説明

改良型エアウェイ装置

【課題】 本発明の目的は、従来技術の問題のいくつか若しくは全てを克服する事又は軽減する事である。
【解決手段】 本発明は、人間若しくは動物に使用するためのエアウェイ装置に関する。このエアウェイ装置は、遠位端部と近位端部を持つエアウェイチューブと、口腔安定器とを有する。口腔安定器は、その遠位端部は患者の咽頭注入口に解剖学的に適合するように構成される咽頭カフで囲まれ、咽頭カフとエアウェイチューブの近位端部の間のエアウェイチューブに接して若しくはその周囲に位置する。また、口腔安定器は、患者の舌の前側面と入れ子状に重なるように構成される。口腔安定器の大きさ、形状、軟らかさや構造は、安定性を提供し使用時のエアウェイチューブの回転の或いは左右の動きを防ぐように構成されている。例えば、喉頭カフの表面は、Aスケールのショア硬度が0から40の物質から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の詳細な説明]
この発明は解剖学的に取り付けられる、簡易だが多用途な、改良型のエアウェイ装置に関する。この発明は、外科的処置の間、自発呼吸している患者への麻酔薬の投与に使用する装置に特に適用するが、それに限定されない。本発明は特に喉頭エアウェイ装置に関する。更に具体的には、本発明は、削減されたコストで使い捨て可能な喉頭エアウェイ装置、及びそのようなエアウェイ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麻酔後の覚醒中、集中治療下のある種の患者の離脱時、又は蘇生中における、自発呼吸下の麻酔をかけられた患者に対し、開けたハンズフリーな気道を提供するために、現在使用されている器具の例には、下記の物が挙げられる:
【0003】
a) 各種のフェイスマスク付きのゲデル(Guedel)型 エアウェイ
b) カフ付き経口咽頭チューブ
c) 喉頭マスク(LMA)、強化型LMA、挿管可能な喉頭マスク(Intubating LMA)、耳鼻咽喉科や歯科麻酔向けのアンタバン社(Intavent Ltd. )の改良型LMA
d) 気道管理器具
e) コンビチューブ
f) 自留鼻咽頭エアウェイ
g) カフ付き又はカフ無し気管内チューブ、R.A.E.気管内チューブ
h) 声門上口咽頭エアウェイ
i) 気管切開チューブ及び小型気管チューブ
j) 等々
【0004】
全ての上記した装置は、受け入れ難い身体的な変化の併発のみならず、一時的および/または恒久的な解剖学的/構造的損傷を含む、深刻で様々な程度の併存疾患を伴っている。そのような装置の使用の結果として、直接的または間接的に引き起こされた死亡の事例もまた、多数報告されてきた。
【0005】
恐らく、最も認められている改良型のデザインは、膨張可能な喉頭マスク装置であり、1988年以来、その改良版が麻酔ガスを管理するため使用されてきた。
【0006】
そのようなエアウェイ装置の発展の小史は、ヨーロピアン
ジャーナル オブ アナシジオロジー(European Journal of anaesthesiology)1991年追補版4、5から17ページ、A.I.J.ブレインによる再考に、記載されている。この再考の全文は、これより引用により開示され、この開示に不可欠な部分を形成することを目的としている。
【0007】
呼吸器が声門に通じる管としてみると、その目的は、低圧下で気管支器へガスを供給するための、この管と人工管との間を単純に接続することであり、二つの管を直接両端を接続するよう形成することは、論理的であるように思われる。フェイスマスクも確かに両端を繋ぐよう形成するが、間違った開口部のため、気管内チューブが正しい孔に接しても内腔へ貫通して挿入し過ぎると、その結果接合部は、その端ではなく、その中に成立してしまう。気管への挿管の望ましくない観点は、密封するために上皮表面へ圧力がかけられるため、その重要で非常に特殊な機能が危うくなる事、そして声帯に侵入することにより、有効に咳をすることが不可能になり、上気道の構造がゆがめられ、挿入前に必要な咽頭鏡検査によるだけでなく、気管内に気管内チューブが存在する事によっても、望まない反射反応が引き起こされる事である。そのような喉頭マスクは1988年以来麻酔診療に際して使用されてきた。そして直接的又は間接的にそれらの使用による、疾病と同じ状態、及び/又は死亡の報告が、数多く公表されてきた。過膨張したカフとの接触で、軟組織や軟骨構造への過膨張や管腔外圧力の影響によって、合併症及び/又は死亡が、引き起こされた。
【0008】
様々な試みが、このタイプのエアウェイ装置を改良するためになされたが、それらは未だ数多くの深刻で特有の欠点に悩まされている。まず最初に、これらのエアウェイ装置はカフが膨張することで有効になり、更にカフ内において空気が膨張して麻酔ガス(亜酸化窒素)がカフ内に拡散可能になる。従ってカフの管腔外圧力が著しく増加し、結果として、かなりの圧力が咽喉頭という敏感な器官にかかるのである。二番目に、麻酔装置に取り付けられたチューブの近位端部へ力が加わるにつれ、これらのマスクは左右に動いたり又はそれらの長手方向軸の周囲を回転する傾向がある。もしそのような装置が使用時に完全に左右対象の状態にあると、エアウェイチューブは患者の鼻と一直線に合わさることになるという事は、高く評価されるだろう。しかし、いかなるエアウェイチューブの回転の若しくは左右の動きでも、喉頭注入口の周りにエアウェイ装置が形成する封印(seal)に影響するという可能性がある。
【0009】
特許文献には、様々な種類のエアウェイ装置が記載されている。例えば、米国特許第5,976,072号(ジョーンズ・ホプキンス大学)は光ファイバーの気管内挿管装置を記載している。しかし、これは、上述した不利な点を被る、膨張可能な口腔咽頭カフに依存している。
【0010】
US特許第5,865,176号(オニール)及び英国特許第2,319,182号(ファウベーエム メディツィンテクニーク ゲーエムベーハー)は、二つの膨張可能なカフを配置したエアウェイ装置を記載している。第一の膨張可能なカフは患者の咽頭に封印を施すための物であり、第二の膨張可能なカフは患者の食道に封印を施すための物である。この配置は、上記したような組織の損傷という問題を悪化させる。
【0011】
対照的な配置においては、英国特許第2,373,188号(スミス グループ 社)が、挿入時にマスクが喉頭蓋を塞ぐのを防ぐように設計された、雫型の遮断板を備えた膨張可能な喉頭マスクを記載している。これは、このタイプのチューブ状の膨張可能なマスクの潜在的な弱点を、強調するだけである。
【0012】
最後に、WO00/61213号(ブレイン)において、膨張可能なカフを備えた使い捨て可能な喉頭マスクエアウェイ装置の記載がある。しかし、これは膨張可能なカフ器具の不利な点全てを被ってしまうだけでなく、製造コストとその複雑さを加える、多数の部品から形成されている。
【0013】
一括して、出願人が知っている最も近い先行技術はこれらにより示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,976,072号
