説明

放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出方法および装置

【課題】 適切な溶融完了時期を的確に検出することができる放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置を提供する。
【解決手段】
アーク炉A中に入れた放射性廃棄物を熱源により溶融させて処理する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置であって、処理対象である前記放射性廃棄物によりアーク炉A内の特定の位置から放射される放射線のうちその水平方向成分を検出して特定核種の放射線の強度を表す放射線強度信号を送出する放射線検出センサCと、放射線強度信号が表す放射線強度の経時的変化に基づき前記特定位置における前記放射性廃棄物の移動状況を把握して前記特定位置における前記放射性廃棄物の溶融状況を検出する演算処理装置Dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出方法および装置に関し、特にアークプラズマなどの高温熱源を利用して放射性廃棄物の溶融処理を行う場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉の定期点検等ででてくる低レベル放射性廃棄物は、固化して処理することが義務付けられている。かかる低レベル放射性廃棄物の処理方法の一つとして溶融処理が知られている。この溶融処理は、可燃物、セラミックス、金属等からなる低レベル放射性廃棄物を炉中に入れてアークプラズマや誘導加熱を利用した熱源により溶融することにより減容した後、固化して処理するものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
かかる溶融処理においては、炉内に入れた放射性廃棄物が充分に溶けているか否かを検出することが肝要である。ところが、放射性廃棄物は溶融の進行に伴い、比重が大きい金属層が最下層となりこれに浮く形でスラグ層が形成されるので、特に炉底における放射性廃棄物の溶融状況は、溶湯上面からの可視光の観察などではわからない場合がある。
【0004】
そこで、従来は、例えば炉の底部と上部との温度を熱電対により計測し、経験的に蓄積された温度と溶融状況のデータとを照合することにより全体として充分な溶融状況にあるか否かを判断していた。
【0005】
一方、放射性廃棄物の溶融処理に関する発明を開示する文献として、例えば特許文献1〜3が存在するが、これらには溶融状況の把握に関する開示はなされていない。蒸気発生管を対象とした溶融処理の試験に関し溶融金属の表面の温度を放射温度計で計測する点を開示するのみである(特許文献2、段落〔0042〕参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−257984号公報
【特許文献2】特開2000−292594号公報
【特許文献3】特開平11−118994号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】電力中央研究所報告(プラズマ加熱を用いた低レベル放射性雑固体廃棄物の一括処理技術)総合報告:W12(平成10年10月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、溶融処理中の放射性廃棄物の溶融状況は対象廃棄物や加熱シーケンスによって異なり、また放射性廃棄物の種類や可燃物、セラミックスおよび金属の割合等により種々変化し、温度のみで溶融状況を正確に判断するのは困難である。このため放射性廃棄物の未溶融ないし過溶融という問題が発生していた。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、適切な溶融完了時期を溶湯に触れることなくまた放射性廃棄物の種類や加熱シーケンスに依存することなく的確に検出することができる放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
炉中に入れた放射性廃棄物を熱源により溶融させて処理する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出方法であって、
処理対象である前記放射性廃棄物により前記炉内の特定の位置から放射される放射線のうちその水平方向成分を時系列的に検出するとともに前記放射線の強度の変化により前記特定位置における前記放射性廃棄物の移動状況を把握して前記特定位置における前記放射性廃棄物の溶融状況を検出することを特徴とする放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出方法にある。
【0011】
本態様によれば、加熱処理中の放射性廃棄物の溶融状況が対流の経時変化に反映されることを利用して溶融の状況を検出することができるので、適切な溶融完了時期を、溶湯に触れることなく、また放射性廃棄物の種類や加熱シーケンスに依存することなく得ることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、
炉中に入れた放射性廃棄物を熱源により溶融させて処理する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置であって、
処理対象である前記放射性廃棄物により前記炉内の特定の位置から放射される放射線のうちその水平方向成分を検出して前記放射線の強度を表す放射線強度信号を送出する放射線検出センサと、
