説明

改良された流動性を有するポリアミド成形組成物

【課題】改良された流動性を有するポリアミド成形組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性ポリアミド、および、少なくとも1種のオレフィンと、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、からなるコポリマーをベースとする、改良された流動性を有する熱可塑性成形組成物であって、そのコポリマーのMFIが50g/10分以上である、成形組成物と、それらの成形組成物を製造する方法と、ならびに、電気産業、電子産業、電気通信産業、自動車産業、またはコンピュータ産業、スポーツ分野、医薬品分野、家庭用品分野、またはエンターテイメント産業のための成形品を製造するための、それらの成形組成物の使用と、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の半晶質の熱可塑性ポリアミド、および、少なくとも1種のオレフィン、好ましくは1種のα−オレフィンと、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、からなる少なくとも1種のコポリマーをベースとする成形組成物であって、そのコポリマーのMFI(メルトフローインデックス)が50g/10分以上である、成形組成物、ならびにそれらの成形組成物を製造する方法、さらには、射出成形または押出し成形による成形品または半製品の製造のためのそれらの成形組成物の使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
高度に流動性のある熱可塑性組成物は、多種多様な射出成形用途において関心が持たれている。たとえば、電気産業、電子産業および自動車産業における薄肉の部品では、適切な射出成形機において材料を最低限の射出圧力を用いて金型に充填し、それにしたがって型締め力を最低限とするために、熱可塑性プラスチック組成物の粘度を低くすることが必要である。このことは、多数個取り金型システムとして知られる、シェアードランナーシステムの方法で、二つ以上の射出成形部品に同時に材料を充填する場合にもあてはまる。さらに、低粘度の熱可塑性組成物を使用すれば、サイクル時間の短縮が可能となることも多い。さらに、良好な流動性は、たとえば40重量%を超えるガラス繊維および/または鉱物質含量を有する高充填熱可塑性組成物の場合にはとりわけ重要である。
【0003】
しかしながら、熱可塑性組成物が高い流動性を有していたとしても、それから製造される実際の成分が厳しい機械的要求条件にさらされるので、そのため、粘度を低下させたことによって、機械的性質に顕著な悪化を引き起こすようなことは許されない。
【0004】
高度に流動性のある、低粘度の熱可塑性成形組成物を得るにはいくつかの方法が存在する。
【0005】
一つの方法では、熱可塑性成形組成物のためのベースポリマーとして極めて低分子量の低粘度ポリマー樹脂を使用する。しかしながら、低分子量のポリマー樹脂を使用すると、機械的性質、特に靱性が犠牲になることが多い。さらに、既存の重合プラントにおいて低粘度のポリマー樹脂を製造しようとすると、設備投資を伴う複雑な処置が必要となることも多い。
【0006】
また別な方法では、流動助剤(flow aid)と呼ばれ、さらには流動化剤(flow agent)または流動補助剤(flow assistant)または内部潤滑剤とも呼ばれるものを使用するが、それらは、ポリマー樹脂への添加剤として加えることができる。
【0007】
それらの流動助剤は、たとえば、(非特許文献1)のような文献からも公知であって、たとえば、ポリオールの脂肪酸エステル、または脂肪酸からおよびアミンから誘導されるアミドなどであってよい。しかしながら、それらの脂肪酸エステル、たとえばペンタエリスリトールテトラステアレートまたはエチレングリコールジモンタノエートなどは、極性の熱可塑性プラスチック、たとえばポリアミド、ポリアルキレンテレフタレートまたはポリカーボネートとの混和性が、極めて低い。それらの濃度は成形物の表面に近いほど高くなり、そのためそれらは離型助剤として使用されることもある。しかしながら、加熱老化などをさせると、ポリアミドの場合には湿分を吸収するために、特に濃度が比較的に高い場合には、流動助剤がそれらの成形物から表面に移行して表面での濃度が高くなる可能性がある。たとえば、コーティングした成形品の場合には、このことが、ペイントまたは金属に対する接着性の面で問題を起こす可能性がある。
【0008】
表面活性な流動助剤の代替え物として、そのポリマー樹脂と相溶性のある内部流動助剤を使用することも可能である。この目的に適したものの例としては、低分子量化合物、または、その極性がポリマー樹脂の極性と類似している分岐状、高度に分岐状、または樹枝状(dendritic)のポリマーが挙げられる。それら高度に分岐状または樹枝状の系は、文献からも公知であり、それらのベースとしては、たとえば、(非特許文献2)、または(非特許文献3)に記載されているような、分岐状のポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルもしくはポリアミンなどが挙げられる。
【0009】
(特許文献1)には、窒素含有第一世代4カスケードデンドリマー:1,4−ジアミノブタン[4]プロピルアミン(N,N’−テトラビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン)DAB(PA)を使用して、ナイロン−6、ナイロン−6,6およびポリブチレンテレフタレート(PBT)の粘度を低下させることが記載されている。ポリアミドにおいて粘度を低下させる目的でDAB(PA)を使用しても、得られる成形組成物の耐衝撃性には実質上まったく影響を与えないが(差<5%)、PBTの場合には耐衝撃性が15%を超えて低下する。
【0010】
(特許文献2)には、剛直な芳香族単位を有する三次元の分岐状ポリマーをポリアミドとブレンド使用することが記載されているが、これは、材料の剛性と極限引張強さを向上させると同時に、ブレンド物の粘度の減少と破断時引張歪みの低下をさせることを目的としている。
【0011】
(特許文献3)には、芳香族化合物をベースとした高度に分岐したポリマーの使用が記載されているが、その芳香族化合物はカプロラクタムの重縮合時に添加されているために、共重合している。高度に分岐したポリマーを共重合させたポリアミドからなる組成物は、その高度に分岐した成分を含まない対応の組成物の場合よりも、優れた機械的性質および優れた流動性を示す。高度に分岐したポリマーを重合反応の際に添加することについての記載はあるが、ポリマー溶融物に添加することについての記載はない。
【0012】
原理的には、フェノール、ビスフェノール、および類似の低分子量の添加剤を加えることによっても、ポリアミドの流動性における改良を達成することが可能である。(特許文献4)には、ポリアミド、ゴムおよびビスフェノールからなる成形組成物の記載があり、添加剤によって改良された流動性が示されている。
【0013】
(特許文献5)には、水分吸収を抑制するためにポリアミドにフェノール性化合物を添加することが記載されている。
【0014】