【特許文献2】米国特許第5,865,176号
【特許文献3】英国特許第2,319,182号
【特許文献4】英国特許第2,373,188号
【特許文献5】WO00/61213号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、これらの問題のいくつか若しくは全てを克服する事又は軽減する事である。
【0016】
本発明の第一の側面は、下記のクレームに記載されるようなエアウェイ装置を提供する事である。
【0017】
すなわち、第一の実施形態によれば、遠位端部と近位端部を持つエアウェイチューブから成る、人間若しくは動物に使用する為の、エアウェイ装置が提供され、その遠位端部は、患者の喉頭注入口(laryngeal inlet)に解剖学的に適合するように構成される、喉頭カフ(laryngeal
cuff)により囲まれており、その装置は、喉頭カフとチューブの近位端部の間のエアウェイチューブに接して又はその周囲に位置する、口腔安定器を更に具備し、前記口腔安定器は患者の舌の前側面と入れ子状に重なるように構成されており、口腔安定器の大きさ、形状、柔らかさや構造は、安定性を提供し使用時のエアウェイチューブの回転の若しくは左右への動きを防ぐように、構成されていることを特徴とする。この口腔安定器はカフと同じ物質から、若しくは異なる物質から形成してもよく、使用時に装置の位置やその場所を維持するのを補助する。
【0018】
本発明によるエアウェイ装置は、以下の本文中で、発明者の名をとって、NLA(Nasir
Laryngeal Airway Device)という簡便な省略形で参照される。
【0019】
好ましくは、カフは、膨張可能ではなく、そして患者の喉頭の構造に解剖学的に適合するように構成された形状に予め形成されている。披裂喉頭蓋ひだ、披裂及び小角軟骨、披裂軟骨間のひだ、そして梨状陥凹は、喉頭の構造を解剖学的に不規則な構造にしている。喉頭注入口(laryngeal inlet)、喉頭構造(laryngeal framework)、及び喉頭構造(laryngeal structure)という用語は、以下において交換可能に使用される。これらの用語は、図1で図解されるように、患者の喉頭領域、周辺の組織、ひだ、及び軟骨に関連する。
【0020】
装置は、喉頭咽頭構造を映した形状(鏡像:ミラーイメージ)になっており、従って喉頭咽頭の不規則な構造的組織へ解剖学的に適応することができる。解剖学的に設計されたカップ/カフを組み込むこともまた、軟組織表面に与えられる圧力(22-26mm/Hg)を遥かに超えるばかりでなく、カフとの接触で構造がゆがむ、圧迫される、関節が外れる、取り除かれる、又は骨折させられるという、著しい管腔外圧力を及ぼす、膨張可能なカフの使用に対する利点を与える。丸く表面が滑らかで緊張したカフにより引き起こされる過度の圧力により周囲の構造が歪むという犠牲を払って得られる、十分な封印(seal)をつくり出すためのカフの繰り返される空気による膨張によるだけではなく、亜酸化窒素(麻酔ガス)のカフの内腔への吸収によるそのままの位置(in situ)での増加によっても、管腔外圧力は咽喉頭の構造に影響を及ぼす。これはカフの圧力を即座に100mmHgを超えるように増加させ、1時間以内の使用で200mmHgを超えるほど上昇する。これは通常の細胞内の圧力若しくは毛細管血が喉頭咽頭構造へ供給する圧力を遥かに超えるものである。
【0021】
喉頭カフは空気で予め形成されたり、予め膨張されていたり、若しくは適当な流体で予め充満されているのが、望ましい。
【0022】
望ましくは、患者の喉頭構造に解剖学的に適合するように構成された、喉頭カフの表面は、患者の喉頭構造である梨状陥凹や披裂喉頭ひだで良く密封するように設計された隆起を含む。喉頭カフの表面は、蓋谷、喉頭蓋、披裂喉頭蓋ひだ、梨状陥凹、そして甲状軟骨及び輪状軟骨の前面の周囲で良く密封するように設計された、隆起を組み込む事もまた、望ましい。これらの特徴の周辺の封印は、喉頭カフの一部又は全ての側面の周囲に位置する、一つ又はそれ以上の羽状のフランジによってもまた、強化または向上されるかもしれない。この設計は密封圧力が増加し、30cmを遥かに超えるH2Oが得られる事を可能にする。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、患者の喉頭注入口にぴったりと適合するように構成された、喉頭マスクの表面は、咽頭構造に分布している極めて重要な動脈、静脈、及び神経が通過できるように設計された、溝を組み込んでいる。
【0024】
特に望ましい実施形態において、喉頭カップの遠位先端は、使用時に上部食道括約筋の上位に留まるような大きさと形である。最も望ましくは、喉頭カップの遠位先端は、実質的に凹形である。
【0025】
別の実施形態において、水/粘液/血液若しくは同様の物体といった液体を吸収して、喉頭注入口の解剖学的な粘膜軟骨(mucocartilagenous)の構造と一致するように膨らむのに適する物質、例えばタンパックス(登録商標)又はコンプレストジェルフォーム5(Compressed Gel Foam5)製品に使用される、CRM(綿レーヨン混紡)のような物質で、喉頭カップ部分は予め形成されている。
【0026】
好ましくは、口腔安定器は、喉頭カフの開放面と実質的に同一の面にある第一の腹側面を持ち、口腔安定器の第一の面は実質的に凹形である。これは技師が患者に装置を挿入するのを、そして口腔安定器が患者の舌に接触するのを、補助する。
【0027】
好ましくは、口腔安定器は、カフと口腔安定器が一体の構造であるように、喉頭カフの近位端部からエアウェイチューブの近位端部まで伸びている。これは、魅力的で実用的なデザインを伴った、滑らかで素晴らしい装置を提供する。
【0028】
好ましくは、口腔安定器は、その幅Wにおいて不規則で、喉頭カフとエアウェイチューブの近位端部の中間地点に位置する幅の広い地点があり、そして更に好ましくは、口腔安定器の幅広の地点は、エアウェイチューブの近位端部よりも喉頭カフにより近い。
【0029】
口腔安定器の最も幅の広い地点での幅Wの、同じ地点における口腔安定器の高さHに対する、比率は2.7±10%であるのが、好ましい。
【0030】
効果的には、患者の舌と接触する口腔安定器の表面は、使用時に安定器と舌との抵抗を増すために、粗くなっていても良い。
【0031】
更なる別の実施形態において、口腔安定器は大きさが調節可能であり、例えば口腔安定器は一つのユニットから形成され、少なくともその一部は、エアウェイチューブに対してスライド可能に組み込まれている。
【0032】
特に好ましい実施形態において、口腔安定器はエアウェイチューブの重要な一部として形成され、更に好ましくは、口腔安定器、エアウェイチューブ、そして喉頭カフは全て一つの重要なユニットとして形成される。
【0033】
様々な部品、部分又は構成物のショア硬度は、本発明の重要な特徴である。例えば、喉頭カフは、好ましくはAスケールのショア硬度40以下、更に好ましくは0から20の間、最も好ましくは4から12の間の、物質から形成される。
