説明

改良型医療器具

本明細書においては、医療器具について開示する。特に、患者の身体上の非平坦面に順応および/または適合させることのできる医療器具について開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具に関する。特に、本発明は、患者の身体上の非平坦面に順応および/または適合可能な医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光源は、一般に、剛構造であり、可撓性がない。さらに、このようなタイプの従来の光源は電子機器を備えるため、さらに剛性が高くなる。したがって、平坦な光源をその近傍の面に沿わせる(適合させる)ことを必要とする用途に用いられた場合、可撓性が不足しているため、その適合の度合いには限界がある。従来の光源は、仮に可撓性を有するものであっても、ある角度を超えて曲げると破損する(または、電子機器との接続が遮断する)ことが多いことがわかっている。
【0003】
光を用いて多種多様な疾患を治療することができる。光のみを用いて疾患を治療する場合、この治療は光療法と呼ばれる。光は、薬剤と併せて用いることもでき、この場合、この治療は光線力学的療法と呼ばれる。
【0004】
光療法および光線力学的療法を用いて、様々な皮膚疾患および内部疾患を治療することができる。光線力学的療法では、光薬剤として知られる光感受性治療剤を身体の被処置領域に外部または内部から供給する。そして、適切な周波数および強度の光でこの領域を露光して光薬剤を活性化させる。現在、種々の光薬剤が利用可能である。そのような光薬剤としては、例えば、5−アミノレブリン酸塩酸塩(クロフォード・ファーマシューティカルズ(Crawford Pharmaceuticals))、およびメチルアミノレブリン酸(メトフィックス(Metfix)(商標)、フォトキュア(Photocure))といった局所投与剤が挙げられる。薬剤は、多くの場合、非活性形態で供給して光感受性薬剤に代謝させる。
【0005】
光線力学的療法では、光を光薬剤に供給する主な技術として、レーザーまたはフィルター処理したアークランプといった独立型の光源から適切な波長の光を投射する方法がある。これらの光源は取り扱いが煩雑であり、かつ高価であるため、病院における使用にのみ適している。このことは、患者にとって不便であり、また治療コストの増大にもつながる。(費用効率のよい治療を行う目的で)1日に治療可能な患者数を適正数とし、かつ必要以上に患者を拘束するのを避けるため、高照度の光照射が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の少なくとも一態様における目的は、上記のうち少なくとも1つまたはそれ以上の問題点を回避または軽減することにある。
【0007】
本発明の少なくとも一態様における別の目的は、治療処置および/または美容処置を施すことのできる装置であって、患者の身体上の非平坦面に順応および/または適合可能とした装置を提供することである。
【0008】
本発明の少なくとも一態様におけるさらに別の目的は、光源と電子機器を備える医療器具であって、患者の身体上の非平坦面に順応および/または適合可能とした装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、治療処置および/または美容処置に用いる装置であって、
筐体と、
前記筐体内部に配置または前記筐体に取り付けた電子機器と、
少なくとも1つの光源と、
前記筐体内部に配置したシャーシと、を備え、
前記シャーシの少なくとも一部または実質的に全長に沿って、該シャーシの少なくとも一方の側または両側にチャネルを設けて、該チャネルが可撓性の電子基板を支持可能であり、
前記筐体および前記電子基板は、非平坦面に順応および/または適合可能であることを特徴とする、装置が提供される。
【0010】
したがって、本発明によれば、シャーシの少なくとも片側または両側に設けたチャネル(例えば、ランナー)を用いて、可撓性の基板をこのチャネル(例えば、ランナー)に沿って自由に、または実質的に自由に移動させることができる。
【0011】
一般に、電子機器、少なくとも1つの光源、および可撓性の電子基板は、同一の1つの装置とすることができる。すなわち、電子機器、少なくとも1つの光源、および可撓性の電子基板を構成する単一部品とすることができる。
【0012】
チャネルは、上部および下部からなるシャーシ内に設置することができる。可撓性の電子基板の位置は、シャーシ内のいずれかの側のチャネル内に設置することができる。
【0013】
シャーシは、上部および下部からなり、この上部および下部のいずれかの内部に電子部品、少なくとも1つの光源および可撓性の電子基板が配置される。
【0014】
