説明

放射線断層撮影装置用のデータ収集器およびそれを備えた放射線断層撮影装置、放射線断層撮影用データ収集方法

【課題】真の同時計数の数え落としを低減する放射線断層撮影用のデータ収集器を提供する。
【解決手段】
放射線検出器においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を作成するタイミング回路27と、1つの検出周期中において複数のタイミング回路27から送られる複数の時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成部31と、複数のタイミング合成部31から送られる複数の合成時間情報を照合して真の同時計数における時間情報を判別する同時計数判別部36とを備える放射線断層撮影装置用のデータ収集器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める放射線断層撮影装置用のデータ収集器およびそれを備えた放射線断層撮影装置、放射線断層撮影用データ収集方法に係り、特に、同時に発生したイベントに対して同時計数の数え落としを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽電子(ポジトロン:Positron)の消滅によって発生する2本のγ線を複数個の検出器で検出する。 具体的には、陽電子放出核種を含んだ放射性薬剤を被検体内に投与して、投与された被検体内から放出される対消滅γ線を多数の放射線検出器で検出する。そして、2つの放射線検出器で一定時間内にγ線を検出した場合に同時に検出したとして、それを一対の対消滅γ線として計数する。さらに対消滅発生地点を、検出した2つの放射線検出位置を結ぶ直線上に特定する。このように同時計数情報を蓄積して再構成処理を実施することで、陽電子放出核種分布画像、すなわち断層画像を得ることができる。
【0003】
PET装置で用いられる放射線検出器は、複数のシンチレータを有するシンチレータブロックと光電子増倍管(PMT)とが組み合わされたものである。この放射線検出器をリング状に多数個配置して検出器リングを構成する。このように配置された放射線検出器間で、対消滅γ線の同時計数を実施してデータ収集を行う。このデータ収集において、個々の放射線検出器ごとに同時計数の判別を実施すると同時計数の組み合わせ数が膨大になる。また、イベントが発生した放射線検出器と、これに近い位置にある別の放射線検出器との同時計数を判別しても不要なデータしか得ることができない。
【0004】
そこで、各放射線検出器で検出されたイベントの同時計数を効率良く判別するために、特許文献1に記載されているように、各放射線検出器をいくつかのグループに分ける。複数の放射線検出器を有するそれぞれのグループが1つの放射線検出器として機能するように、グループ内の各放射線検出器のイベント情報をまとめることで、各グループ間で同時計数の判別を実施する。このように、グループ間で同時計数の判別を実施することで、同時計数の組み合わせの数を減らすことができ、同時計数回路の数を抑えることができる。
【0005】
図9を参照して、グループ間での同時計数の判別を説明する。入射されたγ線をパルス信号として検出する放射線検出器71には、それぞれ検出器信号処理回路72が接続されている。検出器信号処理回路72は、放射線検出器71から入力されるパルス信号を基に、入射されたγ線の位置情報、入射されたγ線のエネルギー情報および検出された時間情報をそれぞれ検出する位置演算回路73、エネルギー演算回路74およびタイミング回路75を有する。
【0006】
放射線検出器71においてγ線がパルス信号として検出されたイベントに関するこれらの位置情報、エネルギー情報および時間情報が1つのイベント情報として検出器信号処理回路72からグルーピング回路76に送られる。グルーピング回路76は、複数の検出器信号処理回路72から送られるイベント情報を同時計数回路77へ順次出力する。同時計数回路77は、イベント情報に含まれる時間情報を用いてグルーピング回路76間での同時計数の判別を実施する。このように、イベント情報は、検出器信号処理回路72からグルーピング回路76を経て同時計数回路77へと一方通行で送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−342074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のグルーピング回路76を用いての同時計数の判別には、以下の問題点がある。すなわち、1つのグループ内の各放射線検出器71において、同一のタイミングで複数のイベントが検出された場合、これら全てのイベント情報を、グルーピング回路76を介して同時計数回路77へ送信することができない。これらのイベント情報には、真のイベント情報の他に散乱線による偽のイベント情報が含まれる。
