説明

改良口呼吸防止帯

【課題】下顎部の不随意な降下を規制して口呼吸に起因する睡眠障害を防止する口呼吸防止帯において、下顎部への係止方法を変更、或いは変更可能とし、頬部への展着面積を減少しながら規制力を保つための、改良口呼吸防止帯を提供する。
【解決手段】帯状部材の短辺下端中央近辺から縦方向に、上方に切れ上がる切欠き部、或いは切込み線部を設け、下顎部の中央近辺を避け左右に係止可能とすると共に、つなぎ部の外側からつなぎ部の内側近辺まで欠き取ることにより頬部への展着面積を減らして着用時のうっとうしさを軽減し、下顎部の不随意な降下の規制力は保持し、口呼吸を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下顎部の不随意な開口を規制する口呼吸防止帯の着用上の問題解決に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の口呼吸防止具には、顔面に展着して着用し、睡眠時等における下顎部の不随意な降下又は左右のずれを規制し、口呼吸および口呼吸に起因する睡眠障害を防止する口呼吸防止帯がある。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
以下、図1、図2、図13によって従来の口呼吸防止帯について説明する。図1は帯状部材2が展着する先である顔面1中の係止部位となる上頬部11、下顎部12、係止関係部となる鼻下部13、頬部14の位置を示している。図2は帯状部材2により下顎部12と鼻下部13の間にシワ12aが生じている異常な状態を示している。図13において、2は口呼吸防止帯を構成する帯状部材で、スリット15、上係止部16、下係止部17、16と17とを結び一定の距離に保持するつなぎ部20を具え、さらに20にはつなぎ部の内側20a、つなぎ部の外側20bが存在している。
【0004】
帯状部材2は前記展着面に粘着材層を有し、顔面1に対してスリット15を左右に開きながら、上係止部16を左右に位置する上頬部11にそれぞれ展着し、次に下係止部17を、つなぎ部20を引張させつつ口を閉じた状態の下顎部12に係止する。
このことにより、下顎部12は口呼吸防止帯である帯状部材2によって不随意な降下又は左右のずれが規制されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特許番号 第4465519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べた従来の口呼吸防止帯では、下顎部12は下顎部の中央近辺も含め下係止部17によってほぼ全面に渡り強力に係止保持される一方、下顎部の中央近辺にヒゲ、傷瘍等を有する場合はこれ等を避け得ず、口呼吸防止帯が使用できない恐れがあった。
又、下顎部にひげを生やす男性は多いが、その中でも中央近辺に長めのひげ部分を持つ傾向が顕著であり、この部位に下係止部17を係止してしまうと下係止部全体が持ち上げられ、展着しても係止に耐えられない欠点があった。
【0007】
又、図2に示すように、下顎部12が前方に出張っている人等の場合、下係止部17が鼻下部13に密着しないことがあると、下顎部12の皮膚及び筋肉が下係止部17によってたくし上げられ途中に寄りが生じる状態となり、鼻下部13等にシワ12aができ、口呼吸防止帯の連用によって顔面1にシワ12aが常在してしまう恐れがあった。
【0008】
さらに、つなぎ部20にはつなぎ部の内側20aに加え、つなぎ部の外側20bも具えている為、前記一定の距離に保持する能力は高いが、図1の頬部14にも広く展着してしまうので展着時のうっとうしさが避けられず、睡眠時、無意識に外してしまう等の不都合が起きる状態があった。
【0009】
又、下顎部12と上頬部11を口唇部を乗り越え係止する際、それぞれをつなぐ係止距離が短い方がより係止保持力が強くなる結果、つなぎ部の外側20bとつなぎ部の内側20aとでは係止保持力に差が生じ、例えば下顎部に強い係止保持力の交点である一つの安定点を置くとすると、つなぎ部の外側20bはつなぎ部の内側20aよりこの安定点からの係止距離が長くなる為に係止保持力が弱くなる構造となっている。