前記放射線強度信号が表す放射線強度の経時的変化に基づき前記特定位置における前記放射性廃棄物の移動状況を把握して前記特定位置における前記放射性廃棄物の溶融状況を検出する演算処理手段とを有することを特徴とする放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0013】
本態様によれば、放射線検出センサで加熱処理中の放射性廃棄物から放射される放射線により放射線強度信号を得、放射性廃棄物の溶融に伴う対流の経時変化が放射線強度信号に反映されることを利用して溶融処理手段で所定の信号処理をすることにより溶融の状況を検出することができるので、適切な溶融完了時期を、溶湯に触れることなく、また放射性廃棄物の種類や加熱シーケンスに依存することなく得ることができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分を抽出し、該直流成分のレベルとその初期値とを比較し、前記直流成分が前記初期値に対して所定値以下になった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0015】
本態様によれば、放射線強度信号の直流成分に基づき、この直流成分の初期値に対する測定値の割合が所定値以下になったことを以て、溶融の進行に伴う対流の発達により直流成分が漸減したものとして溶融完了の状況を特定することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分を抽出し、前記直流成分が漸減し、さらに前記直流成分のレベルの変動幅が所定範囲内に収まった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0017】
本態様によれば、放射線強度信号の直流成分に基づき、この直流成分の変化が収束したことを以て、溶融の進行に伴う対流が定常状態へ移行したとして放射性廃棄物の溶融完了の状況を特定することができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号の周波数分析を行うことにより高周波成分を抽出し、前記高周波成分の振幅が漸増し、さらに前記高周波成分の振幅の変動幅が所定範囲内に収まった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0019】
本態様によれば、放射線強度信号の高周波成分に基づき、この高周波成分の変化が収束したことを以て、溶融の進行に伴う対流が定常状態へ移行したとして放射性廃棄物の溶融完了の状況を特定することができる。
【0020】
本発明の第6の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分と高周波成分とをそれぞれ抽出し、前記直流成分が漸減するとともに前記高周波成分の振幅が漸増し、さらに前記直流成分のレベルの変動幅と前記交流成分の振幅の変動幅とがそれぞれ所定範囲内に収まった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0021】
本態様によれば、放射線強度信号の直流成分および高周波成分に基づき、この直流成分および高周波成分の変化が収束したことを以て、溶融の進行に伴う対流が定常状態へ移行したとして放射性廃棄物の溶融完了の状況を特定することができる。すなわち、第4の態様に記載する条件と第5の態様に記載する条件のアンド条件の成立をもって溶融完了と判断しているので、より適確に溶融完了状況を特定することができる。
【0022】
本発明の第7の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分と高周波成分とをそれぞれ抽出し、前記直流成分のレベルと高周波成分のレベルとを比較することにより前記直流成分が漸減するとともに前記高周波成分の振幅が漸増することによる両者の比が所定値以下になった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0023】
本態様によれば、放射線強度信号の直流成分および高周波成分の比較により溶融の完了を特定することができる。ちなみに、溶融の進行に伴う対流が発達すれば直流成分は漸減し、高周波成分は漸増する。
【0024】
本発明の第8の態様は、
第2ないし第7の態様の何れか一つに記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、少なくとも前記炉の下部と上部との各特定位置から放射される放射線の水平成分をそれぞれ検出するとともに、
前記演算処理手段は、各特定位置から放射される放射線をそれぞれ処理するものであることを特徴とする放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0025】
本態様によれば、少なくとも上部と下部との各特定位置から放射された放射線を利用して第2ないし第7の態様の何れかの溶融検出を行っているので、その分精度が良好なものとなる。
【0026】
本発明の第9の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第1の核種による放射線強度信号のレベルが前記第2の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0027】
本態様によれば、放射性廃棄物の溶融が進行した場合、金属溶融層が相対的に下層、スラグ層が相対的に上層に形成されることを利用して放射性廃棄物の溶融状況を判定することができる。
【0028】