【0009】
全てのイベント情報を送信することは、データ量が膨大になり、処理速度が間に合わず困難である。そこで、グルーピング回路76にて、同じタイミングで送られた複数のイベント情報の中から、グループとして出力するイベント情報を選択する必要がある。この際、真の同時計数となるイベント情報を選択することが好ましいが、グルーピング回路76の段階ではどのイベント情報が真のイベント情報であるか判別できない。
【0010】
そこで、グルーピング回路76では、同じタイミングで発生した2つ以上のイベント情報のうち1つをランダムに選択して同時計数回路77へ出力する。グルーピング回路76において選択されたイベント情報が真の同時計数となるイベント情報でない場合、同時計数回路77において対となるイベント情報が見つからないので、真の同時計数の数え落としが発生する。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、同時計数の判別に用いるイベント情報を低減することで情報処理の負荷を軽減するとともに、真の同時計数の数え落としを低減する放射線断層撮影用のデータ収集器およびそれを用いた放射線断層撮影装置、放射線断層撮影用データ収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、放射線検出器においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を出力するタイミング回路と、1つの検出周期中において複数の前記タイミング回路から送られる複数の前記時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成部と、複数の前記タイミング合成部から送られる複数の前記時間情報を照合して真の同時計数における時間情報を判別する同時計数判別部とを備える放射線断層撮影装置用のデータ収集器。
【0013】
上記構成によれば、γ線が放射線検出器に入射するとパルス信号として検出されるイベントの発生時間をタイミング回路が時間情報として出力する。1つの検出周期中に複数のタイミング回路から送られる複数の時間情報を、タイミング合成部が1つの合成時間情報として合成する。同時計数判定部は、各タイミング合成部から送られる複数の合成時間情報を照合して真の同時計数における時間情報を判別する。
【0014】
1つの検出周期中に各放射線検出器にて検出された同一グループにおける全てのイベントの時間情報が、タイミング合成部にて合成時間情報としてまとめられる。同時計数判定部は、各タイミング合成部間で、合成時間情報を照合することで真の同時計数における時間情報を判別することができる。イベント情報の中で、時間情報だけを合成して同時計数の判別することで、同時計数の判別のデータ量を低減することができる。また、1つの検出周期中に発生した複数のイベントに関して同時計数の判別をすることができるので、真の同時計数の数え落としを低減することができる。
【0015】
また、前記放射線検出器において検出されるイベントの発生した位置情報を算出する位置演算回路と、前記放射線検出器において検出されるイベントのエネルギー情報を算出するエネルギー演算回路と、前記同時計数判別部により真の同時計数と判別されたイベントにおける位置情報およびエネルギー情報を対にして送り出す同時計数回路とを備えることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、γ線が放射線検出器に入射するとパルス信号として検出されるイベントの発生した位置情報を位置演算回路が算出し、イベントのエネルギー情報をエネルギー演算回路が算出する。同時計数回路は、同時計数判別部により真の同時計数と判別されたイベントにおける位置情報およびエネルギー情報を対にして送り出すので、真の同時計数の数え落としを低減した対のイベント情報を出力することができる。
【0017】
また、複数の前記位置演算回路および前記エネルギー演算回路から送られる各イベントの位置情報およびエネルギー情報を前記同時計数回路へ出力するグルーピング回路と、前記タイミング回路から前記タイミング合成部を介して前記同時計数判別部までの第1情報送信系統と、前記位置演算回路および前記エネルギー演算回路から前記グルーピング回路を介して前記同時計数回路までの第2情報送信系統とを備えることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、グルーピング回路は、複数の位置演算回路およびエネルギー演算回路から送られる各イベントの位置情報およびエネルギー情報をグループとして同時計数回路へ出力する。時間情報の送信系統として、タイミング回路からタイミング合成部を介して同時計数判別部までの第1情報送信系統を有し、位置およびエネルギー情報の送信系統として位置演算回路およびエネルギー演算回路からグルーピング回路を介して同時計数回路までの第2情報送信系統とを有する。時間情報の送信系統と位置およびエネルギー情報の送信系統と別々の送信系統を有することで、時間情報と位置およびエネルギー情報との情報処理を別々に実施することができ、効率的に真の同時計数のイベント情報のペアリングを実施することができる。