【0010】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、口呼吸防止帯である帯状部材の着用時に下顎部の中央近辺を避け得ての係止を実現することにより、下顎部が出張っている場合等でもシワが生ずる事無く鼻下部に密着可能とし、さらに展着する際に起きるうっとうしさを軽減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は上記目的を達成する為に帯状部材の短辺下端中央近辺から縦方向に、上方に切れ上がる切欠き部を設け、さらに当該切欠き部の切終点と前記スリットの切終点との間に、一定の距離を保つ部位から成る非切部、を設けることにより、非切部を前記下顎部に係止可能にするとともに、下顎部中央近辺が前記帯状部材の係止に不適当な状態にあるか、係止すると異常を生ずる場合でも、当該切込み部によって左右に分岐形成した分岐形下係止部が前記下顎部中央近辺を避け、前記下顎部の左右に展着係止することにより、前記非切部と連携して下顎部の降下を規制及び保持できる。
【0012】
又、第2の解決手段は、前記左右に分岐形成した分岐形下係止部を成す切欠き部を切込み線状に切り上げた切線又は細巾の切込み線部にして、前記分岐形下係止部を左右に開くと前記下顎部の左右に展着することができ、前記非切部と連携して下顎部中央近辺を囲み吊る状態で下顎部の規制を保持可能とするとともに、当該切込み線部を閉じた状態にすると従来の口呼吸防止帯と同様に下顎部中央近辺を含み展着して、下顎部規制効果を発揮する分岐形下係止部構造となる。
【0013】
さらに、第3の解決手段は、従来の帯状部材のつなぎ部20において比較的弱い係止保持力を有するつなぎ部の外側20を含め前記引張力が低下しにくい巾に到るまで係止保持力の強いつなぎ部の内側20aに近づき、つなぎ部を欠き取ることにより、頬部14へのつなぎ部の展着面積を少なくして、うっとうしさの軽減を実現できる。
【0014】
第4の解決手段は、第3の解決手段に第1又は第2の解決手段を合わせて構成することにより、それぞれの解決手段の効果を一枚の帯状部材に現して、口呼吸防止帯の効果を維持しながら、着用上の欠点を改善し、さらに快適さを実現する改良口呼吸防止帯とする。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明の改良口呼吸防止帯は、着用の際、下顎部中央近辺に存在するヒゲ、傷瘍等を避け係止でき、あるいは必要に応じて従来の口呼吸防止帯と同様な下顎部位への係止ができる。
【0016】
又、つなぎ部の外側を欠き取ることにより、係止保持力を損なう事無く着用時のうっとうしさを軽減でき、より着用対応能力を高めるとともに、着用抵抗感の少ない口呼吸防止帯を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の展着先となる顔面の係止部位を示す図
【図2】従来の実施形態を示す口呼吸防止帯の着用時側面図
【図3】本発明の実施形態を示す改良口呼吸防止帯の着用時側面図
【図4】同改良口呼吸防止帯の着用時正面図
【図5】同改良口呼吸防止帯の着用図
【図6】同改良口呼吸防止帯の正面図
【図7】同改良口呼吸防止帯の正面図
【図8】同改良口呼吸防止帯の正面図
【図9】従来の口呼吸防止帯又は本発明の実施形態を示す改良口呼吸防止帯着用図
【図10】本発明の実施形態を示す改良口呼吸防止帯の着用図
【図11】口呼吸を防止しにくいつなぎ部を有する実施例図
【図12】口呼吸を防止しにくいつなぎ部を有する実施例図
【図13】従来の実施形態を示す口呼吸防止帯の正面図
【発明を実施する為の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1、図3〜図12に基づいて説明する。
【0019】
図において、1は本発明の実施形態の展着先となる顔面の各部位を示し、11は比較的伸縮が少なく本発明の改良口呼吸防止帯の係止に好適な上頬部、12は下顎部、13は係止に適しにくい鼻下部、14は係止に適さない頬部、となる。
【0020】
3は本発明の実施形態の改良口呼吸防止帯であり、分岐下係止部17aが切り上げられた切欠き部18、あるいは切り欠き線部18aによって左右に別れて存在している。さらに切欠き部18、あるいは切り欠き線部18aとスリット15の間に非切部19を設けることによって分岐下係止部17aと連携し、下顎部12の中央近辺に存在するヒゲ20b、傷瘍等を避け得て下顎部を係止保持することができる。
【0021】
又、つなぎ部20を出来る限り細く形成する為、係止保持力の強いつなぎ部の内側20a近辺を残し、つなぎ部の外側20bを含み欠き取り、切欠き部20cの形状にして実施することにより、降下規制力の流れ22は下顎部12内で降下規制力点23として結び合い下顎部内に安定点として留まるため、つなぎ部20が持つ引張力を殆ど形成前と変わらず維持しながら、口21も閉じられ、頬部14への展着を最小限に留め着用時のうっとうしさを軽減することができる。
