場合または重合体が抗原特異性にとって重要な酸−敏感性分枝鎖結合を含有している場合には、この方式の使用は限定されるであろう。
【0075】本発明の特定態様では、肺炎連鎖球菌型6A莢膜多糖を約10-2M酢酸中で約100℃において約30時間にわたり加水分解することができ、肺炎連鎖球菌型14莢膜多糖は約0.5Mトリフルオロ酢酸中で約70℃において約7時間にわたり加水分解することができ、肺炎連鎖球菌型19F多糖は約10-2M酢酸中で約50℃において約48時間にわたり加水分解することができ、そして肺炎連鎖球菌型23F多糖は約0.25Mトリフルオロ酢酸中で約70℃において約3時間にわたり加水分解することができる。
【0076】本発明に従うと、蛋白質と結合されるオリゴ糖類は好適には3−6個の間の繰り返し単位(すなわち約10−30個の単糖残基)からなっており、そしてより好適には3−4個の間の繰り返し単位(すなわち約15個の単糖残基)からなっており、その理由はグリコ結合体中に取り込まれるこの長さのオリゴ糖類が最適な免疫原性であることが示されているからである。
【0077】5.2.オリゴ糖類の活性化オリゴ糖類は、還元性アミノ化およびその後の例えばジエステルの如き二官能性分子との反応により活性化できるが、該ジエステルは限定用のものではない。本発明の方法の概略は、図1および本発明の方法をポロ(Porro)他、1985、モレキュラー・イミュノロジー(Mol. Immunol.)、22:907−919中に記載されている方法と比較している表IIに示されている。これまでの工程を使用すると活性化時間は7−14日であり、これは本発明に従い15分間に短縮されていることに注目すべきである。また、これまでの工程を使用すると還元時間は7−14日であり、これも本発明に従い48時間に短縮されていることに注目すべきである。従って、本発明は完了させるためにはこれまでの方法より12−26日も短い日数が必要である。例えば50℃の如き高温に炭水化物を露呈すると変性を引き起こす可能性があるため、このことは重要な利点である。
【0078】
【表2】
表II.肺炎連鎖球菌オリゴ糖類の末端−還元性単位の化学的活性化パラメーター これまでの工程 本発明の工程 加えられた基 NH2 NH(CH2)2NH2試薬(pH) アンモニア性緩衝液(9) ジアミノエタン(9)活性化温度 50℃ 100℃活性化時間 7−14日 15分間還元剤 シアノホウ素水素化Na ピリジンボラン還元温度 50℃ 50℃還元時間 7−14日 48時間生じた生成物 オリゴ−NH2 オリゴ−NH(CH2)2NH2活性化用二官能性 SIDEA(アジピン酸の SIDESまたはスペーサー スクシンイミジルジエステル) SIDEA(琥珀酸また はアジピン酸のスクシン イミジルジエステル)
反応温度 25℃ 4℃反応時間 4時間 2時間生じた生成物 オリゴ−NH−モノエステル オリゴ−NH(CH2)2NH− モノエステル反応の効率 25−30% 70%本発明の方法に従うと、オリゴ糖の末端−還元性単位の還元性アミノ化は2個のアミノ基を含有している分子を用いて実施される。本発明の好適態様では、還元性アミノ化は一定モル量のオリゴ糖を0.2M KH2PO4中で約pH=9で約25−100℃の温度そして好適には好適には100℃において約1−60分間そして好適には約15分間にわたり10モル倍過剰量のジアミノエタン溶液と反応させることにより実施される。その後に、製造時のオリゴ糖のモル濃度の25倍に相当するモル量のピリジンボランを加えることができ、そして反応は約25−100℃の間そして好適には約50℃において約1−72時間そして好適には約48時間にわたり実施される。
【0079】生じた還元性アミノ化反応の生成物を次に二官能性分子と反応させることができ、ここでは各官能基は活性化されたオリゴ糖の末端アミノ基および担体蛋白質の構造中に存在しているアミノ基と反応することができるため、二官能性分子はオリゴ糖および担体蛋白質を一緒に結合させるために作用できる。本発明の好適態様では、二官能性基はジエステルであり、そしてより特に蛋白質の有効なグリコシル化を伴うことが示されているアジピン酸のジエステルである。本発明の好適な特定態様では、上記の還元性アミノ化を受けたオリゴ糖をさらに琥珀酸またはより好適にはアジピン酸のスクシンイミジルエステルと反応させ、ここでこの反応はジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中でのSIDEA(またはSIDES)のモル濃度の約1/5に等しいモル濃度(アミノ基として)のアミノ化されたオリゴ糖を用いて約0−25℃の間そして好適には約4℃において約0.5−5時間そして好適には約2時間にわたり最適に実施することができる。次に活性化されたオリゴ糖を1,4ジオキサン(80%容量/容量)を用いる沈澱により集めることができ、それにより上澄み液中に過剰のSIDEA(またはSIDES)が残る。
【0080】5.3.蛋白質に対するオリゴ糖類の結合本発明に従い利用できる蛋白質には、若い哺乳動物に対する投与に関して安全であり且つ免疫学的に有効な担体蛋白質として作用できる蛋白質が包含される。特定態様では、細胞表面蛋白質、膜蛋白質、毒素類およびトキシノイド類を使用することができる。安全に関する基準には、初期毒性の不存在およびアレルギー反応の最小危険性が包含される。ジフテリアおよび破傷風トキシノイド類がこれらの基準を満たしており、すなわち、適切に製造されるとそれらは無毒であり且つアレルギー反応の兆候は許容可能なほど低い。アレルギー反応の危険性は成人にとってはかなりであるかもしれないが、それは子供にとっては極微である。本発明の別の特定態様に従うと、適切な担体蛋白質には下記のものが包含されるがそれらに限定されるものではない:サルモネラ・フラゲリン、ヘモフィルス・ピリン、ヘモフィルス15kDa、28−30kDa、および40kDa膜蛋白質類、大腸菌易熱性エンテロ毒素LTB、コレラ毒素、並びにロタウィルスVP7並びにRS合胞ウィルスFおよびG蛋白質類を含むウィルス性蛋白質類。
【0081】「担体効果」では、弱い抗原が担体としての比較的強い抗原(すなわち不均質蛋白質)と結合されることによりそれが単独で表示される場合より免疫原性が大きくなる。動物をあらかじめ担体だけで免疫化する場合には、動物に初回抗原刺激を与えることができそして担体抗原だけでなく結合されたハプテン基にも増加した免疫応答を生じることができる。子供は日常的に破傷風およびジフテリアトキソイド類で免疫化されている。従って、彼らはこれらのトキソイド類のいずれかと結合された莢膜重合体抗原のその後の表示用に初回抗原刺激を受けている。
【0082】一般的には、不均質蛋白質が担体抗原として作用できるであろう。しかしながら、例えば破傷風およびジフテリアの如きある種のバクテリア性毒素類は、それらが二部分からなっておりそれの一方(「結合」副単位)が哺乳動物細胞表面に対する結合に関する強い親和性を有しているという別の利点を有しているかもしれない。考えられるところ、そのような「結合性」蛋白質に対する結合により担持された抗原は免疫系の細胞中での応答をより効果的に開始させることができるであろう。