流動性の改良に加えて、材料の靱性を改良することが望まれることも多い。この目的のためには、エテンとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとをベースとし、靱性の改良をもたらす他のコポリマーを、使用される熱可塑性プラスチックに添加することも可能である。
【0015】
(特許文献6)および(特許文献7)には、アクリレートグラフトしたポリオレフィンを用いたポリアミドの靱性の改良についての記載がある。アクリレート変性ポリオレフィンを使用すると、溶融粘度の上昇を招くことは、強調しておきたい。
【0016】
(特許文献8)には、エテンと非反応性アルキルアクリレートからなるコポリマーからなる混合物、そしてさらにはエテンと追加の反応性基を有するアクリレートからなるコポリマーからなる混合物により、熱可塑性プラスチック、特にポリアミドおよびポリブチレンテレフタレートの靱性を改良することが記載されている。そこでは、成形組成物の流動性に関する説明はなされていない。
【特許文献1】EP−A 0 682 057号明細書
【特許文献2】国際公開第95/06081号パンフレット (対応 米国特許第5 493 000号明細書)
【特許文献3】EP−A 0 994 157号明細書 (対応 AU6 233 499A号明細書)
【特許文献4】EP−A 0 240 887号明細書 (対応 米国特許第5 212 224号明細書)
【特許文献5】DE−A 32 48 329号明細書 (対応 米国特許第4 628 069号明細書)
【特許文献6】DE−A 2 758 568号明細書 (対応 米国特許第4 362 846号明細書)
【特許文献7】DE−A 2 801 585号明細書 (対応 米国特許第4 362 846号明細書)
【特許文献8】EP−A 1 191 067号明細書 (対応 米国特許第6 759 480号明細書)
【非特許文献1】クンシュトシュトッフェ(Kunststoffe)、2000年、第9号、116〜118頁
【非特許文献2】クンシュトシュトッフェ(Kunststoffe)、2001年、第91巻、179〜190頁
【非特許文献3】アドバンシズ・イン・ポリマー・サイエンス(Advances in Polymer Science)1999年、第143巻(分岐状ポリマーII)、1〜34頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで本発明の目的は、添加剤を用いてポリマー溶融物を処理することによりポリアミド重縮合組成物の粘度を低下させることにあり、その結果として、低粘度の直鎖ポリマー樹脂を使用した場合、または文献に開示されている添加剤を使用した場合に起きるような、たとえば耐衝撃性および加水分解抵抗性などの物性における低下を受ける恐れがない。剛性および極限引張強さの面においては、そのポリアミド組成物は、可能な限りにおいて、添加剤を用いて処理していないポリアミド重縮合組成物とそれほど異ならないようにすべきであって、それによって、ポリアミドをベースとするプラスチック構造のための材料の置き換えが問題なく実施できるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
その目的の達成、したがって本発明の主題は、以下のものを含むポリアミド成形組成物によって得ることができる:
A)99〜10重量部、好ましくは98〜30重量部、特に好ましくは97〜60重量部の、少なくとも1種の半晶質熱可塑性ポリアミド、および
B)1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは3〜9重量部の、少なくとも1種のオレフィン、好ましくは1種のα−オレフィンと、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、からなる少なくとも1種のコポリマーであって、そのコポリマーB)のMFIが50g/10分以上、好ましくは80〜900g/10分であるコポリマー。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の目的のためには、MFI(メルトフローインデックス)は常に、190℃、試験荷重2.16kgで、測定または試験した。
【0020】
驚くべきことには、少なくとも1種の半晶質熱可塑性ポリアミド、およびオレフィンと、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、のコポリマー(それらのMFIは50g/10分以上である)、からなる混合物が、それらから製造される本発明の成形組成物の溶融粘度を望むように低下させることが見いだされた。コポリマーB)が存在しない成形組成物と比較すると、本発明の成形組成物は、低温耐衝撃性、加水分解抵抗性、密度、表面品質などの性質における顕著な低下を示すことなく、実際は逆に、いくつかの場合には改良されている。それらの成形組成物は、薄肉技術において使用するのに極めて適している。
【0021】
本発明においては、その組成物には、少なくとも1種の半晶質の熱可塑性ポリアミドを成分A)として含む。
【0022】
本発明において使用されるポリアミドは、各種の方法により製造することができ、極めて各種の単位から合成することが可能であり、さらに、それぞれの具体的な用途において、単独で使用することも、あるいは、加工助剤、安定剤、ポリマーアロイの相手(たとえば、エラストマー)もしくは補強用材料(たとえば、鉱物質フィラーまたはガラス繊維)を用いて処理して、特別に調節した性質を組み合わせて持つ材料を得ることもできる。他のポリマー、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)成分とのブレンド物もまた好適であり、適当であれば、1種または複数の相溶化剤を使用することもできる。エラストマーを添加することにより、たとえば強化ポリアミドの耐衝撃性に関連するような、ポリアミドの性質を改良することが可能である。多種多様な組合せが可能であって、それにより極めて各種の性質を有する、極めて広汎な製品を得ることが可能である。
【0023】
ポリアミドを製造するための多種多様な方法が開示されており、所望の最終製品に応じて、各種のモノマー単位、所望の分子量とするための各種の鎖調節剤、あるいはそれに続く後処理を目的とした反応性基を有するモノマー、を使用している。
【0024】
ポリアミドを製造するための工業的に適切な方法は、ほとんどの場合、溶融状態における重縮合法によって進行させる。ラクタムを加水分解的に重合させるのもまた、この目的のための重縮合法である。
【0025】
本発明においては、好ましくは成分A)として使用されるポリアミドは、半晶質のポリアミドであって、それは、ジアミンおよびジカルボン酸から、および/または5員環より小さなラクタムから、または対応するアミノ酸から出発して製造することができる。
【0026】