【0034】
好ましくは、喉頭カフと口腔安定器の前側、腹側部分は、実質的に同じショア硬度の物質から形成される。これは構造を簡易にし、患者の軟組織と安定して接する装置の全ての部分が、比較的柔らかいことを裏付ける。
【0035】
更に好ましい実施形態において、装置の後ろ若しくは背面部分と装置の全面若しくは腹側部分は、異なったショア硬度の物質で形成される。これは背面部が腹側部よりも硬い物質で作られることを、可能にする。
【0036】
装置の後ろ若しくは背面部分は、好ましくはAスケールのショア硬度60未満、より好ましくは25から45、最も好ましくは30から40の、物質で形成される。
【0037】
これも当然のことではあるが、喉頭カフは膨張可能である。これが理想ではないが、それでも先行技術の膨張可能なマスク以上に著しい改善を示している。
【0038】
好ましくは、装置は更に、カフの縁から装置の近位端部まで伸びている、胃管通路を組み込んでいる。
【0039】
本発明の第二の側面は、提供されたエアウェイ装置の製造方法は、下記の工程を含む:
【0040】
(a) 装置の第一の部分と装置の第二の部分の鋳型を形成し、
(b) コネクター周囲に第一の部分を第二の部分へ結合する。
【0041】
これは、設計において典型的に複数の構成材から成る、先行技術の装置の製造方法を越えて、相当に簡略化されていることを示している。
【0042】
第一の部分は喉頭カフの面を組み込んでいる装置の、前側、腹側部分であり、第二部分は後側、背面部分であり、第一及び第二の部分は同じ若しくは異なったショア硬度の物質から形成されるのが、好ましい。
【0043】
本発明の第三の側面によれば、エアウェイチューブ、喉頭カフそして口腔安定器を有し、一体成形(ワンピース)のプラスチック成形物(moulding)として装置を形成することを有する、好ましくは、装置は射出成形の技術により形成される、エアウェイ装置の製造方法を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1AからCは、喉頭軟骨及び靱帯の様々な視野を図説している。この説明図は、トートラ, G.J.、グラボウスキ, G.、レイノルズ, S.著、解剖学と生理学の原理、ジョン ウィレイ、10版、2003年、781ページに由来し、その本文と説明図は引用によりここへ取り込まれた。
【図2】図2は、本発明の2つの実施形態を平面図において図説している。
【図3】図3は、本発明の2つの実施形態を平面図において図説している。
【図4】図4は、更なる2つの実施形態を、分解図で図説しており、二等分の状態のそれぞれのエアウェイ装置がそれらの間にエアウェイチューブを伴っているのを示している。
【図5】図5は、更なる2つの実施形態を、分解図で図説しており、二等分の状態のそれぞれのエアウェイ装置がそれらの間にエアウェイチューブを伴っているのを示している。
【図6】図6は、更なる2つの実施形態を、分解図で図説しており、二等分の状態のそれぞれのエアウェイ装置がそれらの間にエアウェイチューブを伴っているのを示している。
【図7】図7は、更なる2つの実施形態を、分解図で図説しており、二等分の状態のそれぞれのエアウェイ装置がそれらの間にエアウェイチューブを伴っているのを示している。
【図8】図8は、口から胃への管(orogastric tube)を通過させるために、マスクを通るNLAチューブの遠位の開口をNLAチューブの後面に作るための、NLAの近位端部側面に始まり遠位端部へ彎曲している、第二の通路若しくはトンネルという任意の特徴を示している。
【図9】図9は予想された若しくは予期しない困難な挿入時に、ブージー、クックのエアウェイ又はファイバースコープを伴って又は伴わずに使用される、気管内チューブに適応させるための、実質的にマスクの長さにそった長手方向の細長い穴を示している。
【図10】図10.1から10.6は本発明の更なる実施形態の様々な平面図、側面図、横断面図を示している。
【図11】図11は、口腔安定期の大きさが調節可能である、本発明による更なる実施形態の正面図を示している。
【図12】図12は、口腔安定期の大きさが調節可能である、本発明による更なる実施形態の正面図を示している。
【図13】図13は、口腔安定期の大きさが調節可能である、本発明による更なる実施形態の側面図を示している。
【図14】図14は喉頭注入口を覆って使用されている、本発明によるエアウェイ装置を図式的に示している。
【図15】図15はエアウェイ装置の多数の透視図、横断面図、分解図を図示し、エアウェイチューブ自体が装置の主体であることを誇らし気に存在しても差し支えないことを示している。
【図16】図16AからFは、本発明の更なる好ましい実施形態の、正面図、背面図、側面図そして立面図を示している。
【図17】図17A、B、Cは、喉頭カフの周辺部分の薄い柔軟性のあるフランジと合体した、特に好ましい実施形態の、正面図及び側面図を示している。
【図18】図18は、人間の患者のそのままの状態(原位置)における、本発明による装置の様々な図表的横断面図や等角図を示している。
【図19】図19は、人間の患者のそのままの状態(原位置)における、本発明による装置の様々な図表的横断面図や等角図を示している。
【図20】図20は、人間の患者のそのままの状態(原位置)における、本発明による装置の様々な図表的横断面図や等角図を示している。
【図21】図21は図20で示されたY-Y線に沿った断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明の実施形態を、単なる例を用いて説明する。これらの例は、出願人が現在知っている、実行に移すのに最も良い方法を表しているが、それらは達成することができる唯一の方法というわけではない。
【0046】
図2に関して、これは、通常10で示される、本発明の第一の実施形態によるマスク装置の遠位端部を図示している。
【0047】
これはエアウェイチューブ11から成り、その近位端部12(図示せず)において、従来型の麻酔呼吸システムへの接続に適した、15mmまたはその他のコネクターで終端処理されている。エアウェイチュ−ブの遠位端部13の周辺には、患者の喉頭注入部位に対応するように形や凹凸を適合させた、喉頭カフまたはカップ14が形成されている。カフとカップと言う用語は、同様な意味を持っている。それらはエアウェイチュ−ブの遠位端部の装置の要素について言及しており、患者の喉頭注入口を保護し密封するように構成されている。近位のという用語は、麻酔呼吸システムとの接合部に最も近い装置の端部、もしくはその部分を意味している。”遠位の”という用語は、麻酔呼吸システムから最も離れた装置の端部、若しくはその部分を意味している。
【0048】