チャネルの機能は、チャネル(例えば、ランナー)に沿って可撓性の電子基板を自由に、または実質的に自由に移動可能とすることである。この構成により、可撓性の電子基板を自由に、または実質的に自由に移動可能にするととともに、上部シャーシおよび下部シャーシを可撓性の電子基板と同時に、または実質的に同時に屈曲させることができる。この構成の利点は、装置内における可撓性の電子基板、拡散部材および/または光源間の距離を保つことができ、それにより、装置を湾曲させて処置領域に適合した際に出射光の均一性を向上することができる点である。したがって、チャネルを設けたことにより、可撓性の電子基板、拡散部材および/または光源間の距離を実質的に一定に保ち、装置内において安定した光学系を構成することが可能となる。
【0015】
可撓性電子基板としては、例えば、プリント回路基板(PCB)等の任意の好適な基板を用いることができる。
【0016】
装置は、少なくとも1つ以上の拡散部材を備えることができる。通常は、2つまたは少なくとも2つ以上の拡散部材を設けることができる。
【0017】
シャーシと可撓性の電子基板とを、同時に、または実質的に同時に屈曲させることにより、可撓性の電子基板と少なくとも1つ以上の拡散部材との間の距離を一定に、または、実質的に一定に保つことができる。この構成による技術的な利点は、可撓性の電子基板と1つ以上の拡散部材との間の距離を保つことができ、それにより、光の均一性を向上することができる点である。したがって、この構成により、装置を屈曲および/または湾曲させても光学系を一定に維持することができる。
【0018】
また、拡散部材は、下部シャーシ内のチャネルに沿って自由に、または実質的に自由に移動可能なように配置および/または設置することもできる。
【0019】
別の実施形態において、装置のシャーシ内に、第1の突出部材(例えば、ポスト)を設置して、可撓性の基板(例えば、PCBまたはOLED)用のランナーとして機能させてもよい。また、第2の突出部材を併せて設けることができるが、第2の突出部材は、通常、ランナーとしては機能しない。可撓性の電子基板には、第1の突出部材を貫通させる切り欠き領域(例えば、ノッチ)を設けてもよい。切り欠き領域により、装置が湾曲した際に、可撓性の電子基板をポストに対して移動させることができる。したがって、ポストは、可撓性の電子基板内の切り欠き領域内に位置するようにする。シャーシが湾曲すると、可撓性の電子基板もシャーシと共に湾曲するため、電子基板と拡散部材との間には実質的に一定の距離が確保される。可撓性の電子基板は、したがって、ランナーポストに沿って移動可能であり、それによりシャーシおよび可撓性の電子基板を同時に、または実質的に同時に湾曲させることができる。筐体は、装置を屈曲および/または湾曲可能とすることができる少なくとも1つまたは一連のヒンジを備えてもよい。
【0020】
筐体は、電子機器の適合量(順応の度合い)を制限してもよい。
【0021】
一般に、筐体は、電子機器および/または光源の少なくとも一部、好ましくは全体を囲むことができる。
【0022】
したがって、本発明の装置によれば、人間または哺乳動物の身体の任意の箇所、例えば、患者の足、脚、胴、肩、腕、手、頭、または顔面領域上の、非平坦面、実質的に非平坦面、または湾曲面に順応および/または適合可能な光源を提供することができる。
【0023】
筐体を、非平坦面、または湾曲面に順応および/または適合可能とすることにより、光源から均一な、または実質的に均一な光を患者の皮膚に照射することが可能となるが、このことは有効な治療を行う上で重要である。本発明は、したがって、半剛体の光源を患者の非平坦面および/または湾曲面に順応および/または適合させることができる。1つ以上の拡散部材を有することにより、装置から出射する光の均一性が向上する。
【0024】
筐体は、達成可能な適合量(順応の度合い)を制限する手段を有してもよい。これにより、過度の湾曲により電子機器が破損または故障してしまうことを防止する。
【0025】
本発明において、少なくとも1つ以上の光拡散部材を用いることもできる。これらの光拡散部材を組み合わせて用いることにより、少なくとも1つの光源から出射した照射光の均一性を向上させることができる。
【0026】
筐体内には複数の光源を配置してもよい。例えば、光源は、任意の形状のダイオード(例えば、LED等)を好適に用いることができる。
【0027】
本装置は、二重構造の拡散部材を備えてもよく、両拡散部材は平行、または実質的に平行な向きに配置することができる。光拡散部材は3つ以上、または複数設けることができ、各拡散部材は平行、または実質的に平行な向きに配置する。
【0028】
拡散部材は、機械的手段および/または粘着手段等の任意の好適な取付手段を用いて、シャーシ内に設置することができる。シャーシを可撓性とすることにより、患者等の非平坦面に装置を順応および/または適合可能とすることができる。
【0029】
装置内において、拡散部材は約1〜10mm(例えば、約4mm)の距離を離間する。拡散部材は、複数の光源からの照射光の均一性を向上させることのできるものであれば、いかなるタイプのものでも好適に用いることができる。拡散部材の厚さは約0.1〜1mm(例えば、約0.3mm)とすることができ、好ましくは光に対して透過性である。
【0030】
筐体は、上部シャーシおよび下部シャーシからなり、その内部に発光装置を設置することができる。筐体内部には、可撓性のPCBを設置することができる。部材(例えば、筒状部材)を用いて、装置を動作させるための電子機器を収容してもよい。