【0083】莢膜重合体が結合される担体蛋白質は本来毒素であるかまたは無毒化された毒素(トキソイド)であることができる。また、比較的最近の突然変異技術により、毒素と抗原的に似ているが無毒である遺伝子変更された蛋白質を製造することもできる。これらは「交差反応物質」すなわちCRMと称されている。CRM197は注目の価値があり、その理由はそれが天然ジフテリア毒素から1個のアミノ酸変更を有しておりそしてそれとは免疫学的に区別できないからである。
【0084】天然毒素に対する莢膜重合体の結合は毒性を減少させることができるが、かなりの毒性が残っているかもしれない。従って、蛋白質毒素のその後の無毒化においてはホルマリンが使用され、それは蛋白質の遊離アミノ基と反応する。残存毒性はまだ心配であろう。さらに、特定ロットのワクチンを用いる自発的な無毒化も可能であり、そしてこの方式には懸念事項が残っている。
【0085】一方、天然毒素をホルマリンを用いて無毒化して莢膜重合体への結合前に一般的なトキソイドを製造することもできる。しかしながら、これまでのホルマリン処理は莢膜重合体フラグメントの還元性基との反応用に利用できる遊離アミノ基の数を減少させる。従って、CRMはそれらが固有には毒性を有していないがそれらのアミノ基はホルマリンにより結合されるという意義ある利点を有している。別の利点はCRMを用いる作業時に生体に対する害が無いことである。
【0086】天然毒素と免疫学的に同一であるCRM197の場合には、(無毒化する必要はないが)ホルマリンを用いる処理が免疫学的応答を大きく増加させる。これは架橋結合による身体の機構および/または凝集による変性に対する分子の安定化によるものと考えられる(粒子の免疫原性は寸法に応じて増加する)。
【0087】上記の全ての理由のために、破傷風およびジフテリア毒素が担体蛋白質用の主要候補であるが他の適切なものもある。これらの他のものはジフテリアおよび破傷風を用いて観察された安全性歴を有していないが、それらを使用する別の圧倒的な理由があるかもしれない。例えば、それらは担体として有効であるかもしれず、または生産の経済性が相当なものであるかもしれない。担体用の他の候補には、シュードモナス、葡萄球菌、連鎖球菌、百日咳菌および大腸菌の毒素類が包含される。
【0088】本発明の特定態様では、活性化されたオリゴ糖類を下記の如くして精製されたCRM197蛋白質と結合させることができる。
【0089】菌株ジフテリア菌により製造されたCRM197を培養媒体から、下記の6章中に記載されている如くして、バクテリア性培養をミリポール膜中に通し、蛋白質を濾液から沈澱させ、そしてCRM197をイオン交換クロマトグラフィーにより精製することにより、分離できる。一方、当技術で公知のいずれかの方法により実質的に純粋なCRM197を得ることもできる。
【0090】蛋白質に対する活性化されたオリゴ糖の末端官能基の結合を促進させるために、活性化されたオリゴ糖を有機溶媒および任意に他の試薬(例えば縮合剤)の存在下で担体蛋白質と共有結合させることができる。本発明の特定の好適態様では、末端エステル基を有する活性化されたオリゴ糖を下記の如くして担体上に存在している遊離アミノ基と共有結合させることができる。
【0091】活性化されたオリゴ糖をジメチルスルホキシド中に溶解させ、そして次に担体蛋白質(例えば、限定されるわけではないが約2mg/mlの濃度のCRM197)の水溶液に、担体蛋白質のモノエステル−活性化されたオリゴ糖/全アミノ基のモル比が約1:2となりそしてDMSOの最終的濃度が約50容量/容量%となるような方法で、加える。結合反応は4℃において実施され、そして反応は約2時間でほぼ完了するが、反応の収率を各型特異性グリコ結合体に関する最高値にまで増加させるためには反応を一夜続けることが適している。このようにして得られたグリコ結合体を次にゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0092】1価ワクチンの合成用には、単一血清型のバクテリアから誘導されたオリゴ糖類を蛋白質に結合させることができる。多価ワクチンの合成用には、異なる種類または異なる血清型のバクテリアから誘導されたオリゴ糖類の混合物を担体蛋白質と結合させることによりグリコ結合体を製造することができ、或いは、単一型のオリゴ糖を異なるオリゴ糖類を用いる別の反応で担体蛋白質と反応させることにより製造されたグリコ糖を混合することもできる。従って、多価ワクチンは結合されたオリゴ糖類の均質または不均質集団を有する担体蛋白質である。
【0093】5.4.グリコ結合体の免疫化学的特性上記の方法により製造されたグリコ結合体の免疫原性の確認を人間への投与前に兎、豚、モルモット、ハツカネズミ、鼠、または山羊などの適当な動物系で試験することができるが、それらの動物に限定されるわけではない。本発明の特定態様では、鼠(体重が約2kg)に燐酸もしくは水酸化アルミニウムの存在下でまたは不存在下でグリコ蛋白質性結合体を皮下接種させることができる。約2.5μgのオリゴ糖が2kgの兎に対する適切な投与量であろう。次に抗体力価を酵素−結合された免疫吸収剤検定(ELISA)または当技術で公知の他の方法により評価することができる。本発明のグリコ結合体に対して生じた抗体は抗原を免疫沈澱させることができないため、免疫沈澱に基づく抗体検定は力価の測定用には推奨されない。
【0094】5.5.ワクチン調合物および投与ワクチンを調合するために適している担体媒体には、燐酸ナトリウムで緩衝された食塩水(pH7.4)または燐酸ナトリウムで緩衝された食塩水中にpH6において懸濁されている0.125M燐酸アルミニウムゲルおよび他の一般的媒体が包含される。
【0095】一般的には、約5−約100μgの、好適には約10−50μgの、オリゴ糖を含有しているワクチン類が若い温血哺乳動物中での莢膜重合体に対する抗体の有効水準を与えるのに適している。もちろん、正確な投与量は日常的な投与量/応答実験により決められるであろう。子供用ワクチン類を製造するためのグリコ蛋白質性結合体の濃度は約25−200μgのオリゴ糖の範囲内である。体重によってはそれより多い投与量を投与することもできる。連続的に与えられる数回の少ない投与量の方が単独注射として与えられる同量の結合体より優れていると予測される。
【0096】本発明のワクチン類は全年令の温血哺乳動物に対して投与することができ、そして病原体であるインフルエンザ菌b、大腸菌、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、および緑膿菌により引き起こされる若い哺乳動物における全身的感染に対する活性な免疫化を誘発するために特に適している。
【0097】本発明に従うと、ワクチンは皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、経口的に、または鼻内に適用することができる。ワクチンは可溶性もしくは微細粒状形のまたはリポゾームなどの微球もしくは微小胞中に加えられたグリコ結合体であることができる。