喉頭カフは、一般に、専門家によく知られており、人間の喉頭注入口の解剖学的構造はある程度詳細に図1A、B、Cに示されている。図2の特殊なカフは、梨状陥凹と披裂喉頭蓋ひだでよく密閉するように設計された、顕著なカフの表面や明確な隆起若しくは突起15,16を組み込んでいる。15,16におけるカフの外側への隆起は、梨状陥凹や披裂喉頭蓋ひだに適合することにより解剖学的に封印する為に、前外側に(antero-laterally)位置しているということは、評価されるだろう。従って、側面図において、カフの表面は、平らで平面的ではなく、カフの表面の一般的な面を越えて突き出している部位を含んでいる。加えて、カフの表面の一般的な面の下にある部位が、任意で含まれていても良い。開口17の周辺のカフ表面の、これらの成形や一般的な大きさ、形、構造は本発明の一つの重要な特徴である。カフの表面としてのその他の形は、図3,図5,図10,図11,図12,図16,及び図17に示され、下記に更なる詳細について記載する。
【0049】
装置は物質の専門家が選んだような、適当なプラスチック材料から構成されることができる。ラテックスフリーの医療レベルのシリコンゴムは一つの好ましい材料である。カフは、周囲の組織への過度の損傷を避けるため、生地が柔軟でなければならない。その他のこの種類の装置を構成するのに適当な物質は、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン系ブロック共重合体(例えばスチレン ブタジエン スチレン(SBS)、スチレン
エチレン ブチレン スチレン(SEBS)等)や熱可塑性オレフィン混合物(TPO)のような熱可塑性エラストマ−、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、共重合ポリエステル(COPE)、ポリエステルブロックアミド(PEBAS)や、必要に応じてそれらの発泡体が含まれるが、それらに限定されない。
【0050】
適切な材料の選択における更なる重要な要素は、透明性である。理想的には、構成の材料もしくは諸材料は、実質的に澄んでいる若しくは透明でなければならない。これにより、麻酔医若しくは操作者が、閉塞やその他の問題をチェックするために、エアウェイの内腔を見ることができる。そのような透明な材料は、物質の専門家に知られている。
【0051】
一つの好ましい実施形態において、カフは膨張可能ではなく、適当な軟プラスチック材料から形成される。好ましい軟らかさ(硬さ)の一例として、ショア硬度Aスケールにおいて、喉頭注入口に接するカフの表面の硬度は40以下が最適である。好ましい範囲の一例は、同じスケ−ルにおける値が0から20の間が好ましく、4から12の範囲が特に好ましい。カフの軟らかさは、カフ自体の本体内に空洞や通路を形成することにより、より一層構成されることができる(図4と図5参照)。
【0052】
更なる好ましい実施形態として、カフは空気又は有毒ではないその他の気体、若しくは有毒ではない液体等の流動体を、予め充填されていても良い。この文脈において、流動体という用語は広い意味を持ち、適当な気体、液体、蒸気又はそれらの合成物を含み、
物質の専門家と協力して解剖学/麻酔の分野における専門家により決定され指定される。カフは、管腔外圧力が一定に保たれるように、亜酸化窒素(麻酔ガス)がその物質を通じて拡散し、深刻な量にならないような物質から構成される。従って、カフは、充填された流動体と麻酔ガスに対して、実質的に不浸透性を有しなければならない。
【0053】
又は、カフは、柔らかく発砲した物質から形成されるか、若しくは泡が充填されてもよい。どちらの場合においても、これにより、喉頭注入口部位の生体構造と合うように、カフの表面は、柔らかく変型可能であるが特定形状を取りうることとなる。そのような泡が充填された装置は、実質的に完全に密封し続けるにもかかわらず、その部位における構造への潜在的な損傷を最小限に抑える。
【0054】
喉頭カフ/カップに直接隣接し、しかしカフ自体の近位の側のエアウェイチューブに取り付けられているのは、口腔安定器20である。この実施例においてこの安定器は、エアウェイチューブの両側に左右対称に伸びている拡張した部位の形をしている。この安定器は舌の前面若しくは前部に置かれるように構成され、患者のその部分の生体構造と合うように形成されている。
【0055】
この安定器は多種多様な形状、大きさそして設置が可能である。図2に示されたものは、図2で見える面はやや凹形で後部の面はやや凸形であるように、カフの表面の面において曲がっている。舌との抵抗を増し、そのため器具が安定するように、そして使用時に前後の動きを避けたり減らすために、安定器の表面は粗かったり、刻み目が入ったり、鋸歯状であってもよい。
【0056】
この実施例では、安定器はカフと完全に一体に形成され、一方が円滑に他方に続くようになっている。しかし、これは必要不可欠なものではなく、安定器はエアウェイチューブ上の別々のユニットであっても良い。安定器の重要な特徴は、エアウェイチューブ自体の直径よりも横断面における方が広いことである。すなわち、それはエアウェイチューブの両側の部位に、そして喉頭カフと大体同じ面に、延長している。口腔安定器の好ましい寸法は下記に記載される。
【0057】
異なるデザインの口腔安定器の更なる実施形態は、図11、図12、図13に図示されている。この実施例において安定器50は調節可能で、エアウェイチューブの近位端部の近くの外側面に2つのサイドフック51、52があり、それらは十分な安定性の為、そしてNLAの簡単な挿入と除去のためにフランジの大きさを増減するように、上下にスライドさせることができる。フックは、エアウェイチューブの反対側に形成されたラチェットストラップ(ratchet strips)53、54と連動している。安定器は弾性的に変型可能で柔軟な物質で形成されているので、フックは図11で示される位置から図12で図示されるようにチューブの遠位端部にあるカフへより近い位置へと押しやられ、エアウェイチューブの両側にある安定器が更に拡大してフックがカフの方へ移動すると、その結果安定器が更に拡大することになる。従って安定器がエアウェイチューブの近位端部から、コネクターの直ぐ下の喉頭カフの近位端部へ伸びる。安定器は実質的に左右対称形であり、口腔を横切って拡張した形になるように滑り落ちることができる。図13は、この実施形態の斜側面を示している。
【0058】
これは、安定器を形成するのに使用され得る多くの方法の内のほんの一例である。安定器は、舌の前面部に位置し得るエアウェイチューブの内壁周囲の、好ましくは柔らかい拡張部からであるが、どのような拡張部からでも、形成することができる。エアウェイチューブの長手軸に沿って本体が主に位置している、適切な形状をした横方向に伸びているフランジにより、この目的を果たすことができる。フランジは固形である必要はなく、従って管状、網状、もしくはその他の孔の空いた構造でも、申し分なく認められるだろう。安定器は好ましくは凹状の表面又は部位を持っており、図11に示される方向から、言い換えればカフの表面への法線の方向から見ると、それは患者の舌の前面部と実質的に適合している。
【0059】