【0031】
また、下部シャーシ等のシャーシには、1つまたは一連のヒンジを設けて、装置を屈曲可能とすることができる。ヒンジは、装置を非平坦面に順応および/または適合させることができるものであれば、いかなる形状のものも好適に用いることができる。シャーシ自体を可撓性としてもよい。
【0032】
筐体には、患者と接触させるための面(すなわち、接触面)を設けてもよい。この接触面は、例えば、患者の非平坦面、実質的に非平坦面、または湾曲面の周辺において屈曲、湾曲、および/または適合することができる。
【0033】
筐体は、平面位置から離れて屈曲、湾曲、および/または適合することができ、その角度は約5度未満、約10度未満、約15度未満、約20度未満、約25度未満、約30度未満、約35度未満、約40度未満、約45度未満、約50度未満、約55度未満、約60度未満、約65度未満、約70度未満、約75度未満、約85度未満、または約90度未満とする。または、筺体は、平面位置から離れて屈曲、湾曲、および/または適合することができ、その角度は約0〜5度、約0〜10度、約0〜15度、約0〜20度、約0〜25度、約0〜30度、約0〜35度、約0〜40度、約0〜45度、約0〜50度、約0〜55度、約0〜65度、約0〜70度、約0〜75度、約0〜80度、約0〜85度、約0〜90度とすることができる。上述したように、筺体は、患者と接触するための面(すなわち接触面)を有してもよく、この面を平面位置から離れて屈曲、湾曲、および/または適合する面としてもよい。
【0034】
筺体には、さらに、例えば、バネ形式の装置のような手段を設けてもよく、筺体が最初の構成(例えば、平面)から一旦屈曲、湾曲、および/または適合すると、この手段により筐体をまた元の構成に付勢するようにする。
【0035】
特定の実施形態において、筐体は2つの部分、例えば、上部分および下部分からなる。または、複数の部分を有してもよい。筐体のこれら2つの部分は、使用中は、任意の好適な機械的手段および/または粘着手段を用いて互いに接合されてもよく、例えば、筐体の2つの部分を接合する手段として、スナップ式装置、クリップ、フック、ベルクロ(Velcro)(商標)等が挙げられる。筐体のこれら2つの部分のうち少なくとも片方または両方には、筐体を屈曲、湾曲、および/または適合させる手段を設けてもよい。通常、筐体の2つの部分のうち少なくとも片方または両方には、少なくとも1つまたは2つの可撓性部分を設けることができる。可撓性部分を複数設けてもよい。一般に、この可撓性部分はヒンジとすることができる。特に好ましい実施形態において、筐体の少なくとも片方または両方の部分には、少なくとも2つまたは複数のヒンジを設けることができる。
【0036】
一般に、筐体には、さらに、筐体または患者との接触用の面が平坦な構成から屈曲、湾曲、および/または適合可能な量を制限する手段を設けてもよい。したがって、筐体は、移動許容量を制限可能なある種の停止手段を備えてもよい。屈曲量、湾曲量、および/または適合量を制限することにより、筐体内に設けた電子機器および光源が損傷する可能性を低減することができる。
【0037】
筐体は、装置および光源を動作させるための電子機器を備えることができる。また、筐体は、光源からの光を筐体から出射させて、治療処置および/または美容処置等の医療目的に用いることができるように設計してもよい。したがって、筐体は、患者の被処置領域にわたり光を分散させることができる。
【0038】
筐体において、患者と接触する面の面積は、約1〜500cm、約1〜250cm、約1〜100cm、約1〜100cm、または約5〜50cm、とすることができる。または、筐体において、患者と接触する面の面積は、約1cm超、約5cm超、約10cm超、約50cm超、または約100cm超としてもよい。
【0039】
便宜上、筺体は、任意の好適な材料(例えば、生体適合性材料)で形成することができ、例えば、任意のプラスチック系材料、複合系材料、および/または金属系材料等を好適に用いることができる。筺体を形成する材料は、柔軟で、屈曲、湾曲、および/または適合可能なものとする。
【0040】
筺体は、さらに、筺体の少なくとも一部または全外面に粘着シートを備えることができる。この粘着シートにより、粘着面を構成して、装置を患者に付着させることができる。非平坦面および/または曲面に順応可能な筺体と、可撓性の粘着性外面とを組み合わせることで、本装置をより多くの箇所に付着させることができる。
【0041】
本装置は、さらに、患者の被処置領域に薬剤および/または化学物質を送達可能な、透明な薬剤源および/または化学物質源を備えてもよい。したがって、本発明の装置によれば、治療処置および/または美容処置を施すことができる。
【0042】
したがって、本発明は、光線力学的療法または光療法を用いて人間または動物の患者に治療処置および/または美容処置を施すことができる発光装置に関するものである。この療法は、場合により、治療的性質を持つこともあり(例えば、皮膚癌、重症の座瘡の場合)、また他の場合においては、美容的性質を持つものともなりうる(例えば、軽度の座瘡、しわ治療等の老化防止治療の場合)。