特に、本態様では第1の核種(例えばCo)が金属溶融層に多く含まれることを利用して下層における第1の核種とスラグ層に多く含まれる第2の核種(例えばCs)の存在比率に基づき、第1の核種の存在比率が第2の核種に対し所定値以上となったことを以て、溶融完了の状況を判断することができる。
【0029】
本発明の第10の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の上部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第2の核種による放射線強度信号のレベルが前記第1の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0030】
本態様によれば、第9の態様と同様に、放射性廃棄物の溶融が進行した場合、金属溶融層が相対的に下層、スラグ層が相対的に上層に形成されることを利用して放射性廃棄物の溶融状況を判定することができる。
【0031】
特に、本態様では第2の核種が上層のスラグ層に多く含まれることを利用して第2の核種の存在比率が第1の核種に対し所定値以上となったことを以て、溶融完了の状況を判断することができる。
【0032】
本発明の第11の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部および上部における各特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記各特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記下部の特定位置における前記第1の核種による放射線強度信号のレベルが前記第2の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となり、且つ前記上部の特定位置における前記第2の核種による放射線強度信号のレベルが前記第1の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0033】
本態様によれば、第9の態様および第10の態様のアンド条件の成立を以て溶融完了と判断しているので、かかる判断結果がその分高精度、且つ適確なものとなる。
【0034】
本発明の第12の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第1の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0035】
本態様によれば、第9ないし第11の態様と同様に、放射性廃棄物の溶融が進行した場合、金属溶融層が相対的に下層、スラグ層が相対的に上層に形成されることを利用して放射性廃棄物の溶融状況を判定することができる。
【0036】
特に、本態様では第1の核種(例えばCo)が金属溶融層に多く含まれることを利用して下層における第1の核種自体が漸増し、金属溶融層におけるその核種の存在比率が所定値以上となったことを以て、溶融完了の状況を判断することができる。
【0037】
本発明の第13の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の上部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第2の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0038】
本態様によれば、第9ないし第11の態様と同様に、放射性廃棄物の溶融が進行した場合、金属溶融層が相対的に下層、スラグ層が相対的に上層に形成されることを利用して放射性廃棄物の溶融状況を判定することができる。
【0039】
特に、本態様では第2の核種(例えばCs)がスラグ層に多く含まれることを利用して上層における第2の核種自体が漸増し、スラグ層におけるその核種の存在比率が所定値以上となったことを以て、溶融完了の状況を判断することができる。
【0040】
本発明の第14の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部および上部における各特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記各特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記下部の特定位置における前記第1の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となり、且つ前記上部の特定位置における前記第2の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0041】
本態様によれば、第12の態様および第13の態様のアンド条件の成立を以て溶融完了と判断しているので、かかる判断結果がその分高精度、且つ適確なものとなる。
【0042】
本発明の第15の態様は、
第2の態様に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉内の特定の領域から放射される特定核種の放射線の放射線の強度を表す放射線強度信号を送出し、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号に基づき前記炉の側面から見た放射線強度の2次元分布を算出するとともに、放射線の動きの流速分布を検出することにより前記炉の下部の特定位置における流速ベクトルを算出し、さらに前記流速ベクトルの変化が所定の時間に所定範囲に収まった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置にある。