カフの丁度上部の適当な部位において、エアウェイチューブの側面を拡大させることにより、そのような”フランジ”を形成することもまた可能である。すなわち、口腔安定器は、エアウェイチューブ自体に若しくはその周りに形成される別の部品であるよりも、むしろエアウェイチューブの重要な一部であるかも知れない。従って、エアウェイチューブの全体的な側面における適切な拡大は、形成されるのがチューブ自体によるものであろうと、チューブの周りに材料を追加して構成するものであろうと、安定器として作用することが可能である。
【0060】
口腔安定器の全体的な側面と、それがカフ部位へと滑らかに一体化する様子は、図15、図16A、及び図16Bからより詳細に見ることができ、以下その詳細を記載する。しかし、エアウェイチューブの内径又は側面が口腔安定器の幅に伴い相応して増減すると、重量とプラスチック材料の両方が節約されることは、評価に値するだろう。”内側面”(internal profile)という用語が使用されるのは、エアウェイチューブが拡大するにつれて、それは非円形になり、それよりむしろ実質的には楕円形となるからである。従って、この実施形態においてエアウェイチューブの横断面部位は、口腔安定器の幅がその最も広い地点まで増えるにつれて増加し、そしてまた減少するということは評価されるであろう。エアウェイチューブの幅を最大にすることにより、これは装置内において層流を増加させる可能性を持っている。
【0061】
図11に示されるエアウェイチューブの更なる特徴は、カフの表面の2組の突起若しくは隆起56、57と58、59である。2組の内の大きい方56、57は、披裂喉頭蓋ひだの周りと梨状陥凹にあるように構成されている。2組の内の小さい方58、59は、甲状軟骨及び輪状軟骨の周囲に適合するように構成されている。加えて、カフ55の先端は柔らかく、先細の縁であるが、膨張していないものが好ましい。
【0062】
更なる実施例は、図3に図示されている。これは、カフ34と口腔安定器40を備えたエアウェイ装置30を図示している。この場合において、カフの両側面に2つの外側への膨隆若しくは突起35、36、38、39がある。上部の組38、39は、各側面に一つの突起から成っており、披裂喉頭蓋ひだの周りと梨状陥凹に位置するように設計されている。下方の組35、36は、甲状軟骨及び輪状軟骨の周りに位置するように設計されている。これらの突起の相対的な大きさは、適当な専門家によって決定されるであろう。恐らく突起38、39は披裂喉頭蓋ひだの周りと梨状陥凹に適合するように設計されているので、2つのより下方の突起よりも幾分大きいであろう。カフの遠位/下方端部は柔らかいがしっかりしており、装置の挿入が容易なように、予め膨らんだり予め充填されていたりしないのが好ましく、喉頭と食道の間に位置するように構成されている。更なる違いは図4から7において示され、それらはこの一般的な設計概念においてなし得る柔軟性を示している。図6と図7はユニットの近位端部の付加的な型60を含む可能性を図示している。
【0063】
図5は、本発明の装置を製造するための一つの実現可能な方法を図示するものである。装置は、先に説明したように適当な材料から二つの部分81、82の状態で製造される。二つの部分はエアウェイチューブ83(明確にするため図示せず)の周りに一緒に結合されている。エアウェイチューブは特別に設計された通路84に収まっている。この実施形態において口腔安定器90はカフ94と完全に一体化して成形されている。装置の先端は、一連の若しくは複数個の空洞91、92、93を含んでいる。この文脈において、複数個とは一つ若しくはそれ以上を意味している。これらの空洞は先端の柔軟性を増し、使用時の装置の挿入や位置決めを補助する。またこれらの空洞は、先端の軟らかさや柔軟性に影響し、それらが存在することにより、先端が固形のプラスチック材料から形成された場合よりも柔らかくなる。一般的に、材料が柔らかくなればなる程、患者の組織へ損傷を与える可能性が低下する。装置の通常凹形の性質はまた、図4と図5からも明らかである。
【0064】
これらの図から明らかな、こうした実施形態における更なる特徴は、装置の遠位先端部
は徐々に細くなって緩やかな先端であることである。これは先細の先端は喉頭と食道の注入口の間に位置するか又は押し込まれるように意図されている。
【0065】
本発明によるエアウェイ装置の一つの工法の理解は、図4から図7により包括的になされ得る。基本的に、図7の装置は2つのパーツ61、62に型64を加えて形成され、それは麻酔呼吸システムへ装置を接続するための15ミリまたはその他のコネクターを含んでいる。61は腹部若しくは前部の型であり、患者の喉頭注入口と舌に接触している部分である。62は背部若しくは後部の型であり、腹部から見て外側を向いている側である。腹部や背部のこれらの定義はこの明細書全体を通して使用される。
【0066】
任意で装置は別のエアウェイチューブ63を含んでいてもよく、それは型62と61の内部本体中にそれぞれ形成される通路66、67の中に入れ子状になっている。しかし、特に好ましい実施形態においては、この別のチューブ63は省略されている。この例においてチューブ63と型62、61はシリコンゴムで、型64、68はポリプロピレンで形成されている。二つのポリプロピレンの型の内の大きい方68は、装置がある地点を越えて患者の口へ到達するのを防ぐように設計されている。
【0067】
エアウェイチューブは、チューブが円形でない場合には、いかなる適当な直径でも、横断面であっても、良い。典型的には、9ミリのチューブが大人の場合のエアウェイ装置において使用されるであろう。
【0068】
型61、62は、組み立ての間、一緒に結合、接着、溶接(熱溶接やレーザー溶接を含むが、それに限定されない)又はその他の方法で固定される。この簡単で、素晴らしい、費用効率の高い製造方法から判断すると、二つの部品61、62は異なった硬さの物質から形成され得るということになる。従って、喉頭カフを含む61の前部分は背部よりも柔らかい物質から形成され得る。前部分61の標準的にAスケールのショア硬度は0から20の間であり、より好ましくは0から15、そしてより好ましくは4から12である。
【0069】
後部分62の標準的なショア硬度の値は20から60、より好ましくは30から40である。
【0070】
一本若しくは複数の通路70を、ユニット本体内部にエアウェイチューブと平行して組み込むことは、可能である。この一例は図8に図示されている。この通路は、装置を動かしたり妨げたりする必要なしに、他のチューブや線が使用中に食道を下行することを可能にする。例えば、口腔から胃への挿入が今や可能となったのである。
【0071】
図9に示される別の改良型において、エアウェイは、通路の実質的に全長に亘って伸びている縦軸方向の細長い孔を組み込んでいる。これは他のチューブや線(ブジー、スタイレット等等)が、予期された若しくは予想外の困難な挿入に際し、使用時にマスクを妨げる必要なしに挿入又は除去されることを可能にしている。更に、この細長い孔の配置はエアウェイ装置がチューブ若しくは線から解放され得ること、チューブ若しくは線はそのままの場所においたまま、装置が患者から取り外され得ること、を意味している。
【0072】