【0043】
光源は、所望の波長にわたる光を出射できるものであればいかなる光源も好適に用いることができるが、好ましくは、一列のLED配列とすることができる。光源として、発光層を設けることもできる。
【0044】
一般に、光源は、約200〜3000nm、約200〜1500nm、約200〜800nm、または約250〜750nmの範囲内で動作することができる。特定の実施形態において、光源は、電磁スペクトルの可視領域内で動作させてもよい。または、光源は、電磁スペクトルの紫外線または赤外線波長域内で動作させてもよい。光源は、動作中、実質的に一定および/または均一の波長で動作させてもよく、または、ある波長範囲にわたり走査してもよい。特定の実施形態において、2つ以上の異なる波長の光を、同時に、または時間をずらして出射および/またはパルス出力することもできる。これは、座瘡の治療に好適である。
【0045】
光源の発光面領域は、約1〜500cm,約1〜250cm,約1〜100cm,約1〜100cm,または約5〜500cmの広い範囲とすることができる。または、光源の発光面の面積は約1cm超、約5cm超、約10cm超、約50cm超、約100cm超、とすることができる。
【0046】
光源は、実質的に正方形または実質的に矩形とすることができ、その寸法は約1cm×1cm、約2cm×2cm、約5cm×5cm、約10cm×10cm、または約20cm×10cmとすることができる。または、光源は、実質的に円形とすることができ、その直径は約0.5cm、約1cm、約2cm、約5cm、約10cm、または約20cmとすることができる。
【0047】
光源は、あらかじめ設定された期間にわたり実質的に連続して光を出射するか、または、不連続的に、例えばパルス状に、出射することもできる。特定の実施形態において、光源からの光は、少なくとも約10ミリ秒、少なくとも約100ミリ秒、少なくとも約1秒、少なくとも約10秒、少なくとも約10ミリ秒、少なくとも約100秒、少なくとも約1000秒、または、少なくとも約1万秒の間隔でパルス出力することができる。
【0048】
特定の実施形態において、光源としては、例えば、任意の形状のダイオードを好適に用いることができ、例えば、拡散部材等に内蔵した有機発光ダイオード、または無機発光ダイオードを用いることができる。または、光源は、蛍光ランプ等の蛍光光源とすることができる。蛍光光源は小型のものを用いることができる。この例としては、バックライトディスプレイ技術に基づく技術、LED、導波管、拡散部材等が挙げられる。
【0049】
光源の光強度密度は、約0.1〜500mW/cm、約1〜200mW/cm、約5〜75mW/cmとすることができる。光源は、動作中、実質的に一定の強度であってもよく、または、強度を種々に変更することもできる。
【0050】
本装置の備える薬剤源および/または化学物質源において、光化学調剤および/または光薬物調剤は、例えば、層状とすることができる。
【0051】
光化学調剤および/または光薬物調剤の患者の被処置領域への送達は、あらかじめ決めた適切な時間に行ってもよく、および/または制御装置により制御してもよい。光化学調剤および/または光薬物調剤は、例えば、ゲル状、軟膏状、クリーム状、または光線力学療法剤溶液に浸したガーゼとすることができる。代案として、または追加として、発光装置には、光化学調剤および/または光薬物調剤を含浸させた薄膜を設けることができる。光化学調剤および/または光薬物調剤は、患者を治療可能な薬剤および/または消毒剤を含むことができ、それを必要とする患者に投与することができる。一般に、光化学調剤および/または光薬物調剤は、使用時および発光時は、透過性または実質的に透過性である。
【0052】
光化学調剤および/または光薬物調剤を照射光の波長に対して透明または半透明とした実施形態においては、結果として、この装置は、光化学調剤および/または光薬物調剤を患者に別途投与する過程を経ずに、容易に適用可能になる。特定の実施形態において、着脱可能な剥離媒体で光化学調剤および/または光薬物調剤を被覆してもよい。光化学調剤および/または光薬物調剤を、体内で活性化合物に代謝する不活性化合物で構成してもよい。使用の際は、適切な量の光化学調剤および/または光薬物調剤を患者の被処置領域に塗布する。
【0053】
本発明において用いられる薬剤および/または化学物質は、一般に、5−アミノレブリン酸(ALA)、メトフィックス(Metfix)、またはその他の光線力学療法剤等の先駆薬品を含むが、本発明はそれらに限定されない。
【0054】
使用時は、薬剤および/または化学物質の層を、患者の被処置領域の上に載置する。この化学層は保湿剤であってもよい。処置を容易にするために、塩化ナトリウム溶液等の電解質溶液を皮膚上に塗布して、電気的接続を向上させてもよい。
【0055】
電源を設置して、筐体内の光源および/または電子機器に電力を供給してもよい。この電源は小型であり、全装置内に内蔵することができ、したがって、装置を外来治療にも好適なものとすることができる。したがって、本発明の装置は着装可能(ウェアラブル)であり、患者の足、脚、胴、肩、腕、手、頭、または顔面領域に装着することができる。