【0098】5.6.オリゴ糖結合体ワクチン類の利用本発明の好適態様では、莢膜化された病原性バクテリアに指定されているグリコ結合体ワクチン類を使用して、感受性個体がこれらの試薬により引き起こされる感染が進行するのを予防する。感受性個体には、未成熟の免疫系を有する若い子供、無脾症個体、並びに折衷された免疫系もしくは慢性疾病、特に後天性免疫不全症候群(エイズ)、造血悪性腫瘍、糖尿病、慢性心臓疾病、慢性肺疾病、および鎌状赤血球貧血症、の個体が包含される。本発明のグリコ結合体は、担体蛋白質に対するそれらの結合のために、それらが有するオリゴ糖類の免疫原性を増加させる。
【0099】従って、本発明のグリコ結合体は肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、大腸菌、髄膜炎菌、チフス菌、ミュータンス連鎖球菌、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、肺炎棹菌、黄色葡萄球菌、および緑膿菌などの多糖莢膜を有するバクテリアによる感染に対して予防するためのワクチン化において使用することができる。肺炎連鎖球菌の菌株は子供では特に有毒であり、そして特に本発明により提唱されるものには型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、20、22F、23、および33Fが包含される。
【0100】特定態様では、本発明のワクチン類は単一特異性の均質免疫応答を誘発させるために使用できる。単一特異性の免疫応答には多くの利点が含まれており、それらには(i)実質的に全ての抗体が特異的対掌体に向けられておりそして同一の親和性一定値により特徴づけられている均質な特異性、(ii)優れた抗−バクテリア性活性を有する高い親和性一定値、(iii)より安全なワクチンを生成する増加された目標特異性および宿主関連抗原との交差反応性の不存在、並びに(iv)単一特異性抗体の減じられた沈澱活性による減じられた補体活性化が包含され、それらがより安全なワクチンを生成する。
【0101】別の態様では、本発明は担体蛋白質に対して本発明の方法により結合されたペプチド類もしくはリポオリゴ糖または他の表面オリゴ糖ハプテン類を認識するワクチン類を製造するために使用できる。そのようなワクチン類は例えば腫瘍細胞に対する免疫性の誘発においてまたは化学療法もしくは生活性試薬と結合された抗−腫瘍抗体の製造において使用することができ、そのような抗−腫瘍活性は本発明の方法を用いて担体蛋白質に対して腫瘍−特異性抗原またはそれの対掌体を結合させることにより誘発することができる。
【0102】
【実施例】
6.実施例:多価肺炎球菌オリゴ糖結合体ワクチンの生6.1.多糖の製造肺炎連鎖球菌型6A莢膜多糖、肺炎連鎖球菌型14莢膜多糖、肺炎連鎖球菌型19F莢膜多糖、および肺炎連鎖球菌型23F莢膜多糖はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから得られた。
【0103】6.2.多糖の加水分解6.2.1.肺炎連鎖球菌型6A多糖の加水分解2ミリグラムの型6A肺炎連鎖球菌莢膜多糖を10mMの酢酸を含有している1mlの水溶液中にpH=3.4において溶解させ、次に油浴中に浸漬されている密封アンプル中で100℃の温度において30分間にわたり加水分解させた。生成したオリゴ糖類を次にNaClの15mM溶液を用いてpH7.0において4℃でコンディショニングされているセファデックスG15(ファーマシア、ウップサラ)上でのクロマトグラフィーにより反応混合物から分離した。
【0104】次にクロマトグラフィー流出液を、カバット(Kabat)により報告されている工程(1964、「実験的免疫化学(Experimental Immunochemistry)」、E.A.ラバット(Rabat)およびメイヤー(Mayer)、538−541)、チェン(Chen)他(1956、アナリティカル・ケミストリー(Anal. Chem.)、28:1756−1758)、並びにポロ(Porro)他(1981、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal. Biochem.)、118:301−306)に従い分析して、メチル−ペントース類、燐、および還元基、例えばアルデヒド基、の存在を認定した。分析は、3.96のメチルペントース/アルデヒド比、0.96のメチルペントース/燐比、および4.12の燐/アルデヒド比を示した。
【0105】緩衝液を用いるセファデックスG−50スーパーファイン(ファーマシア)上でのゲルクロマトグラフィーは、約2,500の分子量に相当する0.538の分布定数(Kd)(ヘキソースによる)を示した。
【0106】N.M.R.、ガスクロマトグラフィーおよび化学量論的分析はオリゴ糖類が約3−4個の基礎的繰り返し単位からなっていることを示しており、その中には免疫優性糖であるガラクトースが見いだされた。
【0107】6.2.2.肺炎連鎖球菌型14多糖の加水分解2ミリグラムの型14肺炎連鎖球菌莢膜多糖を0.5Mトリフルオロ酢酸を含有している1mlの水溶液中に溶解させ、次に油浴中に浸漬されている密封アンプル中で70℃の温度において7時間にわたり加水分解させた。生成したオリゴ糖類を次にNaClの15mM溶液を用いてpH7.0において4℃でコンディショニングされているセファデックスG15(ファーマシア、ウップサラ)上でのクロマトグラフィーにより反応混合物から分離した。
【0108】次にクロマトグラフィー流出液をヘキソサミンおよびアルデヒド含有量に関して分析し、そして3.17のヘキソサミン対アルデヒド比を有することが見いだされた。ガスクロマトグラフィーおよび化学量論的分析は、3−4個の基礎的繰り返し単位に相当する分子寸法を示した。ガスクロマトグラフィーにより測定されたガラクトースの脱分枝鎖は10%以内であった。15mM NaClを用いるpH7.0におけるセファデックスG−50スーパーファイン(ファーマシア)上でのゲルクロマトグラフィーは、オリゴ糖に関しては、合計ヘキソースにより測定された0.30の分布定数(Kd)を示した。
【0109】6.2.3.肺炎連鎖球菌型19F多糖の加水分解2ミリグラムの型19F肺炎連鎖球菌莢膜多糖を10mMの酢酸を含有している1mlの水溶液中にpH=3.4において溶解させ、次に油浴中に浸漬されている密封アンプル中で50℃の温度において48時間にわたり加水分解させた。生成したオリゴ糖類を次にNaClの15mM溶液を用いてpH7.0において4℃でコンディショニングされているセファデックスG15(ファーマシア、ウップサラ)上でのクロマトグラフィーにより反応混合物から分離した。
【0110】次にクロマトグラフィー流出液を、カバット(Kabat)により報告されている工程(1964、「実験的免疫化学(Experimental Immunochemistry)」、E.A.ラバット(Rabat)およびメイヤー(Mayer)、538−541)、チェン(Chen)他(1956、アナリティカル・ケミストリー(Anal. Chem.)、28:1756−1758)、並びにポロ(Porro)他(1981、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal. Biochem.)、118:301−306)に従い分析して、メチル−ペントース類、燐、および還元基、例えばアルデヒド基、の存在を認定した。分析は、3.5のメチルペントース/還元されたメチルペントース比、および3.2のメチルペントース/燐比を示した。
