説明

放射線レベル計測装置

【課題】専門知識を要することなく簡単な操作で利用でき、特定箇所の放射線レベルを常時継続的に測定し、その測定した放射線レベル情報を測定現場から離れた特定の対象者に自動的に報知することができる、放射線レベル計測装置を提供する。
【解決手段】予め登録された所定のアドレスにインターネットを介して電子メールを自動送信し得るメール送信部12と、周辺の放射線レベルを検出する放射線センサ11と、該放射線センサの検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する報知メッセージを記憶するメモリ部14と、放射線センサが周辺の放射線を検出した場合に、その検出信号に対応した前記報知メッセージを前記メモリ部から呼び出し、前記メール送信部を介して前記所定のアドレスに自動送信させる制御部10と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺の放射線レベルを検出して報知する放射線レベル計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線レベルを検出して報知するシステムとしては、例えば、原子力発電所などの原子力施設内において、所定箇所の放射線レベルを常時継続的に計測して、その計測値を管理センタ等に送信するようにすることが考えられている。
【0003】
また、例えば特許文献1には、原子力プラント等の放射性物質取り扱い施設において外部への放射線放出を伴う事故が発生した際に、自治体あるいは民間の団体等から地域住民に対する安全確保のための情報を提供する線量等予測監視支援装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−326521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、原子力の安全性に対する関心の高まりに応じて、原子力施設の周辺の住民や店舗・事業所などにおいても、放射線漏れ等の不測の事態の発生に対してより迅速に対応できるように、自己周辺での放射線レベルを常時モニタ(監視)し、そのモニタ結果を自動的に知ることができるようにすることが望まれている。
【0005】
しかしながら、前記従来技術に係る計測装置は何れも、通常、原子力施設を運用する事業体や地方自治体などが設置し、また、専門技術者が取り扱うことを前提としているので、かなり大掛かりで構造も複雑なものとなり、操作も難しく、しかも非常に高価である。従って、一般の住民や中小の事業体などが自力で導入して利用することは、とても無理である。
【0006】
尚、比較的安価で簡単な操作により放射線レベルを測定できるものとしては、携帯式の所謂サーベイメータ等が在るが、これらはあくまでも測定者が携帯して任意の箇所で随時測定するものであり、特定箇所の放射線レベルを常時継続的に測定するものではなく、また、測定した放射線レベル情報を測定現場から離れた特定の対象者に自動的に報知できるものでもない。
【0007】
そこで、この発明は、専門知識を要することなく簡単な操作で利用でき、特定箇所の放射線レベルを常時継続的に測定し、その測定した放射線レベル情報を測定現場から離れた特定の対象者に自動的に報知することができる放射線レベル計測装置を提供することを、基本的な目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本願発明に係る放射線レベル計測装置は、予め登録された所定のアドレスに情報通信ネットワークを介して電子メールを自動送信し得るメール自動送信手段と、周辺の放射線レベルを検出する放射線検出手段と、該放射線検出手段の検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する報知メッセージを記憶する記憶手段と、前記放射線検出手段が周辺の放射線を検出した場合に、その検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する前記報知メッセージを前記記憶手段から呼び出し、前記メール自動送信手段を介して前記所定のアドレスに自動送信させる制御手段と、を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明に係る放射線レベル計測装置によれば、放射線検出手段が周辺の放射線を検出した場合には、その検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する報知メッセージを、予め登録された所定のアドレスに自動送信することができる。すなわち、当該装置を配置した箇所の放射線レベルを常時継続的に測定し、その測定した放射線レベル情報を測定現場から離れた特定の対象者に自動的に報知することができる。この場合において、ユーザは、専門知識は何ら要することはなく、放射線レベル情報の報知メッセージをメール送信すべき対象者のアドレスを登録しておくだけの簡単な作業を行うだけで、本装置を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態をについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線レベル計測および報知システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
この図に示すように、前記放射線レベル計測および報知システムS(以下、適宜、単に「システム」という)は、後で詳しく説明するように、予め登録された所定のアドレスに電子メールを送信する電子メール装置内に放射線検出手段を組み込んだ放射線レベル計測装置1(以下、適宜、単に「装置」という)を主要部として備え、この他に、情報通信ネットワークとしての所謂インターネットMを介して前記所定のアドレスを呼び出すダイヤルアップルータ5と、該ダイヤルアップルータ5と放射線レベル計測装置1とを接続させるハブ3とを備えている。このハブ3には、パーソナルコンピュータ7が放射線レベル計測装置1と並列に接続されている。
【0011】
前記パーソナルコンピュータ7は、例えば電子メール送信先のアドレスの登録など、放射線レベル計測装置1の初期設定を行う際に用いられるもので、この初期設定作業を終えた後はOFFされる。或いは、前記ハブ3との接続を断ってシステムSから取り外してもよい。本実施形態では、電子メール送信先として複数(例えば5つ程度)のアドレスを登録することができるようになっている。