【0056】
本装置は、装置を人間または動物の身体の一部分または複数部分に取り付けるための取付手段を備えてもよい。例えば、本装置は、装置を人間または動物の身体部分に取り付けるための機械的手段および/または粘着手段を備えてもよい。したがって、特定の実施形態においては、本装置は、ストラップ装置を備えることができ、このストラップ装置には、選択的に、締結手段および/またはベルクロ(Velcro)(商標)および/または粘着表面を設けて装置を患者に取り付ける。
【0057】
本装置は軽量で携帯可能とすることができる。特定の実施形態において、本装置は完全内蔵型の携帯ユニットであり、内蔵型の電源を備えることができる。電源により、装置内の電子機器と光源を動作させることができる。本装置は携帯可能であるため、外来治療に利用することも可能であり、したがって、治療中も患者は動きまわることができる。したがって、治療は在宅でも勤務中でも行うことができ、患者は必要であれば装置を取り外すことができる。そうすることで、病院内に外来患者または入院患者が長く滞在することを回避できるため、治療費を削減することができる。また、本装置の重要な利点は、長時間の露光が可能となることから、低レベルの光を使用可能になったことである。患者によっては、病院で用いる従来の光源からの高照度の光照射により苦痛を感じる場合があるが、本装置はそのような問題を解決することができる。さらに、低レベルの光を長時間照射することは、光誘起療法においてはより効果的な場合がある。なぜなら、より時間をかけて酸素を被処置領域に拡散させることができ、光薬剤の光退色を低減させるからである。
【0058】
光源は、また、透明または少なくとも実質的に透明な基板層等の基板層を備えることができる。または、光源は、半透明または実質的に半透明な基板層を備えることができる。この基板層は、光源の支持層として機能してもよく、光を透過させることができる。基板層は、また、障壁層として機能してもよく、光源に酸素および/または水分を透過させないようなものを選択的に用いることができる。基板層の材料は、ガラス、プラスチック、または重合体等の適切な材料のうちのいずれか一つ、またはこれらの組み合わせとすることができる。追加的な層をさらに設けてもよい。
【0059】
本発明による装置は、光療法および光線力学的療法の範囲内で用いることができる。例えば、本発明による装置は、癌(例えば、皮膚癌)治療、座瘡、しわ、創傷治癒、老化防止、および(例えば、美容用途における)レーザー治療後の処置に用いることができる。用語「傷」は、あらゆる形状の開放創または閉鎖創を意味する。開放創とは、切り傷または挫創、裂傷、擦過傷、刺傷、貫通傷、銃創、および潰瘍(糖尿に由来する潰瘍を含む)を含むが、これらに限定されない。閉鎖創とは、打撲傷、血腫、および挫滅を含むが、これらに限定されない。
【0060】
本発明の第2の態様によれば、治療処置および/または美容処置を行う方法であって、
筺体を設けること、
前記筐体内部に配置または前記筐体に取り付けた電子機器を設けること、
少なくとも1つの光源を設けること、および
前記筐体内部にシャーシを配置すること、を含み、
前記シャーシの少なくとも一部または実質的に全長に沿って、該シャーシの少なくとも一方の側または両側にチャネルを設けて、該チャネルが可撓性の電子基板を支持可能であり、
前記筐体および前記電子基板は、非平坦面に順応および/または適合可能であることを特徴とする、方法が提供される。
本方法は、第1の態様で定義された装置により実施することができる。
【0061】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様による装置を内科的治療に使用する。
【0062】
通常、医療処置は、光線力学的治療または光療法とすることができる。
【0063】
したがって、本発明は、癌(例えば、皮膚癌)治療、座瘡、しわ、創傷治癒、老化防止、および(例えば、美容用途における)レーザー治療後の処置に関するものである。
【0064】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様による装置を用いた治療方法が提供される。
【0065】
この治療方法は、光線力学的療法または光療法による治療法とすることができる。
【0066】
さらに、治療とは、癌(例えば、皮膚癌)治療、座瘡、しわ、創傷治癒、老化防止、および(例えば、美容用途における)レーザー治療後の処置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態による装置の模式図であり、2つの拡散部材の位置を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による装置の分解図である。
【図3】図2に示す装置の下部分を示す図である。
【図4】図2に示す装置の断面図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態による装置を示す図である。