【0019】
また、前記位置演算回路および前記エネルギー演算回路においてそれぞれ算出された前記位置情報および前記エネルギー情報を記憶する記憶部を有し、前記同時計数判別部から前記記憶部へ真の同時計数と判別されたイベントにおける前記位置情報および前記エネルギー情報の取り込みを指示する第3情報送信系統を備えることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、同時計数判別部により真の同時計数と判別された時間情報と対応する位置情報およびエネルギー情報の取り込みを指示する第3情報送信系統を有するので、真の同時計数と判別されなかったイベントの位置情報およびエネルギー情報を送信する必要がないので、情報量を低減し、情報処理の負荷を軽減をすることができる。
【0021】
また、本発明に係る第2の発明は、被検体から照射される放射線を検出する放射線検出器と、前記放射線検出器において検出されたデータを収集するデータ収集器を備え、前記データ収集器は、前記放射線検出器においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を作成するタイミング回路と、1つの検出周期中において複数の前記タイミング回路から送られる複数の前記時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成部と、複数の前記タイミング合成部から送られる複数の前記合成時間情報を照合して真の同時計数における前記時間情報を判別する同時計数判別部とを有する放射線断層撮影装置である。
【0022】
上記構成によれば、各放射線検出器にて1つの検出周期中に検出された複数のイベントの時間情報を、タイミング合成部にて合成時間情報としてまとめられる。同時計数判定部は、各タイミング合成部間で、合成時間情報を照合することで真の同時計数における時間情報を判別することができる。イベント情報の中で、時間情報だけを合成して同時計数の判別することで、同時計数の判別のデータ量を低減することができる。また、1つの検出周期中に発生した複数のイベントに関して同時計数の判別をすることができるので、真の同時計数の数え落としを低減することができる。このように、真の同時計数率を向上することができるので、放射線断層像のS/Nを向上することができる。
【0023】
また、本発明に係る第3の発明は、放射線検出器においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を出力する時間情報出力ステップと、1つの検出周期中において発生した複数のイベントの前記時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成ステップと、複数の前記合成時間情報を照合して真の同時計数における前記時間情報を判別する同時計数判別ステップとを備える放射線断層撮影用データ収集方法である。
【0024】
上記方法によれば、各放射線検出器にて1つの検出周期中に検出された複数のイベントの時間情報を、タイミング合成ステップにて合成時間情報としてまとめられる。同時計数判定ステップにて、複数の合成時間情報を照合することで真の同時計数における時間情報を判別することができる。イベント情報の中で、時間情報だけを合成して同時計数の判別をすることで、同時計数の判別のデータ量を低減することができる。また、1つの検出周期中に発生した複数のイベントに関して同時計数の判別をすることができるので、真の同時計数の数え落としを低減することができる。
【0025】
また、前記放射線検出器において検出されるイベントの発生した位置情報を算出する位置演算ステップと、前記放射線検出器において検出されるイベントのエネルギー情報を算出するエネルギー演算ステップと、真の同時計数と判別されたイベントにおける前記位置情報および前記エネルギー情報を対にして送り出す同時計数ステップとを備えることが好ましい。
【0026】
上記方法によれば、位置演算ステップにて、γ線が放射線検出器に入射するとパルス信号として検出されるイベントの発生した位置情報を算出し、エネルギー演算ステップにて、イベントのエネルギー情報を算出する。同時計数ステップにて、同時計数判別ステップにて真の同時計数と判別されたイベントにおける位置情報およびエネルギー情報を対にして送り出すので、真の同時計数の数え落としを低減した対のイベント情報を出力することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る放射線断層撮影用のデータ収集器およびそれを用いた放射線断層撮影装置、放射線断層撮影用データ収集方法によれば、同時計数の判別に用いるイベント情報を低減することで情報処理の負荷を軽減するとともに、真の同時計数の数え落としを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例に係るPET装置のブロック図である。