【0043】
本態様によれば、流速ベクトルの変化がなくなり定常状態となったことを以て溶融の完了を検出することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、処理対象である放射性廃棄物が放射する放射線を検出することで、処理中の放射性廃棄物に生起されている対流の経時変化を把握することができる。すなわち、加熱処理中の放射性廃棄物の溶融状況が対流の経時変化に反映されることを利用して溶融の状況を検出するようにしたので、適切な溶融完了時期を、溶湯に触れることなく、また放射性廃棄物の種類や加熱シーケンスに依存することなく得ることができる。この結果、放射性廃棄物の未溶解といった状況を回避することができる。
【0045】
また、溶融状況を把握するために検出する放射線は処理対象である放射性廃棄物自身が放射する放射線を利用することができるので、トレーサーとして別途放射線を放射する核種を廃棄物中に混入させる必要もなく、極めて合理的に所期の溶融状況の検出を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施の形態の原理を説明するための説明図である。
【図2】図1の放射線検出センサによる放射線強度の検出原理を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施の形態において、放射性廃棄物の溶融の進行に伴い変化する放射線強度信号を示す波形図で、図3(a)は溶融初期、同図(b)は溶融中期、同図(c)は溶融完了直前における高周波成分の経時変化をそれぞれ示す特性図、図3(d)は溶融初期、同図(e)は溶融中期、同図(f)は溶融完了直前における直流成分の経時変化をそれぞれ示す特性図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る溶融状況の検出装置を示すブロック線図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の原理を説明するための説明図である。
【図6】第2の実施の形態において、放射性廃棄物の溶融の進行に伴い変化する放射線強度信号を示す波形図で、図6(a)は溶融初期、同図(b)は溶融中期、同図(c)は溶融完了直前における上部の放射線検出センサが検出する放射線強度信号の経時変化をそれぞれ示す特性図、図6(d)は溶融初期、同図(e)は溶融中期、同図(f)は溶融完了直前における下部の放射線検出センサが検出する放射線強度信号の経時変化をそれぞれ示す特性図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る溶融状況の検出装置を示すブロック線図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の原理を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る溶融状況の検出装置を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
<第1の実施の形態>
図1は本形態に係る溶融状況の検出装置の原理を説明するための説明図である。同図に示すように、アーク炉Aを形成する坩堝1内には処理対象である放射性廃棄物2が入れてある。放射性廃棄物2はトーチ3で形成される高温のプラズマ4により徐々に溶融されて比重が大きい最下層の金属溶融層5と比重が小さいスラグ層6とに分離される。また、溶融処理の程度によっては金属溶融層5中に未溶融廃棄物7が残存している場合があるが、溶融完了後出湯し、鋳型で成型するためには、かかる未溶融廃棄物7が金属溶融層5およびスラグ層6中に存在しないような溶融状況であることを保証する必要がある。
【0049】
一方、放射性廃棄物2の溶融が進行すると金属溶融層5およびスラグ層6でそれぞれ対流が発生する。かかる対流は溶融の進行に伴い一定の大きさまで発展して大きくなる。また、坩堝1内の放射性廃棄物2からは放射線が四方八方に放射されているが、放射性廃棄物2中の核種も対流に乗って移動する。そこで、坩堝1に対して水平方向で隣接する定位置に放射線の強度を検出するための放射線検出センサD1,D2を配設し、放射線検出センサD1,D2で放射線の強度を検出すれば対流の状況、ひいては溶融の状況を適確に判断し得ると考えられる。ここで、放射線検出センサD1,D2と坩堝1との間にコリメータC1,C2を配設することにより、放射性廃棄物2から放射される放射線の水平成分を選択して放射線検出センサD1,D2で検出することができる。
【0050】
図2は放射線検出センサD1,D2による放射線強度の検出原理を説明するための説明図である。同図に示すように、放射線検出センサD1,D2に半導体検出器を用いた場合を考えると次のようになる。半導体検出器内の空乏層内に入った放射線は、そのエネルギーレベルに相当する電子−正孔対をつくる。したがって、これを、図2(a)に示すような電流パルスとして測定すれば、この波高が、図2(b)の横軸に示すようなエネルギーレベルに相当することになる。かくして、その放射線のエネルギーレベル、すなわち放射線源の種類を特定できる。一方、測定時間におけるそのパルスの個数(図2(b)における縦軸)が放射能量の情報を反映したものになる。すなわち、図2(b)における縦軸が放射線の強度を表している。
【0051】
したがって、図2(a)に示すように、単位時間毎に得たエネルギースペクトルから、例えばコバルト(Co)もしくはセシウム(Cs)に相当するエネルギーレベルに着目することにより、図2(b)に示すように、CoもしくはCsからの放射線の強度の経時変化を測定することができる。