【図6】図5に示す装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
ここで、本発明の実施形態を添付の図面を参照して、一例として、説明する。
【0069】
本発明は、人または動物の患者に対し治療処置および/または美容処置を施すことが可能な装置に関するものである。本装置は、あらゆる種類の医療処置において用いることができ、例えば、光療法または光線力学的療法に用いることができる。
【0070】
図1に、本発明による装置を示す。全体を通じて、本装置には参照符号100を付して示す。図1に示すように、装置100は、PCB110を備え、PCB110には複数の光源112(例えば、LEDまたはOLED)および2つの光拡散部材114、116が取り付けられている。図示の例において、装置は皮膚表面118に載置されている。装置100は、皮膚表面に対して実質的に平行な向きに配置された2つの光拡散部材114、116により構成される二重構造の拡散部材を有する。図示はしないが、拡散部材を3つ以上設けてもよく、各拡散部材は実質的に平行な方向に配置される。拡散部材114、116は、任意の好適な取付手段を用いて、シャーシ(図示せず)内に設置することができる。シャーシを可撓性とすることより、患者等の非平坦面に装置10を順応および/または適合させることができる。
【0071】
装置100内において、拡散部材114、116は約1〜10mm(例えば、4mm)の距離を離間する。拡散部材は、複数の光源112からの照射光の均一性を向上させることのできるものであればいかなるタイプのものでも好適に用いることができる。各拡散部材の厚さはそれぞれ約0.3mmであり、光に対して実質的に透明である。
【0072】
図2は、装置200を示す図である。装置200は、光療法または光線力学的療法に用いることができる。装置200は、上部シャーシ210および下部シャーシ212からなる筐体を備え、その内部には発光装置が配置されている。図2に示すように、筒状部材216に取り付けた可撓性のPCB214を設け、筒状部材216内部の配線を用いて装置200を動作させるための電子機器との接続を行うことができる。また、2本のねじ220を用いて下部シャーシ212に連結可能な取付素子218も図示される。取付素子218により、筒状部材216の抜けを防止する。また、図2において、下部シャーシ212は可撓性の拡散層222を備え、その内部には可撓性のPCB214を設置することができる。下部シャーシに一連のヒンジ224を設けることにより、装置200を曲げることができる。
【0073】
図3は、装置200の下部シャーシ212を示す図である。図示の例において、取付素子218は2本のねじ220を用いて取り付けられている。図示を明確にするため、筒状部材216は省略している。図3に示す可撓性の拡散層222内部には可撓性のPCB214を設置することができる。また、図示した一連のヒンジ224により装置200を屈曲可能としている。
【0074】
また、図3において、下部シャーシ212の長手方向に沿った両側にはチャネル226(例えば、ランナー)が設けられている。チャネル226は、シャーシ212内部に設置されており、また、下部シャーシ212の両側のチャネル内には可撓性のPCB214が位置する。また、図3から明らかなように、一連のヒンジ224を設けたことにより、患者等の非平坦面に沿って装置を屈曲および/または順応および/または適合させることができる。装置を非平坦面に沿って屈曲および/または順応および/または適合させても、PCBはチャネル226(例えば、ランナー)に沿って自由に、または実質的に自由に、動くことができる。このような構成により、上部シャーシ210と下部シャーシ212とを、同時に、または実質的に同時に曲げることができる。その結果、拡散部材までの距離を一定に保つことができるため、装置を屈曲および/または湾曲させている際の均一性を向上することができる。図3には図示しないが、下部シャーシ212内には拡散部材が2つ配置されている。したがって、本発明において、装置を湾曲させた場合にも、PCB214をチャネル226に沿って自由に動かすことができる。拡散部材についても、チャネル226に沿って自由に動かせるように配置することもできる。この構成は、拡散部材の向きを、互いに対して、および皮膚の被処置表面に対して、実質的に平行な向きに維持するのに有用である。
【0075】
図4は、チャネル226上に位置するPCB214を示す図である。チャネル226がランナーとして機能することにより、装置200を湾曲してもPCB214を動かすことができる。本実施形態において、PCB214は雄部、チャネル226は雌部とそれぞれ見なすことができる。
【0076】