使用可能な出発物質としては、脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸、たとえばアジピン酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族および/または芳香族ジアミン、たとえば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、各種異性体のジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸たとえば、アミノカプロン酸、ならびに、それぞれに対応するラクタムなどが挙げられる。上述のモノマーの2種以上からなるコポリアミドも含まれる。
【0027】
本発明においては、カプロラクタムを使用することが特に好ましく、ε−カプロラクタム、またはPA6、PA66およびその他の脂肪族および/または芳香族ポリアミドをベースとしたコンパウンディング材料のほとんどのもの、およびそれぞれ、それらの材料中のポリマー鎖中のそれぞれのポリアミド基に3〜11個のメチレン基が存在するコポリアミドを使用すれば極めて特に好ましい。
【0028】
本発明において成分A)として使用される半晶質のポリアミドは、他のポリアミドとの混合物および/または他のポリマーとの混合物として使用することも可能である。
【0029】
慣用される添加剤、たとえば、離型剤、安定剤および/または流動助剤を溶融状態のポリアミドに混合したり、ポリアミドの表面に塗布したりすることもできる。
【0030】
本発明の組成物には、成分B)として、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、からなるコポリマー、好ましくはランダムコポリマーが含まれ、そのコポリマーB)のMFIは、50g/10分以上、好ましくは80〜900g/10分である。一つの好ましい実施態様においては、4重量%未満、特に好ましくは1.5重量%未満、極めて特に好ましくは0重量%のコポリマーB)が、さらなる反応性官能基(エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択される)を含むモノマー単位からなる。
【0031】
コポリマーB)の構成成分として好適なオレフィン、好ましくはα−オレフィンは、2〜10個の炭素原子を有しているのが好ましく、それらは非置換であっても、あるいは1個または複数の脂肪族、脂環族または芳香族基によって置換されていてもよい。
【0032】
好適なオレフィンは、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテンからなる群より選択されている。特に好適なオレフィンはエテンおよびプロペンであり、エテンが極めて特に好ましい。
【0033】
上述のオレフィンの混合物もまた適している。
【0034】
また別な好ましい実施態様においては、コポリマーB)のさらなる反応性官能基(エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択される)が、もっぱらオレフィンを用いることにより、コポリマーB)の中に導入される。
【0035】
コポリマーB)の中のオレフィンの含量は、50〜95重量%、好ましくは61〜93重量%である。
【0036】
コポリマーB)は、オレフィンに加えて、第二の構成成分によりさらに定義される。好適な第二の構成成分は、そのアルキル基が1〜4個の炭素原子で形成されているアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルである。
【0037】
たとえば、そのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルのアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルからなる群より選択することができる。そのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルのアルキル基は、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルからなる群より選択するのが好ましい。メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルのアルキル基が、4個の炭素原子を有していて、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルまたはtert−ブチル基を含むのが、極めて特に好ましくい。特に好ましいのは、n−ブチルアクリレートである。
【0038】
本発明において特に好ましいのは、オレフィンをブチルアクリレート、特にn−ブチルアクリレートと共重合させたコポリマーB)である。
【0039】
上述のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの混合物もまた好適である。本明細書においては、コポリマーB)中のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの全量を基準にして、50重量%を超える、特に好ましくは90重量%を超える、極めて特に好ましくは100重量%のブチルアクリレートを使用するのが好ましい。
【0040】
また別な好ましい実施態様においては、コポリマーB)のさらなる反応性官能基(エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択される)が、もっぱらアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを用いることにより、コポリマーB)の中に導入される。
【0041】
コポリマーB)の中のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの含量は、好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは7〜39重量%である。
【0042】
好適なコポリマーB)は、その構成成分だけではなく、それらが低分子量であることも特徴とする。したがって、本発明の成形組成物に適したコポリマーB)は、温度190℃荷重2.16kgで測定したそのMFI値が、少なくとも50g/10分、好ましくは80〜900g/10分であるものに限られる。
【0043】
成分B)として好適なコポリマーの例は、アルケマ(Arkema)(旧アトフィナ(Atofina))により商標ロトリル(Lotryl)(登録商標)(通常はホットメルト接着剤として使用されている)として供給される原料の群から選択することができる。
【0044】
一つの好ましい実施態様においては、本発明のポリアミド成形組成物には、成分A)およびB)に加えて、一連のC)、D)、E)、F)およびG)の成分の1種または複数が含まれていてもよい。
【0045】
このタイプの一つの好ましい実施態様では、したがってさらに、熱可塑性ポリアミド成形組成物に、適当であれば、成分A)およびB)に加えて、
C)0.001〜70重量部、好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは9〜47重量部の、少なくとも1種のフィラーまたは補強用材料が含まれていてもよい。
【0046】