【0052】
かかる放射線の強度を表す放射線強度信号に基づき、これを特定の波長帯域や直流成分を通過させるバンドパスフィルタを用いたり、高速フーリエ変換を利用した周波数解析をすることによって、直流成分と溶湯の対流に起因する高周波成分に信号を分離して放射性廃棄物2の溶融状況を検出することができる。ここで、高周波成分は当該溶融状況を考慮して適切な特定の周波数成分を選択する。
【0053】
さらに詳言すると、放射性廃棄物2はその溶融が進行するに伴い、溶湯の対流に起因して放射性廃棄物2中の核種が移動する結果、放射線検出センサD1,D2で検出される放射線強度信号の高周波成分および直流成分は図3(a)〜図3(f)に示すように変化する。図3(a)は溶融初期における放射線強度信号の高周波成分の経時変化を示す特性図、同図(b)は溶融中期における前記高周波成分の経時変化を示す特性図、同図(c)は溶融完了直前における前記高周波成分の経時変化を示す特性図、同図(d)は溶融初期における放射線強度信号の直流成分の経時変化を示す特性図、同図(e)は溶融中期における前記直流成分の経時変化を示す特性図、同図(f)は溶融完了直前における前記直流成分の経時変化を示す特性図である。
【0054】
放射線強度信号の高周波成分は、図3(a)〜図3(c)に示すように、溶融の進行に伴う対流による特定核種(例えばCs,Co)の移動に起因して振幅が漸増する。一方、直流成分は、図3(d)〜図3(f)に示すように、溶融の進行に伴いそのレベルが漸減する。したがって、かかる高周波成分や直流成分の変化、または高周波成分や直流成分の変化の組み合わせにより放射性廃棄物2の溶融の程度を特定し得る。
【0055】
なお、溶融完了がなされた際には、Csはスラグ層6に多く含まれ、Coは金属溶融層5に多く含まれる傾向がある。そこで、溶融の進行によるスラグ層6と金属溶融層5との分離に伴いスラグ層6からはCsがより多く放射され、金属溶融層5からはCoがより多く放射される。したがって、放射線検出センサD1はCsに基づく放射線の強度を表す放射線強度信号を、放射線検出センサD2はCoに基づく放射線の強度を表す放射線強度信号を送出するものであることが好ましい。
【0056】
かかる検出原理を適用した本形態に係る検出装置のブロック線図を図4に示す。同図に示すように、本形態に係る溶融状況の検出装置は、アーク炉Aに入れられた放射性廃棄物2(図1参照;以下同じ)から放射される放射線を検出して所定の処理をするもので、コリメータB、放射線検出センサC、演算処理装置Dおよび表示部Eを有するものである。本形態における放射線検出センサCはアーク炉A(坩堝1(図1参照;以下同じ))の上部から放射される放射線を検出する上部放射線検出センサ13(図1のD1に相当する)およびアーク炉Aの下部(底部)から放射される放射線を検出する下部放射線検出センサ14(図1のD2に相当する)を有している。本形態における上部放射線検出センサ13はCsに基づく放射線の強度を表す放射線強度信号を、下部放射線検出センサ14はCoに基づく放射線の強度を表す放射線強度信号を演算処理装置Dにそれぞれ送出する。
【0057】
演算処理装置Dは上部および下部放射線検出センサ13、14から送出された放射線強度信号をそれぞれ処理する二系統の同様の信号処理系を有している。すなわち、周波数解析部15は入力された放射線強度信号を周波数分析して直流成分と所定領域の高周波成分とに分け、各成分を直流成分処理部17および高周波成分処理部19に送出する。直流成分処理部17は前記放射線強度信号における直流成分のレベルを検出して、これを表す直流レベル信号を送出する。高周波成分処理部19は前記放射線強度信号における高周波成分のレベルを検出して、これを表す高周波レベル信号を送出する。比較部21では、直流レベル信号と高周波レベル信号とを比較し、両者の差が所定値以上になったとき、溶融が完了したものと判断して上部溶融完了信号を送出する。この場合の所定値は、図3(c)および図3(f)に示すように、高周波成分が直流成分よりも充分大きくなるような、すなわちスラグ層6(図1参照;以下同じ)で充分な対流が生起されている状況を反映するような両者の比を採ることにより決定する。
【0058】
一方、もう一つの信号処理系を構成する周波数解析部16、直流成分処理部18、高周波成分処理部20、比較部22で下部放射線検出センサ14が検出したCoに基づく放射線の強度を表す放射線強度信号を同様に処理して下部溶融完了信号を送出する。
【0059】
アンド回路23では上部溶融完了信号と下部溶融完了信号とのアンド論理を採り、両者が何れも溶融完了を検出した場合に溶融完了信号を表示部Eに送出して溶融の完了を告知する。
【0060】
なお、上記実施の形態では、上部と下部のそれぞれにおいて溶融完了状態が検出された場合に溶融が完了したものと判断しているが、これに限るものではない。精度は劣るが、上部または下部放射線検出センサ13,14が送出する放射線強度信号の何れか一方(下部放射線検出センサ14に基づく場合がより好ましい)の信号処理系による処理結果に基づき溶融完了時点を検出することもできる。
【0061】
また、図3(d)〜図3(f)を参照すれば明らかな通り、溶融の進行に伴い、直流成分は漸減する。そこで、直流分の初期レベルに対する測定時の直流分のレベルが所定値を超えて小さくなったことを以て溶融完了と判断することもできる。
【0062】
<第2の実施の形態>