図5は、別の装置300を示す図である。図において、装置300は、可撓性の基部310(例えば、粘着可能なプラスター等)を備える。また、装置300は、シャーシ312および可撓性のPCB314を備える。さらに、シャーシ312内のヒンジ316も図示される。シャーシ312にはポスト320の形状の突出部材を設け、この突出部材はランナー(例えば、雄ランナー)として機能する。ポスト320は、PCB314に設けたノッチ318(例えば、切り欠き部)を貫通して延在する。この構成により、装置300が湾曲しても、PCB314はポスト320に対して動くことができる。したがって、ポスト320は、PCB314のノッチ318と同位置にあり、したがって、PCBはシャーシ312内において固定保持されず、PCB314の動作を制御するポスト320とともに動くことができ、ノッチ318により形成される周縁の内側を動く。ノッチ318は、一端が開放した孔である。また、図5には、PCB内の開口324を貫通して延在する第2ポスト322を示す。しかし、開口324は、ポストをともに動かせるような一端が開放したノッチではない。PCB314は、したがって、ランナーポスト320に沿って動き、シャーシ312およびPCB314を、同時に、または実質的に同時に湾曲させることができる。
【0077】
図6は、装置300内での一連の光源350(例えば、LED)の位置を示す。光源350は、1〜10mm(例えば、4mm)のわずかな距離を離間した2つの拡散部材352、354の上方に位置する。また、電子部品315の一部も図示されている。本実施形態において、PCB314を雌部として、PCB314内に位置するランナー(例えば、ポスト320)を雄部として説明する。
【0078】
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明の請求の範囲内で上記の実施形態から逸脱することができることは理解されよう。例えば、筐体を屈曲、湾曲、および/または患者の身体の一部に適合させるには、任意の種類の機構を好適に用いることができる。また、任意の種類の光源を好適に用いることができる。さらに、本発明による装置を用いて、いかなる種類の薬剤および/または消毒剤も好適に送達することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療処置および/または美容処置に用いる装置であって、
筐体と、
前記筐体内部に配置または前記筐体に取り付けた電子機器と、
少なくとも1つの光源と、
前記筐体内部に配置したシャーシと、を備え、
前記シャーシの少なくとも一部または実質的に全長に沿って、該シャーシの少なくとも一方の側または両側にチャネルを設けて、該チャネルが可撓性の電子基板を支持可能であり、
前記筐体および前記電子基板は、非平坦面に順応および/または適合可能であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記チャネルは前記可撓性の電子基板を支持可能であり、該可撓性の電子基板を該チャネルに沿って自由に、または実質的に自由に移動可能であることを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、
前記チャネルは、上部シャーシおよび下部シャーシを、前記可撓性の電子基板と同時に、または実質的に同時に屈曲させるとともに、屈曲および/または湾曲中に、該可撓性の電子基板は、該チャネルに沿って自由に、または、実質的に自由に移動可能であることを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置において、前記筐体内にはさらに拡散部材を配置および/または設置して、該拡散部材は前記チャネルに沿って自由に、または実質的に自由に移動することを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置において、前記筐体のシャーシ内には、可撓性の電子基板用のランナーとして機能できる突出部材を設けたことを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置において、
突出部材を貫通させる切り欠き領域(例えば、ノッチ)を有する可撓性の電子基板を有し、前記装置が屈曲および/または湾曲する際に、前記可撓性の基板を前記ポストに対して移動させることを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の装置において、
前記可撓性の電子基板は前記ランナーポストに沿って移動可能であり、それにより前記シャーシおよび前記PCBを同時に、または実質的に同時に屈曲および/または湾曲させることを特徴とする、装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置において、前記筺体は、前記装置を屈曲および/または湾曲させることができる少なくとも1つまたは一連のヒンジを備えることを特徴とする、装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置において、