しかしながら、その使用されるフィラーまたは補強用材料には、2種または複数の異なったフィラーおよび/または補強用材料からなる混合物を含んでいてもよく、そのようなものの例としては、タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラスビーズおよび/または炭素繊維および/またはガラス繊維をベースとする繊維質フィラーおよび/または補強用材料、などをベースとするものが挙げられる。タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウムおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物質の粒子状フィラーを使用するのが好ましい。タルク、ウォラストナイト、カオリンおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物質の粒子状フィラーを使用するのが特に好ましい。
【0047】
たとえば自動車における外装車体部品のための用途のように、寸法安定性における等方性や、高温寸法安定性が要求されるような用途においては特に、鉱物質フィラー、特にタルク、ウォラストナイトまたはカオリンを使用するのが好ましい。
【0048】
針状の鉱物質フィラーを使用することも、さらに特に好ましい。本発明においては、「針状の鉱物質フィラー」とは、高度に突出した針状の特性を有する鉱物質フィラーである。一例を挙げれば、針状のウォラストナイトである。その材料の長さ対直径の比は、好ましくは2:1から35:1まで、特に好ましくは3:1から19:1まで、最も好ましくは4:1から12:1までである。本発明の針状鉱物質の平均粒径は、サイラス・グラニュロメータ(CILAS GRANULOMETER)を用いた測定で、好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満、特別に好ましくは10μm未満である。
【0049】
先に述べたように、フィラーおよび/または補強用材料は、適当であるならば、たとえばシランをベースとするような、単一カップリング剤またはカップリング剤系を使用して、表面変性をしておく。しかしながら、そのような前処理が絶対に必須という訳ではない。特にガラス繊維を使用する場合には、シランに加えて、ポリマー分散体、被膜形成剤、分岐化剤および/またはガラス繊維加工助剤などを用いることもできる。
【0050】
本発明において特に好適に使用される、その繊維の直径が一般に7〜18μm、好ましくは9〜15μmであるガラス繊維は、連続フィラメント繊維の形態で加えるか、あるいはチョップドまたはグラウンドガラス繊維の形態で加える。その繊維には、適切なサイズ系と、たとえばシランをベースとする単一カップリング剤またはカップリング剤系を与えておくことができる。
【0051】
前処理のためのシランベースのカップリング剤としてよく用いられるものは、たとえば一般式(I)
(I) (X−(CH−Si−(O−C2r+14−k
を有するシラン化合物であり、式中、それらの置換基は以下のものである:
X:NH−、HO−、または
【0052】
【化1】

q:2〜10、好ましくは3〜4の整数、
r:1〜5、好ましくは1〜2の整数、そして
k:1〜3、好ましくは1の整数。
【0053】
好適なカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、ならびに、置換基Xとしてグリシジル基を含むそれらに対応するシラン、の群からのシラン化合物である。
【0054】
フィラーに乗せるためのシラン化合物の一般的な使用量は、表面コーティングするために使用する鉱物質フィラーを基準にして、0.05〜2重量%、好ましくは0.25〜1.5重量%、特には0.5〜1重量%である。
【0055】
成形組成物または成形品を与える加工において重要なことは、成形組成物中または成形品中の粒子状フィラーのd97値またはd50値が、最初に使用されるフィラーのそれよりも小さくなる可能性があるということである。成形組成物または成形品を与える加工において重要なことは、成形組成物中または成形品中のガラス繊維の長さ分布が、最初に使用される材料のそれよりも短くなる可能性があるということである。
【0056】
一つのまた別な好ましい実施態様においては、ポリアミド成形組成物に、適当であれば、成分A)およびB)および/またはC)に加えて、
D)0.001〜65重量部の、少なくとも1種の難燃化添加剤が含まれていてもよい。
【0057】
成分D)に使用することが可能な難燃化剤は、市販されている有機ハロゲン化合物と相乗剤の組合せ、市販されている有機窒素化合物、あるいは有機/無機リン化合物であって、それらを個別に使用しても、混合物で使用してもよい。鉱物質の難燃化添加剤を使用することも可能であって、そのようなものとしてはたとえば、水酸化マグネシウムまたは炭酸CaMg水和物(たとえば、DE−A 4 236 122号明細書(対応 CA210 9024A1号明細書))が挙げられる。脂肪族または芳香族スルホン酸の塩を使用することも可能である。ハロゲン含有、特に臭素化および塩素化化合物の例を挙げれば以下のようなものがある:エチレン−1,2−ビステトラブロモフタルイミド、エポキシ化テトラブロモビスフェノールA樹脂、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノールAオリゴカーボネート、ペンタブロモポリアクリレート、臭素化ポリスチレンおよびデカブロモジフェニルエーテル。好適な有機リン化合物の例は、国際公開第98/17720号パンフレット(対応 米国特許第6 538 024号明細書)に記載のリン化合物で、たとえば、トリフェニルホスフェート(TPP)、レソルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)およびそれらから誘導されるオリゴマー、ならびにビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)およびそれらから誘導されるオリゴマー、ならびに有機および無機ホスホン酸誘導体およびそれらの塩、有機および無機ホスフィン酸誘導体およびそれらの塩、特に金属ジアルキルホスフィネート、たとえば、アルミニウムトリス[ジアルキルホスフィネート]または亜鉛ビス[ジアルキルホスフィネート]、さらには赤リン、ホスファイト、ハイポホスファイト、ホスフィンオキシド、ホスファゼン、メラミンピロホスフェート、およびそれらの混合物などである。使用可能な窒素化合物としては、アラントイン誘導体、シアヌル酸誘導体、ジシアンジアミド誘導体、グリコルリル誘導体、グアニジン誘導体、アンモニウム誘導体およびメラミン誘導体、好ましくはアラントイン、ベンゾグアナミン、グリコルウリル、メラミン、メラミンの縮合物たとえばメレム、メラムまたはメロム、およびそれぞれについて、それらの高縮合レベルの化合物、ならびにメラミンの酸との付加物たとえば、シアヌル酸との付加物(メラミンシアヌレート)、リン酸との付加物(メラミンホスフェート)または縮合リン酸との付加物(たとえば、メラミンポリホスフェート)などの群からのものが挙げられる。好適な相乗剤の例としては、アンチモン化合物、特に三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムおよび五酸化アンチモン、亜鉛化合物、たとえば、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛および硫化亜鉛、スズ化合物、たとえば、スズ酸スズおよびホウ酸スズ、ならびにマグネシウム化合物、たとえば、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびホウ酸マグネシウムなどが挙げられる。炭化剤(carbonizer)として知られている物質を難燃化剤に添加することも可能であり、そのようなものの例としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニルエーテル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、およびポリエーテルケトン、さらには、たれ防止剤、たとえばテトラフルオロエチレンポリマーなどが挙げられる。