【図2】実施例に係る放射線検出器の概略斜視図である。
【図3】実施例に係る検出器リングの概略正面図である。
【図4】実施例に係るデータ収集器の構成を示すブロック図である。
【図5】実施例に係るデータ収集器の構成を示すブロック図である。
【図6】実施例に係る時間情報の情報量を示す説明図である。
【図7】実施例に係るデータ収集の流れを示すフローチャートである。
【図8】変形例に係るデータ収集器の構成を示すブロック図である。
【図9】従来例に係るデータ収集器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0029】
1.PET装置
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、実施例におけるPET装置の構成を示すブロック図であり、図2は実施例における放射線検出器の概略斜視図であり、図3は実施例における検出器リングの概略正面図である。なお、本発明の放射線の一例として、実施例ではγ線を挙げて説明する。
【0030】
実施例におけるPET装置1は、被検体Mを載置する天板2と、天板2を導入させる開口部を有するガントリ3と、被検体Mから放射されるγ線を検出する放射線検出器4と、ガントリ3の内部に放射線検出器4をリング状に配置された検出器リング5とを備える。検出器リング5に設けられた開口は、天板2の長手方向、つまり、被検体Mの体軸方向であるz方向に伸びた円筒形となっている。また、PET装置1は、天板2を駆動する天板移動機構6と、天板2の移動量を制御する天板移動制御部7と、各放射線検出器4にシリアルナンバーとなっている時刻情報を送るクロック8と、各放射線検出器4で検出されたイベント情報を収集するデータ収集器9と、収集されたイベント情報を基に断層像を再構成する画像再構成部10とを備える。
【0031】
天板2は、ガントリ3および検出器リング5の開口をz方向から貫通するように設けられており、z方向に沿って往復可能である。この様な天板2の往復移動は、天板移動機構6によって実現される。天板移動機構6は、天板移動制御部7によって天板2の移動量が制御される。天板2は、その全体が検出器リング5の外側に位置している待機位置から、検出器リング5の一方側の開口を通って内部に導入される。さらに、検出器リング5の内部を貫通して、検出器リング5のもう一方側の開口から突き出ることができる。
【0032】
放射線検出器4は、被検体Mから発生したγ線を光に変換するシンチレータブロック4aと、変換された光を光電変換して電気のパルス信号に変換する光電子倍増管4bとを備える。シンチレータブロック4aは複数個のシンチレータを有する。この光電子倍増管4bでパルス信号が検出されることをイベントと称す。放射線検出器4は、どのシンチレータ結晶が光を発したかという光発生位置、また、光のエネルギー、および光の発生した時間を検出する検出器信号処理回路21と接続されている。100個前後の放射線検出器4をz方向に垂直な平面上の仮想円に放射状に配列することで1つの単位リングが形成される。この単位リングをz方向に複数個配列することで検出器リング5が構成される。
【0033】
PET装置1は、さらに、各部を統括的に制御する主制御部11と、再構成された断層像を表示するモニタ12と、操作者が様々な設定入力する操作卓13と、断層像や種々のデータを保管する記憶器14とを備えている。主制御部11は、CPU(中央演算処理装置)などで構成されている。画像再構成部10はマイクロプロセッサまたはFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成してもよいし、主制御部11のCPUの一部の構成としてもよい。また、操作卓13は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。操作者は、撮像開始を操作卓13から指示することができる。モニタ12として、たとえば、液晶表示装置またはCRTディスプレイが挙げられ、記憶器14としてはハードディスクやメモリ、ストレージなどの記憶媒体が挙げられる。
【0034】
2.データ収集器
次に、図4および図5を参照してデータ収集器の説明をする。図4および図5は、データ収集器の構成を示すブロック図である。
【0035】