前記電子メール送信先のアドレスの登録などの初期設定作業は、パーソナルコンピュータ7に付設されたキーボード8を用いた入力操作で行われる。尚、後述するように、検出された放射線レベルに対応した定型メッセージも、パーソナルコンピュータ7に付設されたキーボード8を用いて作成し、放射線レベル計測装置1内に入力することができる。
【0012】
図2は、前記放射線レベル計測装置1の構成を概略的に示すブロック構成図である。
この放射線レベル計測装置1は、インターネットMを介して電子メールを所定のアドレスに自動送信し得るメール自動送信機能を備えた、例えば「メーラ」等と呼ばれる市販されている普通の電子メール装置を若干改造した構造を備えている。すなわち、かかる電子メール装置の内部に、放射線検出手段の主要部を構成する放射線センサ11(以下、適宜、単に「センサ」という)を設け、中央処理部10によるメール自動送信の制御に若干の変更を加えることで実現することができる。換言すれば、放射線レベル検出機能付きの電子メール装置とも言えるものである。
【0013】
前記放射線センサ11は、当該装置1が配置された箇所の周辺の放射線レベルを検出するもので、その検知部11k(図1参照)は、装置1のケース体1cに設けた孔部から装置1の外方に臨んでいる。本実施形態では、この放射線センサ11として、例えばガイガ・ミュラー(GM)管式のものなど、市販の携帯式の放射線検知器に組み込まれている市販の放射線センサを用いた。尚、具体的には図示していないが、この放射線センサ11には、センサ駆動用の電源(例えば、交流100ボルトを変換した直流500ボルトの高圧電源)が付設される。
【0014】
かかる放射線センサ11としては、上述のものに限定されることはなく、周辺の放射線レベルをある程度以上の精度で計測でき、且つ、電子メール装置(メーラ)内に支障なく収容できるものであれば、他の種々の公知のセンサを用いることができる。特に、できるだけ小型で安価なものが好ましい。
【0015】
前記放射線センサ11は、放射線レベル計測装置1の制御部10に信号授受可能に接続されており、センサ11の検出信号はこの制御部10に入力される。該制御部10は、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成され、前記放射線センサ11以外に、メール送信部12,装置外部との入出力部13,メモリ部14および表示部15が、それぞれ信号授受可能に接続されている。
【0016】
前記メール送信部12は、公知の電子メールソフトを用いることにより、予め登録された所定のアドレスに対しインターネットMを介して電子メールを自動送信するもので、制御部10からの命令信号に従って作動させられる。このメール送信部12の出力側は、次に述べるように、装置外部との入出力部13を介して前記ハブ3に接続され、図1に示されるように、このハブ3及びダイヤルアップルータ5を順次介してインターネットMに繋がっている。また、メール送信部12には、より好ましくは専用のメモリ部(不図示)を備えており、放射線レベル計測装置1の初期設定時にパーソナルコンピュータ7により入力された登録アドレスは、メール送信部12の前記専用メモリ部に格納されるようになっている。
【0017】
前記(装置外部との)入出力部13は、放射線レベル計測装置1の内部の構成要素と装置外部の構成要素とを信号授受可能に接続するもので、本実施形態では、装置1内部の制御部10及びメール送信部12が、入出力部13を介して、それぞれ装置1外部のハブ3と電気的に繋がっている。装置1の初期設定時、パーソナルコンピュータ7から登録入力された電子メール送信先のアドレスは、制御部10に付設されたメモリ部14に記憶される。
【0018】
また、このメモリ部14には、放射線センサ11の検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する報知メッセージが記憶されている。例えば放射線レベルを3段階(レベルN1,N2,N3)に区分けして報知する場合、例えば「ただ今、レベルN1(又はN2或いはN3)の放射線を検知しました」という定型の報知メッセージが用意されている。尚、かかるメッセージは、装置1の初期設定時に、パーソナルコンピュータ7に付設されたキーボード8を用いて作成し、メモリ部14内に格納される。尚、かかる報知メッセージの表現内容等は、初期設定時に、ユーザの好みに応じて変更することもできる。
【0019】
前記表示部15は、例えば装置1の電源状態などを発光ダイオード(LED)によるランプ点灯などで知らせるものである。
【0020】
以上の構成において、放射線センサ11が周辺の放射線を検出した場合、その検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する報知メッセージがメモリ部14から呼び出され、メール送信部12に入力され、このメール送信部12から前記入出力部13,ハブ3,ダイヤルアップルータ5を経た後インターネットMを介して、予め登録された所定のアドレスに自動送信されるようになっている。
【0021】
次に、この報知メッセージの送信制御について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
放射線レベル計測装置1の電源がONされ、パーソナルコンピュータ7を用いて前述の初期設定を終えるとシステムがスタートされる。尚、この初期設定条件は、一旦登録されると、装置1の電源がOFFされても保存される。従って、条件設定の変更を意図しない限り、次回からは装置1の電源をONして立ち上げるだけで、システムがスタートするようになっている。
【0022】
システムがスタートすると、まずステップ#1で、放射線センサ11による放射線モニタ(つまり、周辺の放射線レベルの検出)が開始され、次に、ステップ#2で、センサ11による放射線レベル検出値が予め設定された閾値以上であるか否かが判定される。この閾値は、3段階に区分けされた放射線レベル(レベルN1,N2,N3)のうち最も低いレベルN1の下限値に相当する値として設定されている。
【0023】
このステップ#2での判定結果がNOの間は、放射線が検出されなかったか検出されてもレベルN1の下限値にも達しない極めて微量であるので、レベル判定が行われることはなく、このステップ#2の判定が継続して繰り返される。そして、ステップ#2での判定結果がYESになると、ステップ#3で、放射線レベル判定が行われる。つまり、検出された放射線量が3段階に区分けされた放射線レベル(レベルN1,N2,N3)の何れに属するかが判定される。