図10は本発明の更なる実施形態を示し、また、長手方向に沿った装置の概ね曲線の形状をも示している。この形状は麻酔をかけられた患者の口若しくはのどの開口部と対応するように設計されている。長手軸は、図10.4において真直ぐな点線として示され、エアウェイチューブの近位端部からカフの遠位先端迄通っている、軸線である。
【0073】
口腔安定器の一つの好ましい実施形態の一般的な形状は、図10.3で示されている。安定器は、通常100として示されるが、エアウェイチューブ101の周りに形成されている。しかし、上記したように、別のチューブは必要ではなく、安定器本体内部に形成された経路から、チューブ状の通路が形成されうる。安定器の部分は、概ね楕円形の横断面をしているチューブ101の両側にある102、103を拡大する。図10.1、図10.5、図16、及び図17から分かるように、口腔安定器の幅は一律ではなくその長さに沿って変化する。このことは、横断面において概ね一律である同様な先行技術の装置のエアウェイチューブと、対照的である。この文脈における幅とは、装置の長手方向軸への法線の方向における、そしてカフの開放面と実質的に平行な面における、端から端の寸法である。安定器は装置の近位端部で最も狭く、それから最も幅の広い地点へと幅が増大し、そして喉頭カフの近位側と合体するまで再び幅が減少する。従って安定器の最も広い部分はエアウェイチューブの近位端部と喉頭マスクの近位端部の間である。一般的に、図16A、及び図16Bに示されるように、最も広い部分がチューブの近位端部よりも喉頭マスクの端部の方に近ければ、概して有利である。これは使用時に、患者の舌の前面部位へ最も近い、最も広い部分に位置する。
【0074】
重要なことには、安定器の高さHは同じやり方では変化しない。むしろ高さは安定器の長手軸に沿って実質的に同じままである。これは従来のエアウェイチューブとは全く異なっている。
【0075】
最も広い地点における楕円の幅Wは、同じ地点における高さHよりも大きいことは、前述より明らかになろう。実施例として、本発明による成人向けエアウェイ装置に関して、安定器の幅Wは、その最も広い地点において、3.5cmから4.5cmの範囲にあり、高さHは1.25cmから1.75cmの範囲にある。好ましいWとHの比率は、2.7±10%である。
【0076】
この安定器の形状の重要な特徴は、上部外側面104と下部外側面105の輪郭である。これらは両方ともに凸状であり、それらの最も広い部位へなだらかに彎曲している。これは使用が容易になるだけでなく、より重要なことには、使用時に舌と接触する下部表面105が、患者の舌の背面の形状に従って半面像に作られ、舌に適合するように変型するのに十分な位に柔らかいことである。
【0077】
さらなる実施形態は図15に図示されている。この実施形態においてエアウェイチューブ類111は、エアウェイ装置110の本体内部に部分的にしか含まれていない。チューブの遠位端部は、カフ113内に開口を形成するために、装置本体に到達し完全に貫通する。この実施形態において、異なった外形の安定器が図示されている。この場合は、上部表面は概ね凸形で、使用時に舌と接触する下部表面115の形状はなだらかな凹形である。
【0078】
一度一緒に接合されると、装置は事実上一体構造のものとなる。すなわち、構成は一つのようになる。これは、装置が再利用可能な場合の殺菌を簡易にし、信頼性を増加させる。
【0079】
しかし、単一の構造は本質的なものではない。例えば、必要に応じてエアウェイチューブの上に、その周囲に、若しくはそれに装着された、口腔安定器を別々の部品(図示せず)として形成することも可能かもしれない。このデザインは麻酔医に、要望通りに安定器有りで若しくは無しで装置を使用するという、選択の自由を与える。安定器をカフ又はチューブのどちらかに固定するための固定手段の内の、幾つかの形態を盛り込むことが必要であろう。プラスチック部品の取り付けや固定の手段は、スナップ式コネクターのように、良く知られている。
【0080】
この選択の自由は、安定器のデザインの選択肢を増加させる。エアウェイチューブに一方若しくは両方の端部を固定させる、リーフスプリングというやり方が採用され得る。あるいは、膨張可能な構造が用いられても良い。膨張可能なカフがこの文脈において使用されていたのが、思い出されるであろう。しかし、このタイプの技術は、このタイプの装置へ口腔安定器を組み込むのに、今迄に使用されたことはなかった。
【0081】
2つの更なる実施形態が図16と図17に図示されている。これらは発明のこれらの実施形態である、流線形の、一体構造を図示しており、カフの部位121が円滑に口腔安定器部位122と合体している。これらの図には、ある主の他の重要な特徴が示されている。例えば、エアウェイチューブを喉頭カフに挿入する場合に、3つの別々の開口123、124、125を通して行う。これはエアウェイチューブが詰まる機会を大いに減少させる。カフ又はカップの近位端部と連結している、安定器の遠位端部の形状は、装置が自然位である時に、蓋谷の中や周囲に解剖学的に正しく適合するようなやり方で、設計されている。
【0082】
カフ126の遠位先端は切り詰められており、実際には今は凹形である。これは、喉頭構造に分布している甲状軟骨、輪状軟骨、血管、そして神経に対して、先行技術装置の場合よりも低い圧縮圧力が加えられる という結果となる。このいわゆる凹状のチップは、様々の異なった形状や外観を取ることができる。チップは、チップの先端が実質的に平面になるように、”四角に”しても良い。若しくは図16Aに示されるように、チップにはっきりとしたくぼみがあっても良い。そのくぼみの底には、下記に記載される胃管通路の先端を形成している開口がある。要約すれば、この切断はどんなチップをも含むことを目的としており、先行技術の装置を使用するよりも、加えられる圧縮圧力が低いという結果となる。
【0083】
二つ目の、胃管通路は、エアウェイチューブとは別に設けられ、コネクター128近くで、装置の近位端部にある開口127からカフ129の遠位先端にある開口まで達しており、それらは図16Eにより明瞭に示されている。胃管は、使用中に受動的な逆流が起きた場合には、どんな胃の吸引でも検出されることを可能にする。それはまた小口径の胃管(例えばフレカチューブ等)を挿入するための通路も提供する。
【0084】
本発明の更なる新規な特徴は、縁又はフランジ130がカフ部位の近位端部に位置することである。この縁は喉頭蓋と解剖学的に反対に位置し、適切な封印を施し、そして気流の閉塞を回避している喉頭注入口へ喉頭蓋が折り畳まれるのを制御するような、大きさと形状である。このチップは葉状構造の形をしており、喉頭カフから伸び、エアウェイチューブの近位端部に向かって戻るように方向付けられている。その相対的な大きさと形状は、図16から見ることができる。最適な大きさと形状は、実験により決定されるであろう。出願人にはこの特徴を含む先行技術のマスクは知られていない。
【0085】