【0111】セファデックスG−50スーパーファイン(ファーマシア)上でのゲルクロマトグラフィーはオリゴ糖に関するKd=0.46(ヘキソースによる)を示し、そしてガスクロマトグラフィーおよび化学量論の組み合わせ分析は3−4個の規則的繰り返し単位に相当する寸法を示した。
【0112】6.2.4.肺炎連鎖球菌型23F多糖の加水分解2ミリグラムの型23F肺炎連鎖球菌莢膜多糖を0.25Mトリフルオロ酢酸を含有している1mlの水溶液中に溶解させ、次に油浴中に浸漬されている密封アンプル中で70℃の温度において3時間にわたり加水分解させた。生成したオリゴ糖類を次にNaClの15mM溶液を用いてpH=7.0において4℃でコンディショニングされているセファデックスG15(ファーマシア、ウップサラ)上でのクロマトグラフィーにより反応混合物から分離した。
【0113】次にクロマトグラフィー流出液を、カバット(Kabat)により報告されている工程(1964、「実験的免疫化学(Experimental Immunochemistry)」、E.A.ラバット(Rabat)およびメイヤー(Mayer)、538−541)、チェン(Chen)他(1956、アナリティカル・ケミストリー(Anal. Chem.)、28:1756−1758)、並びにポロ(Porro)他(1981、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal. Biochem.)、118:301−306)に従い分析して、メチル−ペントース類、燐、および還元基、例えばアルデヒド基、の存在を認定した。分析は、4.5−4.5のメチルペントース/アルデヒド比、2.3のヘキソース/メチルペントース比、および2.9の燐/アルデヒド比を示した。
【0114】ガスクロマトグラフィーおよび化学量論的分析は、3.5−4.5個の間の基礎的繰り返し単位の存在を示した。ガスクロマトグラフィーにより測定されたラムノースの脱分枝鎖は8%以下であった。
【0115】セファデックスG−50スーパーファイン(ファーマシア)上でのゲルクロマトグラフィーは、0.38の分布定数(Kd)(ヘキソースによる)を示した。
【0116】6.3.肺炎連鎖球菌オリゴ糖ハプテン類の免疫化学的特性肺炎連鎖球菌型6A、14、19F、および23Fオリゴ糖類が元の莢膜多糖類に対する抗体と相互反応する能力を、ポロ(Porro)他(1985、モレキュラー・イミュノロジー(Mol. Immunol.)、22:907−919)中に記載されている如くして、ハプテン(すなわちオリゴ糖)が抗体免疫沈澱反応に対する均質抗原(莢膜多糖)を抑制する能力を測定する技術を使用して測定した(低分子量ハプテン類は均質抗体に対して試験された時は免疫沈澱反応を示さない)。
【0117】「示差免疫電気泳動」と称されている方法は下記の如くして実施された:免疫電気泳動用のプラスチック板支持体は3個の1%(重量/容量)アガロース室(アガロースM−LKB、ブロンマ、スウェーデン)を含有していた。第一室は0.05%(容量/容量)の莢膜多糖に対する対照抗血清を含有していた。第二室は0.05%(容量/容量)の既知量の対照莢膜多糖を用いて37℃において15分間にわたりあらかじめ培養されている莢膜多糖に対する対照抗血清を含有していた。第三室は0.05%(容量/容量)の既知量のオリゴ糖ハプテンを用いてあらかじめ培養されている莢膜多糖に対する対照抗血清を含有していた。4回の連続的な2倍希釈における莢膜多糖の電気泳動分離を次に70V/cmにおいて20mMトリス−バルビチュレート緩衝液、pH=8.8、中で90分間にわたり行った。電気泳動後に、板を銀−染色し、乾燥し、そして定量化した。オリゴ糖分子による抑制は、ハプテンを用いて予備培養された対照抗血清を含有している室の中で現れる比較的高い「ロケット」免疫沈澱により証明された。ハプテンの最小抑制濃度は
【0118】
【数1】


により計算され、ここでCHa=ゲル中で試験されたハプテンの濃度hAg=対照抗原がゲル中にあった時に得られた「ロケット」免疫沈澱の高さにより測定された直線の切片hHa=試験されたハプテンがゲル中にあった時に得られた「ロケット」免疫沈澱の高さにより測定された直線の切片同様に、
【0119】
【数2】


種々の寸法のオリゴ糖ハプテン類を試験した。
【0120】オリゴ糖が特異性抗体により莢膜多糖類の免疫沈澱を遮蔽する能力も、放射免疫拡散の非電気泳動方法により試験された。この方法により、オリゴ糖分子による抑制はあらかじめ一定量の抑制剤(オリゴ糖)を用いて培養された特異性抗体を含有している1重量/容量%アガロース中の抗原(莢膜多糖)の拡散により生成した大きい半径の免疫沈澱により証明された。一定ハプテンに関する最小結合濃度(MCC)が実験的に得られたら、特異性を次に前記式:
【0121】
【数3】


に従い計算する。
【0122】
【表3】
表III 肺炎連鎖球菌オリゴ糖ハプテン類の免疫化学的特性 オリゴ糖型 DP MW (MICPs/MICHp) (MCCPs/MCCHp) DIEPによる IRIDによる 6A 2 1.5K 10-3 3.5 2.5K 10-3 10-3 10 7.0K 10-114 5 3.5K n.t. 10-1 15 10.4K n.t. 10-119F 3.5 2.2K 10-3 10-423F CH3COOH(hyd) 3 2.3K 10-3 10-2 6 4.5K 10-1 10-1 TFA(hyd) 4.5 3.4K 10-4 5×10-3 9.5 7.2K 10-1 10-1 n.t. = 試験不能DIEP = 示差免疫電気泳動IRID = 放射免疫拡散の抑制MIC = 最小抑制濃度MCC = 最小合計濃度6.4.肺炎連鎖球菌オリゴ糖類の末端−還元単位の活性上記の6.2章に記載されている如くして得られたオリゴ糖ハプテン類を水中に約5mg/mlの最終的濃度となるまで溶解させた。各溶液に、1ミリリットルの溶液容量に対して0.1mlの0.2M KH2PO4を加え、そして必要量のジアミノメタン(一般的には、1ミリリットルの溶液に対して2μlのジアミノメタンの量が必要である)によりpHを9.2−9.4に高めた。混合物を100℃に15分間にわたり保ち、この時点で1ミリリットルの溶液容量に対して約4μlの量のピリジンボランを加えた。pHを1N NaOHにより調節した。次に混合物を密封されたアンプル中で油浴に50℃においてその後48時間にわたり移した。その後に、アミノ−活性化されたオリゴ糖溶液を1N HClにより中和し、そしてセファデックスG−15スーパーファイン(15mM NaCl、pH7.01)上で精製した。集められたクロマトグラフィー留分類を貯蔵し、そして凍結乾燥した。次に、凍結乾燥された残渣をDMSO中に10mg/mlにおいて溶解させ、そして凍結乾燥された化合物中に存在しているアミノ基の量に関して5:1モル/モル比に相当するモル量のSIDEA(またはSIDES)に加えた。反応を室温において4時間にわたり進行させ、そして次にエステル活性化されたオリゴ糖を沈澱させるために該溶液に4容量の1,4ジオキサン(最終的濃度1,4ジオキサン中80%)を加えた。遠心により集められた沈澱を1,4ジオキサンを用いて3回洗浄し、そして結合工程で使用されない場合には−20℃以下に保たれた。4種のオリゴ糖類のそれぞれに関する活性化工程の収率は表IVに示されている。