図5は本形態に係る溶融状況の検出装置の原理を説明するための説明図である。放射性廃棄物2(図1参照;以下同じ)の溶融が完了した状態では、図5に示すように、坩堝1の底部に金属溶融層5が形成され、その上に浮遊した状態でスラグ層6が形成される。ここで、前述の如く、Csはスラグ層6に多く含まれ、Coは金属溶融層5に多く含まれる傾向があることが知られている。したがって、放射線検出センサD3,D4で検出する特定核種をそれぞれCs、Coとすることでスラグ層6および金属溶融層5に含まれるCs,Coの割合に基づき溶融の状況を判断し得ると考えられる。
【0063】
さらに詳言すると、坩堝1の上部(スラグ層6が形成される領域)の放射線検出センサD3で検出されるCs,Coに対応する放射線強度信号は図6(a)〜図6(c)のように変化し、坩堝1の下部(金属溶融層5が形成される領域)の放射線検出センサD4で検出されるCs,Coに対応する放射線強度信号は図6(d)〜図6(f)のように変化する。なお、図6中、Csに対応する放射線強度信号を実線で、Coに対応する放射線強度信号を点線で示しており、図6(a)および図6(d)が溶融初期、図6(b)および図6(e)が溶融中期、図6(c)および図6(f)が溶融完了直前の経時変化をそれぞれ示している。
【0064】
坩堝1の上部の位置に対応する放射線検出センサD3で検出する放射線は溶融の進行に伴い、図6(a)〜図6(c)に示すように、Coに基づく量が相対的に漸減している。また、坩堝1の下部の位置に対応する放射線検出センサD4で検出する放射線は溶融の進行に伴い、図6(d)〜図6(f)に示すように、Csに基づく放射線の量が漸減している。ここで、Coを多く含む金属が溶融した場合には下方に移動して金属溶融層5を形成し、Csを多く含むスラグが溶融した場合には上方に移動してスラグ層6を形成する。したがって、放射線検出センサD3で検出されるCoに基づく放射線は未溶融の金属から放射されるものである。一方、放射線検出センサD4で検出されるCsに基づく放射線は未溶融のスラグから放射されるものである。未溶融の金属およびスラグは流動しない。そこで、図6(b)、(c)に示すCoのレベルおよび図6(e)、(f)に示すCsのレベルは変化しない。これに対し、放射線検出センサD3で検出されるCsに基づく放射線強度信号は溶融が進行するに伴いレベルが振動し、しかもその振幅が大きくなる。同様に、放射線検出センサD4で検出されるCoに基づく放射線検出信号は溶融が進行するに伴いレベルが振動し、しかもその振幅が大きくなる。
【0065】
かくして、溶融の完了はスラグ層6におけるCoの量および金属溶融層5におけるCsの量を指標とすることにより適確に判断し得る。かかる検出原理を適用した本形態に係る検出装置のブロック線図を図7に示す。同図に示すように、本形態における上部および下部放射線検出センサ33,34(図5のD3,D4に相当する)は、放射性廃棄物2の溶融が進行するに伴いスラグ層6に主に存在するCsおよび金属溶融層5に主に存在するCoを検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を演算処理装置Gに送出する。演算処理装置Gは上部および下部放射線検出センサ33、34から送出された放射線強度信号をそれぞれ処理する二系統の同様の信号処理系を有している。すなわち、Csレベル検出部35,36はそれぞれの放射線強度信号からCsのレベルを検出してこれを表すCsレベル信号を送出する。Coレベル検出部37,38はそれぞれの放射線強度信号からCoのレベルを検出してこれを表すCoレベル信号を送出する。比較部39,40はそれぞれのCsレベル信号とCoレベル信号とを比較して両者の比が所定値以上になった場合にそれぞれ上部または下部溶融完了信号を送出する。ここで、溶融完了直前になると坩堝1の上部のスラグ層6からはCsが主に放射され(図6(c)参照)、下部の金属溶融層5からはCoが主に放射され(図6(f)参照)るので、比較部39ではCsレベル信号に対するCoレベル信号のレベルが所定値以下になった場合、比較部40ではCoレベル信号に対するCsレベル信号のレベルが所定値以下になった場合にそれぞれ上部および下部溶融完了信号を送出する。
【0066】
アンド回路41では上部溶融完了信号と下部溶融完了信号とのアンド論理を採り、両者が何れも溶融完了を検出した場合に溶融完了信号を表示部Eに送出して溶融の完了を告知する。
【0067】
なお、上記実施の形態では、上部溶融完了信号と下部溶融完了信号とのアンド論理の成立により溶融が完了したものと判断しているが、これに限るものではない。精度は劣るが、上部または下部放射線検出センサ33,34が送出する放射線強度信号の何れか一方の信号処理系による処理結果に基づき溶融完了時点を検出することもできる。
【0068】
また、図6(a)〜図6(c)および図6(d)〜図6(f)を参照すれば明らかな通り、溶融の進行に伴い、上部放射線検出センサ33が検出するCoに基づく放射線強度信号、下部放射線検出センサ34が検出するCsに基づく放射線強度信号は漸減する。そこで、上部放射線検出センサ33で検出するCoに基づく放射線強度の初期値に対し検出された放射線強度が所定値以下となった場合、または下部放射線検出センサ34で検出するCsに基づく放射線強度の初期値に対し検出された放射線強度が所定値以下となった場合、さらには両者のアンド条件が成立した場合に、溶融完了と判断することもできる。
【0069】
<第3の実施の形態>
坩堝1を側面から見た放射線強度の2次元分布の測定を行い、その時間変化のデータを適切に処理することによって、放射線の動きの流速分布を得ることができる。すなわち、放射性核種の流速分布を得ることができ、これは放射性核種を内包している溶湯の動きを反映したものになる。したがって、溶湯の動きの有無によって、その観測場所の対象が溶融しているのか、否かを判断することができると考えられる。