【0058】
さらなる好ましい実施態様においては、ポリアミド成形組成物に、適当であれば、成分A)およびB)、および/またはC)および/またはD)に加えて、
E)0.001〜80重量部、特に好ましくは2〜25重量部の、少なくとも1種のエラストマー変性剤が含まれていてもよい。
【0059】
成分E)として使用されるエラストマー変性剤には、以下のグラフトポリマーの1種または複数が包含される:
E.1:5〜95重量%、好ましくは30〜90重量%の、少なくとも1種のビニルモノマーのグラフトポリマー、
E.2:95〜5重量%、好ましくは70〜10重量%の、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有する1種または複数のグラフトベースのグラフトポリマー。
【0060】
グラフトベースE.2の粒径中央値(d50値)は一般に0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜1μmである。
【0061】
モノマーE.1は、以下のものからなる混合物であるのが好ましい:
E.1.1:50〜99重量%の、ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(C〜C)−アルキルメタクリレート(たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、および
E.1.2:1〜50重量%の、ビニルシアニド(不飽和ニトリル、たとえばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(C〜C)−アルキル(メタ)アクリレート(たとえば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(たとえば無水物およびイミド)(たとえば、無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)。
【0062】
好適なモノマーE.1.1は、スチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートのモノマーの少なくとも1種から選択され、好適なモノマーE.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートのモノマーの少なくとも1種から選択されている。
【0063】
E.1.1としてスチレン、E.1.2としてアクリロニトリルが特に好適なモノマーである。
【0064】
エラストマー変性剤E)において使用されるグラフトポリマーのために好適なグラフトベースE.2の例としては、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンをベースとするゴム、ならびに、適当であれば、ジエン、アクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴムおよびエチレン−ビニルアセテートゴムなどが挙げられる。
【0065】
好適なグラフトベースE.2は、ジエンゴム(たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをベースとするもの)またはジエンゴムの混合物であるか、または(たとえば、E.1.1およびE.1.2に従う)共重合可能なモノマーをさらに加えたジエンゴムのコポリマーまたはそれらの混合物であるが、ただし、成分E.2のガラス転移温度は、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−10℃未満とする。
【0066】
特に好適なグラフトベースE.2の例は、ABSポリマー(エマルション、バルク、およびサスペンションABS)であるが、これらについては、たとえばDE−A 2 035 390号明細書(対応 米国特許第3 644 574号明細書)またはDE−A 2 248 242号明細書(対応 GB−A−1 409 275号明細書)や、ウルマン(Ullmann)のエンチクロペディー・デア・テクニッシェン・ヘミー(Enzyklopaedie der Technischen Chemie)[エンサイクロペディア・オブ・インダストリアル・ケミストリー(Encyclopaedia of Industrial Chemistry)]、第19巻(1980年)、280頁以下に記載がある。グラフトベースE.2のゲル含量は、好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%である(トルエン中で測定)。
【0067】
エラストマー変性剤またはグラフトポリマーE)は、フリーラジカル重合、たとえば、エマルション重合、懸濁重合、溶液重合またはバルク重合を用いて製造されるが、エマルション重合またはバルク重合によるのが好ましい。
【0068】
その他の特に好適なグラフトゴムは、ABSポリマーであるが、これは、米国特許第4 937 285号明細書に従った、有機過酸化物とアスコルビン酸とからなる重合開始剤系を用いた酸化還元開始によって製造される。
【0069】
グラフト化反応の際に、グラフトベースの上にグラフトモノマーが必ずしも完全にグラフトされる必要はないということが知られているので、グラフトベースの存在下にグラフトモノマーを(共)重合させることによって得られ、その作業に伴って製造される製品もまた、本発明におけるグラフトポリマーBである。
【0070】
好適なアクリレートゴムは、好ましくはアルキルアクリレートからなるポリマーであるグラフトベースE.2の上に、E.2を基準にして40重量%までの、その他の重合性エチレン性不飽和モノマーを組み合わせたものをベースとしている。好適な重合性アクリル酸エステルの例を挙げれば、C〜C−アルキルエステル、たとえばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロC〜C−アルキルエステル、たとえばクロロエチルアクリレート、ならびにそれらのモノマーの混合物などがある。
【0071】