【0123】
【表4】
表IV 肺炎連鎖球菌オリゴ糖活性化: 工程の収率(%重量/重量) 血清型 オリゴ-NH(CH2)2NH2 オリゴ-NH(CH2)2NH-モノエステル 全体 6A 75 93 7014 73 90 6619F 100 100 10023F 50 90 45Xg(±s.d.) 74.5(±20) 93.3(±4.7) 70(±23)6.5.活性化されたオリゴ糖のCRM197蛋白質に対する結合6.5.1.CRM197蛋白質の製造ジフテリア菌C7(Btx-197)により製造されたCRM197をミリポールXM−50(NMWL5×10-4)膜を用いる分子濾過により培養媒体から分離した。次に濾液に硫酸アンモニウムの飽和溶液(65%重量/容量)を加えることにより沈澱させた。沈澱した蛋白質を遠心により集め、そして0.01M燐酸塩緩衝液(pH=7.2)中に再溶解させた。
【0124】0.01M燐酸塩緩衝液中でpH7.2においてコンディショニングされた2.5×100cmDEAE−セファロース6B/CLカラム(ファーマシア、アップサラ)を用い、溶離剤として0.01M燐酸塩中の0.09M NaClを用いるイオン−交換クロマトグラフィーにより、CRM197をさらに精製した。
【0125】還元条件下でのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(パッペンハイマー(Pappenheimer)他、1972、イミュノケミストリー(Immunochem.)、:891−906)は、得られたCRM197の80%がそれの元の分子形で得られた。蛋白質の純度は1ミリグラム当たり約400のフロキュレーション限度(Lf)であることが見いだされた。
【0126】6.5.2.活性化されたオリゴ糖類の結合結合工程は、担体蛋白質CRM197のリシン残基のエプシロン−アミノ基に対するモノスクシンイミジルエステル−活性化されたオリゴ糖ハプテン類の結合からなっている。
【0127】肺炎連鎖球菌方6A、14、19F、および23F莢膜多糖類のモノスクシンイミジルエステル(アジピン酸の)を含有しているジメチルスルホキシドを次に2mg/mlのCRM197を含有しているpH=8.0の0.1M炭酸水素塩溶液に加えてエステルで活性化されたオリゴ糖対担体蛋白質の全アミノ基のモル比が1:2である50%水溶液を製造した。
【0128】このようにして得られた混合物を、穏やかに撹拌しながら、4℃において15時間保った。4種の血清型のそれぞれからのオリゴ糖類を蛋白質に分離反応で結合させた。得られたグリコ結合体の物理化学的特性のまとめを表Vに示す。
【0129】
【表5】
表V グリコ結合体特性 SD MW結合体 (モルオリゴ/血清型 DPオリゴ MWオリゴ (SDS-PAGE) モル蛋白質 %(w/w)結合体蛋白質 6A 3 2.1K 77.6K 7 10014 5 3.5K 85.1K 6 10019F 3 1.9K 69.2K 4 10023F 6 4.5K 85.0K 5 100 6.5.2.1.結合剤としてアジピン酸のスクシンイミジルエステル対琥珀酸のスクシンイミジルエステルを使用する結合効果の比較琥珀酸のスクシンイミジルエステル(SIDES)との反応により製造された活性化されたオリゴ糖類は構造式
【0130】
【化1】


【0131】を有しており、一方、アジピン酸のスクシンイミジルエステル(SIDEA)との反応により製造された活性化されたオリゴ糖類は構造式
【0132】
【化2】


【0133】を有しており、そしてそれによりオリゴ糖と結合された蛋白質の間の種々の寸法の結合剤を生成した(図2参照)。SIDESおよびSIDEAで活性化されたオリゴ糖類を用いる結合の効果を評価した。図3A、BおよびC中に示されている如く、結合剤がSIDEAから誘導された時だけ蛋白質は完全にグリコシル化された形であるようである(少量のCRM197の遊離帯が検出可能であるかまたは検出できない場合)。
【0134】6.6.肺炎連鎖球菌グリコ結合体の免疫原4種のグリコ結合体抗原の数種の調合物を製造しそして1価調合物(1回の投与当たり2.5−5.0μgオリゴ糖)または多価調合物(1回の投与当たり2.5μgの各オリゴ糖)中で鉱物佐薬としての水酸化アルミニウム[Al(OH3)]を用いておよび用いずに(多価調合物中でのみ1回の投与当たり1mgが投与された)、表VI)中に示されているスケジュール:型−特異性グリコ結合体に従い)鼠で試験した。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはロケット免疫電気泳動による多価調合物の上澄み液の処理は検出可能量の遊離蛋白質を示さないため、Al(OH3)に対する4種のグリコ結合体の完全吸収が採用された条件下で生じた。各グリコ結合体の平均投与は約2.5μgのオリゴ糖および13μgの担体蛋白質CRM197(ジフテリアトキソイドの平均人間ワクチン投与に相当する)を含有していた。免疫化スケジュールは初回投与および4週間離した2回の追加投与を含んでいた。採血は0、4、6、および10週に行われた。
【0135】
【表6】
表VI 兎およびハツカネズミに関する免疫スケジュール並びにワクチン類の投与量 0、4、8週における免疫化 0、4、6、10週における採血A.可溶性の1価(単一型)調合物 1投与量(0.5ml):2.5μgのオリゴ糖および 13μg(5Lf)のCRM197 1投与量(0.5ml):5.0μgのオリゴ糖および 26μg(10Lf)のCRM197B.可溶性の多価(混合4型)調合物 1投与量(0.5ml):2.5μgの型−特異性オリゴ(合計= 10μgオリゴ)および 合計52μg(20Lf)のCRM197C.Al(OH)3−ads多価(混合4型)調合物 1投与量(0.5ml):2.5μgの型−特異性オリゴ(合計= 10μgのオリゴ類)および 合計52μg(20Lf)のCRM197 1mgのAl(OH)3 表VIIは、型−特異性抗体のRIA(FARR方法)推定量並びに免疫化された動物数に対する応答動物数を示している。比(R)は各免疫化投与後に達した倍増を示している。
【0136】表VIIIは、IgGアイソタイプAbに関するELISA力価並びに免疫化された動物数に対する応答動物数を示している。比−R1−R2−R3は各免疫化投与後の力価における倍増を示しており、一方、比−R1、−R2、−R3は予備力価に関する一定の免疫化投与に関する力価における倍増を示している。表IXは、生きている連鎖球菌上での多糖カプセルの認識における誘導されたIgG抗体の官能性に関する定性的結果を報告している(クエルラング反応またはノイフェルド試験)。
【0137】表Xは、ヴェロ細胞検定により推定されている如く、担体蛋白質CRM197による鼠中で誘導されたジフテリア毒素−中和力価を示している。そのような対照FDA抗血清が対照用として使用され、μ/mlで表されている力価も含まれている。