図17も構造と喉頭カフの新規な特徴を図示している。第一にカフを見てみると、この実施形態において、薄く柔軟性のある羽のようなフランジ140と141が、カフの相対する側面に取り入れられている。これらは好ましくはカフの型の不可欠な部分として形成され、カフを形成するのに使用される材料がとても柔らかい性質であるために、これらのフランジは特に柔らかくしなやかである。これらの目的は、喉頭注入口の形状における個別の患者の差異を考慮すること、カフと喉頭構造の間に効率的かつ効果的な密封を形成することである。この設計によって、そして解剖学的にぴったり合うようにカフを設計することにより、臨床試験により得られる密封圧力は、30cmのH2Oを遥かに超えるものであった。
【0086】
羽のようなフランジ140と141は、不連続の構造として図17に示されているが、これらは実際にはカフの遠位端部へ向けて互いに接続できる(図17C及びD)。この配置においてフランジ140と141は、喉頭カフの周囲のほぼ大半に広がる単一のU字形のフランジとなる。
【0087】
また図17において2部品の構成形式も示されている。2つの部品とは、その外側表面は通常凸状である上部の彎曲した部品145と、その外側表面は通常凹型であり、使用時に患者の喉頭注入口と接触する喉頭カフの表面を含む下部の彎曲した部品146である。これらの2つの部分の中で、近位端部147から遠位もしくはカフの端部149へ伸びるエアウェイチューブ通路と、上述の第2の通路が、形成される。
【0088】
それから上部及び下部の部品は、物質の専門家により選択される接着若しくは溶接の技術を使用して、コネクター150の周囲に結合される。
【0089】
上部の部品145と下部の部品は、異なるショア硬度を持つ部品から有利に形成することができる。従って、上部の部品はAスケール30から40の範囲内のショア硬度を持つ物質から形成され、一方下部の部品は、同じスケールで4から12の範囲内の硬度を持つ、より柔らかい物質から形成される。
【0090】
必要に応じて、カフの領域は、装置のその他の部分とは、異なる物質で異なる硬度のものから形成される。この配置は図17Cに示され、それにおいて装置は2つよりも3つの部品135、136、137で形成されている。
【0091】
しかし、素晴らしく、単純な設計のエアウェイ装置は、より単純な製造方法をも可能にする。装置は一つの型において1つの部品の単一構造として成形できる事が、見い出された。型を適切に作成することにより、そしてどのようにして型の部品を分離させるかを注意深く考慮することにより、1つの部品での製造が可能になる。成形は、材料を別々に注入して構成材の関連部分を形成する、2ショット射出成形として広く知られている方法を使用して、製造しても良い。あるいは、もし全ての若しくは一部の腹部又は背部の区域において、異なるショア硬度の物質で望ましく被覆するのであれば、構成材は、完全に単一射出方法を使用して同じ硬度の材料から形成することも可能である。そのようなオーバーレイまたはラミネート成形の技術は、当業者には良く知られている。
【0092】
では次に喉頭カフの設計を見てみると、前述した実施例において、カフの領域は柔らかい材料から予め成型されている、若しくは製造中に液体が予め充填されている。後者の場合において、使用時にカフ内部の圧力が上昇しないように、カフの中身は、亜酸化窒素のような、麻酔ガスを吸収しない材料から作られるべきである。
【0093】
どんな別の実施形態においても、カフは、水や粘液又は血液若しくは同様の液状の物質のような液体を吸収するのに、そして患者の喉頭注入口の粘膜軟骨構造に解剖学的に適合するように、その間に大きさが増大するのに、適している物質から形成されても良い。そのような物質は物質の専門家が選択するが、タンパックス(登録商標)のタンポン又はコンプレストジェルフォーム5(compressed Gel Form 5)に使用されるような、CRM(綿ナイロン混紡)を含む。
【0094】
更なる、別の実施形態において、カフは従来の膨張可能なカフの形態を採ることもできる。これは、膨張可能なカフの特有の弱点のために理想的ではない一方で、上記した柔らかい材料から形成される上記したタイプの口腔安定器を、膨張可能な喉頭マスクエアウェイ装置に組み込むことは、先行技術の膨張可能なマスク以上に、重要な改良を示している。
【0095】
要約すれば、本発明の目的と目標は、自発的に呼吸している麻酔をかけられた患者若しくは麻酔からの覚醒中の患者、離脱過程中や蘇生中のある種の集中治療下の患者に使用されることを目的とする、解剖学的に適合する、多目的な、信頼できる、簡単で費用効率の高い装置を提供すること、酸素及び/又は麻酔ガスを供給するための安全で、開けたハンズフリーなエアウェイを提供することである。
【0096】
主要な目的と目標は下記の通りである;
【0097】
・自発呼吸をしている麻酔をかけられた患者や、麻酔後の覚醒期にある患者、若しくは人工呼吸器を外される途中のある種の集中治療の患者に、開けたエアウェイを設置するために、現存するエアウェイ装置の利点を全て持ち、解剖学的に適合する操作構造を持つ、簡易化された設計を提供すること。
【0098】
・麻酔診療において現在使用されているエアウェイ装置の、ほとんど全ての弱点と合併症を避ける。
【0099】
・喉頭鏡検査法、挿管又は抜管が不要で、咽頭喉頭へ低侵襲であること。
【0100】
・ユーザーフレンドリーで、麻酔医、他の医者、看護士、救急医療師そして装置を使用しそうな他の医療スタッフに最小限のトレーニングしか要求されないこと。

・予期しない又は/及び予想された困難な気管内挿管の取り扱いにおいて有用な道具であること。エアウェイを通じての気管内チューブによるものでも、計画的な光ファイバー挿管若しくは気管支鏡検査法によるものでも、有用であること。
【0101】
・ほとんどテープや固定物を必要としない自留であること。
【0102】
要約すると、装置は、コネクター、拡大した舌と咽頭のフランジ、そして喉頭注入口の正確な凹凸と形状に合う、予め形成され、予め膨張若しくは充満された、解剖学的に設計されたカップまたはカフを備えている。しかし、この発明が従来の膨張可能なカフを伴って使用することを妨げるように、これが見られてはならない。
【0103】
・コネクター
麻酔状態、麻酔後の覚醒中、集中治療や蘇生診療において使用される、どんなガス供給システムとも接続するのに適している、15mmのISO国際標準規格のコネクター。
【0104】
・拡大した舌と咽頭のまたは口腔のフランジ
【0105】
全ての現存のエアウェイ挿管装置は、口と直角若しくは平行に側性化したり、長手軸の周りを180度回転したり、エアウェイの内側又は外側へ動いたりするような、様々な程度の傾向があり、それらはエアウェイの遠位端部の位置ずれや誤留置につながる可能性があり、従ってその使用の目的にとっては効果が無くなってしまう。装置の拡大したフランジと、Aスケールのショア硬度が60以下の物質から装置を構成することを組み合わせることにより、口腔安定器が口腔を横切り舌の前側表面を覆って伸びることで、中間の位置でエアウェイ装置の錨の役割を果たすことを可能にし、内部表面によって側面に沿って支えられて、舌を覆うエアウェイをより良く固定するようにしている。従って、エアウェイ装置を中心に位置するように固定するだけでなく、それが側面に動くこと及び/又は回転することを止めている。狭い下咽頭へ更なる支えを提供するために、遠位に拡大したフランジは、装置のチューブ状の部分の後下面と共に、喉頭カップのへん平で骨張った部分に組み込まれる。