データ収集器9は、放射線検出器4で検出されたパルス信号から、光が検出された位置情報、光のエネルギー情報、および光の検出された時間情報を収集し、対となる真のイベント情報を計数する。データ収集器9は、各放射線検出器4と接続される検出器信号処理回路21と、複数の検出器信号処理回路21から出力される情報を1つのグループとしてまとめて出力するグルーピング部22と、グルーピング部22間で各イベント情報のペアを判別して真のイベント情報を計数する同時計数部23を備える。
【0036】
検出器信号処理回路21は、さらに、放射線検出器4で光が検出された位置を算出する位置演算回路25と、放射線検出器4で検出された光のエネルギーを算出するエネルギー演算回路26と、放射線検出器4で光が検出された時間を検出するタイミング回路27と、位置演算回路25が出力する時間情報およびエネルギー演算回路26が出力するエネルギー情報を記憶するメモリ28とを有する。検出器信号処理回路21は、クロック8から入力されるクロック信号に基づき、予め定められた検出周期すなわち1フレームごとに信号処理を実施する。本実施例では、1フレームを127nsecとするが、この値に限ることなく設定してもよい。メモリ28は本発明における記憶部に相当する。
【0037】
位置演算回路25は、光電子倍増管4bで検出された光の位置を算出する。算出された位置情報はデータ線42を通ってメモリ28へ送られて保管される。エネルギー演算回路26は、光電子倍増管4bで検出された光のエネルギーを算出する。算出されたエネルギー情報もデータ線42を通ってメモリ28へ送られて保管される。
【0038】
タイミング回路27は、光電子倍増管4bで光が検出されてパルス信号が立ち上がる時の時刻を検出することができる。このように、放射線検出器4においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報がタイミング発生回路27から出力されてデータ線40を通ってグルーピング部22内のタイミング合成部31へ入力される。イベントの発生の有無を、たとえば、1nsec単位で計測する場合、1フレームの時間情報は128個のデータを有する。そして、パルス信号の立ち上がりが検出されない場合ゼロのデータを有し、パルス信号の立ち上がりが検出された場合、対応する時間情報を有するデータを有する。図6を参照して説明すると、たとえば、フレーム周期の開始から1nsecでイベントが発生した場合、1ビット目の情報を1にした時間情報Taを送り出す。他にも、フレーム周期の開始から7nsecでイベントが発生した場合、1〜3ビット目の情報を1にした時間情報Tbを送りだす。フレーム周期の開始から10nsecでイベントが発生した場合は、2および4ビット目の情報を1にした時間情報Thを送りだす。このようにして、1フレームの時間情報は、7ビットで表現することができる。各タイミング回路27から時間情報に関して7ビットの情報量が出力される。また、この時間情報には、どの検出器信号処理回路21において検出された情報であるかを表すID情報も添付される。ID情報として、たとえば、全ての検出器信号処理回路21に順番に振り分けられた通し番号でもよい。
【0039】
グルーピング部22は、同一グループとして分けられた複数の検出器信号処理回路21から入力される各イベント情報を1つにまとめて同時計数部23へ出力する。グルーピング部22は、各検出器信号処理回路21内のタイミング回路27から1つの検出周期中に入力される複数の時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成部31と、同時計数部23により真の同時計数のイベントと判別された時間情報を送信した検出器信号処理回路を特定する処理回路特定部32と、各検出器信号処理回路21内のメモリ28から入力される位置情報およびエネルギー情報をグループの情報として出力するグルーピング回路33とを有する。
【0040】
タイミング合成部31は、論理和を取るOR回路で構成される。各タイミング回路27から入力される7ビットの時間情報の論理和を取るので、タイミング合成部31から出力される合成時間情報は127ビットの情報量を有する。図6を参照して説明すると、検出する単位時間である1nsecに対して合成時間情報として1ビット対応させて、パルス信号の立ち上がりが検出された時間に対応するビットを1で表わし、パルス信号の立ち上がりが検出されなかった時間に対応するビットを0で表わす。図6では、1、7、10nsecにおいて、イベントの発生が検出されたので、1、7、10ビット目の情報を1にした合成時間情報MTaが出力される。
【0041】