架橋させるためには、2個以上の重合性二重結合を有するモノマーを共重合させることができる。架橋性モノマーの好適な例としては、3〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3〜12個の炭素原子を有する不飽和一価アルコール、または2〜4個のOH基と2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステルであって、たとえば、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;ポリ不飽和ヘテロ環状化合物、たとえば、トリビニルおよびトリアリルシアヌレート;多官能ビニル化合物、たとえばジ−またはトリ−ビニルベンゼン;ならびにトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートなどが挙げられる。
【0072】
好適な架橋性モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、および少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有するヘテロ環状化合物である。
【0073】
特に好適な架橋性モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋性モノマーの量は、グラフトベースE.2を基準にして、好ましくは0.02〜5重量%、特に0.05〜2重量%である。
【0074】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状架橋性モノマーの場合には、その量をグラフトベースE.2の1重量%未満に制限するのが有利である。
【0075】
適当であればグラフトベースE.2を製造するのに、アクリル酸エステルに加えて使用することができる、好適な「その他の」重合性、エチレン性不飽和モノマーの例を挙げれば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンなどがある。グラフトベースE.2として好適なアクリレートゴムは、そのゲル含量が少なくとも60重量%であるエマルションポリマーである。
【0076】
E.2においてさらに好適なグラフトベースは、グラフトをさせるのに活性な部位を有するシリコーンゴムであって、たとえば、DE−A 3 704 657号明細書(対応 米国特許第4 859 740号明細書)、DE−A 3 704 655号明細書(対応 米国特許第4 861 831号明細書)、DE−A 3 631 540号明細書(対応 米国特許第4 806 593号明細書)およびDE−A 3 631 539号明細書(対応 米国特許第4 812 515号明細書)に記載がある。
【0077】
グラフトポリマーをベースとするエラストマー変性剤に加えて、成分E)として、グラフトポリマーをベースとしないが、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー変性剤を使用することも可能である。それらのものの例としては、ブロックコポリマー構造を有するエラストマーが挙げられる。それらのものの例としてはさらに、熱可塑的な溶融が可能なエラストマーが挙げられる。ここで例に挙げた材料では、EPMゴム、EPDMゴム、および/またはSEBSゴムが好適である。
【0078】
さらなる好ましい実施態様においては、ポリアミド成形組成物に、適当であれば、成分A)およびB)、および/またはC)および/またはD)および/またはE)に加えて、
F)0.001〜10重量部、好ましくは0.05〜3重量部の、その他の慣用される添加剤が含まれていてもよい。
【0079】
本発明の目的のための、慣用される添加剤の例を挙げれば、安定剤(たとえば、UV安定剤、熱安定剤、ガンマ線安定剤)、帯電防止剤、流動助剤、離型剤、さらなる難燃添加剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、潤滑剤、染料、顔料、および導電性を向上させるための添加剤などがある。上述の添加剤およびその他の適切な添加剤は、たとえばゲヒター(Gaechter)、ミューラー(Mueller)『クンシュトシュトッフ−アディティブ(Kunststoff−Additive)』[プラスチックス・アディティブズ(Plastics Additives)]第3版(ハンザー・フェルラーク(Hanser−Verlag)、ミュンヘン(Munich)、ウィーン(Vienna)、1989)、および『プラスチックス・アディティブズ・ハンドブック(Plastics Additives Handbook)』第5版(ハンザー・フェルラーク(Hanser−Verlag)、ミュンヘン(Munich)、2001)に記載されている。それらの添加剤は単独で使用してもよいし、混合物として、またはマスターバッチの形態で使用してもよい。
【0080】
使用可能な安定剤の例としては、立体障害フェノール、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、たとえばジフェニルアミン、置換レソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノン、ならびに、これらの群の各種置換された代表物、およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0081】
使用可能な顔料および染料の例としては、二酸化チタン、硫化亜鉛、群青、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン、およびアントラキノンなどが挙げられる。
【0082】
使用可能な成核剤の例としては、ナトリウムフェニルホスフィネートまたはカルシウムフェニルホスフィネート、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、さらには好ましくはタルクなどが挙げられる。
【0083】
使用可能な潤滑剤および離型剤としては、エステルワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、長鎖脂肪酸(たとえば、ステアリン酸またはベヘン酸)およびエステル、それらの塩(たとえば、CaステアレートまたはZnステアレート)、およびさらにはアミド誘導体(たとえば、エチレンビスステアリルアミド)またはモンタンワックス(28〜32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖飽和カルボン酸からなる混合物)、ならびに、低分子量のポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
【0084】
使用可能な可塑剤の例としては、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0085】
導電性を向上させるために添加可能な添加剤としては、カーボンブラック、導電性ブラック、炭素フィブリル、ナノスケールグラファイト繊維およびナノスケール炭素繊維、グラファイト、導電性ポリマー、金属繊維、およびさらには導電性向上のために慣用されるその他の添加剤などが挙げられる。好ましく使用することが可能なナノスケール繊維は、「単層(single-wall)カーボンナノチューブ」または「多層(multiwall)カーボンナノチューブ」として知られているものである(たとえば、ハイペリオン・キャタリシス(Hyperion Catalysis)製)。
【0086】