光拡散部材を少なくとも2つ以上設け、前記少なくとも1つの光源からの照射光の均一性を向上できるようにしたことを特徴とする、装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置において、光拡散部材を複数設けたことを特徴とする、装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置において、前記筺体内において前記2つ以上の光拡散部材を平行または実質的に平行な向きに配置したことを特徴とする、装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置において、前記筐体内に3つ以上または複数の光拡散部材を設け、前記筐体内で該光拡散部材を平行な向きまたは実質的に平行な向きに配置したことを特徴とする、装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置において、機械的手段および/または粘着手段等の任意の好適な取付手段を用いて、前記シャーシ内に2つ以上の光拡散部材を設けたことを特徴とする、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、
前記シャーシを可撓性とすることにより、患者等の非平坦面に該装置を順応および/または適合可能としたことを特徴とする、装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置において、前記筺体内に複数の光源を設けたことを特徴とする、装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置において、前記光源はLEDまたはOLEDであることを特徴とする、装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置において、2つ以上の光拡散部材を約1〜10mmまたは約4mmの距離を離間して設けたことを特徴とする、装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置において、前記筺体は上部シャーシおよび下部シャーシからなり、該筐体内部に前記発光装置を設置したことを特徴とする、装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の装置において、前記筐体内に可撓性のPCBを設置したことを特徴とする、装置。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置において、前記筐体は、前記装置を屈曲させることができる一連のヒンジを備えたことを特徴とする、装置。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の装置において、前記筐体はPCBを設置するハウジング領域を備えたことを特徴とする、装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の装置において、前記装置は、薬剤および/または化学物質を患者の被処置領域に送達可能な薬剤源および/または化学物質源を備えたことを特徴とする、装置。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の装置において、前記チャネルは、前記少なくとも1つの光源または複数の光源と光拡散部材との距離を一定に、または実質的に一定に維持することを特徴とする、装置。
【請求項24】
治療処置および/または美容処置を行う方法であって、
筺体を設けること、
前記筐体内部に配置または前記筐体に取り付けた電子機器を設けること、
少なくとも1つの光源を設けること、および
前記筐体内部にシャーシを配置すること、を含み、
前記シャーシの少なくとも一部または実質的に全長に沿って、該シャーシの少なくとも一方の側または両側にチャネルを設けて、該チャネルが可撓性の電子基板を支持可能である、
前記筐体および前記電子基板は、非平坦面に順応および/または適合可能であることを特徴とする、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の治療処置および/または美容処置を行う方法において、該方法は請求項1〜23のいずれか一項に記載の前記装置を用いて行うことを特徴とする、方法。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の装置の医療処置における使用。
【請求項27】
請求項26に記載の装置の使用において、前記医療処置は光線力学的療法または光療法であることを特徴とする、使用。
【請求項28】
上記に記載の装置および/または図1〜6に示す装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532643(P2012−532643A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519059(P2012−519059)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050703
【国際公開番号】WO2011/004170
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512003010)アンビケア リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Ambicare Limtied
【Fターム(参考)】