【0138】
【表7】
表VII担体蛋白質CRM197と共有結合された肺炎連鎖球菌型6A、14、19F、23Fのオリゴ糖類***で免疫化された**兎のRIA−推定力価* 可溶性形 Al(OH)3-ads形 0週 4週 6週 11週 0週 4週 6週 11週 型6A n.d. n.d. 230(1/6) 495(6/6) n.d. 538(5/5) 3,190(5/5) 4,064(5/5) R=6.0 R=1.3型14 n.d. n.d. 150(2/6) 195(2/6) n.d. 77(3/6) 203(4/5) 216(5/5) R=2.6 R=1.1型19F n.d. n.d. n.d. 75(6/6) n.d. 72(6/6) 108(5/5) 188(5/5) R=1.5 R=1.7型23F n.d. n.d. 400(1/6) 140(1/5) n.d. 283(3/6) n.d. 246(5/5) * 力価、ngNAb、の幾何学的平均として表示されているデータ。応答動物対免疫化された合計動物は括弧内にある。
【0139】** 可溶性およびAl(OH)3−吸収(1mg/投与量)形の4種のグリコ結合体の多価調合物。各グリコ結合体は平均2.5μgのオリゴ糖および平均13μgの蛋白質CRM197を含有していた。0、4および9週において免疫化。0、4、6および11週において交配。
【0140】*** 型6Aおよび19Fオリゴ糖類は平均DP=3を有していた。
【0141】型14および23Fオリゴ糖類は平均DP=5を有していた。
【0142】**** 型6Aのグリコ結合体は1単位の担体蛋白質当たり7に等しいオリゴ糖類の平均置換度(SD)を有していた。
【0143】型14グリコ結合体に関するSDは6であり、型19Fに関しては4であり、そして関しては23Fに関しては5であった。
【0144】
【表8】
表VIII鉱物佐薬Al(OH)3に吸収された肺炎連鎖球菌DP=3+6莢膜オリゴ糖類型6A、14、19F、23Fのグリコ結合体を含む多価ワクチンにより誘発されたIgGアイソタイプAb力価のELISA結果* 予備力価 初回 1回追加 2回追加 (0週) (4週) (6週) (10週) 型6A <50(0/5) 4,800(5/5) 51,200(5/5) 130,000(5/5) R1>96.0 R2=10.7 (α<0.01) R3=2.5 (α<0.01) R2′>1,027 R3′>2,600型14 <50(0/5) 360(5/5) 4,480(5/5) 19,000(5/5) R1>7.2 R2=12.4(α<0.01) R3=4.4 (α<0.01) R2′>89.3 R3′>396.0型19F <50(0/5) 2,080(5/5) 18,560(5/5) 35,200(5/5) R1>41.6 R2=9.0 (α<0.01) R3=1.9 (α<0.01) R2′>371.2 R3′>704.0型23F <50(0/5) 880(5/5) 1,280(5/5) 11,880** R1>17.6 R2=1.5(α<0.01) R3=9.3 (α<0.01) R2′>25.6 R3′>237.6 *反応背景の2倍のABS価を示す最高血清希釈度の逆数の幾何学的平均として表示されている力価。
【0145】**値は異常に高い応答動物兎の力値を含んでいる。血清型23Fに関しては5匹の免疫化されたうちの最良および最悪の応答動物の2匹を捨てて、ここでは残りの3匹の兎の結果である:(週0) (週4) (週6) (週11)<50(0/5) 667(3/3) 1,333(3/3) 2,667(3/3) R1>13.3 R2=2.0 (α<0.01) R3=2.0 (α<0.01) R2′>26.7 R3′>53.3
【0146】
【表9】
表IXCRM197とDP=3−6オリゴ−結合体に対する兎血清Abの免疫学的官能性 定量的分析 (莢膜認識に関する膨化反応* ) 型6A 肺炎連鎖球菌: 陽性反応型14 肺炎連鎖球菌: 陽性反応型19F肺炎連鎖球菌: 陽性反応型23F肺炎連鎖球菌: 陽性反応* オーストリアン(1976)、Mt. Sinai J. Med.、43:699−709の方法に従い行われた。
【0147】
【表10】
表X担体蛋白質CRM197に共有結合された肺炎連鎖球菌のオリゴ糖類を用いて合成された多価グリコ結合体により免疫化された兎中で誘発されたヴェロ細胞検定を用いる抗ジフテリア力価* 予備力価 初回 1回追加 2回追加 (0週) (4週) (6週) (11週) 可溶性形 <10 <10 25(0.019 1,920(1.4 μ/ml) μ/ml) R=2.5 R=77.0Al(OH)3-ads <10 20(0.015 1,280(0.96 3,840(2.9 μ/ml) μ/ml) μ/ml) R=64.0 R=3.0FDA対照抗血清は6μ/mlを含有しておりそして1/8,000希釈度で50%予防を与えた。
【0148】* ジフテリア毒素に対する露呈後に3H−ロイシン導入により推定されている如く、抗血清のプールが細胞の50%予防を示してい希釈度の逆数として表示されている力価。
【0149】括弧内の数は対照としてFDA対照抗血清を用いて測定された力価、μ/ml、を示している。
【0150】6.7.鎖長DP=10−20のオリゴ糖は亜最適免疫原性である上記の合成方式に従うが2種の「領域−価」の鎖長すなわちDP=3−5およびDP=10−20を有する型6A、14、19F、および23F肺炎連鎖球菌の糖類を用いて、2群のグリコ結合体ワクチンを合成した。例えばDP=3オリゴ糖の如きはるかに短い鎖長と比較して、DP=20以上のオリゴ糖も(選択された担体蛋白質CRM197に対する結合時に)初回および追加能力に関して最適免疫原であるかどうかが次に問題となった。
【0151】兎を表XI中に略記されている処方を用いて免疫化した。表XIIおよびXIII中に表示されているAl(OH)3に吸着されているそれぞれDP=10−14およびDP=3−6の肺炎連鎖球菌オリゴ糖類により誘発されるIgGアイソタイプ抗体のELISA結果に関する結果を比較することにより示されている如く、DP=10−14は増加した免疫原性を有していなかった。実際には、DP=3−5オリゴ糖結合体のIgG初回および追加活性はDP=10−14オリゴ糖結合体を用いて観察された活性よりはるかに大きかった。偶然でなく、研究された4種全ての炭水化物構造体には同様な結果が得られた。さらに、DP=10−14を有するグリコ結合体によるジフテリア毒素の中和は鎖長DP3−6を有するグリコ結合体を使用して得られるものより効果的でないことが見いだされた(表XVI)。従って、鎖長DP=10−20のオリゴ糖類は本発明の結合体中では官能性であるが、DP=3−6のオリゴ糖類は抗体の比較的高い力価を誘発する。
【0152】
【表11】