【0070】
例えば、PIV法(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)と呼称されている流れの可視化方法を用いる。これは、流体中の目印となるトレーサー粒子、すなわち放射性廃棄物2中の核種の運動を時系列に撮影し、得られた画像から速度ベクトルを得る方法である。
【0071】
ここで、得られた画像から速度ベクトルを得るアルゴリズムに関しては、4時刻追跡法やパターン相関法といったものがある。例えば、4時刻追跡法とは、4枚の画像を用い、4時刻の粒子の位置が最も直線に近い組み合わせが正しい移動経路である確率が高いという考えに基づき、行う方法である。パターン相関法とは、2次元の画像が濃淡分布(ここでは、放射線強度の分布)を持っており、この分布が溶湯の対流と共に輸送される。したがって、図8に示すように、2次元分布内における任意の計測点に対してこの相互関係係数を求めることにより、この濃淡分布の移動先が分かれば、特定位置での特定核種の流速ベクトルが求まる。したがって、坩堝1の底部の流速ベクトルの変化が所定時間、所定の範囲に収まっていることを指標として放射性廃棄物2(図1参照;以下同じ)の溶融の完了を適確に判断し得る。
【0072】
かかる検出原理を適用した本形態に係る検出装置のブロック線図を図9に示す。同図に示すように、本形態における放射線検出センサHは坩堝1を側面から見た放射線強度の2次元分布の測定を行うものであり、測定した放射線の強度を表す放射線強度信号を演算処理装置Iに送出する。演算処理装置Iは速度ベクトル検出部51と比較部52からなる。速度ベクトル検出部51は、例えば、前述のPIV法により坩堝1の下部の特定位置における特定核種の流速ベクトルを算出し、そのリアルタイムの流速ベクトルの情報と直前のサンプリングにおける流速ベクトルの情報とを送出する。比較部52では、両流速ベクトルを比較し、その差が所定の範囲内に所定のサンプリング回数、連続して収まっている場合に、溶融が完了したものと判断し、溶融完了信号を表示部Eに送出する。
【0073】
ここで、得られた画像から速度ベクトルを得るアルゴリズムに関しては、前述の如き4時刻追跡法やパターン相関法を好適に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は放射線廃棄物、特に低レベル放射線廃棄物の溶融処理を行う産業分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
A アーク炉
C,F,H 放射線検出センサ
D,G,I 演算処理装置
1 坩堝
2 放射性廃棄物
5 金属溶融層
6 スラグ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉中に入れた放射性廃棄物を熱源により溶融させて処理する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出方法であって、
処理対象である前記放射性廃棄物により前記炉内の特定の位置から放射される放射線のうちその水平方向成分を時系列的に検出するとともに前記放射線の強度の変化により前記特定位置における前記放射性廃棄物の移動状況を把握して前記特定位置における前記放射性廃棄物の溶融状況を検出することを特徴とする放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出方法。
【請求項2】
炉中に入れた放射性廃棄物を熱源により溶融させて処理する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置であって、
処理対象である前記放射性廃棄物により前記炉内の特定の位置から放射される放射線のうちその水平方向成分を検出して前記放射線の強度を表す放射線強度信号を送出する放射線検出センサと、
前記放射線強度信号が表す放射線強度の経時的変化に基づき前記特定位置における前記放射性廃棄物の移動状況を把握して前記特定位置における前記放射性廃棄物の溶融状況を検出する演算処理手段とを有することを特徴とする放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分を抽出し、該直流成分のレベルとその初期値とを比較し、前記直流成分が前記初期値に対して所定値以下になった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分を抽出し、前記直流成分が漸減し、さらに前記直流成分のレベルの変動幅が所定範囲内に収まった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項5】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号の周波数分析を行うことにより高周波成分を抽出し、前記高周波成分の振幅が漸増し、さらに前記高周波成分の振幅の変動幅が所定範囲内に収まった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項6】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分と高周波成分とをそれぞれ抽出し、前記直流成分が漸減するとともに前記高周波成分の振幅が漸増し、さらに前記直流成分のレベルの変動幅と前記交流成分の振幅の変動幅とがそれぞれ所定範囲内に収まった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