【0024】
この放射線レベル判定の結果を受けて、ステップ#4で、判定された放射線レベルに対応した報知メッセージがメモリ部14から読み出される。すなわち、判定された放射線レベルがレベルN1(又はN2或いはN3)であれば、例えば、「ただ今、レベルN1(又はN2或いはN3)の放射線を検知しました」という定型の報知メッセージが呼び出される。
【0025】
そして、ステップ#5で、この呼び出された報知メッセージがメール送信部12に出力され、ステップ#6で、メール送信部12から登録されている所定のアドレスに対して前記報知メッセージが配信される。つまり、メール送信部12から前記入出力部13,ハブ3,ダイヤルアップルータ5を経た後インターネットMを介して、予め登録された所定のアドレスに自動送信されるようになっている。
【0026】
これにより、登録されたメールアドレスを有する報知対象者は、測定現場(放射線レベル計測装置1の設置箇所)から遠く離れていても、測定現場での放射線レベルを常時継続的に知ることができ、原子力施設等から放射線漏れがあった場合などにも、より迅速かつ的確に対処することができるようになる。
【0027】
ステップ#6でのメール配信を終えると、ステップ#7で、タイマ(不図示)が始動されてメール配信後の経過時間がカウントされ、ステップ#8で、この経過時間が予め設定された所定時間T(例えば、T=5分間)に達したか否かが判定され、この判定結果がYESになると、ステップ#1に戻り、それ以降の各ステップが繰り返して実行されるようになっている。尚、図3に示した一連のフローは、装置1の電源をOFFしない限り、継続して繰り返される。
【0028】
すなわち、本実施形態では、メール配信の周期は、例えば最短でも5分間に設定されている。このメール配信の最短周期は、タイマの設定を変更することでユーザが任意に選ぶことができる。このように、メール配信の最短周期をユーザの意志に応じて変更可能としたことにより、メール配信の周期を(つまり、報知メッセージの送信間隔を)長く設定することで、検出された放射線レベルが比較的長時間にわたって同一である場合において、同じ内容の電子メールが何度も繰り返し配信されることを緩和し、同一メールの繰り返し配信回数を低減することができる。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態によれば、放射線センサ11が周辺の放射線を検出した場合には、その検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する報知メッセージを、予め登録された所定のアドレスに自動送信することができる。すなわち、当該装置1を配置した箇所の放射線レベルを常時継続的に測定し、その測定した放射線レベル情報を測定現場から離れた特定の対象者に自動的に報知することができるのである。この場合において、ユーザは、専門知識は何ら要することはなく、放射線レベル情報の報知メッセージをメール送信すべき対象者のアドレスを登録しておくだけの簡単な作業を行うだけで、本装置1を利用することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る放射線レベル計測装置は、インターネットMを介して電子メールを所定のアドレスに自動送信し得るメール自動送信機能を備えた普通の電子メール装置を改造した構造を利用し、その内部に放射線センサ11を設け、メール自動送信の制御に若干の変更を加えることで実現できるので、従来の定置型の放射線レベル計測装置に比して遙かに安価に提供することができる。また、設置や取り扱いも非常に簡単である。
【0031】
尚、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や修正を加え得るものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、周辺の放射線レベルを検出して報知する放射線レベル計測装置に関するもので、専門知識を要することなく簡単な操作で利用でき、特定箇所の放射線レベルを常時継続的に測定し、その測定した放射線レベル情報を測定現場から離れた特定の対象者に自動的に報知することができる放射線レベル計測装置として、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線レベル計測および報知システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
【図2】前記実施形態に係る放射線レベル計測装置の構成を概略的に示すブロック構成図である。
【図3】前記放射線レベル計測装置における報知メッセージの送信制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 放射線レベル計測装置
10 制御部
11 放射線センサ
12 メール送信部
14 メモリ部
M インターネット
S 放射線レベル計測および報知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め登録された所定のアドレスに情報通信ネットワークを介して電子メールを自動送信し得るメール自動送信手段と、
周辺の放射線レベルを検出する放射線検出手段と、
該放射線検出手段の検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する報知メッセージを記憶する記憶手段と、
前記放射線検出手段が周辺の放射線を検出した場合に、その検出信号に対応した放射線レベル情報を報知する前記報知メッセージを前記記憶手段から呼び出し、前記メール自動送信手段を介して前記所定のアドレスに自動送信させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする放射線レベル計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58390(P2009−58390A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226269(P2007−226269)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(506273548)有限会社エヌアンドエス (3)