同一フレームで複数のイベントが発生し、複数のタイミング回路27から1のデータを含む時間情報が入力された場合、合成時間情報は、複数のビットが1になる。このように、1フレーム中に検出された各タイミング回路27の時間情報が全く同一の時刻でないかぎり、それぞれの時間情報が保持されて合成時間情報としてデータ線41を通って同時計数部23内の同時計数判定部36へ出力される。また、この合成時間情報には、どのタイミング合成部31において合成された情報であるかを表すID情報も添付される。ID情報として、たとえば、全てのグルーピング部22に順番に振り分けられた通し番号でもよい。なお、時間情報および合成時間情報は、このように単純なデータ以外にも、ビット数を減らすために暗号化されたデータでもよい。データ線40およびデータ線41は本発明における第1情報送信系統に相当する。
【0042】
処理回路特定部32は、同時計数部23内の同時計数判定部36により判別された真の同時計数におけるイベントの時間情報が同時計数情報として同時計数判定部36よりデータ線45を通って入力される。入力された同時計数情報となる時間情報を送信した検出器信号処理回路21を特定し、真のイベントの時間情報と対応する位置情報およびエネルギー情報をグルーピング回路33へ出力するように出力許可信号をデータ線46を介して検出器信号処理回路21内のメモリ28に指示する。データ線45およびデータ線46は本発明における第3情報送信系統に相当する。
【0043】
グルーピング回路33は、各検出器信号処理回路21内のメモリ28からデータ線43を通って送られる真のイベントの位置情報およびエネルギー情報を、グループの代表として同時計数回路37へデータ線44を介して送り出す。データ線43およびデータ線44は本発明における第2送信系統に相当する。
【0044】
同時計数部23は、各グルーピング部22のタイミング合成部31から送られる各合成時間情報を照合する同時計数判別部36と、真の同時計数と判別された2つのイベントの位置情報、エネルギー情報を対となる真のイベント情報として画像再構成部10へ出力する同時計数回路37とを有する。
【0045】
同時計数判別部36は、各タイミング合成部31から送られる合成時間情報を照合して、それぞれ対となる時間情報の有無を判別して、真の同時計数となるイベントの時間情報を検出する。1のデータを有する合成時間情報を出力したタイミング合成部31に対して、そのグループと対向して配置されているグループのタイミング合成部31からの出力された合成時間情報を検索して、互いの時間情報を優先的に照合して同時計数の有無を判別する。真の同時計数または偶発同時計数におけるイベントと判別された時間情報は、同時計数回路37へ送られると共に、同時計数情報として添付されたID情報を基にそれぞれのグルーピング部22の処理回路特定部32へ送られる。
【0046】
同時計数回路37は、各グルーピング回路33から送られる真のイベントと判別された位置情報およびエネルギー情報に同時計数判定部36から送られた時間情報をセットにする。さらに、互いにペアとなるイベントの位置情報、エネルギー情報および時間情報を対の真のイベント情報として画像再構成部10へ出力する。
【0047】
3.イベントデータ収集
次に、図7を参照して、イベントデータの収集方法を説明する。図7は実施例に係るイベントデータの収集の流れを示すフローチャートである。
【0048】
被検体Mから放出されるγ線が放射線検出器4に入射すると、シンチレータブロック4aにてγ線から光に変換される。変換された光が光電子倍増管4bに入射すると、パルス信号として検出される。つまり、被検体Mから放出されるγ線がパルス信号として検出されるイベントが発生する。検出器信号処理回路21では、この検出されたパルス信号から、このイベントにおける各種情報が検出される。すなわち、位置演算回路25は光が検出された位置情報を、エネルギー演算回路26は光のエネルギー情報を、タイミング回路27は光の検出時刻である時間情報をそれぞれ検出する(ステップS01)。
【0049】
検出された位置情報およびエネルギー情報はメモリ28に一旦保管される。イベント情報の中で時間情報だけがグルーピング22内のタイミング合成部31へ送信される。(ステップS02)。タイミング合成部31では、同じフレーム内で検出された時間情報、つまり、同一のフレームで入力された時間情報の論理和を取ることで合成した合成時間情報を作成する(ステップS03)。合成された合成時間情報は同時計数部23内の同時計数判別部36へ送信される(ステップS04)。
【0050】
同時計数判別部36は、同じフレームで入力された複数の合成時間情報から対となる時間情報を判別して、真の同時計数となるイベントの時間情報を検出する(ステップS05)。次に、真の同時計数と判別されたイベントの時間情報を同時計数情報として、添付されたID情報を基に、このイベントの時間情報を含む合成時間情報を送信したグルーピング部22の処理回路特定部32へ送信する(ステップS06)。
【0051】