項7】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記演算処理手段は、放射線強度信号の周波数分析を行うことにより直流成分と高周波成分とをそれぞれ抽出し、前記直流成分のレベルと高周波成分のレベルとを比較することにより前記直流成分が漸減するとともに前記高周波成分の振幅が漸増することによる両者の比が所定値以下になった場合に溶融完了と判断して溶融完了信号を送出するように構成したものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7の何れか一つに記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、少なくとも前記炉の下部と上部との各特定位置から放射される放射線の水平成分をそれぞれ検出するとともに、
前記演算処理手段は、各特定位置から放射される放射線をそれぞれ処理するものであることを特徴とする放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項9】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第1の核種による放射線強度信号のレベルが前記第2の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項10】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の上部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第2の核種による放射線強度信号のレベルが前記第1の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項11】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部および上部における各特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記各特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記下部の特定位置における前記第1の核種による放射線強度信号のレベルが前記第2の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となり、且つ前記上部の特定位置における前記第2の核種による放射線強度信号のレベルが前記第1の核種による放射線強度信号のレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項12】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第1の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項13】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の上部における前記特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記第2の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項14】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉の下部および上部における各特定位置から放射される放射線の水平成分を検出するとともに、前記各特定位置から放射される金属層に多く含まれる第1の核種からの放射線と前記放射性廃棄物のうちスラグ層に多く含まれる第2の核種からの放射線とをそれぞれ検出してそれぞれの強度を表す放射線強度信号を送出するとともに、
前記演算処理手段は、前記下部の特定位置における前記第1の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となり、且つ前記上部の特定位置における前記第2の核種による放射線強度信号のレベルがその初期値におけるレベルに較べ、所定値以上となった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。
【請求項15】
請求項2に記載する放射性廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置において、
前記放射線検出センサは、前記炉内の特定の領域から放射される特定核種の放射線の放射線の強度を表す放射線強度信号を送出し、
前記演算処理手段は、前記放射線強度信号に基づき前記炉の側面から見た放射線強度の2次元分布を算出するとともに、放射線の動きの流速分布を検出することにより前記炉の下部の特定位置における流速ベクトルを算出し、さらに前記流速ベクトルの変化が所定の時間に所定範囲に収まった場合に前記放射性廃棄物の溶融が完了したものと判断して溶融完了を表す完了信号を送出するものであることを特徴とする放射線廃棄物の溶融処理時における溶融状況の検出装置。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−42360(P2012−42360A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184475(P2010−184475)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)