【0022】
さらに、例えばうっとうしさを軽減する為につなぎ部20において、つなぎ部の外側20b近辺を残し、つなぎ部の内側20aを含み欠き取り、切欠き部20dの形状にして実施すると、着用時、降下規制力の流れ22が係止保持力の弱いつなぎ部の外側20bを通るため、降下規制力点23は下顎部12外に移動してしまい、下顎部内に安定点として留まれず、さらにつなぎ部の外側20bでは口21の端側を通ってしまい、口は開口し易くなるので、この構造では口呼吸を防止することができない。
【0023】
以下、上記構成の作用を説明する。左右に分岐された分岐形下係止部17aは下顎部中央近辺に存在するヒゲ12b等係止に不適当な個所が有っても、切欠き部18によってこれ等を避け下顎部左右の展着可能な部位に係止することができる(図4、5、6参照)。
【0024】
又、下顎部12が出張っている場合等でもシワ12aが生ずる事無く鼻下部及び下顎部の左右に密着することができ、係止に伴い生ずる異常を避けることができる(図3参照)。
【0025】
さらに切欠き部18を設けることにより、非切部19は下顎部12が前方に出張っていても下顎部中央近辺の影響を受けず鼻下部13に密着係止することができるので、非切部から左右に伸びる分岐下系止部17aの下顎部12への係止と連携して下顎部の中央近辺を避けつつ取り囲み、抱え上げる状態で下顎部の降下を規制し、口呼吸を防止することができる。
【0026】
又、前記切欠き部18を切込み線状にした切線又は細巾の切込み線部18aにすると、着用時、分岐状下係止部17aはそのまま閉じた状態では下係止部17と類似する位置に留まっているが、それぞれ左右に開けば下顎部12の左右に展着係止でき、前記閉じた状態にして下係止部17と同様のしっかりした係止もできるので、各個人の都合に合わせた着用方法が選択可能となる。この構成による効果は、非切個所18bを設け、非切個所を引っ張ることにより、前記分岐状下係止部17aを閉じ易く成しても変わらない(図7、8、9参照)。
【0027】
さらなる構成では、つなぎ部20のうち、つなぎ部の内側20a近辺を残し他の部位を欠き取り、外側欠き取り部20cの如く形成すると、降下規制力の流れ22はそれぞれ下顎部12内で降下規制力点23に結合するので下顎部保持力は弱まらずに保て、しかも頬部14への展着面積が少なくなり着用時うっとうしさを軽減することができる。しかし同様にうっとうしさを軽減する目的でつなぎ部の内側20aを欠き取り、つなぎ部の外側20b近辺を残し内側欠き取り部20dの如く形成すると、降下規制力の流れ22は残された外側を通り降下規制力点23は下顎部12より外に移動してしまう為、下顎部保持力は弱まってしまい、又、つなぎ部20の位置も口21の端の方に移るのでつなぎ部が口を閉じる作用も弱まり、開口してしまう(図11、12参照)。
【0028】
又、前記切欠き部18あるいは切込み線部18aと上記つなぎ部の内側20a近辺のみ残した構造を同じ帯状部材2に構成することにより、最も着用に好適な改良口呼吸防止帯とする効果を発揮する(図4、5、10参照)。
以上のように、本実施形態によれば従来の口呼吸防止帯の欠点を補い、着用性能を改善する効果が得られるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 顔面
2 帯状部材
3 本発明の改良口呼吸防止帯
11 上頬部
12 下顎部
13 鼻下部
14 頬部
15 スリット
16 上係止部
17 下係止部
17a 分岐下係止部
17b ヒゲ
18 切欠き部
18a 切込み線部
18b 非切個所
19 非切部
20 つなぎ部
20a つなぎ部の内側
20b つなぎ部の外側
20c 外側欠き取り部
20d 内側欠き取り部
21 口
22 降下規制力の流れ
23 降下規制力点

【特許請求の範囲】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−245255(P2011−245255A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134488(P2010−134488)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(595069066)株式会社ケイ・フォー (1)