処理回路特定部32は、タイミング合成部31から検出器信号処理回路21のID情報が添付された各時間情報が入力されており、この時間情報と同時計数情報とを照合して、真の同時計数と判別されたイベントの時間情報を検出した検出器信号処理回路21を特定する(ステップS07)。複数の検出器信号処理回路21から全く同じタイミングの時間情報が入力されている場合、すなわち、1nsec単位で全く同時にイベントが発生した場合、これらの検出器信号処理回路21の中からランダムにいずれか1つ選択する。処理回路特定部32は、さらに、特定された検出器信号処理回路21へこのイベントに対応する位置情報およびエネルギー情報を出力するように出力許可信号を送る(ステップS08)。
【0052】
グルーピング部22の処理回路特定部32より出力許可信号が入力された検出器信号処理回路21のメモリ28は、真のイベントと判別された時間情報に対応する位置情報およびエネルギー情報をグルーピング部22のグルーピング回路32へ送信する(ステップS09)。グルーピング回路32は、入力された位置情報およびエネルギー情報を真のイベント情報として同時計数回路37へ送信する(ステップS10)。
【0053】
同時計数回路37は、入力される真のイベント情報に対してそれぞれ対となるイベント情報を合わせて対のイベント情報を作成して画像再構成部10へ送信する(ステップS11)。再構成された放射線断層像は主制御部11を介してモニタ12で表示されるか記憶器14で保存される。以上のデータ収集方法によれば、ステップS01からステップS11までのそれぞれのステップの処理を1フレーム期間で処理すればよく、11フレーム周期で1フレーム期間に収集された各イベント情報に対して対となる真のイベント情報の作成をすることができる。
【0054】
このように、実施例のデータ収集器9およびそれを備えるPET装置1、データ収集方法によれば、フレームごとに検出された時間情報を先に照合することで、真の同時計数となるイベントに対応する時間情報を効率的に判別することができる。つまり、真の同時計数となるイベントの判別に対して、これまで位置情報、エネルギー情報および時間情報と3つの情報を用いて実施していたのを、時間情報だけを用いることで、処理する情報量を軽減することができる。
【0055】
さらに、各グループ内において1フレーム中に発生したイベントの時間情報が合成されて合成時間情報として真のイベントの判別に用いられるので、真のイベントの数え落としを低減することができる。検出器信号処理回路21からグルーピング部22を介して同時計数部までの時間情報のデータ送信系統と位置およびエネルギー情報のデータ送信系統とを分けて2系統とすることで、時間情報と位置およびエネルギー情報との送信を別々に実施することができ、時間情報の処理と位置およびエネルギー情報の処理とを時間差を設けて実施することができる。
【0056】
また、同時計数部23から検出器信号処理回路21へのデータ送信系統を有することで、真のイベントと判別された時間情報に対応する位置およびエネルギー情報だけを取り込む指示を送ることができる。検出器信号処理回路4から同時計数部23へのデータ送信系統が一方通行であったが、双方向とすることで、時間情報を用いて先に真のイベントの判別を実施した後で、位置およびエネルギー情報を取り込むことができる。このようにして対となる真のイベント情報を作成することで、各構成要素間で送受信する情報量を軽減することができる。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0058】
(1)上述した実施例では、位置情報およびエネルギー情報を保管するメモリ28が検出器信号処理回路21に設けられていたが、これに限られない。たとえば、図8に示すようにグルーピング部22’に位置情報およびエネルギー情報を保管するメモリ34を設けてもよい。位置演算回路25およびエネルギー演算回路26は、算出した位置情報およびエネルギー情報をデータ線42’を通ってメモリ34へ出力して保管する。同時計数判別部36は、真の同時計数と判別された時間情報を同時計数情報としてそれぞれのグルーピング部22’のメモリ34へ送り、同時計数情報として送られた時間情報に対応する位置情報およびエネルギー情報をグルーピング回路33へ出力するように指示する。このような構成により、グルーピング部22から検出器信号処理回路21’へのデータ線43を省略することができ、信号処理の高速化を図ることができる。
【0059】
(2)上述した実施例では、放射線断層装置としてPET装置1を採用したがこれに限らず、PET−CT装置でもよいし、PET−MR装置でもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 … PET装置
4 … 放射線検出器
9 … データ収集器
22、22’ … グルーピング部
25 … 位置演算回路
26 … エネルギー演算回路
27 … タイミング回路
28、34 … メモリ
31 … タイミング合成部
36 … 同時計数判別部
37 … 同時計数回路