表XI 兎に対する免疫化スケジュールグリコ結合体のモデルを2.5μgの炭水化物の投与量で注射した。試験されたモデルは共有結合されたオリゴ糖類の鎖長だけが異なっているため、対応する量の担体蛋白質は下記の如くであった: 炭水化物の 蛋白質担体の 投与量 投与量 重量比 (μg) (μg) (ww) DP=3−6 2.5 12.5 0.2オリゴ−CRM197DP=10−14 2.5 2.5 1.0 オリゴ−CRM197 0、4および8週において免疫化0、4および10週において採血
【0153】
【表12】
表XII可溶性形の肺炎連鎖球菌DP=10−14莢膜オリゴ糖類型6A、14、19F、23Fのグリコ結合体を含む多価ワクチンにより誘発されたIgGアイソタイプAb力価のELISA結果 予備力価 初回 1回追加 2回追加 (0週) (4週) (6週) (10週) 型6A <100 <100 <100 500 (2/5)型14 <100 300 2,400 (3/5) 4,600 (3/5)型19F <100 <100 <100 <100型23F <100 <100 <100 <100
【0154】
【表13】
表XIII可溶性形の肺炎連鎖球菌DP=3−6莢膜オリゴ糖類型6A、14、19F、23Fのグリコ結合体を含む多価ワクチンにより誘発されたIgGアイソタイプAb力価のELISA結果 予備力価 初回 1回追加 2回追加 (0週) (4週) (6週) (11週) 型6A <50 <200 967 (6/6) 8,500 (6/6) R3=8.8(α<0.01)型14 <50 1,800 3,266 (3/6) 3,650 (4/6)型19F <50 <50 675 (4/6) 1,750 (6/6)型23F <50 <50 <50 <50
【0155】
【表14】
表XIV鉱物佐薬Al(OH)3に吸収された肺炎連鎖球菌DP=10−14莢膜オリゴ糖類型6A、14、19F、23Fのグリコ結合体を含む多価ワクチンにより誘発されたIgGアイソタイプAb力価のELISA結果 予備力価 初回 1回追加 2回追加 (0週) (4週) (6週) (10週) 型6A <100 240 (5/5) 900 (5/5) 500 (5/5) R1>2.4 R2=3.8 (α<0.01) R2>9.0型14 <100 300 (5/5) 1,040 (5/5) 8,480 (5/5) R1>3.0 R2=3.5 (α<0.01) R3=8.2 (α<0.01) R2>10.4 R3>84.9型19F <100 <100 400 (1/5) 800 (1/5)型23F <100 <100 <100 200 (1/5)
【0156】
【表15】
表XV鉱物佐薬Al(OH)3に吸収された肺炎連鎖球菌DP=10−14莢膜オリゴ糖類型6A、14、19F、23Fのグリコ結合体を含む多価ワクチンにより誘発されたIgGアイソタイプAB力価*の表IVELISA結果 予備力価 初回 1回追加 2回追加 (0週) (4週) (6週) (11週) 型6A <50(0/5) 4,800(5/5) 51,200(5/5) 130,000(5/5) R1>96.0 R2=10.7(α<0.01) R3=2.5 (α<0.01) R2>1,027 R3>2,600型14 <50(0/5) 360(5/5) 4,480(5/5) 19,800(5/5) R1>7.2 R2=12.4(α<0.01) R3=4.4 (α<0.01) R2>89.3 R3>396.0型19F <50(0/5) 2,080(5/5) 18,560(5/5) 35,200(5/5) R1>41.6 R2=9.0(α<0.01) R3=1.9 (α<0.01) R2>371.2 R3>704.0型23F <50(0/5) 880(5/5) 1,280(5/5) 11,880(5/5) R1>17.6 R2=1.5(α<0.01) R3=9.3 (α<0.01) R2>25.6 R3>237.6 * 反応背景の2倍のABS価を示す最高血清希釈度の逆数の幾何学的平均として表示されている力価。括弧内には動物数が報告されている(全注射に対する応答)
【0157】
【表16】
表XVI肺炎連鎖球菌−CRM197グリコ結合体で免疫化された兎からの血清を用いるジフテリア毒素の試験管内中和* 予備力価 初回 1回追加 2回追加 (0週) (4週) (6週) (10週) DP=3−6オリゴCRM197:可溶性 <1/10 <1/10 1.20 1/1,280 (0.03φ/ml) (2.05φ/ml)Al(OH)3ads <1/10 <1/10 1.20 1/1,280 (0.016φ/ml) (1.02φ/ml) (4.10φ/ml)DP=10−14オリゴCRM197:可溶性 <1/10 <1/10 <1/10 1/10 (0.016φ/ml)Al(OH)3ads <1/10 <1/10 1/40 1/80 (0.06φ/ml) (0.13φ/ml) * ジフテリア毒素に対する細胞の露呈後に3H−ロイシン導入により推定されている、兎血清のプールが細胞の50%予防を示す希釈度の逆数として表示されている力価。括弧内の数は対照としてのFDA対照抗血清により測定された力価、μg/ml、を示している。
【0158】人間中で推定されるMPL:0.01μg/ml。6.8.グリコ結合体に対する免疫応答は単一特異性でありそして均質である放射免疫検定(RIA)および酵素結合されたイミュノソルバント(immunosorbant)検定(ELISA)により測定された抗体力価に関する表VIIおよびVIII中に記されている結果の比較は、RIA推定力価がELISA−推定価より一貫して低いことを示している。この観察結果は、抗−グリコ結合体抗血清の放射免疫拡散およびロケット電気泳動に関して使用されたアガロースゲルの不存在と一緒になって、肺炎連鎖球菌オリゴ糖−CRM197に対する兎抗血清がオリゴ糖類を生成するために使用されたそれぞれ精製された炭水化物重合体を沈澱させることのできなかった高度に特異性のIgGアイソタイプ抗体を含有していたことを証明している。
【0159】抗血清中の抗体の沈澱の不存在は、単一特異性すなわち一定分子の抗原性レペルトイレ(repertoire)中の単一対掌体の抗体認識を示している(ベルゾフスキー(Berzofsky)−シェフター(Schechter)、1981、モレキュラー・イミュノロジー(Molecular Immunol.)、18:751−763)。抗原−抗体複合体の沈澱は、結合された抗原および抗体分子の三次元分枝鎖網目構造を生じる格子生成を必要とする。これを生じるためには、1個より多い抗体が1個の抗原分子に同時に結合しなければならないので抗原および抗体の両者の多価性が必要である。従って、肺炎連鎖球菌オリゴ糖−CRM197に対する兎抗血清と均質な精製された高分子量莢膜多糖の間で生じる観察可能な免疫沈澱は、抗血清が炭水化物重合体に対して特異性である抗体を含有しているが(ELISAおよび抑制−ELISA分析により示されている)多糖の1回だけの測定(対掌体)に向いていることを強く示している。