さらなる好ましい実施態様においては、ポリアミド成形組成物に、適当であれば、成分A)およびB)、および/またはC)、および/またはD)、および/またはE)、および/またはF)に加えて、
G)0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、特に好ましくは2〜10重量部、最も好ましくは3〜7重量部の、相溶化剤が含まれていてもよい。
【0087】
使用される相溶化剤には、極性基を有する熱可塑性ポリマーが含まれているのが好ましい。
【0088】
したがって、本発明において使用されるポリマーは以下のものを含む:
G.1:ビニル芳香族モノマー、
G.2:C〜C12−アルキルメタクリレート、C〜C12−アルキルアクリレート、メタクリロニトリルおよびアクリロニトリルの群より選択される、少なくとも1種のモノマー、ならびに
G.3:α,β−不飽和成分を含むジカルボン酸無水物。
【0089】
使用される成分Gには、前述のモノマーのターポリマーを含んでいるのが好ましい。したがって、スチレン、アクリロニトリルおよび無水マレイン酸のターポリマーを使用するのが好ましい。具体的には、それらのターポリマーは、機械的性質、たとえば引張強さおよび破断時引張歪みにおける改良に寄与する。ターポリマー中の無水マレイン酸の量は極めて広い範囲で変化させることができる。その量は、0.2〜5モル%とするのが好ましい。0.5〜1.5モル%の量とするのが、特に好ましい。この範囲にすると、引張強さおよび破断時引張歪みに関しては、特に良好な機械的性質が達成される。
【0090】
そのターポリマーは、公知の方法により製造することができる。一つの好適な方法では、ターポリマーのモノマー成分、たとえば、スチレン、無水マレイン酸またはアクリロニトリルを、適当な溶媒たとえば、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させる。1種、または適当ならば複数の化学的重合開始剤を、この溶液に添加する。好適な重合開始剤の例は、過酸化物である。次いでその混合物を高温で数時間かけて重合させる。次いで溶媒と未反応のモノマーを、それ自体公知の方法により除去する。
【0091】
ターポリマー中での、成分G.1(ビニル芳香族モノマー)と成分G.2たとえばアクリロニトリルモノマーとの比率は、80:20から50:50までであるのが好ましい。
【0092】
スチレンが、ビニル芳香族モノマーG.1として特に好ましい。
【0093】
アクリロニトリルが、成分G.2としては特に好ましい。
【0094】
無水マレイン酸が、成分G.3としては特に好ましい。
【0095】
EP−A 0 785 234号明細書(対応 米国特許第5 756 576号明細書)およびEP−A 0 202 214号明細書(対応 米国特許第4 713 415号明細書)には、本発明において使用可能な相溶化剤G)の例が記載されている。本発明においては特に好ましいのは、EP−A 0 785 234号明細書に記載のポリマーである。
【0096】
相溶化剤は、成分G)の中に単独で存在させてもよいし、あるいは各種所望の互いの混合物として存在させてもよい。
【0097】
相溶化剤として特に好適なその他の物質は、1モル%の無水マレイン酸を含み、スチレンとアクリロニトリルの重量比が2.1:1であるターポリマーである。成形組成物がE)で記載したようなグラフトポリマーを含むような場合には、成分G)が特に好適に使用される。
【0098】
本発明においては、以下の成分の組合せが好ましい:
A、B;A、B、C;A、B、D;A、B、E;A、B、F;A、B、G;A、B、C、D;A、B、C、E;A、B、C、F;A、B、C、G;A、B、D、E;A、B、D、F;A、B、D、G;A、B、E、F;A、B、E、G;A、B、F、G;A、B、C、D、E;A、B、C、D、F;A、B、C、D、G;A、B、C、E、F;A、B、C、E、G;A、B、C、F、G;A、B、E、F、G;A、B、D、E、F;A、B、D、E、G;A、B、D、F、G;A、B、C、D、E、F;A、B、C、D、E、G;A、B、C、D、F、G;A、B、D、E、F、G;A、B、C、E、F、G;A、B、C、D、E、F、G。
【0099】
本発明はさらに、本発明のポリアミド成形組成物の製造法をも提供する。これは、成分を適切な重量比率で混合することにより、公知の方法により実施する。温度220〜330℃で、各成分を互いに組合せ、混合、混練、押出、またはロール練りすることにより、成分の混合を実施するのが好ましい。個々の成分を予備混合しておくことも好都合である。室温(好ましくは0〜40℃)で製造した、予備混合および/または個々の成分からなる物理的混合物(ドライブレンド)から、成形品または半成形品を直接製造すれば、さらに好都合である。
【0100】
本発明はさらに、以下のものを含む本発明のポリアミド成形組成物から製造される成形品または半製品を提供する:
A)99〜10重量部、好ましくは98〜30重量部、特に好ましくは97〜60重量部の、少なくとも1種の半晶質熱可塑性ポリアミド、および
B)1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは3〜9重量部の、少なくとも1種のオレフィン、好ましくは1種のα−オレフィンと、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、からなる少なくとも1種のコポリマーであって、そのMFIが50g/10分以上、好ましくは80〜900g/10分であるコポリマー。
【0101】
従来技術に比較して、本発明の成形組成物によって示される驚くべきさらなる利点は、以下のようなものである:
− 顕著に改良された流動性(特に熱可塑性プラスチック加工で用いられる剪断速度における);
− 射出成形による加工の際の射出圧力の顕著な低下;
− 改良された低温耐衝撃性;
− 低密度;
− 改良された加水分解抵抗性;
− 改良された成形品表面品質。
【0102】
本発明のポリアミド成形組成物は、慣用される方法、たとえば射出成形または押出し成形により加工して、成形品または半製品を得ることができる。半製品の例としては、フォイルやシートがある。射出成形による加工が特に好ましい。
【0103】
ポリアミド成形組成物から本発明により製造される成形品または半製品は、小型部品であっても大型部品であってもよく、たとえば自動車産業、電気産業、電子産業、電気通信産業、情報産業またはコンピュータ産業、家庭用品分野、スポーツ分野、医薬品分野、またはエンターテイメント産業において、使用することができる。特に、本発明のポリアミド成形組成物は、高い溶融流動性が必要とされる用途において使用することができる。そのような用途の例を挙げれば、薄肉技術として知られているものがあり、そこでは、成形組成物から製造する成形品の壁厚が2.5mm未満、好ましくは2.0mm未満、特に好ましくは1.5mm未満、最も好ましくは1.0mm未満である。そのような用途のまた別な例は、たとえば加工温度の低下による、サイクル時間の短縮である。他の用途例は、多数個取りシステム(multitooling system)として知られる方法による成形組成物加工であって、その場合射出成形加工において、ランナーシステムを用いて原料を、少なくとも4個の金型、好ましくは少なくとも8個の金型、特に好ましくは少なくとも12個の金型、最も好ましくは少なくとも16個の金型に充填する。