40、41、42、42’、43、44、45、45’ … データ線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を出力するタイミング回路と、
1つの検出周期中において複数の前記タイミング回路から送られる複数の前記時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成部と、
複数の前記タイミング合成部から送られる複数の前記合成時間情報を照合して真の同時計数における前記時間情報を判別する同時計数判別部と
を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置用のデータ収集器。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線断層撮影装置用のデータ収集器において、
前記放射線検出器において検出されるイベントの発生した位置情報を算出する位置演算回路と、
前記放射線検出器において検出されるイベントのエネルギー情報を算出するエネルギー演算回路と、
前記同時計数判別部により真の同時計数と判別されたイベントにおける位置情報およびエネルギー情報を対にして送り出す同時計数回路と
を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置用のデータ収集器。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線断層撮影装置用のデータ収集器において、
複数の前記位置演算回路および前記エネルギー演算回路から送られるイベントの位置情報およびエネルギー情報を前記同時計数回路へ出力するグルーピング回路と、
前記タイミング回路から前記タイミング合成部を介して前記同時計数判別部までの第1情報送信系統と、
前記位置演算回路および前記エネルギー演算回路から前記グルーピング回路を介して前記同時計数回路までの第2情報送信系統と
を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置用のデータ収集器。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線断層撮影装置用のデータ収集器において、
前記位置演算回路および前記エネルギー演算回路においてそれぞれ算出された前記位置情報および前記エネルギー情報を記憶する記憶部を有し、
前記同時計数判別部から前記記憶部へ真の同時計数と判別されたイベントにおける前記位置情報および前記エネルギー情報の取り込みを指示する第3情報送信系統を
備えることを特徴とする放射線断層撮影装置用のデータ収集器。
【請求項5】
被検体から照射される放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線検出器において検出されたデータを収集するデータ収集器を備え、
前記データ収集器は、
前記放射線検出器においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を作成するタイミング回路と、
1つの検出周期中において複数の前記タイミング回路から送られる複数の前記時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成部と、
複数の前記タイミング合成部から送られる複数の前記合成時間情報を照合して真の同時計数における前記時間情報を判別する同時計数判別部とを有する
ことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
放射線検出器においてγ線がパルス信号として検出されるイベントの発生時間に対応する時間情報を出力する時間情報出力ステップと、
1つの検出周期中において発生した複数のイベントの前記時間情報を1つの合成時間情報に合成するタイミング合成ステップと、
複数の前記合成時間情報を照合して真の同時計数における前記時間情報を判別する同時計数判別ステップと
を備えることを特徴とする放射線断層撮影用データ収集方法。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線断層撮影用データ収集方法において、
前記放射線検出器において検出されるイベントの発生した位置情報を算出する位置演算ステップと、
前記放射線検出器において検出されるイベントのエネルギー情報を算出するエネルギー演算ステップと、
真の同時計数と判別されたイベントにおける前記位置情報および前記エネルギー情報を対にして送り出す同時計数ステップと
を備えることを特徴とする放射線断層撮影用データ収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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