【0106】
・解剖学的に順応した喉頭カップ
柔らかいゴムの、又は予め形成され、適当な液体若しくは柔らかい物質で予め膨らませた又は充填したカップは、22mmHg以上の管腔外圧力を喉頭注入口や隣接臓器の粘膜に与えないことを目標としたので、連続した途切れのない周辺組織の毛細血管を通る血流を確保して、咽頭喉頭の粘膜への圧迫や剪断力を避け、従ってそれと接触する構造物へ血液が途切れなく供給されることを確保する。解剖学的に適合する喉頭カップは、それと接触している構造物を変形させることなく、喉頭注入口を密封しながら囲んでいる。
【0107】
側面に沿ったカップ又はカフの膨隆は、披裂喉頭蓋ひだと下外側の梨状陥凹のくぼみの周りに適応するように設計されている。中線の披裂軟骨間のひだ、楔状軟骨そして小角軟骨の全体を覆ってそれらを超えて密封を施す、口から咽頭を通る通路を容易にするために、先細の下方端部がある。上部の中線の隙間は、喉頭蓋が穴へ、又は装置の遠位開口部がカップへ、損傷を与える又は、折れ曲がる、そしてねじれることなく、喉頭蓋の上へカップが通過するのを補助する。隙間の上部に、柔らかいカップの平らな部分があり、それは喉頭蓋と舌の元の間にある下咽頭に最適に配置されるように設計されており、従って周囲の構造物を声門から離して隔てている。カップがほとんど自然で解剖学的に密封を施していてもまだ、逆流した胃内容物の吸引を防ぐことを、保証することはできない。そのような危険は、危険度が高い患者に、食道構成要素を伴った改良型の装置を使用することにより、最小化する可能性がある。
【0108】
大きさ:−0から7の大きさが想定される。
1から2は新生児及び乳児用(体重3−20kg)
3は小児用 (体重21−50kg)
4から5は青年用 (体重51−90kg)
6から7は大人用 (体重90kg以上)
【0109】
再利用可能又は使い捨て可能な装置は、上記したラテックスフリーのSEBS(スチレン エチレン ブチレン スチレン)又は医療レベルのシリコンゴムのような材料から好んで形成されても構わない。再利用可能な(殺菌可能な)装置は少なくとも40回の使用が可能であろう。設計が単純なことはまた、その再使用という目的の為に、殺菌をより一層簡単にもしている。使い捨て可能な装置は製造の好ましい選択肢であろうし、それは一層経済的であるだけでなく、使い捨て可能な装置にあり得る交差感染の危険も全くない。
【0110】
上記した設計の特徴の結果として、本発明による装置は、比較され得るどんな装置よりも遥かにコストが安く済みそうである。
【0111】
・食道構成要素を伴ったNLA
食道構成要素の追加は、麻酔をかけられている胃スタティス(gastric statis)の疑いのある患者に、集中治療室に、そしてエアウェイに特に過敏で人工呼吸器を外す際の良く知られ広く広まっている問題を起こす患者に、使用することを目的としている。そのような患者はほぼ確実に、取り外しが容易なように上部の過敏なエアウェイにバイパスをつけるための、器官開口術で終わるのである。慢性の閉塞性/拘束性気道疾患のある患者、喘息患者、そしてヘビースモーカーは、取り外しの際の問題を起こす可能性が高い患者である。
【0112】
・挿管可能なNLA
予期していた又は/及び予想していなかった困難な挿管を伴った患者の罹患率又は死亡率は、麻酔治療の良く知られた観点であり、その状況に直面したどんな麻酔医にとっても挑戦的な悪夢である。NLAの前部に予め形成された縦の隙間を伴ったNLAの改良版は、気管内チューブを伴ったNLAを通じて、ブージー、クックのエアウェイ又はファイバースコープの助けで、容易に挿管することを補助する。
【0113】
その他
NLAのそれぞれの構成要素の形状、設計や操作構造への幾つかの改良が、NLAの改良された性能又は美的外観のどちらに必要なのかが、予想される。
【0114】
・エアウェイ装置の全ては、一つのユニットとして製造され得る、若しくは、その改良された機能、又は費用対効果、又はその他の実用性の問題の理由という目的でもし必要と判断されれば、それぞれの構成要素が別々に製造され得る。
【符号の説明】
【0115】
1a 喉頭蓋
1b 舌骨
1c 甲状舌骨膜
1d 小角軟骨
1e 甲状軟骨(のど仏)
1f 披裂軟骨
1g 輪状甲状靱帯
1h 輪状軟骨
1i 輪状気管靱帯
1k 甲状腺
1m 副甲状腺(4)
1n 気管
1o 気管軟骨
1p 喉頭蓋
1q 舌骨
1r 甲状舌骨膜
1s 甲状舌骨膜
1t 楔状軟骨
1u 脂肪体
1w 小角軟骨
1x 室ひだ(仮声帯)
1y 披裂軟骨
1z 甲状軟骨
2a 声帯(真声帯)
2b 輪状軟骨
ac 輪状甲状靱帯
2d 気管軟骨
2e 輪状気管靱帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間若しくは動物に使用するためのエアウェイ装置(10,30,110)であって、
当該エアウェイ装置は、

(i)遠位端部(13,149,249)と、近位端部(12,147,248)を持つエアウェイチューブ(11,83,63,101,111)であって、
前記エアウェイチューブの遠位端部が、喉頭カフ(14,34,94,113,121,131)で囲まれており、
遠位端部と、近位端部とを持つエアウェイチューブと、

(ii)前記喉頭カフと前記エアウェイチューブの近位端部の間において前記エアウェイチューブに接して若しくはその周囲に位置する口腔安定器(20,40,50,90,100,122)であって、
前記口腔安定器は、前記患者の舌の前側面又は前面と入れ子状に重なるように構成されるとともに、前記患者の対応組織に合わせて構成されることで、安定性を提供し、それにより、使用時のエアウェイチューブの回転の又は左右の動きを防ぐ、
口腔安定器と、

(iii)前記喉頭カフの前記表面(32)を組み込む、前側、腹側部分(136,146,246)と、
後側、背面部分(135,145,245)と、
を具備し、

前記口腔安定器は、
当該口腔安定器と前記咽頭カフとが一体となるように、かつ、
前記口腔安定器が、同じ面で滑らかに、前記咽頭カフの前記後側、背面部分の近位端部を形成するように、
前記咽頭カフの近位端部から前記エアウェイチューブの遠位端部に向かって延長している、

エアウェイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−96122(P2012−96122A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−38633(P2012−38633)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【分割の表示】特願2009−279142(P2009−279142)の分割
【原出願日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【出願人】(505052456)