【0104】
本発明の成形組成物からなる成形品は、自動車の冷媒循環システムおよび/またはオイル循環システムの部品に使用することもできる。
【0105】
[実施例]
以下のものを使用した:
ナイロン−6:デュレタン(Durethan)(登録商標)B29、独国レーフェルクーゼン(Leverkusen,Germany)のランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)からの市販品、相対溶液粘度2.9(m−クレゾール中25℃で測定)
ガラス繊維:シラン含有化合物を用いてサイジングした、直径11μmのガラス繊維(CS7928、ベルギー国アントワープ(Antwerp,Belgium)のランクセス・N.V.(Lanxess N.V.)からの市販品)
ロトリル(Lotryl)(登録商標)28BA175:エテンとn−ブチルアクリレートからなり、エテン含量が70〜74重量%、MFIが175のコポリマー(独国デュッセルドルフ(Deutschland,Dusseldorf)のアトフィナ(Atofina)(2004年10月からはデュッセルドルフ(Dusseldorf)のアルケマ・GmbH(Arkema GmbH))からの市販品)
【0106】
PA6ベースの組成物を、ZSK32(ワーナー・アンド・フライダー(Werner and Pfleiderer))2軸スクリュー押出機中、270〜285℃の溶融温度でコンパウンディングすることにより成形組成物を得て、その溶融物を水浴の中に押出してからペレット化した。
【0107】
表に記載した試験のための試験片を、280℃の溶融温度のアルブルク(Arburg)320−210−500型射出成形機で射出成形したが、型温度約80℃であった:
− ダンベル試験片(厚み3mm、ISO 527による)
− 80×10×4mm試験片(ISO 178による)
− 60×60×2mmプラック。
【0108】
ダンベル試験片を射出成形するときに求められた射出圧力が、加工パラメーターである。射出圧力は、金型キャビティに充填するためにゲートに近い部分にかかる、型内圧力である。それは、圧力曲線を時間の関数としてとると、金型充填相と圧縮相との間の特徴的な変曲点であって、プロセスデータを採取することにより求めることができる。
【0109】
溶融粘度の測定および流動スパイラル長さ(flow spiral length)の試験は例外として、表に列記した試験は、上述の試験片について実施したものである。
【0110】
破断時引張モジュラスおよび引張応力を求めるための引張試験は、DIN EN ISO 527−2/1Aに従った。破断時引張歪:伸長性は、DIN EN ISO 527−2/1Aに従った。
【0111】
曲げモジュラス、曲げ強さ、外側繊維の歪み、および曲げ応力を求める曲げ試験は、DIN/EN/ISO 178に従った。
【0112】
耐衝撃性:アイゾッド(IZOD)法は、室温および−30℃において、ISO 180/1Uに従った。
【0113】
収縮:収縮性を測定するために、60mm×60mm×2mmの寸法の標準化したプラックを射出成形した(ISO 294−4)。次いでその試験で、成形収縮の場合および後収縮の場合の両方について、縦方向および横方向の収縮を求める。成形収縮に後収縮を加えることにより、全収縮を得る。
【0114】
流動スパイラル長さ:流動スパイラル(厚み3mm)における流動性を、本発明の実施例と比較例から溶融温度280℃、金型温度80℃でコンパウンディングした材料について試験した。流動パス(flow path)をcmの単位で測定した(流動スパイラル長さ)。
【0115】
ペレットを真空乾燥機中80℃で48時間乾燥させてから、DIN 54811/ISO 11443に従って、ゲットフェルト(Goettfert)からのビスコロボ(Viscorobo)94.00装置を用いて、所定の剪断速度および温度で溶融粘度を求めた。
【0116】
密度は試験片についての浮遊法により求めた(DIN EN ISO 1183−1による)。
【0117】
表面:表面の品質は、60mm×60mm×2mmの寸法の試験片について、観察(assessed)し、視覚的に評価(estimated visually)した。評価した判定基準は、光沢、平坦性、色、および表面構造の均一性であった。
【0118】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)99〜10重量部の、少なくとも1種の半晶質熱可塑性ポリアミド、および
B)1〜20重量部の、少なくとも1種のオレフィンと、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、からなる少なくとも1種のコポリマー
を含む成形組成物であって、
前記コポリマーB)のMFIが50g/10分以上である、成形組成物。
【請求項2】
前記コポリマーB)の4重量%未満が、エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群より選択されるさらなる反応性官能基を含むモノマー単位からなることを特徴とする、請求項1に記載の成形組成物。
【請求項3】
前記コポリマーB)のMFIが80〜900g/10分であることを特徴とする、請求項1または2に記載の成形組成物。
【請求項4】
適当であれば、A)およびB)に加えて、一連の以下のもの:
C)0.001〜70重量部の、少なくとも1種のフィラーまたは補強用材料、
D)0.001〜65重量部の、少なくとも1種の難燃化添加剤、
E)0.001〜80重量部の、少なくとも1種のエラストマー変性剤、
F)0.001〜10重量部の、その他の慣用される添加剤、
G)0.5〜30重量部の、相溶化剤、
の1種または複数の成分を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形組成物。
【請求項5】
前記成分を適切な重量比率で混合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド成形組成物を製造する方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形組成物を射出成形または押出し成形することにより得られる成形品または半製品。
【請求項7】
ランナーシステムを使用することにより、射出成形加工において少なくとも4個の金型に請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形組成物を充填することにより得られる、多数個取りシステム。
【請求項8】
薄肉技術における、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形組成物の使用。
【請求項9】
電気産業、電子産業、電気通信産業、自動車産業、またはコンピュータ産業、スポーツ分野、医薬品分野、家庭用品分野、またはエンターテイメント産業における、請求項6に記載の成形品もしくは半製品、または請求項7に記載の多数個取りシステムの使用。
【請求項10】
自動車の冷媒循環システムおよび/またはオイル循環システムの部品への、請求項6に記載の成形品または半製品の使用。