【0160】免疫沈澱活性を示すことの他に、抗体の不均質集団も下記の性質を一般的に有している:抗体応答を誘発させるために使用される抗原の1個の対掌体は完全抗原に対する抗体の全集団の結合を完全には抑制しないが、1個の対掌体に対する抗体結合だけを抑制して、他の抗体は完全抗原上に存在している残りの対掌体とは結合していないままであろう。抗体の集団をELISA−抑制検定により不均質性に関して評価することができる。この検定では、抗体の集団が完全抗原と結合する能力を例えば抗原の単離された対掌体の如き抗原/抗体結合の抑制剤の存在下で測定することができる。標識の付いた完全抗原に対する抗体の結合が濃度が増加している標識の付いていない完全抗原の存在下で測定される時に図式的に表すと、S状曲線が生じ、それを抗体/抗原結合に関する標準的曲線として使用することができる。抗体集団が不均質であるなら、抗体および完全抗原との間の結合は1個の抗原性対掌体の添加により完全に抑制することはできず、そして抗体/抗原結合の標準的曲線は部分的に置換され(部分的に重複または部分的に平行にされ)、他の抗原/抗体相互反応は試験される対掌体が有するものとは区別されて、優性である。逆に、抗原に対する抗体の均質集団の結合は単離された対掌体の添加により完全に抑制することができ、抗体の均質集団に関する標準的なS状抗原/抗体結合曲線は集団の特異性に相当する単離された対掌体の添加により生じた曲線により重複または平行化されるであろう。
【0161】この方法で肺炎連鎖球菌グリコ結合体誘発された兎IgGを試験することにより、抗体の均質集団に対して予測されたものに対応する親和力様式が実験的に観察された(図4)。肺炎連鎖球菌6Aオリゴ糖(非−結合形または結合形)は血清型6A高分子量莢膜多糖を用いて誘導されたものとほぼ平行な結合抑制S状曲線を有していた。予期されたように、遊離(結合剤−活性化された)または結合形の不均質(型14)オリゴ糖は型6A抗原に対して特異性であるIgGアイソタイプ集団を抑制しなかった。
【0162】本発明の主なる特徴および態様は以下のとおりである。
【0163】1.(i)末端還元性基を有するオリゴ糖をピリジンボランの存在下でジアミノエタンと、還元性アミノ化が起きるような方法で反応させ、そして(ii)(i)のアミノ化されたオリゴ糖生成物を、2個の官能基を有しておりそれの一方が活性化されたオリゴ糖の末端基と反応可能でありそして他方が担体蛋白質と反応可能であるような分子と、反応させ、そして(iii)(ii)の活性化されたオリゴ糖生成物を該担体蛋白質と、結合が起きるような方法で反応させる工程からなる、オリゴ糖および担体蛋白質の共有結合体の製造方法。
【0164】2.工程(ii)の2個の官能基を有する分子がジエステルである、上記1の方法。
【0165】3.工程(ii)の2個の官能基を有する分子がアジピン酸のジエステルまたは琥珀酸のジエステルである、上記1の方法。
【0166】4.(i)多糖を加水分解して、少なくとも1個の末端還元性基を有するオリゴ糖類を製造し、そして(ii)該オリゴ糖類をピリジンボランの存在下でジアミノエタンと、還元性アミノ化が起きるような方法で反応させ、そして(iii)(ii)のアミノ化されたオリゴ糖生成物を、2個の官能基を有しておりそれの一方が活性化されたオリゴ糖の末端基と反応可能でありそして他方が担体蛋白質と反応可能であるような分子と、反応させ、そして(iv)(iii)の活性化されたオリゴ糖生成物を該担体蛋白質と、結合が起きるような方法で反応させる工程からなる方法により製造された、オリゴ糖および担体蛋白質の間の共有結合体。
【0167】5.工程(iii)の2個の官能基を有する分子がジエステルである、上記4の共有複合体。
【0168】6.オリゴ糖が肺炎連鎖球菌莢膜多糖から誘導される、上記1、2または3の方法。
【0169】7.担体蛋白質がCRM197である、上記1、2、3または6の方法。
【0170】8.オリゴ糖が肺炎連鎖球菌莢膜多糖から誘導される、請求項2に記載のオリゴ糖および担体蛋白質の間の共有結合体。
【0171】9.オリゴ糖が型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、および33Fからなる群から選択された血清型を有する肺炎連鎖球菌から誘導される、上記8の共有複合体。
【0172】10.上記1、2、3、6または7の方法に従い製造されたワクチン。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はオリゴ糖−蛋白質結合体の合成用の一般的工程を示している。
【図2】図2は結合工程における「特別仕様」スペーサーの使用を示している。
【図3】図3はアジピン酸対琥珀酸誘導体スペーサーを含有している活性化されたオリゴ糖類に対するCRM197の結合の効果および結合反応の生成物のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(銀染色)を示している。
【図4】図4は肺炎連鎖球菌オリゴ糖6A−CRM197結合体に対する兎のIgG応答および莢膜多糖類に対して誘発されたIgGアイソタイプの親和性価の抑制−ELISA分析を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (i)末端還元性基を有するオリゴ糖をピリジンボランの存在下でジアミノエタンと、還元性アミノ化が起きるような方法で反応させ、そして(ii)(i)のアミノ化されたオリゴ糖生成物を、2個の官能基を有しておりそれの一方が活性化されたオリゴ糖の末端基と反応可能でありそして他方が担体蛋白質と反応可能であるような分子と、反応させ、そして(iii)(ii)の活性化されたオリゴ糖生成物を該担体蛋白質と、結合が起きるような方法で反応させる工程からなる、オリゴ糖および担体蛋白質の共有結合体の製造方法。
【請求項2】 (i)多糖を加水分解して、少なくとも1個の末端還元性基を有するオリゴ糖類を製造し、そして(ii)該オリゴ糖類をピリジンボランの存在下でジアミノエタンと、還元性アミノ化が起きるような方法で反応させ、そして(iii)(ii)のアミノ化されたオリゴ糖生成物を、2個の官能基を有しておりそれの一方が活性化されたオリゴ糖の末端基と反応可能でありそして他方が担体蛋白質と反応可能であるような分子と、反応させ、そして(iv)(iii)の活性化されたオリゴ糖生成物を該担体蛋白質と、結合が起きるような方法で反応させる工程からなる方法により製造された、オリゴ糖および担体蛋白質の間の共有結合体。
【請求項3】 オリゴ糖が肺炎連鎖球菌莢膜多糖から誘導される、請求項2に記載のオリゴ糖および担体蛋白質の間の共有結合体。
【請求項4】 請求項1に記載の方法に従い製造されたワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3027452号(P3027452)
【登録日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【発行日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−270517
【出願日】平成3年9月24日(1991.9.24)
【公開番号】特開平6−340550
【公開日】平成6年12月13日(1994.12.13)
【審査請求日】平成10年6月2日(1998.6.2)
【出願人】(591000791)アメリカン・サイアナミド・カンパニー (43)
【氏名又は名称原語表記】AMERICAN CYANAMID COMPANY